05月17日・月
アイルランドのシンガー Sean Garvey が今月6日に亡くなったそうです。1952年ケリィ州 Cahersiveen 生まれ。享年69歳。60代で亡くなると若いと思ってしまう今日この頃ではあります。
ガーヴィーは若い頃から歌いはじめていますが、本格的に歌うようになったのは教師の資格をとりにダブリンに出てきてからで、ひと頃はパディ・キーナンと The Pavees というバンドもやっていたそうです。後、コネマラのスピッダルに住み、コネマラのシャン・ノース・シンガーたちの影響を受け、アイルランド語でも歌いはじめます。
1990年代後半以降、ダブリンに住み、The Cobblestone でジョニィ・モイニハンやイリン・パイパーの Nollaig Mac Carthaigh と定期的にセッションしていました。2006年にケリィにもどり、TG4 の Gradam Ceoil singer of the year を受賞しました。
ぼくがこの人を知ったのは1998年に出たファースト・アルバム《ON dTALAMH AMACH (Out Of The Ground)》でした。2003年にセカンド《The Bonny Bunch of Roses》を出していますが、未聴。昔『ユリイカ』に書いた「アイルランド伝統歌の二十枚」にファーストをとりあげていたので、追悼の意味を込めて再録します。
文中に出てくる、アーチー・フィッシャー、フランク・ハートやティム・デネヒィについては、もう少し余裕ができてから書いてみたいところです。
なお、このファーストは本人がヴォーカルの他、フルート、ホィッスル、バンジョー、マウス・オルガン、ギターを担当して、まったくの独りで作っています。
Sean Garvey ON dTALAMH AMACH (Out of the Ground); Harry Stottle HS 010, 1998
フランク・ハートの友人でもあり、またしてもケリィ出身のこのシンガーもテクノロジーの恩恵で姿を現した秘宝の一人。写真からすればおそらくは現在五十代後半から六十代だろう。声といいギター・スタイルといい、スコットランドの名シンガー、アーチー・フィッシャーを想わせる人だが、歌からたちのぼる味わいもまた共通のものがある。ティム・デネヒィ同様、ケリィの伝統にしっかりと足をつけて揺るがない。生涯の大部分を野外で過ごしたであろう風雪に鍛えられた風貌にふさわしい声は、一方でなまなかなことでは崩れないねばり強さを備え、一語一語土に植付けるようにうたう。タイトル通り、土に根ざした声が土に根を張る歌をうたう。やがてその声が帰るであろう土はあくまでもアイルランドの土だが、また地球の土でもあり、今これを聞くものの足元の土に繋がる。この邦の伝統音楽を聴きつづけてきたことを何者かに感謝したくなる瞬間だ。
##本日のグレイトフル・デッド
05月17日には1968年から1981年まで6本のショウをしている。公式リリースは3本、うち完全版2本。
1. 1968 Shrine Exhibition Hall, Los Angeles, CA
金曜日。このヴェニュー2日連続の初日。セット・リスト不明。
2. 1970 Fairfield University, Fairfield, CT
日曜日。このショウは実際には行われなかった、という説もある。この1週間前にドアーズがここでコンサートをしており、それによって大学当局は「望ましからざる」ことを避けるため、この公演をキャンセルした、という。詳細不明。
3. 1974 P.N.E. Coliseum, Vancouver, BC, Canada
金曜日。コマンダー・コディ&ヒズ・ロスト・プラネット・エアメン前座。
第二部4曲目〈Money Money〉が《Beyond Description》所収の《From The Mars Hotel》のボーナス・トラックで、続く5・6曲目〈China Cat Sunflower> I Know You Rider〉が2011年の《30 Days Of Dead》でリリースされた後、《Pacific Northwest '73–'74: The Complete Recordings》で全体がリリースされた。
第二部4曲目で〈Money Money〉がデビュー。バーロゥ&ウィアの曲。この後、19日、21日と3回だけ演奏。スタジオ盤は《From The Mars Hotel》収録。3回しか演奏されなかったのに、そのすべてが《Pacific Northwest '73–'74: The Complete Recordings》でリリースされた。
ここでの演奏を聴くとドナの存在が前提の曲のように思える。
4. 1977 University Of Alabama, Tuscaloosa, AL
火曜日。
第一部6曲目〈Jack-A-Roe〉が《Fallout From The Phil Zone》で、10曲目〈High Time〉が2012年の《30 Days Of Dead》でリリースされた後、《May 1977》で全体がリリースされた。
この春のツアーのどのショウでは余裕がある。テンポがことさら遅いとも思えないが、ほんのわずかゆっくりで、ためにアップテンポの曲でも歌にも演奏にも無闇に先を急がないゆったりしたところがって、それがまた音楽を豊饒にしている。このショウはその余裕が他よりも大きいように感じる。アンコールの〈Sugar Magnolia〉ではその感覚がより強く、この曲そのものだけでなく、ショウ全体の味わいも深くしている。
この時期全体に言えることだが、ガルシアのギターがほんとうにすばらしい。ソロも伴奏も実に充実している。この日はとりわけ2曲目の〈Mississippi Half-Step Uptown Toodeloo〉、5曲目〈Jack Straw〉、7曲目〈Looks Like Rain〉、そして第一部クローザーの〈Scarlet Begonias> Fire On The Mountain〉特に前者、第二部〈Estimated Prophet〉。第二部2曲目〈Bertha〉のような、いつもはソロを展開しない曲でも見事なギターを聴かせる。
これまたいつものことだが、デッドの場合、こういうガルシアのソロが、それだけ突出することはほとんど無い。バンド全体の演奏の一部で、だからこそ、ガルシアのソロが面白いと全体が面白くなる。全員がそれぞれに冴えていて、それが一つにまとまっている。1977年春のデッドは実に幸せそうで、それを聴くこちらも幸せになる。
大休止から復帰後、特にこの1977年以後のデッドのショウは大休止以前よりもコンパクトになり、2時間半が普通になるが、このショウはその中では珍しく CD で3時間を超えている。やっていて気持ちが良かったのだろう。ハイライトは第一部クローザーの〈Scarlet Begonias> Fire On The Mountain〉で、どちらも13分、合計で26分超。ベスト・ヴァージョンの一つ。〈Looks Like Rain〉もベスト・ヴァージョンと言ってよく、どちらかというと第一部の方が充実している。
次は1日置いて、アトランタのフォックス・シアター。
5. 1978 Uptown Theatre, Chicago, IL
水曜日。9.50ドル。開演8時。このヴェニュー2日連続の2日目。
第二部2曲目〈Friend Of The Devil〉が2016年の《30 Days Of Dead》でリリースされた。
アンコール〈Werewolves Of London〉がことさらに良かった由。
6. 1981 Onondaga Auditorium, Syracuse, NY
日曜日。開演7時。(ゆ)
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