07月29日・木
つくつく法師が鳴きだした。今日鳴いているやつは、どうもちょっと焦っている感じ。出遅れた、とでもいうのかな。
午後から出て関内のエアジンで加藤里志さんのサックスによるバッハのライヴに行く。それはそれはすばらしかった(別記事に書く予定)。バッハは本当に面白い。
%本日のグレイトフル・デッド
07月29日には1966年から1994年まで5本のショウをしている。公式リリースは3本、うち完全版1本。
1. 1966, P.N.E. Garden Auditorium, Vancouver, BC, Canada
金曜日。このヴェニュー3日連続のランの初日。この3日間はヴァンクーヴァーの "Trips Festival"。前売各日2ドル、通し券5ドル。当日2.50ドル。通し券6ドル。開演8時半。ポスター等にはバンド名は入っていない。
「トリップス・フェスティヴァル」はメリー・プランクスターズとビル・グレアムがこの年の01月にサンフランシスコで開いたイベント。「アシッド・テスト」の発展形と言えなくもない。会場の中は複数の区画に仕切られ、前衛演劇、ライト・ショウ、ダンス・カンパニー、それにロック・バンドなどが各々にパフォーマンスをする。参加者はアシッドなどの幻覚剤を服用しながら、それらを自由に往来し、あるいは1ヶ所に止まって体験する。このイベントは同様の形式の一種のパッケージとして各地に会場を移して開かれた。
デッドはアシッド・テストからの流れで「トリップス・フェスティヴァル」でもハウス・バンドを勤めたから、ここでも呼ばれたのだろう。
サンフランシスコの「トリップス・フェスティヴァル」はデッドがビル・グレアムと初めて出逢う点でも重要。何と言っても、ビル・グレアムはデッドにとって最も重要なプロモーターだ。
全体がファースト・アルバム《THE GRATEFUL DEAD》の50周年記念デラックス版でリリースされた。
オープナーで〈Dancing In The Street〉、3曲目で〈One Kind Favor〉がデビュー。
〈Dancing In The Street〉は1987年04月06日まで計119回演奏された。1971年大晦日で一度レパートリィから落ちる。アレンジを変えて1976年06月03日に復活。前半で49回、後半で70回演奏。なおデッド世界では "Dancin'" とアポストロフィを使うことが多い。これが収められた《Terrapin Station》でも〈Dancin' In The Street〉になっている。これを初め、後半のヴァージョンはドナとウィアのデュエットを前提にアレンジされている。
原曲のクレジットは William Stevenson, Marvin Gaye & Ivy Joe Hunter で、Martha and The Vandellas の1964年のシングルが最初の録音。モータウン・サウンドの一つ。
〈One Kind Favor〉はこの年12月01日まで3回演奏。なお、《Birth Of The Dead》収録のトラックはこの年の07月17日、フィルモア・オーディトリアムでの演奏だろうとされるが、確定できない。これを入れると4回。
原曲は〈See That My Grave Is Kept Clean〉と呼ばれることが最も多く、その他に〈Two White Horses In A Line〉〈Dig My Grave With A Silver Spade〉というタイトルもある。ブラインド・レモン・ジェファーソンが1928年に録音したものが最初。ジェファーソンは〈Two White Horses In A Line〉として習った。作曲者としてジェファーソンが挙げられることが多いが、実際にはおそらく伝統歌。
この日の録音はこの頃の常で、右チャンネルにすべての楽器が集められ、左にヴォーカルが振られる。一方、録音そのものは良い。ベアの録音だろうか。
演奏はここでは普通のショウのように、曲をどんどんと演ってゆく。若さがはちきれんばかり。〈I Know You Rider〉の初期の形は面白い。リード・ヴォーカルはレシュらしい。コーラスが誰かわからない。当時流行のポップスのフォーマットをなぞるような演奏も多いが、どこか一点、ずれている。ガルシアのギターであったり、シンガーたちの歌唱の態度であったりする。ダルそうに投げだすように演奏しているようでもあり、しかし、熱気というかエネルギーの集中は相当なものがある。意外にピグペンのヴォーカルが少ない。ここではむしろオルガニスト。
2. 1974 Capital Centre, Landover, MD
月曜日。6.50ドル。開演7時。
第一部2曲目〈Sugaree〉とクローザー〈Weather Report Suite〉、第三部オープナー〈He's Gone〉から6曲目〈Wharf Rat〉までの8曲が《Dave's Picks Bonus Disc 2012》で、そのうち第三部の〈The Other One> Spanish Jam> Wharf Rat〉が2019年の《30 Days Of Dead》でリリースされた。
後の3曲を聴くだけで、良いショウだとわかる。〈The Other One〉のジャムの後半はガルシアとクロイツマンの掛合いがすばらしい。クロイツマンはその前から凄い。2人の対話にキースとウィアが絡んで、クロイツマンがちょと捻ったビートを打出し、ベースも加わって、ガルシアがスライド・ギターで〈Spanish Jam〉に入ってゆく。カッコいい。〈Wharf Rat〉ではレシュとキースがすばらしい。
3. 1982 Red Rocks Amphitheatre, Morrison, CO
木曜日。このヴェニュー3日連続のランの楽日。
第二部 space の後の〈The Other One〉で雨がざあざあ降ってきて、その後、霧が客席を包んだ。その中で演奏は続いた。すばらしい出来の由。
4. 1988 Laguna Seca Raceway, Monterey , CA
金曜日。21ドル。開演1時。このヴェニュー3日連続のランの初日。17日以来2週間ぶりのショウ。
デヴィッド・リンドレー&エル・レヨ・エックス、ロス・ロボス前座。
第二部4曲目〈Playing in the Band〉が《So Many Roads》で、第一部6曲目〈Blow Away〉が2021年の《30 Days Of Dead》でリリースされた。
ここはすぐ隣が軍の演習場で、金曜日は砲声がアクセントを加えていた、と Bill Weisman が DeadHead XI で書いている。土日は演習も休みで静かだった。
〈Blow Away〉は後半、ミドランドのリフレインと、これにぶつけるガルシアのギターの掛合いが聞き物。
〈Playing in the Band〉のジャムもこの曲でのベストの一つで、まずベース・ソロが入り、その向こうでガルシアが始めるギターがすばらしく、やがて全員のジャムになってゆく。
5. 1994 Buckeye Lake Music Center, Hebron, OH
金曜日。31.50ドル。開演6時。トラフィック前座。
この夏のツアー中ベストの1本と言われる。
トラフィックの後半、激しい雷雨となり、ためにトラフィックは〈Rainmaker〉の見事な演奏をし、デッドのオープナーは〈Rain〉。第一部半ばに雨は上がったらしい。しかし気温は下がって、寒いくらいだった。(ゆ)
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