07月26日・火
ワシーリー・グロスマン『万物は流転する』をみすずが新装復刊したので購入。来月には『人生と運命』も新装復刊されるので、今度はちゃんと買って読む予定。
NYRB が出している一連のグロスマンの英訳には Life And Fate も Everything Flows… もちゃんとある。その他に、『人生と運命』の前日譚になる Stalinglad と、時間的にはさらにその前の時期を描いた The People Immortal が出ている。
Stalinglad は1952年にソ連でロシア語で刊行された同名の書に、未刊行原稿を加えたものらしい。頁数は1,000超えで、Life And Fate よりも厚い。邦訳はされそうにないから、邦訳をひと通り読んでから挑戦してみるか。
The People Immortal は、どんな手段を使ってでもドイツ軍の前進を止めろと命じられたある部隊の顛末だそうだ。英語版 Wikipedia によれば1943年にモスクワでこれの英訳が出ている。原書はもっと前なのか。
NYRB版では The Road としてまとめられている中短篇、報道記事、エッセイなどはみすずの2冊の作品集とほぼ重なるようだ。みすずでは後期の『システィーナの聖母』に一部が入っているアルメニアの旅行記が、An Armenian Sketchbook として1冊になっている。
とまれ、まずは『人生と運命』を読むべし。
%本日のグレイトフル・デッド
07月26日には1972年から1994年まで、3本のショウをしている。公式リリースは完全版が1本。
1. 1972 Paramount Theatre, Portland, OR
水曜日。このヴェニュー2日連続の2日目。
DeadBase XI の John W. Scott によれば、この年にしては平均的な出来、ということはかなり水準の高いショウになる。3時間半超の長さも、この年では珍しくない。そこには30分を超える〈Dark Star〉も含まれる。
翌日から2週間夏休みで、08月12日にサクラメントで単発のショウを行い、20日から10月02日までの長い秋のツアーに出る。春のヨーロッパ・ツアーの後で休んでいるので、この年は11月末までほとんど休み無し。
0. 1976 Steal Your Face release
1976年のこの日《Steal Your Face》がリリースされた。
バンド5作目のライヴ・アルバム。Grateful Dead Records 最後のリリース。アナログ2枚組に収められた14曲は1974年10月16〜20日のウィンターランドでの連続公演の録音から選ばれた。実際には16日からの収録は無い。各日からの収録曲は以下の通り。
1974-10-17
Casey Jones
It Must Have Been the Roses
1974-10-18
Ship of Fools
Beat It On Down the Line
Sugaree
1974-10-19
Mississippi Half-Step Uptown Toodeloo
Black Throated Wind
U.S. Blues
Big River
El Paso
1974-10-20
Promised Land
Cold Rain and Snow
Around and Around
Stella Blue
後に同じ公演からの録音としてリリースされた《The Grateful Dead Movie Sound Track》との重複はこのうち17日の〈Casey Jones〉1曲のみ。ただし、GDMST 収録の版は短縮されている。
アルバムのトラック・リスト。当時のロックのライヴ・アルバムの常で、全体が1本のショウとして聴けるように並べられている。
Side one
1. The Promised Land {Chuck Berry} 3:15 1974-10-20
2. Cold Rain And Snow {Trad.} 5:35 1974-10-20
3. Around And Around {Berry} 5:07 1974-10-20
4. Stella Blue {Robert Hunter & Jerry Garcia} 8:48 1974-10-20
Side two
5. Mississippi Half-Step Uptown Toodeloo {Hunter, Garcia} 8:00 1974-10-19
6. Ship Of Fools {Hunter, Garcia} 6:59 1974-10-18
7. Beat It On Down The Line {Jesse Fuller} 3:22 1974-10-18
Side three
8. Big River {Johnny Cash} 4:53 1974-10-19
9. Black-Throated Wind {John Barlow, Bob Weir} 6:05 1974-10-19
10. U.S. Blues {Hunter, Garcia} 5:18 1974-10-19
11. El Paso {Marty Robbins} 4:15 1974-10-19
Side four
12. Sugaree {Hunter, Garcia} 7:33 1974-10-18
13. It Must Have Been The Roses {Hunter} 5:58 1974-10-17
14. Casey Jones {Hunter, Garcia} 7:02 1974-10-17
このアルバムはバンド史上最低の内容との評価がほぼ確定していて、後に二つのボックス・セットにアナログ時代の全アルバムがボーナス・トラック付きでまとめられた際にも、これだけは収録されなかった。1989年に初めてCD化され、2004年にリマスター版がリリースされて、音質は改善された。2017年のレコードストア・ディ用に再度リマスターされたアナログ盤がリリースされ、ここで音質はかなり改善された由。
あたしはこのアルバムをリアルタイムで買った。ちょうどその頃、CSN&Y からアメリカ音楽に目覚め、オールマン、リトル・フィート、ザ・バンドなどを聴きあさっていた頃で、グレイトフル・デッドも聴くべしと、折りしも発売されたばかりの新譜を買った。デッドはこれが初お目見えで、どういうバンドかも、どんなアルバムを出しているのかも、まったく知らなかった。
何度か聴いたものの、まったく面白くもなんともなく、ロックのライヴ・アルバムにあるまじきやる気の無さが目立つ、ふにゃふにゃとしまりのない演奏ばかりとしか聞えなかった。比較対象となっていたのはオールマンの《フィルモア》であり、CSN&Y の《4 Way Street》であり、ザ・バンドの《Rock Of Ages》であり、ディランの《激しい雨》であり、デイヴ・メイスンの《Certified Live》だった。クリムゾンの《U.S.A.》もあったが、文脈が異なる。
結局あたしとしては箸にも棒にもかからないものとして、これは棚に眠ることになった。バンドにも見切りをつけ、他のアルバムは買うことも聴くこともなかった。その頃のわが国のラジオではかからなかったし、「ブラックホーク」はじめ、ロック喫茶で聞いた覚えもない。
アメリカ音楽に自分なりに深入りするにつれて、時にデッドの名前に出逢うこともあり、そう言えばとほんの時偶、数年おきぐらいに引っ張り出して聞いてみるのだが、その度にやはりダメだという結論を確認するだけだった。教えられて《Workingman's Dead》と《American Beauty》の CD は買って聴いてみたものの、《Steal Your Face》の悪印象は強烈で、デッドについての評価を変えるにはいたらなかった。
近年デッドにはまりこんでから、あらためて最初のリマスター版を聴いてみると、記憶にあるほどひどいとは思わないことを発見した。おそらく、デッドの曲を知り、演奏がどういうものかわかってきているせいだろう。もっともこのアルバムとして聴くよりは、各々のショウの一部として聴いた方が、コンテクストがわかるのでより素直に聴ける気がする。デッドのショウはやはり1本ずつでまとまっている。
一方でこの選曲は、確かにデッドのレパートリィを代表するものが入ってはいるものの、デッドの音楽の真髄が聴けるかとなると首をかしげてしまう。《Live/Dead》や《Europe '72》に収められたジャム、集団即興のスリルはここには無い。さあ、どうだ、こいつを聴いてみろ、というよりは、恐る恐る出して見ました、という感じだ。Grateful Dead Records はすでに仕舞うことが決まっていて、身が入らなかったのかもしれない。
アルバムの出来としては、エントリー・ポイントにはなりえないことは確かだ。デッドの音楽に親しんでから、こういうものもあると聴いても遅くはない。
2. 1987 Anaheim Stadium, Anaheim, CA
日曜日。開演5時。ディランとのツアーの千秋楽。
第一部、第二部、デッド、第三部デッドをバックにしたディラン。そのデッドのセットの全体が《View From The Vault IV》で DVD と CD でリリースされた。ただし drums> space は DVD では編集されている。
また、第三部からクローザーの2曲〈Gotta Serve Somebody〉〈All Along The Watchtower〉とアンコールの2曲目〈Knockin' On Heaven's Door〉の3曲が《Dylan & The Dead》でリリースされた。
ボブ・ディランとのこのツアーは07月04日から26日まで計6本。すべてスタジアムでのショウ。収容人数と入場者数は以下の通り。
04: Sullivan Stadium, Foxborough, MA = 61,000/ 61,000
10: John F. Kennedy Stadium, Philadelphia, PA = 71,097/ 90,000
12: Giants Stadium, East Rutherford, NJ = 71,598/ 71,598
19: Autzen Stadium, Eugene, OR = 40,470/ 40,470
24: Oakland–Alameda County Coliseum, Oakland, CA = 53,354/ 55,000
26: Anaheim Stadium, Anaheim, CA = 47,449/ 50,000
TOTAL 344,968/ 368,068 (94%)
このうち12、24、26日のショウのデッドのセットの全体と、04日のデッドのセットから1曲が公式にリリースされている。
《Dylan & The Dead》でリリースされたのは04、19、24、26日のショウからの録音。
3. 1994 Riverport Amphitheater, Maryland Heights, MO
火曜日。24.50ドル。開演7時。このヴェニュー2日連続の初日。
古強者のデッドヘッドにとっては我慢ならないほどひどいショウだが、これが初めての新たなファンにとっては最高のショウの1本になる。(ゆ)
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