01月26日・水
佐々木さんが Ascii.jp のコラムでオーディオ製品の品薄と値上がりは一時的な現象ではないかもしれないと指摘している。製品の値上がりは流通コストの値上がりだけでなく、部品の値上がりと品薄によるところが大きい、と聞く。オーディオ回路を構成する基本的な部品が枯渇しているのだそうだ。
パンデミックはオミクロン株の登場で先が見えたと WHO も言うくらいだが、パンデミック自体は収まっても、それが引き起こした混乱や変化は少なくとも当面は停まらないだろう。ウクライナ危機もパンデミックが引金になったとも見えるし、これから思わぬところで影響が出てくるとも思える。先日はガス湯沸器の部品が無くて製品が作れず、壊れると交換できないので、鍋で風呂のお湯をわかした、という話がとりあげられていた。
パンデミックはこれまで隠れていたり、見えなかったりしたことやものを暴露しているが、そういう流れも止まらないんじゃないか。もっとも、それは必ずしも悪いことではなくて、隠れていた欠陥を直したり、見えなくてなおざりにされていたことに正面から向かったりするチャンスでもある。
オーディオの世界だっていろいろとヘンなことはあるわけで、まずは部品の不足や値上がりという形をとっているけれど、次にはもっと根本的なところで変化が起きるだろうと不安ながら、期待もしている。
##本日のグレイトフル・デッド
01月26日には1968年から1993年まで、3本のショウをしている。公式リリースは2本。
1. 1968 Eagles Auditorium, Seattle, WA
4ドル。午後9時から午前2時まで。このヴェニュー2日連続の1日目。22、23日とは異なり、この2日間については、地元紙とワシントン大学の学内紙の調査で、確認されている。ポスターも残っている。
この日のものか、23日のものか、定かではないテープがあり、Dead.net は23日のものとして、《Road Trips, Vol. 2 No. 2》とそのボーナス・ディスクで後半の7曲をリリースしている。しかし、上記の事情から、こちらの方が確実性が高い。
ボーナス・ディスクは所持せず。本篇の方には〈Beat It on Down the Line〉〈It Hurts Me Too〉の2曲。前者は後に比べると性急なまでのアップテンポ。ウィアは興奮して声が上ずり、一気に駆けぬける。始める前に「いくつにする?」と誰か、クロイツマンかが訊いて、ガルシアがこれを増幅する。誰かが「17」か「9」と言ったらしく、ガルシアが、どっちにするんだ、とダメを押す。結局17になる。この数は曲の頭のドン・ドン・ドンという踏みならしをいくつにするか、という話。後者ではハーモニカ・ソロに続くギター・ソロはなかなか良い。ガルシアのブルーズ・ギターは時にはかなりのものになる。
〈Beat It on Down the Line〉は Jesse Fuller のクレジット。ウィアがリード・ヴォーカルで、1966年05月19日、アヴァロン・ボールルームで初演。1994年10月03日ボストンが最後。計328回演奏。スタジオ盤はファースト。
〈It Hurts Me Too〉はエルモア・ジェイムズ&タンパ・レッドのクレジット。ピグペンのヴォーカルとハーモニカによるブルーズ・ナンバー。上と同じく1966年05月19日、アヴァロン・ボールルームでデビュー。1972年05月24日、ロンドンが最後。計57回演奏。スタジオ盤収録無し。ピグペンのバンド離脱とともにレパートリィから消える。
2. 1969 Avalon Bollroom, San Francisco, CA
このヴェニュー3日連続の最終日。1時間強。二部に別れていたかは定かではないが、記録はどれも二部に分けている。もっとも全部で7曲。第一部後半の〈Clementine> Death Don't Have No Mercy〉が《Aoxomoxoa》50周年記念版で、第二部後半の〈The Eleven> Turn On Your Lovelight〉が《Live/Dead》で、各々リリースされた。《Live/Dead》の B面は〈St. Stephen> The Eleven〉のメドレーだが、同じ日の録音ではないわけだ。後に出た《Fillmore West 1969: The Complete Recordings》で聴いてみると、02-27の〈The Eleven〉は演奏はこちらの方が良いと思われるが、SBD すなわちサウンドボード録音のテープがなんらかの理由で途中切れていて、その部分を AUD すなわち聴衆録音で補っている。これはデジタルで初めて可能なので、《Live/Dead》の1969年当時は無理だっただろう。その後の〈Turn On Your Lovelight〉は02-27は19分で、時間的にはLP片面に入るが、出来としてはこの01-27の方がかちっとまとまっている。02-27ではピグペンの即興ヴォーカルのノリが良く、「デッドらしい」のだが、デッドのショウ、パフォーマンスに接していないとその面白さを味わえないかもしれない。《Live/Dead》リリース当時はデッドのショウを直に体験した人間の数はもちろんまだ多くはない。デッドのライヴがどんなものか紹介するには01-26のヴァージョンの方が適切ではある。
〈Clementine〉はハンター作詞、レシュ作曲。《Aoxomoxoa》録音中にこの曲の録音もしたが、アルバムには収録されなかった。1968年01月20日、カリフォルニア州ユーレカで初演。1969年01月26日のアヴァロン・ボールルームまで、5回演奏されたのみ。レシュの曲に多い、摑みどころのないメロディ。ギターの音量ツマミを回して弦をはじく音を消す手法をガルシアが聞かせて、客席が湧く。ただ、どちらかといえばガルシアよりもレシュのベースとトム・コンスタンティンのオルガンが舞台をさらっていく。最後はコンスタンティンが縦横のオルガンを聞かせ、それがおちつくのを待って入れ替わるようにして途切れなくガルシアが次の曲を始める。
〈Death Don't Have No Mercy〉は通常レヴェレンド・ゲイリー・デイヴィスの曲とされるが、これもどうやらその前からの伝統曲が土台としてあるようだ。ガルシアがリード・ヴォーカルのブルーズ・ナンバー。1966年01月08日、フィルモア・オーディトリアムで初演。1970年03月21日、ニューヨーク州ポートチェスターまでは定期的に演奏される。そこでレパートリィから落ち、1989年09月に復活、最後は1990年04月02日のアトランタまで、計48回演奏。ここではブルーズ・ロック・バンドとしてのデッドの実力が聴ける。この頃のガルシアは後年よりも明らかに歌が巧い。
〈The Eleven〉もハンター作詞、レシュ作曲。こちらは比較的わかりやすい。確実な日付と場所としては1968年01月17日カルーセル・ボールルームが初演。1970年04月24日、デンヴァーまで計99回演奏。スタジオ盤収録無し。タイトル通り11拍子で、1968年、1969年に特徴的なレパートリィ。とりわけ1969年には、《Live/Dead》収録の〈Dark Star> St. Stephen> The Eleven> Turn On Your Lovelight〉の組合せが集中的に演奏された。この時期のジャムでは、レシュのベースがリードをとることが多い、その代表的な曲。
3. 1993 Oakland-Alameda County Coliseum Arena, Oakland,, CA
23.50ドル。開演7時。このヴェニュー3本連続の最終日。第二部後半〈Space> The Other One> Stella Blue> Turn On Your Lovelight〉とアンコール〈Gloria〉にカルロス・サンタナが参加。ガルシアも大いに張り切ったようだ。(ゆ)
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