04月26日・火
 クーキー・マレンコが紹介しているジャズ・ヴァイオリニスト Mads Tolling はデンマーク出身、というとハラール・ハウゴーの同類で、ジャズに振れた感じか。デッドに関連があるというので検索すると、ボブ・ウィアがやっている The Wolf Brothers のサポート・グループ The Wolfpack という弦楽カルテットのメンバー。また、自分のバンド Mads Tolling & The Mads Men という60年代の楽曲を演奏する集団のレパートリィにもしているそうな。とりあえず、The Mads Men の今のところ唯一のアルバムの中古をアマゾンで注文。Blue Coasts のレコードも購入。
 川村さんから知らせてきた山田岳氏の新譜を注文。
 Dave's Picks, Vol. 42 発送通知。Dave's Picks, Vol. 01 アナログ盤も5月発売のはずだ。


##本日のグレイトフル・デッド
 04月26日には1968年から1984年まで8本のショウをしている。公式リリースは4本、うち完全版2本。

1. 1968 Electric Factory, Philadelphia, PA
 金曜日。このヴェニュー3日連続のランの初日。セット・リスト不明。

2. 1969, Electric Theater, Chicago, IL
 土曜日。このヴェニュー2日連続の2日目。5ドル。開場7時、閉場午前3時。2時間の一本勝負にアンコールを40分やる。
 アンコールの1曲目20分弱の〈Viola Lee Blues〉が《Fallout From The Phil Zone》で、オープナー〈Dupree's Diamond Blues〉から13曲目〈I Know It's A Sin〉まで、途中2曲を除いて計11曲が《Dick's Picks, Vol. 26》でリリースされた。
 アンコールの中でステージではバンドがスペーシィなジャムをしている間、〈What's Become Of The Baby〉のスタジオ録音が流された。《Aoxomoxoa》収録のこの曲は結局ライヴでは演奏されていない。この曲の再生のためにオープン・リールのテープ・デッキが使われたために、このショウの SBD のオープン・リール版ではアンコールが入っていない。

3. 1970 York Farm, Poynette, WI
 日曜日。Sound Storm Rock Revival と題された3日間のイベントの最終日で、デッドはヘッドライナー。出演はこの日のみ。セット・リスト不明。午後2時半から5時間演奏した由。2セットで第一部は2時間、第二部は1時間半、オープナーは〈Turn On Your Lovelight〉と Paul Gudel は DeadBase XI で書いている。出演者は多数で、Biff Rose, ケン・キージィ、イリノイ・スピード・プレス、Rotary Connection, Crow などが共演。
 Biff Rose は1937年ニューオーリンズ生まれのシンガー・ソング・ライター。初めハリウッドで漫才の台本を書き、後、音楽に転ずる。
 Rotary Connection は1966年シカゴで結成されたサイケデリック・ソウル・バンド。マディ・ウォーターズの《The Electric Mud》でバックバンドを勤めたことで知られる。

4. 1971 Fillmore East, New York, NY
 月曜日。このヴェニュー5日連続のランの2日目。ニュー・ライダーズ・オヴ・パープル・セイジ前座。第二部最初の3曲〈Sugar Magnolia; It Hurts Me Too; Beat It On Down The Line〉にデュアン・オールマンが参加。3.50ドル。開演8時。第一部3曲目〈Big Boss Man〉、8曲目〈Wharf Rat〉、第二部7曲目〈Mama Tried〉が《Skull & Roses》でリリースされた。
 NRPS のステージから、凝ったライト・ショウが演じられた、と G. M. が DeadBase XI で書いている。

5. 1972 Jahrhundert Halle, Frankfurt, West Germany
 水曜日。ヨーロッパ・ツアー9本目。14マルク。開演8時。第一部クローザー前の〈The Stranger〉が《The Golden Road》所収の《Europe '72》のボーナス・トラックで、オープナー〈Bertha〉から第一部8曲、第二部5曲が《Hundred Year Hall》でリリースされた後、《Europe '72: The Complete Recordings》で全体がリリースされた。
 デッドは MC で曲紹介をやらないから、ピグペンの〈The Stranger〉は《The Golden Road》で公式リリースされるまでタイトル不明で、AUD のテープでは〈Two Souls In Communion〉と呼ばれていた。
 全体の録音は CD4枚組計3:51:05で、ツアー中最長。デュッセルドルフとは異なり、この日は二部構成でクローザーに〈One More Saturday Night〉を演奏してアンコール無し。
 ツアーを毎日聴いていると、個々のメンバーの好不調の波もわかってくる。必ずしも全員がいつも絶好調をキープしているわけではない。このツアー、に限らずたいてい最も安定しているのはレシュとクロイツマン。2人の中で、クロイツマンはこのツアーを通じてすばらしく、「ほとんど神がかっていた」とレシュが言うくらいだ。この「神」は最近の強調用法ではなくて、本来の意味である。この後、まだ1974年秋までは単独で支えるわけだが、確かにこのツアーのドラミングは際立っている。
 逆に最も波が大きいのがガルシア。波が大きく出やすい位置でもあるし、また実際に様々な事情で波があったと推測する。このツアーでも日によって上下するが、下のレベルが高いのと、上のレベルが突出しているので、全体として好調を維持した。
 この日はガルシアのギターがとりわけ調子が良い。彼本来の、意表をつくフレーズがあふれ出てくる。ソロをとる度に面白いギターを聴かせ、しかもその度にキャラや語彙が異なる。オープナーの〈Bertha〉からして良く、〈Mr. Charlie〉〈Next Time You See Me〉〈Chinatown Shuffle〉〈Good Lovin'〉〈Turn On Your Lovelight〉などのピグペンの歌、〈Tennessee Jed〉のような自分の曲、〈China Cat Sunflower> I Know You Rider〉〈Playing In The Band〉〈Truckin'〉〈Goin' Down The Road Feeling Bad〉といった長くなる曲、どれもすばらしい。
 デッドの場合、ガルシアのギターの出来の良し悪しと全体の出来の質とは必ずしも連動しないのだが、それでもガルシアのギターが面白いと、それを核としたり、あるいは先頭に押したてたりしてゆく全体の集団即興もより面白くなる。
 〈Goin' Down The Road Feeling Bad〉についてデヴィッド・ガンズがライナーで書いている1件はその象徴ではある。その前の〈Turn On Your Lovelight〉の後半で、ガルシアが〈Goin' Down The Road Feeling Bad〉を速いテンポで始める。1度、バンドはそれにもう少しゆっくりと従おうとするのだが、そこで誰かが〈Not Fade Away〉のフレーズを始める。そこでわずかな間だが、バンドの半分は〈Goin' Down The Road Feeling Bad〉をやり、もう半分は〈Not Fade Away〉をやっている。テンポやハーモニーが変化して、一瞬、〈Goin' Down The Road Feeling Bad〉から〈And We Bid You Goodnight〉のリフが顔を出す。次の瞬間、全体が〈Not Fade Away〉に傾くのだが、そこでまた気が変わって結局〈Goin' Down The Road Feeling Bad〉へ突入する。言葉で書くとまどるっこしいが、聴いている分には混乱ではなくむしろ崖っ縁を渡ってゆくようにスリリングで美しい。
 もう一つ興味深いのは〈He's Gone〉だ。これが3回目の演奏で、テンポはまだ速い。それ以上に、ガルシアのソロがここだけ面白くない。というより、ほとんどソロを弾かない。歌は良いが、後のようにソロを展開しない。どのように演奏を組み立てるか、まだ模索しているように聞える。ギター・ソロの展開も、ただゼロからその場で湧きでてくるわけではないはずだ。どういう方向でやるか、メロディを崩すにしても、どのように崩すか、おそらく何度もステージでやりながら試行錯誤を重ねてゆく。その過程を目の前にしているのだ。
 〈Playing In The Band〉はもう少しアレンジが進んだ段階で、やる度に面白くなるステージにある。〈Tennessee Jed〉はさらに進んだ段階で、この曲としてはほぼ完成の域だ。ここでのガルシアのギターはこの日の中でもベストで、〈He's Gone〉と同じ人間が弾いているとも思えない。
 〈The Other One〉はまたまったく別の性格を備え、中心になるメンバーそのものが次々に変わってゆく。ビートが消え、ドラムそのものが消えたりもする。ロックに始まり、まったくのジャズになったり、フリーになったり、わけのわからないものになったり、何でもありになる。緊迫感がみなぎったり、ひどく抒情的になったり、暗い不安いっぱいになったり、ただひたすら美しくもなる。他の曲は一定のメロディ、ビートから外れないことを一応の決まりにしているが、ここではいくら外れてもかまわない、むしろ積極的に外れようとすることを決まりにしているようにみえる。〈Dark Star〉も似たところがあり、このツアーではほぼ交替にやっているが、〈The Other One〉はどちらかというと陰の側面、〈Dark Star〉は陽の側面と言えようか。この日の〈The Other One〉は35分超で、出来としてもツアー中でもベストと思える。その後にガルシアが〈Comes a Time〉をもってくるところがさらに良い。
 全体として、ツアー中のピークの一つで、演奏時間が長いのもその結果だろう。

6. 1977 Capitol Theatre, Passaic, NJ
 火曜日。8.50ドル。開演8時。このヴェニュー3日連続のランの中日。

7. 1983 The Spectrum, Philadelphia, PA
 火曜日。このヴェニュー2日連続の2日目。04-09以来の春のツアーの千秋楽。9.50ドル。開演7時。《Dave’s Picks, Vol. 39》で全体がリリースされた。

8. 1984 Providence Civic Center, Providence, RI
 木曜日。このヴェニュー2日連続の初日。11.50ドル。開演7時半。
 ガルシアの健康とドラッグ使用量の増加が演奏に影響を与えているのがそこここに現れたショウらしい。(ゆ)