クラン・コラ・ブログ(アイルランド音楽の森)

 アイリッシュ・ミュージックなどのケルトをはじめ、世界各地のルーツ音楽を愉しむブログです。そうした音楽の国内の音楽家も含みます。加えて主宰者の趣味のグレイトフル・デッド。サイエンス・フィクション、幻想文学などの話もあります。情報やメモ、ゴシップ、ただのおしゃべりなどもあります。リンク・フリーです。

タグ:イヤホン

 HiBy の DPA RS2 のファームウェア Ver. 1.2 が2月末に出ていました。

 内容は

1. 4.4バランス・アウトからラインアウトに切替えた際の音量の問題の修正。
2. album track_id のソートの問題の修正。
3. その他、バグ・フィックス。

だそうです。

 アップデートのやり方
ダウンロードして解凍した rs.upt をマイクロSDカードのトップ・レベルにコピー。
カードを No. 1 のポート、正面から見て左側のポートに入れて、起動。
システム設定からファームウェアのアップデートをタップ。

 後は自動でアップデートされて再起動します。


 RS2 そのものはますます快調。近頃はアンプにつないだり。イヤフォンはもっぱらこれ。



 しかも、現行品ではなく、初期ロットのアウトレット品ですけど、すばらしいです。持っているイヤフォンが全部お蔵入りする勢い。今年初めに手に入れてから、これしか使ってません。どんな高いものも蹴散らしてます。

 分割振動を排除することは、こんな小さな振動板でもここまで効くのかと驚きもしてます。恐るべし、分割振動。これを減らすために、各社、素材に凝ったりしてるわけですけど、実際には除去しきれてないんでしょう。

 とにかくすっきりと見通しが良く、音のキレがいい。打楽器の気持ち良さは特筆もの。音の立上りが速いモデルはたくさんありますが、これはおそらく音の立ち下がり、収束もすごく速いんでしょう。音の残滓、カスが残らない。だから、すべての音がクリア。生音に1番近くなる。

 上級モデルも出てますが、このいわば最底辺の機種でどこまでできるか、エージングをかけまくって1,000時間超えました。この際、イヤフォンの耐久性も試すかと思ってます。(ゆ)

 6月の REB fes 0.0 を覗いたら面白かったので、同じ final 本社の REB fes 2 に行く。

 入口で試聴はするかと訊かれ、すると答えるとトレイを渡される。試聴するものをこれに載せ、中央のテーブルのどこかで試聴してくれ、同時には3アイテムまでできる。トレイは社食や学食で使われるようなほぼ正方形のダークブラウンのプラスティック製。黒のメッシュが敷いてある。柔かい素材のこのメッシュはただ置いてあるだけで、固定されてはいない。入って右側の壁際にならんでいる試聴用アイテムのブースで何か借りると、借りた品数に応じて1とか2とかの数字と出展社の名前が書いてある札を品物と一緒に渡される。トレイに札を立てて試聴する。

 まずは一番手前の Sound Labo AIMS のブース。Maestraudio MA910SR の4.4mm ケーブルを相談。SR はリケーブルできるが、デフォルトのケーブルで最適チューニングしてある、バランスでは低域が瘠せると配給元アユートの営業氏が言う。そのデフォルトでは低域がふくらみ過ぎに聞えるから、バランスで低域が瘠せるならその方がいい。前回0.0の時に買った 2pin のものが良かったので、それに似た音のものを2種類薦められて試聴。より気に入った方はケーブル自体がひどく太い。

 決めかねて、保留し、イヤフォンを試聴する。MA910SB を試聴したかったが、試聴機は無し。値下げしたから買ってくれということか。qdc Superior、Intime 煌 MarkII、雅 MarkII、E5000、B2、A5000を試す。

 アユートさん一押しで宣伝している qdc Superior は final の A シリーズそっくりに聞える。 ならば評判がいいのはわかるが、要らない。Intime の2機種は MA910SR そっくりに聞える。そりゃまあそうだろう。先に Intime を持っていれば、MA910SR は買わなかっただろう。

 B2 がなかなか良い。筐体の材質にもよるのか、A4000より装着感がいい。音も気に入る。とはいえ、BA一発なら、夏のヘッドフォン祭 mini で聴いた Acoustic Effect を先に欲しい。final はダイナミック・ドライバーを聴きたい。Acoustic Effect は BA に命を賭けていて、それが音にも出ている。

 A5000はなるほど良い。A4000よりヴォーカルが生身に近い。となると MA910SR と似てきて、あえて買うこともない。

 とにかく聴いてみないとこういうことはわからなかったのだから、マイペースで試聴できたことはよかったと思いながら、final のカウンターにある REB ブランド新製品のプロトタイプというのを、ことのついでに聴いてみる。Acoustune のイヤフォンに外見が似ている。

 すばらしい。これに全部持っていかれた。今回一番のヒット。聴きながらどうしようもなく顔からしまりがなくなり、にやけてしまう。マスクをしていてよかった。すっぴんだったら、あの爺さん、とうとうイカレたと思われて、拘束衣を着せられていただろう。

 ヴォーカルが実に気持ちいい。晴れやかな空間に、身の詰まった音が鮮明に新鮮に鳴る。音じゃあない、音楽が鳴っている。試聴用の音源を次々に聴いてしまう。聴きなれた曲が洗われたようにみずみずしく聞える。どれもこれもあらためて名曲名演名録音、と惚れなおす。いつまででも聴いていたい。でももう時間が無い。こうとわかっていたなら、開場と同時に来て、閉場までずーっとこれだけを聴いていたかった。次はそうしよう。なろうことなら、このままもって帰りたい。この試聴機、売ってくれませんか。さもなきゃ長期貸出でも……。

 これまで聴いた全てのイヤフォンの中でベストの音。むろんこれまでのだって、どれもその時々でベストだったわけだが、この先どんな製品が出ても、この音ならずっと好きでいるだろう。死んだら、他は売っぱらっていいが、これだけは棺桶に入れてくれ。地獄に落ちても、これがあれば耐えられる。

 製品化は年内どうか、というところだというが、来年3月までに出てくれればいい。もちろん、早ければ早いほどいい。今の世の中、いつどうなるか、わかったものではないのだ。完成した音を聴かずに死ねるか。

 値段は5万以下らしい。10万でも買う。やはり試聴はしてみるものだ。

 これを聴いてしまうと、持っているものまで霞んでしまった。試聴にデメリットがあるとすればこれだな。でも聴いてみなければ出逢えない。

 とにかく、気をとりなおして、あらためてケーブルを試聴。結局オーダーメイドのものを注文。Black Back という  AIMS のサイトには出ていない、新しいシリーズらしい。

 クロージング間際まで2時間たっぷり遊ぶ。入れ替わり立ち替わり人が来て、場内はずっといっぱいの感じ。もっとも、ヘンにわさわさしていないし、殺気立ってもいない。皆さん、おちついている。試聴していた隣の席の人は MAKE 4 のチューニングに余念がなかった。ピンセットで何かやっては、自作のDAPらしきもので聴いている。A&KのハイエンドDAP をトレイに置いて、腕組みして目をつむってじっと聴き入っている人もいる。背後ではクマさんが、Analog Squared Paper のアンプについて熱弁をふるっている。それにつられて聴いてみて、のけぞって驚いている人もいる。アンプは使ったことがなかったらしい。そう、アンプでも音は変わる。MAKE シリーズのチューニングはそこまで入れることもできる。

 REB fes はこの後しばらく遠隔地を回るらしい。でも、いずれまたここに戻ってくるだろうから、その時は行くぞ。あのプロトタイプを聴かねばならぬ。(ゆ)

0313日・日

 UCOTECH UBQ-ES903MK2 のエージングが進んで、良くなってきた。オープン型の ear buds と呼ばれるタイプのイヤフォン。シリコンフィットチップを見て、これならあたしの耳でも使えるかもと思って買ってみたのが大正解。オープン型の良さを改めて噛みしめている。Final Piano Forte II が製造完了になってしまって、壊れたものの買換えができずに諦めていたのが、おかげでさらに良い音で聴けている。


 10年前に出したのとモノは同じで、チューニングを変えた、というのだが、前のは聴いていないし、どこをどう変えているのかも知らないが、この音はとにかくすばらしい。耳の入口にのせるだけだから、耳の中に異物がいる感覚もない。ヘッドフォンをしているわけでもない。すると、機器の存在が消えて、音楽だけが聞えてくる。

 まず、ヴォーカルの生々しさ。デッドのリスニング・カレンダーが進んで、1990年春のツアーが始まり、この時期の優秀録音を堪能している。ボブ・ウィアのヴォーカルの艶かしさにぞくりとする。シリコンフィットチップは低域が強調されるのだそうだが、レシュのベースが集中しなくても自然に耳に入ってくる。両ドラマーのドラムの音がキレッキレに響く。そして、ガルシアのギターとミドランドの鍵盤の美しいこと。

 うーん、もうでかいヘッドフォンは要らないか、とすら思えてくる。むしろ、Ucotech のオープン型イヤフォンのハイエンドを試すか。これも出た当時はハイエンドではあるが、それから10年の間に二つ、各々にハイエンドを出していて、どちらも現役。2019年のハイエンド UCT-ES1103Grandiose は今年、やはりチューニングを変えて Mk2 を出すというから、それが出るまで、ES903Mk2 を使い倒すのもいいかとも思えてくる。やはり、あたしはオープンの音の方が好きなのだ。ただ、耳のカタチが異常なので、普通のイヤバッズでは右側がうまくはまってくれない。ファイナル PFII は、やはり音の出口がちょっと突き出していたので使えたのだった。シリコンフィットチップ様々だ。



##本日のグレイトフル・デッド

 0313日には1967年から1992年まで、6本のショウをしている。公式リリースは無し。


1. 1967 Whisky-A-Go-Go, San Francisco, CA

 月曜日。このヴェニュー7日連続の中日。セット・リスト不明。


2. 1971 Jenison Field House, Michigan State University, East Lansing, MI

 土曜日。セット・リストの全体は不明だが、良いショウの由。ニュー・ライダーズ・オヴ・パープル・セイジが前座。ガルシアがペダルスティールで参加。

 この前後3本とこの月20日は、イリノイ、ミシガン、ウィスコンシン、アイオワの大学でのショウだ。1970年代初めからデッドは大学でのショウを積極的に行う。デッドがショウを行った大学施設は総計約120ヶ所に及ぶ。ここで洗礼を受けた学生たちが後にデッドヘッドの中核を形成する。会場となった大学は、カリフォルニア大学の各キャンパスやスタンフォード、MIT、ラトガース、プリンストン、コロンビア、ジョージタウン、イェール、有名なバートン・ホール公演のコーネルのように名門とされるものも少なくなく、したがってデッドヘッドにはアメリカ社会の上層部が多数含まれることになった。スティーヴ・ジョブズ、ビル・ゲイツなどデジタル産業の立役者たちは最も有名だが、その他の実業家、政治家、弁護士、医師、学者、芸術家、軍人、官吏等々、あらゆる分野にいる。デッドのショウの舞台裏にいた上院外交小委員会委員長のもとへ、ホワイトハウスから電話がかかってきたこともある。デッドのメンバーやクルー、スタッフに大学卒業者はほとんどいないが、デッドの音楽を学生たちは大いに歓迎した。

 この日、フィルモア・イーストでオールマン・ブラザーズ・バンドが有名なライヴ・アルバムを録音。


3. 1981 Utica Memorial Auditorium, Utica, NY

 金曜日。11ドル。開演7時。最高のショウの一つの由。


4. 1982 Centennial Coliseum, Reno, NV

 土曜日。9.50ドル。開演7時。ジョン・ベルーシが死んでから初めてのショウだが、〈He's Gone〉はやっていない。2本後の0402日にやっているのがベルーシ追悼かもしれない。

 デッドが出演した時から Saturday Night Live の面子とは意気投合し、ブルース・ブラザーズがデッドのショウで共演もしている。


5. 1985 Berkeley Community Theatre, Berkeley, CA

 水曜日。このヴェニュー4本連続の最終日。開演7時半。レックス財団資金集め。

 第一部クローザーの〈New Minglewood Blues〉〈Deal〉、第二部4曲目〈Spoonful〉、クローザー前の〈Black Peter〉にマシュー・ケリーがハーモニカで参加。第二部 Drums から〈Man Smart (Woman Smarter)〉までの4曲にハムザ・エル・ディンが参加。


6. 1992 Nassau Veterans Memorial Coliseum, Uniondale, NY

 金曜日。このヴェニュー3日連続の最終日。開演7時半。前日のレベルには行かないが、かなり良いショウの由。(ゆ)


0110日・月祝

 Titta の良いのは反応が速く、ドラムスやギターの立上りの音がシャープで際立つのが快感なのだ、と気がつく。このキレの良さと人間の声の艷、艷気が両立している。こういう音をもっと聴きたい。ヘッドフォンでこういう音のものはあるか。



##本日のグレイトフル・デッド

 0110日には19707879年の3本のショウをしている。公式リリースは1本。


1. 1970 Golden Hall, San Diego Community Concourse, San Diego, CA

 これだけ、独立したショウ。1時間半の一本勝負。指定席3.504.004.50ドル。開演8時半。サヴォイ・ブラウンと AUM が共演。

 9曲目〈Black Peter〉が《The Golden Road》で、8曲目〈Mason's Children〉が2010年の《30 Days Of Dead》でリリースされた。

 後者は所有せず。前者はガルシアの歌が聴かせる。およそロックらしくない、ブルーズではないスローなこういう曲を、歌だけで聴かせる芸当をデッドはできる。〈Black Peter〉は19691204日、フィルモア・ウェストで初演。トータル347回の演奏は、回数順で27位。スタジオ盤は《Workingman' Dead》。一見陰々滅々の歌だが、ガルシアが歌うと希望の歌になる。ガルシアはこの歌、あるいは〈Wharf Rat〉のような歌を希望の歌として歌う。〈Loser〉はまた別で、あそこに救いは無い。それが良いのだ。救いの無いところから生まれるペーソスが胸に沁みる。ピーターも、オーガスト・ウェストも、〈負け犬〉の語り手も、いずれもあたしらの分身だ。ピーターやオーガスト・ウェストには再起してほしい。だが、負け犬は、こいつはとことん負け続けるとわかる。"I've got no chance to lose this time." とつぶやく男を見て、ああ、次も負けるなと思うと嬉しくなる。なぜだろう。

 〈Wharf Rat〉は397回で19位。スタジオ盤収録無し。〈Loser〉は351回で25位。スタジオ盤はガルシアの1971年ソロ・ファースト。

 サヴォイ・ブラウンはロンドンのブルーズ・ロック・トリオでアメリカで成功する。が、1967年のファースト《Shake Down》はアメリカではリリースされず、1969年に相次いで出した2枚《Blue Matter》と《A Step Further》で認められた。わが国ではフリートウッド・マック、チッキン・シャックとともに英国三大ブルーズ・バンドと呼ばれた。チッキン・シャックは短命、フリートウッド・マックは路線転換したが、サヴォイ・ブラウンは現在までブルーズ・バンドとして活動している。

 Aum 1968年にサンフランシスコで「発見」されたブルーズ・ロック・トリオで、写真家の Jim Marshall がそのライヴを見て、ビル・グレアムに紹介し、フィルモア・ウェストの Sounds of the City オーディションで聴衆をノックアウトした。2枚のアルバムがある。セカンドの《Bluesvibes》は録音をアンペックスの Ron Wickersham が担当し、カヴァーをアルトン・ケリィが手掛けている。

 とすると、主催者はデッドもピグペンをフロントとしたブルース・ロック・バンドと見ていたのかもしれない。


2. 1978 Shrine Auditorium, Los Angeles, CA

 このヴェニュー2日連続の初日。6.507.50ドル。開演7時半。2日目は追加公演。

 ガルシアの喉頭炎は多少良くなって、少しは声が出るようになった。演奏はまだ弱い声をカヴァーするようにすばらしいもののの由。


3. 1979 Nassau Veterans Memorial Coliseum, Uniondale, NY

 9.50ドル。開演8時。開演時外気温零下12度。チャック・ベリーの誕生日でアンコールは〈Johnny B. Goode〉。

 ここでは1973年春と秋に5回演奏した後、これが5年ぶりの復帰。前回は、警察があまりに多数のファンを逮捕したので、嫌気をさして、もう2度とここではやらないと宣言した。これ以後、ここでは1980年代後半を除いてコンスタントに演奏し、計42本のショウをし、うち10本が公式リリースされている。

 施設は空軍基地の跡地に197202月オープンした多目的屋内アリーナで、定員はコンサートで15,000。何度か改修、拡張を経て、現役。ホッケーの New York Islanders の本拠。バスケットの New York Nets も一時ここを本拠としていた。場所はニューヨーク市クィーンズ東端から11キロというから、東京駅から舞浜駅までよりちょっと近い。(ゆ)


 帰りのバスで Titta を聴く。これは本当にすばらしい。空間はそう広くないが、その中は空気が澄んで見通しがよく、音にキレがある。立上りが速い。ドラムスの音がキレッキレだ。減衰も速いようにも思えるが、欠点にはならない。そして、音に艷気がある。ヴォーカルになまめかしさが宿る。ケーブル固定でアンバランスだが、十分だ。遮音性は低い。が、音に芯があり、底力があるので、周囲の音の中でも通ってくる。

 あまりに楽しくて、どんどんデッドを聴いてしまう。いや、すばらしい。他は要らなくなってくる。

 ヘッドフォン・アンプをかませると低域に一層芯が通って、ぐんと出てくる。全体にさらにキレが増して、艷が良くなる。ここまで良いとなると、Carot One のアンプで聴いてみたくなる。

 後続の Super Titta Quasi Titta は売っているが、オリジナルの Titta はどこにも無い。と思ったら、Yukimu のオンラインストアで売っていた。ドライバーが2倍になった Super Titta よりもオリジナルの方がいいという向きも多い。念のため、もう1個買うかなあ。




##本日のグレイトフル・デッド

 0108日には196619781979年の3本のショウをしている。公式リリース無し。


1. 1966 Fillmore Auditorium, San Francisco, CA

 ケン・キージィとメリー・プランクスターズによるアシッド・テストの1つ。2,400人集まった。ここの収容人数は1,100である。一応5曲のセット・リストが残っている。


2. 1978 Golden Hall, San Diego Community Concourse, San Diego, CA

 この日もガルシアは喉頭炎で声が出ず、ウィアの持ち歌のみで短かい。

 とはいえ、歌えない分、ガルシアはギターに集中し、普段よりも一層見事なギター・プレイを披露した。全体としてこの2日間は、デッドのショウとして一級のもの、と Brian Smith は DeadBase XI で言う。

 ビル・グレアムの誕生日でデッドは誕生日プレゼントとして Uncle Bobo の仇名を贈った。グレアムはこの名が大嫌いで、死ぬまで「返上」しようとしつづけた。

 デッドとグレアムの関係は単純なプロモーターとバンドというものなどでは無い。グレアムとデッドの縁はアシッド・テストが初めだ。あるアシッド・テストを準備していて、どうしようもなく壊れてしまったギターの弦のブリッジを、必死になって何とか直そうとするグレアムの姿を見て、こいつは信用できるとガルシアは直感した。グレアムはデッドが設立したチャリティ団体レックス財団の評議員も勤めている。プロモーターでは東部を担当した John Scher との間の方がしっくりいっていた。シェーアがプロモーターに徹したせいだろう。グレアムはいわば「口うるさい叔父さん」だった。一方で、エアプレインやクィックシルヴァー、ジャニスなどとともに、デッドが「離陸」できたのはグレアムがいたからこそだし、少なくとも76年のツアー復帰までは、デッドの存続にもグレアムにかかる部分は大きい。


3. 1979 Madison Square Garden, New York , NY

 9.50ドル。開演7時半。2日連続の2日目。1978-12-01 の振替え。(ゆ)


0106日・木

 登戸駅傍の小田急忘れ物総合センターまで往復。受取りには連絡した時にもらった管理番号と身分証明書提示だけ。ウエブ・サイトにはあった印鑑は不要。前にも二人、手続きをしていて、後からも一人、やって来る。登戸に着いてみると雪が降りしきっている。

 まず、良かった。早速、聴いてみる。ガルシアの声が近く、生々しい。ついでに聴き比べてみる。CR-S1ではサウンド・ステージが広がる。ピグペンの声は少し遠くなる。Titta では、空間は丸くまとまる。その中では個々の音源が鮮明に聞える。これはちょっと凄い。良いイヤフォンだとは思っていたが、これほどとは。今でも十分通用する。イヤフォンがこれだけ良いとなると、Carot One のアンプが気になる。HS1300SS に戻す。うーん、これもやっぱり良いのう。

 聴いているうちに、また左耳入口が痒くなってきたので、夜はヘッドフォンで聴く。Amulech のケーブル、ヘッドフォン側2.5mm 2極ペア、アンプ側4.4mm5極のケーブルを HE400i に挿し、アンプをかませる。音像が鮮明になり、見通しがよくなり、音にエネルギーが満ちる。実に良い。こうなると、Amulech のアンプが気になる。



##本日のグレイトフル・デッド

 0106日には1967年と1978年の2本のショウをしている。公式リリース無し。


1. 1967 Freeborn Hall, Davis, CA

 2ドル。共演ビッグ・ママ・ソーントン。セット・リスト不明。

 デーヴィスはサンフランシスコの北東、サクラメントのすぐ西。このヴェニューは1961年完成の UC Davis の大規模イベント用ホールだった。2014年夏に耐震性の問題で閉鎖。収容人数は1,800。施設の名称は UC Davis 初代学長の Stanley G. Freeborn(在任1958-59 にちなむ。

 デッドはここでこの日と197101月との2回演奏している。

 デッドとカリフォルニア大学群との関係は浅くない。演奏回数では地元バークレーのグリーク・シアターが最多だが、ロサンゼルスのポーリー・パヴィリオンからも名演が生まれている。ちなみに各キャンパス施設でのショウの回数は以下の通り。

UCBA Greek Theatre, 29

UCBA Harmon Gym, 1

UCBA Pauley Ballroom, 4

UC Freeborn Hall, 2

UC Davis Recreation Hall, 1

UCLA Pauley Pavillion, 7

UCSB Campus Stadium, 3

UCSB Robertson Gym, 2

49本。

 なお、デッドのライヴ音源以外の記録、各種文書、書簡、物品、視聴覚用などあらゆる形の資料は現在 UC Santa Cruz The Grateful Dead Archives に収められ、分類・整理が進められている。ここには初代アーカイブ管理者 Dick LatVala などの関係者からも文書、遺品類が寄付されている。


 余談だが、上記公式サイトからダウンロードできる2020年の年刊レポート記載の Miki Saito なる人による1999年の年賀(?)アートは凄い。たぶん鉛筆画と思われるが、アコーディオンを弾いているゴジラや骸骨のメンバーやサンタ、トナカイ、雷神などなど、実にリアルに描かれている。

 ビッグ・ママ・ソーントン(1926-84)はジャニス・ジョプリンのヒット〈Ball and Chain〉の作者で、ジャニスに大きな影響を与えたことで知られる。


2. 1978 Swing Auditorium, San Bernardino, CA

 7ドル。開演7時半。この年最初のショウ。喉頭炎でガルシアは声が出ず、第二部ではまったく歌えなかった。第二部そのものも1時間ほど。ガルシアの喉頭炎は治るまで1週間かかり、その間もショウは続けるものの歌えないことが続いた。

 この年はここから18日までカリフォルニア州内ではあるが10本のショウを行い、22日にオレゴン州ユージーンで1本やった後、30日から2月5日までイリノイ、ウィスコンシン、アイオワへのツアーに出ている。

 2月の残りと3月一杯休んで、4月5日から春のツアーに出る。(ゆ)


1230日・木

 ふり返ってみると今年はヘッドフォンは買わず、イヤフォンばかり買っていた。ヘッドフォンの新製品に魅力が無かった、あるいは面白そうなものはどれも高すぎたということだろう。HiFiMAN Deva Pro には一瞬よろめいたが、Himalaya DAC チップのもっと汎用性のある製品を待とうとガマンした。以下、買った順。


Unique Melody 3D Terminator


 

 ダイナミック・ドライバー二発、というので買ってみる。悪くないが、ボディ・サイズがやや大きく、出番はあまり多くない。


JVC HA-FW7-T ブラウン


 

 ウッド・ドライバーを試すために購入。エージングはしたが、まだ少しこなれていない感じがある。わずかだがきんきんするところがあって、あるいはあたしには合わないか。


Mother Audio ME5BORON

 振動膜素材としてベリリウムに次ぐボロンを使ったドライバーのイヤフォンとしてクラウドファンディングに参加。音はなかなかなのだが、耳かけ、いわゆるシュアがけ前提のようなのに、ボディの形状がストレートな円筒形なのがマッチしておらず、あまり出番は多くない。


Acoustune HS1300SS Verde


 

 限定版で出たくすんだグリーンの色にやられて購入。一発でお気に入りになった。が、あろうことか、つい先日、上京した際に紛失してしまった。ロマンスカーの席でリュックの中のものをぶちまけた時に、どこかに落ちたか、戻していなかったらしい。反射的に買いなおそうとしたのだが、待て待て、これはもともと縁が無かったのかもしれない、と思いなおした。頭に血が昇った状態で買うとまた事故が起きかねない。当面一番気に入っていたものではあるけれど、それが無いとどうしようもないわけでもない。そうでなくてもイヤフォンはたくさんあるのだ。

 とはいえ、ミリンクス・ドライバーの鮮明な音は聴いていて実に気持ちよいし、耳に入れやすく、安定してしかも存在を主張しないボディ・デザイン、そして太くてからみにくい一方で取り回しはよいケーブルと、三拍子揃っていて、Acoustune のものはいずれまた何か買うことになるだろう。


AirPods Pro


 

 プロの録音エンジニアが、これがスタジオの音に一番近いと言っていた、と愛用しているポータブル・ヘッドフォン・アンプの製作者から聞いて購入。なるほど自然な音で、Mac iPad で試聴したり、YouTube 聞いたりするのが増えた。無線が音楽リスニングの主流になるのも無理はない。


Ucotech/Ubiquo UBQ-ES903MK2

 あたしは特に右側の耳の形が異常で、オープン・タイプのイヤフォンはただ耳にかけるだけでは耳穴にまともに向かず、使えない。これには嘴が突き出した形のシリコンフィットチップなるものが付属していて、これならばあるいは使えるのではないかと買ってみた。結果は大正解で、すっきりと突き抜けて Acoustune 以上に明晰でナチュラルな音は、こたえられない。買ったのは年末だが、今年一番の買物。安価だが音は本物で、屋内でアンプをかませるとさらに良くなる。

 シリコンフィットチップはランニングでもはずれないようにデザインされている由だが、あたしの耳ではいつもの速歩でも外れやすくなる。普通に歩く分には問題ない。

 メーカーではこれのすぐ上のクラスのモデルを来年チューニングしなおすそうで、その際、新たな固定ツールも出すそうだ。オープン・タイプのイヤフォンのファンとしては実に楽しみだ。

 オープン・タイプでは、ファイナルの PF II を愛用していたが、ある日、片方のユニットがぽっかりと割れてしまった。あれも音の出口が少し突き出ていた。生産終了はまことに残念で、代わりになるものが無く、泣く泣くオープン・タイプのイヤフォンは諦めていたので、この登場には狂喜乱舞。


Qudelix-5K Reference DAC AMP 専用イヤフォンQX-over Earphones



 

 その903Mk2と同じディストリビューターが扱っていて、ウエブ・サイトで目についたもの。ささきさんも紹介しているアクティヴ・クロスオーヴァーというのが面白そうだと買ってみたら、MacBook Tidal を聴くときにはこれを使うようになった。

 元来、無線で使うのが前提の製品だが、あたしはもっぱら USB-DAC として使っている。とにかく小さいのがまずいい。届いて開けてみてその小さいことに驚いた。胸ポケットなどに挿せるようボディの片側は全体がクリップになっている。ネクタイピンとしてだって、使えないことはなさそうだ。

 そして音が面白い。良い、というのとはまた違う面白さだ。良いことは良いのだが、良さが普通とは違うと言うべきか。たとえば少し古い録音で、ドラムスとベースがローテクな鳴りをしている隣で、トライアングルのような小さな音がしっかり聞えるのだ。これまで Tidal MacBook から AirPlay M11Pro に飛ばして聞いていたのだが、これで聴く方が気持ち良く聴ける。つなげば自動的にオンになる。

 来年、DAC アンプはアップグレードされた新製品が出ると予告されていて、楽しみだ。


Artio CR-S1

Artio カナル型イヤホン【CR-S1】
アルティオ(Artio)
2020-12-19

 

 年末、AV Watch をあれこれ眺めていて、たまたま小寺信良氏がここのイヤフォンを紹介している記事が目に止まった。

 その紹介の仕方が面白く、内容もすっきりはっきりしていて、オーディオ記事にありがちなごまかしている感じが無いのも気分が良かった。ここで紹介されている上位2機種は以前、サブスクリプションのレンタルで数ヶ月借りてみたのだが、その時はどうにもピンと来なかったので、返却してそれっきりになっていた。記事を見て、とびぬけて安いこともあり、再度試す気になってヨドバシのポイントで購入。現在一番出動頻度が高い。

 どこがどう良いと言葉にしにくいが、なぜかこれで聴きたくなるのである。イヤフォンで聴いている気がしない、ということなのか。いずれそのうちもう少し特徴的なところ、固有の性格などもわかってくるかもしれないが、そういうことはどうでもいいという気もする。とにかく、クローズドで聴こうとする時に、気がつくとこれに自然に手が伸びている。聴けばどんどんと音楽が聴きたくなる。音楽を聴くのが楽しい。いずれ上位機種にも手を出すかもしれないが、当面、これで何の不満もない。


 ということで12月に入って買った3つのイヤフォンを取っ替え引っ替え聴いている年末であり、おそらく来年もしばらくはこの体制が続くだろう。それにしても、安くて面白いものを取っ替え引っ替えするのが身の丈に合っているのだ、とあらためて思ったことではありました。



##本日のグレイトフル・デッド

 1229日には1966年から1988年まで7本のショウをしている。公式リリースは2本。


1. 1966 Santa Venetia Armory, San Rafael, CA

 2.50ドル。共演モビー・グレープ、The Morning Glory。セット・リスト不明。

 The Morning Glory というアーティストはたくさんいるが、ここではこの頃ベイエリアで結成された5人組バンドで、女性リード・シンガーを擁し、ママス&パパスとジェファーソン・エアプレインを合わせたようなサウンドの由。1968年に1枚《Two Suns Worth》というアルバムがある。2007年にCD復刻。ストリーミングで聴ける。ネット上の情報では1967年結成とあり、これは結成直後ないし最初のギグなのかもしれない。

 女性シンガーはなかなか聞かせるが、それよりもママス&パパス流の男女のハーモニー・コーラスをやりたかったらしい。一方で、ドラム・ソロ、ベース・ソロの入る曲もある。大部分オリジナルの曲のレベルはジェファーソンに比べればやや劣るが、それほどひどくもない。このあたりが当時のサイケデリック・ロック、アシッド・ロックと呼ばれたジャンルの平均的なところか。こういう録音を聞くと、たとえばレシュのベースがいかに異常か、よくわかる。


2. 1967 Psychedelic Supermarket, Boston, MA

 このヴェニューでの2日連続の初日。セット・リスト不明。

 ヴェニューは放棄されていた駐車場に1967年8月にオープン。オーナーは先にボストンの有名なフォーク・クラブ The Unicorn を経営していた。当初はオール・スタンディングで200300人で満杯。1969年、オーナーの George Papadopoulo The Unicorn をここに移転。Psychedelic Supermarket は閉じた。建物はその後間もなく映画館となり、さらにボストン大学の研究所が建てられた。

 この年と1969年の2度、デッドはボストンで大晦日に向けてのショウをしている。


3. 1968 Gulfstream Park Race Track, Hallandale, FL

 マイアミ・ポップ・フェスティヴァル。前売6ドル、当日7ドル。フェスティヴァルは2830日で、デッドは2日目に登場。1時間ほどのステージ。2日目のラインナップは

ステッペンウルフ

マーヴィン・ゲイ

グレイトフル・デッド

ヒュー・マセケラ

フラット&スクラグズ

バターフィールド・ブルーズ・バンド

ジョニ・ミッチェル

プロコル・ハルム

ジェイムズ・コットン・ブルーズ・バンド

リッチー・ヘヴンス

ボックストップス

 多様性ということでは、昨今よりもよほど多様な顔ぶれだ。


4. 1969 Boston Tea Party, Boston, MA

 大晦日に向けてこのヴェニュー3日連続のランの初日。会場は1967年から1970年末まであったクラブ。ニューヨークのフィルモア・イースト、サンフランシスコのフィルモア・ウェスト、フィラデルフィアのエレクトリック・ファクトリーなどに相当する。当時、名のあるロック・アクトは軒並みここでやっている。

 ボストンではもう一つ、The Ark が有名だが、そちらが経営の失敗で閉じると、その同じ建物に移った。


5. 1977 Winterland, San Francisco, CA

 大晦日に向けての4本連続のランの3本目。《Dick’s Picks, Vol. 10》で第二部2曲を除いて全体がリリースされた。偉大なこの年を締めくくるにふさわしい偉大なランの中でもベストのショウと言われる。

 始まる前にウィアが宣言した。

 「おれたちはすべてをまったく完璧にやろうと努めるおれたちの新しい名前は〔まったく完璧なブラザーズ・バンド Just Exactly Perfect Brothers Band〕というからな」

 この年は完全版もたくさん出ていて、有名なバートン・ホール公演をはじめとしてどれもこれも名演揃いだが、この年末のショウはその中でも指折りの1本ではある。《Dick's Picks》のシリーズは nugs.net でストリーミングでも聴けるし、ファイルをダウンロードで買うこともできる。デッドのアーカイブ録音をまず1本というのなら、これを薦める。


6. 1984 San Francisco Civic Center, San Francisco, CA

 大晦日に向けての3本連続のランの中日。開演8時。

                                                       

7. 1988 Oakland-Alameda County Coliseum Arena, Oakland , CA

 大晦日に向けての3本連続のランの中日。開演7時。第一部5曲目〈Queen Jane Approximately 〉が《Postcards Of The Hanging》でリリースされた。

 デッドがカヴァーしたことで歌の良さを教えられた実例の一つ。というよりも、デッドのカヴァー曲はほとんどが原曲とはまるで別物の歌になっている。まったく新たな歌としての生命を与えられている。ディランの曲でも傾向は同じだが、ディランの曲の場合、原曲が有名すぎて、聴けば誰でもディラン・ナンバーとわかるから、そこで原曲に引っぱられる。さすがのデッドも完全に呑みこめない。いや、デッドは呑みこんで、完全に自家薬籠中のものにしているが、聴く方がディランの声をそこに聴きこんでしまう。

 1980年代後半、デッドのディラン・カヴァーは増えて、第一部半ばにほぼ毎回演奏されるようになり、「ディラン・ポジション」と呼ばれるまでになる。この時期増えるカヴァーに《Highway 61 Revisited》からの曲が多いのは興味深い。デッドのカヴァーをディランも好み、翌年のツアーに結実する。デッドやガルシアの個人プロジェクトによるディランのカヴァーの主なものは《Postcards Of The Hanging》と《Garcia Plays Dylan》で聴ける。(ゆ)
 

Postcards of the Hanging
Grateful Dead
Grateful Dead / Wea
2005-02-14

Garcia Plays Dylan: Ladder to the Stars
Garcia, Jerry
Rhino / Wea
2005-12-12


1028日・木

 Dead.net から知らせが来たので、来年の Dave's Picks の年間予約をする。早期特価99.98USD。送料15.99USD
 

 Almanac で発表になった Dave's Picks Vinyl も注文。Vol. 1 はCDを持っていないため。送料は上に同じ。


 町田のヨドバシに PCM-D100を持ってゆく。バッテリー・パックを収めるところの蓋が閉まらなくなったものの修理を頼もうとしたのだが、その場で持ちだしてみると、ちゃんとはまる。店員がありあわせの電池を入れてみてもはまる。ので、そのまま引下がる。イヤフォン売り場をひやかし、AZLA のイヤチップを買う。

 HA-FW7 AZLA Xelastec のチップをはめてみる。なかなか良い。耳に吸いついて、落ちにくくなるし、密閉もよくなる。タッチ・ノイズが若干ある。


##本日のグレイトフル・デッド

 1028日には1972年から1991年まで、6本のショウをしている。公式リリース無し。


1. 1972 Cleveland Public Hall, Cleveland, OH

 まずまずのショウだったらしい。


2. 1979 Cape Cod Coliseum, South Yarmouth, MA

 8.50ドル。開演7時半。東海岸では久しぶりの〈China Cat Sunflower> I Know You Rider〉で、しかもベスト・ヴァージョンの一つとなって、後半が始まる。目立たないが最高のショウの一つらしい。


3. 1984 Berkeley Community Theatre, Berkeley, CA

 開演7時半。今一つのショウのようだ。


4. 1985 Fox Theatre, Atlanta, GA

 20ドル。開演8時。音楽は今ひとつだったらしい。


5. 1990 Le Zenith, Paris, France

 150フラン。前日ほどではないが、やはり良いショウ。ただし、外は土砂降りの雨で、雨漏りがひどく、テーパーたちには大迷惑だった。


6. 1991 Oakland-Alameda County Coliseum Arena, Oakland, CA

 22.50ドル。ブルース・ホーンスビィ出演。〈Peggy O〉はビル・グレアムに捧げられた。(ゆ)


1026日・火

 Mac Monterey を入れる。AquaSKK がメニューバーの入力メニューから消えて、一瞬ぎょっとするが、キーボードの環境設定で追加すれば問題なし。


 HA-FW7のプラグにスーパーコンタクトオイルを塗り、本体の後にディーレンミニを貼る。なかなか良い。低域がぐんと締まる。空間が広がり、透明感が増す。音が際立つ。ボディの後は平らで、何か貼ってくれと言わんばかり。このイヤフォンで聴くヴォーカルは魅力的。


 GrimDark Magazine Soman Chainani のインタヴューが面白い。徹底的にディズニーで育ちながら、長じて、ディズニーがお伽話を改悪していたことに気づき、その落差に興味を持って研究する。結果、徹底的に反ディズニーのお伽話を書きだす。もっとも、ハーヴァードで英米文学の学位をとってから、コロンビアで映画のコースをとり、卒業後はまず映画脚本と監督の仕事をしている。2014年、ヤング・アダルト向けファンタジー The School For Good And Evil を出す。この人、国会図書館には出て来ないのだが、六つの大陸の30の言語に翻訳されている、という。ハリポタの直系、というにはおそらくひねくれているらしいが、わが国の児童書版元もみなディズニーに毒されているのか。それとも、非現実的な条件を持ちだしてくるのか。Wikipedia では名前から想像できるとおり、インド系とある。フロリダ半島南端の出身とあるから、西インド諸島に移民したインド系がアメリカ本土に移住した形だろうか。とりあえず、第1巻を注文。

The School for Good and Evil (English Edition)
Chainani, Soman
HarperCollins
2013-05-14




##本日のグレイトフル・デッド

 1026日には1966年から1989年まで7本のショウをしている。公式リリースは3本。うち完全版1本、ほぼ完全版1本。


1. 1966 The North Face Ski Shop, San Francisco, CA

 この時期のデッドについては頼りになる Lost Live Dead のブログに記事がある。

 この North Face は皆さまご存知のアウトドア・グッズのブランドで、これはその最初のリアル店舗。それ以前、North Face 創設者の Doug Susie Tompkins 夫妻はターホウ湖でアウトドア用品の通販を始めていて、この日サンフランシスコの North Beach に店を開き、後の大企業への道を歩みはじめる。隣は有名なストリップ劇場、筋向いはこれも有名な City Lights Bookstore
 その店の開店記念パーティーにデッドが「余興」として呼ばれ、演奏をした。おそらくあまり長いものではなかっただろう、という推測にはうなずく。このパーティーではディランの出たばかりの《
Blonde On Blonde》のばかでかいポスターが飾られ、ジョーン・バエズとミミ・ファリーニャもいて、ミミはスキー・ウェアのモデルになっていた。入口両脇にヘルス・エンジェルスが2人、立っていた。当時のデッドはもちろんまだほとんど無名。パーティーのはねた後、トンプキンス夫妻はバンドをイタ飯屋での夕食に連れていった。ノース・フェイス公式サイトの会社の歴史のページに、演奏している髭を剃ったガルシアとウィアの写真がある。その他、上記記事のコメント欄参照。

 デッドに注目するダグ・トンプキンスのセンスもなかなかだが、こういうところに顔を出すのがデッドの面白さだ。


2. 1969 Winterland Arena, San Francisco, CA

 同じヴェニュー&出演者3日目。急遽追加のギグ。デッドが先で、エアプレインがトリ。


3. 1971 The Palestra, University of Rochester, Rochester, NY

 ニュー・ライダーズ・オヴ・パープル・セイジ前座。開演8時半。

 前半13曲目〈Beat It On Down The Line〉を除く全体が《Download Series, Vol. 3》でリリースされた。

 後半が異様に短かい。あるいは FM 放送のためか。


4. 1972 Music Hall, Cincinnati, OH

 4.50ドル。開演7時半。この年の平均的ショウ、らしい。


5. 1980 Radio City Music Hall, New York, NY

 8本連続の4本目。第一部3曲目〈It Must Have Been The Roses〉が《Reckoning》で、第二部2曲目〈Sugaree〉と5曲目〈Let It Grow〉が《Dead Set》でリリースされた。

 〈Sugaree〉でガルシアはごくごくシンプルな短かいフレーズを少しずつ変えながらくり返して、スリリングに盛り上げる。こういうところがデッドの凄さ。この曲もいつもよりわずかにテンポが早いが、〈Let It Grow〉はさらに切迫感がある。ウィアの声も上ずりがち。


6. 1985 Sun Dome, Tampa, FL

 13.50ドル。良いショウのようだ。


7. 1989 Miami Arena, Miami, FL

 このヴェニュー2日連続2日目。《30 Trips Around The Sun》の1本として全体がリリースされた。(ゆ)


1023日・金

 先日の PhileWeb で野村ケンジが薦めていた有線イヤフォンのうち、JVC HA-FW7 を買った。



 夜、開梱。まず1曲聴き、夕食の間にピンクノイズのエージングをかけて、夜また聴く。かなり良い。クリアで見通しがよく、音に存在感がある。イヤチップをSpiralDot++に交換。サウンドステージが広がり、音の雑味が減る。簡単なエージングでここまで良くなるのなら、ちゃんとかければ立派になるだろう。

 アコースティックも良いが、デッドも良い。エレクトリックでもデッドの演奏では透明なアコースティックに近い音から、暴力的でノイジーな音まで、実に多種多様な音が響くが、各々にちゃんとリアリティがある。ということは、余計なことはしていないのだろう。もっともプレーヤーが良いのもあろうが、それにちゃんと応える。

 これだけの音を聞かせてくれるなら、イヤフォンはこれを使って、その分プレーヤーに奢る、という手もある。一方で、エントリーでこれならば、ハイエンドはどうなのだ、というのも気になってくる。スピーカー・オーディオと違って、イヤフォン、ヘッドフォンはこう気になるとそのハイエンドに手が届いてしまう。エントリーは数万で、ハイエンドは数百万なんてことはない。

 この音がダメだというのはわからん。好みでかたづけられる問題でもないような気がする。あるいは耳の問題かもしれない。オーディオでよく言われることに、1番大きな問題は機器ではなく部屋だ、というのがある。が、その前に、耳がいかれていてはどうにもなるまい。耳というのはハードウェアだけではない。鼓膜から来た信号を解釈する脳の中のソフトウェアとの組合せだ。ウォークマン難聴はハードウェアの問題だが、そこはクリアしているとしても、ソフトウェアがバグっていたり、仕様が最初から間違っていては、まともな動作はしない。あるいはディープラーニングで AI を鍛えるのに、不適切なデータを使うようなものだろう。

 良い音かどうか判断するソフトウェアは、良い音をふだんから聴いて鍛える必要がある。良い音とはすなわち生演奏の音、それも生楽器の生の音、PAを通さない音だ。生楽器は演奏する人間による音の変化が大きいから、できるだけ名手の演奏を聴く必要もある。クラシックとは限らない。アイリッシュ・ミュージックでも、ジャズでも、インド古典音楽でも、コラでもいい。自然音でもいいかもしれないが、音楽は自然に鳴るものではないから、やはり演奏の方がいいと思う。鳥や虫の鳴き声はいいかな。


##本日のグレイトフル・デッド

 1023日には1966年から1989年まで、7本のショウをしている。公式リリースは3本。


1. 1966 Las Lomas High School, Walnut Creek, CA

 開演午後3時。もとは Walnut Creek Library で予定されていた。セット・リスト不明。


2. 1970 McDonough Arena, Georgetown University, Washington, DC

 5ドル。開演8時半。第一部は50分弱のニュー・ライダーズ・オヴ・パープル・セイジ。ガルシアがペダルスティール。第二部が1時間半弱のエレクトリック・デッド。FM放送されたが、テープは無いそうだ。ショウは最高だった由。


3. 1971 Easttown Theatre, Detroit, MI

 このヴェニュー、2日連続の1日目。8時開演。ニュー・ライダーズ・オヴ・パープル・セイジも出ている。WABX FMライブ放送されている。


4. 1972 Performing Arts Center, Milwaukee, WI

 このヴェニュー、2日連続の1日目。骸骨をフィーチュアしたポスター。7時半開演。ショウは良かったそうだが、既存のメディアにとっては、ほとんどしゃべらずに黙々と演奏するのが異様に映ったらしい。MC を聴衆と結びつくために使うミュージシャンは多いが、デッドは音楽だけでどんなミュージシャンよりも強力な結び付きを聴衆と結んでいた。


5. 1973 Metropolitan Sports Center, Bloomington, MN

 前半7曲目〈Black-Throated Wind〉が2015年の《30 Days Of Dead》でリリースされた。

 警備員が横暴で、トラブルが絶えず、終演後、クロイツマンがその一人と喧嘩になったといわれる。

 珍しくキースがオルガンを弾いていて、なかなか良い。これならもっと弾いてもらいたい。キースのはずだが、あまりかれらしく聞えない。


6. 1980 Radio City Music Hall, New York, NY

 8本連続の2本目。第一部アコースティック・セット全部が《Reckoning2004年の拡大版で、第二部5曲目の〈Althea〉が《Beyond Description》中の《Go To Heaven》ボーナス・トラックでリリースされた。

 第一部〈Cassidy〉のガルシアのソロがいい。抒情たっぷりの〈China Doll〉がいい。これにチェンバロを使うことを思いついたのは誰だろう。ミドランドか。確かにこの歌はピアノではない。


7. 1989 Charlotte Coliseum, Charlotte, VA

 2日連続の2日目。開演7時半。前半ラストの2曲〈Tennessee Jed〉〈Let It Grow〉が2010年の、オープニング2曲目〈Feel Like A Stranger〉が2020年の《30 Days Of Dead》でリリースされた。

 〈California Earthquake (Whole Lotta Shakin' Goin' On) 〉がオープナー。2度目で最後の演奏。ちなみにこの歌はロドニー・クロゥエルのデビュー・アルバム掉尾を飾るワルツ。コーラスのラストの1行

"We'll build ourselves another town you can tear it down again."

には励まされる。

 会場周辺でのデッドヘッドと地元警察との軋轢が悪化していた時期だが、ここはことさらに悪かったらしい。

 ショウは前日よりは良かった。(ゆ)


1016日・土

 Dave's Picks, Vol. 40発表。いつもはいつから予約開始とアナウンスが来るが、今回はいきなり予約開始のアナウンス。1990-07-18/19 だからか。あたしは大歓迎。Dave's Picks の最後は去年も後期1987年の2本のカップリングだった。10/29リリース。ということは、もう来月は 30 Days の月ではないか。そしてそろそろ来年の Dave's のサブスクリプション申込みだ。



 PhileWeb の野村ケンジ氏による「あえて選びたい有線イヤホン、プロが選ぶ“1万円以下のおすすめ6モデル」は、旱天の慈雨というと大袈裟か。しかし、久しぶりにほっとする。
 世はワイヤレス全盛で、これがこれから主流になってゆくのはわかるが、こう、出てくる新製品がどれもこれもワイヤレスばかり、となると辟易してくる。だいたい売れているのは AirPods Pro とソニーと Anker ぐらいで、他は出すのに意味があるのか、と思える。アマゾンの売行ランキングではこの三者が不動のベスト5で、しかも順位まで AirPods ProAnker、ソニーと決まっている。ごく時たま、ソニーや Anker が新製品を出すと、一瞬入れかわるけれど、またすぐ元に戻る。だからといってこの3つだけありゃいい、ということにはならないことも承知しているし、主流になる、ということはどこもかしこもその方式を出すということではあると、アタマでは理解しているが、カラダは承知しない。それに、いかにワイヤレスが主流になろうと、有線が滅びるわけじゃない。



 1万以下の有線6モデルは国産と中華が半々。今、この価格帯を出しているのはこの二つだけ、ということか。かつて、ヘッドフォン祭にヴェトナムのメーカーが出たことがあったけれど、参入はならなかったようだ。向こうではどうなのだろう。東南アジアではオープン・タイプのイヤフォン、いわゆる ear buds が大人気で、しかも、音をカスタマイズするのが流行っていて、そのためのパーツ市場が盛んと聞いたのは COVID-19 の前だが、今はどうなのだろうか。アジアでヘッドフォンよりもイヤフォンが好まれるのは、電車やバスによる通勤があるからだ、という説があるが、その説からするとオープン・タイプは売れないはずだけれど。

 この国産と中華半々、というのには深い意味もあるのだろうが、国産がすべてケーブル固定で、中華がすべてリケーブル可能というのは興味深い。リケーブルは iBasso MMCX で他は 2pin

 ドライバーはすべてダイナミック。BA ではこの価格ではできない、ということだろうか。final で見ると、BA を使った1番安いのは F3100の2万。ドライバーのサイズは水月雨の6mm から DENON 11.5mm まで。DENON は記事では11.2とあるが、公式サイトでは11.5TFZ も記事では11.2だが、公式サイトでは11.4。単純なミスか、意味があるのか。ドライバー振動板の素材でユニークなのは JVC のウッドドーム。iBasso TFZ がグラフェン、水月雨がベリリウムの、各々コーティング。DENONfinal は発表なし。

 価格は final 3,209円から水月雨の 9,191円まで。6機種合計42,815円也。これはアマゾンで、楽天の最安で買うと41,280円。にポイントが2942着く。これなら、どれか1機種といわず、全部買って、とっかえひっかえ、使う環境、聴く音楽に合わせて使うのも面白いだろう。それに、野村氏の記述と自分の聞え方を比べると、評論家がこう書いているときは、自分にはこう聞えるだろうという見当もつくようになる。少なくとも野村氏についてはつくようになる。

 中で真先に試したいのはウッドドームだ。ハイエンド・モデルを試そうかと思ったこともあるが、まずこれで試して、自分に合うかどうか、本当にアコースティックの楽器がきちんと、良くではなく、きちんと聞えるか、つまり、生の音に近く聞えるか、試すには格好だ。



##本日のグレイトフル・デッド

 1016日には1966年から1989年まで7本のショウをしている。公式リリースは4本。うち完全版1本。なおこの日はボブ・ウィアの誕生日。ちなみに、最近一緒にやっている John Meyer も同じ誕生日。


1. 1966 Golden Gate Park, San Francisco, CA

 ゴールデン・ゲイト公園の東に伸びたパンハンドルと呼ばれる場所での "Artist's Liberation, Front Free Festival"。ポスターでは15日と2日間のイベントだが、デッドはこの2日目に演奏した。

 ボブ・ウィアは19歳になった。


2. 1970 Irvine Auditorium, University of Pennsylvania, Philadelphia, PA

 会場はペンシルヴァニヤ大学の講堂なのだが、趣旨は Drexel という理工系カレッジの同窓会で、ドレクセル・カレッジがこの講堂を借りていた。会場はペンシルヴァニヤ大学をドロップアウトしながら有名になった建築家によるもので、建物の設計を依頼された時、学生時代にドロップアウトの原因となった同じ設計を提出した。それによって建てられたホールは、大学のホールの中でも最悪の音響特性をもっていた。

 したがって聴衆はほとんどが、ごく普通の、いわゆる「民間人」とその伴侶で、その中に少数のデッドヘッドがはさまれる形。誰が、なぜ、こういう場に当時のデッドを呼んだのか、は興味あるところだ。呼んだ方はあるいはデッドの何たるかを知らないままに呼んだ可能性もある。ショウの間、会場を去る人間が絶えず、途中休憩でどっといなくなった由。音楽もだが、デッドヘッドたちに反発した者も多かったらしい。デッドヘッドがアメリカ社会の隅々にまで拡散するのは、20年後だ。この頃はまだ極めて目立つ、物珍しい存在だったろう。

 ショウそのものはピグペンのショウだった。以上 DeadBase XI Zea Sonnabend のレポートによる。


3. 1974 Winterland Arena, San Francisco, CA

 ツアー休止前のウィンターランド5日連続のショウの初日。

 前半ラストの〈Playing In The Band〉が《The Grateful Dead Movie Sound Track》で、後半2曲目〈Eyes Of The World〉が2014年の《30 Days Of Dead》で、4曲目〈Scarlet Begonias〉が《BEYOND DESCRIPTION》中の《Mars Hotel》のボーナス・トラックで、各々リリースされた。

 この日は公開リハーサルということで、カメラは入っていなかった。むしろリラックスした形で、この日が5日間のベストという声もある。

 中間にレシュとラギンによる Seastone があり、後半はここからシームレスにジャムが始まる形。

 上記3曲、どれも非常に良い演奏。この3曲だけで1時間近いが、いずれも一瞬たりともダレた瞬間がない。映画『イエロー・サブマリン』の中の「ルーシー・イン・ザ・スカイ・ダイヤモンド」のシーン。ルーシーの姿の輪郭は変わらないまま、その中が千変万化してゆく、あれを思い出す。バンドの形は変わらないまま、音楽は千変万化してゆく。3曲とも一応終る。〈Eyes Of The World〉は3分の2ほどのところで、テープの損傷か、一瞬音がとぎれるところがあり、このために GDMST に入らなかったのかもしれない。


4. 1977 Assembly Center, Louisiana State University, Baton Rouge, LA

 前半2曲目の〈Sugaree〉、前半ラストの〈The Music Never Stopped〉、それにアンコールを除く後半全部が《Road Trips, Vol. 1 No. 2》とそのボーナス・ディスクでリリースされた。

 この年に悪いショウ、否、すばらしくないショウがあったのか、と思われる年だが、これは中でもトップ・クラス。バートン・ホールとその前後、その後のウィンターランドと比べても遜色ない。


5. 1981 Melkweg, Amsterdam, Netherlands

 キャンセルされたフランスのショウの代わりの即席のショウ2日目。デッドが演奏していることが口コミで伝わったらしく、会場は400人がぎゅう詰めとなった。やはり Cindy Peress が前座を努めた。ウィアはステージに登場すると花束を贈られ、聴衆が「ハッピー・バースディ」を歌った。

 親密で、暖かく、リラックスした雰囲気だった由。前半はアコースティック。後半はウィアの舞台で、〈Turn on Your Lovelight〉が1972年5月以来9年ぶり、ピグペンが離れてからは初めて復活。以後はコンスタントに最後までレパートリィの一部だった。トータル349回演奏。回数順では29位。アンコール無し。終演午前2時。以上、DeadBase XI Robert A. Minkin のレポートによる。この時も少数ながら、アメリカから追っかけをしているデッドヘッドがいた。


6. 1988 Bayfront Center, St. Petersburg, FL

 このヴェニュー2日目。後半2、3曲目の〈Victim Or The Crime > Foolish Heart〉が2014年の《30 Days Of Dead》でリリースされた。

 ボブ・ウィアは41歳になり、アンコール前に「ハッピー・バースディ」が歌われた。

 〈Victim Or The Crime〉はジャムがほとんど無い。即興部分も少ない。それでも、ウィアの歌唱だけでもこの演奏は買い。〈Foolish Heart〉では、ガルシアは声を出しにくそうだ。一瞬、声が裏返ったりする。声が出なくなる時もある。切り替わった直後は〈Bertha〉か〈Touch of Grey〉かと思えるが、やがてそれとわかり、ミドランドが特徴的なリフを始める。中間のジャムはすばらしい。ミドランドが見事な鍵盤ワークを聴かせ、ガルシアを盛りたてる。


7. 1989 Meadowlands Arena, East Rutherford, NJ

 このヴェニュー3日連続の最終日。全体が《Nightfall Of Diamonds》としてリリースされた。このタイトルはもちろん〈Dark Star〉の歌詞から。デッドのライブ録音アーカイヴ The Vault からのリリースはどれかの歌の歌詞からつけられることが多い。

 オープナーの〈Picasso Moon〉は東海岸デビュー。後半は〈Dark Star〉に始まり、〈Playing In The Band〉に続き、後にまず〈Dark Star〉が回帰し、最後に PITB が回帰して幕。(ゆ)


9月23日・木

 北日本音響からクラウドファンディングしたイヤフォン Mother Audio ME5-BORON 着。ドライバーの素材にボロンを使用したダイナミック型。ボロンはダイナミック・ドライバー振動板の素材としてはベリリウムに継ぐ優秀な特性を持つのだそうだ。

 純粋ベリリウム振動板は加工が極端に難しく、Campfire の Lyra II も、final の A8000 も、20万近い。最近中国の Nicehck が3万を切る値段で出した。と、思ったら、その後からも出てきた。もっとも、「純粋ベリリウム・ドライバー」というのが何を意味するのかは、ユーザーは確めようがない。ただ、やはり中国の FiiO が、純粋ベリリウム・ドライバーをうたって FD7 を出し、そちらは直販で7万しているから、Nicehck 他は疑わしくはなる。それに、スピーカーの音が振動板の素材だけで決まるわけでもないことは、A&Cオーディオのブログでも散々言われている。イヤフォンといえど、極小のスピーカーなわけだ。A8000 はしかし究極とも思える音で、こんなものを買ってしまったら、そこで終ってしまう、さもなければ死んでしまうような気がしきりにする。

 ME5-BORON はクラウドファンディングの立ち上げが4月で、その時にはまだ Campfire と final しか無く、二番手の素材を使っても3万以下というのは面白くみえて、乗ってみた。それから待つこと5ヶ月にして製品が届く。

 早速試す。箱出しでは低域が弱い。しかし、聞えている音はまことにクリアで、ウィアの歌っている歌詞が明瞭に聴きとれる。分離もいい。明朗でさわやかな音。聴いていて気分のよくなる音。どんどん音楽が聴きたくなる音。A8000 のあの深み、掘ってゆくと後から後からいくらでも現れてきそうな奥行きは無いが、曇りやにじみの無い、愉しい音だ。一方でただキレがいいだけではなく、曖昧なところはきちんと曖昧に聞かせる。深みはまだこれから出てくるかもしれない。

 ピンクノイズをかけ、《あかまつさん》を聴いているうちによくなってくる。Yaz Ahmed のセカンドではベースも活き活きしている。デッドでもそうだが、ヴォーカルが前面に出て、微妙なアーティキュレーションもよくわかる。様々な細かいパーカッションの響きが実にきれい。聴こうとしなくても耳に入ってくる。とともに、ボロンという素材のおかげか、インピーダンスや能率の数字推測されるよりも音量がずっと大きい。いつも聴いている音量レベルよりかなり下げてちょうど良い。

 これは先が楽しみだ。
 

あかまつさん
チェルシーズ
DANCING PIG
2013-07-14



 watchOS 8.0。今度は Apple Watch 3 にもインストールできた。使う頻度が一番多いタイマーの UI ががらりと変わっていて、面喰らう。


##本日のグレイトフル・デッド

 9月23日は1966年から1988年まで7本のショウをしている。公式リリースは1本。


1. 1966 Pioneer Ballroom, Suisun City, CA

 2日連続の初日。サスーン・シティはオークランドの北40キロにある街。サンフランシスコ湾の北に続くサン・パブロ湾からさらに東にサスーン湾、グリズリー湾があり、その北のサスーン・マーシュという北米最大の沼沢地の北側。サスーンはかつてこの辺に住んでいた先住民の名前。ここで演ったのはこの2日間だけ。ポスターが残っているのみ。セット・リストなし。the 13 Experience というバンドが共演。


2. 1967 Family Dog, Denver, CO

 前日と同じヴェニュー。デンヴァーの Family Dog で演ったのもこの2日間のみ。ポスターのみ。


3. 1972 Palace Theater, Waterbury, CT

 同じヴェニュー2日間の初日。料金5.50ドル。開演7時半。ある人が開演3時間前に会場に行くと、ここでやる他のロック・コンサートなら前3列の席がとれるのに、この時はすでにデッドヘッドが2,000人ほど集まっていてショックを受けたそうな。そのうち、デッドのクルーが卵サラダ・サンドイッチを大きなゴミ袋に入れて運んできて、配ってあるいた。さらには、でかいオープンリール・デッキと自動車用バッテリーを2本、堂々と持ち込んでいるやつがいた。この日は比較的短かくて前後3時間。アンコール無し。


4. 1976 Cameron Indoor Stadium, Duke University, Durham, NC

 良いショウらしい。チケットが残っているが、開演時刻と料金の頭のところがちょうど切れていて、確認できず。


5. 1982 New Haven Coliseum, New Haven, CT

 秋のツアーもあと1本。前半最後の〈Let It Grow〉が2011年の、後半2曲目〈Lost Sailor > Saint Of Circumstance〉のメドレーが2014年の《30 Days Of Dead》で、各々リリースされた。後者、音は少し上ずっていて、ベースがほとんど聞えないが、ウィアの声はすぐ目の前だし、演奏はすばらしい。

 会場は正式名称 New Haven Veterans Memorial Coliseum で、1972年オープンした多目的屋内アリーナ。2002年に閉鎖。2007年に取り壊された。定員11,500。デッドはここで1977年から1984年まで、主に春のツアーの一環として11演奏している。秋に行ったのは79年とこの82年。うち公式リリースされたのは6本。1977年5月の完全版、78年5月のショウの大部分がある。


5. 1987 The Spectrum, Philadelphia, PA

 3日連続の中日。これも良かったらしい。


6. 1988 Madison Square Garden, New York , NY

 9本連続の8本目。こういうレジデンス公演の場合、この日がベストになることが多い。この日も好調だった由。(ゆ)


7月7日・水
 散歩のおともは Bellowhead, Broadside。まあ、見事というしかない。こういうのを聴いてしまうと、エレクトリック・トラッドだ、いやオーセンティックだとか口角泡を飛ばしていたのが、KT境界前の昔に思える。もちろんここにはフェアポートもアルビオンもブラス・モンキーもウォータースン・カーシィも流れこんでいる。そうした先駆者あってのものだけど、各々に一家を成しているそうした音楽を換骨奪胎して、新しい次元に展開している。核になっているスピアズ&ボゥデンがまずそれをやってみせた。その意味ではこれはその論理的発展形ではある。とはいえ、ジャズのビッグバンドの筆法も取り込んで、うーん、やはりこれは今のイングランドの到達点、集大成ではある。そして、これはおそらく、アイルランドにもスコットランドにもできないだろう。

Broadside
Bellowhead
Navigator
2012-10-30



 Shanling M30。Sony DMP-Z1 に続く製品がようやく出てきたのは面白いし、電源も良さそうだ。ただ、コア機能が中途半端な印象。このサイズでオペアンプかよ。モジュール方式にこだわったためか。このクラスなら、今できる半歩先を組み込んだディスクリートが欲しい。モジュールで交換できるというのは、Cayin のように、フラッグシップではなくて、その一つ下の方が面白い。それともこの上のフラッグシップを用意しているのか。どこにも情報が無かったので問い合わせたら、AirPlay はサポートしている。WiFi 経由でファイル転送もできる由。しかし、どうも魅力が薄い。これで価格がせめて30万切るならまだ検討の余地はあるかも。

 Oriolus のカセット・プレーヤー形の DAP。その恰好だけで24万? どこかひどく勘違いしてないか。それとも他に隠し機能があるのか。

 Unique Melody の骨伝導を組みこんだイヤフォン、MEST mini も良さそうだが、本家で MEST II が出て、物欲がむらむらと掻きたてられる。しかし、M17 もあるし、両方はムリだ。やはりソースか。いずれにしても、ワクチン接種を生きのびてからの話。(ゆ)

5月27日・木

 ゼンハイザーの民生部門の Sonova への売却についてのささきさんの ASCII の記事を読んで思う。結局これはヘッドフォン、イヤフォンというものが、従来の「アクセサリー」の範疇から飛びだして、スマホと同じマスプロ、マスセールスの製品になったということの現れだろう。

 ゼンハイザーはあくまでも「オーディオ・アクセサリー」としてのヘッドフォン、イヤフォンを作っていた。だから家族経営でもOKだった。しかし今や、Apple がヘッドフォンまで作るようになった。音楽鑑賞のメインはストリーミングとイヤフォンのルートになり、しかも無線接続がデフォルトだ。そしてイヤフォンの市場は Apple が圧倒的シェアを持ち、これに次ぐのも Anker などの大企業だ。これはオーディオというようなニッチな、趣味が幅を利かせる範疇ではもはや無い。イヤフォンとヘッドフォンは、スピーカーを中心としたオーディオを完全に飛びこして、かつてのテレビやラジオ、今ならスマホやタブレットのレベルの製品群の一角に座を占めたということだ。そして、ゼンハイザーはそのことをいち早く看てとり、もはやつきあってはいられない、と民生部門を切ったのだ。

 スタジオやライヴなどのロの分野では職人芸がまだ生きている、活かせる。プロ用機材のメーカーに大企業はいない。なれない。そこなら家族経営でまだまだやれる。そういう読みと判断ではないか。

 もう遙か昔、まだ iMac にハーマンのスピーカーが付属していた頃、タイムドメインのライセンス製品を出していたメーカーがそのスピーカーを Apple に売りこんだことがある。音質などの条件はクリアしたが、最低で月100万セット納品できるかと言われて、退散したそうだ。その頃ですでにそういう規模だった。ゼンハイザーはそういう世界からは足を洗うと宣言したのだ。

 民生撤退の理由はおそらくもう一つある。Apple が Dolby Atmos に舵を切り、ソニーも360度サウンドを出し、民生用の音楽再生は DSP が必須になった。それも音の出口のところでだ。これまではただ物理的に音を出していればよかったヘッドフォン、イヤフォンにチップが入った。それも無線接続のためのものに限らず、音楽再生の根幹に関わるものがだ。デジタルはハードウェアだけでは役に立たず、ソフトウェア開発もついてまわる。ゼンハイザーはこれを嫌ったのだ。嫌ったというより、対応できないと潔く諦めたのだ。こういう潔さ、フットワークの軽い転身も家族経営ならではだろう。

 ハイエンド・ヘッドフォン、イヤフォンはまだこれからも出るだろう。が、それを担うのは新しい、たとえばゼンハイザーに比べれば「駆け出し」の HiFiMAN のようなメーカーだろうし、あるいはハイエンドだけを狙った新しいブランドだろう。

 ついでに言えば、スピーカーにも DSP が入って、オーディオの常識がひっくりかえっているなあ。Alexa や Home Pod は AirPods ファミリーに相当するものだが、いわゆるオーディオファイル用のジャンルでも Airpulse A80 や KEF LS50 のようなアクティヴ・スピーカー、そしてその先を行く Genelec の SAM システムによる音場補正は、「使いこなし」とか「セッティング」を無意味にしようとしている。

 もちろん、そんなに簡単にできてしまうのはイヤだ、あれこれ試行錯誤するのが愉しいのだ、という人がいなくなることはない。ヘッドフォン、イヤフォンだって、ケーブルを替え、チップやパッドを替え、クローズドにオープン、セミ・オープン、ダイナミックに静電型、平面型など様々なタイプを使いわけるのを愉しむ人がいなくなることはない。ただ、それはますますニッチな趣味の世界へ入ってゆくだろう。本当に趣味の世界は何でもニッチなものではあるが。(ゆ)

 イヤフォン、ヘッドフォン・メーカーのファイナルが秋葉原に直営店をオープンしたので、開店日に行ってみました。

 ファイナルは創業者の高井金盛氏が亡くなられてから、目黒の長者町から川崎の現住所に転居し、ここにショールームを設けて、試聴やイベントの場としていたわけですが、ここはいかんせん、交通の便が悪い。あたしも何度か伺いましたが、鉄道のどの駅からも15分くらい歩きます。歩くのは苦になりませんが、雨でも降るとちょっとしんどい。ということで、今回、誘いを受けたのを契機に、秋葉原の駅の電気街口改札から歩いて2、3分というところに直営店を開いたのだそうです。入居したのは、秋葉原から御徒町方面に向かう線路の下を再開発したスペース SEEKBASE で、この中にはイベント・スペースも別にあります。

 秋葉原駅の改札から線路沿いに北へ向かい、左手に UDX という大きなビルのある交差点を渡ると CHABARA という、国内特産品販売店が集まっている一角があり、その次の一角が SEEKBASE です。

 一軒、ビールなど蒸留酒のバーがあるのが異色ですが、その他はモノを売る店。オープンが1週間ずれた「まんだらけ」の店が、見た目には圧巻。ソフトビニール・フィギュア専門だそうな。

 各店舗の間は壁がなく、スチールの格子で区切られているだけ。このパーティションは2メートルくらいの高さで、天井も剥出し。たとえばパルコなどの恒久的なテナント施設というよりは、がらんどうのイベント・スペースをちょいちょいと区切っている、テンポラリな施設のようでもあります。隣の店は丸見えですし、音や話し声などもさえぎるものはありません。ファイナルの店のお隣りは鉄道模型の専門店で、模型が走る音が結構大きく聞えます。

 バーとDJスクールを除いて、モノを売る店はモノであふれていますが、ファイナルの店は高級ブティックよりももっと展示されている商品が少ない。ほとんど、あんたら売る気があるのか、とツッコミたくなる感じ。入口にはでんと甲冑が鎮座していて、知らないと何の店かわからないかもしれません。テーブルや椅子などの什器も川崎のショールームから持ってきた由で、すべてヴィンテージもの。奥の試聴などに使うテーブルのハンス・ウェグナーの一番有名なYチェア、白木ヴァージョンだけは真新しい。

 開店日に行った最大の目的は新製品のフラッグシップ・イヤフォン、A8000 を聴くためであります。ファイナルのイヤフォンは MAKE 3 をクラウドファンディングで購入して愛用しています。きりりとして輪郭の明瞭で空間がクリアな音。基本的に硬質なサウンドですが、ヴォーカルは血が通ってます。アイリッシュ・ミュージックをはじめ、アコースティックなアンサンブルは最高です。マルチBAやハイブリッドよりも、ダイナミック・ドライバ一発の信奉者としては、そのファイナルが満を持して出したとなると A8000 は聴かないわけにはいかない。たとえ、到底手が出ない値段がついていても、です。

 聴いての結論は、買ってはいけない。こんなものを買ってしまっては、そこで終ってしまいます。もう新製品なんて要らなくなります。ただ、ひたすらこれを聴いていたい。これで音楽を聴いていたい。いつまでもこれで音楽を聴いていたい。他のこともしたくなくなる。本を読むとか、メシを喰うとか、そんなことはどこかへ飛んでしまう。

 オーディオ製品の1つの要諦は録音された音楽を魅力的に聴かせる機能です。録音や演奏がひどいものでも、それなりに聴かせてしまう機能です。リスナーをだますとも言えますが、娯楽とは受け手をいかにだまして、気持ちよい思いをさせるかを工夫するものです。オーディオもその例外ではありません。

 だまされるのがとにかく厭だという気持ちももちろんあって、いわゆるプロ用機器、スタジオ・モニタなどが人気なのもその現れでもあります。もっともこちらはこちらで、だましはしませんが、たとえばすべての楽器、すべての要素が等しく聞えたりします。仕事のためにはそれが必要なわけですが、音楽の実際、生演奏からはほど遠い形です。どんな音楽も、すべての楽器がまったく同等に聞えるようにはできていません。声も含め、それぞれの役割や位置に応じた音量や音質で聞えて初めて本来の形で聞えます。

 A8000 は、その描写が実に巧い。音楽を本来聞える姿で描きだしてくれます。それが巧いポイントの1つは、音の減衰のコントロールらしい。楽音はたいていポンと出て、だんだん小さくなって消えます。そのポンの立ち上がりがまず大事というので、オーディオ製品はその瞬発力に力を注ぎます。ところが減衰してゆく方はいわば放置されるのが普通です。音が勝手に小さくなるのにまかせる。生演奏ならそれでいいわけですが、電気的に音を再現する場合にはどうもそれではうまくないらしい。というのは実際に音を出しているのは振動板で、弦でも管でもリードでも声帯でもないからです。減衰する速度からして違う音のそれぞれの減衰を、1枚の振動板でどう再現するか。

 減衰する音のコントロールが足りないと、前の音が消えきらないうちに次の音が出るわけです。当然、次の音は濁るでしょう。普通は濁っているとはわからないくらいわずかなもので、最初の立上りが十分シャープであれば、人間の耳はうまくだまされる。もっとも、平面型のスピーカーやヘッドフォン、イヤフォンのメリットはもともとはそこにあります。他のタイプでは音をプッシュするだけですが、平面型はプッシュ・プルして、減衰をコントロールします。今流行りのダイナミック・タイプの平面型ドライバはそうでもないものもありますけど、スタックスなどの音の快感はプッシュ・プルのおかげです。

 A8000 は純粋ベリリウムの振動板を作りだすことで、減衰をコントロールしようとしている。そして相当なレベルまで成功している、と聞えます。音楽を聴くのがとにかく愉しい。聴くことそのものが快感です。音離れがいい、というのは普通、立上りがシャープで輪郭が明瞭なときに言われますが、減衰がうまくて、すっきりと消えることの方にあてはまるんじゃないかとも思えます。

 A8000 が凄いのは、音楽を聴く歓びを味わわせてくれるとともに、もう1つ、オーディオ的な満足感ももたらしてくれることです。音が良いことの驚きが新鮮なのです。今で言えば、スマホ付属のイヤフォンから、初めて本格的な、たとえば3万クラスのモデルに替えたときの驚き、でしょうか。あたし自身は、アキュフェーズの出たばかりのプリメインにボストン・アコースティックのダブル・ウーファー・スピーカー、トーレンスのアナログ・プレーヤーを組んだ時でした。好きな音楽を、良い音で聴くということがどんなにすばらしい体験か、あらためて噛みしめることを A8000 は可能にしてくれます。

 こうなってくると、20万という価格がそんなに高いと思えなくなってくるのが、オーディオの魔力でしょう。まんだらけに並んでいるフィギュアに付いている値段は、あたしなどには目玉が飛びでるものですが、欲しい人にとっては妥当なものであるわけです。もうそんなに長くもない人生の残りを、A8000 で音楽を聴くことで費すなら、満足して死ねるでありましょう。だからといってぽんと20万、どこからか湧いてくるわけではありませんが。

 いやいや、やはりこれは買ってはいけない。死ぬその瞬間まで、新しもの好きでいたい。

 ああしかし、これで思う存分音楽を聴きたいものよのう。

 というわけで、心は千々に乱れて(笑)、お店を後にしたことでありました。(ゆ)

 「21世紀をサヴァイヴするためのグレイトフル・デッド入門」のために、デッドのライヴ音源を延々と聴くわけですが、それには何を使っているのか。

 あたしはスピーカーではまず聴かず、もっぱらヘッドフォンとイヤフォンで聴いてます。基本的に家ではヘッドフォン、外ではイヤフォン。なんだかんだで、知らないうちに増えていて、数えてみるとヘッドフォンは8本、イヤフォンも同じくらい。細かくて、正確にはもうわからん。取っ替え引っ替え使うわけですが、みんな均等にというのではなく、自分の中でも流行り廃りがあります。

 デッドのある曲を手許に溜まってきたライヴ音源の公式リリースから拾って聴いてゆくのは少々手間がかかります。一つのフォルダにまとめてこれを次々に再生してゆくのは、いつも使っている DAP は案外不得手で、これまでの経験で一番楽なのは MacBook Pro で再生する方法。ただし、Audirvana Plus はこういう時ほとんど役に立ちません。まずまず音が良くて使い勝手が良いのは Decibel。

 MacBook Pro から Chord Mojo に USB で出し、Analog Square Paper 製 STAX 専用真空管ハイブリッド・アンプで SR-L300 というのが最近の昼間の定番。だったんですが、選曲も佳境に入ったところで、朝、かぶろうとしたら SR-L300 のプラスティックのヘッドバンドがバキッと音を立てて真っ二つ。

SR-L300broken


 幸い、問い合わせたら修理できそうなのでほっとしました。ヘッドバンド交換だけですから、そんなに高くはないんじゃないかと期待。1本聴くごとに外したりかぶったりしていたからかなあ。

 マス工房 model 428 が来て以来、これで聴くことも多いんですが、デッドのライヴ音源は真空管をかませて聴きたいんですよ。デジタルでしか出ていないこの音源を聴くために『ステレオ』編集部が作った真空管ハーモナイザーをかますと、ヴォーカルやガルシアのギターがそれは艷っぽくなる。ところが 428 は入力がペンタコンだけなので、ハーモナイザーの RCA 出力からつなぐケーブルがまだありません。

 それと Decibel は最近アップデートしたんですが、それからどうも今ひとつ音にキレがなくなった感じ。ハイレゾ音源もちゃんと認識しないようだし。というんで、手持ちの機材をあれこれ組み合わせて落ちついたのがこのセット。

OPUS+Mojo+Phantasy


 OPUS#1s からは Reqst の光ケーブルで Mojo につなぎ、Mojo と PHAntasy はラダーケーブル製ラダー三段のミニ・ミニ・ケーブル。

 Listen Pro は Focal のヘッドフォンを何か使ってみたくて買ってみたもの。現行製品では一番新しくて、ダントツで安い。これはすばらしいです。箱から出したてで、100時間鳴らした DT1770 Pro とタメを張ります。DT1770 よりもすっきりした音で、この辺はドイツとフランスの違いですかね。Listen Pro に比べると DT1770 の方が粘りがあり、音場が丸い。Listen Pro の音場は広がりと奥行があって、円盤型。分解能も高いですが、細かいところまでムキになって出すのではなくて、各々の音量と位置をさりげなく、適確に示します。入っている音は全部出ているけれど、本来のバランスは崩れず、音楽に没入できます。ギアとして存在を主張するのではなくて、音楽を聴くツールに徹してます。モニターというのはそういうものでしょう。

 DT1770 と比べてどちらがベターというよりは音の性格の差でしょう。オールマンなら DT1770 で、デッドなら Listen Pro というと近いか。フェアポートなら DT1770 で、スティーライなら Listen Pro かな。まだ、試してないけど。ジャズならハードパッブは DT1770 で、ECM は断然 Listen Pro。ルーツ・ミュージックだと、ソロの歌や演奏は DT1770 の方が案外合うかもしれませんね。でもハイランド・パイプのピブロックのような倍音系は Listen Pro で聴きたい。

 先ほどの組合せに戻ると、ヘッドフォンやイヤフォンのテストに使っているアウラの〈アヴェ・マリア〉を、きちんと聴かせてくれました。ベスト盤の《ルミナーレ》にも入っているこの曲は、ソプラノ3人がめいっぱいハイトーンで唄っていて、たいていのヘッドフォン、イヤフォンでは、少なくとも2ヶ所でビビります。スピーカーではまったく問題ないんですが、ソプラノが上の方で2人、3人と重なるところは、小さな振動板にはきついんでしょう。

ルミナーレ
アウラ
toera classics
2017-06-25



 いわゆる「カッシーニのアヴェ・マリア」と呼ばれるこの曲は、実際はソ連の作曲家 Vladimir Vavilov の作品で、ただ「アヴェ・マリア」を繰り返すだけですけど、アウラのこのヴァージョンでは歌詞を加えていて、そこがまた良い。オーディオ・テスト用だけではなく、演唱としてすばらしいので、ヘッドフォン・マニアの方は持っていて損は無い曲でしょう。

 というわけで、今日の本番ではこれを使って PHAntasy の代わりに真空管ハーモナイザーを経由して店のPAにつないでみようと思ってます。問題は音量調節なんですが、それは現場で担当の方と相談。(ゆ)

 今回はウィルソンおやじが張り切って、いろいろやったり売ったりしようというので、てんてこまいしてます。

 Jaben Online 日本語サイトの作成も手伝っているし、『ヘッドフォンブック2013』の英訳も同時進行で、こんなに忙しい思いをしているのは、もう何年もありません。

 とゆーことで、Jaben 関係のお知らせとか情報とかは Facebook に移します。Jaben 関連以外のハードウェア、たとえば昨年秋に予約を入れて以来、心待ちにしている CEntrance の HiFi-M8 とかについてはこちらに書きますが、GoVibe、Hippo、Phonak その他、Jaben が扱うモノについては Facebook の Jaben Japan ページをご覧ください。今回のヘッドフォン祭で売ったり展示したりするモノについてもそちらに書きます。

 それにしても KEF がヘッドフォン/イヤフォンを出したのには驚いた。(ゆ)

 なかば必要があって中古で入手した AK100 ですが、すっかりメインの再生装置になってしまいました。外出中はもちろん、家のなかでも大活躍で、MacBook Pro で音楽を聴く時間は激減してます。

 とりわけ、これも先日のポタ研でサンプルを展示した Hippo ProOne との相性が抜群で、これで音楽を聴くのが楽しくてしかたがありません。本が読めん。ProOne については、また別の機会に。しかし、これでシングルBAの奥深い世界にはまりそうです。

 AK100 は小さくて、軽くて、音が良い。ファイルを入れるのも、いちいち iTunes を立ち上げる必要がなく、Finder ですんでしまうのは楽。32GB と 8GB の micro SD カードを刺しているので、現在 72GB で、iPod touch より多い。

 もちろん不満もあって、その最大のものはファームウエア 1.30 現在ギャップレス再生がサポートされていないことです。

 で、あれこれ思案して思いついたのが、CD1枚を一つのファイルにリッピングすること。こうすると AK100 は全体を1曲とみなして再生します。AK100 は cue シートをサポートしていません。これを逆手に利用するわけ。

 トラックの別が消えてしまうので、あの曲だけ聴きたいというのは難しくなりますが、ギャップレスで聴きたいアルバムというのは、基本的には全部通して聴きたいので、それほど大きなマイナスではない。とにかくギャップレス再生を優先したい場合には使えるでしょう。

 ぼくは XLD を使います。リッピングの際に、メイン・ウィンドウの左上、デフォルトですと「すべてのトラックのプリギャップを含める」となっているプルダウン・メニューをクリックします。一番下の「一つのファイル(+cue)として保存」を選択。

 ここでリッピングしたファイルを置く場所をいつものところにして後でコピーもできますし、AK100 をつないでおいて、その中に直接入れることもできます。

 すでにトラック別にリッピングしてある場合。XLD のファイル・メニューから「フォルダをディスクとして開く……」を選択します。ダイアログで目的のCDのサウンド・ファイルが入っているフォルダを指定すると、メイン・ウィンドウにCDが表示されます。そこで左上のプルダウン・メニューで「一つのファイル(+cue)として保存」を選択、環境設定で出力先を AK100 に指定し、「変換する」をクリックします。

 この変換は逆にも使えます。すでに cue シート + 一個のファイルでリッピングしてあるものをトラック別に AK100 に入れられます。

 ご参考になればさいわい。(ゆ)



iriver Astell&Kern 192kHz/24bit対応Hi-Fiプレーヤー AK100 32GB ソリッドブラック AK100-32GB-BLK
iriver Astell&Kern 192kHz/24bit対応Hi-Fiプレーヤー AK100 32GB ソリッドブラック AK100-32GB-BLK

 問い合わせがあったので、ぼくが FiiO E5 を買ったやり方を書いておきます。

 買ったのはアメリカの Head-Direct。ニューヨークに事務所があるらしい通販専門店。中国系で独自の品揃えです。Yuin は兄弟会社か、独占代理店らしい。

1. トップ・ページの左のメーカー一覧で "Fiio" をクリック。
2. "E5" の "ADD TO MY CART"  をクリック。
3. "Select Your Location"「場所を選んでください」というウインドウが開くので、右側の "Outside of America" をクリック。
4. "My Cart" ページが出ます。この時点ではまだ下の "Ordered Prodcucts" の欄が "Empty.." になっていると思います。そこで、上の "Add to My Caft" 欄の右の方にある "Add to My Cart" をクリック。
5. "Ordered Products" のページになり、"Product" 欄に "Fiio E5 headphone amplifier" とあるのを確認します。下の方に PayPal のロゴが出ているのでそれをクリック。
6. PayPal で決済。

 PayPal のアカウントがなければ、作ってください。Head-Direct の支払いは PayPal 経由だけです。PayPal は今は日本語で表示されますので、後はそちらの指示にしたがってください。PayPal そのものの決済はぼくはクレジット・カードでやってます。他にもあるかと思います。

 Head-Direct の価格は商品そのものが 23USD に送料が 10USD かかって、計 33USD です。今現在のレートでは3,000円弱です。

 Head-Direct はこれまで数回買っていますが、いつも迅速な対応です。商品の発送元は上海だったかな。発送通知後1週間前後で来ます。なお、もうすぐ旧正月セールをやるよ、と Head-Fi で言ってました。まあ、E5 はもう十分安いですが。

 FiiO 本家のサイトには他の販売店もあがってます。値段だけとるとニュージーランドの店が最安値のようです。ここも決済は PayPal 経由です。韓国とタイの店のサイトは読めないのでわかりません。不悪。


 Weston の MySpace ブログで11/28発売と出て、本社サイトにもページができているので、まあ、まちがいはないんでしょうが、買う気は完全消滅。American Techpusher に入れていた予約もずいぶん昔にキャンセルしました。

 昨年は数ヶ月前から発売予告しながら寸前で「パッケージのトラブル」で延期となり、それから延々一年半。さすがに懲りたんでしょうねえ。

 密閉型イヤフォンは百花繚乱ですが、ぼくはもう EarPhone M + Comply イヤチップで決定。今はこれ以上浮気をする気もなし。GoVibe Magnum との組合せで幸せ。Magnum のウリであるベース調節をいっぱいに入れると、無敵ではないかな、と思ってしまいます。聞きくらべてるわけじゃないですが。

 オープン・タイプは Yuin G2 を首を長くして待っているところです。散歩にはやはり密閉型はこわいので。(ゆ)

 アメリカ、カナダの住所からしか注文できない本家サイトの通販でしか買えない KSC35 ですが、ロスをベースにする Mac 関係の通販会社 Vintage Computer が先日 Shure のイヤフォンの扱いを始めたので、これも扱ってもらえないか、と問い合わせてみました。すると、購入代行という形で扱う、という返事が来ました。注文はこちら

 なんですが、そうなるとやはり相当高くなってしまうわけです。この価格に送料と税金が加わると1万円を超えるわけで、そこまで出す価値があるか、となると考えこんでしまいます。

 確かに後継機種にはない独自の魅力があるのは確かで、それを自ら認めているからこそ、通販のみという形でもディスコンにしていない。それにその後の新製品を見ていると、どうやら KOSS はクリップ・タイプを 75 で打ち止めにする気配ですし、するとますます 35 の価値は高まります。

 それに自分でむこうまで買いにいくことを考えれば、そりゃ安い。誰か知りあいや友人に頼んで買って送ってもらうにしても、手間賃とか謝礼とか考えれば、やはりこのくらいにはなる、とも思えます。KOSS の代理店の TEAC が正規に輸入してくれればいいわけですが、検討します、の答え以後は梨のつぶてですし、また KOSS の方で許可しようとしていないことも考えられます。

 一方で Yuin からクリップ・タイプが出て、こちらは上位機種の G1 が送料込みで15,000円ですし、これから出る G2 は、どうやら 5,000円前後というところ。Yuin のものなら音質だけとればおそらく 35 をも凌ぐでしょう。G1 はアンプ必須なので G2 と比べるとしても、G2 の音がよほど不満で、やはりどうしても 35 でなければダメだ、となるかどうか。

 とまあ、せっかく扱いを始めてくれた Vintage Computer には悪いんですが、ここは G2 のリリース待ちかな、と思ってるところです。(ゆ)

 昨年の秋から注文していた
KOSS KSC75 用のスペアのイヤパッドが到着。
KOSS では「イヤクッション」と呼ぶらしい。

 最初に輸入元のティアックに問い合わせたのが昨年の9月。
取り寄せは可能だが少々時間がかかるとの返事。
その後、もう少し待ってくれという連絡が10月に一度きました。
それっきり音沙汰がなくなり、
こちらも BauXar EarPhone M が出たりして、忘れていました。
Go-Vibe Petite で K701 を見直したのをきっかけに、
今月になって、そういえばと思いだし、問い合わせました。
向こうもどうやら忘れていた気配。
それでも今回は連絡して10日ほどで入荷の通知。
送金してすぐにモノが送られてきました。

 ちなみに価格は1個税込179円。ペアで358円。
本家サイトでの売価がペアで5ドルだから、良心的な価格でしょう。
本家で50ドルの PORTA PRO とは大違い(爆)。
送料630円。
銀行振込か代引。代引の場合はこれに手数料が加わります。

 問合せ先はティアック修理センター
TASCAM サイトの問合せページからも連絡可能。
というより、最初に連絡したのはこちら。

 これで銘機 KSC35 が復活だ。(ゆ)

 買ってしまってからやばかったかなと思いましたが、後の祭り。これは禁断の世界です。一度入ったら抜けられません。そしてこの向こうにはオソロシイ世界が広がっています。

 思えば AKG K701 を衝動買いしたのが運の尽きだったのでありましょう。通常のオーディオはタイムドメインですっかり留めを刺されたのでありますが、幸いというか、不幸にもというか、タイムドメインはヘッドフォンは今のところ出す気がないようです(試作品はできてるらしい)。なので、まだオーディオとしての楽しみ、「音が変わる」というあの楽しみがヘッドフォンの世界では味わえます。メーカー、方式が変われば、同じ音楽も違って聞こえます。iPod 景気でヘッドフォンも活気が出てきていますし、それにつれてヘッドフォン自体のステイタスも上がってきたようであります。

 ぼくが現在使っているのは安い方から、KOSS KSC75同35iGradoWestone Labs UM2、AKG K701。実は KSC35 は 75 が出て一度引退していましたが、表題にあるヘッドフォン・アンプを買ったことでみごとに復活してしまいました。おかげで 75 が引退気味。

 気に入った録音をくり返し聞く際に、これらをとっかえひっかえします。その他にも電車やバスに乗る外出の際は UM2、散歩や家事の際は iGrado、就寝の音楽は KSC35 というメインの使用法があります。

 さて「音の違い」を求めて、情報をあさっているうちに見つけたのがここ

 まず目についたのが iPod 用にポータブルのヘッドフォン・アンプを使っているという話。これが安い。定価75ドル。送料入れても1万円でおつりが来ます。PayPal で注文したら、10日でやってきました。それがカナダのメーカー(と言ってもほとんど個人でやっているらしい)の Go-Vibe V5 です。

 オーディオ・テクニカのミニミニの接続ケーブル、ナショナルの 9V 6P 電池を用意し、聞いてみると……。

 上にあげた中で一番「音が変わった」のは、KSC75 と K701 でした。オーディオの世界で最高の賛辞である「別世界」という言葉はこういうことをさすのか。

 75 がこれだけ変わるのなら、35 はどうだ、と試してみたら、復活してしまったという次第。

 UM2 で違いが目立たないのはもともとの能力が高いからでしょうが、他の二つと比べて目立たないというだけで、音楽は格段に魅力的になります。聞くのが楽しくなります。

 iGrado はと言えば、使いはじめたばかりで、まだ音に耳も機械もなじんでいないからでしょう。おいおい楽しみです。

 K701 は、これがわたしの本来の能力なんだよ、と言われているようであります。質の高いヘッドフォンの能力を十分に引き出すには、専用のアンプが必要というのが納得されました。

 こうなると iPod に入れるファイルのフォーマットも問題になってきます。あくまで音質を最優先にするなら、AIFF ないし WAV で入れるところですが、そんなことをすればHDがいくらあっても足りません。入れる時はとにかく Apple Lossless で入れた上で、そこまでの必要なしと判断した録音は AAC 320kbps に落とすことにしました。フィールド録音やSPからの復刻ははじめから AAC320 です。もちろん、CDの縁はゼブラ Popstar の蛍光緑で塗ります。

 こうしてすっかりオーディオ・マニアにもどってしまったわけですが、その Go-Vibe が国内で正式に輸入・販売されることになったそうです。

 個人的にはすでに直接買ってしまっていましたが、こうしてルートができるのはありがたいことです。購入の時のメーカーとのやり取りで、もう少し薄くならないかとたずねたら、価格が高くなってしまうが検討してみるとのことでした。薄い筐体は高いのだそうです。もし実現したら多分また扱われるのではないでしょうか。

 この上はこのアンプ用として推奨されている電池と充電機、iPod との接続用のミニミニ・ケーブルも扱っていただきたいところです。電池は 6P の 9V ですが、これには実質電圧が 8.4V のものと 9.6V のものがあり、国産ではナショナルと東芝の 8.4V のものしかありません。アメリカから通販で買うことは可能ですが、やはり割高になりますし、充電器の不安もあります。

 アイルランドやスコットランドものは録音の良いものが多いですから、これで全部もう一度聞直したくなってきます。Linn のバーンズ全曲集などはちょっと聞いてみただけでも、いつまでもひたっていたくなりました。最近のではアイリス・ケネディやルナサ、それにケルクリで来るティム・オブライエンのものなども魅力です。

 さて、そうなると、ポータブルでこれなら、据置型のヘッドフォン・アンプはどうだろうと気になるわけです。そして、今聞いているのとはまったく方式の違う STAX で、ドロレス・ケーンやキャサリン=アン・マクフィーを聞いてみたくなってきました。(ゆ)


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