以前の記事からのこの3ヶ月は規格としての Bluetooth の使い勝手の悪さを思い知らされた。
Bluetooth は元来補聴器のための規格だ。補聴器は個々のユーザーにパーソナライズされている。難聴の度合いは個人によって千差万別、同じものは一つとしてない。各々の補聴器ペアは互いに相手とだけつなぐ必要があり、他とつながってはいけない。そりゃそうだ。電車やバスで隣に座った人の補聴器につながっては困る。Bluetooth とは一対一の接続のための規格なのだ。
イヤフォンを無線接続で外に持出すために Bluetooth が採用された。スマホとイヤフォンを一対一でつなぐだけならば十分だ。Tonalite もパーソナライズのためにチップを必要とするから、完全無線イヤフォンとして入力は Bluetooth によることになった。
ところがだ。Tonalite にハマってしまうと、全ての音源を Tonalite で聴きたくなる。外ではスマホでよいとしても、家ではネットワーク環境を整えたデスクトップでストリーミングを聴く際にも Tonalite で聴きたい。実際、あたしの環境では、有線LAN でつないだ Mac mini M4 でストリーミングを再生し、これを Mac とペアリングした Tonalite で聴くのと、USB> I2S変換> Wandla> model 433> DX6000 で聴くのと比べてみると、明らかに Tonalite の方が音が良いのだ。後者では他の音に埋もれがちの楽器の音が、Tonalite では小さいながらしっかり聞えるし、何より音楽の躍動感が段違いだし、音楽としての活きの良さも上なのだ。注ぎこんだ金額を勘定すると厭になってしまうが、事実ではある。
iPhone でも Mac mini でも接続は当然 AAC による。Tonalite は LDAC をサポートしているのだから、何とかそれで聴けないか。
Tonalite 以外のワイヤレス・イヤフォンでも Apple 製品で LDAC や aptX などのコーデックで聴きたいという要求は小さくなかったのだろう。USB-C 接続の Bluetooth トランスミッターが出てきた。この3ヶ月で Questyle、FiiO、Noble、Accoustune が出し、まだこれからも出るらしい。
そこでまず Questyle QCC dongle pro を試した。次に FiiO の Air Link も試した。継いでこの二つを下取りにして Noble Audio Scepter を買った。結論から言うとどれも使えない。
まずこれら3機種、いずれも Tonalite とペアリングするのに一苦労した。各々専用アプリがあり、これを iPhone にインストールして、アプリでペアリングする。ところがアプリの対象機種リストに出てこなかったり、出てきてタップしてもつながらなかったりする。何かの拍子にうまくつながっても、いざ、それで聴こうとすると切れていたりする。そうこうするうちに Noble Scepter についてのささきさんの記事が出た。
これを参考にしてやってみて、どうやらうまくつながるようになった。この時点では QCC dongle pro と Air Link でやっている。
最初のペアリングの時はこれらのドングル・トランスミッターを iPhone に挿してやっている。うまく LDAC でつながると、なるほどただでさえ良い Tonalite の音がさらに良くなる。たまりまへん。
Tonalite はマルチポイントをサポートし、最大二つまでは同時にペアリングできる。一つは iPhone そのものにペアリングする。これをしないと Tonalite アプリでのパーソナライズや設定ができない。で、もう一つをドングル・トランスミッターに設定する。こうすればドングル・トランスミッターを挿せば、Mac mini でも LDAC で聴けるはず。
ドングル・トランスミッターを iPhone から外し、Mac mini に挿すと、ペアリングが切れてしまうことがある。そうなって見てみると、Tonalite の設定もデフォルトに戻っている。えんやこらと設定をしなおし、ドングルとペアリングしなおし、さて Mac mini に挿して、なんとかつながったままでいてくれることもある。それでも出てくる音を聴くと、やはり元に戻れない。
ところがである。この状態で聴いていると音が切れるのである。一度切れだすと、ほとんど1、2秒ごとにぶつぶつと切れる。それが何分も続く。Air Link でひどい。QCC dongle では、いくぶん減るが、やはり切れる。Mac mini はルーターから有線で引張っている。実際、Mac mini に Tonalite を直接ペアリングすると切れることはない。とすると LDAC のせいか。これは切れやすいと注意書きもある。とはいえ、Mac mini と Tonalite の距離は1メートル以下だ。間に邪魔者は何も無い。こんなに切れてはたまらんと、Air Link と QCC dongle pro を叩き売って Noble Scepter に換えた。Scepter は大分マシである。しかし、切れるのはなくならない。
LDAC 接続を試すために買ってあった Walkman に Tonalite をペアリングして聴いてみる。音源は Apple Music と内蔵のマイクロSDカードに収めたファイルだ。そうすると切れることはないが、時たま、ふうっと音が薄れる瞬間がある。とすると LDAC はそういうものなのか。
ここに到って Bluetooth という規格に呆れはてた。そもそも一対一の接続が原則だから、マルチポイントはおそらく曲芸をしている。Tonalite の場合、相手は2ヶ所だけで、3つ目につなごうとすると、全部切れて設定がデフォルトに戻る。auracast というのもあるが、あれはソースは一点で、それを複数の Bluetooth 受信機へ放送する。1個の Bluetooth 受信機を複数のソースに切替えて使うという使用法は想定されていないのではないか。
しかし、無線接続のままイヤフォンを外に持出すには Bluetooth がデファクト・スタンダードだ。そこで気になってくるのが、春のヘッドフォン祭でささきさんが final の細尾社長から、有線の DTAS も準備していると聞いたという件だ。
外に持出すのに無線でなければならないわけではない。有線でもいい。有線の DTAS なら音が切れるなんてことはありえない。どんな形で出てくるか。理想を言わせてもらえば、ポータブル・サイズの DAC/amp の形だ。Tonalite の中にチップで入っている DTAS を外に出す形。そうすれば、有線イヤフォン、あるいはヘッドフォンを取替え引替え DTAS で、パーソナライズされた音で聴くことができる。これは天国だ。しかし贅沢は言わない。有線イヤフォンに DTAS が入っただけでもいい。とにかく Bluetooth から逃れたい。こんな使い勝手の悪いものにふり回されたくない。
Tonalite を半年使って、Bluetooth にほとほと嫌気がさしたという顛末。結局のところ、家ではストリーミングについて、Tidal は Mac mini で AAC で、Apple Music と Bandcamp はウォークマンで LDAC で聴いている。リッピングしたファイルもウォークマン。外では iPhone で AAC で何でも聴く。
そう、Noble Scepter + Mac mini で聴く方法もまったく無いわけじゃない。Tonalite をもう1セット買って、専用にすればいい。有線 DTAS が出るのは、早くても今年年末だろう。最短でもそれまで半年、うーん、中古を買ってしまうか。(ゆ)

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