クラン・コラ・ブログ(アイルランド音楽の森)

 アイリッシュ・ミュージックなどのケルトをはじめ、世界各地のルーツ音楽を愉しむブログです。そうした音楽の国内の音楽家も含みます。加えて主宰者の趣味のグレイトフル・デッド。サイエンス・フィクション、幻想文学などの話もあります。情報やメモ、ゴシップ、ただのおしゃべりなどもあります。リンク・フリーです。

タグ:オーストラリア

6月16日・水

 Grimdark Magazine の オリジナル・アンソロジー The King Must Fall を Kickstarter でプレッジ。Anthony Ryan がノヴェラで参加しているので買わないわけにはいかない。Kameron Hurley や Anna Smith Spark もいるし、エイドリアン・チャイコフスキーもいるしで、かなり美味しそうだ。

 この雑誌はイギリスだと思っていたら、オーストラリアだった。

 Kickstarter の出版も増えたなあ。翻訳出版もできるだろうか。


 Cookie Marenco の Cookie's Corner #90 How DID we record during the pandemic? は面白い。仲間の録音エンジニアたちとパンデミック中の録音について話す中で、皆さん防音完備のスタジオではなく、自宅など臨時の環境で録音せざるをえなくなり、当然、色々と外界の音が入ってくる。クーキーはそういうのに慣れていて、むしろ自然発生的なそういう音楽がスタジオ環境でのものよりずっとすばらしいことも体験として知っている。ところが他の、いわば完璧主義者のはずのエンジニアたちも、最高の演奏を録っている最中にどこかでケータイが鳴るというのが、実はそれほど悪いことではない、むしろその方が音楽の良さが引き立つこともあるとわかったと言う。これからはもっと「ライヴ」な環境で録りたい、録るつもりだ、と口をそろえる。これで録音された音楽に情熱がもどってくるかもしれない、というクーキーの期待は共有できる。


 レコード屋に行く、ということがほとんどなくなってしまったのは、諸事情のなせるわざとはいえ、やはり淋しいことではありました。何かおもしろそうなものはないかなー、とふらりと入り、ジャケットとか、入っている曲に惹かれて、何の気なしに買ってみたら大当り、そこから新しい世界が開ける、という体験は、ネット上ではまだ再現できていません。

 しばらく前からぼくがレコード屋に行くのは、仕事の上で緊急に必要になって駆け込むことがほとんど。それも定番とか大メジャーからのリリースのような類を求めてのことでした。つまり、このコーナーの存在を知るまでは、です。

 近年、わが国の若い演奏家たちがアイリッシュやケルトなどヨーロッパのルーツ・ミュージックを積極的にとりあげ、見事な成果を上げていることはそれなりに知られていると思いますが、かれらがリリースしてきたCDが一堂にまとめられたのは初めてでしょう。しかも、このコーナーはなんとかフェアやシーズン限定ではないそうです。こうして見るとなかなか壮観です。

2015-11タワレコ渋谷6F2 のコピー
 

 それだけでなく、このコーナーの開設を記念してのインストア・ライヴが今月1日日曜日にありました。それもこの日だけの特別編成のバンドです。

 メンバーはまずフィドルが3人。ジョンジョンフェスティバルのじょん、ソノラの沼下麻莉香、ティプシプーカの酒井絵美。加えてギター&ヴォーカルのティム・スカンラン、それにトシバウロン。

 彼女たちがやっているのはアイリッシュ・ベースですが、トリプル・フィドルというのはアイリッシュでは珍しい。一時のアルタンくらいでしょう。

 フィドルを重ねるのはノルウェイの伝統音楽やシェトランドのフィドラーズ・ビドで聴けますし、そういえば The Strings Sisters が女性ばかり6人のフィドラーを集めて大成功してました。さらに The Strings Sisters の主唱者カトリオナ・マクドナルドがリーダーの Blazin' Fiddle もありますね。

 という具合にフィドルを多数重ねるのは相当に面白いのですが、この3人の場合、ユニゾンではなく、微妙にハモるのです。伝統一本槍でなく、ベースにあるクラシックやアラブなど他の音楽の素養が良い方向に作用しているのでしょうが、こういうアンサンブルはあまり他で聴いた覚えがありません。カウンターメロディなども交えながら、クラシックのひたすら綺麗なハーモニーではなく、一方、アイルランドに時々聴かれるハーモニーまでいかないズレの面白さでもない。アレンジは「適当に」やったそうですが、この浮遊感たっぷりの、なんともよい具合の「中途半端」さはそれはそれは魅力的です。

 若い女性3人がならぶのも、ぱっと花が咲いたようで、あたりが明るくなっていました。

 この3人をはさんで左にティム、右にトシ。ティムはギター、ハーモニカ、それにフット・パーカッション。トシさんは最近よく使っている、ミュートのできるタンバリンとバゥロン。ティムは1曲、〈Two Sisters〉を披露しましたが、伝統メロディではあるものの、ふつうとは違うヴァージョンで、しかもテンポをミドルから後半アップに上げるという、こちらもちょっと変わった演奏が新鮮でした。フィドルも美味しくからんで、古いバラッドの解釈として出色でした。

 それ以外に演奏したのは、3人がそれぞれふだん活動しているバンドのレパートリィから1曲ずつ。ティプシプーカの〈北海道リール〉には、ティプシプーカのメンバーでこの曲の作曲者である高梨菖子さんがホィッスルで加わりました。高梨さんの作る曲はどれもたいへん面白いのですが、〈ソーラン・リール〉〈牡蠣〉〈帆立〉のメドレーであるこの〈北海道リール〉は傑作です。

 まったく予定外のアンコールも含め、40分ほどの演奏でしたが、これだけで終らせるのはもったいない組合せでありました。並べられた椅子は全部埋まり、立ち見もかなりいましたが、あの場に居合わせたのはラッキーと言えると思います。

 このコーナーにちなんだインストア・ライヴはこれからもあるそうで、とりあえず今月29日、na ba na(ナバナ) のライヴがあります。

 na ba na はフィドルの中藤有花、フルートの須貝知世、ハープの梅田千晶のトリオで、今月15日にデビュー録音《はじまりの花》がリリースされます。タワーレコード渋谷でこのCDを買うと、当日サインをもらえるそうです。この録音は伝統ベースながらメンバーのオリジナルを集めていて、聴くほどに味の出るスルメ盤です。これについてはまたあらためて。


 さらにその後には奈加靖子さんの新作《BEYOND》も控えていて、こちらも来年インストア・ライヴがあるそうです。これにはライナーを書いてしまったのであまり大きな声では言えませんが、傑作!であります。

 タワーレコード渋谷店のこのコーナーはこれからも充実させていくそうですから、関連CDのリンクも張ってはおきますが、行ける方はぜひタワーレコード渋谷店6階に行って買ってください。(ゆ)



Premiere
Sonora
ロイシンダフプロダクション
2015-06-07


Growing グロウイング
tipsipuca ティプシプーカ
ロイシンダフプロダクション
2015-07-19


歌とチューン
John John Festival
Tokyo Irish Company
2012-03-25


 

バゥロンのトシさんが、今年初めにオーストラリアで邂逅したミュージシャン Tim Scanlan を呼んでしまうそうな。ワンマンバンド、つまり一人で数人分の演奏を同時にしてしまう人の21世紀版のようですが、トシさんがおもしろいというのならまちがいなし。
オーストラリアはこれからいろいろな意味でおもしろいところになっていくと思いますが、その先触れでもありましょう。
YouTube にはいろいろ動画もあがっているようですが、あたしはあえて予習はせず、まったくの白紙でライヴに行くつもり。トシさんがオーストラリアで出逢った時の驚きを、ぼくも味わいたい。
昨年大晦日のジョンジョンフェスティバルとの共演で度肝をぬかれたハチャトゥリアン楽団も、まったくの白紙でライヴに臨んで大正解でしたしね。
そのためにも、初日に行くつもりです。
ライヴ・スケジュールなど、くわしくはこちら

 一応、スケジュールものせておきます。(ゆ)

04/05(金)高円寺 the Cluracan
opening act & guest  John John Festival
18:30 open / 19:30 start
前売2500円 / 当日3000円 (+1drink order)

04/07(日)京都 Irish Pub Field
opening act & guest NOUMAN
18:00 open / 19:00 start
前売2500円 / 当日3000円 (+1drink order)
 
04/08(月)神戸 須磨 bonnaroo cafe
guest  Yui Fujita (fiddle)
18:30 open/19:30 start
前売り2500円/当日3000円(+1drink order)

04/10(水)佐世保 波の上
19:00 open / 20:00 start
前売2000円 / 当日2500円 (要別途オーダー)

04/12(金)博多 in2
19:00 open / 20:00 start
2500円 (drink込み)
福岡市中央区舞鶴1丁目8-2  オベリスク天神2F
お店が小さいので、予約オススメします!!

04/13(土)六本木 新世界
Modern Irish Project 5周年記念ライブ ゲスト出演
18:00 open / 19:00 start
前売2300円 / 当日2800円 (要別途オーダー)

04/20(土)西荻窪 ClopClop
w/ JOHNSONS MOTORCAR
18:00 open / 19:00 start
前売2500円 / 当日3000円 (+1drink order)

04/21(日)渋谷 Sundaland cafe
18:00 open / 19:00 start
前売2500円 / 当日3000円 (+1drink order)

04/22(月)茨城 結城 Cafe la famille
18:00 open / 19:00 start
前売2500円 / 当日3000円 (+1drink order)


【全日程の予約先】tokyoirishcompany@gmail.com (本岡)
希望公演日、お名前、連絡先、枚数を明記の上、
上記メールアドレスまでご連絡ください。

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