0110日・月祝

 Titta の良いのは反応が速く、ドラムスやギターの立上りの音がシャープで際立つのが快感なのだ、と気がつく。このキレの良さと人間の声の艷、艷気が両立している。こういう音をもっと聴きたい。ヘッドフォンでこういう音のものはあるか。



##本日のグレイトフル・デッド

 0110日には19707879年の3本のショウをしている。公式リリースは1本。


1. 1970 Golden Hall, San Diego Community Concourse, San Diego, CA

 これだけ、独立したショウ。1時間半の一本勝負。指定席3.504.004.50ドル。開演8時半。サヴォイ・ブラウンと AUM が共演。

 9曲目〈Black Peter〉が《The Golden Road》で、8曲目〈Mason's Children〉が2010年の《30 Days Of Dead》でリリースされた。

 後者は所有せず。前者はガルシアの歌が聴かせる。およそロックらしくない、ブルーズではないスローなこういう曲を、歌だけで聴かせる芸当をデッドはできる。〈Black Peter〉は19691204日、フィルモア・ウェストで初演。トータル347回の演奏は、回数順で27位。スタジオ盤は《Workingman' Dead》。一見陰々滅々の歌だが、ガルシアが歌うと希望の歌になる。ガルシアはこの歌、あるいは〈Wharf Rat〉のような歌を希望の歌として歌う。〈Loser〉はまた別で、あそこに救いは無い。それが良いのだ。救いの無いところから生まれるペーソスが胸に沁みる。ピーターも、オーガスト・ウェストも、〈負け犬〉の語り手も、いずれもあたしらの分身だ。ピーターやオーガスト・ウェストには再起してほしい。だが、負け犬は、こいつはとことん負け続けるとわかる。"I've got no chance to lose this time." とつぶやく男を見て、ああ、次も負けるなと思うと嬉しくなる。なぜだろう。

 〈Wharf Rat〉は397回で19位。スタジオ盤収録無し。〈Loser〉は351回で25位。スタジオ盤はガルシアの1971年ソロ・ファースト。

 サヴォイ・ブラウンはロンドンのブルーズ・ロック・トリオでアメリカで成功する。が、1967年のファースト《Shake Down》はアメリカではリリースされず、1969年に相次いで出した2枚《Blue Matter》と《A Step Further》で認められた。わが国ではフリートウッド・マック、チッキン・シャックとともに英国三大ブルーズ・バンドと呼ばれた。チッキン・シャックは短命、フリートウッド・マックは路線転換したが、サヴォイ・ブラウンは現在までブルーズ・バンドとして活動している。

 Aum 1968年にサンフランシスコで「発見」されたブルーズ・ロック・トリオで、写真家の Jim Marshall がそのライヴを見て、ビル・グレアムに紹介し、フィルモア・ウェストの Sounds of the City オーディションで聴衆をノックアウトした。2枚のアルバムがある。セカンドの《Bluesvibes》は録音をアンペックスの Ron Wickersham が担当し、カヴァーをアルトン・ケリィが手掛けている。

 とすると、主催者はデッドもピグペンをフロントとしたブルース・ロック・バンドと見ていたのかもしれない。


2. 1978 Shrine Auditorium, Los Angeles, CA

 このヴェニュー2日連続の初日。6.507.50ドル。開演7時半。2日目は追加公演。

 ガルシアの喉頭炎は多少良くなって、少しは声が出るようになった。演奏はまだ弱い声をカヴァーするようにすばらしいもののの由。


3. 1979 Nassau Veterans Memorial Coliseum, Uniondale, NY

 9.50ドル。開演8時。開演時外気温零下12度。チャック・ベリーの誕生日でアンコールは〈Johnny B. Goode〉。

 ここでは1973年春と秋に5回演奏した後、これが5年ぶりの復帰。前回は、警察があまりに多数のファンを逮捕したので、嫌気をさして、もう2度とここではやらないと宣言した。これ以後、ここでは1980年代後半を除いてコンスタントに演奏し、計42本のショウをし、うち10本が公式リリースされている。

 施設は空軍基地の跡地に197202月オープンした多目的屋内アリーナで、定員はコンサートで15,000。何度か改修、拡張を経て、現役。ホッケーの New York Islanders の本拠。バスケットの New York Nets も一時ここを本拠としていた。場所はニューヨーク市クィーンズ東端から11キロというから、東京駅から舞浜駅までよりちょっと近い。(ゆ)