04月29日・金
 終日、中野サンプラザで仕事のイベント。11時から18時まで、立ったり座ったりを繰返し、そのたびに同じことをしゃべるので、くたくたになる。イベントは楽しいが、老人にはそろそろ辛くなってきた。1700過ぎるとがくんと人が減る。1800過ぎ、撤収して出ようとすると外は吹き降りで、これでは誰も来ないはずだ。


##本日のグレイトフル・デッド
 04月29日には1967年から1989年まで6本のショウをしている。公式リリースは3本。うち完全版1本。

1. 1967 Earl Warren Showgrounds, Santa Barbara, CA
 土曜日。共演ドアーズ、UFO、Captain Speed。デッドは2セットやり、その間にドアーズが演奏した、という証言がある。
 UFO といえば英国のハードロック・バンドだが、あちらの結成は2年後なので、これは別のバンド、おそらくはロサンゼルス、サンタ・バーバラ周辺のローカル・バンドではないか。
 Captain Speed はサンタ・バーバラのローカル・バンドらしい。

2. 1971 Fillmore East, New York, NY
 木曜日。このヴェニュー5日連続のランの楽日。デッドにとってはここでの38本目、最後のショウ。ニュー・ライダーズ・オヴ・パープル・セイジ前座。
 第一部5曲目〈Me And My Uncle〉が《Skull & Roses》で、第一部の6曲、第二部の7曲、アンコール3曲のうち後の2曲が《Ladies & Gentlemen…》でリリースされた。時間にして半分強。
 この年のベスト・ショウと言われる。こういう不完全な形でリリースされたショウを救済して完全にするシリーズを検討してもらいたいものだ。

3. 1972 Musikhalle, Hamburg, West Germany
 土曜日。10マルク。開演8時。《Europe ’72: The Complete Recordings》で全体がリリースされた。
 フランクフルトではいわば目一杯カンバスを広げて、どこまでいけるか試してみたとすれば、ここではむしろ的を絞って、どこまで深く掘れるか試してみたと言えるかもしれない。CD ではこのツアーでは久しぶりに3時間を切っている。しかし、開巻劈頭いきなり10分近い〈Playing In The Band〉で始めたのは第二部への布石ないしその予兆ではある。もっともその後の第一部はこのツアーの常道に沿った曲が並び、〈Casey Jones〉をクローザーにして、その前に〈Good Lovin'〉がこのツアーでの定位置ではあるが、オープナー〈Playing In The Band〉と好一対をなしている。
 この日際立つのはピグペンで、とりわけ第一部の〈Big Boss Man〉〈Chinatown Shuffle〉、第二部の〈Next Time You See Me〉、そして、もちろん〈Good Lovin'〉での歌唱は、ライナーでスティーヴ・シルバーマンの言う通り、デッド唯一のフロントマンとしての存在感たっぷりだ。今回、あらためてツアーを通して聴いてみて、ピグペンの存在の大きさが後半にゆくほど大きくなってゆくのに感嘆した。一定の間隔で出てくるかれのリード・ヴォーカルが全体のアクセントとなり、ショウに大きなリズムを与え、芯を通している。第二部の集団即興、ジャムではオルガンがクラシックのバロックでいう通奏低音的な役割を担ってゆく一方で、ガルシアのギターやレシュのベース、あるいはクロイツマンのドラムスに積極的にからむ。
 ガルシアは波が少し引いた感じで、ギターの閃きが冴える場面は少なく、本人としては一番やりたいという他人とりわけピグペンへの伴奏に力が入っている。第二部〈Dark Star〉の長いジャムでようやく目が覚めたようで、その次の〈Sugar Magnolia〉、そしてクローザーの〈One More Saturday Night〉、アンコールの〈Uncle John's Band〉でのギターは、ソロも、歌の裏の伴奏もすばらしい。
 その〈Dark Star> Sugar Magnolia> Caution (Do Not Stop On Tracks)〉の1時間は道なき未踏の地を手探り足探りで進んでゆく。目的地があるわけではなく、この先に何かあるか、行ってみようがデッドの常だから、不安な不協和音に満ちながらも底抜けに楽天的でもある。最悪、何も無かったとしても、そこまで行くプロセス、途中の景観、体験は面白いし、何も無かったということがわかったのも収獲なのだ。困ることがあるとすれば、解決が無い、これで終り、ということがない。いつも宙ぶらりんのまま、次の曲に移るか、あるいはショウが終ることだろう。けれど、ショウはまた次がある。
 このツアーでは〈Dark Star〉と〈The Other One〉を第二部のビッグ・ジャムとしてほぼ交互に演奏している。〈Dark Star〉はどちらかというと「ソフト」なジャムになる。音量も小さめ、どこかで聞いたことのあるフレーズがところどころ顔を出す。ただ、この日はキースがかなり実験的な音を出す。ほとんど電子ピアノのような響きで、プリペアドではないだろうが、何か仕掛けをしているのか。このツアーでのキース・ガチョーは後の時期とは別人の観がある。
 〈Caution (Do Not Stop On Tracks)〉は、生で体験するのと録音で聴くのと、最も差が大きな曲ではある。 1度でも生で体験したかったと最も切実に思う。これは明らかにレシュの好みでもあって、ここでもレシュがリードして始まるし、基本はフォービート。無秩序の中に秩序を探る、あるいは無秩序と秩序の境界を綱渡りする試み。結論などはむろん出るはずもないが、ケリをつけるのはベースだ。
 次は4日置いてパリ、オランピアで2日間。

1975 Ace’s Studio, Mill Valley, CA
 これはショウではなく、スタジオ・リハーサルで、2014年の《30 Days Of Dead》でそのうちの1曲が〈EAC jam〉としてリリースされた。

4. 1977 Palladium, New York, NY
 金曜日。このヴェニュー5本連続の初日。8.50ドル。開演8時。
 第二部2曲目〈Sugaree〉、6・7曲目〈Scarlet Begonias> Goin' Down The Road Feelin' Bad〉が《Download Series, Vol. 01》で、9曲目〈The Wheel〉が2012年の《30 Days Of Dead》でリリースされた。
 《Download Series, Vol. 01》の3曲はこのショウでもハイライトと言われる。

5. 1980 Fox Theatre, Atlanta, GA
 火曜日。良いショウの由。

6. 1984 Nassau Veterans Memorial Coliseum, Uniondale, NY
 日曜日。このヴェニュー2日連続の初日。13.50ドル。開演7時。
 〈Terrapin Station〉は20分超で、デッド史上最長らしい。

7. 1989 Irvine Meadows Amphitheatre, Laguna Hills, CA
 土曜日。このヴェニュー3日連続のランの中日。開演7時半。(ゆ)