02月05日・土
人間の耳は正直なもので、本質的に必要でないものは無くてもちゃんと聞きとることができる。空間オーディオなるものも、一時的に夢中になったり、中毒したりすることはあっても、人間の聴覚体験を一新することは無い。
2日ぶりにインターバル速歩散歩すると、えらく気持ちがよい。やらないと調子が悪いところまではまだだが、やると気分爽快、体が軽くなったように感じるまでになってきた。
夕方、試すと Tidal は問題なく使える。サブスクリプションが切れてるぞと出たあれは何だったのか。
久しぶりに denAmp/Phone を使ってみる。バスパワーで CS-R1 で聴いて、いや、すばらしい。hip-dac に劣らない。MQA のマスター音源ではさすがに違いがあるが、比べなければ、全然問題ない。HiFi と Master の違いもしっかり出す。この二つがあれば、もう他に USB-DAC は要らない。denAmp は販売休止中だが、春には再開するらしい。
T60RP でも試す。音量ノブはさすがに正午まで上げるが、しかし、がっちりと鳴らす。バスパワーのくせに、何がどうなっているのか。中身は何かは明かしていないし、開ける気もないが、このサイズだから DACチップにオペアンプのはずだ。DAC チップは Cirrus だろうか。
伝聴研の傳田さんは、あれだけ見事な自然音録音ができる人だから、耳は抜群だし、自分自身ミュージシャンで、生音も十分知っている。おかしなものは作るはずがない。あそこのものはどれも音がいいが、それにしても、denAmp は凄い。ヘッドフォン祭で一度、これを外付にして DAP と組み合わせている人を見たことがある。これは音がいいですよね、と盛り上がった。
溜まっていたリスニング候補の音源を Tidal でざっと聴く。アルバムの各々冒頭のトラック。
Marcin Wasilewski Trio, ECM
Ayumi Tanaka, Subaqueous Silence, ECM
Tim Berne & Gregg Belisle-Chi, Mars
Undercurrent Orchestra, Everything Seems Different
Jorge Rossy, Robert Landfermann, Jeff Ballard – Puerta, ECM
Maria-Christian Harper, Gluten Free
Chien Chien Lu, The Path
Banquet Of Boxes: a Celebration of the English Melodeon
Elton Dean Quartet, They All Be On This Old Road
どれも一通り聴く価値がある。
Maria-Christian Harper は面白い。名前の通り、ハーパーで、良い意味でアヴァンギャルド。ヴィブラフォンの Chien Chien Lu も良い。Badi Assad、Arooj Aftab は文句無い。Thea Gilmore はもう少し聽いてみる。Saadet Turkoz & Beat Keller はウイグル族の危難に反応した録音。伝統かつ前衛。とりあえず聴かねばならない。
Saul Rose を Tidal で検索したら、 Banquet Of Boxes: a Celebration of the English Melodeon というアルバムがヒット。思わず顔がほころぶ。 オリジナル録音のオムニバスかな。これは CD を探そう。
エルトン・ジョンの芸名のもとになった Elton Dean のカルテットも面白い。キース・ティペットが大活躍。こういう音はイングランドでしか出ないだろう。
##本日のグレイトフル・デッド
02月05日には1966年から1989年まで5本のショウをしている。公式リリースは2本。
1. 1966 The Questing Beast, Berkeley, CA%
テープが残っているので、各種サイトではショウとしてリストアップしているが、内容はリハーサル。〈Viola Lee Blues〉を何度もやっている由。
2. 1969 Soldier's And Sailors Memorial Hall, Kansas City, KS
アイアン・バタフライの前座として1時間強の演奏。セット・リストはこの年の典型。
3. 1970 Fillmore West, San Francisco, CA
3ドル。4日連続のランの初日。共演タジ・マハル。こういう組合せでコンサートを企画するのがビル・グレアムの面白いところ。
この4日間はいずれも一本勝負のショウ。オープナーの〈Seasons Of My Heart〉と〈The Race Is On〉でガルシアはペダルスティールを弾いている。
3曲目〈Big Boss Man〉が《History Of The Grateful Dead, Vol. 1 (Bear's Choice)》でリリースされた。ピグペンの声はまだまだ衰えてはいない。
4. 1978 Uni-Dome, University of North Iowa, Cedar Falls, IA
オープナー〈Bertha> Good Lovin'〉とクローザー〈Deal〉を含む第一部の5曲と第二部8曲全部が《Dick's Picks, Vol. 18》でリリースされた。計1時間半。
3日のショウに並ぶすばらしい出来。全体としてのレベルは3日の方が若干上かとも思うが、こちらの第二部も強力。〈Scarlet Begonias> Fire On The Mountain〉がまずはハイライト。特に〈Scarlet Begonias〉後半のガルシアのギターを核としてバンド全体が集団即興になるところは、デッド体験の醍醐味の一つ。そして〈Truckin'> The Other One> Wharf Rat> Around and Around〉と続くメドレーを聴くのは、この世の幸せ。〈Wharf Rat〉はいつもの囁きかけるような、どちらかというとウェットなスタイルとはがらりと変わり、言葉をほおり出すようなドライな態度をとる。喉の調子がよくなく、囁き声が出せなかったせいかもしれないが、怪我の功名で、3つのパートでどん底から天空に飛翔するこの歌、とりわけパート3にはまことにふさわしい。ガルシアはギターから錆ついた響きをたたき出し、明るいマイナー調のフレーズを聴かせる。〈Around and Around〉でもガルシアが延々とギターを弾いているので、ウィアがなかなか歌いだせない。この歌は1976年06月の大休止からの復帰後、はじめゆったりと入り、途中でポンとテンポを上げる形になる。ここではその前半のゆったりパートのタメの取り方の念が入っているのと、後半、ウィアとドナの声が小さくなるのが早いのとで、その後の爆発のインパクトが大きい。実に実にカッコいい。
DeadBase XI での Andy Preston のレポートによれば、〈Truckin'〉の前の音は、ステージ両側に駐車したセミトラックに仕掛けられた爆竹のようなもので、バックファイヤのつもりらしい。続いてエンジン音が大きくなるとともに、バンドは演奏に突入した。
会場は屋内フットボール場で、片方の50ヤード・ラインにステージが設けられ、残り150ヤードが椅子もなく、解放されていて、聴衆は自由に踊れた。音がよく響き、バンドを迎えた歓声の大きさに、レシュが「実際の人数以上の音だね」とコメントした。
第二部オープナーの〈Samson And Delilah〉で、ウィアのヴォーカル・マイクが入らず、マイクを交換する間、バンドは即興を続けた。ガルシアは苛立って、ギター・ソロが獰猛になった。マイクの面倒をみていたクルーがガルシアを見て、お手上げというように両手を挙げたので、ガルシアはギターでクルーの心臓を狙い、機関銃の音を立ててみせた。その後、マイクはきちんと作動して、歌は続いた。
さらに機器のトラブルがあり、ウィアがかつての「黄色い犬の話」に匹敵する「木樵の話」をして、時間を稼いだ。もっともその冗談はいささか混みいっていて、聴衆の反応は鈍かった。
この年、アイオワは百年に一度の寒い冬。
5. 1989 Henry J. Kaiser Convention Center, Oakland, CA
開演7時。このヴェニュー3日連続の初日。この年最初のショウ。春節記念。この3日間に続いて、ロサンゼルスで3日連続をした後、1ヶ月休んで3月下旬、アトランタから春のツアーに出る。
バーロゥ&ミドランドの〈We Can Run〉とハンター&ガルシアの〈Standing On The Moon〉の初演。
〈We Can Run〉は1990年07月10日まで計22回演奏。スタジオ版は《Built To Last》に収録。
〈Standing On The Moon〉も同じく《Built To Last》所収で、1995年06月30日まで、計75回演奏。これについてハンターは、いきなり頭に浮かんだのをとにかく書き留めたので、何の修正も改訂もしていない、と言っている。ガルシアはブレア・ジャクソンのインタヴューに答えて、理屈ではなく、とにかくこの歌が好きで、この歌が自分の口から出てゆくのが歓びなのだ、それはできるだけそのまま出るにまかせて、余計なことはしたくない、と言う。(ゆ)
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