『リバーダンス』2024東京公演最終日に行ってきた。今回は家族が同行者を求めたので応じた。自分だけで積極的に見たいとは思わないが、何かきっかけがあれば見に行くのはやぶさかではない。とはいえ、今度こそは最後であろう。これをもう一度見なければ死ねないというほどでもない。

 記録をくったら前回は2005年の簡略版最初の来日だったから、なんと20年ぶりになる。今回25周年を謳っていたのは初来日以来ということだろう。

 結論からいえば、思いの外に楽しめた。一つには席がやや左に偏っていたとはいえ最前列で、舞台の上の人たちの表情がよく見えたからでもある。

 最大の収獲はフラメンコで、この踊り手はマリア・パヘス以来。体のキレ、存在の華やかさ、そしてエネルギーにあふれる踊りは見ていて実に爽快。パヘスに届かないのは、あのカリスマ、貫禄、存在感で、これは芸というより人間の器の大きさの問題だ。

 もう一つ、この人は『リバーダンス』を脱けても聴きたいと思ったのはサックスの若い姉さん。今回はミュージシャンたちだけの出番が増えていて、もろにダンス・チューンを演奏もしたが、ソプラノ・サックスであれだけダンス・チューンを吹きこなすのはなかなかいない。録音があるのなら是非聴いてみたいものだ。

 パイパーもフィドラーもミュージシャンとしての質が高いし、ダンサーたちも皆巧い。男性プリンシパルにもう少し華が欲しいところ。やはりねえ、華という点ではフラトリーは飛びぬけていたからねえ。『リバーダンス』の男性プリンシパルを張るのはなかなか大変だとは同情しますよ。

 いろいろ削って、さらに簡略になっていて、これ以上簡略にはできないだろうというところまできているのは、やむをえないことではあるのだろうが、そう、万が一、当初のフル・サイズで、完全生バンドで、その後に加えたすべての演目も入れて来るのなら、それは見てもいいかなと思う。しかし、まあ無理であろうなあ。

 そうそう、人数が少ないのをカヴァーするためか、ダンサーたちがやたら声を出していたのは、あたしにはいささか興を削ぐものだった。別に黙って踊っていろというつもりはないが、あんなにきゃあきゃあ言わせなくてもいいんじゃないかねえ。

 それと、キャスト、スタッフの名前が公式サイト含めてどこにも無いのも、ヘンといえばヘン。最初は全部、クレジットされていた。

 とまれ、まずはいいものが見られてまんぞく、まんぞく。終演後は、少々離れてはいたものの、小石川のイタリア料理屋まで歩き、まことに美味なピザを腹一杯食べて、これもまんぞく、まんぞく。いい晩でした。たまには、こういうのもいいですね。(ゆ)