リアム・オ・フリンが昨日、3月14日、享年72歳で亡くなりました。昨年来、病床にあったそうです。
アイルランド共和国大統領も追悼の声明を発表しています。まさに人間国宝と呼んでいい存在でした。アイルランド・イリン・パイプ協会 Na Piobairi Uilleann の創設者の一人で、名誉会長でもありました。
何と言っていいのか、ちょっと言葉がみつかりません。プランクシティのメンバー、イリン・パイプ復興の立役者の一人、パイプ・オルガンやフル・オーケストラとの共演などのイノヴェーター、と書いてみても、オ・フリンの存在の大きさは摑みきれない気がします。
たとえば、プランクシティのリーダーがクリスティ・ムーアであることは動きませんが、アイリッシュ・ミュージックの、伝統音楽のバンドとしての個性を生んでいたのは、オ・フリンだったと言っていいと思います。そして、おそらくはそれ以上に、バンドをまとめて、しっかりと大地に足を踏みしめさせていたのは、オ・フリンだったのではないか、とも思います。つまりバンドの要はまちがいなくオ・フリンでした。
一度だけ、インタヴューしたことがあります。その時の、端正で、飾らない威厳に満ち、落ちついた声と口調は、他のアイリッシュのミュージシャンたちとは一枚次元の違うものでした。立板に水というわけではありませんが、含蓄に富んだ言葉を滑らかに話してくれました。
いずれこの日が来ることはわかっていたわけですが、いざ、来てみると、それによって生じた穴はどう埋めようもありません。一つの時代が終ったことは確かです。
存在の大きさに比べて、録音が少なすぎるのは、アイリッシュのミュージシャンの常ですが、残された録音はどれも深く傾聴するに値します。折りしも、1979年、再編時のプランクシティのライヴ音源も公式にリリースされます。
オ・フリンの足跡について、自分なりにまとめてずにはいられない気分でもありますが、それはまだ先のことになりましょう。まずは、冥福を祈るばかりです。合掌。(ゆ)