クラン・コラ・ブログ(アイルランド音楽の森)

 アイリッシュ・ミュージックなどのケルトをはじめ、世界各地のルーツ音楽を愉しむブログです。そうした音楽の国内の音楽家も含みます。加えて主宰者の趣味のグレイトフル・デッド。サイエンス・フィクション、幻想文学などの話もあります。情報やメモ、ゴシップ、ただのおしゃべりなどもあります。リンク・フリーです。

タグ:アナログ

 努めて普段どおりの生活をするようにしたためか、痛みはほぼ消えた。しかし、まだ前屈みになろうとすると腰が緊張するので、手をついたり、しゃがみこんでから手を前に伸ばしたりしている。今日は外出のテストも兼ねて歯医者に出かけたが、バスから降りるときに、ステップから歩道に渡ろうとしてふらついた。前屈みになるわけではないが、腰の筋肉を使っているらしい。体のどこの筋肉をいつどこで使っているか、なんてことは痛くならないかぎりわからない。

 通販生活に注文した腰ささえが着いたので、夜、試す。付けてみると、やはり上半身の緊張がぬける感じがある。買ったのはこれ。



 通販生活のものはメディカル枕とかヤコフォームの靴とか、永年愛用しているのがあり、信用している。このサポーターもかみさんがぎっくり腰をやった時に探して見つけておいた。そういえば、このメディカル・パッドもずっと使っている。



 これもどうやらぎっくり腰には効果があるらしい。一晩寝て朝になるたびに痛みが楽になっていった。起きた直後は楽なのだが、しばらく椅子に座っていて、立とうとすると痛い、ということがはじめのうち繰返された。

 図書館から借りている『洲之内徹ベスト・エッセイ2』収録のエッセイで、洲之内もぎっくり腰をやり、しばらくズボンを履くのに柱にもたれなければならなかったという。なるほどその手があったか。前屈みになれないで一番困るのは下半身の衣類を履こうとする時だ。
 今日はのんびりとではあるが1万歩近く歩いたし、階段もたくさん登ったが、腰が痛くなることはない。ちょうど1週間で9割方恢復という次第。週末はやはり出かけてみよう。


 ラックスマンが創業百周年記念で新しいハイエンド・ヘッドフォン・アンプを出すと発表。さてこれでマス工房 model 465 に対抗できるか。1台ではできないので、2台使って BT接続することであれを凌ぐものにしよう、というのかと勘繰ってしまった。値段も新製品2台でちょうど 465 1台分だし。





 あたしは 465 はもちろん買えないが、ヘッドフォン祭などで散々音は聴いている。それに個人用として model 433 を使っているから、マス工房のヘッドフォン・アンプの何たるかはわかっているつもり。433 だって、そりゃ 465 には讓るだろうが、それ以外のヘッドフォン・アンプではまず対抗できない。何よりパワーがあるだけではなく、音楽として聴かせてくれる。増田さんはむしろプロ機器のつもりで設計・製造しているのではあろうが、それで鳴らすとちゃんと音楽として聴ける機械を作れるのは耳が良いということなのだろう。今では 433 が基準になっていて、これでちゃんと鳴らないヘッドフォンはダメなのである。

 そう、433 はどんなヘッドフォンでもきれいに鳴らすというようなヤワな代物ではないのだ。世の中にはどんなに高くても、宣伝が上手くても、本質的にダメなヘッドフォンは存在する。そういうものの正体を剥出しにしてみせるのである。一方で良いものはその良さを十二分に発揮させる。しかし、本当に良いヘッドフォン・アンプとはそういうものではないか。何にでも使える万能選手などというものは、ことオーディオに関するかぎり、自己矛盾でしかない。


 テクニクスが発表した新しいアナログ・プレーヤー SL-1300G はちょと面白い。アナログ・プレーヤーのキモは振動対策であるわけで、各社、様々に工夫を凝らして振動を減らすことに腐心している。材質とメカニズムで振動を減らすとか、プラッターとアーム・システムを吊るしたり、浮かせたりして、外の振動を遮るとか、まずたいていは物量で勝負だ。今回のテクニクスはその逆を行っているように見える。徹底的に電子的、電気的な操作をつきつめることで振動が起きる要因を一つひとつ削除していった。デジタルをつきつめることでアナログの効果を狙っている。とあたしには見える。使われている技術もホップステップジャンプしたものではなくて、従来自社で開発蓄積してきたものを応用している、ように見える。あたしは昔からベルト・ドライブ派で、ダイレクト・ドライブなんてものは信用ならんと思っていたが、これくらいつきつめているんなら、聴いてみようじゃないかという気になる。



 とにかく一度、音を聴いてみたいし、たとえばテクダスのハイエンド・モデルと、他の条件を全部同じにした聴き比べてみたい。まあ、今のオーディオ業界ではそんな聴き比べはできないだろう。とまれ単独でも音を聴いてみて、その上で DS Audio DS-E3 と組合せてみたい。これなら、合計で定価で70万だ。その後、1年は本もレコードも買えないし、ライヴにも行けないが、昔買ったレコードを聴きなおせば1年くらいはすぐ経ってしまう。それにしても、こういうのをまともに試聴できる店が近くにあるのか、そこが一番の問題。



 ぎっくり腰には自分の年齡をあらためて思い知らされた。以来、多少とも前屈みになる時は、痛みが出ようが出まいが、必ずどこかに手をつくようにしている。(ゆ)

04月20日・水
 グレイトフル・デッドのメール・ニュース、今週土曜日のレコードストア・デイ用に1972年ヨーロッパ・ツアー2日目04-08のロンドンがアナログ5枚組で出る、とある。1万セット限定。これまでの例からして、少数ながら入ってくるだろうが、この円安だ、一体いくらになるか。アナログ5枚なら1.5万くらいか。2万近いこともありえる。日本のサイトには情報が無い。うーむ、新宿まで出て探しまわる価値があるか。


##本日のグレイトフル・デッド
 04月20日には1968年から1984年まで4本のショウをしている。公式リリースは2本、うち完全版1本。

1. 1968 Thee Image, Miami, FL
 土曜日。このヴェニュー3日連続のランの中日。セット・リスト不明。このヴェニューにはトリップ用の部屋、赤外線照明の部屋、それに絨緞を敷きつめた音楽を聴くための部屋があったそうだ。

2. 1969 Clark University, Worcester, MA
 日曜日。ラサーン・ローランド・カークが前座。2時間弱の一本勝負。4曲目22分の〈Dark Star〉が2015年の《30 Days Of Dead》でリリースされた。
 一度に何本もの管楽器を演奏するカークの方が印象が強かったようだ。

3. 1983 Providence Civic Center, Providence, RI
 水曜日。開演8時。非常に良いショウの由。特に第二部後半。

4. 1984 Philadelphia Civic Center, Philadelphia, PA
 金曜日。このヴェニュー3日連続のランの中日。13.50ドル。開演7時半。《Dave's Picks, Vol. 35》で全体がリリースされた。(ゆ)

1210日・金

 アデレの最新作《30》のアナログ盤が50万枚という発注をしたので、全世界的にビニールが不足、なのだそうだ。アナログがブームで、昨年、アナログの売上がCDを抜いた。1986年以来のこと。CDの出始めの頃と逆で、今のアナログは価格も高い、倍くらいするから、数はまだCDの方が上か。この記事によると RIAA が発表したレコード産業全体の売上でCD、LPなど、ブツが占めるのは1割、というのもちょっとショックだが、アナログはその中の3分の2。とはいうものの、たった50万枚で全世界の生産能力がきしむ、などというのは、つまるところ、ブームを支える層がひどく薄いことにならないか。

 アナログ盤は製造も遅れていて、音源を渡してから納品まではメジャーなアーティストで9ヶ月だそうだ。マイナーなアーティストやレーベルだと1年以上。アデレの場合は半年で、よほどプレス工場を押えまくったのだろうと推測されている。

 カラー・レコードが増えているのも遅れの理由の一つの由。Target とか Walmart とかの大手チェーンはCDはほとんど売らないが、独占カラーのアナログを大量発注するようになった。これにその他のレコード店やアーティスト本人のウエブ・サイトの独占カラーが加わって、それこそカラフルなアナログがあふれるらしい。CDではできなかったし、やっても見映えはしないねえ。

 しかし、プレス・マシンの問題は解決したのか。つまり、新しいプレス・マシンは製造されているのか。たとえば3Dプリンタを使うなどすれば、今はかつてよりああいう機械の製造のコストと手間は減っているのだろうか。そういえば、カッティング・マシンはどうなのだろう。また、かつてはカッティングをする専門のエンジニアがいたけれど、そういう技術は継承されているのか。

 Variety の記事によれば、プレス会社は全米で数十ある。が、LPをプレスするのに必須のラッカー盤を製造しているのは昨年2月時点で世界で2ヶ所。そのうち7〜8割を作っていたカリフォルニアの Appllo Masters この時、山火事で焼けおちた。残る1ヶ所は日本の MDC。というより、この商社を通じて売られているラッカー盤を製造している長野のパブリックレコード社。ここで作られたラッカー盤が日北米欧オーストラリアのレコード会社に送られて、そこで音楽信号をカッティングされるわけだ。

 とすれば、アナログ盤製造の遅れにはこれもあるのだろう。

 ところでラッカー盤はアルミの円盤にラッカーを塗ったもの。ラッカーの原料は樹脂と溶剤。どれも現在、品不足で価格高騰している。とすれば、ラッカー盤の値段も上がらざるをえないだろう。ましてや、ほぼ独占状態だ。当然、レコード価格にも反映されるはずだ。

 注文して待っているアナログ盤は Muireann Nic Amhlaoibh が夏に Kickstarter で募った《Roisin Reimagined》、やはり Kickstarter のドーナル・ラニィたちの新しいバンド Atlantic Arc のデビュー作、それにデッドの《Dave's Picks, Vol. 1》の3枚で、アイルランドの2枚はともに来年2月予定。だが、《Roisin Reimagined》のアナログは予定が見えなくなったと通知が来た。ところで、今見ると、《Dave's Picks, Vol. 1》アナログ盤のページが Dead.net から消えている。今年の Almanac で来年4月末予定、5,000セット限定と発表されたんだが、売り切れたということか。確かカラーではなく、通常の黒い盤だった。

 面白いのは今出ているアナログ盤はポピュラーやジャズがメインで、クラシックはほとんど無い。アナログからCDに移った時も、最速で転換したのはクラシックだった。アナログ片面に入らない曲が多すぎるからか。



##本日のグレイトフル・デッド

 1210日には1965年から1993年まで10本のショウをしている。公式リリースは2本。うち完全版1本。ほぼ完全版1本。


01. 1965 Fillmore Auditorium, San Francisco, CA

 当時のサンフランシスコ・シーンで先頭に立っていた The Mime Troupe の法廷闘争のための資金集め。ジェファーソン・エアプレイン、The Great SocietyJohn Handy QuintetThe Mystery Trendthe VIPsThe Gentlemen's Band、などと共に出演。ラルフ・グリーソンはサンフランシスコ・クロニクル紙の記事でまだ The Warlocks と呼んでいる。

 3,500人以上の人間が1.50ドルの入場料を払い、踊りくるった。もちろん一度には入れないので、夜9時半から深夜1時過ぎまで、会場の周りには長蛇の列が絶えなかった。


02. 1966 Fillmore Auditorium, San Francisco, CA

 ビッグ・ママ・ソーントン、ティム・ローズとの3日連続の中日。

 セット・リスト無し。


03. 1969 Thelma Theater, Los Angeles, CA

 このヴェニュー3日連続の初日。現在判明しているセット・リストの第一部クローザー前の〈Casey Jones〉〈Good Morning Little Schoolgirl〉〈Black Queen〉でスティーヴン・スティルスがギターで参加し、最後の曲はヴォーカルをとる。

 この日のセット・リストはテープに基いていて、明確ではなく、第二部とされている短いものは別の日のものである可能性もある。またどちらが先かも不明。

 ヴェニューは短期間存在した小さなところで、デッドはこの時のみの演奏。


04. 1971 Fox Theatre, St. Louis, MO

 ニュー・ライダーズ・オヴ・パープル・セイジ前座。後半7曲目〈Comes A Time〉が2014年の《30 Days Of Dead》でリリースされた後、今年のビッグ・ボックス・セット《Listen To The River》の1本として全体がリリースされた。

 2日連続の2日目。この2日間のショウは人気に比べて会場が狭く、チケットが買えないという不満が大きかった。そのためもあって、デッドはワーナーを説得して、地元の FM KADI にセント・ルイスで初めて、この日のショウのリアルタイム放送を許可した。この放送から出たテープが広く出回る初めてのものとなる。ブートレグも出ている。

 〈Playing In The Band〉は長くなりはじめているが、まだ翌年の完全に開花したところまでいかない。そこがまた面白い。


05. 1972 Winterland Arena, San Francisco, CA

 3日連続の初日。他のコンサートは開演8時だが、デッドのみ7時。

 ちなみにデッドの前はJ・ガイルズ・バンドとロギンス&メッシーナが2日間。後はフランク・ザッパ&ザ・マザーズ・オヴ・インヴェンション、ウェザー・リポート、コパーヘッド。

 コパーヘッドはジョン・チポリーナがクィックシルヴァー・メッセンジャー・サーヴィスをやめた後に組んだバンド。なのでポスターではウェザー・リポートより扱いが大きい。

 〈Playing In The Band〉と〈The Other One〉が飛びぬけていい、と DeadBase XI Mike Dolgushkin が言う。


06. 1973 Charlotte Coliseum, Charlotte, NC

 《Download Series, Vol. 8》で、第一部の4曲を除いてリリースされた。

 この頃はまだ南部でショウをすることは少なく、ノース・カロライナでは1971年4月が初で、この年が2回目。8日にデューク大学でショウをして、その次がこれ。この次は1976年9月にやはりデューク大学になる。8日は満員だったが、この日は12,000収容のヴェニューで半分ほどの入り。演奏はデュークの時よりレイドバックしてた。第二部の初めの曲を決めるのに時間がかかっていたので、3列目に陣取っていた Richard Pipes たちが〈Jet to the Promised Land〉と叫ぶと、バンドはにやりとしてそれから始める。終って一同が "Thank you!" と叫ぶと、レシュが "Thank YOU faithful few." と応じた。DeadBase XI でのパイプスのレポートによる。


07. 1979 Soldier's And Sailors Memorial Hall, Kansas City, KS

 セット・リスト以外の情報無し。


08. 1988 Long Beach Arena, Long Beach, CA

 このヴェニュー3日連続の中日。18.50ドル。開演8時。


09. 1989 Great Western Forum, Inglewood, CA

 19.50ドル。開演6時。

 第一部2曲目〈Sugaree〉にブルース・ホーンスビィ、クローザーの〈C. C. Rider〉〈I'm a Man〉にスペンサー・デイヴィスが参加。


10. 1993 Los Angeles Sports Arena, Los Angeles, CA

 このヴェニュー3日連続の最終日。25ドル。開演7時半。ブランフォード・マルサリスが初めからアンコールまで参加。

 マルサリスの参加ですばらしいショウになった、と Thomas Bellanca DeadBase XI で書いている。デッドのショウにゲストとして参加した中で、最もデッドの音楽に溶けこみ、これを新しいレベルに上げていたのはマルサリスだ、という彼の言明にはうなずく。聞きなれた曲が、あたかも元来ホーンが入ることを前提に書かれたように聞えるというのも納得する。このショウも、マルサリスの参加したベストのショウではないにしても、十分すばらしいものになっていたという。(ゆ)


 かなりのショックでありました。再生のシステムが違えば音も変わり、したがって、そこから受ける体験の質も変わるのは当然ですが、いざ実際に体験してみると、そのあまりの違いの大きさにいささか茫然としてしまいました。

 ことに、最後にかけた1990-03-29 の、ブランフォード・マルサリスの入った〈Bird Song〉のすさまじさは、まったく初めて聴くものでした。このトラックはもう何十回となく、それもヘッドフォンやイヤフォンだけでなく、「いーぐる」のシステムでも聴いていますが、こんなに体ごともっていかれたことはありませんでした。これはもうまず劇場用PAスピーカーとそしてレーザーターンテーブルの組合せのおかげでありましょう。

 この日はもともとはレーザーターンテーブルの試聴会で、お客さんが持ちこまれたアナログ盤をレーザーターンテーブルで再生し、ホール備えつけのPAスピーカーで聴くという趣旨の企画で、もう何度もここでやっているそうです。あたしは途中で入ったので、聴けたのは3枚3曲ほどでしたが、どれもすばらしい音と音楽で、システムの素性の良さはよくわかりました。とりわけ、エゴラッピンの3枚めからの曲はあらためてこのユニットの音楽を聴こうという気にさせてくれました。

 どれも実に新鮮な響きがするのは、レーザーターンテーブルのメリットでしょう。洗われたように、いわば獲れたての新鮮さです。レコード盤の溝の中の、針が削っていない部分を読み取るからではないかと思われます。

 イベントの最後の1時間ほど、グレイトフル・デッドのライヴ音源をアナログ盤でかけてみたのは、ひとつには11/23に、同じこの場所で、こちらはデッドのライヴ音源ばかり、アナログ盤で聴くというイベントを予定しており、そのいわば公開リハーサルとしてでした。どんな具合になるのか、やってみようというわけ。

 お客さんの中にはデッドを聴くのも初めてという方もおられたので、簡単に説明しましたが、デッドは普通のロック・バンドではなく、同じライヴは二度しなかったので、スタジオ盤で判断せずにライヴ録音、それもできれば1本のショウをまるまる収めたものを聴いてください、ということを強調しました。「できれば」1本だけではなく、何本か、聴いてから判断してくれ、と言いたいです。「いーぐる」の後藤マスターは、まず黙って100枚聴いてからジャズが好きか嫌いか判断しろ、と言われてますが、デッドも100本とはいいませんが、少なくとも10本は聴いてから判断してほしい。

 この日かけたのは以下の録音です。

1. 1972-08-27, Veneta, OR: Sunshine Daydream
The Promised Land

2. 1966-07-29, P.N.E. Garden Aud., Vancouver, Canada
Cream Puff War

3. 1969-02-28, Fillmore West, San Francisco, CA
IV-5. Death Don't Have No Mercy (Reverend Gary Davis)

4. 1980-10-09, The Warfield, San Francisco, CA
Cassidy

5. 1987-12-31, Oakland-Alameda County Coliseum Arena, Oakland, CA
The Music Never Stopped

6. 1990-03-29, Nassau Coliseum, Uniondale, NY
Bird Song

 以下、各トラックについて、簡単に。

1. 1972-08-27, Veneta, OR: Sunshine Daydream
The Promised Land

 同時に撮られた映像があるので、音はアナログから再生して同期できないか、という試みでした。映像と音を別々に再生し、せーので再生ボタンを押すという、はなはだ原始的、アナログ的な方法で、何度かの試行ののち、少しズレたものの、まあ楽しめる程度におさまる形になりました。

 この1972年はデッドのピークの一つで、春には2ヶ月、22個所にわたるヨーロッパ・ツアーを成功させています。この時の全録音がリリースされています。個々のショウの録音も入手可能です。あたしはこの22本を聴いてゆくことでデッドにハマりこみました。

 08-27のショウは、デッドの友人の1人である作家のケン・キージィの親族が経営する酪農場救済のためのチャリティ・ショウで、真夏の屋外での昼間のショウです。このライヴは全篇録画もされ、ここから Sunshine Daydream というタイトルのテレビ用映画が作られました。公式リリースにはこの映画を収めたDVDまたはブルーレイも同梱されました。映画の画像は後半、バンドの演奏からは離れて、客席や周囲の様子、さらに当時の流行にしたがってサイケ調の抽象映像になってゆきますが、なかなか面白いものではあります。


2. 1966-07-29, P.N.E. Garden Aud., Vancouver, Canada
Cream Puff War

 一昨年に出たデッドのデビュー・アルバム50周年記念デラックス盤に同梱された録音。デッドの最初の海外公演でした。ちなみに最後の海外公演もカナダでした。曲はガルシアの単独作品です。なお、この頃の録音の通例でリード・ヴォーカルはすべて左に寄っています。

 これはまた、1本のショウ全体またはそれに近い録音が残っている最も初期のものの一つです。録音したのは当時デッドのサウンド・エンジニアだったアウズレィ・スタンリィ。「ベア」の通称で呼ばれていたこの男は、デッドが関係するイベントでのLSDの供給者として有名ですが、一方優秀なサウンド・エンジニアでもあり、後に巨大な「ウォール・オヴ・サウンド」に発展するデッドのライヴ・サウンドの改善に大きく貢献しています。また、ショウ全体の録音を始めたのもスタンリィで、初期の録音はほとんどが彼の手になります。

3. 1969-02-28, Fillmore West, San Francisco, CA
Death Don't Have No Mercy (Reverend Gary Davis)

 デッドがベイエリアのローカル・バンドから飛躍したアルバムがこの年に出た最初のライヴ・アルバム《Live/Dead》で、その元になったのは2月末から3月初めにフィルモア・ウェストに出たときの録音です。その4日間の全録音が2005年に出ました。

 これはブルーズ・ナンバーですが、珍しくピグペンではなく、ジェリィ・ガルシアがリード・ヴォーカルをとり、しかも結構真剣に唄っています。ガルシアはある時期から自分の歌唱スタイルを決めて、そこからはずれなくなりますが、この頃はまだちゃんと唄おうとしています。


4. 1980-10-09, The Warfield, San Francisco, CA
Cassidy

 1980年の秋にサンフランシスコの The Warfield Theatre とニューヨークの Radio City Music Hall でレジデンス公演を行います。この時には第一部を全員アコースティック楽器を使い、二部と三部はいつものエレクトリックでの演奏をしました。ここからはアコースティックの演奏を集めた《Reckoning》とエレクトリックの演奏を集めた《Dead Set》の二つのライヴ・アルバムが出ています。そのうち、10-09 と 10-10 のアコースティック・セットを完全収録したアナログとCD各2枚組が、今年のレコードストア・ディ向けにリリースされました。そのうち10-09の分から選びました。

 アコースティック楽器ですが、後半いつものデッド流ジャムを繰り広げていて、とてもスリリングです。アコースティックでの演奏をもっとやってもらいたかったと、こういうものを聴くと思わざるをえません。


5. 1987-12-31, Oakland-Alameda County Coliseum Arena, Oakland, CA
The Music Never Stopped

 デッドにとって最も重要な関係にあったプロモーターのビル・グレアムは年越しライヴが大好きで、かれが生きている間は毎年、デッドはベイエリアで年越しライヴを行っています。その一つからの選曲。

 デッドのショウはたいていが二部構成で、この曲は第一部の最後や第二部の冒頭に演奏されることが多く、これは第一部のラスト。最後のウィアのMCによれば、この後、新年へのカウントダウンがあった模様。


6. 1990-03-29, Nassau Coliseum, Uniondale, NY
Bird Song

 1990年春のツアーはデッドの最大のピークの一つです。それを象徴するのがこの日のショウで、フィル・レシュの友人が自分の友人であるブランフォード・マルサリスをこの前日03/28に連れて来ます。楽屋に挨拶に来たブランフォードに、ガルシアは翌日、楽器をもって遊びにこないかと誘います。誘いにのってやって来たブランフォードが、リハーサルもなにも無しにいきなりステージに現れて演奏したのがこのトラック。前半はこれだけでしたが、後半はアンコールまでほぼ出突っ張り。この時のツアーは二つのボックス・セットでリリースされていますが、この日のショウの録音だけは Wake Up And Find Out というタイトルで独立に売られています。

 ブランフォードはスティングの《Bring On The Night》での演奏も有名ですが、本人としても、全体としても、デッドとの共演の方が遙かに良いと、あたしなどは思います。

 ここではガルシアとマルサリスが、まるで昔からずっとやっていたかのようなすばらしい掛合いを展開し、バンドもこれに反応して盛り立てます。その様子が、レーザーターンテーブルとPAスピーカーのシステムで、まさにその現場に居合わせたように再現されたのでした。

 11-23には、レーザーターンテーブルでアナログ盤でデッドのライヴ録音を聴いてゆきます。映像とのアナログ的同期ももう少しうまくいくようにします。(ゆ)

 8月9日はジェリィ・ガルシアの命日ですが、その翌日、アナログでデッドのライヴ音源を聴いてみる試みをします。公式のイベントというよりは、公開リハーサルなんですが、こういうホールで爆音で聴けるチャンスは滅多にないでしょう。

 当日かける音源はすべてアナログ・レコードで、これをレーザーターンテーブルでかけます。レーザーターンテーブルについては、こちらをどうぞ。

 こういう記事も書いてます。

 かける音源は昔出ていたアナログとは別に後から出ているアーカイヴからのライヴ音源のアナログ盤です。

 イベントの概要はこんな感じです。

来週8/10の土曜の午後3時頃から、「おおしま ゆたか」さんと、さいたま芸術劇場「映像ホール」で「Grateful Deadレコード」の試聴会を行います。これは、この秋11/23に企画している【R & R レコード感謝の日】の公開音出しリハーサルです。
おおしまさんの解説と共に、デッドのレコード音楽をレーザーターンテーブルとフランス製スピーカー「Nexo」のシステムを使ってシアター空間でイイ音を響かせます。
参加は無料。

ガルシアさん24回目の命日の翌日、Grateful Deadの素晴らしいレコード音楽に多くの人に会いに来て欲しいです!

◯8月10日 土曜日  15時頃から 約90分の「Grateful Deadレコード」音出しリハーサル
会場 : さいたま芸術劇場  映像ホール  …さいたま市中央区上峰(うえみね)3-15-1
        JR埼京線与野本町駅(西口)下車 徒歩7分  …新宿から快速で27分
参加費 : 無料
お問合せ : 070-5549-8860

 会場のサイトはこちら

 映像ホールについてはこちら


 あたしも「説明」するよりも聴きたいので、おしゃべりは最低限にします。リクエストもどうぞ。(ゆ)

 先日は台風24号が近付く雨のなかを、お越しいただき、ありがとうございました。

 アイリッシュ・ミュージックのアナログ録音は1980年代末までで、最近のアナログ・ブームでも、アナログでのリリースはまだまだ少ないです。新しいところもそのうちレーザーターンテーブル+タグチ・スピーカーで聴いてみたいですが、この点では、スコットランドやイングランドの方が進んでいます。スコットランドも良い録音が多いので、チャンスがあれば、と願ってます。

 当日かけた曲目のリストです。

01. Planxty, The Blacksmith from Planxty, 1973
 アンディ・アーヴァインがリード・ヴォーカルをとり、アレンジも中心になっていて、後半は東欧風の曲調になります。もちろん、当時こんなことをしているのは、彼ら以外にはいませんでした。遙か後にアンディはデイヴィ・スピラーンと組んで《East Wind》を作ります。その布石にもなりました。《East Wind》はこれに参加していた Bill Whelan にも刺戟を与え、『リバーダンス』の東欧ダンスの曲に結実します。

 
Planxty
Planxty
Shanachie
1989-12-12




02. Christy Moore, One Last Cold Kiss> Trip To Roscoff from Whatever Tickled Your Fancy, 1975
Christy Moore: vocal, bodhran
Donal Lunny: bouzouki, keyboards, vocal
Jimmy Faulkner: guitars
Kevin Burke: fiddle
Declan McNelis: bass
Robbie Brennan: drums
 2曲のメドレーの1曲目はアメリカのバンド、Mountain のヒット曲。2曲めはトラディショナル。

Christy Moore/Whatever Tickles Your Fancy
Christy Moore
Raven [Australia]
2004-06-01



03. Andy Irvine & Paul Brady, Arthur McBride
 ポール・ブレディとアンディ・アーヴァインが作った名盤中の名盤。プロデュースはドーナル・ラニィで、ドーナル自身、数多いプロデュース作品の中でも最も印象が強いものと言ってました。メンバーは二人とドーナルにここでもケヴィン・バークがフィドルで参加。ただし、この曲はポールが一人でギターを弾き、うたっています。この歌の数多い歌唱のなかでも決定版と言われるもの。ポール自身、何度も唄い、録音しています。Transatlantic Sessions, Vol. 2 での歌唱はお薦め。

Andy Irvine & Paul Brady
Andy Irvine & Paul Brady
Gael Linn



04. Mick Hanley & Micheal O Domhnaill, Biodh Orm Anocht from Celtic Folkweave, 1974
 ボシィ・バンドの要、ミホールがボシィをやる前に、シンガー・ソング・ライターの Michael Hanley と作っていたアルバム。参加メンバーはリアム・オ・フリン、ドーナル・ラニィ、マット・モロイ、トゥリーナ・ニ・ゴゥナル、デクラン・マクニールズに、先ごろ亡くなったトミィ・ピープルズという布陣。プランクシティとボシィ・バンドの混成というのも面白いです。ただし、この曲はほぼ二人だけのヴォーカル。アイルランド語とスコティッシュ・ガーリックは親戚同士の言語ですが、ミホールたちの本拠ドニゴールはスコットランドと関係が深く、言葉も混合しているそうで、この歌はその混合した言葉でうたわれます。


05. Clannad, O bean a'ti, cenbuairt sinort from In Concert
 初期クラナドの1978年のスイスでのライヴ録音。彼ら自身はこの頃をアマチュア時代と呼んでいますが、ぼくらにはこの頃こそが彼ら本来の音楽に聞えます。

06. Na Casaidigh, Fead An Iolair from Fead An Iolair
 ドニゴールはグィドーア出身の Na Casaidigh 兄妹のバンドのセカンドのタイトル曲。
Aongus: bodgran
Fergus: guitar
Seathrun: bouzouki
Fionntan: fiddle
Odhran: uillean pipes
Caitriona: harp

07. Mairead Ni Mhaonaigh & Frankie Kennedy, Thios i dTeach a' Torraimh from Ceol Auaidh, 1983
 同じくドニゴールはグィドーア出身のマレード・ニ・ウィニーがフランキィ・ケネディと作った最初のアルバムから、彼女の無伴奏アイルランド語歌唱。

Ceol Aduaidh
Mairead Ni Mhaonaigh
Traditions (Generic)
2011-09-20



08. The Chieftains, Round The House> Mind The Dresser from Live!, 1977
 演奏能力では絶頂期のチーフテンズのライヴ録音から。この時期のチーフテンズのライヴを見たかった。
Kevin Conneff: bodgran
Michael Tubridy: flute, concertina, whistle
Sean Potts: whistle, bodhran
Paddy Moloney: uillean pipes, whistle
Sean Keane: fiddle
Derek Bell: harp
Martin Fay: fiddle

Chieftains Live!
The Chieftains
Claddagh
2008-04-15



09. De Dannan, Love Will Ye Marry Me> Byrne's Hornpipe from Selected Jigs, Reels & Songs, 1977
Alec Finn: bouzouki
Frankie Gavin: fiddle
Charlie Piggot: banjo
Johnny Ringo McDonagh: bodhran

Johnny Moynihan: vocal

 すみません、これ、順番がわからなくなったので、とりあえず、ここに入れときます。デ・ダナンは何をやってもすばらしいですが、ぼくはホーンパイプをやる時が一番好きです。後には「ヘイ・ジュード」をホーンパイプに仕立てたりもしました。

10. Dolores Keane, The Bantry Girl's Lament from There Was A Maid, 1978
 第二次世界大戦後、現在にいたるまで、アイリッシュ・ミュージック最高のシンガーといえばこの人。その絶頂期の録音。バックのミュージシャンのクレジットがオリジナルのレコードにはありません。

There Was a Maid
Dolores Keane
Claddagh Records
2011-11-29



11. Dolores Keane & John Faulkner, Mouth Music from Broken Hearted I'll Wander, 1981
 こちらはイングランド人ジョン・フォークナーのプロデュースによる口三味線の録音。強烈にアイリッシュしてます。

Broken Hearted I'll Wander
Dolores Keane & John Faulkner
Mulligan
2008-11-24



12. Kevin Burke & Micheal O Domhnaill, Coinleach Ghlas an Fhomhair from Promnade, 1979
 ミホールがボシィ・バンドの同僚ケヴィン・バークと作った、ボシィ・バンドとは対照的に静かな音楽。このコンビの録音はアルバムがもう1枚とライヴ・ビデオがあり、どちらもすばらしいです。

Promenade
Kevin Burke
Green Linnet
1996-06-25



13. The Bothy Band, Music in the Glen from Old Hag, You Have Killed Me, 1976
 静かな音楽を聴くと、やはりボシィ・バンドが聴きたくなるのは不思議。

Old Hag You Have Killed Me
Bothy Band
Green Linnet
1993-01-05



14. 中村大史, July 22nd from Guitarscape, 2017
 わが国を代表するアイリッシュ・ミュージシャンの中村さんのギター・ソロから、かれのオリジナル曲。

guitarscape
Hirofumi Nakamura 中村大史
single tempo / TOKYO IRISH COMPANY
2017-03-26



 歌の歌詞などはまた後日。(ゆ)

 金曜日には「アイルランド音楽 レコード “いい音” 聴き語り」@秋葉原のイケベックにお越しいただき、ありがとうございました。

 レーザーターンテーブルタグチ・スピーカー F-613 の威力は予想以上で、あらためてたまげてしまいました。これは本当に病みつきになりそうです。まいったなあ。幸いにもお客さまたちにはお楽しみいただけたようで、次回にはもう1回全部聴きたいというご希望もいただいたくらいです。

 次回は 09/29(土)夜に日本橋・三越でやります。もう1回全部聴き直したいのはあたしも同様ですが、それはたとえば1年後ぐらいにして、次回は今回とは違う音源を聴こうと思ってます。

 実はセッティングしたところで、McIntosh のプリアンプが故障していることがわかり、一瞬、焦ったのですが、パワーアンプからの直結で事無きを得ました。このパワーアンプは McAudi M1002 です。これもすばらしい。

 今回聴いた音源です。前半はあたしのアイリッシュ・ミュージックとの出会いを辿る形で聴いていきました。もうあちこちで書いたりしゃべったりしてますが、あたしは初めはアイルランドの音楽とはわからず、ブリティッシュ、ブリテン諸島の音楽の一部として聴いていました。それが、だんだんどうもアイルランドは他とは違うらしいと感じだし、別物との感覚が決定的になり、今度は意識して聴いてゆくという過程です。

 もっとも厳密にそれを辿るのではなく、The Bonnie Light Horseman の二つのメロディの異なるヴァージョンの聞き比べもしてみました。こういうことも伝統音楽の楽しみです。

01. Raggle Taggle Gypsies; Tabhair Dom Do Lamh from Planxty, 1973

02. Ini/on A' Bhaoghailligh from Mairead Ni Mhaonaigh & Frankie Kennedy, Ceol Aduaidh, 1983

03. Mouth Music from Dolores Keane & John Faulkner, Broken Hearted I'll Wander, 1981

04. Ril Mhor from The Chieftains, Live!, 1977

05. Tom Billy's; Ryan's Jig; The Sandmount Reel; The Clogher Reel from *De Danann, Selected Jigs Reels & Songs, 1977

06. Merrily Kiss The Quaker from *Joe Holmes & Len Graham, Chaste Muses, Bards And Sages

07. The Bonnie Light Horseman from *Oisin, Over The Moor To Maggie, 1980

08. The Bonnie Light Horseman from Dolores Keane & John Faulkner, Broken Hearted I'll Wander, 1981


*Dick Gaughan, Coppers & Brass, 1977
 休憩中に小さめの音量で流していました。

 後半は枠をはずして、まず今回おそらく最も録音の良い音源を聴いてみました。そこからイリン・パイプつながりで、レオ・ロウサム、ボシィ・バンドのパディ・キーナンを聴き、うたにもどってポール・ブレディを聴いたところで時間切れ。最後に中村さんのソロから中原直生さんの作品を聴きました。CDではもちろん聴いてましたが、アナログではあらためて感動しました。もう、これからはアナログとダウンロード権だけで、CDは要らないんじゃないかと思えるくらい。

09. Atlantic Bridge from *Davy Spillane, Atlantic Bridge, 1987

10. The Fox Hunting from Leo Rowsome, Ri Na bPiobairi (The King Of The Pipers), 1959

11. Music in The Glen from The Bothy Band, Old Hag You Have Killed Me, 1976

12. Jackson and Jane from Paul Brady, Welcome Here Kind Stranger, 1978

13. Hourglass from 中村大史, Guitarscape, 2017


 ちょっと困ったなと思ったのは、翌日、都内に出かける電車の中でいつものようにDAPでイヤフォンで聴くと、デジタルのせいなのか、音のエッジが立ちすぎてキツく聞えてしかたがありません。録音は悪くないし、楽曲も演奏もすばらしいのですが、とりわけフィドルの響きが耳に刺さるようなのです。2時間ほど聴いただけなのに、アナログの威力はおそろしい。

 ちなみに聴いていたのはこれです。

Orkney-Folk-Fidd-Gath
 

 2015年のライヴ録音集で、必ずしもフィドルばかりではなく、フィドラーにまつわる歌もあったり、スタイルもいろいろで、何より演奏の質も高く、楽曲も良く、聴き応え充分です。お薦め。

 それにしても、ますますアナログ熱が高まりそうです。しかしレーザーターンテーブルを買うカネは無いぞ。(ゆ)

 思い出して、明日の「アナログでアイリッシュ・ミュージックを聴く」イベントにはこれも持って行きます。アニー、中村大史さんのソロ・ファースト《Guitarscape》のアナログ盤。

 
annieGuitarscapeLP1


 わが国アイリッシュ系のミュージシャンの録音としては今のところ唯一のアナログ盤です。

annieGuitarscapeLP2


 実はまだ針を降ろしてません。まっさらの状態。どんな音で聴けるかな。(ゆ)


 今月末、プレミアム・フライデーの29日夜の、アナログでアイリッシュ・ミュージックを聴くイベント「アイルランド音楽レコード“いい音”聴き語り」用に選んだのは以下のアルバムです。アーティストの五十音順。星印 * を付けたのはあたしの知るかぎり、CD化されていないもの。

*Capercaillie, Cascade
Christy Moore, Whatever Tickles Your Fancy
*Clannad, In Concert

clandlive


*Davy Spillane, Atlantic Bridge

dsac


*De Danann, Selected Jigs Reels & Songs

DeDanann2

 *Dick Gaughan, Coppers & Brass
Dolores Keane & John Faulkner, Broken Hearted I'll Wander
Dolores Keane, There Was A Maid
*Irlande 1: Heritage gaelique et traditions du Connemara, Ocora
*Joe Holmes & Len Graham, Chaste Muses, Bards And Sages
Kevin Burke & Micheal O Domhbaill, Promnade
Leo Rowsome, Ri Na bPiobairi (The King Of The Pipers)
Mairead Ni Mhaonaigh & Frankie Kennedy, Ceal Auaidh
*Micheal Hanly & Micheal O Domhnaill, Celtic Folkweave

mh&mod

 
Micho Russell, Traditional Country Music Of County Clare
*Na Cassaidigh, Fead An Iolair
*Oisin, Over The Moor To Maggie

Oisin2

 
Paul Brady, Welcome Here Kind Stranger
Planxty
The Bothy Band, Old Hag You Have Killed Me
The Chieftains, Live!

 これを全部かける時間はたぶん無いので、この中から選んで聴くことになるでしょう。

 プランクシティとかボシィ・バンドとかポール・ブレディとか、マレードとフランキィとか、基本の「き」で、CDでも配信でもネットでも聴けるものもありますが、あえてアナログで聴きます。なぜか。

 CDなどのデジタルで聴けるものをわざわざアナログで聴く必要は無い、とあたしも思ってました。ミュージシャンは Apple Music でそれも iPhone のスピーカーで聴いたりしていて、それもまあ当然だろうと思ってもいました。レーザーターンテーブルで古いアナログ盤を聴いてみて、引っくり返ったのはまずそこのところです。何が違うのか。

 音楽が訴える力が違う。

 録音というテクノロジーの最大の恩恵はタイムマシンが手に入ることです。時間を超えて遡ることができる。録音された当時の音楽、演奏が聴けるのです。死んでしまって、今はもう生では聴けない人の演奏も聴けます。

 たとえばプランクシティのファースト。メンバーは当時30歳前後。アイリッシュ・ミュージックの新たなスタイルを摑んだばかりで、意気軒昂、まさに龍の天に昇ろうと地を蹴ったところ。この演奏を70代も後半になった今のメンバーに演れといってもそれは無理というもの。それにリアム・オ・フリンは亡くなってしまいました。けれどもこのレコードに針を落とせば、じゃなかった、レーザーを当てれば、半世紀近く前の溌剌とした演奏が蘇ります。

 アナログで聴くと、単に音だけではない、その溌剌とした、これだ!というものを摑んだ歓びにはちきれんばかりの輝きがびんびんと伝わってきます。

 デジタルではそれは聴けないのか、と問われれば、残念ながら、と今は答えざるをえない。将来、デジタルでもアナログのこの感覚に匹敵するものを伝えられるようになる可能性はあります。凌駕さえできるかもしれない。

 人間の感覚器官、耳や舌や鼻や皮膚や眼は、デジタル情報を受取るようにはできていません。われわれが受取るのはあくまでアナログ情報なのです。だから、音源がデジタル・データであっても、一度音波というアナログに変換しなければ、音楽としては聞えない。アナログ盤には音溝という物理的情報の形で音楽が記録されています。アナログ盤による音楽再生に、デジタルでは感じられないものが感じられるのはこのせいでしょう。

 体内にチップやセンサーを埋めこんだりして、デジタル情報を直接受取れるようになれば、おそらく話は変わってきます。大昔の映画『バーバレラ』や、フレデリック・ポールの短篇「デイ・ミリオン」の世界ですね。そこではセックスさえもが、実際には肉体を触れあうことなく、しかも肉体の直接接触を遙かに凌駕する快楽として体験されてます。しかし、そういう時代はまだ当分来そうにありません。それまではデジタルはアナログにかなわない。デジタルによって生まれるリアリティは飽くまでもヴァーチャル・リアリティなのでしょう。

 たいていの場合には、それで用は足りてます。いや、デジタル化の恩恵は、デジタル化に伴うそうした「不便」を補って余りあります。あたしのライブラリに入っている音源は、アルバム・タイトルにして1万を超えてますが、掌に乗るサイズのハード・ディスクに収まってます。あの曲は誰が演っていたか、なんてのは、1秒もかからずに検索結果が出てきます。アナログ盤しか無い時代にそれをやろうとすれば、全部カードに録っておかねばなりませんでした。いつでもどこでも聴くこともできます。各々地球の反対側にいるミュージシャンがリアルタイムで共演することもできます。

 普段はそれでいいとして、録音された音楽の真の姿を確認することも時には必要です。いや、必要なんてのは本末転倒で、これを体験すると、また聴きたくなります。デジタルではついぞ体験できない輝きを、エネルギーを感じたくなります。針を使っても可能でしょうが、レーザーターンテーブルはさらに真の姿に迫ることができます。先日も書いたように、音溝の使われていない部分にレーザーを当てて再生することから、レコードがプレスされた当時の音を聴くことができるからです。

 加えて今回はもう一つ、タグチ・スピーカーの最新作 F-613 を使います。

F613


 タグチ・スピーカーは田口和典さんが作られているスピーカーで、その性能は知る人ぞ知るもの。とにかく自然で、これで聴くと録音された音楽を再生しているのではなくて、ミュージシャンがそこにいて演奏していると聞えます。あたしがグレイトフル・デッドのイベントをさせてもらっている下北沢の風知空知にはタグチ・スピーカーが備えられていて、家ではヘッドフォンでも聴いたことのない細部まできれいに聞えて、毎回感激します。しかも誇張とかまるで無い。

 その音の良さから、公共施設にも多数導入されていて、たぶん一番有名なのはブルーノート東京や衆議院本会議場でしょう。

 風知空知のはPA用ではなくて、家庭でも使えると思いますが、F-613 はそのモデルの進化形で最新版。あたしもまだ聴いたことがないので、たいへん楽しみ。

 デジタル化されていないアナログ盤ももちろんたくさんあるわけです。音楽がつまらないとか、録音が悪いとかでデジタル化されていないわけではないものも、たくさんあります。権利を買った人間が握り潰してるなんてのは論外ですが、当初の契約の不備でミュージシャンに権利が無かったり、レコード会社の栄枯盛衰のうちに権利が宙に浮いてしまったり、あるいはマスターテープが行方不明なんてのもよくある話です。デ・ダナンの初期やダーヴィッシュの Brian McDonagh がかつて組んでいた Oisin の諸作はデジタル化が待たれる筆頭ですが、他にも宝石はあります。ドニゴール(ダニゴル、の方が近いらしいですね)はグィドーアの家族バンド Na Cassaidigh のセカンドは、今回そういえばと聴いてみて、あらためて感嘆しました。

 つまり、CDなどで聴きなれた音楽でも、アナログで、レーザーターンテーブルで聴くと、また全然違いますよ、という話です。あたし自身、病みつきになりかけていて、できればアナログでアイリッシュだけでなく、スコティッシュやイングリッシュやウェルシュやブルターニュや、あるいはハンガリー(Kolinda のあの衝撃の最初の2枚!)なんかも聴いてみたい。ので、これを皮切りにこういうイベントを重ねたいと思ってます。

 ということで、今月のプレミアム・フライデーには、秋葉原へどうぞ。(ゆ)

 レーザーターンテーブルのキモの一つは、レコードの溝の中で、針が接触していない、上の部分をトレースすることでしょう。

 レコード盤の音溝は幅が51〜58ミクロンで、45度の角度で表面から直線に下がり、底は90度で交わってます。針はこの斜面の中央からやや下の部分に接触する。針の先端の脇が両側の斜面に10ミクロンの幅で触れる。より正確には、この幅で盤を削るわけです。したがって溝の一番底と上の方3分の1ほどは「すり切れる」ほど聴いたレコード盤でも無傷に近い。レーザーターンテーブルはその上の方、縁から10ミクロン下がった左右の斜面にレーザーを照射する。レーザーの幅は書いてませんが、1ミクロンぐらいらしい。

音溝断面図

 レーザーターンテーブルの資料を読んでいたら、最初に売れたのがカナダの国立図書館だったそうです。まだ開発途中で再生できるレコードの割合が一割にも満たなかった頃だったが、先方からは未完成でもいいからとにかく持ってこいと言われて、社長の千葉三樹氏とエンジニアが現物を持って行った。そこでこれを再生してくれと渡されたのが1919年録音のレコード。カナダ独立の時の国会議長のスピーチ、まあ独立宣言ですな、それが録音されたもの。もちろんSP盤で、さんざん再生されたんでしょう、通常のプレーヤーではもう聴けない。SP盤は今でこそ専用針がありますが、昔は竹や鉄の針でがりがりやってたわけです。今生きている人はその録音を誰も聞いたことがない。で、これが再生できた。その瞬間のカナダの人たちの歓びようはそれはそれは大変なもので、レーザーターンテーブルを製品化した千葉氏もその歓喜の様にその後ずっと背中を押され続けたと言うほど。

 こういうレコード盤でも再生できるのは、レコード盤の溝のうちの削られていない部分をトレースするからというのは素人でもわかります。

 レーザーターンテーブルはLPだけでなく、SP盤も再生できます。試聴の時、あたしも美空ひばりのSP盤(そういうものがあるのです)を聴かせていただきましたが、すんばらしい音、そしてすんばらしい唄でした。

 SP盤はLPに比べるとダイナミック・レンジはひどく狭いですが、人間の声の録音・再生にはLPでもかなわないところがあります。SPからLPに切り替わったのは、まず収録時間が圧倒的に長いためです。LPとは Long Player の略です。SPは片面せいぜい3分半。LPはムリすれば30分まで詰めこめます。それとSPは盤面に直接録音するので一発録り。失敗したら全部やり直しになる。LPはテープに電気的に録音したものから作れるのも大きい。

 ちなみにLPからCDに切り替わったのもまず収録時間の長いこと。CDの収録時間はカラヤン指揮ベルリン・フィルのベートーヴェンの第九が収まる長さに決められたというのは有名ですが、レコード盤を引っくり返す必要がなくなった。だから、真先にCD化が進行したのはクラシックでした。もう一つの理由、実はこちらの方が重要という話もありますが、輸送と貯蔵つまり流通が圧倒的に楽なこと。同じ重さなら、CDの方が遙かにたくさんの枚数が運べて貯蔵できますし、割れにくい。温度変化にも強い。ということはコストが低い。

 というのは余談ですが、あたしが試聴させてもらったアイリッシュのLPも、カナダ独立宣言のレコードほどではないにしても、溝の状態は良いとは言えません。何回再生したかはもうわかりませんし、かつてはカネもないから、再生システムも安物です。あたしのまともなオーディオの最初のものはヤマハのアナログ・プレーヤーで、針はたぶんナガオカの当時数千円のものだったはず。がりがり削るとまではいかなくても、似たような状態で聴いていたわけです。それでも感動してどんどん深みにはまっていったのは、音楽自体の魅力ではあります。

 そういう盤でもプレス直後の音で聴けるのがレーザーターンテーブルというわけです。だからアナログの音というだけでなく、アナログの音の一番新鮮なところを聴ける。しかも、レーザーはレコード盤そのものには影響を与えない。そりゃ、数万、数十万回照射すれば影響はあるでしょうがね。針に比べれば、無視していいほどの影響です。なので、何回再生しても、針のように音がだんだん悪くなってゆく心配はない。

 このことはもう一つ、あたしにとってありがたいことでもあります。つまり、アナログの音に感動して、家でいくら聴いても、レーザーターンテーブルによる再生には影響を与えないわけです。なにせ、読み取る場所が違うんだから。

 え、家でもレーザーターンテーブルで聴きゃいいじゃないか、って。そりゃ、カネがあればね。アイリッシュ・ミュージックはココロはそれは豊かにしてくれるし、人生全体もとんでもなく楽しいものにしてくれますが、アイリッシュ・ミュージックで金持ちになったという話は聞いたことがありません。まあ、一人だけ、いないこともないけど、あれは例外。(ゆ)

 いきなりですが、アナログ・ディスクつまりLPでアイリッシュ・ミュージックを聴こうというイベントをやります。

アイッシュレコードいい音Live


 きっかけはレーザーターンテーブルに出逢ってしまったことです。レーザーターンテーブルは針の代わりにレーザーでレコード盤の溝をトレースして音を読みとり再生するアナログ・プレーヤー。開発されたのはもうずいぶん前、メーカーによると30年前になるそうですから、そろそろLPからCDへの切替が完成する頃、耳にした記憶があります。その時はそんなことができるのか、半信半疑でした。オーディオにはよく新技術による革新的製品というのが登場します。技術は新しいけれど、それで音が良くなっったか、ようわからんというものもままあります。その頃は「レーザー」といえば光線銃というアタマがありましたから、レーザーを照射したらレコードに穴があくんじゃないの、とか言ってまともに受取りませんでした。

 もちろんレーザーといっても多種多様なので、武器として使われるのはむしろ特殊なケースです。だいたいCDはレーザーを使ってるわけだし、文字通りレーザー・ディスクなんてのもあったわけですが、すでにLPの時代は終っていたこともあり、レーザーターンテーブルのことはすっかり忘れていました。

 それが偶然メーカーの方にお眼にかかったことから、試聴するチャンスをいただきました。レーザーターンテーブルは5本の細いレーザーをレコード盤面に照射するそうです。2本が先導で溝を辿り、もう2本が左右の壁をトレースする。トレースするのは溝の縁から10ミクロン下だそうで、ここは針が接触しないので傷がついていない。針はもっと深い、溝の底に近いところに接触します。もう1本はレーザー・ヘッドとレコードの盤面の距離を測って、ヘッドの高さを一定に保つ。そうして読み取った振動は針で読み取るより遙かに精確になる、というのはまあわかります。 読み取った後は他のアナログ・ターンテーブルと同じで、アンプを通してスピーカーなりヘッドフォンを鳴らします。

 百聞は一見に、じゃなかった、百見は一聴に如かず。とにかく聴いてみようじゃないかと、メーカーの試聴室にでかけました。持っていったのは当然アイリッシュ・ミュージック。その昔、あたしが貧しいシステムで聴いて、その虜になっていった、まあ懐しい盤です。

 聴いて引っくり返りました。アンプはマッキントッシュでスピーカーはJBLという、ある意味ひと時代前のシステムですけど、いや、凄い。こんな音が入っていたのか。そして、こんな音楽をやっていたのか。

 さんざん聴いた音源です。プランクシティのファーストにボシィ・バンドの Old Hag の類。そりゃ、アナログで聴くのは数十年ぶり、とはいえ、若い頃に「すり切れる」まで聴いて、CDでも数えきれない回数聴いて、隅々まで記憶に刻みこまれた録音。と思っていました。それが、まるで昨日スタジオでとれました、というような瑞々しい、新鮮な音楽に聞えます。

 デ・ダナンのセカンド Selected Jigs & Reels は、未だにCD化されてませんから、音源自体聴くのはたぶん四半世紀ぶり。またまた引っくり返りました。こりゃ、凄い。こんな凄いことをかれらはやっていたのか。あたしらはよく「プランクシティ〜ボシィ革命」などと口にしますが、デ・ダナンもちゃんと加えなきゃあかんじゃないか、これじゃ。ダーヴィッシュは絶対にデ・ダナンがお手本だぞ。

 マレード・ニ・ウィニー&フランキィ・ケネディのファースト。CDになったとたんに買いこんで、これまたそれこそCDがすり切れようかという程聴いてます。ここでしか聴けないマレードの無伴奏歌唱のなまめかしさ!

 音楽自体もさることながら、録音がまた良い。メーカーの方も録音の良さに驚かれています。アイリッシュの録音は昔から音は良いのです。とりわけ生楽器の録音には、ロンドンやロサンジェルスが逆立ちしてもかなわないところがあります。アイルランドの人びとは太古の時代から音楽の大好きな人たちだからか、やはり耳がいいんでしょう。ダブリン録音はメジャーやアニソンなどでもよくみかけます。その昔、アイリッシュ・ミュージックが国内盤で盛んに出ていた頃、アイルランドの原盤を聴いた国内メジャー・レーベルのマスタリング・エンジニアが、どうしてウチのスタジオはこういう音が録れないのだと嘆いたという噂を耳にしたこともあります。

 この音と音楽なら、レーザーターンテーブルの宣伝にもなると思われたのでしょう。というのは下司の勘繰りでした。この素晴らしい音楽といい音をアイリッシュ・ミュージック愛好家の方々とシェアしたいと思われたのだそうです。もっともこのT氏もアイリッシュを知らないわけではないらしい。レーザーターンテーブルを使って、アイリッシュ・ミュージックのアナログ・ディスクを聴くというイベントをやりましょうと言われました。あたしはもちろん双手を挙げて賛成しました。

 というわけで上記のイベントです。念のため、もう一度書いておきます。

アイルランド音楽 レコード “いい音” 聴き語り

〜レーザー光で甦る、アイリッシュ・ミュージック名盤・名曲 “いい音”たち

開催日時:2018年6月29日 (金曜日)19時から

東京都千代田区神田佐久間町2-11

TEL. 03-3862-0068 (代)

JR秋葉原駅 昭和通り口から徒歩1分。

参加費 : 1ドリンク付き3,000円(税込)


 かけるのは鋭意セレクションしてますが、上にも書いた、プランクシティのファーストやボシィのセカンド Old Hag You Have Killed Me、デ・ダナンのセカンド、マレードとフランキィのファーストはじめ、往年の名盤たちです。なるべくCD化されていないもの、CDにならなかったので忘れられてしまったとか、隠れた傑作も選ぶつもり。デイヴィ・スピラーンの初期作とか、ミホール・オ・ドーナルとミック・ハンリィの Celtic Folkweave とか。スコットランドやノーサンバーランドも少し混ぜます。ディック・ゴーハンが Topic から出した、ギターによるダンス・チューン集 Coppers & Brass は、なぜかCD化されてないんですよねえ。あるいはカパーケリーのファースト Cascade。これもCD化されていない。この冒頭の G.S. MacLennan 作の The Little Cascade の演奏は鮮烈です。

 良い音で聴くことは良い音楽へのリスペクトだとあたしは思います。それに、良い音で初めてわかる、聞えるものも確かにあります。音楽の全体像が変わることさえある。YouTube や MP3 でいつでもどこでも聴けるのは大きな恩恵ですが、それでこぼれ落ちるものも少なくない。いつでもどこでも常に可能な限り良い音で聴こうとするのは趣味の領域ですが、レコードを作った人びとの意図になるべく近い音で一度は聴いてみるのはライヴの体験に通じるものがあります。

 だいたい2時間の予定なので、マックス20枚20トラックというところでしょう。ほんとは片面全部とか聴きたいですが、そうもいかん。なるべくしゃべりは減らして、音に浸っていただこうと思ってます。この日はいわゆる「プレミアム・フライデー」だそうで、あたしなんぞ縁は無いと思っていたら、こういう形で縁ができそうです。(ゆ)

Planxty    明日の「いーぐる」イベントのために、かける予定のアナログ・ディスクをチェックする。もう何年もターンテーブルに乘せていないので、万が一の用心のため。そうして、あらためて、その音に降参する。音が「良い」とか、「高音質」とはちょっと違う。

    ウチのアナログ・システムはもう20年前に買った SOTA Saphire + Grado Standard Arm + Grado Signature のままで、しかも年に一度動かすかどうかだし、アンプとスピーカーは B&O だ。おまけにスピーカーと聴いている椅子との間には、本だのCDだのがあちこち積まれている。悪くはないかもにしれないが、条件は良くはない。実際、今日は二度ほど、回転速度が低下した。二度ともすぐに自動的に回復はしたものの、そろそろベルトも交換しなければならないのだろう。

    それでも、である。何なのだろう、この生々しさは。

    定位とか、音場とかならば、iMac + BauXar Marty101 の方がずっと上ではある。「音質」も、音の品質ということなら、たぶんうちのアナログは負けている。

    しかし音の質感、というより触感、手ざわり、耳ざわりでは、うちでもデジタルはアナログの敵ではない。音の存在感がちがう、と言ってもいいかもしれない。

    いささか不思議なのは、そこで楽器が鳴っている感覚ではデジタルは負けていないか、あるいは多少とも上ですらある。ところが、音、ないし音楽が鳴っている感覚では圧倒的にアナログに軍配が上がる。音が実体を伴っている。

    まあ、単純に、まだうちのデジタルのシステムが追いついていないだけのことかもしれない。が、それにしても、あらためてアナログの音に惚れなおした。うちでこの音なのだ。「いーぐる」ではどうなるのだろう。(ゆ)

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