0401日・金

 散歩に出ると風が冷たい。大山・丹沢の上の方は白くなっていた。

 Locus 3月号。SFWA が名称を変えるというニュース。略号はそのままだが、名称は Science Fiction and Fantasy Writers Association になる。つまり、"of America" ではなくなる。2,100名超の会員の4分の1がアメリカ国外に住んだり、仕事をしたりしている由。近年ではカナダ、オーストラリアも増えているはずだ。Tor.com に記事が出たインド亜大陸もある。インドだけで、英語のネイティヴは1億を超える。UKよりも多いのだ。

 この名称変更はグローバル組織への道だろう。地球上どこに住んでいようと英語で作品を発表していれば会員になれる。あるいは英語で作品が読めればいい、ということになるか。当然ネビュラ賞の対象も変わるはずだ。現在はアメリカ国内で発表されたものに限られている。ヒューゴーはもともとそういう国籍条項が無い。対象は全世界で、その点ではこれまでネビュラよりも国際的だった。

 アマゾンで Nghi Vo の新作 Siren Queen のハードカヴァーを予約注文。05-10刊。フィッツジェラルドの『偉大なギャッピー』を換骨奪胎してベトナム・ファンタジーに仕立てた The Chosen And The Beautiful は滅法面白かった。ヒューゴーをとった The Empress Of Salt And Fortune も良かった。そういえば、C. S. E. Cooney Saint Death's Daughter が今月だ。版元のサイトによれば12日発売。これは楽しみなのだ。

Siren Queen
Vo, Nghi
Tor.Com
2022-05-10

 

Saint Death's Daughter (1) (Saint Death Series)
Cooney, C. S. E.
Solaris
2022-04-12

 Bandcamp Friday につき、買物カゴを空にして散財。先月買いそこねたので、2ヶ月分。

 Martin Hayes & The Common Ground Ensemble のシングル〈The Magherabaun Reel〉を Apple Music で聴く。ヘイズのオリジナルだろう。タイトルはかれの生家のある Maghera Mountain にちなむはずだ。ちょっと聴くかぎりは The Gloaming の延長に聞える。JOL のこのアンサンブルのコンサート評ではもっと多彩なもののようだ。フル・アルバムないしライヴが待ち遠しい。

Rachel Hair & Ruth Keggin - Vuddee Veg | Sound of the Glen

 スコットランドのハーパーとマン島のシンガーのデュオ。クラウドファンディングで作っているフル・アルバムが楽しみだ。
 

The Same Land - Salt House - Live in Edinburgh

 スコットランドのトリオ。スコットランドのバンドでは今1番好き。



##本日のグレイトフル・デッド

 0401日には1965年から1995年まで、12本のショウをしている。公式リリースは6本、うち完全版2本。


01. 1965 Menlo College, Menlo Park, CA

 木曜日。ビル・クロイツマンは回想録 Deal でこれをバンドとして最初のショウとしている。029pp. まだ The Warlocks の名もなかった由。DeadBase XI では1965-04-?? として載せている。むろんセット・リストなどは不明。

 メンロ・パークはサンフランシスコの南、スタンフォード大学のあるパロ・アルトのすぐ北の街。ガルシアの育ったところ。グレイトフル・デッド発祥の地。


02. 1967 Rock Garden, San Francisco, CA

 土曜日。このヴェニュー5本連続の最終日。共演チャールズ・ロイド・カルテット、ザ・ヴァージニアンズ。このショウは無かった可能性もある。


03. 1980 Capitol Theatre, Passaic, NJ

 火曜日。このヴェニュー3日連続のランの最終日。10.00ドル。第一部6曲目〈Friend of the Devil〉が2020年の《30 Days Of Dead》でリリースされた。


1981のこの日《Reckoning》がリリースされた。

 前年9月から11月にかけてサンフランシスコの The Warfiled Theatre とニューヨークの Radio City Music Hall で行われたレジデンス公演では、第一部をアコースティック・セット、第二部をエレクトリック・セットという構成がとられた。そのアコースティック・セットで演奏された曲からの抜粋16曲を2枚のLPに収めたものである。一部は短縮版。

 元々は CSN&Y の《4 Way Street》のように、アコースティック・セットで1枚、エレクトリック・セットで1枚の2枚組の形で企画された。が、あまりに良い演奏が多く、捨てるのはどうしても忍びないということで、結局アコースティック、エレクトリックそれぞれにLP2枚組ということになった。

 2004年に CD2枚組の拡大版がリリースされ、これにはラジオ・シティでの公演からの録音を中心に16曲が追加された。録音はベティ・カンター=ジャクソン。ライヴでのサウンド・エンジニアはダン・ヒーリィ。

 全篇アコースティック編成でのアルバムとしては、スタジオ、ライヴ問わず唯一のもの。

 これを聴くと、もっとこういう編成でのライヴをして、録音も出して欲しかったと、あたしなどは思う。アナログ時代のアルバムとしては最も好きだ。アコースティックのアンサンブルとしても、グレイトフル・デッドは出色の存在であり、そのお手本となったペンタングルに比べられる、数少ないバンドの一つだ。カントリーやブルーグラス、オールドタイム、あるいはケルト系ではない、アコースティックでしっかりロックンロールできるバンドは稀だろう。後にガルシアがデュオですばらしいアルバムを作るデヴィッド・グリスマンやデヴィッド・リンドレー、あるいはピーター・ローワンのバンドぐらいではなかろうか。そう、それとディラン。ディランの《John Wesley Harding》に匹敵あるいはあれをも凌駕できるようなアルバムを、その気になればデッドには作れたのではないか。

 それは妄想としても、このレジデンス公演の全貌はきちんとした形で出してほしい。50周年記念盤で出すならば、2030年まで待たねばならない。それまで生きているか、世界があるのか、保証はないのだ。


04. 1984 Marin Veterans Memorial Auditorium, San Rafael, CA

 日曜日。このヴェニュー4本連続のランの最終日。開演8時。第二部オープナーの〈Help On The Way > Slipknot! > Franklin's Tower〉が2014年の《30 Days Of Dead》でリリースされた。


05. 1985 Cumberland County Civic Center, Portland, ME

 月曜日。このヴェニュー2日連続の2日目。11.50ドル。


06. 1986 Providence Civic Center, Providence, RI

 日曜日。このヴェニュー3日連続のランの最終日。13.50ドル。第二部オープナーからの3曲〈Shakedown Street; Estimated Prophet; Eyes Of The World〉が2020年の、第一部4・5曲目〈Cassidy; Tennessee Jed〉が2021年の、それぞれ《30 Days Of Dead》でリリースされた。


07. 1988 Brendan Byrne Arena, East Rutherford, NJ

 木曜日。このヴェニュー3日連続のランの最終日。18.50ドル。開演8時。第一部4曲目〈Ballad Of A Thin Man〉が《Postcards Of The Hanging》でリリースされた後、全体が《Road Trips, Vol. 4 No.2》でリリースされた。


08. 1990 The Omni, Atlanta, GA

 日曜日。このヴェニュー3日連続のランの初日。春のツアー最後のラン。18.50ドル。開演7時半。第二部オープナー〈China Cat Sunflower> I Know You Rider〉と Space 後の〈Dear Mr Fantasy〉が《Without A Net》でリリースされた後、《Spring 1990 (The Other One)》で全体がリリースされた。

 「マルサリス効果」は続いている。このツアーではガルシア、ウィア、ミドランドの3人のシンガーの出来がすばらしいが、この日はとりわけガルシアの歌唱が充実している。たとえば〈Candyman〉、たとえば〈Althea〉、たとえば〈To Lay Me Down〉、あるいは〈Ship Of Fools〉、そして極めつけ〈Stella Blue〉。いずれもベスト・ヴァージョン。というよりも、この日演奏されたどの曲もベスト・ヴァージョンと言っていいのだが、ガルシアの持ち歌でいえばこの5曲は、シンガー、ジェリィ・ガルシアの偉大さを思い知らされる。

 ウィアの歌唱もますます良い。ちょっと演技過剰なところも無くはないが、この人の場合、過剰に見えても、本人は特に過剰にやろうとしてはいない。自然にそうなるところがある。とにかく、根っからのいたずら好き、というよりも、いたずらをせずにはいられない。おそらく本人はいたずらをしようと意図してやっているわけではなく、無理なくふるまうとそれがいたずらになるというけしき。歌での演技でも同じで、故意に演技しているわけではなく、歌うとそうなるのだろう。その演技に、ガルシアとミドランドが素知らぬ顔でまじめにコーラスをつけるから、ますます演技が目立つ。その対照が面白い。

 ウィアの持ち歌では〈Victim Or The Crime〉がハイライトで、これは文句なくベスト・ヴァージョン。歌唱も演奏もすばらしい。ハートだろうか、不気味なゴングを鳴らし、全体に緊張感が漲り、その上で後半がフリーなジャムになる。これを名曲とは言い難いが、傑作だとあらためて思う。

 そして第一部クローザーの〈The Music Never Stopped〉では、スリップ・ジグのような、頭を引っぱるビートが出て、全員が乗ってゆく。

 このツアーでのミドランドの活躍を見ると、かれの急死は本当に惜しかった。ピアノとハモンドを主に曲によって、あるいは場面によって切替え、聴き応えのあるソロもとれば、味のあるサポートにも回れる。そしてシンガーとしては、デッド史上随一。〈Dear Mr. Fantasy> Hey Jude〉はかれがいなければ成立しない。ここではガルシアが後者のメロディを弾きだすのに、いきなりコーラスで入り、レシュとガルシアが加わって盛り上がる。するとミドランドはまた前者を歌いだす。〈Truckin'〉でのクールなコーラス。〈Man Smart (Woman Smarter)〉の、3人のシンガーが入り乱れての歌いかわし。

 Drums はゆっくり叩く大きな楽器と細かく叩く小さな楽器、生楽器と MIDI の対比が、シンプルでパワフル。Space のガルシアがトランペットの音でやるフリーなソロ。

 ここでは意図的に個別にとりあげてみたが、こうした音楽が一つの流れを作って、聴く者はその流れに乗せられてゆく。そして落ちつくところは〈It's All Over Now, Baby Blue〉。これで、すべて終りだよ。ガルシアの歌もギターも輝いて、最高の締め。


09. 1991 Greensboro Coliseum, Greensboro, NC

 月曜日。このヴェニュー2日連続の2日目。21.50ドル。開演7時半。


10. 1993 Nassau Veterans Memorial Coliseum, Uniondale, NY

 木曜日。このヴェニュー5本連続の2本目。開演7時半。第二部オープナー〈Iko Iko〉で Barney the Purple Dinosaur がベースで参加。


11. 1994 The Omni, Atlanta, GA

 金曜日。25.50ドル。開演7時半。


12. 1995 The Pyramid, Memphis, TN

 土曜日。このヴェニュー2日連続の初日。26.50ドル。開演7時半。サウンドチェックの〈Casey Jones〉が2018年の《30 Days Of Dead》でリリースされた。本番ではこの曲はやっていない。(ゆ)