1121日・日

 A&C オーディオのヒッポさんがブログで大貫妙子&坂本龍一『UTAU』と井筒香奈江『レイドバック 2018』のミキシングの違いを指摘しているのを見て、Apple Music on iPad mini + AirPods Pro で聴いてみる。これはヒッポさんの言う「位相周りの良い」システムではないが、それでも違いはわかる。
 確かに大貫の声も坂本のピアノもごく自然で、生で聴いている感覚。

 井筒のはピアノの音がおかしい。生で聴いて、こんな風に聞えたことはない。ヒッポさんがピアノの中に頭を突込んだようだというのは言い得て妙だ。それに声とピアノとベースが全部1ヶ所に、つまり同じ空間を同時に占めているように聞える。音量のレベルも全部同じ。生ならPAを通してもこんな風に聞えることはない。おまえの耳がおかしいのだと言われるかもしれないが、あたしならこれを優秀録音とは言わない。 

 いずれにしても、これがリファレンスだというオーディオ評論家の評価は、あたしも聴いてみればなるほどそうだと思うものでは無いことは確かだ。そういう意味ではわかりやすい指標になる録音ではある。これをリファレンスとして書いていることの反対だと思えばいいわけだ。

 歌も大貫と井筒ではだいぶ差がある。井筒は声は出せるようだが、アーティキュレーションが甘い。または歌詞の読みこみが不足。聴いていて、つまらない。念のため、3曲聴いてみるが、それ以上聴きつづける気が失せる。

 大貫&坂本はCDを買おう。

UTAU(2枚組)
大貫妙子 & 坂本龍一
commmons
2010-11-10




##本日のグレイトフル・デッド

 1121日には1969年から1985年まで5本のショウをしている。公式リリースは完全版が1本。


1. 1969 Building A, Cal Expo, Sacramento, CA

 KZAD 開局記念日パーティー。前売6.50ドル、当日7ドル。開場6時、開演8時、終演午前1時。共演 A B SkhyCountry Weather, Commander Cody Wildwood

 このショウの第二部のテープは SBD、サウンドボード録音としてテープ交換網に出回った最初のものと言われる。

 Country Weather 1966年サンフランシスコ郊外 Walnut Creek The Virtues として結成され、67年に改名。アヴァロン・ボールルーム、フィルモア、ウィンターランドなどでサンフランシスコ・シーンのアクトの前座を勤めた。

 Commander Cody はその後、& His Lost Planet Airmen など様々な名前のバンドを率いて知られるようになる。本名は George Frayne でアイダホ出身。今年9月、ニューヨーク州で死去。

 Wildwood は調べがつかず。デッドの前身のブルーグラス・バンドの一つに Wildwood Boys があるし、この名前のバンドはいくつもある。 


2. 1970 Sargent Gym, Boston University, Boston, MA

 3.50ドル。偽造チケットが発覚し、開演が遅れる。セット・リストは曲順がはっきりしない。DeadBase XI SetList Program を合わせると〈That's It for the Other One〉を1曲と数えて9曲やっている。ニュー・ライダーズ・オヴ・パープル・セイジ前座。DeadBase XI はまた "a chimp act" が前座をした、とする。どんなものなのだろう。猿回し? 同じく DeadBase XI Thomas Flannigan のレポートでもよくわからない。セット・リストでは〈That's It for the Other One〉とされているところ、フラニガンは〈Not Fade Away〉としている。

 タダで入ろうと押し込んだ連中を警官隊が排除し、騒動になる。ボストンの警察でも最も手強い群衆を相手にする黒人からなる警官隊が動員された。

 デッドが出てきたのはすでに10時。最初の4曲はこともなく終り、休憩が入って、再び出てきたデッドは〈Good Lovin'〉をやり、会場は爆発する。その次に〈Dancing in the Street〉をやり、これには黒人の警官隊もガードマンたちも踊った。この曲もセット・リストには無い。さらに〈St. Stephen〉〈Not Fade Away〉と続いて、ラストは〈Uncle John's Band〉。喝采は止まなかったが、とうとうクルーが出てきて、バンドはくたびれてもう終りと宣言。


3. 1973 Denver Coliseum, Denver, CO

 このヴェニュー2日目。《Road Trips, Vol. 4, No. 3》で全体がリリースされた。

 〈Me And My Uncle〉は演奏回数1位だがオープナーは珍しい。どの曲もよい演奏だが突破しているところはなかったのが〈They Love Each Other〉でがらりと変わる。リズミカルに、弾むようなビートに乗って歌われるのは新鮮。〈Here Comes Sunshine〉がまたすばらしい。以後、〈Big River〉〈Brokedown Palace〉〈Weather Report Suite〉とハイレベルの演奏が続く。

 1973年は72年のような、決定的名演、突出した瞬間はあまりないのだが、全体として中身の詰まった、水準の高い演奏が、どの曲でも変わらないところがある。


4. 1978 Community War Memorial Auditorium, Rochester, NY

 7.50ドル。開演7時。第一部最後の〈Deal〉で、ガルシアは最後のリフレイン"Don't you let that deal go down."34回繰返した由。


5. 1985 Henry J. Kaiser Convention Center, Oakland, CA

 15ドル。開演8時。3日連続の中日。第一部はそこそこ、第二部が良かった由。

 この日、開演前、ステージ裏のドアがビールの樽を入れるために開けられ、会場は凍りついた。この日は寒かった。ビールの樽はステージ裏のバーのためだったが、ここでは酒を売る免許をとっていないことを、酒類販売取締りの担当者が発見し、以後、代金は受けとれなくなった。(ゆ)