クラン・コラ・ブログ(アイルランド音楽の森)

 アイリッシュ・ミュージックなどのケルトをはじめ、世界各地のルーツ音楽を愉しむブログです。そうした音楽の国内の音楽家も含みます。加えて主宰者の趣味のグレイトフル・デッド。サイエンス・フィクション、幻想文学などの話もあります。情報やメモ、ゴシップ、ただのおしゃべりなどもあります。リンク・フリーです。

タグ:アンプ

06月08日・水
 このところスピーカーで聴くのがすっかり愉しくなってしまった。イヤフォン、ヘッドフォンはほとんどがお休み中だ。AirPods Pro で YouTube や Bandcamp などで試聴するくらい。

 理由の一つは良いスピーカーを手に入れたからだ。Hippo さんが A&C Audio で造った最後の製品 Dolphin PMS-061。今の薩摩島津最初の製品 Model-1 の原型。スピーカー・ユニットは同じで、ガワが違う。樹脂製で前面はユニットから斜めに後退する形だし、制振ユニットもついていない。しかしあたしにはこれで十分だし、制振ユニットは Hippo さんがオマケで付けてくれた100円ショップで売っているゼリー状のもので代用が効く。


 この「特に不満がない」というのが危険であることは、オーディオを趣味とする人なら身に覚えがあるであろう。裏返せば、大満足していない、あるいはその機器に夢中になっていない、ということで、これは即ち、実はもっと良いものがあるのではないか、とうずうずしている状態をさす。

 しかし Aiyima のペアは Hippo さんが推薦するだけあって、8割から9割くらいの満足感は与えてくれているし、これより格段に優れたものを求めれば、おそらく手の届かない世界の住人であろうとも思われた。

 そんなこんなで、ぼんやりとあちこち覗いているうちに行き当ったのが ExAudio という横浜の通販専門店のサイトだ。ここに Bakoon Products というメーカーのスモール・アンプがあった。メーカーは熊本だそうだ。まず何よりもツラがいい。真黒にオレンジのノブとプリント。音が良いのはツラも良い。面が良いのは恰好が良いとか見映えがするのとは異なる。やたらデザインに凝った挙句、隠したつもりの媚びがはみでているのとももちろん違う。まず自信がある。これが出す音は良いものであることに自信がある。その面を見た途端に聴きたくなった。



 パワー・アンプの最大出力が 6W というのも気に入った。ニアフィールドで聴く分には巨大パワーは要らない。十分なパワーで出す音をいかに良くするかに集中したともある。まさに聴いているのはニアフィールドだ。スピーカーまでの距離は 1.5m もないくらいだ。

 値段もいい。このスモール・タイプのプリとパワーは合わせても18万。そりゃ安くはないが、500円玉貯金も20万を超えてはいるから、まったく買えないわけではない。こうなると、矢も盾もたまらなくなって、試聴を申し込んだ。

 やってきた箱が小さい。受け取ってみると軽い。これでプリとパワーが入ってるの、と思わせるほど軽い。確かに二つ入っている。サイズも小さい。Aiyima TPA3255 の方が大きいくらいだ。

 パワーのスピーカー端子は昔ながらの、レバーを押してケーブルを突込み、レバーを離して固定する。TPA3255 はバナナ端子で、ケーブルもそれ用に処理された Canare だ。ネジを回してゆるめ、バナナ端子をはずした。

 まず、Bakoon のペアで聴く。聴いた途端、買おうと思った。音の芯が太い。空間が広い。聴いているのはハンス・ロットの交響曲第1番をパーヴォ・ヤルヴィがフランクフルト放送管弦楽団を振ったもの。その第四楽章前半。

ロット:交響曲第1番
ヤルヴィ(パーヴォ)
SMJ
2012-05-09


 こういう時、アイリッシュなどは使わない。生楽器の小編成の再生はいま時まずたいていの機器は失敗しない。一応まっとうに聞かせる。実際、ダーヴィッシュなんか聴いても、Aiyima と Bakoon で違いはない。どちらもすばらしい。フルオケのフォルティシモをきちんと描けるかがあたしの場合、判断の軸になる。

 ハンス・ロットはマーラーの二歳上の同窓で、後でマーラーが口を極めて誉めたたえた人だ。交響曲第1番は残された中での最大の作品で、地元の図書館にあったヤルヴィの録音を片っ端から聴くうちに遭遇した。そしたらすっかりハマってしまった。とりわけ、この第四楽章だ。これは他の楽章の倍の長さがあり、おまけに半ばで一度ほとんど終ったようになる。そこまで盛り上がってゆく部分。

 次にプリを Aiyima に替える。これは一応真空管のハイブリッドだからだ。すると、どうだ、弦の響きはこちらの方が良いではないか。比べると Bakoon のプリ CAP-1007 では、ほんの少しだが、雑に聞える。

 そこで Aiyima のペアに戻してみる。パワーは Bakoon SCL CAP-1001 に軍配があがる。スケール感、空間の大きさ、広がりは後者が明らかに上。フルオケの音が綺麗。濁りが皆無。

 DAC からパワー・アンプに直結してみる。音はそう変わらない気がする。この場合には DAC からは音量固定で出して、パワー側で音量調節する。やはり CAP-1001 に軍配が上がる。Aiyima は若干だがフルオケのところでより粗くなる。それに、CAP-1001単体よりも Aiyima TUBE-T10 を入れた方が弦が綺麗になる。真空管のおかげか。

 というわけで、Bakoon SCL CAP-1001 を買うというのが現在の結論。念のため、もう少し他のものも聴いてみる。デッドはどちらもいい。あえて言えば、Tube T-10 + CAP-1001 の方が、ヴォーカルが生々しい。


%本日のグレイトフル・デッド
 06月08日には1967年から1994年まで、11本のショウをしている。公式リリースは2本、うち完全版1本。

01. 1967 Central Park, New York, NY
 木曜日。2時と5時の2回のショウ。無料。共演 Group Image。
 この頃のデッドの写真で必ず出てくるセントラル・パークでのフリー・コンサート。カフェ・ア・ゴーオーでのランの初日の昼に行なったトムキンス・スクエア・パークでのフリー・コンサートと並んで、デッドの存在をニューヨークに強烈に印象づけた。音楽もさることながら、無料だったことで、「庶民のバンド」というイメージが固定する。このイメージを信じこんだ狂信的ファンによって、5年後のフランスで散々な目に遭うことになる。
 Group Image はマンハタンで結成された6人組。ジェファーソン・エアプレインが一応のお手本らしいが、音楽はもう少しブルーズ寄りの由。1968年にアルバムをリリースしている。

02. 1967 Cafe Au Go Go, New York, NY
 木曜日。このヴェニュー10日連続のランの8日目。二部、7曲のセット・リストがある。この第一部クローザーで〈Born Cross-Eyed〉がデビュー。ボブ・ウィアの作詞作曲。この後は1968–01-17から03-30まで10回演奏。スタジオ盤収録無し。
 2曲目の〈Golden Road To Unlimited Devotion〉はこれが記録にある最後の演奏。

03. 1968 Carousel Ballroom, San Francisco, CA
 土曜日。このヴェニュー3日連続のランの中日。セット・リスト不明。

04. 1969 Fillmore West, San Francisco, CA
 日曜日。このヴェニュー5日連続のランの4日目。3ドル。Jr ウォーカー、グラス・ファミリー共演。
 6曲目〈Turn On Your Lovelight〉に Aum の Wayne Ceballos がヴォーカルで、エルヴィン・ビショップがギターで参加。ピグペンは不在。その後の〈The Things I Used To Do〉〈Who's Lovin' You Tonight〉ではビショップがヴォーカルとギター。この間、ガルシアは不在。その後の〈That's It for the Other One〉でガルシアは復帰。フィル・レシュの回想録によれば、このショウではレシュほか数人が、ありえないほどドラッグ漬けになっていて、ステージで幻覚を見ていたそうな。
 第一部2〜4曲目〈He Was A Friend Of Mine〉〈China Cat Sunflower〉〈New Potato Caboose〉が《Fillmore West 1969: The Complete Recordings》のボーナス・ディスクでリリースされた。〈New Potato Caboose〉は2015年の《30 Days Of Dead》でもリリースされている。第二部〈That's It for the Other One> Cosmic Charlie〉が2012年の《30 Days Of Dead》でリリースされた。
 〈New Potato Caboose〉はこれが最後の演奏。1967-05-05以来25回目。レシュの曲で、明確なフォームを持たず、モチーフを核にして集団即興をするタイプだが、核になるメロディが複雑すぎて、うまく即興に打ち上げられない。リード・ヴォーカルはウィアだが、15回目の1968-03-17になってようやくまともに歌えるようになる。ガルシアは積極的にはソロをとらず、レシュにとらせ、そのソロをサポートしようとする。しかし、レシュはプライム・ムーヴァーではないので、バンドの即興をリードするまではいかない。バンドは何とか面白く展開しようと努めてみたものの、結局うまくいかなかった。

05. 1974 Oakland-Alameda County Coliseum Stadium, Oakland, CA
 土曜日。A Day On The Green #1 と題された2日間のフェスティヴァルの初日。前売8.50ドル、当日10ドル。開演午前10時。この日の出演はデッド、ビーチ・ボーイズ、ニュー・ライダーズ・オヴ・パープル・セイジ、コマンダー・コディ。出た順番はこの逆。ビーチ・ボーイズにとってはデッドは近づきたくない相手だったようだ。怖がっているようにみえたという話もある。
 デッドのショウそのものは良いものの由。
 ちなみに翌日は会場が Cow Palace に移って、テン・イヤーズ・アフター、キング・クリムゾン、ストローヴス。

06. 1977 Winterland, San Francisco, CA
 水曜日。このヴェニュー3日連続のランの中日。《Winterland June 1977》で全体がリリースされた。
 前日もベストだったが、それよりさらに良いとも思える。とりわけ後半、〈Estimated Prophet〉から〈Johnny B. Goode〉 まで一続きの演奏には、その続き方といい、デッドでも滅多にないゾーンに入っている。
 第一部が劣るわけでもなく、2曲目の〈Sugaree〉は5月初めの頃を凌ぐかとも思えるし、たとえば〈It's All Over Now〉のような種も仕掛けもない曲でも活き活きとしてくる。一見のんびりやっているようで、ドナ、ガルシア、ウィアのコーラスが決まっているし、ガルシアは例によって坦々とシンプルに音を重ねるだけで、すばらしいソロを展開する。これはもうギタリストのレベルではない。音楽家としての器が問われる。第一部クローザーの〈Supplication〉は、〈Slipknot!〉同様、ジャムのための場で、その中でも突出している。ガルシアがいかにも気持ち良さそうに快調に飛ばすギターを核にした集団即興には、もうサイコー! ベスト・ヴァージョン!とわめいてしまう。
 1977年は幸せな年であるので、デッドのユーモアもまた最高の形で発揮されている。もともと〈Row Jimmy〉とか〈Ramble On Rose〉などのユーモラスな曲には腹を抱えて笑ってしまうし、〈Wharf Rat〉のようなシリアスな緊張感に満ちた曲でも、顔がほころぶ。

07. 1980 Folsom Field, University of Colorado, Boulder, CO
 日曜日。このヴェニュー2日連続の2日目。12ドル。開演正午。ウォレン・ジヴォン前座。
 オープナーが〈Uncle John's Band> Playing In The Band> Uncle John's Band〉というのはこれが唯一。その後さらに〈Me and My Uncle> Mexicali Blues〉までノンストップ。こういうショウが悪いはずがない。

08. 1990 Cal Expo Amphitheatre, Sacramento, CA
 金曜日。このヴェニュー3日連続のランの初日。07-22まで20本の夏のツアー、ブレント・ミドランド最後のツアーのスタート。開演7時半。まことに見事なショウの由。

09. 1992 Richfield Coliseum, Richfield, OH
 月曜日。このヴェニュー2日連続の初日。開演7時。ハイライトの多い見事なショウの由。

10. 1993 The Palace, Auburn Hills, MI
 火曜日。このヴェニュー2日連続の初日。開演7時。
 なかなかに良いショウの由。とりわけ第二部前半。

11. 1994 Cal Expo Amphitheatre, Sacramento, CA
 水曜日。このヴェニュー3日連続のランの初日。08月04日まで29本の夏のツアーのスタート。26.50ドル。開演7時。第一部〈Me And My Uncle> Big River〉でウィアはアコースティック・ギター。
 第二部 Drums> Space 後で〈Samba In The Rain〉がデビュー。ハンターの詞にウェルニクが曲をつけた。1995-07-09まで38回演奏。スタジオ盤収録はデッド時代は無し。1998年04月に出たウェルニクのバンド Vince Welnick and Missing Man Formation の唯一のアルバム《Missing Man Formation》収録。(ゆ)

0210日・木

 サウンド・ジュリアのクラウン IT5000アンプのデモ動画は、設定を1,080p にしてオーディオ・チェックに使える。キーボード主体のフュージョン・バンドの演奏で、録音超優秀、演奏は一級で、楽曲が退屈なのが、チェックにはかえって都合がいい。チェックに適当な箇所も明瞭。

 最近手に入れた HiFiMAN HE-R9 とだいぶこなれてきた Tago Studio T3-01 を聴き比べる。T3-01 のモニタ用としての実力がわかる。HE-R9 の方がずっと空間が広い。反応のスピードは T3-01 の方がやや勝るか。ただ、T3-01 は音の下がりも速くて、余韻に欠けるところもある。モニタ用とはそういうもので、立上りと収束が共に速いことが必要なのだろう。


 HE-R9 Bluemini R2R も試す。iPad と有線でつなごうとすると、必要な電力が多すぎて使えないよ、と出る。Bluetooth でも、これだけで聴いていれば何の不満もない。大したものだ。Himalaya チップを使った DAC が出れば試したい。


 Dave's Picks, Vol. 41 着。19770526, Baltimore Civic Center, Baltimore, MD の全体。それに、昨年最後の Vol. 40 で入りきらなかった19900719, Deer Creek Music Center, Noblesville, IN のアンコール〈U. S. Blues〉を収録。


 アマゾンは近刊予約をしろと言っておきながら、いざすると、今度は出たのにいつまで経っても送ってこない。予約時点より価格がかなり下がると知らんぷりするらしい。



##本日のグレイトフル・デッド

 0210日には1979年と1989年の2本のショウをしている。公式リリースは無し。


1. 1979 Soldier's And Sailors Memorial Hall, Kansas City, KS

 このヴェニュー2日連続の2日目。9ドルと10ドル。開演7時きっかり。カンザス州では12回ショウをしているうち、このヴェニューが8回。この年12月にも戻っている。なお、ミズーリ州のカンザス・シティとは別。カンザス川をはさんで西がカンザス州カンザス・シティ(人口15.6万)、東がミズーリ州カンザス・シティ(人口50万弱)。ここまでミズーリ川に沿って南下してきた州境は、ミズーリ川に西からカンザス川が合流する、その合流点から直線で真南に伸びる。なお、ミズーリ州カンザス・シティではデッドはやはり8回ショウをしている。ミズーリ州では32回ショウをしていて、これはセント・ルイスでのショウが多いため。

 ここは1925年オープンの多目的ホールで、収容人数は3,500。デッドが最も好むサイズ。集会、コンサート、スポーツなどに使われている。1965年国の史的建造物に指定された。


2. 1989 Great Western Forum, Inglewood, CA

 ロサンゼルス国際空港の東にある会場での3日連続の初日。19.50ドル。開演8時。まずまずのショウの由。(ゆ)


1219日・日

 かつて黒船はそれとすぐわかるものだった。ペリーの艦隊は、それまで軍艦や異国の船など見たこともない漁民にも、黒船だとわかった。得体は知れないが、何かとんでもないものがやってきて、自分たちの暮しが根底からひっくり返ろうとしている、とわかった。

 今の黒船は見ただけでは、それとはわからない。しかし A&C オーディオのヒッポさんのような慧眼のプロにはわかる。
 

 むろん、中華製の安くて質の良いオーディオ機器は今に始まったことではない。アマゾンを見れば溢れかえっている。ただ、その中のどれが黒船かは、あたしなどにはわからない。ユーザ・レヴューの数が多くて星の数が4以上なら、なにせ安いし、試してみてもいいかと思うが、それにしても多すぎる。音楽や本のように、試聴試読してみるわけにもいかない。それに本や音楽と違って、機械は実物を見て触って動かしてみてナンボのものだ。

 しかし、ヒッポさんのような人がこれは黒船だと言うならば、話は違ってくる。ああいうスピーカーを作る耳の持ち主が言えば、まちがいない。最新の Dolphin は聴いていないが、その前のモデルは聴いている。スピーカーの置き場所がなくて、今のところ買う予定はないが、スピーカーを買うなら Dolphin と決めている。Dolphin を買うために、なんとか置き場所を作れないかとさえ思っている。

 黒船はやって来た以上、来なかったことにはできない。そして黒船は一度来れば終りではない。ペリーは翌年またやって来て、幕府は否が応でも不平等条約を結ばされる羽目になった。

 オーディオの黒船も、後から後からどんどんやって来よう。ヒッポさんも全てを試したわけではあるまい。他にも来ているにちがいない。既存のメーカーはどんどん撤退に追いこまれよう。

 もっともそれは必ずしも悪いことではない。新しいプレーヤーたちの登場に道を開くからだ。黒船は幕府という賞味期限がとっくに切れていた体制が退場するきっかけとなった。つまり、賞味期限が切れていないかどうかは、黒船をチャンスにできるかどうかでわかる。

 さて、あたしとしてはこの黒船を契機にして、Dolphin 導入に踏み切るか。

 だけど、ホントに場所が無いのよ。買ったはいいけど、部屋の隅に箱のまま積んどくことになりかねない。同じツンドクでも、こちらはいただけない。



##本日のグレイトフル・デッド

 1219日には1969年から1994年まで5本のショウをしている。公式リリースは1本。


1. 1969 Fillmore Auditorium, San Francisco, CA

 三連チャンの初日。3ドル。開演8時。2時間弱の一本勝負。冒頭4曲はガルシアとウィアの2人だけでアコースティック・セット。休憩無しに5曲目〈Mason's Children〉からエレクトリック・セット。

 アコースティック・セットの冒頭3曲〈The Monkey And The Engineer 〉〈Little Sadie〉〈Long Black Limousine〉はこれが初演。

 このアコースティック・セットはデッドとしては初のものとされるが、レシュが何らかの事情で遅刻したために、即席で行われたものらしい。4曲だけだが、演奏は一級のものだった、と Ross Warner DeadBase XI で書いている。


2. 1973 Curtis Hixon Covention Hall, Tampa, FL

 2日連続の2日目。この年最後のショウ。第一部後半の4曲と第二部2曲を除く全体が《Dick’s Picks, Vol. 1》としてリリースされた。さらに第一部クローザー前の〈Ramble on Rose〉が2012年の《30 Days Of Dead》でリリースされた。曲数で全体の5分の3、2時間10分強がリリースされたことになる。


3. 1978 Memorial Coliseum, Mississippi State Fairgrounds, Jackson, MS

 7.50ドル。開演8時。聴衆がずいぶんと少なかったらしい。が、音楽は一級。DeadBase XI Rob Bertrando は後半は特に良かったと言う。


4. 1993 Oakland-Alameda County Coliseum Arena, Oakland, CA

 24.50ドル。開演7時。このヴェニュー三連チャン最終日。この年最後のショウ。


5. 1994 Los Angeles Sports Arena, Los Angeles, CA

 開演7時半。このヴェニュー4本連続の最終日。この年最後のショウ。

 第一部6曲目〈When I Paint My Masterpiece 〉でウィアはアコースティック・ギター。(ゆ)


9月28日・火

 FiiO K9ProTHX-AAA アンプ、AK4499採用で直販9万を切る DAC/amp4pinXLR4.43.5のヘッドフォン・アウト、3pinXLR x 2 のラインアウト。Bluetooth はあるが、WiFi は無し。惜しいのう。音は聴いてみたいが。

 watchOS 8.0 になってから、登った階段の階数の数え方が鈍い。まあ、最近、階段の数字は気にしていないからいいようなものだが、気にならないわけでもない。

 今日はつくつく法師をついに聞かない。今年の蝉も終ったか。


##9月28日のグレイトフル・デッド

 1972年から1994年まで5本のショウをしている。うち公式リリースは2本。


1. 1972 Stanley Theatre, Jersey City, NJ

 3日連続最終日。料金5.50ドル。出来としては前夜以上という声もある。冒頭、1、2曲、マイクの不調で声が聞えなかったらしく、そのために公式リリースが見送られたのだろうという説あり。


2. 1975 Golden Gate Park, San Francisco

 ライヴ活動休止中のこの年行った4本のライヴの最後のもの。《30 Trips Around The Sun》の1本としてリリースされた。

 ゴールデンゲイト公園はサンフランシスコ市の北端に近く、短かい西端を太平洋に面し、真東に細長く延びたほぼ長方形の市立公園。ニューヨークのセントラル・パークとよく比較されるが、こちらの方が2割ほど大きい。1860年代から構想され、元々は砂浜と砂丘だったところに大量の植林をして19世紀末にかけて整備される。この公園での音楽イベントとしては、2001年に始まった Hardly Strictly Bluegrass が有名。またポロフィールドでは後にビル・グレアムとガルシア各々の追悼コンサートが開かれた。

 リンドレー・メドウ Lindley Meadows は中心からやや西寄り、ポロフィールドの北にある、東西に細長い一角。ここでのデッドのショウは記録ではこれ以外には 1967-08-28 のみ。この時は Big Brother & the Holding Company との "Party For Chocolate George" と称された Chcolate George なる人物の追悼イベントで月曜午後1時という時刻だった。Deadlist では2曲だけ演奏したようだ。

 60年代にデッドが気が向くとフリー・コンサートを屢々行なったのは、ゴールデンゲイト公園の本体から東へ延びる The Panhandle と呼ばれる部分で、このすぐ南がハイト・アシュベリーになる。

 この公園についてガルシアは JERRY ON JERRY, 2015 のインタヴューの中で、様々な植生がシームレスに変化しながら、気がつくとまったく別の世界になっている様に驚嘆し、これを大変好んでいることを語っている。デッドがショウの後半で曲をシームレスにつないでゆくのは、これをエミュレートしているとも言う。デッド発祥の地サンフランシスコの中でも揺籃時代のデッドを育てた公園とも言える。一方で、ガルシアはここでマリファナ所持の廉で逮捕されてもいる。公園内に駐車した車の中にいたのだが、この車の車検が切れていることに気がついた警官に尋問された。

 このコンサートは San Francisco Unity Fair の一環。1975年9月2728日に開催され、45NPOが参加し、デッドとジェファーソン・スターシップの無料コンサートがあり、他にもパフォーマンスが多数あって、4〜5万人が集まったと言われる。このイベントの成功から翌年 Unity Foundation が設立され、現在に至っている。

 冒頭〈Help on the Way> Slipknot!〉と来て、不定形のジャムから〈Help on the Way〉のモチーフが出て演奏が中断する。ウィアがちょっとトラブルがある、と言い、レシュが医者はいないか、バックステージで赤ん坊が生まれそうだ、と続ける。ガルシアがギターの弦を切ったこともあるようだ。次に〈Franklin's Tower〉ではなく、〈The Music Never Stopped〉になり、しばらくすると「サウンド・ミキサーの後ろに担架をもってきてくれ」と言う声が聞える。なお、この曲から入るハーモニカは Matthew Kelly とされている。

 さらに〈They Love Each Other〉〈Beat It On Down the Line〉とやって、その次に〈Franklin's Tower〉にもどる。

 〈They Love Each Other〉はここから姿ががらりと変わる。1973-02-09初演で、73年中はかなりの回数演奏されるが、74年には1回だけ。次がこの日の演奏で、ブリッジがなくなり、テンポもぐんと遅くなり、鍵盤のソロが加わる。以後は定番となり、1994-09-27まで、計227回演奏。回数順では59位。

 休憩無しの1本通しだったらしい。後半はすべてつながっている。CDでは全体で100分強。

 こういうフリー・コンサートの場合、デッドが出ると発表されないことも多かったらしい。問い合わせても、曖昧な返事しかもらえなかったそうな。


3. 1976 Onondaga County War Memorial, Syracuse, NY

 《Dick’s Picks, Vol. 20》で2曲を除き、リリースされた。このアルバムはCD4枚組で、9月25日と28日のショウのカップリング。

 後半は〈Playing in the Band〉で全体がはさまれる形。PITB が終らずに〈The Wheel〉に続き、後半をやって〈Dancing in the Street〉から PITB にもどって大団円。アンコールに〈Johnny B. Goode〉。こんな風に、時には翌日、さらには数日かそれ以上間が空いてから戻るのは、この曲だけではある。そういうことが可能な曲がこれだけ、ということではあろう。

 〈Samson and Delilah〉の後の無名のジャムと、〈Eyes of the World〉の後、〈Orange Tango Jam〉とCDではトラック名がついているジャムがすばらしい。前の曲との明瞭なつながりは無いのだが、どこか底の方ではつながっている。ジャズのソロがテーマとはほとんど無縁の展開をするのとはまた違う。ここではピアノ、ドラムス、ウィアのリズム・セクションの土台の上でガルシアのギターとレシュのベースがあるいはからみ合い、またつき離して不定形な、しかし快いソロを展開する。ポリフォニーとはまた別のデッド流ジャムの真髄。

 この会場でデッドは1971年から1982年まで6回演奏している。現在は Upstate Medical University Arena at Onondaga County War Memorial という名称の多目的アリーナで収容人数は7,0001951年オープンで、2度改修されて現役。国定史跡。コンサート会場としても頻繁に使われ、プレスリー、クィーン、キッス、ブルース・スプリングスティーン、エアロスミスなどの他、ディランの1965年エレクトリック・ツアーの一環でもあった。ちなみに COVID-19 の検査、ワクチン接種会場にも使われた。


4. 1993 Boston Garden, Boston, MA

 6本連続の4本目。ほとんど70年代前半と見まごうばかりのセット・リスト。


5. 1994 Boston Garden, Boston, MA

 6本連続の2本目。30ドル、7時半開演のチケットはもぎられた形跡がない。

 会場はニューヨークのマディソン・スクエア・ガーデン三代目の「支店」として1928年にオープンしたアリーナで、本家は代替わりしたが、こちらは1995年9月まで存続した。1998年3月に取り壊された。収容人数はコンサートで16,000弱。デッドは1973年に初めてここで演奏し、1982年までは単発だが、1991年、1993年、1994年と三度、6本連続のレジデンス公演を行った。計24回演奏している。うち、1974年、1991年、1994年のショウから1本ずつの完全版が出ている。

 1995年9月にも6本連続のショウが予定されていて、千秋楽19日のチケットには〈Samson & Delilah〉の歌詞から "lets tear this old building down" が引用されていた、と Wikipedia にある。(ゆ)


 スピーカー中心のオーディオのイベントに初めて行ってみる。知人が開発に関わった新製品を見て聴くためだが、半分はどういう人たちが来ているのか、ヘッドフォン祭などと違うのか、という興味もある。

 目当てのハードウェアはアキュフェーズの新しいプリメインのフラッグシップ E-800。来てみて思うのは、こういうイベントはオーディオ機器の試聴環境としては良くないことだ。30畳ぐらいの部屋に数十人も入れば、いくらルーム・チューニングをしても、個人の家で聴くものからは程遠くなるだろう。加えて、この会場の部屋そのものが、元来は会議室で、天井、壁、床に音響的配慮は皆無だ。ユーザー側のメリットとしては、様々なハードウェアに一度に接することができる、ということくらいか。



 それでも、基本的な音の性格の違いはわかる。時間が少しあったので、Esoteric で Avangard を鳴らすデモ、Fostex の2ウェイをアキュフェーズで鳴らすデモ、Triode の 真空管プリメイン MUSASHI で Focal のたぶん Utopia Evo を鳴らすデモ、オープンリール・デッキ NAGRA Tから蜂鳥のテープアンプに接続し、Mola Mola のプリアンプ「Makua」+パワーアンプ「Kaluga」から Lansche Audio のコロナ・プラズマ・トゥイーター搭載スピーカーシステム「No.5.2」を鳴らすデモを聴いてみる。

 好みはフォステクスでシャープで濃密。Triode では同じ音源をCDとアナログで聴き比べたのも面白かった。アナログの方が底力がある。価格合計がたぶん1,000万を超えるエソテリックとアヴァンギャルドは、ステージはあるが、どこか冷たく、ピアノに霞がかかり、声にも血が通っていない。やはりソニーの音。ヘッドフォン、イヤフォンもそうだが、このソニーの研ぎすまされて脆そうな音はどうにも好きになれない。テープ・デッキからのせいなのか、この音は時代錯誤に聞える。

 で、肝心のアキュフェーズは、うーん、こういう音が好きなのよね、とあらためて思い知らされる。思えばかつて出たばかりのアキュフェーズのプリメイン E-302 で Boston Acoustic の、10cmウーファーを2発積んだ板みたいな3ウェイを鳴らしたのが、あたしのオーディオ事始めだった。プレーヤーは Thorens の当時一番安い、ストレート・アーム付きのやつ。これで Dougie MacLean の、これも出たばかりの《Butterstone》を聴いた時の新鮮な驚きは忘れられない。やがて、トーレンスの音が物足らなくなって、もっといいプレーヤーが無いかと探しだして、表参道にあったらっぱ堂を訪ねたのが運のつき。ずぶずぶとはまっていったのでありました。

 ちなみに《Butterstone》はマクリーンのアルバムの流れとしては傍系になるんだけど、そこがむしろプラスに出ている。他は自身のプロデュースだが、これだけはレーベルのオーナーだった Richard Digance がプロデュースしているのも、マクリーンが普段封じているダークな面を引き出している。あたしの中ではディック・ゴーハンの《No More Forever》に匹敵する。


Butterstone
Maclean Dougie
Dambuster (UK)
1994-11-07


 アキュフェーズのデモのスピーカーは Fyne Audio F1-12 で、このメーカーはスコットランドはグラスゴー郊外にある、となると親近感が湧いてしまう。スコットランドの今や国宝的存在であるダギー・マクリーンは、これで聴くべきでしょう。F1-12 はサイズもデカすぎるし、値段も手は出ないが、一番安いブックシェルフの F500 をアキュフェーズの E-270 で聴いてみたいよねえ。




 それにしても E-800 と F1-12 は良かった。説明の始まる前に流れていたデモで Jennifer Warnes の《Hunter》がかかる。その声が出た途端、ぞく、っと背筋に寒気が走りましたね。こりゃあ、ええ。こりゃあ、ええよ。

ザ・ハンター
ジェニファー・ウォーンズ
BMGビクター
1996-04-24



 アキュフェーズの偉いさん?による説明の中でかけた岩崎宏美と国府弘子の〈時のすぎゆくままに〉がまた凄い。録音もいいが、演奏が凄い。岩崎宏美がこんないいシンガーとは知らなんだ。というよりもまるで興味が無かったが、こりゃあ一級じゃん。国府のピアノも鍵盤を広く使って、スケールが大きい。その最低域の音が生々しい。いや、このアルバムを聴けたのは来た甲斐がありました。こいつは買わにゃ。

Piano Songs
岩崎宏美
テイチクエンタテインメント
2016-08-24



 最後のプッチーニのオペラからの録音もかなり良い。ベルカントはどうしても好きにはなれないが、訓練された声が存分に唄いきる時の快感というのはわかる。また、それが実感できる再生ではある。ライヴ録音で、会場の大きさもよくわかり、こういう音楽をこういうシステムで聴く醍醐味は味わえた。

 やっぱり、あたしの場合、人間の声がきちんと再生できることが肝心なのだ。ソニーの音はきれいなことはきれいだが、精巧なガラス細工で、ちょっとつつくと砕けてしまいそうなのよね。

 ヘッドフォン、イヤフォンの、どこでどんな姿勢で聴いてもいいという自由さ、性格の異なる複数の機種を取っ替え引っ替え聴けるという楽しみを味わってしまうと、スピーカーに完全に戻る気にはなれないが、時にはスピーカーで聴くのは耳をリフレッシュできていいもんだと改めて思うことであった。アキュフェーズにすっかり満足してしまって、もう他を聴く気にもなれず、そのまま出て、気になっている万年筆インクを物色しようと丸善に向かったのであった。

 それにしてもアキュフェーズがヘッドフォン・アンプを出してくれないか。DAC とかじゃなくて、純粋のヘッドフォン・アンプ。Luxuman P-750U のような、でももっとコンパクトなやつ。アキュフェーズが出したら、無理しても買っちゃいそうな気がする。(ゆ)

 今回はウィルソンおやじが張り切って、いろいろやったり売ったりしようというので、てんてこまいしてます。

 Jaben Online 日本語サイトの作成も手伝っているし、『ヘッドフォンブック2013』の英訳も同時進行で、こんなに忙しい思いをしているのは、もう何年もありません。

 とゆーことで、Jaben 関係のお知らせとか情報とかは Facebook に移します。Jaben 関連以外のハードウェア、たとえば昨年秋に予約を入れて以来、心待ちにしている CEntrance の HiFi-M8 とかについてはこちらに書きますが、GoVibe、Hippo、Phonak その他、Jaben が扱うモノについては Facebook の Jaben Japan ページをご覧ください。今回のヘッドフォン祭で売ったり展示したりするモノについてもそちらに書きます。

 それにしても KEF がヘッドフォン/イヤフォンを出したのには驚いた。(ゆ)

 昨日は今年初めて燕を見ました。今年も見られて嬉しい。

 恥も外聞もない宣伝です。

 本日、オーロラサウンドさんと Jaben Network の共同で「Jaben バランス・スペシャル・セット1」のプレス・リリースを出しました。

 先だっての「ポタ研」でお披露目したセットです。ベイヤーダイナミック T1 と T5p をバランス仕様にモディファイしたものと、これ専用にオーロラサウンドさんにチューニングしていただいたバランス・ヘッドフォン・アンプ BDR-HPA-02 を組み合わせ、さらに CEntrance DACport も添えました。下の写真には DACport が映ってませんが、ご想像ください。

bbotmt

 ちなみに、T1、T5p のバランス化は製品にするまではウィルソンおやじが自分でやってます。

 本製品はヘッドフォンとアンプで構成されており下記の組合せがあります。

 ヘッドフォンは Beyerdynamic 社の T5p(32Ω)とT1(600Ω)を用意いたしました。それぞれに専用のバランスドライブができるよう改造を施し特性の4ピンXLRの高信頼性コネクタを装備しました。さらにオプションとしてクライオ処理を施した交換ケーブルも用意いたしました。

 ヘッドフォンアンプ “BDR-HPA-02” は JABEN の要求により本ヘッドフォン用にオーロラサウンが特別にチューニングしたもので4ピンXLRジャックによるバランス駆動、また標準フォーンプラグによるノーマル駆動ができるようになっています。また T5p と T1 というインピーダンスや感度が異なるヘッドフォンも適正な音量で駆動できるようにゲイン切り変えスイッチを(High/Low)を備えています。

BDR-HPA02 仕様
入力           RCA アンバランスラインレベル信号
出力           4pinXLRバランスジャック x1  標準フォ-ンジャック x1
周波数特性        5Hz -80kHz
全高調波歪率THD+N   0.0046%
最大出力                     1500mW   x2   @45Ω負荷  Highゲイン時
ドライブ可能ヘッドフォン 16Ω -  600Ω     High/Low ゲイン入り変え
電源           AC100V 50-60Hz
大きさ          W230mm x D180mm x H80mm     突起物含まず


 アンプ側のバランス・コネクタは 4pin XLR 端子で、これに合わせたケーブルも同梱しています。オプションのクライオ・ケーブルの価格はまだ未定です。すみません。

 販売は 05/20 から Jaben Online の日本語ページをオープンして開始します。価格は 248,000円。税込、送料込みです。なお、念のために、これは T1 か T5p のどちらかのセットの価格です。両方欲しい、という方はご相談ください。

 もちろん、05/11 の春のヘッドフォン祭2013でも展示し、会場特価で販売します。展示は Jaben のブースとオーロラサウンドさんのブースの両方でします。

 もうひとつ、小生はあくまでも「代理人」で「代理店」ではありません。あたしには「代理店」をやれる能力も資格もございません。注文は Jaben Online で、つまり直販です。細かいことかもしれませんが、念のため。

 ということでひとつ、よしなに。

 それと、これからこの製品を含め Jaben Online ショップに関しては、Facebook の専用ページでサポートします。ご連絡もそちらにいただきますよう、お願いします。
(ゆ)

 RudiStor のルディさんから久しぶりにメールが来ました。

 日本から注文される方にお願いがあります。
 住所は英語で書いてください。
 電話番号を PayPal の注記欄に書いてください。

 という伝言です。

 RudiStor のサイトの注文は PayPal 経由ですが、PayPal でふだん使う言語を日本語に設定してあると、注文者の連絡先もデフォルトでは日本語で表記され、何もしないとそのまま日本語で相手先に送られます。

 相手に日本語がわかる人がいればいいわけですが、RudiStor には日本語のわかる人はいません。したがって注文の処理ができません。

 PayPal で海外に注文する場合には、最低でも英語の氏名、住所、電話番号を登録しておいて、こちらに切り替える必要があります。

 海外に注文する場合には、送金先の読める表記にするよう、アラートが出るはずですが、気がつかないことも多いと思われます。

 なお、英語の住所を登録するにはトップ画面で使用言語を英語に切り替えます。そうしておいて住所の登録に移動すると英語で入力できます。

 RudiStor に注文したのに反応が無い場合には、こういう事情ではないかと疑って、問い合わせてみてください。(ゆ)

 昨日は半日、Jaben のウィルソンおやじにつきあっていました。新宿の伊勢丹で昼食を食べた際、おやじが携帯を忘れ、あわててもどってみたら、レストラン入口の椅子の上にちゃんとのっかっていました。30分はたっていたでしょう。こんなことは日本でしかありえない、とおやじはあんびりばぼーを連発し、大喜びで帰っていきました。

 先週のポタ研では、Jaben のブースにお越しいただき、御礼申しあげます。

 1週間前まではまったく参加を予定していなかったので、まるで準備不足だったんですが、展示したモノはどれも好評で、ありがたく楽しませていただきました。それでも熱気にあてられたか、ヘッドフォン祭のときよりもくたびれました。

 今回の展示の目玉はまず Hippo ProOne で、ワンBAドライバーのイヤフォンです。これも木曜日の夜、前触れもなくメールでポスターが送られてきて、これをプリント・アウトしてもってきてくれ。金曜日に無印良品でプラスティックのフレームを買って入れたのが展示したもの。サンプルも1セットしかなく、おやじが持って帰ったくらいのホヤホヤの製品です。それでも来月には発売予定です。

hippopro1


 試聴された方にはいずれもかなり好評で、1BAドライバーの音とは思えない、というありがたい評価もいただきました。価格は1万円前後の予定です。この価格に驚かれる方も多かったです。なお、ポスターにあるコンプライ流のフォーム・チップがデフォルトですが、シリコン・チップも用意されてます。

 2、3時間聴いたかぎりでは、中高域にフォーカスして、低域もしっかり出してくれます。前面にあるパートや楽器にスポットを当てながら、バランスもよくとれている、というところ。モニター的というよりは、鑑賞用。うたものや生楽器のアンサンブル向きかな。クラシックなら交響曲よりは協奏曲でしょう。もっとも癖がない、すなおな音なので、たいていの音楽はOK。ふだん重低音たっぷりのヘッドフォン、イヤフォンで聴いている音楽も、意外な面を発見できるかもしれません。

 ふたつめは xDuoo のポータブル・アンプ2機種。

 XD-01 は光、同軸、USBのデジタル入力を備えた DAC &アンプで、主に AK100 などのデジタル出力のあるプレーヤー用です。サイズも AK100 よりすこし大きいくらいで厚さも1センチほど。ゲイン切替、アナログ入力もあります。充電は USB 経由。

 XP-01 は Android 用のマイクロ USB 入力のある DAC &アンプ。こちらは厚さは XD-01 と同じで、サイズは一回り大きいです。Android のスマホに合わせてあるようです。

 これも Jaben で扱うことは決まっていますが、価格などは未定。そんなに高くはなく、たぶんどちらも300ドル以下になるだろうとのこと。

 これについてはささきさんのブログをご参照ください。ささきさんは AK100 で試聴されて、驚いてました。ぼくはこのあたりは無知なので、これから勉強します。これまで Android は無視していたのですが、こうなると未知の世界を探索する気分で面白くなってきます。

 もう一つ、お披露目したのはポタ研の趣旨からはちとはずれますが、バランス化した Beyerdynamic T1 と T5p と特製のバランス・アンプです。

 これは実は昨秋のヘッドフォン祭の産物です。たまたま Jaben のブースの対面がオーロラサウンドのブースで、そこにオーロラサウンドが「音松」のブランドで出されているバランス・ヘッドフォン・アンプ・キットの完成品が展示されていました。ウィルソンおやじがこれを聴いてみてたいへん気に入り、自分でバランス化して出している T1、T5p(もちろん公認)と組み合わせることを提案しました。オーロラサウンドの唐木さんがこれに乗ってくれまして、キットをベースに、ケース、ヴォリューム・ノブを上質のものに替え、また部品の一部もグレードアップして、音をバランスド・ベイヤー用に調整したものがこの音松アンプです。

 バランス・コネクタは4ピン・シングルで、別にシングルエンド用端子もあります。また、ゲイン切替も備えています。入力はアンバランス・アナログRCAです。

 バランス化した T1 または T5p と、4ピン・バランス・ケーブル、音松バランス・ヘッドフォン・アンプ、それに CEntrance の DACport をセットにして販売します。セットのみの通販オンリーです。バランド・ベイヤー単体は Jaben のオンライン・ショップでも買えますが、アンプはあちらでもセットのみになります。

 国内でも販売します。実際に販売開始をアナウンスできるのはもう少し先になります。価格は20〜25万円を予定しています。予約は受け付けています。氏名、住所、電話番号、メールアドレスを、こちらまでメールでお送りください。お支払いは PayPal が使えます。春のヘッドフォン祭では試聴できるはず。公式発表もそのあたりになるでしょう。今でしたら「早期予約特価」で申し受けます。

 先週月曜に、急遽出るから頼むと言われてひええと思ったら、やはり満杯だから出ない、ということになってほっとし、いやなんとかなるそうだレッツゴー、でこんなにあわただしい思いをしたのは、もう何年ぶりでした。

 来場者も多く、隣が ONKYO さんで、例の新しいヘッドフォンは興味津々だったんですが試聴できず。結局、トイレに行ったついでにミックスウェーブさんのところで CEntrance の HiFi-M8(ハイファイメイト)をちょっと聴けただけ。これは早期割引につられて予約を入れているので、とにかく楽しみ。あと2ヶ月待ってくれ、と CEntrance のマイケルさんは言ってました。

 それにしても、T5p を首にかけて来てる方が目についたのは驚きました。たしかに "p" が付いているように、インピーダンスやプラグからしてモバイル用を意識した製品ではありますし、Ultrasone の Edition 9 を頭にかけた人を駅のホームで目撃したことはありますが、これも日本ならではの現象でしょうねえ。ニューヨークあたりでは考えられない。

 白状するとバランス化した T1、T5p を聴いてベイヤーをあらためて見直しました。それにバランス化の効果は想像をはるかに超えていて、さらに音松アンプのおかげで、まさに天国、いわゆる "Nirvana" 状態に入れます。たぶんただヘッドフォンをバランス化してアンプにつなぐだけでは不十分で、その効果を十分に引き出すにはアンプとの相性が大事なんでしょう。

 ウィルソンおやじはいま還暦ですが、ヘッドフォンにとり憑かれたのは14歳の時だそうですから、年季は入ってます。コレクションもかなりのもので、かの「オルフェウス」もある由。ベイヤーのバランス化もそういう経験と熱意の賜物でしょう。他にもアレッサンドロの MS1 をバランス化したりしていますし、いくつか公認のバランス化をすすめているものがあるそうです。

 それと『ヘッドフォンブック2012』英語版ですが、なんとか国内でも販売できるようにする予定だそうです。Hippo Cricri M が付録です。"M" は "Magazine" の "M" で、これ用に調整したもの。『ヘッドフォンブック2013』も英語版を出します。春のヘッドフォン祭にはたして間に合うか。間に合ったらご喝采。

 肝心の音楽も、個人的には聴きたいものがあふれていて、Sam Lee が来るというので舞い上がったり、1941年録音の日本の伝統音楽のCD復刻が国内発売されていたり、スーザン・マキュオンの新作がやたら良かったり、ジェリィ・ガルシア・バンドのライヴ・シリーズ第一弾がハイレゾ配信で出たり、もうてんやわんやです。アルタンの旧マネージャーでその前はダブリンの Caladdagh のマスターをやっていたトム・シャーロック編集の THE OTHERWORLD: Musc & Song from Irish Tradition という、CD2枚付きのみごとな本も出てます。これはあらためて紹介したいですが、アイルランド伝統音楽のなかでも、「あの世」、超自然をあつかったものに焦点をあててます。2枚におさめた計40曲のうたとチューンについて、曲とシンガー、演奏者、それに収集家もとりあげて解説したもの。有名な録音もありますが、ほとんどはこれでしか聴けません。すばらしい写真がたくさん入ってます。一家に一冊。

 今朝はまたいちだんと冷え、雪の予報も出てますが、近所では梅が咲きだしました。(ゆ)

もちろん付録の Luxman の作ったヘッドフォン・アンプめあて。

 付録は48KHz までサポートする USB-DAC 付きヘッドフォン・アンプで、Luxman 製ということで、少し期待したのだが、甘かった。USB電源のみで、入力も USB だけ。音は焦点がぼやけてもいるが、長所もない。

 Stereo はいまだにヘッドフォンを「アクセサリー」扱いしていることからして、ヘッドフォン・アンプや PCオーディオなど使ったことのない読者にとっての入門が目的なのだろう。加えて、あたしのようなヘッドフォン・ファンを釣ることも目論んでいたはずだ。

 もっとも、この雑誌の読者はまともなヘッドフォンなんて持ってないんじゃないか。もしそうなら、ここで持ち上げられている Shure とか、表紙のオーテクあたりに手を出すのであらふ。あたしなら Beyerdynamic T1 とか Final Audio Design Piano Forte XX を薦めるところだが、まあこんなところは見ていないわな。

【送料込】【正規輸入品】beyerdynamic/ベイヤーダイナミック T1 テスラテクノロジー採用のフラッグシップヘッドホン【smtb-TK】
Beyerdynamic T1

イヤホン(イヤフォン) FinalAudioDesign FI-DC1602SC-C(PianoForteX-CC)【送料無料】
FinalAudioDesign Piano Forte X-CC


 しかしなあ、Luxman のアンプってこーゆー音なの? いくら雑誌の付録とはいえ、基本的な性格は変わらんでしょう。まあ、ヴォーカルがしっかりきれいに聞こえるのはいいんですけどね。

 結論はもう少し、使いこんでからと思うが、使っていてあんまり楽しくないのよねえ。

 むしろ、いろいろ部品を交換していって、音が変わるのを楽しむアイテムというところ。んだが、そういうことをしているカネと暇があれば、1曲でも音楽を聴きたいと思う今日この頃である。


 とはいえ、こういう雑誌でも収獲はあるもので、「私の特選! ミュージック・ファイル」というコーナーで OTOTOY が配信しているハモニカクリームズの新作《IN + OUT = SEA》がとりあげられているのは嬉しい(201pp.)。ただし、筆頭にあげられている、オールマンのフィルモア・ライヴの192KHz 音源がすでに OTOTOY のサイトから消えているのは、どちらが悪いのか。HDTracks で配信されているのは 96KHz なので、192だったら聴いてみたかった。

 12/24訂正。オールマンのフィルモアを配信しているのは e-onkyo で OTOTOY ではありませんでした。失礼しました。それにしても、これは DSD マスターということなんだが、そのマスターをそのまま配信する計画はないのかね。これを DSD で聴けるなら、DSD 環境を整備するぞ。

 ところで、これには1992年にプロデューサーのトム・ダウド自身がミックスしなおして、それまで未発表だった録音も入れて出しなおした《TNE FILLMORE CONCERTS》がある。これも良い録音で、むしろ空間の広さや楽器のバランスはこちらの方が好きだが、これのハイレゾというのは無いのか。

Fillmore Concerts
Fillmore Concerts


 日本語のオーディオ雑誌を見ていつも思うけど、ソフトの扱いが軽すぎるよなあ。アメリカのハイエンド・オーディオ専門誌の雄、The Absolute Sound は全体の半分がソフトの話で、録音面だけでなく、音楽、演奏についても正面からとりあげていた。オーディオは「音」を聴くもんじゃない、聴くのはあくまでも「音楽」だ、という筋がどーんと通っていた。大部分はクラシックとジャズだったけど、ジェニファ・ウォーンズの《FAMOUS BLUE RAINCOAT》が出た時、当時の編集長自ら、シンガー本人とプロデューサーを招いて、長時間インタヴューをして特別記事を書いた。その原稿の質と量は、どんなハードウェアのものよりも多く、高かった。

ソング・オブ・バーナデット 〜レナード・コーエンを歌う
ソング・オブ・バーナデット 〜レナード・コーエンを歌う


 それはともかく、なによりもかによりも仰天したのは、「海外ブランド・インタビュールーム」の「アバンギャルド」というドイツのスピーカー・メーカーの頁(142pp.)。David Browne というインターナショナル・セールス・マネージャーが出ているのだが、


アイルランド出身で、アイリッシュ音楽の大ファン。かつて百人規模で踊るグループイベントのPA技術者として来日し、2ヶ月以上滞在したこともあるのだという。音楽業界の最前線でPAや録音機材と深く関わり、アバンギャルドの製品に惚れ込んだことがきっかけで、2011年秋セールス・マネージャーに就任。

 な、な、何だって。『リバーダンス』のPA担当者が売っているスピーカー?

 「私が購入したアバンギャルドの製品は、ウノG1 です。繊細さと生々しさに圧倒され、強く惹かれました。特に低域のレスポンスが最高、しかも小音量再生に強い。また、その音は生音にきわめて近い性質を持っていて、大音量再生中でも普通に隣の人と会話ができる。そんなことは他社製スピーカーではありえません」

 聴いているのは、当然アイリッシュ・ミュージックが多いはず。その人がこう言うとなると、気にするなという方が無理だ。おまけにだ。

 そこまで話したあと、彼は意外なCDを取りだした。まず、1956年録音のジャズボーカル・アルバム『エラ・アンド・ルイ・アゲイン』。そして、それが終わると次にジューン・テイバー『アップルズ』から「センド・アス・ア・クワイエット・ナイト」をかけた。

 ぎょえー! スピーカーの試聴にジューン・テイバー! ちなみにこの曲は《APPLES》最後のトラックで、遠めで控え目のピアノ伴奏を文字通りバックにジューンが手前でゆっくりとうたう。途中から、ハイノートのドローンが入る。第2連だけ、ヴォーカルにわずかにリヴァーヴをかけている。確かに、よい録音ではありますよ。

アップルズ
アップルズ


 代理店のエソテリックのスタッフが
「私たちが普段行なっているデモでかけないようなソフトが、かなり異なる音量で再生されました。こんな魅力もあったんですね」
と言うのも無理はない。

 写真を見ると、ホーン・システムではないか。それにサブ・ウーファーを組み合わせたアクティヴ・スピーカー。値段もハンパじゃないが、スピーカー、サブ・ウーファー、アンプがセットと思えば、そんなに無法なもんじゃない。いや、そりゃ、買えるか、となると話は別。それにこうなるとセッティングにも気を使う必要がある。

avantgarde duo Ω(omega) G2(ペア) (価格問い合わせ)
avantgarde duo Ω (omega) G2


 しかし、しかし、だ。このブラウン氏が惚れ込んで、製品の音決めにまで参加しているスピーカーとなると、聴かないわけにはいかないだろう。

 どこかで聴けないか、と思ったら、かの吉祥寺の「メグ」のシステムに使われている。「いーぐる」の後藤さんによれば、首をかしげるところもあるらしいし、「メグ」では「いーぐる」とは違って、アイリッシュをかけてもらうわけにもいかないだろうが、試聴室よりは、実際に使われている形で聴いてみたい。

 uno は G2 になっているが、エソテリックのサイトには Solo という、同軸ユニットを使ったさらに小型の製品がある。ただし、生産終了。後継機は出ないのか。(ゆ)


☆販売価格はお問い合わせください。☆avantgarde(アバンギャルド)SOLO【スピーカー】≪定価表示≫
avantgarde SOLO

 TouchMyApps というサイトにはヘッドフォンのコーナーがあって、セレクションも個性的ですが、内容も微に入り細を穿ったもので、読み応えがあります。その中に GoVibe Porta Tube+ のレヴューがあるのを、最近、発見しました。これはもう「銘器」といってよいかと思いますが、なかなか情報が少ないので、著者の了解を得て邦訳してみました。お楽しみください。なお、元記事には美しい写真がたくさんありますが、著作権の関係でここには載せられません。また、後ろの方に出てくるグラフも同様です。これらは元記事をご覧ください。

Big thank you to Nathan Wright who wrote the oritinal review for his kind permission to translate and put it up here.


PortaTube-iPhone2


 チープなことは悪いことじゃない。ぼくはチープなものを食べて、チープなものを着て、チープな冗談を言っている。もうずいぶん久しい間、Jaben がぼくのまわりに送ってきていたのは、チープなアンプばかりだった。大量生産品だね、アーメン。ところが Jaben はとうとう好みを変えたらしい。いずれ慈善事業にも手を出すことになるんだろう。いやその前にまずは Porta Tube+ だ。iPad/Mac 向けの真空管ヘッドフォン・アンプ兼DAC だ。ブルジョアが聴くにふさわしく、王様にぴったりの音を奏でる。

 どこの王様かって。GoVibe 王国のだよ。

スペック
24/96kHz アップサンプリング DAC:CIRRUS CS4398-CZZ (24/192kHz)
真空管:72 6N16B-Q
USB コントローラ:Texas Instruments TIASIO20B
一回の充電で使用可能な時間:7-10 時間
驚異的な音

 Jaben 製品ではいつものことだが、スペックを知りたいとなると、あちこちつつきまわらなければならない。探しものが見つかることもあるし、みつからないこともある。付属の文書類はいっさい無い。Jaben 製品が使っている DAC チップが何か、まるでわからない。オペアンプもわからない。Porta Tube や Porta Tube+(以下 Porta Tube/+)が使っている真空管の種類然り。事実上、わかることはなにも無い。(セルビアの Zastava のブランド)ユーゴかトヨタの部品を寄せ集めて作った1990年型現代(ヒュンダイ)自動車の車を買うのによく似ている。部品が何か、知っているのは販売店だけだ。ありがたいことに、Porta Tube/+ には良い部品がふんだんに使われている。もうひとつありがたいことに、Jaben はありえないようなスペックをならべたてたりはしていない。ダイナミックレンジが 120dB だとかぬかしているアンプ・メーカーはごまんとある。嘘こくのもいいかげんにしてくれ。いやしくも音楽信号を扱うのに、そんなことありえるか。負荷がかかれば、なおさらだ。

 先へ進む前に、Jaben の Vestamp を覚えているかな。あれも GoVibe だ。GoVibe は Jaben のハイエンド・ブランドだ。そして、こと音に関するかぎり、GoVibe はハイエンドの名にふさわしい。そうでない製品も少なくはないが、たいていはハイエンドと呼ばれておかしくはない。


造りの品質
 アルミ製のアンプというのはどれもこれも皆同じだ。Jaben も例外ではない。そう、前後は4本ずつのネジで留められている。ネジはヴォリューム・ノブにもう1本隠れている。マザーボードは2枚の波形の板にはさまれ、三連 three-cell の充電池がかぶさっている。

 出入力用ポートはマザーボードにしっかりと固定されて、3個のきれいにくりぬかれた穴に首を延ばしている。パワー・スイッチは形がいい。がっちりした金属製で、ぴかぴかの穴から亀よろしく頭をのぞかせる。

 全部で28個の空気穴が世界に向かって穿けられている。上下半分ずつだ。内部は熱くなるから、この穴がなくてはいられない。冬にはあまり頼りにならない懐炉。夏にはまるで思春期にもどったようになる。とにもかくにも、ちゃんと作動していることだけはわかる。

 Porta Tube に傷があるとすれば、ゲイン切替装置だ。こいつは例の8本のネジを延べ百回ばかり回さないと現われない。調節そのものは難しくはない。ジャンパ・スイッチのジャンパを隣のスロットに移すだけのこと。ピンセットか小さなドライバさえあればいい。左右は別々に調節できる。簡単すぎて気が抜ける。ただし、だ。そこまでいくには、フロント・パネルの4本のネジを回してはずし、次にバック・パネルのネジも回してはずし、そしてマザーボードをそっと押し出さなければならない。つまり、百回は回さなければならないわけだ。だいたいそこまで行く前に、バック・パネルにでかでかと書かれた注意書きを見て、手が止まってしまうこともありえる。
 「警告! 高電圧につき、中を開けるな!」
ブザーが鳴ってるだろ。こうこなくっちゃウソだよ。ホント、イタズラが好きなんだから。このブログを昔から読んでる人なら覚えているだろう。Hippo Box+ のツリ用のウエブ・サイト。中身が何もないアレ。ベース・ブーストとゲイン・スイッチの表示が裏返しになっていたヤツでもいい。ったく、笑わせてくれるぜ。

 ジャンパ・スイッチを前の位置に移すとハイ・ゲイン・モードになる。笑いごとではない人もいるかもしれない。いきなりネジ回しを握っても、バック・パネルで諦める人も出てきそうだ。それはもったいない。というのも、Porta Tube と Tube+ のパワーはハンパではないからだ。IEM を使っているのなら、あり過ぎるくらいで、ゲインは低く抑えたくなるにちがいないからだ。最後にもうひとつ障碍がある。ゲイン・スイッチには何の表示もない。初歩的な電気の知識をお持ちなら、プリント回路をたどればおよその見当はつくだろう。電気のことはもうさっぱりという方に、切替のやり方をお教えしよう。

 ジャンパ・スイッチを二つとも動かすと、ゲインは高くなる。ジャンパ・スイッチを「前」の位置、つまり、アンプのフロント・パネルに近づけると、ゲインが高い設定になる。他の位置では、すべて、低くなる。左右のチャンネルはそれぞれ独立に設定できる。左右の耳で聴力に差があるときは便利な機能だ。バック・パネルのジョークを別にすれば、Porta Tube にはイラつくところは何もない。そこにさえ目をつむれば、これはすばらしいアンプだ。これだけ注目されるのも無理はない。

 音量調節はどうかって。すばらしいですよ。つまみやすいし、動きもなめらか。目印の刻み目は暗いところでも、どこにあるか、すぐわかる。


エルゴノミクスと仕上げ
 ブラウザで Porta Tube+ の写真がちゃんと見えるか自信がない。このマシンは美しい。ケースのブルーは両端のシルバーとみごとな対照をみせる。ブルーの LED ライトに比べられるものは、少なくともポータブル・オーディオの世界では他にない。このライトの明るさはそれほどでもないが、夜遅く、暗くした部屋の中では、アンプの正面にテープを貼るか、またはつまらないミステリー小説かなにかでおおっておきたくなるくらいだ。

 いろいろな意味で、美しさというのはごく表面だけのことだ。700ドルの値段が付いているのなら、隅から隅までそれにふさわしくなければならない。フロント・パネルの文字はレーザーで彫られていて、硬化鋼のネジの頭はちゃんと削られて突き出していないでほしい。マザーボードに組立て工の指紋が着いていたり、フロント・パネルにすり傷がある、なんてのも願い下げだ。ゲイン・スイッチを切り替えるにはバック・パネルを開けるしかないのに、そこには「開けるな」と書いてある、なんてのもないだろう。GoVibe Porta Tube+ ではそういうことが体験できる。それもパッケージのうちだ。これにそれだけ払うだけの価値があるかどうかの判断はおまかせする。

 もっともデコボコはあるにしても、プラスもある。もう一度言うが、ヴォリューム・ノブのなめらかさは完璧だ。入出力のポートの間隔も十分で、でか過ぎるヘッドフォン・ジャックやケーブルでも余裕で刺せる。もう一つ、ヘッドフォン・ジャックが二つ付いているのも大きい。スタンダードとミニと二つ並んでいるから、音量を変えないまま、同じ音源を二つのヘッドフォンで聴ける。Porta Tube も Porta Tube+ も、少々のことでは動じない。中を覗けば、洗練にはほど遠いかもしれない。しかし、全体としては、Porta Tube+ はけっして口下手ではない。


特長
 バッテリーの保ち時間は7〜10時間、充電機能内蔵、6.3 と 3.5ミリのヘッドフォン・ジャックを装備し、それに、外からは見えないスイッチでゲイン調節ができる。Porta Tube も Porta Tube+ も、本来の機能でがっかりさせることはない。Porta Tube に700ドル出すことで、手に入るのは大馬力だ。Porta Tube と Porta Tube+ をもってくれば、ヘッドフォンの能率やインピーダンスは関係なくなる。バランス出力や静電型ヘッドフォン用ではないが、それはまた話が別だ。

 + が付く方は 24/96 をネイティヴ・サポートし、192KHz までアップサンプリングする。コンピュータで音楽を聴いているなら、これだけで買いだ。ヴォリュームの位置がどこにあっても、ノイズは比較的少ない。これだけで National アンプ をしのぐ。そして、VestAmp+ を上回るパワーを出力ポートに注ぎこむから、耳が痛くなるような音量で鳴らしても、ヘッドフォンの音が歪むことはない。そうそう、あらかじめことわっておく。Porta Tube の音はでかいぞ。


音質
 Porta Tube を初めて聴いたのは新宿のカレー屋だった。耳には頼りになる Sleek Audio CT7  をつけていたのだが、自分の顔が信じられないという表情になるのがわかった。Porta Tube の 3.5mm ジャックに伸ばした手は、何十種類ものアンプに何百回となくプラグを刺しこんだものだ。その手も、昔は一刻も早く音を聴きたくて、震えていた。んが、その日は別に特別な日ではなかったし、目の前のアンプに大いに期待してもいなかった。Tube+ も他のアンプと変わるところはない。最初は背景ノイズのテストだ。指がヘッドフォン・ジャックにプラグを刺しこむ。ヴォリュームをゼロに下げる。スイッチを入れる。ノイズはない。適切な音量になるはずの位置まで回す。ノイズはない。ヴォリュームをいっぱいに回す。ようやくノイズが洩れてきた。だが、聞こえるか聞こえないか。たぶん、こりゃカレーのせいだ。

 それが今年の1月。

 それから約5ヶ月後。届いたばかりのアンプを机に置き、窓を閉めきったぼくは唸ってしまった。これだけの馬力を持つアンプとしては、Porta Tube+ のノイズはこれ以上小さくはできないだろう。音量ゼロの時のノイズとフル・ヴォリュームの時のノイズの差はごくごく小さい。というよりも、フルの時の Porta Tube+ のノイズは The National が4分の1の音量の時に出すノイズよりも小さい。こりゃあ、たいしたもんじゃないか。

 IEM 専用アンプなら、Porta Tube+ よりノイズの少ないものはいくらもある。だけど、そういうアンプで 600オームの DT880 のようなヘッドフォンを、耳がつぶれるくらいの音量で、いっさいの歪み無しに鳴らせるようなものはまずない。

 これがどれほどたいへんなことか、おわかりだろう。IEM ユーザは苦労している。HiSound が作った、あのピカピカのゴミと、ソニーがラインナップしているりっぱなウォークマンのなりそこないを除けば、ポータブルの MP3 プレーヤーのノイズはどれもごく小さいから、その音の質を上げるはずのポータブル・アンプのノイズの方が大きいのだ。Porta Tube+ も例外というわけではない。けれど、音量を最大にしたときですら、ノイズは驚くほど小さい。異常なくらいパワフルだが、これを IEM ユーザにも薦めるのは、何よりもそのためだ。

 日本では、Cypher Labs AlgoRhythm Solo か Fostex HP-P1 に外部 DAC、アンプ、それに場合によっては信号スプリッターまで重ねて持ち歩いているマニアがたくさんいる。そこに Porta Tube+ を入れているいかれた人間も少なくない。

 もちろん問題はノイズだけじゃない。ダイナミック・レンジはどうだろう。それに空間表現も大事だ。Porta Tube シリーズの中域と高域はすばらしい。明るく、張りがあって、奥行が深い。これまで聴いた中では、タイプに関係なく、こんな明晰なアンプは他にない。明るいといっても、ぎらついたところや刺さるようなところは皆無だ。どこまでも透明で、解像度も高い。楽器の分離もすばらしく、ことに中域、高域ではっきりしている。フルオケよりは小規模コンボの方が位置関係がよくわかる。どんなヘッドフォンと組み合わせても、一つひとつの楽器の位置が手にとるようにわかる。ただ、中低域から低域にかけて、ほんの少し、にごる。このにごりと真空管特有の歪みのおかげで、温かくやわらかい音になる。

 このアンプはエネルギッシュで明るいという一方で、これはまた人なつこい音でもある。音楽性のとても高いこの二つの特性が合わさって、GoVibe Porta Tube の音は蠱惑的といっていい。

 明るさというのは、真空管特有の歪みにもめげず、高域がはっきりくっきりしている、というのが一番あたっているだろう。どんなイヤフォン、ヘッドフォンを刺しても、聞こえてくる音は実にきれいだ。高域を削ってしまうような信号やノイズをぼくは嫌いだというのは、このサイトをお読みの方はご存知と思うが、ぼくはとにかく高域に弱い。そのぼくにとっては、中域から高域へのつながりが完璧ということで、Porta Tube+ に比べられるものはなかなかない。マッシヴ・アタックの〈I Spy〉でのシンバルは、微妙な綾まで生々しい。音像は正確だ。頭の前方から出て、ゆっくりと包みこみ、後ろへ抜けるが、遠すぎもしない。つまり、中くらいの広さの部屋で、きちんとセッティングしたスピーカーで聴いている具合だ。焦点はスピーカーのドライバーにぴったり合っている。けれど、壁や家具からの微妙な反射が忍びこんで、ごく自然に硬いところがほぐれてるのだ。

 念のためくりかえすが、真空管特有の歪みと、中央にまとまって押し出してくる低域はむしろプラスに作用している。聞こえるのは、どこまでもなめらかで、ほんの少しやわらかく、気持ちよく伸びている音だ。インピーダンスの低いグラドでも完璧にドライブしてくれる。グラドでライヴの生々しさを感じとりたいと願っている向きは、Porta Tube をガイドに立てればまったく不満はなくなるだろう。ぼくのような、表情が豊かで音場の広い DT880 の大ファンにとっても、これはうれしい。DT880 はときどき高域がきいきいいうことがあるが、それがぐっと抑えられて、しかも他のアンプを通すよりもみずみずしくなる。デスクトップのシステムよりも官能的にすらなる。Porta Tube+ は、あまりに真空管真空管していないからだ。

 オーディオにはまりこんで20年になるが、その間に聴いたうちでは、Wood Audio WA3+ が、一番真空管らしい音のヘッドフォン・アンプだった。人なつこさではとびぬけているが、代償も大きい。持っているうちで、これで聴きたいと思うヘッドフォンは半分もない。Porta Tube はそれとはまるで正反対だが、良質の真空管アンプのやわらかい音は健在だ。

 音楽にもどろう。Protection のタイトル・トラック〈Protection〉では、低域ど真ん中のベースが重く正面に立ち、ドラム・マシンがシンプルにきざみ、まるで気のない女性ヴォーカルがのる。その後のトラックはどれも同じように始まるが、男性ヴォーカルが加わり、ベース・ラインはさらに重く低くなる。今度は気合いのこもった、コクのある女性ヴォーカルがゆっくりと入る。ジャズか、マッシヴ・アタックがプロデュースしているようで、リスナーはその魔法から逃れられない。これは、前にも書いたにごりのおかげだろうか。だとしても、それだけではなさそうだ。原因はもうどうでもいい。DT880 と組合せても、CK10 と組合せても、K701 が相手であってすら、Porta Tube はこの録音が秘めている艶をあますところなく描きだす。

 上にあげたのはどれもハイエンド・モデルだ。Sennheiser HD650、HD600、Fischer Audio FA-002W といった中堅どころも、Porta Tube に組み合わせる次点候補にちょうど良いだろう。これが高域のディテールを完璧に再現してくれることはもう一度念を押しておくが、その音はソリッドステートのアンプに比べれば、ほんの少しやわらかい。それをにごりと言うか、歪みと言うかは微妙なところだ。今あげた中堅モデルもこのアンプとよく合うだろう。ただし、これらのヘッドフォンのもつ、やや暗い、囲いこむような性格がいくらか強く出ることもあるかもしれない。

 このアンプには人を中毒にさせるところがあるから、一番のお気に入りのヘッドフォンでじっくり試聴されることを薦める。2、3分でも聴けば、いや2、3時間でもいいが、聴いてしまえば、この青くてかわいいやつを抱え、財布の方はだいぶ軽くなって店を出ることになるのは、まず確実だ。それだけの価値はある。


グラフについてのおことわり
 このレヴューにつけた RMAA のグラフには、iPod touch につないで、Beyerdynamic DT880 と Earsonics SM2 を鳴らした際の違いがあらわれている。ぼくの手許の装置で測っているから、他の装置で測ったデータと直接比べても意味はない。このデータはアンプのヘッドフォンやスピーカーのドライブ能力を示している。


周波数特性
 どんなヘッドフォンをもってきても、Porta Tube/+ は高いレベルの解像度で鳴らす。SM2 は質の劣るアンプだとありとあらゆる形の歪みを聴かせてくれるが、Porta Tube では何の悪さもできない。低域と高域の端が少し落ちているのがおわかりだろうが、これは元々の音楽信号がそうなっているので、アンプのせいではない。Porta Tube のせいで現われるような小さなレベル(-1.5dB)は、犬の耳でも持っていないかぎり、わからないはずだ。

負荷ノイズとダイナミック・レンジ
 Porta Tube+ のダイナミック・レンジは 90.5 dB で、CDクオリティに 6dB 足りない。ノイズ・レベルは −90.5 dB で、やはりCDレベルに届かないにしても、これはひじょうにクリーンだ。なんといっても真空管アンプなので、一筋縄ではいかない歪みとノイズが真空管の魅力を生んでいるのだ。

  真空管アンプのメリットのひとつはここにある。それで得られるのは安定した、気持ちの良い歪みで、しかも音源には左右されない。この歪みはやわらかいとか、心地良いと呼ばれることが多い。どちらもその通りとは思うけれど、Woo Audio 3 の場合とはわけがちがう。GoVibe Porta Tube の音は普通のアンプにずっと近く、ソリッドだ。入力でも出力でも歪みははるかに小さい。それでもリングはあるし、かわいらしいしみもあちこちにある。真空管の常として IMD も THD も高い。

スケーリング
 Porta Tube+ は VestAmp+ と同じ規則にしたがう。USB 入力からの信号が一番小さい。ポータブル音源からのライン入力は USB より大きい。デスクトップまたは AlgoRhythm Solo のような質の高いポータブルからの入力が一番大きく、ノイズも少なくなる。

 このアンプの増幅率はとてもいい。DT880 600Ω のようなヘッドフォンでも、入力がしっかりしてゲインが低いから、フェーズエラーはほとんど起こさない。ハイ・ゲインにするとフェーズエラーは増えるが、増えるのはとんでもなく大きくて危険な音量での話で、そんな音量で聞こうという人はいないはずだ。Porta Tube はパワーの塊だと言えば十分だろう。ALO の National とならんで、デスクトップのアンプとまったく遜色ない。

DAC として使う
 ここ2、3年、USB オンリーの DAC が花盛りだが、ぼくはあまり好きではない。ひとつには USB DAC ユニットの実装がライン入力のそれに比べると劣るからだ。実際、Porta Tube+ はライン入力の時に最高の力を発揮する。チャンネル・セパレーションも良くなり、ノイズ・フロアも低く、ダイナミック・レンジも広くなる。

 とはいえ、コンピュータとつなぐときには威力を発揮する。いやらしい USB ノイズはまったく聞こえない。プラグ&プレイも問題なく、MacBook Pro につないだとたんに認識される。USB モードでは、デスクトップを音源にする時より出力がかなり低くなる。IEM ユーザーにはグッドニュースだ。もっとも出力が低くなるとはいっても、これまでつないだヘッドフォンでパワーが足りないなんてものはひとつもない。

 面白いことに、USB 入力とライン入力は同時に使うことができる。ということはライン入力と USB 経由の音楽信号は Porta Tube+ 内部を平行して流れ、、同時に出力されているわけだ。どちらかだけを聴く時は、使わない方のソースは忘れずに抜いておこう。

iPad で使う
 Porta Tube+ を iPad 用 USB DAC として使うこともできる。ただ、ぱっとみて使い方がわかるというわけではない。iPad の USB から出力される電圧では Porta Tube+ 内蔵の DAC を動かすには足らない。これは内蔵バッテリーで動いているわけではないからだ。DAC を動かすには Porta Tube+ 付属の電源アダプタをつなぎ、 iPad をカメラ接続キットにつないでから Porta Tube+ につなぐ。つなげばすぐに使えるし、音も他と変わらずにいい。ただ、ポータブルにはならない。

 Porta Tube+ はデスクトップと言ってもいいくらいのものだから、携帯できないことはそう大きな問題ではないだろう。ただ、純粋なバッテリー駆動でクリーンな音が欲しい場合には、iPad では無理だ。ノートでは Porta Tube+ は電源につながなくても使える。

ポータブル・アンプとして使う
 正直言って Porta Tube/+ は相当に重い部類のアンプだ。かさばって、重くて、しかも熱くなる。それでもカーゴジーンズもあるし、アンプ・バッグも、肩掛けかばんもある。内蔵バッテリーは7〜10時間もつということは、このアンプさえ持っていれば、日中はだいたい用が足りるわけだ。おまけに背景ノイズは低くて、ヴォリューム・ノブのバランスもとれているとなると、能率のよいイヤフォンがあればばっちり、ということだ。

 実際、SM2 を鳴らしても、DT880 を鳴らしても、歪みや IMD は変わらない。何を刺しても、聞こえる音は同じだ。これができるアンプはめったにあるもんじゃない。Porta Tube+ は合わせるイヤフォンを選ばない。こいつはちょっとしたもんだぜ。

 少しばかり重くなることがイヤでなければ、ポータブル・オーディオとしては Porta Tube 以上のものはない。


結論
 ALO と Vorzuge という手強い競争相手はいるが、ポータブル・アンプとしてぼくは Porta Tube+ を選ぶ。闊達で人なつこいサウンドは、たいていのヘッドフォンと完璧なペアになるし、明るくてディテールを追及するタイプのヘッドフォンと組み合わせると、特に騒ぐこともなく、その実力を十二分に引き出してくれる。ご開帳ビデオで Jaben がグランプリをとることはないだろうが、連中はそれを目的にしているわけじゃない。目的を絞って、かれらはホンモノの、世界でもトップクラスのヘッドフォン・アンプ/DAC を生み出してみせた。見る目のあるオーディオ・マニアなら、これに目を丸くしないやつはいないにちがいない。


プラス
*とんでもなくパワフル
*すばらしく細かいディテール、やわらかいサウンド
*イヤフォンを選ばない
*色が美しい
*つなぐ装置をグレードアップすれば、それだけ良くなる

マイナス
*いただけない仕上げ
*無理難題な警告
*スペック、アクセサリー、マニュアルいっさいなし


 ということで、ご注文はこちらへどうぞ。

 あらためて、ご来場、ありがとうございました。ぼくは単なるヘルパーですが、それでもやはりいろいろな方が立ち寄られて、試していただくのは嬉しいものです。喜んでいただけるとなお嬉しい。

 今回は Jaben の目玉としては Biscuit でした。小さくて、ハイレゾ対応でもないし、派手な話題には欠けたかもしれません。ですが、デジタルでこそ可能なテクノロジーを注ぎこんで、音楽を楽しく聴ける安価なツールです。ハイレゾ対応の高音質プレーヤーが花盛りのご時世にこういうものを出してくるあたりが、ウィルソンおやじの端倪すべからざるところだと思います。

 Biscuit は本来はスポーツをしながら、とか、音楽だけに集中するわけではないシチュエーションでも音楽は欠かしたくないリスナー向けに造った、とおやじは言っています。そういう時にはディスプレイを見るわけではないし、頻繁に操作をするわけでもない。ですから必要最小限のミニマルな機能にする。だけど、音質では妥協せず、鳴らすべきものはきちんと鳴らす。

 実はウィルソンおやじの音に対するこだわりはかなりのもので、客の求めるものは別として、売るものは相当選んでいます。GoVibe を買ったのも、オリジナルの音が好きだったからでしょう。ですから、その後の GoVibe の展開でも、いろいろなタイプを試みてはいますが、音では一貫して一定の質を守っています。

 そのポリシーをオーディオ的にいえば、ローノイズでクリーン、色付けをせずフラットだけど暖かく、十分なパワーがある、というところでしょう。一番重視しているのはローノイズらしい。今回の祭で一番気に入ったのはマス工房のものだったようです。おやじが気に入っていたというので、俄然気になってきました。

 パワーといえば Biscuit はあのサイズにもかかわらず、並べて展示していたベイヤーの H5p のバランス仕様も余裕で鳴らせました。LCD3あたりで試してみたいところ。フジヤや e-イヤホンで試聴できたっけ。

 またミニマルな機能の故に、かえってリスニングに集中できるところもあります。iPod のおかげで、音楽を聴きながら、プログレス・バーが伸びていくのを見るのがあたりまえになってしまっていた、と、Biscuit を使って初めてわかりました。

 サイズもポイントで、その気になればヘッドフォンのヘッドバンドにマジックテープなどで付けることもできます。あんまりカッコよくはないかもしれませんが、iPod やあるいは AK100 や HM901 ではそういうマネはできんでしょう。

 もちろん欠点はいろいろあります。というより、一面から見れば欠陥だらけ。なにしろ再生の順番のコントロールができない、というのは正直ちょと困る。これはなんとかしてくれ、と何よりも強調したことではあります。例えば、PC側のファイル操作でアルバム単位あるいはミュージシャンやジャンル単位だけででもできるとありがたい。

 諸般の事情というやつで、今のところは Jaben のオンライン・ショップでお求めください。

 とまれ Bicuit は好評で、試聴された方はたいてい驚かれていました。

 今回はプレスの方も結構立ち寄ってくださいました。Barks の烏丸編集長も前回に続いて見えましたし、サンフランシスコから来たというトリオがオープン早々に来ました。このトリオは日系とヨーロッパ系の初老の男性二人に、髪を赤く染めたやはり東アジア系のお姉さんという取合せで、なかなか目立っていました。Phile-web の方も全部のブースを一つひとつ回られていたようです。e-イヤホンの岡田氏にもお眼にかかれました。秋葉原のお店に行ったことはありますが、姿はお見かけしませんでした。ただ、あの店は徹頭徹尾若者向けの造りで、あたしのような老人には長くはいづらいところがありますね。

 ブース以外の仕事があって、両日とも、午後、ブースからはずれたり、二日めの午前中は暇だったりしたので、他のところも試聴することができました。

 斜め後ろがコルグさんで、これから出るという新しい DAC/アンプを聴かせてもらいました。PCからDSDを直に鳴らすもので、まるで別世界。かぎりなく無色透明に近く、ヘッドフォンによってまるで音が違ってきます。ヘッドフォンの性格も剥き出しにします。音源の違いも出るでしょう。ある意味、恐しいハードです。音や音楽の本質をストレートに伝えてくる。一方で、夾雑物を削ぎおとして本質だけを抽出するところもあって、長く聴いているとくたびれるかな、とも思いました。アルバム1枚分くらいは聴いてみたい。

 サイズはコンパクトですが、本当はもっと小さくもできるそうで、ぼくは小さければ小さいほど良いと思いました。デジタルの強みの一つはそこでしょう。

 問題は Mac では今のところ事実上対応できないのと、音源のファイル・サイズが巨大になること。5.6MHz だと1GB で20分強というのでは、あたしの程度のライブラリを収納しようとしてもデータセンターが必要になります。

 まあ、あたしが聴きたい音源で DSD 録音はまだほとんど無いので助かってます。

 中村製作所の「パッシブ型ヘッドフォンコンディショナー AClear Porta」は、Elekit の i-Trans と同様のものかと思います。音は良くて、電源がいらないというのも魅力。ですが、円筒の形では、iPod などと一緒に持ち歩くのには不便。それを言ったら、即座に「わかってます、わかってます、事情があってその形になってるんです」という返事が返ってきましたから、その「事情」にはユーザー側の都合は入っていない、ということでしょう。それと9,800円という価格は高いと感じました。とはいえ、電池などが要らないというのは、長期的には安くなるかな。

 筋向いの Agara は100万円というヘッドフォン・アンプでした。試聴したのは PC で再生していたビートルズの〈Penny Lane〉。驚いたのは、この曲はおそろしく細かくいろいろなことを背後でやっていたこと。効果音というには手がこみすぎ、伴奏というには断片的すぎる音が、それも大量に入っているんですね。それが、いちいち耳に入ってきます。聴きとろうとしなくても自然に入ってくる。分解能が高いとか、もはやそういうレベルではない。すみずみまで見通しがきいて、しかもそれぞれが本来の位置とウエイトで聞こえる。凄いとしか言いようがない代物です。

 ですが、ではそのリスニングが楽しいか、と言われると、ちょっとためらいます。細部があまりに多すぎて、肝心のポールのヴォーカルが薄れてしまうのです。うたがうたとして聞こえない。細部の集合に聞こえてしまう。それぞれの細部は生きていても、全体は有機体として響いてこないのです。音はすばらしいが音楽ではない、というと言い過ぎかもしれませんが、そう言いたくなる。たとえば、ほぼ完璧に相手打線を抑えこむのだが、いつも1対0で負けるピッチャー。あるいはどんな場面でボールを受けても確実にゴール前まで持ちこむが、シュートは必ず外すフォワード。

 もちろん1曲だけの試聴では本当の全体像は見えないでしょう。そういう意味ではああいうイベントは、こういうのもあります、ということを示すためのものなのでしょう。実力は別の機会に、あるいは半年ぐらいかけて、いろいろなタイプの音楽、ハードとの組合せで聴いて初めてわかるものかもしれません。

 面白かったのはハイ・リゾリューションが出していた Focusrite の、それもメインの Forte ではなく、VRM BOX。ほんとうに掌にのせられるサイズながら、ソフトウェアとの組合せで、いろいろなタイプのスピーカーやシチュエーションの音をシミュレートするもの。本来はスタジオでエンジニアが使う機能なのでしょうが、これがなんとも楽しい。同じ音源が、いろいろな音に変わるのです。当のハードを買わなくてもシミュレーションでここまでできてしまう。デジタルの醍醐味ここにあり。むろん、DAC でもあって、すっぴんの音も立派。5,000円でこれだけ遊べるのは安い。

 Scarlett 2i4 は調子が悪くて聴けなかったのは残念。

 ゼンハイザーの発表会のために来日していた技術部門の責任者へのインタヴューに立ち合う機会があったんですが、IE800 はあまりの人気に試聴のチャンスはありませんでした。ただ、マスキング効果の対策を施したというところはたいへん興味深く、どこかで聴いてみたいです。というのも、やはりマスキング効果に注目して対策を施した音茶楽の Flat4粋を愛用していて、大のお気に入りであるからです。

 インタヴューの後で音茶楽のことを伝えたら興味を惹かれたらしく、後で音茶楽のブースに行かれて試聴し、たいへん感心していたそうです。技術は違うが目的は同じなので、音茶楽の山岸さんもゼンハイザーが入ってきたことで喜んでおられました。

 ゼンハイザーの方はやはりお好きなのでしょう、会場をひとまわりして熱心に試聴していました。ぼくは不在でしたが、Jaben のブースでは Porta Tube+ がえらく気に入ったそうで、ウィルソンおやじは最後に展示品をかれに贈呈していました。

 音茶楽の新製品 Flat4楓も試聴させていただきました。ヴォーカルや弦のなめらかさに一段と磨きがかかって、なんというか、吸いつくような感じはちょっとたまりません。ただ、粋もまだエージングが十分ではないし、今はあのカネは用意できないので、涙を飲んで見送り。まあ、粋でも滑らかさはハンパではありません。その意味では、IE800 や Ultrasone IQ の価格をみても、粋はほんとうに安い、お買い得だと思います。

 その IQ は試聴できました。Ultrasone は 2500 と iCans を入手して使っていましたが、今ひとつ合わなくて、結局どちらも売ってしまいました。けれど、IQ は良いと思います。すなおな中にもはなやかさがあって、ずっと聴いていたくなります。また、遮蔽性が高いにもかかわらず、耳の中で存在を主張しません。その点では ACS のものがこれまで一番でしたが、IQ は入っていることを忘れられます。また、社長が強調していたように、外に筐体が出っ張らず、入れたまま枕に頭を付けても邪魔にならないのもうれしい。

 ウィルソンおやじは月曜に来日して、あれこれ商談をしていて、ヘッドフォン祭は今回の来日の仕上げみたいなもの。直前には RMAF にも行き、この後は韓国、バンコックを経て帰るので、まだ途中でしょう。店舗も20を超えて、本人は、悪夢だ、と嬉しい悲鳴というところ。製品開発の方面でも、いくつか面白そうなプロジェクトがあり、次回の祭にはいくらか紹介されるのではと期待しています。

 今回は RudiStor の Rudi さんは来られませんでした。ヘッドフォンの新作 Chroma MD2 は聴いてみたかったんですが残念。ブースでご質問もありましたが、RudiStor の製品は公式サイトのオンライン・ショップで購入可能です。クレジットカードも使えます。価格は送料込みです。FedEx で送られますから、1週間ぐらいで着くでしょう。

 今回は初めてスタッフのパスをもらえるというので、開場前に会場入りしました。9時半頃でしたが、もうお客さんが並んでいました。

 お客さんでめだったのは子連れが多かったことです。これまでのヘッドフォン祭では見た覚えがありません。今回、いきなりどっと来た感じ。当然、迷子もありましたし、眠ってしまった子どもをかかえて階段に座りこんでいるお母さんもいました。次回からはこの辺の対策も必要ではと拝察します。女性だけのお客さんもさらに増えていて、そのうち臨時保育所も設けなければならなくなるかも。

 これも含めて、マニアではない、一般のお客さんも確実に増えて、客層は広がっています。

 ただ、こういう爆発的な拡大は、一方で怖い側面もあります。デジタル時代の性格の一つとして、ドーンと爆発してあっという間に消えるというのがあります。たとえば任天堂の Wii の失速などはその典型です。イヤフォンも含めたヘッドフォンとその周辺機器の世界はまだまだ規模が小さいですし、ゲーム機器よりは客層が多様でしょうから、ああいう悲惨なことにはならないような気もしますが、安心はできません。調子の良い時ほど、地道にヘッドフォンならではの魅力を伝えることに精を出すべきでしょう。メーカーやディストリビューターは、地に足のついた製品を供給することに意を用いていただきたい。

 とまれ、実に刺戟の多い、楽しい二日間でした。刺戟が多すぎてくたびれもしました。個人的には、これを受ける形で、もう少しおちついた環境で、腰を据えてあれこれ試聴した上で購入できる場が欲しいところです。今のところ、その点ではダイナミック・オーディオ5555でしょうか。(ゆ)

まずは、「ヘッドフォン祭 2012秋」で Jaben ブースにお立ち寄りいただきました皆さま、まことにありがとうございました。

 ウィルソンおやじからも、心より御礼申し上げる、とのことであります。

 今回は初めて晴れてスタッフのパスをもらいましたが、ブースの他にも仕事があり、両日ともブースからはずれている時間がありました。おかげで、初めて、少しは他の展示を見たり、試聴などする余裕もできました。

 ということでいろいろあったんですが、まだくたびれていて、個人的な印象などはまた後日。

 とりあえず、Hippo Biscuit と GoVibe MiniBox は大好評で、国内正式販売も近いか、という勢い。気になる方はフジヤエービックさんやeイヤホンさんやダイナミック・オーディオ5555さんはじめ、おなじみのお店にリクエストしてみてください。

 すぐ欲しいという方は Jaben のオンライン・ショップでどぞ。Biscuit はまったく同じサイズの Cricri とのペアで買えます

Mini Box 2012 edition

 今回は新製品は少なかったんですが、来年はまたいろいろ新しい動きもあると思います。「ブーム」に浮かれずに、地道にコツコツと楽しみましょう(笑)。(ゆ)

 ご来場、ありがとうございました。

 Jaben ブースの Biscuit はおかげさまで完売しました。MiniBox はシルバーが2個あります。

 明日は予約を受け付けます。予約された方には会場特価で販売します。

 バランス仕様の Beyerdynamic T1 と T5p については、ウィルソンおやじの提案により、小生が預り、販売した上、売上をチャリティに寄付することになりました。販売の方法、寄付先などは後日、当ブログでお知らせします。

 ちとくたびれました。明日もあるので、今日はもう寝ます。

 では、また明日。(ゆ)

 Jaben がらみでもう一つニュース。

 『ヘッドフォンブック2012』英語版が出ます。ウィルソンおやじがこの本に惚れこんで、ぜひ出したいというのでわざわざ出版部門をつくった由。あの本をまんま英語にしたものです。プラス独自記事も少しあります。

 日本語ネイティヴにはあまり用はないかもしれませんが、付録が違います。Head-Fi が David Chesky とつくったバイノーラル録音のCDが付きます。

 それにヘッドフォン、イヤフォンで英語を勉強したい、という向きには絶好の教材です。母語ではない言語を学ぶには、関心のあることを題材にするのがベストです。

 なお、今回だけでなく、これから毎号、『ヘッドフォンブック』が出るたびに英語版も出ます。次からはもう少し日本語版との時差が縮まるはず。

 刊行は12月中旬。日本で入手できるかはまだ未定ですが、各種オンライン・ショップには出るはずです。オンラインはどーしてもヤダ、という方はフジヤさんに圧力をかけてみてください(^_-)。(ゆ)

 明日、明後日の「ヘッドフォン祭」では、Jaben のブースで Hippo Biscuit と GoVibe MiniBox を数量限定で販売します。

 価格は各5,000円。

 にこにこ現金払いでお願いします。領収書発行はご容赦ください。

 Biscuit は 99USD、MiniBox は59USD が本来の価格ですから、これはもってけどろぼーの類。特に Biscuit は「原価割れ」(^_-)ですね。

 その場で試聴もできます。Biscuit はマイクロSDカードしか使えませんので、試聴したい音源がある場合はマイクロSDカードに入れてご用意ください。サポートしているサウンド・ファイルは MP3 と WAV のみです。カードのフォーマットは Windows の方が無難でしょう。Mac は Windows フォーマットのカードも読み書きできます。ウィルソンおやじは Chesky Records が出しているバイノーラル録音を入れたカードを持ってくるそうです。(ゆ)

 前回のヘッドフォン祭でプロトタイプが展示、試聴可能になっていた Hippo Biscuit の製品版は、使い勝手は最低なのですが、あまりの音の気持ち良さに、ほとんどメイン・プレーヤーになっています。

 20時間過ぎた頃から、こちらはヘッドフォン祭で好評だった GoVibe MiniBox をつないでみました。この MiniBox は新しい2012年ヴァージョンで、Ver. 1 の約半分の厚さ、縁は丸くなってます。ヘッドフォン・ジャックからつなぎ、音量調節はプレーヤー側でする形のシンプルな「筒」アンプです。Jaben のウィルスンおやじのつもりではほとんど Biscuit 専用に造ったらしい。MiniBox のパッケージには Biscuit とヘッドフォンの間に MiniBox を置いたイラストが描かれています。

 この組合せがすばらしい。Biscuit はもともと妙に音が良いんですが、MiniBox をかませるとちょっと信じられない世界です。Biscuit は現段階では MP3 と WAV しかサポートしていません。なので、もっぱら MP3 を聴いていますが、それがまるでハイレゾ・ファイルの音になります。ミュージシャンの息遣い、楽器のたてるノイズ、ホールやスタジオ内の残響、といった、ふつう圧縮音源では聞こえないとされる音も生々しい。一つひとつの音に実体があります。音が伸び伸びしてます。無理がない。フレーズに命が流れてます。そうすると音楽の活きが良くなります。とれたて、というか、みずみずしい、というか。音場は広すぎず狭すぎず。いやむしろ、録音そのまま、でしょう。広い録音は広く、狭い録音は狭く。

 テクニックでは並ぶ者もないが、さてそのテクニックで奏でられる音楽には全然感動しない、というミュージシャンは少なくありません。それと同じで、音の良さは天下一だが、それで聴く音楽はさっぱり面白くない、というハードウェアもあります。というより、オーディオの世界ではそういうケースの方が多いのではないか、とすら思えます。ハードウェアを造るのに夢中になって、肝心の音楽を聴くことが少なくなってるんじゃないでしょうか。たとえばたまにはこういうライヴを体験されてはいかがでしょう。こういう音楽をまっとうに再生できてこそ、ホンモノと言えるはず。

 対照的に、上手いんだか下手なんだかよくわからないが、独得の味があってついつい聴きこんでしまうアーティストがいます。外見などは地味だが、ツボにはまった音楽を「楽しく」聴かせることでは無類というハードウェアもあります。

 たとえば、かつて「BBC モニター」と呼ばれた一群の英国製小型スピーカー。スペックだけ見れば「ジャンク!」と言う人もいそうですが、音楽を楽しく聴ける点では、物量を惜し気なく注ぎこんだ大型スピーカーもかなわないものがありました。

 BBCモニターも、デジタル録音のヒップホップを再生すれば、たぶんひどくショボいものになるでしょう。同じ英国製でも、レディー・ガガはどうかなあ。

 しかし、たとえばビートルズやストーンズやキンクス、アコースティック・ジャズ、デッカのクラシック録音などには無類の強みがありました。とりわけ、英国の伝統音楽、あの頃のぼくらにとってはアイリッシュ・ミュージックもその一部だった、当時「ブリティッシュ・トラッド」と呼ばれていた音楽、フェアポート・コンヴェンションやスティーライ・スパンやニック・ジョーンズやアン・ブリッグスをクォードのアンプで鳴らすロジャースの 3/5A で聴くと、独得の「翳り」がひときわ艶を帯びて、たまりませんでした。

 BBC モニターの音楽再生に関する「思想」が時代を超えた価値をもつことは、最近になって、各モデルが相次いで復刻されていることからもわかります(ロジャースハーベススペンドール)。最新の技術を注ぎこんで現代の音源再生に合わせたものもあり、また当時の製品を忠実に再現したものもあります。かつてのオーディオ・ファンの端くれとしては、こういうもので、最新のハイレゾ音源を聴いてみたくもなりますね。

 Biscuit + MiniBox の組合せも万能ではない。不得手な音楽はたぶんたくさんあります。しかし、得意なものを与えられると、どんな「高性能」なハードウェアもかなわないリスニングを可能にします。何が得意かは、組み合わせるヘッドフォン/イヤフォンによっても、リスナーの嗜好によっても変わるでしょう。ちなみにぼくがつないでいるのは、Final Audio Design Piano Forte II、音茶楽 Flat4 粋、 Superlux HD668B、HiFiMAN HE300、Fischer Oldskool '70s です。Sennheiser の Momentum でこれを聴いてみたいんですけど、まだ販売開始されてないみたいですね。しかし、実は Final Audio Design Piano Forte X で聴きたいなあ。あのみごとな音の減衰が Biscuit + MiniBox でどう鳴るか。

 では音源はといえば、たとえば、オーストラリアのシンガー・ソング・ライター、Rachel Taylor-Beales。現在産休中で、公式サイトに《LIVE AT NEWPORT UNIVERSITY 2012》という MP3 音源が上がっていて、フリーでダウンロードできます。

 マーティン・ジョセフが推薦しているだけあって、うたつくりもシンギングもギターもすぐれた人ですが、ここではチェロやもう一人の女性ヴォーカル、エレキ・ギターなどのサポートで、ゆったりとしながらも切れ味鋭いうたを聴かせます。この人の一番新しい CD も買ってみましたが、これをリッピングした FLAC ファイルを iPod touchでアンプを通して聴くよりも、Biscuit + MiniBox で聴くこのライヴ音源の方に限りなく惹かれます。スタジオが悪いわけではないんですが、演奏も音も、ライヴの方がより生き生きしています。

 試しにオワゾリールから出ている Philip Pickett & New London Consort の《CARMINA BURANA Vol. 1》を XLD で FLAC と Lame MP3 256Kbps VBR にリッピングしたものを聴きくらべてみました。ヘッドフォンは Superlux 668B。

 うん、かなりいい勝負ですね。MacBook Pro の Audirvana Plus による FLAC 再生の方が少し音場が広いかな。それに個々の音の焦点はさすがに FLAC の方がきちんと合っています。が、聴いての楽しさという点では全然負けてません。むしろ、Biscuit + MiniBox の MP3 の方がわずかですが上かも。

 FLAC 再生の環境は Reqst 製の光ケーブルで伝聴研の DenAMP/HPhone です。伝聴研のものは先日出たばかりの DAC兼ヘッドフォン・アンプです。入力は光と同軸のデジタルのみ、24/192までカヴァー。かの DenDAC の開発・発売元だけあって、さすがの出来栄え。外見はチャチですが、実力は立派なもの。製造は Dr. Three がやってるらしい。

 フルオケの試聴には例によってフリッツ・ライナー&シカゴ響の《シェエラザード》。ビクターの XRCD 盤からのやはり 256Kbps VBR でのリッピング。奥行はちょっと短かいかもしれませんが、左右はいつものように広すぎるくらいに広い。高さも十分。第2楽章いたるところでソロをとるクラリネットの音色に艶気があります。途中で曲調が変わるところ、コントラバスの合奏の反応が速い。第4楽章のトランペットの高速パッセージの切れ味の良さ! 

 いやー、聴きほれてしまいました。人なみにこの曲はいろいろ集めてますが、やはりこの演奏が一番好き。

 それにしても Biscuit + MiniBox + 668B という、この組合せはいいな。ヘッドフォンが良いのかな。70時間を超えて、いよいよ美味しくなってきました。ラストのヴァイオリンのハイノートの倍音がそれはそれは気持ちよい。

 ついでながら、HD668B は、メーカー代理店の京都・渡辺楽器が扱わないというので、本家にも相談した結果、ここから買いました。送料込みで 35GBP。

 それと音茶楽の Flat-4 ですね。メーカー推奨のエージング時間のまだ半分ほどですが、ちょっと他では聴けない体験をさせてくれます。たとえば、シンバルの音が消えてゆく気持ち良さ。そしてヴォーカルの肌理のなめらかさ。もっとも、このイヤフォンについてはぼくなどが拙いことばをつらねるよりは、こちらをお薦めします。

 もう一つ。アラゲホンジが OTOTOY で配信したライヴ《月が輝くこの夜に》(DSD ファイルにオマケで付いてきた MP3)の〈斎太郎節〉、後ろでコーラスをつける女性ヴォーカルが気持ち良く伸びます。 〈秋田音頭〉の粘度の高いエレキ・ベースの跳ね具合がよい。ヘッドフォンは HE300。Head-Direct で売っているバランス用にケーブルを交換しでます。このケーブルはバランス用ではあるものの、単純にシングルエンドのハイクラス・ケーブルとして使えます。

 Biscuit のパッケージにはマニュアルもなくて、必要ないくらいですが、一応諸元を書いておきます。

サポートするフォーマット:MP3, WAV
サポートするヘッドフォン・インピーダンス:16〜300 Ohms
充電時間:1.5時間以内
再生時間:9時間
サイズ:62.8×35.7×11mm
重さ:30g

 サイズは Hippo Cricri とそっくり同じです。

 重さ30グラムというと、うっかり落としても、ヘッドフォン/イヤフォンのケーブルに刺さっているだけで支えられます。

 マイクロ USB ポートで充電します。充電用コードは付属。

 メディアは microSD カード。32GBまで。Biscuit 自体がカードリーダーとしても使えます。なお内蔵メモリは無いので、カードから直接再生してるんでしょう。

  機能は、単純な再生と音量の増減、次のトラックに進む、前のトラックにもどる、だけ。メインのボタンを押し続けるとグリーンのライトが点いてパワーが入ります。もう一度押すと再生開始。再生中はグリーンのライトが点滅。トラックが変わるところで一瞬、点滅が止まります。再生中に押すとポーズ。もう一度押すと再生。ポーズまたは再生中に長押しするとグリーンのランプがまばたきしてパワー・オフ。曲の途中でパワーを切ると、次に入れた時、前に再生していたトラックの頭から再生を始めます。

 再生の順番はカードに入れた順、らしい。シャッフル再生はできません。何を再生しているかは、記憶に頼るしかありません。初聴きには向かないです。とにかく、ひたすら音楽を聴くだけのためのハードです。

 万一、ハングしたら、楊枝か、延ばしたクリップでリセット・ボタンを押します。ハングしたトラックから再開します。

 MiniBox 以外のアンプと組合せても、Biscuit はすばらしいです。Rudistor RPX33 + Chroma MD1 につなげてみました。音が出たとたん、言葉を失いました。そのままずーっと聴きつづけました。うーん、この組合せがこんな音を聴かせてくれたことがあったかな。お互いベストの相手には違いないでしょうが、MacBook などからつないだ時よりも音楽に浸れます。こっちの耳がグレードアップしたんじゃないか、と思ってしまうくらい。そりゃ高価なハイレゾ・プレーヤーならもっと凄い音が出るんでしょうが、なにもわざわざそこにカネを注ぎこまなくても、プレーヤーは Biscuit で十分。むしろアンプとヘッドフォンにカネを注ぎこみたい。こりゃあ、次は LCD-3 かスタックスで聴いてみたくなります。

 それでいてなのです、MiniBox との組合せにはちょっと特別なものがあります。もちろんどこにでもその音を持っていけるというメリットは大きいです。MiniBox にはクリップが付いてますから、シャツにはさんだり、バッグのベルトにひっかけたりもできます。そしてそのペアでの音のふくらみが尋常ではありません。「フルボディ」というやつでしょうか。他とのペアで音がやせているわけではないんですが、MiniBox とのペアの音はさらに中身がぎっちり詰まっています。一方で、透明度もハンパではありません。分析的ではないけれど、隅々までよく「見え」ます。だから空間も広い。そのおかげで、とにかく聴いて楽しい。音楽を聴く悦びがわいてきます。これこそがオーディオの役割ではないか。いや、これこそが理想のオーディオ・システムというものではないか、とすら思えてきます。

 今のところ日本から買えるのは Jaben のオンライン・ショップです。

 MiniBox 2012 Version はこちら。シルバーもあります。また、シャツの胸ポケットなどにはさめる形のクリップが片方についてます。

 単体で欲しいとか、英語はちょっとという方には朗報です。今週末のヘッドフォン祭にウィルソンおやじが自分で持ってきて、ブースで販売します。MiniBox との組合せもあります。また、このペアが当たる抽選会もあります。

 ちなみにこの抽選会には Jaben からもう一つ、バランス仕様の Beyerdynamic T1 も提供されます。

 従来のオーディオの愉しみに、高い価格に代表される「価値」をそなえたモノを所有する、という物質欲を満たす面があることは否定しませんが、それはやはり二次的な愉しみでしょう。オーディオはまず何よりも、音楽を聴くための手段であるはず。アナログでは質を高めるためには物量を投入する必要があったかもしれませんが、デジタルでは様相が逆転します。小さく、安価で、能率が良く、しかも質が高いシステムが可能になる。その可能性はちらちら見えていますが、まだ本格的な展開に手がつけられていない。アナログの発想から抜けだせていないように見えます。

 まあ、ものごとの変化は一様に進むわけではなく、変化の小さい長い準備期間の後に急速に大きく進むというパターンが多いですから、今はまだ準備中なのかもしれません。本物の変化が始まるのを見たい、体験したいものですが、生きているうちに始まってくれるかな。

 それにしても、Biscuit が FLAC とギャップレス再生をサポートしてくれたら、もう iPod も要らないな。(ゆ)

ヘッドフォン祭の記事でも書いたように、GoVibe Porta Tube と Porta Tube+ では、内部のジャンパ・スイッチによってゲインを下げることが可能です。

    
    その方法を Jaben のウィルソンおやじから教わりました。
    
    「危ないから開けるな」とわざわざ印刷してあるくらいですから、感電などならさぬよう、よくよくご注意のほどを。開けただけで保証がなくなるとは思えませんが、自己責任ということでお願いします。
    
    
    まず必要な道具ですが、トルクスのドライバーです。サイズは T6 です。トルクスは登録商標の由で、自転車方面などではヘックスとか、アレン・キーとか呼ばれているそうです。Mac で内蔵ハード・ディスクの交換をしたことがある方は使われたと思います。ホーム・センターなどで手に入ります。ヘッドフォン祭の会場では Jaben は先端が交換できる方式のものを使ってました。
   
    前後のパネルを止めている四隅のネジをゆるめて抜き、パネルをはずします。
    
    ヴォリューム・ノブが邪魔でしたら、ネジをゆるめるとはずれます。
    
    後ろからプリント基盤を押して、基盤を前に出します。すると真空管のうしろにジャンパ・スイッチが見えてきます。
   
    下の写真では真空管と緑色のバッテリの間、赤い素子の上に見えます。
   


IMG-20111105-00352

    
    Porta Tube と Porta Tube+ では、ジャンパ・スイッチの位置は同じですが、向きが違います。
    
    ゲインを下げるには、

    Porta Tube ではジャンパを右に移します。
    
    Porta Tube+ ではジャンパを下に移します。


PortaTube Low Gain Setting

    
    スペックとしては 6dB 下がるそうです。
   
   
    お楽しみを。(ゆ)

13時過ぎに会場に着いたら、エレヴェーターの中でウィルソンおやじにばったり。そのままブースに引っぱっていかれて、結局18時半のクローズまでつきあうことになりました。挨拶と試聴だけで帰るつもりだったんですが、会場の熱気にあてられたか、結構元気をいただいて、会場にいる間は楽しかったです。が、家に帰りついたらほとんど寝床に直行。やはり大勢の人と話すのはくたびれます。ブースで素人の相手をしてくださった皆さまには御礼申し上げます。ありがとうございました。
    
    今回は前回の Porta Tube のようなセンセーションはありませんでしたが、新製品ではやはり平たい GoVibe Vest が人気でした。DAC 付きと無しとあり、やはり音が違うようですが、ありが良いという方、無いが良いという方、双方がいらしたのは面白かったです。DAC は 24/192 まで対応で、価格は DAC 付で3万以下ですから、結構お買い得ではないかと思います。
    
    Porta Tube ユーザの方も結構いらして、人気の高さを実感しました。Porta Tube+ は DAC を付けた他、アンプ部は Porta Tube とまったく同じだそうですが、ただゲインを下げているそうです。プラスの方が音が良いと思われる(ぼくだけではなく、何人かいらっしゃいました。)のはそのせいでしょうか。
    
    プラスでは、中を開けてジャンパ・スイッチを切り替えることでさらにゲインを下げられます。では Porta Tube はどうしようもないのかというとさにあらず。このジャンパ・スイッチはすでに搭載されているので、Porta Tube もこれを切り替えることでゲインを下げられます。その方法は別記事に書く予定。
    
    本体には、危ないから開けるな、と書いてありますが、ブースでも開けた状態の Porta Tube を展示してあったくらいですので、開けたら保証がなくなるというものでもないでしょう。
    
    ACS の新製品 T15 も、気軽に使えて音が良いというので、なかなか人気でした。ER4 と比べられますが、あちらは「音」を聴く装置、これは「音楽」を聴くツール、とおっしゃった方がいて、なるほど、と思いました。ウィルソンおやじによれば、国内での正式発売が決まったそうです。めでたい。
    
    イヤフォンではもう一つ、5ドライバのIEMの試作品も持ってきていました。後半はどこか切れるかしたか、調子が悪かったようですが、午後のはじめに試聴された方には好評でした。ドライバの構成は2ベース、1ミドル、2ハイの由。
    
    なお、今回展示してあったものは Porta Tube と Porta Tube+ を除き、どれもまだ試作品段階で、これから細かい調整をするそうです。それでも来月には発売とのことで、国内に入ってくるのは来月後半から12月はじめぐらいでしょうか。
    
    Porta Tube+ だけはすでに発売になっており、国内でももうすぐ発売になるそうです。価格は Porta Tube の150USDプラスとのことですから、6万円代半ばというところでしょう。DAC だけで150ドルというのはやはり結構良いものを使っていると思われ、実際、ウィルソンおやじの MacBook Air で試聴された方には好評でした。
    
HippoPipe    個人的には Hippo Pipe が今回のヒット。たぶん世界最小のヘッドフォン・アンプ。E3 のようにイヤフォン・ジャックから直接つないで、プレーヤー側で音量調節します。すでに発売されている Hippo Box+ と同じ傾向の、元気の良い音で、聴いて楽しくなります。ハイレゾ音源をどうとかでなく、ヘッドフォン・アンプの入門とか、iPod Shuffle などでMP3音源を気軽に聴くにはもってこいでしょう。

    もう一つ、英国のメーカー JustAudio という、A級動作のヘッドフォン・アンプもウィルソンおやじが持ちこんでました。写真はフジヤさんのブログにあります。大きい方はイヤフォン/ヘッドフォンのインピーダンス切替ダイアル付き。 Porta Tube よりもデカくて、重さも同じくらいという、ポータブルとしてぎりぎり限界ではないかと思われるものですが、ブースに来られたなかに3人、これを持っている方がいました。国内では未発売なので、直接に買われたもの。中のおひとりはシリアル番号が2番というツワモノでした。ちょっと聞いたかぎりでは小さい方がきびきびした音で買うならこちらかなと思いましたが、じっくり聴きたいものであります。

        体力が無いこともあって、会場を回ることもしなかったのですが、ウィルソンおやじが引っぱってきてくれた音茶楽さんの「革命的」イヤフォン、フジヤさんのブログで紹介されていたアレをちょっと聴かせていただきました。これは凄いですね。とてもイヤフォンとは思えない。こういう音がスタンダードになれば、音楽の聴き方もまた変わるのでは、と思ってしまいました。ぜひ量産化していただきたいものです。応援します。
    
    女性のお客さんはやはり少なくて、来場者が増えたこともあるのか、10対1ぐらいに見えました。たいていはカップルで、単独で来られていた方はごく稀でした。一人、カスタムIEMの交換ケーブルを探しにこられた方がいました。
    
    放射能にもかかわらず、今回はこれまでになく外国からのお客さんが目につきました。出展側ではなく、ほんとうのお客の方です。Head-Fi 関係からも主催者はじめ幹部が何人も「遊び」に来ていたそうで、Moon Audio の主催者もいました。大陸や台湾からはこれまでにも出展者の他にプレス関係が来ていましたけど、アジアからのお客さんは、見分けがつかないこともありますが、どうなんでしょう。
    
    これでぼくが見たのは4回目ですが、お客さんの「濃度」がだんだん濃くなる気がします。フルサイズのヘッドフォンをジュラルミン(?)のケースに入れて持ち歩いてる方もいましたし、カスタムIEM はもうデフォルト、接続コードもそれぞれに凝って、と感心するばかり。
    
    イベント全体としても、最先端を示すことはもちろん意味がありますが、たとえばこれからヘッドフォンやイヤフォンをアップグレードしたいという人や、DAC やポータブル・アンプを買おうという方が来ても、何がどうなっているのか、まるでわからないのではないか、とも思いました。
    
    来年の春の次回ヘッドフォン祭には、放射能ももう少し収まって、こちらの体力ももう少し回復して、楽しめますように。(ゆ)

今日のヘッドフォン祭ですが、先週の抗がん剤投与の後遺症がまだ尾を引いています。Jaben のブースで MacBook Pro を持ちこんで GoVibe Porta Tube+ の DAC の試聴ができるようにする予定でしたが、体力が保ちそうにありません。楽しみにされていた方がいれば申しわけないのですが、それは無しにさせてください。
    
    ぼくがいなくても、Porta Tube+ 単体の試聴や ACS T15 の試聴はできるはずです。T15 は他でも試聴できるかもしれません。これはほんとうに凄いです。一聴の価値はあります。というより、必聴でしょう。他にもいろいろ面白そうな製品があります。
    
    お楽しみを。(ゆ)

Jaben のウィルソンおやじが今週末のヘッドフォン祭に持ってくる新製品はまだある模様。たとえばこれ。

jaben111021



























    E7キラー、ですかね。写真だけで詳細不明。Jaben のブースで試聴できるはず。
    
    FiiO も新製品が次々出ますなあ。オヤイデさんもたいへんでしょうけど、国内でもどんどん出してほしい。(ゆ)

ぼくが受けている Folfox という化学療法は本来は2週間に1度、つまり1週間おきに点滴を受けます。そうすると9回目ぐらいになると手足の痺れが耐えられなくなり、メニューを変更する由。ぼくは3週間おきという、ゆるいスケジュールもあって、当初のメニューで「順調」に進んでいます。前回から処方された、痺れをとる漢方薬も比較的効果があり、痺れの方はそうきつくならず、手足の指先に留まっています。こういうものにも人間は慣れることができるらしい。痺れは常にありますが、気にしないようにすれば一時的ですが忘れることもできます。
    
    それでも回数が重なってくると薬が蓄積されてきて、副作用も強くなるようです。今回は吐き気が来ました。
    
    点滴を受けはじめる水曜日の朝から3日間、イメンドという吐き気止めの薬を飲み、また点滴の最初に投与されるのは吐き気止めの薬です。そのおかげもあって、これまではせいぜい病院の食事を食べる気になれないくらいでした。
    
    今回は2日めの木曜あたりから軽いものではありますが明確な吐き気が出て、土曜日までそれが続きました。病院では食慾はまったくありませんでした。食事が出るとほとんど無理矢理食べものを口に入れます。すると腹は空いているので、食べはじめると結局勢いで全部食べてしまいます。病院食ですから量も多くはありません。それでも3日め金曜の朝食、点滴入院中病院でとる最後の食事ですが、口に入れるには「努力」が要りました。
    
    日曜日には空腹時には吐き気は感じなくなりましたが、腹に食物が入ると吐き気まではいかない不快感が出てきます。
    
    また、退院してから出てくるダルさもこれまでになく重いものでした。倦怠感と書くとこの重みが抜けおちる気がします。
    
    帰宅後は好きなものを食べられるわけですが、塩味の強いもの、酸味のあるものが食べたくなります。漬物などが嬉しいので、白菜のゆず漬けなど、一袋買ってきて1度に食べてしまったりします。醤油味の煎餅も、もともと好物ですが、無性に食べたくなる。今回は思いきって寿司を食べてみました。寿司飯の酸味がありがたかったです。
    
    今日で点滴開始1週間ですが、まだ入院前の状態にはほど遠い感じです。3日間飲むイメンドはそれによって1週間効果が続くそうですから、明日あたりは不快感も軽くなってくれるかと期待。
    
    病院ではほとんど眠っていました。眠ろうとするといくらでも眠れます。また水曜日の夜はトイレに起きるごとにその後1時間ぐらいは眠れないので、木曜日の昼間は眠い。この点滴には利尿剤も入っているそうですし、またイメンドが便秘を引き起こすので水分をなるべく多くとるようにしていますから、尿の量はハンパでなく増えます。多い時には30分ごとにトイレに通います。夜間も21時の消灯から朝6時の検温・血圧測定までの間に、最低2回、たいていは3回トイレに起きます。24時間に出る尿の量も計ります。ぼくの場合、これまでのところ4,000cc前後。
    
    それでもさすがに眠くないときもあるので、そういう時には持っていった ACS T15 + GoVibe Porta Tune+ で音楽を聴いていました。これはまことにありがたかった。
    
    この組合せはたまたま手元にそろったので試してみたわけですが、どんぴしゃにはまりました。詳しくは別に書くつもりですが、もともときわめて高い T15 の性能が Porta Tube+ で文字通り増幅されて、楽園に浮かんでいる気分。音楽が鳴っている間だけは何もかも忘れて没入できました。
    
    T15 はサウンドステージがとんでもなく広くてステージというよりスペースと呼びたくなるほどである上に、分解能が高いというのでしょうか、ディテールがそれぞれ適切なヴォリュームで明瞭に聞こえます。フルオケのマッスになっても、フルートのような楽器の音も埋もれることがありません。一つひとつの音に芯があります。
    
    またヴォーカルの表現が精密で、録音によってはうたい手の唇だけでなく、舌の動きまで見える気がします。コーラスでは一人ひとりのうたい手の声がはっきり聞こえるまま、しっかりハモっています。しかもハイレゾでなく、MP3音源でも変わりません。Jaben のウィルソンおやじは「オーディオの救世主」と呼んでいますが、そう呼びたくなる気持ちもわかります。
    
    今週末のヘッドフォン祭では試聴機も用意されるとのことなので、ぜひぜひお試しあれ。
    
    久しぶりにジョン・ドイルのソロ・ファースト《Evening Comes Early》を聴きましたが、ジョンのギターがいかに緻密か、あらためて脱帽しました。それに、ジョンとカラン・ケーシィのハーモニーの妙。
    
    新発見では Mamia Cherif という人の最新作《Jazzarab》が面白い。この人はパリ在住のシンガーですが、出身はマグレブらしい。ここではタイトル通り、ジャズのコンヴェンショナルな語法を守りながら、アラブ音楽の風味を加えています。〈My favourite things〉をアラビア語でうたったり、〈Afro blue〉にアラビア語の歌詞を付けたりしていて、これも面白いですが、ギターの代わりのウード、それにアラブ的フレーズを展開するヴァイオリンが良い味。同時にジャズの本流に従うピアノもよくうたっています。
    
    音質と音楽自体の良し悪しは比例しませんが、良い音で聴くとやはりいろいろと発見があり、新たな体験ができます。何よりそれはそれは気持ち良くなります。背筋を感動の戦慄が走りぬけるたびに免疫力が上がる気がします。
    
    今週末のヘッドフォン祭までにはなんとか回復したいところ。同じく週末の下北沢の音樂夜話特別イベントも気になりますが、先週の経験からも、連チャンは無理でありましょう。(ゆ)

今月末のヘッドフォン祭にはまた Jaben のウィルソンおやじがやって来ます。毎回、新製品をたくさん持ってきますが、今回はまた一段と多彩です。どれがどれだか、わかりにくくなるので、整理しておきます。ただ、まだあまり情報が無いので、濃淡のある紹介になるでしょう。それと価格もまだわかりません。
    
    新製品の写真はここにまとめられています。

    これは Jaben のオーストラリア支社がアメリカのロッキー・マウンテン・オーディオ・フェスティヴァルに出品するもの。RMAF はちょうど今開催されているところです。ここ数年、各社が力を入れている新製品を披露するので注目が高まってるようですね。
    
    新製品はいずれも GoVibe のブランドで、全部で5機種あります。
    
    GoVibe Vest
    GoVibe Volante
    GoVibe mini U-DAC
    GoVibe mini box amp
    GoVibe Porta Tube+
    
    まず、Vest は御覧のように平たいアンプで DAC 付きと無しと出るそうです。DAC は 24bit/192KHz までのもの。全体としてはシンプルに出入力とヴォリューム・ダイアルだけ。今回出るものはどれもそうですが、ゲイン切替とか、ベース・ブーストとかは付いてません。それだけ、音に自信があるとも言えます。
   
    次の Volante は小型のデスクトップ真空管アンプ。名前はサッカーの「ボランチ」と同じですが、もともとは音楽用語で「あまかけるように速く軽やかに」という意味。そういう音は聴いてみたい。
    
    形もキュートで、ちょっとオーディオ・デバイスらしくないですね。これでパステルかメタリック調のカラー・ヴァリエーションが出たら、人気が出るんじゃないでしょうか(^_-)。
    
    真空管を使ったものは Jaben では Porta Tube が最初ですが、あの出来栄えの見事さからすると、このデスクトップも音の面でも大いに期待できます。
    
    U-DAC は DenDAC と同じく、USB端子付きのDAC兼アンプです。DenDAC は音は良いですが、ハイレゾ対応していないし、プレーヤーによって合わないものが出てきているので、これに替わるものができないかと頼んだらほんとに作ってくれました。詳細はまだわかりませんが、少なくとも 24/96 までの対応ではあるはず。
    
    mini box amp は FiiO E3 と同じ形ですが、リチウム電池内蔵で、聴いた人間は皆 E3 より音が良いと言ってるよ、とはおやじの言。造りもよりかっちりしています。
       
    一番下の Porta Tube+。これが今回の一番の目玉でしょう。Porta Tube にDACが付きました。チップはテキサス・インスツルメント製ですが、それ以上詳しいことはわからず。24/96までの対応です。
    
    実は先日からサンプルを聴かせてもらってますが、これが単純に Porta Tube にDACを付けただけではありません。
    
    一つはゲイン切替が可能になりました。ただし、中を開けてジャンパ・スイッチで行います。音量を6dB下げることができます。
    
    そしてもう一つ。アンプ自体がアップグレードされてます。これは聴けばすぐわかるくらい、音が良くなってます。サウンドステージがさらに広く深くなり、音の分離がさらにクリアに自然になり、とにかく全体的にブラッシュアップされてます。
    
    Porta Tube だけを聴くと、もう十分なくらい良質の音で音楽に没頭できます。これも質は相当高いでしょう。お披露目した前回のヘッドフォン祭の会場でも iQube より上という声もありました。iQuebe は一度アキバのダイナで試聴したことがあるだけですが、その記憶は鮮烈に残っています。その記憶に比べても、Porta Tube は優に肩を並べるか、場合によっては、つまり聴く音楽によっては凌ぐと思ってました。
    
    Porta Tube+ は、それをあっさり超えてると思います。iQube には独得の艶、エロティックと言いたくなる艶があって、蠱惑的とも言えますが、時にそれが鼻につく、というか耳につくことがありました。Porta Tube+ はそういう艶はなく、音源に入っているものに「何も足さず、何も引かず」にそのまま出してきます。その出し方の質感が絶妙なのです。無色透明にかぎりなく近い。完全に無色透明ではないですが。
    
    各社の製品と比べたわけではないですし、iQube も新版が出ますが、ぼくはもうこれ以上他には何も要らん、という気持ちです。
    
    外観も変更になって、フロントとエンドのパネルはシルバー、ヴォリューム・ダイアルは黒、本体はブルーです。このブルーは Vulcan+ のものと同じ、群青色に近い色。それと、本体上側の通気孔のあいている部分は、Porta Tube では一段低くなっていましたが、+ では他と同じ平面です。USB入力はミニ・ジャックで、背面にあります。その他はサイズも含めて変更無し。
    
    細かいことですが、ぼくの使っている Porta Tube のヴォリュームはやや軽すぎるところがありました。個体の問題かもしれません。Porta Tube+ のヴォリュームは適度に重く、調節がしやすいです。
    
    せっかくですので、MacBook Pro を持ち込んで、会場でDACも含めた試聴ができるようにする予定です。ハイレゾ音源も少しですが、用意します。(ゆ)

悪いものではないが、ぼくにとってはあまり面白くない類の音楽を3人、聴く。サンプルをいただいたので、無視するのも失礼だし、礼状を出すより、少しでも露出した方が何らかのプラスにはなるだろう。

*エミリー・ジェイン・ホワイト《ODE TO SENTIENCE

    歌詞に特徴があるのだろうが、音楽自体はごく普通のアコースティック主体のアメリカ西海岸出身の英国調シンガー・ソング・ライター。その「英国」はアメリカ人の一部の想像の中だけにある王国だ。セーラ=ジェイン・モリスとか、パメラ・ウィン・シャノンあたりと通底する。アメリカよりもヨーロッパ、それも大陸で人気が高いらしいのも当然。ニック・ドレイクへの憧れもあるようだ。60〜70年代に生まれていれば「アシッド・フォーク」としてもてはやされたかもしれない。
    
    
*エミ・マイヤー《スーツケース・オブ・ストーンズ
    音楽的には前者とは比べものにならないほど高度なことをやっている。うたのうまさ、適度なポップさ、巧妙なジャズの風味。こーゆー音楽を聞きたくなる時もあるなと思わせる。ただ、毒が無い。
    
    
*デヴィッド・ウォルターズ《ホーム 〜JAPANESE EDITION(国内盤特典:ボーナスDVD付)
     どうしてこの人は英語でうたうのだろうか。アメリカで売るためか。カリブ訛のある英語がエキゾティシズムを呼ぶのか。音楽的にはかなり面白くなりそうなのを、「商品」に仕立てるためか、わざわざ一歩手前でやめている。昔は「オーヴァー・プロデュース」ということが言われたが、これは「アンダー・プロデュース」だろうか。本人の意志が入っているとしても、音楽が本来向かおうとするところを矯めているのは変わらない。だから英語以外の言語でうたっている曲が良い。ベスト・トラックは〈Lome〉。
    
    
    口なおし、と言っては失礼になるかもしれないが、同じ志向ながら別の結果になったものを聴きたくなって、これを聴いてみる。

*マリアンヌ・フェイスフル《NORTH COUNTRY MAID》
    久しぶりだが、やはり良い。この人がこういうアルバムを作ったというのは、やはり当時の時代の動きに人の創造力を増幅する働きがあったということではないか。ビートルズにしても、メンバーが凡人とは言わないが、それほど傑出した人間、たとえばレオナルド・ダ・ヴィンチとか、ソクラテスとか、司馬遷とか、あるいはモーツァルトとか、プルーストとか、ガウディとか、そういうあきらかに同時代の水準からかけ離れた才能と運命を担っていたとは思えない。
    
    一方でそうした異才たちもまた時代の風に乗っていたわけだから、60年代という時代が持っていた創造力増幅効果が特異なわけではなかろう。ただ、凡人でもその増幅効果の恩恵を受けられるようになっているところは、それだけ「文明」が進んだと言えようか。かつてはチャンスさえ与えられなかった人びとが、とにもかくにもチャンスを掴む可能性を持てるようになったのだから。
    
    話をもどせば、これを聴くとフェイスフル自身、うたい手として凡庸ではないこともわかる。誰もが知っていて、口ずさんだこともあるようなうた、あるいは録音をリリースするようなシンガーならどこかで一度はとりあげるようなうたを、相応の説得力をもって新鮮に聴かせるのは難しい。うたい手としての実力が剥き出しにされるからだ。うたい手として自信のない者は、エミリー・ジェイン・ホワイトのように、自分だけの世界に籠る。
    
    このアルバムが傑出したものになっているのは、うたい手の力だけでなく、シンプルだが大胆なアレンジで盛り上げるバックのサポートも小さくない。この類のうたの伴奏としては、かなり実験的なこともやっていて、ジャズ的処理をしているのはペンタングル出現前夜ということもあって面白い。
    
    1966年というリリース年代を差し引いても、十分時間の濾過効果に耐えて、今でもりっぱな音楽だ。
    
    フェイスフルにはもう1枚、同様の趣向の録音があったと思うが、今、思い出せない。
    
    
*大塚の波切不動
    ネットで検索してみると鬼平の場面しか出てこないが、『剣客商売』文庫版では『新妻』の巻収録の「いのちの畳針」にここが出てくる。このエピソードで初登場する小兵衞の弟子、植村友之助がこの鳥居前の茶屋の屋根裏部屋に住んでいる。茶屋をやっているのは御家人だった友之助の屋敷にかつて奉公していた女性の父親という設定。それにしてもあそこでの描写は『江戸名所図絵』そのままなのね。ここで主人公を張る友之助はその後何度か登場するが、チョイ役ばかりなのは残念。いいキャラだと思うんだが。金貸し幸右衛門から遺贈されて友之助に留守をさせている神田明神下の家を小兵衞が使う口実に使われるというパターン。


*iPhone 5
    ケータイは要らないので持ってもいないが、iPod touch もそのうち無くなって、iPhone だけになるのではないかという一抹の危惧はある。電話機能の有無を選択可能で、価格も電話無しなら iPod touch と変わらないのであればいいが。


HDTracks
    ハイレゾ音源2枚のダウンロードにちょうど24時間かかった。片方は2枚組だからCD3枚分だが、それで24時間は無いよ。ユーザのネット環境によってかかる時間が変わるにしても、だ。
    
    ここはファイルのアーカイヴ化もせず、生のファイルをダウンロードさせる。それも Java を使った独自アプリ。おかげでダウンロードが続いている間は Java を使う他のアプリは使えない。
    
    結構面白いタイトルはあるし、ハイレゾではない、普通のCD音源も、生CDを買うよりも安い場合もあるから便利ではあるのだが、このままでは二度と使えん。
    
    ただし、今回買った1枚、出たばかりの《マイルス・エスパニョール~ニュー・スケッチ・オブ・スペイン》は面白そうだ。 チック・コリアとか、ジョンスコとか、ディジョネット、ロン・カーターといった、ほんとの有名どころしかわからないが、ラビ・アブ=カリルがフィーチュアされてるし、スーザン・マキュオンの《Blackthorn》ですばらしいハープを聴かせるエドマー・カスタニェダが参加してるのは嬉しい。さらに〈Saeta/ Panpier〉にはクリスティナ・パトがパイプで入っている。24bit/88.2KHz のハイレゾの威力はどうか。


GRAHAM SLEE Novo
    をを、グレアム・スリーが入ってきたのかー(念のために書いとくが、「グレアム」だよ、「グラハム」ではないよ)。これは聴きたい。値段もまあリーズナブル。DAC はちょっと面白いものを手に入れたので、今は小型で質の良いデスクトップが欲しいところ。MacBook Pro の脇に置くので、小型でないとね。
    
    実は MacBook Pro> JAVS nano/V > RudiStor RPX-33 というのも試してみて、RPX 33 の実力をあらためて思い知らされたのであります(今は改訂版の RPX-35)。このアンプはソースが良ければいくらでも音が良くなる。うーん、DSD 音源をこれで聴いてみたい。
    
    んが、RPX-33 はさすがにほいほいと持ち歩くわけにはいかない。それに MacBook Pro の脇に置くわけにもいかない。アンプの上に MBP というのもねえ。というわけで、これに匹敵するのは無理でも、相当する小型デスクトップを物色中。
    
    というわけで、NOVO はずーっと気になっていたのだった。
    
    しかし、とゆーことは上級機も入ってくるのか。(ゆ)

午後1時過ぎに会場に到着。まっすぐ Jaben のブースに行き、結局それからクロージングまでほとんどそこに居座っていました。トイレに行った折りに会場をひと回りしましたが、あまりのお客さんの多さに、どこのブースにも寄る気が失せました。昨年秋は台風直撃もありましたが、今回はその倍は優に入っていたんじゃないでしょうか。
    
    Jaben のブースに来られたお客さんの一人もおっしゃってましたが、あれだけいろいろ沢山のものがあると、単純に聞き比べていては、どれがどれだか、わやくちゃになりそうです。自分が好きな音、聞きたい音もわからなくなるんじゃないか。
    
    今、どういうものが出ているのか、ひとわたり見渡すにはいいかもしれませんが、ある製品をじっくり納得できるまで試聴するのはちょと無理でしょう。Head-Fi のフェスティヴァルのように、ホテルを会場にして2日間かけると、たとえば夜の間に腰をおちつけて試聴するとか、ゆっくり話をするとかする余裕ができるのではないかとも思いました。あれだけの規模になるとなかなか難しいかもしれませんけど。
    
    今回もウィルソンおやじはいろいろ面白いものを持ってきていました。Hippo Box+ はあいかわらず人気で、値段を聞いてびっくりされている方も結構いました。黒の他に赤とシルバーもあります。
    
    出たばかりの GoVibe Vulcan+ と Vulcan++ も人気でした。++は USB DAC 付き。もうすぐ国内販売も始まるそうです。これも見本は黒でしたが、シルバーとブルーがあります。ブルーはなかなか品の良い色で、シンガポールでは品切れになるくらいの人気だそうな。
    
    GoVibe では USB> S/PDIF コンバータの Xvert と Mini USB DAC もあります。Xvert は24Bit/96KHz まで。サイズは70×45×25ミリ。入力はUSB B で、出力は同軸と光。Mini DAC のサイズは64×25×12ミリで、片方に USB mini B ジャック、反対側にミニ・ヘッドフォン・ジャック。
    
    Mac は標準で光出力が付いているので、Xvert はちょっと使い道がわかりません。標準の出力とはまた音が違うのか。ウインドウズ用かな。
    
    ケーブルではピッコリーノの Mini to Mini、HD800用と UE/Westone/JH 用の交換ケーブルも出してました。これは近々、国内販売開始される由。
    
    とはいえ、センセーションといっていいほどの一番人気はポータブル真空管アンプです。昨年春に試作機を持ってきていたんですが、秋にはあれはまだ時間がかかるよ、と言っていたもの。これが何ともすばらしい。
    
    もちろんハイブリッドですが、真空管のメリットが最大限活かされてるんじゃないかと思います。生楽器、とりわけピアノとかギター、そしてヴォーカルの生々しさ。さらには広大かつ隅々まで見通しがよく立体的な空間表現。お客さんの一人がおっしゃってましたが、ポータブルの域は超えてしまっていると言ってもおかしくはありません。iQube より上だという声もありました。
    
    ロック系を聞かれているという方もこれは良い、とおっしゃってましたから、ジャズやワールド・ミュージックやクラシック向けというわけでもないでしょう。
    
    とにかく試聴された方の9割以上が、これは買いたい、または買うと宣言されたのには正直驚きました。1度ならず、3度もどってこられてじっと聞きこんだ方。予約したい、国内扱いはないのかと迫る方。いつまでも聞きたくなるとなかなか手放さない方。これはもう、扱うしかないでしょう>フジヤさん(^_-)。
    
    サイズと重さはポータブルとして持てるぎりぎりですけど、それはやむをえないところ。造りはがっちりしていて、これまでポータブル真空管アンプのネックだった、ケースを叩くと真空管が共鳴するノイズも皆無。また、一日中入れ替わり立ち替わり試聴されていましたが、ケースが熱くなることはありませんでした。もっとも真空管の上には穴があいていて、これをふさぐと危いでしょうね。
    
    ゲイン切替もなく、パワー・スイッチと出入力のジャックのみ。入力はアナログ。出力はミニ・ジャックとは別に標準サイズも付いています。電池は内蔵リチウム充電池で、1回の充電で10時間使用可能。真空管のローリングはできませんが、不良品や壊れた場合にはむろん交換可能で、真空管も Jaben から供給されます。
    
    予価は600USD。GoVibe シリーズのひとつで、まだ正式名称も決まっていませんが、来月末までには出ます。
    
    それと、GoVibe Magnum の電池問題ですが、今回はサンヨーのアルカリ9Vで鳴らしてました。Magnum 自体の充電機能にこだわらないかぎり、どんな電池でもいいようです。Magnum もカラー・ヴァリエーションが増えていて、赤もチャーミングですね。
    
    もうひとつ、これも近々国内販売が始まる ACS のカスタム IEM。ACS はイングランドのメーカーで、ひじょうに柔らかいシリコンを使っているもの。40ショアというシリコンだそうで、たしかに押し込んでも圧迫感などはまったくありません。出していたのは3ドライバーの T1 というトップ・モデルで、これもすばらしい。価格も700GBP弱。

    
    お隣りはささきさんの Music To Go で、こちらもこれから出るという HE-500 をちょっと聞かせていただきました。むろんご自慢のシステムでの高音質音源。別世界ですねえ、これはまた。ヘッドフォンで聞いてる感じではないです。スピーカーのレゾン・デートルが問われるんじゃないか。ヘッドフォンの欠点とよく言われる脳内定位もどこかに吹っ飛びます。
    
    あと、ヴェトナム製というイヤフォンもいい音してました。Yuin の PK シリーズに似た音で、あれより安いらしい。
    
    お客さんはあいかわらず若くて、20代後半から30代前半がメインかな。もう少し若かったかも。40代以上と見える方もぼつぼつおられたのは、同志ここにあり、という感じで嬉しかったです。
    
    そうそう、若い方で真空管アンプを聞くのは初めてという方も結構いらしたのかもしれません。真空管は音が「暖かい」とか「焦点がぼける」とか言われることもありますが、今の真空管アンプ特にヘッドフォン・アンプは、トランジスタとのハイブリッドが普通で、むしろ音はクールでクリアです。もともと信号処理のスピードではトランジスタは真空管の敵ではありませんから、ハイブリッドの方が全部ソリッドステートよりも格段にハイスピードです。
    
    真空管は古い技術ですけど、真空管自体が無くなることはないですし、デジタル時代でもっといろいろな可能性が開けてるんじゃないでしょうか。少なくとも今回の Jaben のポータブル真空管アンプを聞くかぎり、他からもいろいろ面白い製品が出てくるはず。
    
    
    他に印象に残ったのは AlgoRythm Solo 率の高さと、Corda Stepdance のユーザの方が数人いらしたこと。実はあれ、気になってるんだよなあ。
    
    ということで、ヘッドフォン、イヤフォンの世界はますます盛ん、復興の先頭に立って引っぱってる感じでした。関係者の方々、ご苦労さまでございました。
    
    唯一つ、もう少し女性のお客さんが増えてほしい。まあ、これは全世界的な傾向ではありますが。(ゆ)

    一人では知り合いもいないし、行くつもりはなかったのだが、直前になって RudiStor のルディさんと Jaben のウィルソン親爺から、会場で会おう、ついては預けてあるヘッドフォン・アンプ NX-03 を持ってきてくれ、との連絡が入る。
   
    もっとも、当日朝早く起きられる自信がなかったので、アンプは金曜の夕方、新宿のホテルに届ける。このアンプをまた引き取らねばならないので、会場には行かねばならない。天気も良し、きっと混んでいるだろうと、ゆっくりでかける。新宿で腹拵えし、会場に着いたのは3時過ぎ。エレベータの中でルディさんにばったり。時差ボケがつらそうだ。この人、今回初めて顔を合わせたけど、エンジニアらしく、ふだんは無口だが、関心のあることになるとおしゃべりになる。会社はアメリカだが、イタリア生まれで国籍はイタリア。RudiStor のアンプ群の製造もイタリアで行っている。
   
    中野サンプラザ15階の宴会場フロアを全部借り切ってのヘッドフォン祭。立錐の余地もない、というのではないが、まっすぐ、自由には歩けない。ヘッドフォンなので、音楽は聞こえず、意外に静か。声高に話す人もいない。客の方は20代が圧倒的のようだが、皆さん、声は大きくない。穏やかに盛り上がっているというところか。
   
    三っつある会場のひとつの真ん中の柱の前に Jaben と RudiStor のブース。というより、テーブルの上に製品が並べてある。ルディさんの今回の目玉は初のヘッドフォン Titanus MD1。ダイナミック型のオープン・タイプで、2セットをソリッドステート・アンプ(NX-03)と、真空管とソリッドステートのハイブリッドの DAC/Amp にそれぞれつないでいる。ソリッドステートは Chord のCDP、ハイブリッドは MacBook Pro がソース。
   
    ハイブリッド DAC/Amp NKK-02 も新製品でまだ公式サイトにも上がっていない。12AU7 2本が上面に刺さっている。テーブルの前には誰もいなかったので、早速聞かせてもらう。セッティングのままと、自分の iPod touch + Linearossa W3 と両方聞いてみる。自分の顔がにやにやしてくるのがわかる。
   
    写真はフジヤエービックのついったーに上がったから、いずれブログ等に載るだろうが、ぱっと見た感じは Grado のいとこというところ。音も似ているという人も出てくるんじゃないかとも思うが、Grado の音はもう忘れているので、断言はしない。明解で、空間が広い。個々の音や楽器などの要素はちょっときらびやかとも思ったが、当然エージングもされてないから、この辺は変わる可能性もある。なにせ、このヘッドホン祭が「ワールド・プレミア」、世界初公開なのだ。

    〔後記〕ささきさんのブログに写真あり。
   
    自然な、無理のない音は、後で試聴した平面プラナー・ヘッドフォン HE-05LE と遜色ない。あちらの方が音が軽い感じなのは、原理からして当然だろうが、うーん、音楽として聴かせるという点では、Titanus かな。HE-05LE も音楽的だけど、こう、理想に掲げている音楽の姿が、Titanus のほうが気品があると言おうか。いやだからといってロックやジャズが合わないというのではもちろんない。クラシックはなかったが、iPod に入っている音源をあれこれ聴いてみると、なかなかやばい。ついつい聞き入ってしまう。聞き入って、聞き慣れた曲にあらためて感動などしてしまう。
   
    まあ、ヘッドフォンだけではなくて、アンプとの相乗効果ももちろんあるだろう。W3 もルディさんの製品だから、血筋はみな一緒。

    試聴した人はたいてい満足した顔をしていたと思う。なかにはその場を離れがたい様子の人もいた。
       
    他に試聴できたのは、同じ一角でささきさんが店を広げていた HE-05LE と DACport だけだった。ルディさんもウィルソン親爺も日本語はからきしなので、通訳したり、自分で製品説明したりで結構忙しい。どちらのブースも、列ができるほどではないが、席が長時間空いていることもない。
   
    Jaben は GoVibe シリーズのうち、Sharp、RKK を中心に展示。V7 も置いてはあった。これはオリジナル Go-Vibe シリーズ最終モデルの復刻で、V5 も同時復刻。V6 はやらない。復刻といっても筐体は新たに作っていて、なかなかスマート。また充電機能があるのも違う。来月発売だそうだ。もう一つ、ポータブルの真空管アンプの、まだ初期の試作品段階のものもあった。時間がなくて、きちんと聞けなかったが、ちょと面白い。

    念のため説明すると、この GoVibe シリーズはもとはカナダの個人メーカーの製品で、安価で音が良いので評価が高かった。(ゆ)のヘッドフォン・アンプ、PHA の入門もこれである。記録を見ると2006年の秋に買っていて、当時送料込みで86USD、1万円強だった。これが V5 で、おかげで完全に PHA の世界にはまりこんでしまったのだが、個人のガレージ・メーカーで、筐体などは既製品でお義理にもカッコいいとは言えない。それにちょとヤワなところもあって、1年使ったら、入力ジャックがおかしくなった。

    Go-Vibe(当時の表記)は V7 まで出たところでこのカナダの人が事情でアンプの製造販売をやめると宣言したのが確か2007年の半ばだったか。Head-Fi などでは惜しむ声も出ていた。その権利一切を買ったのがシンガポールの Jaben Network で、2007年の年末には早くも新製品を出した。ちょうど V5 がおかしくなっていたので、早速これを購入したのが、ウィルソン親爺とのつきあいのはじめ。Jaben はその後、GoVibe シリーズで怒濤の新展開をするわけだ。で、V5 と V7 を復刻するというのはやはり商売がうまい。筐体が変わるから音もやはり変わるはず。電源はオリジナルと同じ 9P バッテリー1個。
   
    HE-05LE は良くなっていると思う。ハウジングも心持ち小さくなり、他にもなにかやったのだろう、少し軽くなった。パッドも改善されて、装着感は一新されている。値段も上がった。

    DACport は自分の音源で聞けなかったので今一つ印象がはっきりしない。良いものではあるが、わずかに価格が高すぎる感覚。とりあえず、DenDAC があれば、今のところはいいかな。それにルディさんが、NKK-02 を預けてくれたので、当分これで遊べる。
   
    RudiStor のすぐ向かいがエントリーのブースで、Comply を各種展示していた。しばしおしゃべり。EarPhone M には Comply は必須、と力説してしまった。マニア以外の人たちに存在を知ってもらうにはどうすればいいか、と聞かれる。うーん、「けいおん」ででも使ってもらいますか。多色展開も意識したことはなかったけど、左右で違う色にするのはアリかも。
   
    リスナーだけでなく、メーカー(作る人の意)もいらして、いろいろ聞かれる。GoVibe シリーズの筐体の仕上げに感心していた。日本だと同じことをやろうとするとやたら費用ばかりかかるか、できませんと言われることが多いそうな。
   
    5時を過ぎるとさすがに人も減ってきて、定刻の5時半には後片付けが始まる。もっとも粘っている人もちらほら。6時半前に会場を後にし、ルディ、ウィルソン、それに DACport のマイケルさん、ささきさんともう一方と、近くの台湾料理屋で食事。美味で安く、量も適当。ラムのコリアンダーいためなど。
   
    というわけで、くたびれたけど、いろいろ面白い体験でした。ウィルソンは東京がすっかり気に入っていて、ヘッドフォン祭がある限り、参加しそうな勢いだし、ルディさんもまた来たそうな顔をしていたので、次回「秋」は10月かな、その時にはまた手伝いに行くことになるでしょう。(ゆ)

    FiiO E5 はポータブル・ヘッドフォン・アンプつまり PHA(ポタアンという呼び名は品がない) の概念を変えてしまったわけですが、その後を追って、小型アンプがいろいろ出てきました。この Linearossa W1 もその流れの一環なのでしょうが、音を聴いてみると、 柳の下の二匹め狙いというのとは違います。
   
    ひとことで言うと、つきつめてます。小型、入出力1本ずつ、音量ダイアル付き、バッテリー駆動という条件の中で、これ以上のことはできないところまでつきつめている。
   
    まずバッテリーは単四1本。9V2個使う GoVibe Sharps も出てますが、値段を別にして音だけで現時点でどちらか選べと言われたら、W1 です。電池が内蔵ではなく、市販のものを交換できるのも○。
   
    当然軽い。仕様では45gになってますが、空っぽではないかと思えるくらい軽い。サイズは E5 を倍にして、厚さもほぼ倍ぐらいですが、むしろW1の方が軽いのではと錯覚するほど。
   
    音量ダイアルは回転式で、E5 のような押しボタン式ではないので、連続可変が可能。このダイアルが少々回しにくいのが、欠点といえば欠点かな。
   
    音は E5 と同じ傾向。妙な色付けをせず、ヘッドフォン、イヤフォンの特性をそのまま伸ばす。E5 をつなぐと、今まで使っていたヘッドフォンやイヤフォンがワンランク上がって聴こえますけど、あれがもっと徹底します。ツーランクか、場合によってはスリーランク上がります。というより、そのヘッドフォン、イヤフォンの能力の限界までつきつめられた感じです。どんなアンプを使っても、これ以上の音が出ることはありえない。そう感じられてしまう。
   
    もっとも、言葉にするとこうなりますが、実際聴いているときにはただひたすら気持ち良いのです。否定的な感覚ではなく、ヘッドフォンやイヤフォンがよろこんで、のびのびとうたっています。あたしは、ぼくは、本当はこれだけの音が出せるんですよ、それを思いきり出せて、うれしい、ありがたい。
   
    解像度がどうこうとか、サウンドステージうんぬんとか、低域がどうの、高域がどうの、なんてことはどうでもよくなってしまって、音楽の表現力がどーんと高くなります。ヘッドフォンやイヤフォンの音、ましてやアンプの音を聴いてるんじゃない、音楽を聴いている。聴きこんでしまう。
   
    FiiO でも E7 がこれから出てくるわけですが、公式サイトにアップされているビデオを見ると、コンセプトが変わってきてます。まあ、E3 から E5 への路線をそのまま延長するのも芸が無いといえば無いので、これはこれでアリなんでしょうが、E5 で PHA にめざめたリスナーが次に手にとるものとしては、ずれる感じもあります。
   
    ガジェットとしての、モノとしての興味は別として、とにかくできるだけ良い音で音楽を聴きたいのであれば、E5 からのアップグレード先として、W1 はまず筆頭にくるでしょう。価格からいえば E5 の 2.5倍ですけど、それでも今のレートで送料込で8,000円強。大事に使えば一生モノですし、「投資」に対する「見返り」としてはとんでもなく大きい。むしろ、Dock コネクタに贅沢した方が、さらに「見返り」が大きくなる可能性があります。
   
    ちなみにぼくは Audiotrak のオーディオケーブルを使ってますが、これはCP高いです。

    オヤイデのもCP高いですが、あちらは使用1ヶ月未満で、ミニ・プラグ側で断線したので、ちとモロい。Audiotrak のはまだひと月経たないのでわかりませんが、オヤイデより外見はがっちりしてますね。

    音源の iPod touch 32GB 内のオーディオ・フォーマットは様々で、AIFF から MP3 128bps まで聴いていますが、圧縮音源の音を気持ち良く聴かせてくれる点でも、W1 は抜群です。圧縮とはまずわかりません。圧縮フォーマットの再生でこれに匹敵するのは、ぼくの試した中では DenDAC だけです。こちらはパソコンの USB 端子に直接挿しこんで使います。これについては別に書こうと思いますが、一見USBメモリみたいですけど、この値段は十分お釣りが来ます。

    むしろ、圧縮でもここまでの音が入っているのだ、と改めて見直しました。圧縮フォーマットの音が良くないというのは、まだ再生側の「修行が足りない」、ハードやソフトがそこまでつきつめられていないのでしょう。
   
    どういう音楽を聴いているのかは、Last.fm にトラック・リストがあります。iPod touch の中のファイルをシャッフルしてます。

    というわけで、E5 のユーザは、よほど E5 に愛着があるのでないかぎり、アップグレードされれば、確実にはるかによりベターなリスニング環境が手に入りますし、これから E5 を買おうと考えておられるなら、E5 でワンクッション置く必要もないでしょう。
   
    国内販売についてはわかりませんが、シンガポールの Jaben Network がワールドワイドのディストリビューターになっているので、正式販売される可能性はありますね。
   
    それにしても、W1 でこの音なら、W3 はいったいどういうことになるのだ、と楽しみであります。もっとも W3 はDACが付いて、光と同軸とUSBの入力というフル装備なので、まるで違う製品ではあります。こちらは GoVibe の Vulcan mini との比較になりますか。むしろ上記の DenDAC との勝負かな。(ゆ)

    本日14:00指定で6月情報号を配信しました。未着の方はご一報ください。
   
   
    昨日は Jaben Network の Uncle Wilson に半日つきあっていました。前回の来日の時にはそれを知ったのはもうかれが帰った後だったので文句を言ったら、6月にまた行くからその時会おうということで約束通り無事面会。写真では見てましたからすぐにわかりましたが、いや、おもしろいおっさんでした。
   
    もっとも、着く前から、ホテルはどこがいいかな、とか、予約の返事がこないから電話かけて確認してくれ、とか、大切な預りものを引きとってホテルまでもってこい、とか、まあ傍若無人といえば傍若無人。おいおい、こっちはあんたのカスタマーだぜ。(爆)
   
    シンガポールのネイティヴで、お祖父さんが中国を離れ、父親はマレーシア生まれだそうですから、典型的な華僑ということになるんでしょう。頭のなかは、どうすればおもしろくカネをもうけられるか、常にくるくる回りつづけているようで、GoVibe のシリーズ化にも現われていますが、次になにをしようか、アイデアが湧いてきてしかたがないらしい。iQube がすごいと言ったらにやにやしはじめるし、一緒につきあってくれたB社のK氏がスタックスが好きだと言うと、さらに顔が笑いでしわくちゃになります。GoVibe シリーズの新製品もまた近く出るらしい。でかい Vulcan の後だから、今度は小さい方でしょうか。
  
    面白いことに、シンガポールの女性たちはベースの音が大好きで、ベースが出ないヘッドフォン、イヤフォンには見向きもしないそうな。かれの店ではとにかく客に試聴させて選んでもらうのがポリシーですが、女性客は例外がないそうな。男性はそれに比べると中高域が良いモデルを選ぶ傾向がある。その理由として、女性は赤ん坊の泣き声に敏感だから、というのは納得できるところです。つまりもともと男性よりも中高域がよく聞こえる耳をもっている。
   
    とすると、世界中の女性は皆ベースを強調するモデルが好き、ということになるわけですが、わが国の女性たちはどうなんでしょう。それとも、あまり聞き比べることをしないで選んでいるのか。
   
    もっとも、かれの店でも女性客はやはりごく一部で、九割は男性客。したがって一番売れるのは Westone、Shure、UE だそうです。推薦モデルは何だと訊いたら、Westone との答え。ウィルソン本人の音の好みではなく、それを選ぶ客が一番多いためということです。とはいえ、ゼンハイザー800 は、と水を向けると、やたら売れてはいるが、評判ほどではないよ、バランス化した650の方がいい、もっとも800もバランスにしたらわからないから、今度ためしてみる、とのこと。
   
    世はあげて大不況ですが、かれのところはまったく順調で、異様なくらいだそうです。シンガポールだけではなく、直前の CanJam で会ったアメリカの連中も同様の由。それだけまだニッチでマイナーな業界ということなんでしょうか。とはいえ、ヘッドフォン、イヤフォンと、ヘッドフォン・アンプはじめその周辺のハード、ソフトの世界が、今後ますます成長を続けることはまちがいない、と言われると納得するところです。
   
    こちらとしてはむろんそんなカネはありませんが、一緒にいると刺激を受けて元気が出てくる、そういう人でありました。ということで、Jaben からはまだまだおもしろいものが出てきそうで、眼が離せません。(ゆ)

1ヶ月ほど、ほぼ毎日使い、音は絶好調です。このちっぽけな函にはまるで似合わない「堂々たる音」が鳴ってます。一つひとつの音の粒立ちの良さ。その音が決っしてばらばらではなく、有機的に全体の音楽を編みあげてゆく、その美しさ。音楽が鳴っている空間の媒体、空気が澄んで、透明度が増す、というと近いでしょうか。結果、音楽全体の姿、動きが生き生きとしてきます。すべてが洗われた感じ。Go-Vibe にもどると、どうも音が「くすんで」ます。ほんとうにくすんでいるわけではないのですが、鮮度が落ちる。うーん、これはやはりチップそのものの新しさ、回路の新しさ、なんでしょうか。

例えば、ソウル・フラワー・ユニオンの《カンテ・ディアスポラ》。音楽のイメージがよりはっきりします。Go-Vibe ではやや濁ってました。音が団子のところがありました。E5 では楽器のひとつひとつ、効果音のひとつひとつが自然に聴き分けられます。

加えて、ヴォーカルがより際立ちます。中川敬の声がセンター前面にしっかりと立ってます。コーラスも脇でやや退って、一人ひとりがはっきり聴こえます。

バッテリーの保ち時間はきちんと計ったわけではないですが20時間ぐらいでしょうか。切れるときはブチといきなり切れます。音が小さくなるとか、前兆はありません。

それから、バッテリーを充電した直後は音量が最大またはそれに近いヴォリュームになっています。最初の時は EarPhone M で聞いていたので、驚きました。

欠点も出てきました。この価格ではやはりどこかで手を抜かなくてはならないわけで、どうやらそれはコネクタ類のようです。入力用のミニ・ジャックが少しゆるんできたらしく、挿しこみっぱなしだと、左チャンネルの音が切れるようになりました。今のところはまだ、挿しこみなおすと治ります。

Go-Vibe V5、今の GoVibe ではなく、カナダの個人メーカーが作っていた頃の版ですが、挿しこみっぱなしでいたら、やはり入力用コネクタがゆるみました。最後には片方まったく音が出なくなってしました。Fiio E5もそうなる危険はあるとみて、とりあえず、使わないときは入力ジャックは空けるようにしています。

小さいことはいいこと、なんですが、iPod touch の裏にくっつけて使うにはちょっと小さすぎると感じるときもあります。全体の作りも華奢。もう少し大きくてもいいから、かっちりしていて、安心して使えて、音はこのままという上位モデルが出たら、買っちまうでしょう。価格が倍になっても6,000円ですからね。円高でもっと安くなるかもしれない。でも、その前に、この E5 をもう一個、買っちゃうかなあ。それくらい、この音は魅力です。(ゆ)


2009.01.13追記
上に書いた、左チャンネルの音が時々聞こえなくなる件ですが、E5 のせいではどうやらなかったようです。ドック・コネクタの DS-AUGpt がまずいらしい。それもアンプにつなぐミニ・ジャックのプラグ内部があやしい。今日、届いたばかりの PHA(これについてはまた後日)につないでみたら、E5 と同じ症状が出ました。Go-Vibe Petite につないだ時には出なかったんですが、そうするとあちらもまずいかも。

左チャンネルが聞こえなくなるのとは別に、iPod の再生音が時折り、一瞬切れる現象もしばらく前から出ていて、サウンド・ファイルが不完全か壊れたのかと思っていたのですが、ひょっとするとこれもドック・コネクタが原因であるかもしれません。

Go-Vibe 5 の時はまず最初に ALO のドック・コネクタを疑ったらアンプの方だったし、これはまたか、と思ったのですが、早とちりでした。代わりのドック・コネクタがないので、最終判断はまだですが、まずはお詫びと訂正をします。

fiioe5 いやー、ポチってしまいましたよ。なんせ、送料入れても3,000円しないんですから。12/15 発売とうたわれてますが、6日には送ったと通知が来て、今日10日に着きました。第一陣の50個は完売。そりゃそうでしょう。次回は4週間後。年内ぎりぎり間に合うのかな。

 例によって第一印象は、

これで3,000円は「持ってけ、ドロボー」です。

正直、Go-Vibe Petite も Magnum(Jaben のサイトからは消えちゃったみたいですね)も、危うい。このちっぽけで薄っぺらいものがあれば、もう十分。

 サイズは iPod shuffle をひと回り大きくした感じ。Minibox なんかよりもずっと小さいでしょう。一応数字をならべるとサイズ 44.2×38×12.6mm。重量30g。対応ヘッドフォン・インピーダンスは 16 -- 300オーム。

 まあ実際 iPod shuffle がヒントになったんでしょう。クリップまで付いてます。要らないんですけど、といってもはずれない。上の厚みはクリップも含めて。

 電池はリチウム・イオン充電池で、交換は不可能。充電はUSB経由でパソコンからしかできないみたいです。電圧は販売元サイトによれば 200mAh。

 ロゴから見て上側に、右からヘッドフォン・ミニ端子、音量ボタン、パワー・スイッチ、ベース・ブースト・スイッチ。このベース・ブーストはデフォルトではフラット。外側に移すとベース・ブースト。クリップの軸の頭にランプ(LED?)があり、パワーを入れると青く光ります。切るときはパワー・スイッチの長押し。

 音量ボタンは細長くて、ヘッドフォン端子に近いほうを押すと下がり、反対側を押すと上がります。ただ、途中でどーんと変化するところがあるのは、個体差か、全体的な欠陥か、わからず。上げる方の直後がちょうど良い大きさなので、今のところ様子見。ちなみに販売元では30日の返品、90日の交換を受けつけてます。

 ロゴの下側、ヘッドフォン端子の直下に入力端子。左端に USB ミニ・ジャック。この入力端子はかたくて、DOCK★STAAR のオーグラインを突っ込むのに、はじめちょっと力が要りました。ヘッドフォン端子もちょっとひっかかりました。

 最新アンプICだよ、S/N比もいいし、歪も小さいよ、というんですが、この辺も日進月歩なんでしょうねえ。Head-Direct のサイトによれば
Preamp Opamp: OPA2338UA
Poweramp Chip: TPA6130A
ということです。

 マニュアルは四つ折りのものが一枚。片面英語、片面中国語。メーカー所在地は広州。

 で、音なんですが、これが笑っちゃうくらい良い。背景は真黒。サウンド・ステージは広いし(Magnum より広いかもしれない)、奥行もあるし、分解能も立派。細かい、他の音に埋もれがちの音までちゃんと、それ相応の大きさで聞かせてくれます。というよりは、音楽が生きてます。音がみずみずしい。たった今、生まれました、ってそりゃ、音そのものは瞬間瞬間に生まれてるわけですが、それとは別の次元で、まあ、録音されたばかりのとれたての音楽。なんか、これを聞いてしまうと、Go-Vibe の音は古いんじゃないかとすら思えてきます。とにかく聞くのが楽しい。ベース・ブーストは、少くともぼくは要らないです。先に出ていた、もっと小さくて、音量調節もできない E3 はちょっと色づけがあるという話が、Head-Fi で出てましたが、この E5 に関してはごく少ないと思います。今のところ。

 この音にくわえてこの価格となると、PHA の入門機としては最強でしょうし、まとめ買いして、個体差を楽しむなんていう猛者も出てきそうですね。

 位置的にはイヤフォンの PK シリーズに相当するアンプかもしれません。とすると E5 は PK2 で、PK1 に相当する E7 なんてのも出るのかも。送料含めて1万円以内なら買っちゃいそう。

 実際こうなると、1万円以上するPHAは、もう買う気が起きません。となると次に狙うのはペンギン・カフェ・アンプですね。

 ちなみに環境は iPod touch 32GB w/ OS2.2 + DOCK★STAAR DS-AUGpt + E5 +  EarphoneM + ComplyFoamTips P-Version。この Comply のチップは細長いやつで、T-100 同様に使えます。T-100 より奥まで入るので鼓膜に近くなり、音はよくなります。ただ、ちょっと太いので、人によっては痛くなったりするかも。音源は AIFF、Apple Lossless、MP3 320bps。今日、主に聞いていたのは、Solas《For Love and Laughter》 、 《スウェル・シーズン》、フリア・アイシ&ヒジャーズ・カール《オーレスの騎兵》。(ゆ)

このページのトップヘ