06月19日・日
 山村修の本をあらためて読んでいる。この人は本当に惜しかった。〈狐〉名義による書評はもちろんだが、それ以外のエッセイがすばらしい。『遅読のすすめ』には大笑いしながら、膝を叩き、唸り、そして、励まされた。そうだ、本はゆっくり読んでいいのだ。いや、ゆっくり読むべきだ。数ではない。著者が何年も、ときには何十年もかけてようやくできた本を、そんなにあわてて読みいそぐのはむしろ失礼ではないか。相応の敬意を払い、その本にふさわしいテンポで読むべし。たくさん読みたいという欲求は否定しないが、だからといって無闇に急ぐのも本末転倒だ。

 それにしても、初めの方の『猫』の引用にはやられた。腹を抱えて、げらげら笑ってしまう。こりゃあ、やっぱりまた読まなくちゃ。

 『気晴らしの発見』がまた凄い。大宅壮一のこんな文章を見つけてくるのには脱帽するしかない。ベンヤミンは気晴らしを芸術の対極においたが、ここでは気晴らしが芸術の域に達している。ベンヤミンも気晴らしのこういう位相に気づいていたら、自殺することもなかったんじゃないか。

 ひいおばあさん同士が姉妹という中野翠が、青空を見る人というのがまたいい。あたしは真青な空よりも雲が浮かんでいる方が好きだが、空を見る気分はわかるつもりだ。近頃周りを見ていると、どうも皆さんうつむいてばかりいるようでもある。たまには顔を上げて、空を見てはいかが。気は勝手に晴れてくれない。晴れるように工夫をして、きっかけを作る必要はある。『鬼平』にも出てくるが、まず笑ってみる。絶体絶命の状況で笑うことで余裕を作る。こういうところ、やはり池波はわかってるなあ、と感心する。戦争体験だろうか。


%本日のグレイトフル・デッド
 06月19日には1968年から1995年まで10本のショウをしている。公式リリースは2本、うち完全版1本。

01. 1968 Carousel Ballroom, Francisco, CA
 水曜日。前売1.50ドル、当日2ドル。開演7時半。共演リッチー・ヘヴンス。Blackman's Free Store のためのベネフィット・イベント。ポスターには "Gratefull Dead" とある。
 セット・リストとして、前半〈Turn On Your Lovelight〉で始まり、〈Not Fade Away〉からまた TOYL に戻るもの、後半、〈Playing In The Band〉から〈Dark Star> The Other One〉をテーマとしたジャムになるもの、が残っている。ここから NFA と PITB の初演とされている。
 〈Not Fade Away〉はこれ以前に、《Rare Cuts & Oddities 1966》に収録された、1966年初めの日付場所不明の録音がある。これも含め1995-07-05まで計565回演奏。演奏回数順では5位。〈Sugar Magnolia〉より36回少なく、〈China Cat Sunflower〉よりも7回多い。スタジオ盤収録無し。アナログ時代のライヴ盤にも収録は無い。クレジットは Norman Petty and Charles Hardin。Hardin はバディ・ホリーが作曲者として用いた名前。Petty はホリーのマネージャーでおそらく名義のみ。The Crickets の1957年のシングルはヒットせず。ローリング・ストーンズが1964年に出したシングルがヒットした。
 当初はピグペンの持ち歌で、後にウィアが受け継ぐ。クローザーになることも多く、その場合、最後のコーラスに聴衆が声と手拍子を合わせ、バンドがステージから去っても延々と続けて、バンドを呼びもどす、というケースがよくある。
 〈Playing In The Band〉はハンター作詞、ウィア作曲。1995-07-05まで計610回演奏。演奏回数順では2位。〈Me and My Uncle〉よりも14回少なく、〈The Other One〉〈Sugar Magnolia〉よりも9回多い。バンドのオリジナル曲としては1位で、文句なくデッドのレパートリィを代表する曲。スタジオ盤はウィアのソロ・ファースト《Ace》収録。ただし、こちらでは歌詞が若干変えている。ハンターが書いた通りのヴァージョンとしては《Skull & Roses》収録のものがある。デッドとしてのスタジオ盤には収録無し。
 デッドの曲は演奏が重なるにしたがって姿を変えてゆくが、この曲はその中でも最も大きく変わったものだろう。当初は5分以内で終る歌だったものが、1972年のヨーロッパ・ツアーの間に中間の集団即興、ジャムの部分が膨らみだし、1973年から、74年頃には30分に及ぶモンスターになる。さらに、途中で他の曲が挿入されるようになり、挿入される曲が複数になって、第二部全体あるいはショウ全体をはさむ。ついにはコーダに復帰するのが複数のショウにまたがるまでになる(とうとう復帰しなかったこともある)。デッドの定番曲の録音を年代順に聴いてゆくのはたいへんに愉しいが、この曲の聴き比べはとりわけ愉しい。
 ウィアの曲らしく、メロディもユニークで、アメリカというよりはイングランドの曲に聞える。フェアポート・コンヴェンションあたりがやってもおかしくない。

02. 1976 Capitol Theatre, Passaic, NJ
 土曜日。このヴェニュー3日連続のランの楽日。8.50ドル。開演7時半。
 全体が《June 1976》でリリースされた。

03. 1980 West High Auditorium, Anchorage, AK
 木曜日。このヴェニュー3日連続のランの初日。開演7時半。アラスカ州での公演はこの時のみ。聴衆の半分は本土からやってきたデッドヘッド。当時アラスカでは個人的にマリファナを栽培することは合法だったので、自家製ポットでもてなすモーテルのおやじもいたそうな。
 ショウは見事なもの。

04. 1987 Greek Theatre, University of California, Berkeley, CA
 金曜日。このヴェニュー3日連続のランの初日。開演7時。
 そうそう、〈Samson & Delilah〉のコーラスで "Tear this old building down" の "down" をガルシアが「ダウゥゥゥゥン」と伸ばす時は調子が良い証拠。

05. 1988 Alpine Valley Music Theatre, East Troy, WI
 日曜日。このヴェニュー4本連続のランの初日。開演7時。
 第二部オープナーで〈Foolish Heart〉がデビュー。ハンター&ガルシアの曲。1995-06-27まで84回演奏。スタジオ版は《Built To Last》収録。
 熱く、乾燥した日で、駐車場が舗装されていないので、舞い上がった土埃が会場の中に飛んできた。人呼んで「ダスト・ボウル・ショウ」。1時間遅れで始まり、第一部は短かかったが、第二部はすばらしい。

06. 1989 Shoreline Amphitheatre, Mountain View, CA
 月曜日。このヴェニュー3日連続のランの中日。開演7時。
 第一部クローザー〈Bird Song〉、第二部オープナー〈China Cat Sunflower> I Know You Rider〉を初め、非常に良いショウの由。

07. 1991 Pine Knob Music Theatre, Clarkston, MI
 水曜日。このヴェニュー2日連続の初日。23.50ドル。開演7時半。
 第二部2・3曲目〈Scarlet Begonias> Fire On The Mountain〉、Space 後のクローザーを含む3曲の計5曲が《Download Series, Vol. 11》でリリースされた。

08. 1993 Soldier Field, Chicago, IL
 土曜日。このヴェニュー2日連続の2日目。スティング前座。開演6時。
 非常に良いショウの由。

09. 1994 Autzen Stadium, University of Oregon, Eugene, OR
 日曜日。このヴェニュー3日連続のランの楽日。28.50ドル。開演2時。Cracker 前座。第一部4曲目〈El Passo〉でウィアがアコースティック・ギター。
 この時期でもこれが最初のショウで人生が変わったという人がいる。

10. 1995 Giants Stadium, East Rutherford, NJ
 月曜日。33.50ドル。開演7時。このヴェニュー2日連続の2日目。ボブ・ディラン前座。(ゆ)