Anthony Ryan の The Seven Swords の第4巻 To Blackfyre Keep が発表。Subterranean Press のサイトで確認すると送料がこれまでより選択肢が増えて、比較的安い DHL ができている。これならばまだしも我慢できる。ので、注文。刊行は9月予定。あと2冊。完結するまで世界があるか。
The Fortress Of The Pearl があまりに面白かったので、間髪入れずに The Sailor At The Seas Of Fate に突入。seas と複数形。sailor は単数。これは盲目の船長のことか。Gollancz の Michael Moorcock Collection 版では作品内の時系列に沿っているので、Fortress が2番目、次が Sailor になる。
それにしてもこれはヒロイック・ファンタジイ、Sword and Sorcery だろうか。表向きはそうに違いない。しかして実態は形而上ファンタスティカだ。これに比べれば、アメリカのファンタジィがいかにキャラクター中心か、よくわかる。
エルリックはキャラクターではない。少なくともアメリカでいうキャラクターではない。エレコーゼもホークムーンもコルムも、船長も違う。キャラクターの原型、と言うべきか。むしろ、歌舞伎の役に近い。かれらのふるまいはある種の型にそっている。容貌は隈取りに似ている。衣裳も常に同じ。たとえば、エルリックのキモリルに対する感情にはリアリティがまるで無い。故意に剥ぎとっている。ファファードやグレイマウザーの恋人に対する感情とはまるで次元が異なる。一方で形だけの、表面的なものでもない。エルリックが心底キモリルに惚れていることは明らかだ。
ムアコックがエルリックものを書く前に歌舞伎に親しんだとも思えないから、物語を語る手法に通じるところがあるのだろう。複雑な話を抽象化記号化することで単純なものに見せる。キャラクター中心にすると、複雑な事情、筋をいちいち全部書かなければならない。アメリカのファンタジィが長大になるのも無理はないのだ。
ただし、抽象化記号化する場合にはそのルール、この抽象やあの記号はそれぞれこういう事情、ああいう条件を表すという約束ごとを書き手と読み手が共有する必要がある。その共有された体験が伝統をかたちづくる。歌舞伎がその伝統に依拠しているように、ムアコックも英語文学、台湾版エルリックへの序文で触れている北欧やケルトの神話、Sexton Blake ものや、ダンセイニ、ホワイト、ピークからコンラッド、ウルフ、ボゥエン、さらにはプルースト、カミュ、サルトルにいたる文学伝統に依拠している。その伝統にはE・R・バロゥズやハワード、ライバーも含まれる。だからこそ、今度はエルリックが伝統の一部として共有される。
しかしアメリカでは体験の共有が期待できない。バロゥズやハワードが依拠した伝統を読み手が共有していると期待できない。ライバーはバロゥズやハワードを現代化することで、新たな、キャラクター中心のモダン・ファンタジィを生み出した。
ただし、ライバーはまだ文学伝統に依拠する部分が残っている。あるいは伝統の何たるかを知り、その使い方を心得ている。伝統から脱皮し、すべてを事細かに語るスタイルになるのがどこか。具体的に、誰の、どの作品かはちょっと面白い問題だが、まだ答えは見えない。候補としてはタッド・ウィリアムス、あるいはスティーヴン・キングあたりだろうか。
いやしかしそれよりは当面、エルリックが面白すぎる。こんな話だったとは。もっと早くに読むべきだった。1980年代前半にはMayflower 版でムアコックはほとんど揃えていたのだから。が、すべてのものにはその時がある。あたしにとっては今がこれを読む頃合いなのだ。とはいえ、12、3歳でリアルタイムで読んでいたニール・ゲイマンはうらやましい。
##本日のグレイトフル・デッド
04月04日には1969年から1995年まで10本のショウをしている。公式リリースは1本。
01. 1969 Avalon Ballroom, San Francisco, CA
金曜日。このヴェニュー3日連続の初日。共演フライング・バリトー・ブラザーズ。色違い、柄違いのポスターが残っている。
02. 1971 Manhattan Center, New York, NY
日曜日。このヴェニュー3日連続の初日。5ドル。開演8時。
03. 1985 Providence Civic Center, Providence, RI
木曜日。このヴェニュー2日連続の2日目。11.50ドルと12.50ドル。全席指定。開演7時半。
第一部5曲目で〈She Belongs To Me〉がデビュー。ディランのカヴァーで、この年の11-21まで計9回演奏。原曲は《Bringing It All Back Home》収録。
第一部クローザー〈Lost Sailor> Saint Of Circumstance> Deal〉が2021年の《30 Days Of Dead》でリリースされた。
04. 1986 Hartford Civic Center, Hartford, CT
金曜日。このヴェニュー2日連続の2日目。13.50ドル。開演7時半。
05. 1987 The Centrum, Worcester, MA
土曜日。このヴェニュー3日連続の最終日。開演7時半。
06. 1988 Hartford Civic Center, Hartford, CT
月曜日。このヴェニュー3日連続の中日。開演7時半。
開幕2曲目が〈Johnny B. Goode〉という位置は異常で、こういう異常な選曲をする時は調子が良い。もっとも原因の一つはガルシアが喉をつぶしていたことがある由。第二部オープナー〈Touch Of Grey〉を始める前にウィアが "And now from our hit album, a Touch Of Gray." とのたまわった。
07. 1991 The Omni, Atlanta, GA
木曜日。このヴェニュー3日連続の中日。開演7時半。
08. 1993 Nassau Veterans Memorial Coliseum, Uniondale, NY
日曜日。このヴェニュー5本連続の4本目。26.00ドル。開演7時半。
Drums> Space に Boba Olatunji が参加。
09. 1994 Orlando Arena, Orlando, FL
月曜日。本来2日連続だったが、前日のショウはキャンセルされた。「家族の病気のため」と、DeadBase XI にはある。25ドル。開演7時半。
10. 1995 Birmingham-Jefferson Civic Center Coliseum, Birmingham, AL
火曜日。このヴェニュー2日連続の初日。26.50ドル。開演7時半。(ゆ)
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