クラン・コラ・ブログ(アイルランド音楽の森)

 アイリッシュ・ミュージックなどのケルトをはじめ、世界各地のルーツ音楽を愉しむブログです。そうした音楽の国内の音楽家も含みます。加えて主宰者の趣味のグレイトフル・デッド。サイエンス・フィクション、幻想文学などの話もあります。情報やメモ、ゴシップ、ただのおしゃべりなどもあります。リンク・フリーです。

タグ:ウェールズ

05月31日・火
 GrimDark Magazine のオリジナル・アンソロジー The King Must Fallがついに完成して、電子版が配布された。Kickstarter で支援したのが去年の7月だから、ほとんど1年かかった。全部で19篇。結構長いものもいくつかあるらしい。

 巻頭に言語についての断り書きがある。著者の言語、オーストラリア英語、アメリカ英語、カナダ英語、UK英語をそのままにしてある。スペルや語彙だけではない、語法なども少しずつ違うわけだ。まだここにはインド英語や南アフリカ英語、シンガポール、フィリピン、ジャマイカ英語は無い。すでに南アフリカ、シンガポールやフィリピン、カリブ海地域出身の作家は出てきているが。

 早速、冒頭の1篇 Devin Madson, What You Wish For を読む。なるほど巻頭を飾るにふさわしい力作。王は倒さねばならない。しかし、倒したその後に来るものは、必ずしも来ると信じたものではない。著者はオーストラリアのメルボルン在住。2013年に自己出版で始め、これまでに三部作1本、その次のシリーズが3冊あり、4冊目が来年春予定。ノヴェラがオーレリアスのベスト・ノヴェラを獲っている。これなら他も読んでみよう。オーストラリアは気になっている。


 Folk Radio UK ニュースレターからのビデオ視聴続き。残りを片付ける。

Silver Dagger | Fellow Pynins
 すばらしい。これもオールドタイム・ベースで、独自の音楽を作っている。オレゴンのデュオ。

 

The Magpie Arc - Greenswell
 こりゃあ、すばらしい。さすが。アルバムはまだか。
 


"Hand in Hand" - Ian Siegal featuring Shemekia Copeland
 いいねえ。こういうの。ブルーズですね。
 

The Slocan Ramblers /// Harefoot's Retreat
 新しいブルーグラス、というところか。つまりパンチ・ブラザーズ以降の。いや、全然悪くない。いいですね。
 

The Sea Wrote It - Ruby Colley
 ヴァイオリン、ウードとダブル・ベースによる伝統ベースのオリジナル。これもちょと面白い。楽器の組合せもいいし、曲も聴いているうちにだんだん良くなる。
 

Josh Geffin - Hold On To The Light
 ウェールズのシンガー・ソング・ライター。だが、マーティン・ジョゼフよりも伝統寄り。繊細だが芯が通り、柔かいが粘りがある。面白い。
 

Noori & His Dorpa Band — Saagama
 スーダンの紅海沿岸のベジャという地域と住民の音楽だそうだ。中心は大きな装飾のついたエレクトリック・ギターのような音を出す楽器で、これにサックス、ベース、普通のギター、パーカッションが加わる。雰囲気はティナリウェンあたりを思わせるが、もっと明るい。ミュージシャンたちは中心のギタリストを除いて、渋い顔をしているけれど。このベジャの人びとがスーダン革命の中核を担い、この音楽がそのサウンドトラックだそうだ。基本的には踊るための音楽だと思う。これも少なくともアルバム1枚ぐらいは聴かないとわからない。まあ、聴いてもいいとは思わせる。動画ではバンドを見下ろしている神か古代の王の立像がいい感じ。



%本日のグレイトフル・デッド
 05月31日には1968年から1992年まで4本のショウをしている。公式リリースは無し。

1. 1968 Carousel Ballroom, San Francisco, CA
 金曜日。このヴェニュー3日連続のランの中日。チャーリー・マッセルホワイト、ペトリス共演。セット・リスト不明。

2. 1969 McArthur Court, University of Oregon, Eugene, OR
 土曜日。2.50ドル。開演8時。Palace Meat Market 前座。セット・リストはテープによるもので、第二部はひどく短いので、おそらく途中で切れている。ただしアンコールは入っている。それでもトータル2時間半超。

3. 1980 Metropolitan Sports Center, Bloomington, MN
 土曜日。すばらしいショウの由。セット・リストを見るだけで興奮してくる。とりわけ第二部後半。
 SetList.com のコメントにあるように、デッドの何がそんなに魅力的なのか、わからない。しかし、たくさんの人びとがテープを1本聴いてこのバンドに捕えられ、ショウを1回見て人生が変わっている。バンドが解散してから何年もたっても、かつてのファンの熱気は衰えないし、新たなファンを生んでいる。実際、あたしがハマるのもバンド解散から17年経ってからだ。いくら聴いても飽きないし、新たな発見がある。不思議としか言いようがないのだが、とにかく、グレイトフル・デッドの音楽は20世紀アメリカが生んだ最高の音楽である、マイルス・デイヴィスもデューク・エリントンもフランク・ザッパもジョニ・ミッチェルもレナード・バーンスタインもジョージ・コーハンもプレスリーもディランも勘定に入れて、なおかつ最高の音楽であることは確かだ。

4. 1992 Sam Boyd Silver Bowl, Las Vegas, NV
 日曜日。このヴェニュー3日連続のランの楽日。23.50ドル。開演2時。第二部クローザーにかけて〈Spoonful> The Other One> Morning Dew〉にスティーヴ・ミラーが参加。DeadBase XI の Rob Winkler のレポートによればミラーはアンコールにも出ている。
 実に良いショウの由。ビデオもあるそうだ。3日間の中で最も暑い日で、雷雲のかけらも無く、スタジアムの周囲にスプリンクラーが置かれたか、会場のスタッフが時々ホースで観客の上に水を撒いた。ショウも3日間で最もホット。ミラーのギターも良いそうな。(ゆ)

 ようやくサイトが公開になりましたので、お知らせします。

 来週03/21(木)にNHK-FM で「今日は1日ケルト音楽三昧」が放送されます。正午過ぎ、12時15分から夜9時15分までの生放送、途中、夜の7時前後にニュースなどで40分の中断が入ります。公式サイトはこちら。リクエストもこちらのサイトからどうぞ。

 これの解説にあたしが駆り出されました。トシバウロンと二人で8時間半を担当します。

 ラジオには何回か出させていただいてもいますし、ライヴのイベントもやってはいますが、8時間半の生放送は初めてで、どういうことになるのか、まるで見当もつきませんが、まあ、なんとかなるだろう、と亀の甲より年の功というやつで、楽観してます。

 リクエストが優先されるようなので、皆さん、濃いやつをお願いします。リクエストとなるとエンヤなんかも来るでしょうし、ラスティックも多いんじゃないかと思いますが、正直、そういうのはもう避けたい。そういう向きは、他にいくらでも聴けるチャンスはあるわけですから、時間に余裕のあるこういうときには、ふだん、かけられないようなものをかけてみたいもんであります。リクエストはあたしにではなく、あくまでも上記公式サイトからお願いします。

 それと、今回は「ケルト音楽」ということで、アイリッシュに限りません。スコットランド、ウェールズ、ブルターニュはもちろん、コーンウォール、ノーサンバーランド、マン島などのケルトの中でもマイナーなところや、スペイン北部、北米、オーストラリアなどまで手を伸ばしたいものです。もちろん、わが国で今盛り上がっている状況も紹介したいですね。

 トシさんがいるということもあって、ゲームやアニメ方面の話や楽曲にも触れる予定です。こないだ『フェアリー・テイル』アニメ版のテーマを聞いて、あんまりマンマなんでびっくりしました。

 あたしなんてはたして8時間も保つのか、不安もありますが、トシさんがいるんで、まあ何とかなるでしょう。しかし、前日ははにわオールスターズのライヴ。ほんとにどうなるんでしょうねえ。(ゆ)

 ワーナーからこういうタイトルのシリーズが出るそうです。
監修は松山晋也さん。

 ケルトってのがアイリッシュやあるいはエンヤみたいなものに限られるわけではない、というのには大賛成で、ぼくは「ケルト」をヨーロッパのみならず、北米、オセアニア、時にはアジアも含めて全部ひっくるめたものを指すことばとして使っているつもりです。

 松山さんから電話をもらってこういうのが出ることを知ったわけですが、ラインナップを見て、歓びました。

 インクレディブル・ストリング・バンドが入っているのは松山さんの趣味かなとも思いますが、ぼくも嫌いではないです。どちらかというと4月発売分の《THE HANGMAN'S BEAUTIFUL DAUGHTER》が好み。どこがケルトかって? 中心メンバーの一人ロビン・ウィリアムスンはスコットランド人で、ずっと後になりますがクラルサッハ(スコティッシュ・ハープ)でばりばり伝統曲アルバムを出してます。凄く良いです。ジョン・レンボーンとの共作もありました。最近は ECM からソロを出してますね。もう一人のクライヴ・パーマーはイングランド人だけど、ソロで出したバンジョー・アルバムは結構良かったです。

 ECM といえば、北欧ばかりと思ってたら、ジューン・テイバーなんかも出してて、油断できません。というのは余談。

 とまれ Celtas Cortos(スペインだから「ケルタス・コルトス」じゃないですかね) とか、Great Big Sea とか、Eleanor Shanley が国内盤で出るのは嬉しい。Luka Bloom もいいですねえ。これが売れれば、ウェールズの Martyn Joseph なんかもどうでしょう。

 Celtas Cortos は楽しいバンドで、スカンディナヴィアのかつての Filarforket や、今だったら Alamaailman Vasarat のような立ち位置といったらわかりやすいかな。こういう大真面目に不真面目をやっているバンドはブリテン諸島ではなかなか無くて、やっぱり大陸の産物なんですかね。ケルトとジャズの融合として一級です。

 Great Big Sea はカナダ東部のバンドで、他にも Rawling Cross とか、このあたりはかなり面白いところです。豪快なケルティック・ロックですが、アメリカにはまず無いデリカシーがちゃんとあるところがカナダ。それになぜかこういうバンドはアメリカにはない。カナダとかオーストラリアとか、英国植民地であり続けた地域にあるのも不思議でもあり、面白くもあり。もっともアメリカでも Seven Nations は結構好き。

 Eleanor Shanley はデ・ダナン出身の若手シンガーの中の出世頭でしょう。1990年のデ・ダナンの A JACKET OF BATTERIES で初めて聴いたのは鮮烈でした。そしてこのファースト・ソロはシンガーとしての評価を確立したもの。久しぶりに公式サイトに行ってみたら、あらら、たくさん出てる。新作が出たばかりです。

 デ・ダナン出身といえばモーラ・オコンネルもそうですが、彼女はアイルランドのシンガーのなかでアメリカと波長が一番良く合う声とスタイルをもっていて、デ・ダナンの THE STAR SPANGLED MOLLY の成功もそこに負うところが大きい。ソロになってからの彼女はアメリカとアイルランドの中間のどこかでうたってるんですが、どちらでもあり、どちらでもない、でも中途半端ではない、不思議な世界。HELPLESS HEART はベラ・フレックがプロデュースして彼女のアメリカ的要素をうまく引き出した出世作。そこでジェリィ・ダグラスに出逢ってできた WANDERING HOME は彼女の最高傑作と思います。

 Chris Rea の《シロツメクサ日記》は出た当時『包』で松山さんが紹介していたので聴いてみたら結構気に入りました。うたも渋いし、ギターもうまい。その後も何枚か買っていたはず。また聴きなおすかな。それにはアナログ・プレーヤーを直さにゃならんけど。

 ブルターニュの Gwendal が国内盤で出ようとはまるで思いませんでした。ブルターニュのケルト音楽がジャズをとりいれる先駆けのバンド。アラン・スティヴェールは幅の広い人ですが、ジャズはなぜか入っていない。かれは徹頭徹尾ロックの人。Gwendal はジャズで伝統音楽を解釈することを始めて、スティヴェールに負けない影響を後続に与えてます。

 ムーヴィング・ハーツのファーストが国内盤で出るのは二度目かな。クリスティ・ムーアは国内盤は初めて。ぼくが頼まれたのはこれで、久しく聴いていないので、聴きなおさないと。昨年末にふと思いたって、クリスティの持っていなかった近作を数枚買っていたのはよいタイミングでした。ここのところ調子がいいですね。老いてますます盛ん、というより、みんな、老いるほどに盛ん。ああいう姿を見ると、元気が出ます。

 ということで、3月、4月と10枚ずつ、20枚出ます。1枚1,300円と安いし、どれも面白いですから、皆さん買いましょう。

 さあて、クリスティの録音を久しぶりに全部聴き直しますか。といって、ファーストは持っていないけど。(爆)(ゆ)

 「百人町音楽夜噺」無事、終了しました。ご来場くださった方々、ありがとうございました。

 上野洋子さんが実に要領よくベーシックかつ鋭い話をしてくださったので、大いに助けられました。やはり、実作者は視点が違うので、音楽が立体的に見えてきます。

 選曲は後でお話しを聞いた方々から、一応面白いと言っていただけたので、まず及第点でしょうか。

 選曲も含め、詳しい内容は後日、公式サイトに載ります。音源もなるべく入手しやすいものを選んだつもりです。

 また来年ぐらいに何かできるかもしれません。こんなことをやってくれというリクエストは、公式サイトでも、ここでもかまいませんので、ご遠慮なくお寄せください。

 スコットランドとか、北欧とか、地域別もあるんですが、昨日もちょっと話題になっていた「倍音」とか、あるいは「リード楽器」とか、さらには「モード(旋法)」といった切口でやってみるのも面白そうです。(ゆ)

 タムボリンのリストにもありますが、ニック・ジョーンズのライヴ録音が10/09にトピック・レコードからリリースされます。《GAME, SET, MATCH》というタイトルで、1970年代末のライヴの録音の由。

 ニック・ジョーンズのライヴ録音は、夫人が呼びかけて集めたプライヴェート録音から作ったものが以前出ています。今回はトピックから、いわば公式リリースなので、音質や演奏も望みうる最高のものと期待できます。

 ちなみにニック・ジョーンズは1970年代、ブリテンのフォーク・リヴァイヴァルの一角を担った名シンガー&ギタリスト。人懐こさがそのまま形になったような、ほのかな明るさを感じさせる暖かい声の持ち主。ギタリストとしては、オープン・チューニングの弦に、右手首を回転させて中指ないし薬指を叩きつける独特の奏法で、ビートを強調したバラッド演奏を生みだしました。スタジオ録音としては最新のものである《PENGUIN EGGS》 (1980) にその完成形が聞けます。これもトピックから今はCDとして出ています。

 余談ですがこのアルバムの冒頭の曲〈Canad-ee-i-o〉は、後にボブ・ディランがほとんどそのままカヴァーしました。

 1982年に交通事故で脳に損傷を負い、奇跡的に一命はとりとめましたが、音楽家として公の演奏は以来していません。
 公式サイトはこちら

 悲劇的な形で音楽家生命を絶たれたこともありますが、ニック・ジョーンズと聞くだけで血が騒ぐのは、かれの残した録音のすばらしさの故でもあります。数は少ないながら、どれも珠玉と呼んで良いものばかり。

 また、あまり前面には出しませんがフィドルの名手でもあり、例えばショウ・オヴ・ハンズのフィル・ビアのようなイングランドのフィドラーに与えた影響は大きいものがあると、ビア自身が言っています。

 録音としてすぐ浮かぶものにセカンド・アルバムのバラッド〈Edward〉や3作目《NOAH'S ARK TRAP》の〈Jackie Tar〉がフィドル伴奏ですが、手に入りやすいものとしてはシャーリィ・コリンズ&アルビオン・カントリー・バンド《NO ROSES》があります。この中の〈The murder of Maria Marten〉の後半のフィドルとコーラスがニック・ジョーンズです。

 ニック・ジョーンズはまたメアリ・ブラックに大きな影響を与えたことでも知られます。メアリの出世作〈Annachie Gordon〉はやはり《NOAH'S ARK TRAP》収録のヴァージョンのカヴァーです。

 編集部偏愛のイングランド最高のデュオ、ショウ・オヴ・ハンズの10月のイングランド・ツアーに、こちらも偏愛のウェールズのシンガー・ソング・ライター、マーティン・ジョセフが「前座」として参加することになったそうです。

 この3人はずいぶん前から親友同士で、以前から一緒にツアーすることを考えていたそうですが、この秋、マーティンがソロで回ることにいささかくたびれて、ショウ・オヴ・ハンズのツアーの「前座」をやってみるのはどうかと提案して、ショウ・オヴ・ハンズも喜んだ由。

 うーん、このステージは観たいなあ。ひょっとして YouTube あたりにビデオとかあがるかもしれませんが、生を見たい。

 ショウ・オヴ・ハンズとマーティン・ジョセフについてはそれぞれのサイトをどうぞ。録音も聞けますし、ライヴ・ビデオも見られます。ショウ・オヴ・ハンズの最新作WITNESSは、アフロ・ケルト・サウンド・システムのサイモン・エマースンのプロデュースが成功した傑作。マーティン・ジョセフの最新のライヴDVDもすばらしいです。

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