07月03日・日
 ITMA で "From The Bridge: A View of Irish traditional music in New York" というタイトルでニューヨークのアイリッシュ・ミュージックの足跡をたどるデジタル展示をしている。



 録音のある時代が対象で、19世紀末から現在にいたるほぼ100年間を五つの時期に分けている。

Early Years: 1870s-1900s
Recording Age 1920s
Post WWII Era
1970s-1990s Revival
Present Day

 それぞれにキーパースンの写真とテキストによる紹介と代表的録音を掲げる。テキストは英語だけど、ごくやさしい英語だし、興味を持って読めば、だいたいのところはわかるだろう。最低でも Google 翻訳にかければ、そんなにかけ離れた翻訳にはならないはずだ。

 それに他では見たこともない写真や、聞いたことのない音源もあって、突込んでいると、思わず時間が経つのも忘れる。あたしなどの知らない人たちもたくさんいて、興味は尽きない。

 個人的には最初の2つの章が一番面白い。この時期の音源はどれもこれも個性的だ。録音による伝統の継承がほとんど無いからだ。録音による伝統の継承の、その源になった音源だ。

 ニューヨークのアイリッシュ・ミュージックは、アイルランド国外での伝統音楽の継承と普及の一つのモデル・ケースにも見える。ここは19世紀後半からアイルランド移民の街になり、伝統音楽もそのコミュニティで栄える。1970年代以降、アイリッシュ・コミュニティの外から、アイリッシュ・ミュージックに関わる人たちが増えてくる。今では、マンハタンの一角に並んでいたアイリッシュ・パブは皆消えたが、ニューヨーク産のアイリッシュ・ミュージックが消滅したわけではない。ニューヨークは、アイリッシュ・ミュージックの伝統の中にユニークな位置を占めているのが、この展示を見、聞くとよくわかる。


%本日のグレイトフル・デッド
 07月03日には1966年から1994年まで7本のショウをしている。公式リリースは6本、うち完全版が3本。

1. 1966 Fillmore Auditorium, San Francisco, CA
 日曜日。"Independence Boll" と言う3日間のイベントの最終日。Love と Group B が共演。一本勝負。
 14曲目〈Cream Puff War〉が2013年と2014年の《30 Days Of Dead》でリリースされた後、《30 Trips Around The Sun》の1本として全体がリリースされた。
 この日が初演とされる曲が4曲。
 7曲目〈Big Boss Man〉、9曲目〈Keep Rolling By〉、15曲目〈Don't Mess Up A Good Thing〉、17曲目〈Gangster Of Love〉。
 〈Big Boss Man〉は1995年07月06日まで計74回演奏。大半は1969年から71年にかけて演奏された。当初はピグペンの持ち歌。元歌は Jimmy Reed の1960年のシングル。クレジットは Al Smith & Luther Dixon。
 〈Keep Rolling By〉は伝統歌。記録に残っているこの曲の演奏はこの日だけ。《The Birth Of The Dead》に疑問符付きでこの年07月17日のものとされる録音が収録されているが、17日のものとされているセットリストには無い。
 〈Don't Mess Up A Good Thing〉もこの日の演奏が最初で最後。同じ録音が《Rare Cuts & Oddities 1966》にも収録されている。原曲は Oliver Sain の作詞作曲で、Fontella Bass and Bobby McClure 名義の1965年のシングル。この2人は当時 Oliver Sain Revue のメンバー。
 〈Gangster Of Love〉もこの日のみの演奏。原曲はジョニー・ギター・ワトソンの作詞作曲で、1957年のシングル。
 Group B というバンドは不明。

2. 1969 Reed's Ranch, Colorado Springs, CO
 木曜日。4ドル。開演8時半。一本勝負。共演アリス・クーパー、Zephyr。
 クローザー前の〈He Was A Friend Of Mine〉が2011年の、7曲目〈Casey Jones〉が2020年の、各々《30 Days Of Dead》でリリースされた。
 Zephyr は1969年コロラド州ボールダーで結成された5人組。ギタリスト、トミー・ボーリンの最初のバンドとして知られる。
 アリス・クーパーとデッドが同じステージに立っていたのも時代を感じさせる。この頃のロックは何でもありで、すべて同列だった。

3. 1970 McMahon Stadium, Calgary, AB, Canada
 金曜日。Trans Continental Pop Festival の一環。
 この日は、第一部アコースティック・セット、第二部ニュー・ライダーズ・オヴ・パープル・セイジ、第三部エレクトリック・セットという構成で、NRPS にはガルシア、ウィア、レシュが入っていた、という証言がある。
 ここでは2日間コンサートがあり、翌日がジャニス・ジョプリンとザ・バンドだった。

4. 1978 St. Paul Civic Center Arena, St. Paul, MN
 月曜日。
 全体が《July 1978: The Complete Recordings》でリリースされた。

5. 1984 Starlight Theatre, Kansas City, MO
 火曜日。13.50ドル。開演8時。
 第二部オープナーの3曲〈Scarlet Begonias> Touch of Grey> Fire On The Mountain〉が2014年と2016年の《30 Days Of Dead》でリリースされた。
 ダブってリリースしたくなるのもわかる演奏だけど、全体を出しておくれ。

6. 1988 Oxford Plains Speedway, Oxford, ME
 日曜日。このヴェニュー2日連続の2日目。開演5時。リトル・フィート前座。
 全体が《30 Trips Around The Sun》の1本としてリリースされた。
 第一部〈Bird Song〉の演奏中、パラプレーンないしエンジン付きパラグライダーが飛んできて、会場の上を舞った。やむなくバンドはジャムを切り上げて、セットを仕舞いにした。
 DeadBase XI の John W. Scott によれば、終演後、会場周辺で花火に点火する者が多数いて、中には相当に危険なものもあったそうな。

7. 1994 Shoreline Amphitheatre, Mountain View, CA
 日曜日。このヴェニュー3日連続のランの楽日。26.50ドル。開演5時。
 第二部2・3曲目〈Eyes of the World> Fire On The Mountain〉が2020年の《30 Days Of Dead》でリリースされた。
 上記〈Eyes Of The World〉からガルシアが〈Fire〉のリフを始めたとき、ちょうど陽が山の端に沈んでゆくところだった。バンドがそれに合わせた。
 〈Fire On The Mountain〉は単独での演奏が12回ある。その最後。
 このメドレーはデッドとして一級の演奏で、ガルシアは声を絞りだすように歌うが、出すべきところはきちんと出ている。ギターも細かい音を連ねて面白く、バンドもこれによく反応している。後者への移行は、曲の行方が見えるのを待っているとこれが降りてきたけしき。これを聴いても、全体も良いとわかる。(ゆ)