07月13日・水
昼過ぎ、遠くでみんみん蝉が聞える。昨年も初のみんみんは07月13日だった。
%本日のグレイトフル・デッド
07月13日には1967年から1994年まで8本のショウをしている。公式リリースは2本、うち完全版1本。
1. 1967 P.N.E. Agradome, Vancouver, BC
木曜日。2.50(カナダ)ドル。ポスターによれば6時と12時の2回のショウらしい。3日間、ヴァークーヴァーでのショウ。後の2日はヴェニューが変わる。Daily Flash、Love-In 前座。続けてシアトル、ポートランドと回る。7月末から8月初めにかけて、今度はカナダ東部に行き、トロントで1週間レジデンス公演をした後、モントリオールに行く。
Daily Flash は1965年シアトルで結成され、1968年まで活動した四人組バンド。サンフランシスコ・サウンドの先駆をなすと言われる。後、2002年再編。
Love-In は不明。
2. 1968 Kings Beach Bowl, North Shore, Lake Tahoe, CA
土曜日。このヴェニュー2日連続の2日目。The Working Class 前座。セット・リスト不明。
0. 1973 History Of Grateful Dead, Vol. 1 release
この日《History Of Grateful Dead, Vol. 1》がリリースされた。4作目のライヴ盤。ワーナーからの最後のリリース。1970年02月13日、14日のフィルモア・イーストでの演奏からアコースティック、エレクトリック合わせて7曲を収める。どちらも早番と遅番の2回ショウをしているが、どちらも遅番ショウからの選曲。録音とセレクション、プロデュースはアウズレィ・スタンリィ。ために "Bear's Choice" の別名で呼ばれる。"Vol. 2" 以降は出なかった。
A面がアコースティック、B面がエレクトリック・セット。だが、実際のショウは必ずしもこの順番ではなく、02月13日はこの中では〈Smokestack Lightning〉が一番早く、この後アコースティック・セットとなり、〈Katie Mae〉の次の〈Dark Star〉からエレクトリックにもどる。14日もエレクトリック、アコースティック、エレクトリックの順番。
2003年の拡大版 CD で02月13日からもう1曲と、02月05日、08日のフィルモア・ウェストでの演奏3曲が加えられた。
02月13日と14日のショウは各々後半または第二部が《Dick's Picks, Vol. 4》でリリースされた。両日とも遅番ショウ後半のエレクトリック・セットを収める。
リリースは遅いが、収録された演奏は当時は《Live/Dead》と《Skull & Roses》の間を埋め、つなぐ形だった。また、アコースティック・セットのライヴ録音のリリースも、《Reckoning》以前にはこれだけ。
加えて、この年03月08日に死んだピグペンへのトリビュートでもある。
トラック・リスト。
Side one
1. Katie Mae {Lightnin' Hopkins} 1970-02-13 4:46
2. Dark Hollow {Bill Browning} 1970-02-14 3:30
3. I've Been All Around This World {Trad.} 1970-02-14 4:40
4. Wake Up Little Susie {Felice & Boudleaux Bryant} 1970-02-13 2:40
5. Black Peter {Jerry Garcia Robert Hunter} 1970-02-13 7:20
Side two
1. Smokestack Lightning {Howlin' Wolf} 1970-02-13 18:00
2. Hard to Handle {Al Bell Allen Jones & Otis Redding} 1970-02-14 6:14
聴き直してあらためてベアの耳の良さに感服する。とりわけA面の声と生楽器の音。耳が良いというのは、単に細かい音の違いが聴きとれるとか、耳がそれほど良くない人間には聞えない音が聞えるとかいうだけではない。それは前提だが、それとともに、音楽の肝、どこにフォーカスして録音するべきかを適確に把握している。そしてそこへ向けて、機器を調整し、録音環境を整える能力が高い。
あたしはここで唯一のオリジナル〈Black Peter〉にダントツに惹かれる。ガルシアの歌唱、ギター・ソロ、ウィアのサポート・ギターが作りだす世界はそれだけで充足している。必要にして十分だ。本来このように演奏され、歌われるために作られたとさえ思える。この歌のベストの演奏と断言する。もちろん、ベストの演奏は一つだけではないにしてもだ。
3. 1976 Orpheum Theatre, San Francisco, CA
火曜日。このヴェニュー6本連続のランの2日目。6.50ドル。開演8時。
第一部5曲目〈Crazy Fingers〉が2015年の《30 Days Of Dead》でリリースされた。
ゆったりとしたテンポでガルシアがやや頼りなげに歌い、ドナのコーラスがこれを支える。間奏のガルシアのギターもゆったりとした展開で、ほとんどジャズだが、ジャズのギタリストはこういうすっきりと突き抜けた音はなかなか出さない。本体も良いのだが、一通り曲が終ってからそのまま移行するジャムがすばらしい。初め細かいランニグ・ビートにのるが、やがてスパニッシュ・ジャムになり、さらに核のない、しかし芯の通った、全員が対等に絡みあう形になる。こういう領域に踏みこむのを、バンドも目指し、聴き手は待っている。
4. 1981 McNichols Arena, Denver, CO
月曜日。このヴェニュー2日連続の初日。13.75ドル。開演7時半。
5. 1984 Greek Theatre, University of California, Berkeley, CA
金曜日。このヴェニュー3日連続のランの初日。14ドル。開演7時。
何よりもアンコールに〈Dark Star〉をやったことで記憶される。
6. 1985 Ventura County Fairgrounds, Ventura, CA
土曜日。このヴェニュー2日連続の初日。15ドル、開場正午、開演2時。
オープナーが〈One More Saturday Night> Fire on the Mountain〉で、第一部のクローザーが〈Bird Song> The Music Never Stopped〉というセット・リストにたがわぬ出来の由。
7. 1989 Robert F. Kennedy Stadium, Washington, D.C.
木曜日。このヴェニュー2日連続の2日目。21ドル。開場3時、開演5時。ブルース・ホーンスビィ&ザ・レンジ前座。第一部4・5曲目〈Tennessee Jed; Stuck Inside Of Mobile With The Memphis Blues Again〉にホーンスビィがアコーディオンで参加。
全体が《Robert F. Kennedy Stadium, Washington, D.C., July 12 & 13, 1989》でリリースされた。それはいいのだが、このタイトルは何とかならなかったのか。
第二部6曲目〈I Will Take You Home〉の時、スクリーンにミドランドの鍵盤のクローズアップが映し出された。そこには娘たちの写真が飾ってあった。
ショウの間、ほぼ通して雨が降っていた。
8. 1994 Franklin County Airport, Highgate, VT
水曜日。32ドル。開演6時。雨天決行。08月04日まで、15本の夏のツアー後半のレグのスタート。ユッスー・ンドール前座。レシュがそこに参加したらしい。地元ヴァーモント州は緑なす山の州 the Green Mountain State と呼ばれるので、ガルシアが緑色のズボンを履いていた。
John W. Scott は DeadBase XI にこのショウがいかに楽しかったか、長々と書いている。8歳を先頭に3人の子どもたち、3人目はまだ乳飲み子を初めてデッドのショウに連れて行き、やはり子どもたちを連れてきた他のデッドヘッドの家族たちと、フィールドの一角で過ごした。まるで音楽つきのピクニックである。デッドの演奏そのものはあまり良いものではなかったが、子どもたちは十分に楽しみ、またデッドのショウに行きたいと言った。(ゆ)

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