2本めは15日にリリースされた、同じ1994年秋のツアーから3週間前 1994-10-01, Boston Garden, Boston, MA のオープナー〈Help On The Way> Slipknot!> Franklin's Tower〉のメドレー。21:07。
このショウは第一部ラスト前の〈So Many Roads〉が2013年の《30 Days Of Dead》でリリースされた後、2015年のグレイトフル・デッド結成50周年記念のビッグボックス《30 Trips Around The Sun》の一本として全体がリリースされました。ちなみに《30 Trips Around The Sun》は1966年から1995年までの各年一本ずつショウを選んで30年間のキャリアを展望しようというもので、デッドのアーカイヴ・リリースのビッグボックスとしては2011年の《Europe '72: The Complete Recordings》と並ぶ規模の大きなものです。
ショウはこれもボストン・ガーデンでの6本連続のランの4本目。この秋のツアーは9月16日、カリフォルニア州マウンテン・ヴューの Shoreline Amphitheatre から始まり、バークレーでの1本をはさんで次がここです。開演7時半。料金は30ドルから。
ボストン・ガーデンはマジソン・スクエア・ガーデンと同系列の多目的アリーナで、1928年にオープンし、1995年09月に閉鎖、1998年03月に解体されました。かつてはバスケットのセルティクスとアイス・ホッケーのブルーインズの本拠として、史上初めて NBAファイナルとホッケーのスタンレー・カップが同じ年にここで開催されたこともあります。またセルティクスはこのホームで無類の強さを発揮し、全盛期の1980年代半ば、79勝3敗という記録を残しています。
コンサート会場としての定員は16,000弱。ビートルズは1964年最初のアメリカ・ツアーの際、ここで演奏しました。ジェイムズ・ブラウン、ザ・フー、レッド・ツェッペリン、キッス、ピンク・フロイド、ジェスロ・タルなどメジャーなアクトが出ています。
デッドは1973年4月に初めてここで演奏し、1994年のこの10月の6本連続まで計24本のショウをしています。この数字は他のミュージック・アクトに比べて断トツに多いそうです。やはりここもお気に入りだったのでしょう。ここからは1974-06-28が《Dick's Picks, Vol. 12》、1991-09-25が《同, Vol. 17》、そしてこのショウと、完全版が3本公式にリリースされています。
《30 Trips Around The Sun》が出た時、1966年から一本ずつ聴いていってここに来たときには驚きました。1990年代は周知のとおり、ジェリィ・ガルシアがゆっくりと衰えてゆく時期で、1992年や1993年は、水準は軽く越えているとはいえ、その前のピーク時のショウに比べてしまうとどうしても落ちると聞えてしまいます。それが、この最末期、1994年に来てこのボックス・セットの30本のショウの中でも最高の一本と言ってもいい演奏を聴かせてくれたからです。
この時期、ガルシア以外のバンドは史上最高の演奏をしている、というアーカイヴ・リリースのプロデューサー、デヴィッド・レミューの言葉には、この演奏を聴くと納得できます。問題はガルシアの出来次第。ガルシアの存在がしっかりとそこで聞えれば、そのショウはすばらしいものになった。少なくとも音を聴くかぎりはそう聞えます。
オープナーの3曲のメドレーはいつもの組曲ですが、はじけぶりがすばらしい。
なお、1994年は正月にデッドがロックンロールの殿堂入りをはたしました。ただし、そのセレモニーにガルシアだけは出席しませんでした。替わりに本人の等身大の写真を貼って切り抜いたダンボールが持ちこまれました。ショウは計84本。レパートリィは145曲。うち前年には演奏されなかったものが12曲。新曲は3曲。ウェルニックの〈Samba in the Rain〉とレシュの〈If the Shoe Fits〉と〈Childhood's End〉。コンサートの総収入は5位でした。デッドの上にいたのはローリング・ストーンズ、ピンク・フロイド、イーグルス、バーブラ・ストライザンド。なお、デッドのチケット代はこれら他のアクトのものの半分ほどでした。(ゆ)

コメント
コメント一覧 (3)
ところで、オクテイヴィア E. バトラーの小説にインスパイアされた作品を多く発表しているフルート奏者の Nicole Mitchell’s Black Earth Ensemble をご存知でしょうか?
私は彼女たちの曲や演奏が好きで、私自身も以前SFマガジンに掲載されたバトラーの短編を読んで、とても衝撃を受けていたので、この度大島さんが翻訳される「種播く人の物語」はすっごく楽しみです!
Black Earth Ensemble の「Her passage into the alpine forest」はとてもカッコいい曲で大好きです。ニコル・ミッチェルは今年になって Black Earth Sway というプロジェクトも始めたようで、ユーチューブで見たのですが、これもすごく好きです。
「Parable of the Sower」は、いつか翻訳されないかなと何年も待っていたので、ちょっとぐらい遅れたってへっちゃらです。読めるのをワクワクドキドキしながら待ってます!!
バトラーは『キンドレッド』と作品集が河出から出ましたけど、他の長篇も良いので、邦訳が出ることを期待してます。やれと言われればそりゃ断わりませんが、どちらかといえば、他の人がやってくれたのを読む方がありがたい。英語そのものは難しくないんですけど、あのぎゅうっと集中してゆく感覚、英語でいう intensive なところをちゃんと出せているかどうかはまったく自信がありません。バトラーの作品はどれも intensive で、読んでいるとどんどん引きこまれます。そこが日本語でもできているかどうか。読んでみてご判断いただくしかありませんが。