笛とハープは相性が良い。が、ありそうであまりない。マイケル・ルーニィ&ジューン・マコーマックというとびきりのデュオがいて、それで充分と言われるかもしれないが、相性の良い組合せはいくつあってもいい。梅田さんは須貝知世さんともやっていて、これがまた良いデュオだ。

 このデュオはもう5回目だそうで、いい感じに息が合っている。記録を見ると前回は3年前の9月下旬にやはりホメリで見ている。この時は矢島さんがアイルランドから帰国したばかりとのことでアイリッシュ中心だったが、今回はアイリッシュがほとんど無い。前日のムリウイでの若い4人のライヴがほぼアイリッシュのみだったのとは実に対照的で、これはまたこれで愉しい。

 スウェディッシュで始まり、おふたり各々のオリジナル、クレツマーにブルターニュ。マイケル・マクゴールドリックのやっていた曲、というのが一番アイリッシュに近いところ。どれもみな良い曲だけど、おふたりのオリジナルの良さが際立つ。異質の要素とおなじみの要素のバランスがちょうど良い、ということだろうか。3曲目にやった矢島さんの曲でまだタイトルが着いていない、作曲の日付で「2022年07月22日の1」と呼ばれている曲は、サンディ・デニーの曲を連想させて、嬉しくなる。

 矢島さんは金属フルート、ウッド・フルート、それにロゥホィッスルを使いわける。どういう基準で使いわけるのかはよくわからない。スウェディッシュやクレツマーは金属でやっている。梅田さんの na ba na のための曲は、一つは金属、もう一つはウッド。どちらにしても高域が綺麗に伸びて気持ちがよい。矢島さんの音、なのかもしれない。面白いことに、金属の方が響きがソフトで、ウッドの方がシャープに聞える。このフルートの風の音と、ハープの弦の金属の音の対比がまた快感。

 もっとも今回、何よりも気持ちが良かったのはロゥホィッスル。普通の、というか、これまで目にしている、たとえばデイヴィ・スピラーンやマイケル・マクゴールドリックが吹いている楽器よりも細身で、鮮やかな赤に塗られていて、鮮烈な音が出る。この楽器で演られると、それだけで、もうたまらん、へへえーと平伏したくなる。これでやった2曲、後半オープナーのマイケル・マクゴールドリックがやっていた曲とその次のブルターニュの曲がこの日のハイライト。ブルターニュのメドレーの3曲目がとりわけ面白い。

 マイケル・マクゴールドリックの曲では笛とハープがユニゾンする。梅田さんのハープは積極的にどんどん前に出るところが愉しく、この日も遠慮なくとばす。楽器の音も大きくて、ホメリという場がまたその音を増幅してもいるらしく、音量ではむしろフルートよりも大きく聞えるくらい。特に改造などはしていないそうだが、弾きこんでいることで、音が大きくなっていることはあるかもしれないという。同じメーカーの同じモデルでも、他の人の楽器とは別物になっているらしい。

 クローザーが矢島さんとアニーの共作。前半を矢島さん、後半をアニーが作ったそうで、夏の終りという感じをたたえる。今年の夏はまだまだ終りそうにないが、この後、ちょっと涼しくなったのは、この曲のご利益か。軽い響きの音で、映画『ファンタジア』のフェアリーの曲を思い出すような、透明な佳曲。

 前日が活きのいい、若さがそのまま音になったような新鮮な音楽で、この日はそこから少しおちついて、広い世界をあちこち見てまわっている感覚。ようやく、ライヴにまた少し慣れて、身が入るようになってきたようでもある。

 それにしても、だ、梅田さん、そろそろCDを作ってください。曲ごとにゲストを替えて「宴」にしてもいいんじゃないですか。(ゆ)