04月21日・木
ブリス・オーディオのポータブル・ヘッドフォン・アンプ Tsuranagi を試聴する。他に希望者がいなかったので、1ヶ月、借りていた。堪能した。
ぱっと聴くと無味無臭に聞える。どこか、ひ弱な感じもする。ところが、いろいろなヘッドフォン、イヤフォンをつないで聴いてゆくと、どうも妙なのである。何をつないでも、音楽に聴き入ってしまう。エントリーだろうとハイエンドだろうと、リスニング用だろうと、モニター用だろうと、インピーダンス600Ωだろうと、平面駆動だろうと、まったく関係がない。試聴するつもりが、再生した音楽にどっぷりはまっている。もちろん、試聴用には繰返し聴いて飽きないような曲を選んでいるわけだけれど、まるで、初めて聴くような按配なのである。これはつまり、ヘッドフォン、イヤフォンを鳴らしきっているのではないか。手許において使いつづけているのは、自分なりに素姓が良いと思えたものばかりで、そういうものはその実力をとことん引きだしているのではないか。
最初はパワー不足かとも思えた。が、どんなヘッドフォン、イヤフォンをつないでも、音量ダイアルはほぼ正午で合う。初代 T1 とか T60RP だけは2時くらいになる。イヤフォンだと10時くらいで間に合う。ほとんどのものは正午からちょっと左右に振るだけだ。
このアンプはただの箱だ。そう大きくもない。むしろ、小さい方だ。これより大きな DAP もある。その存在は無色透明だ。鳴っているのはヘッドフォン、イヤフォンであり、音楽だ。アンプではない。音楽を聴くためのアンプ、余すところなく音楽を聴くためのアンプだ。聴けば聴くほどに手離せなくなる。
ケーブルを Brise 以外のものに替えてみても、基本的な性格は変わらない。よほどおかしなものを使わないかぎり、やはりヘッドフォンの性能を100%発揮させる。させているように聞える。これほどの音で聴いたことはないと思わせる。
となると、これはしかし究極のアンプなのだ。これを買ってしまってはアンプ遊びには終止符が打たれる。将来、Brise からもっと良いものが出るかもしれない。しかし、これはすでに究極のレベルなので、新しいものが出たからといって、古くなって影が薄くなるような性格のものではない。
ようやく、試聴機を返してくれと連絡があった。月末のヘッドフォン祭 mini で展示するのだろう。けれども、このアンプは30分ばかり聴いたところで、真価がわかるとも思えない。
##本日のグレイトフル・デッド
04月21日には1968年から1986年まで7本のショウをしている。公式リリースは3本、うち完全版1本。
1. 1968 Thee Image, Miami, FL
日曜日。このヴェニュー3日連続のランの楽日。セット・リスト不明。この日、ノース・マイアミの Greynolds Park で、トラックの荷台をステージにして4時間、フリー・コンサートをした由。そちらもセット・リスト不明。
2. 1969 The Ark, Boston, MA
月曜日。このヴェニュー3日連続のランの初日。3.50ドル?
3. 1971 Rhode Island Auditorium, Providence, RI
水曜日。4.50ドル。
4. 1972 Beat Club, Bremen, West Germany
金曜日。テレビ番組の Beat-Club に出演。スタジオでライヴ演奏。10曲。1時間20分。《Europe ’72: The Complete Recordings》で全体がリリースされた。テレビで放映された画像は YouTube で見られる。放送は生ではなく、編集されている。録音は編集される前の演奏を捕えている。
番組は1965年から1972年年末まで、月1回放送された。この間にデビューしたおよそロックのバンドは一度は出たと言われる。1曲ないし数曲だけの出演が多かった。現在は YouTube に多数アップされている。
10曲演奏しているが、なぜか〈Playing In The Band〉を2度やっている。しかも2度目はウィアが1番の歌詞をまちがえたため、バンドは大袈裟に大騒ぎしながら止める。やり直しはしかしやはりすばらしく、あたしはこちらの方がいいとは思う。やり直しはここだけではなく、4曲目〈Sugaree〉でも始めて間もなく、ガルシアが、誰かまちがえた(ピグペンらしい)ぞお、と言って止める。さらに8曲目〈Truckin'〉でも始めて1分ほどして止めてやり直す。
いずれも、観客を前にしたショウであれば、おそらくそのまま続けてしまったはずのケースだ。テレビ放映では完璧を期した、とも言えるが、一方で、デッドのプロ意識を垣間見ることもできる。なぜかわが国ではグレイトフル・デッドはずぼらでちゃらんぽらんというイメージが横行しているようだが、それは無知ないし情報不足と先入観による単なる思い込みでしかない。
演奏はすばらしい。二つの〈Playing In The Band〉は甲乙つけ難いし、〈Truckin'〉から〈The Other One〉へのメドレーも面白い。後者だけで20分を超えるが、おそらくこれに遷移した時点ですでに持ち時間は切れていたはずで、そのことはバンド自身にもわかっていただろう。〈The Other One〉にどう決着をつけるか、どんな曲をつなげるか、定まらないことがかえって面白い結果を生んでいる。そしてかなり唐突な終り方は、この演奏をこの曲のユニークなヴァージョンにもしている。
《Europe ’72: The Complete Recordings》の中で、これだけは CD1枚に収まる、極端に短かい演奏ではあるが、映像だけでなく、実に興味深い音楽になっている。
次は3日後、デュッセルドルフ。
5. 1978 Rupp Arena, Lexington, KY
金曜日。第二部5曲目〈Stella Blue〉が《So Many Roads》で、第一部クローザー〈The Music Never Stopped〉が2012年の《30 Days Of Dead》でリリースされた。
DeadBase XI の Geoff Renaud のレポートによれば、第一部は水準以下のつまらないものになりそうだったのが、クローザーで切り替わり、第二部はすばらしく、就中〈Truckin'〉はデッド史上最高の演奏という。
6. 1984 Philadelphia Civic Center, Philadelphia, PA
土曜日。このヴェニュー3日連続の楽日。13.50ドル。開演7時半。第二部オープナー〈Help On The Way> Slipknot> Franklin's Tower〉が2021年の《30 Days Of Dead》でリリースされた。
7. 1986 Berkeley Community Theatre, Berkeley, CA
月曜日。このヴェニュー4本連続のランの2本目。レックス財団資金調達のためのベネフィット。開演7時半。(ゆ)
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