30 Days Of Dead も今年で11年。来年はあるか。
 
 グレイトフル・デッドの公式サイト Dead.net において、毎年11月、1ヶ月間、毎日1本、原則として未発表のライヴ音源を 320kbps の MP3 ファイルで無料で公開する企画だ。公開に際して演奏の日時場所は伏せられ、正確に当てた者には抽選で毎日1本賞品が当たり、最後に正解者の中から豪華賞品が当たる。正解と当選者は翌日公表される。
 
 初めはそんなこと当てられっこないだろう、無茶苦茶だ、と思ったものだが、ちゃんと当選者がいる。ということはわかる人にはわかるわけだ。そして、デッドのライヴ音源を聴きすすむに連れ、各時期の特徴が呑みこめてくると、おおまかな見当はつくようになった。とはいえ、正確にいつと当てるには相当にテープを聴きこんでいる必要がある。

 30本は時期も場所もばらばらだが、公開された日を追って聴いたり、ショウの日付に沿って、下ったり上ったりして聴いていったり、トラックの長さ順または逆順で聴いたり、あるいはこれを素材に架空のショウを組み立ててみたり(いつものデッドのショウ全体の公式リリースに換算すると、2〜3本分)、いろいろと遊べる。

 デッドの音楽の良さはライヴを聴かないとわからない。理想は1本のショウ全体を聴く、それも何本も聴くことだが、とりあえず、その片鱗に触れるチャンスとしては最適だ。なにしろタダなのだ。

 公開されたファイルはしばらくの間、そのまま公開されていて、ダウンロードもできる。昨年まではだいたい翌年1月いっぱいぐらいでサイトから消えていたが、今年はコロナ禍もあるのか、新たに今年の 30 Days が始まる直前まで公開されていた。

 2020年は 1969-07-03 から 1994-07-03 までの音源がリリースされた。

 年別本数。
66 0
67 0
68 0
69 1
70 2
71 3
72 2
73 1
74 1
76 0
77 1
78 1
79 0
80 1
81 3
82 1
83 0
84 1
85 1
86 1
87 1
88 0
89 3
90 1
91 2
92 1
93 1
94 1
95 0

 これまでとは様相が変わり、1980年以降の時期からのピックアップがぐんと増えている。早い時期では使える素材が少なくなったとか、今後、この後期からの公式リリースを増やすことへの布石とか、理由はいろいろではあろう。ピグペンがいないデッドを認めないとか、1980年以降は聴く価値が無いとかいう「原理主義者」(どんなものにも原理主義者はいるものだ)は別として、全ての時期をできるだけまんべんなく聴きたいあたしは喜んでいる。もちろん80年代90年代からの公式リリースが少ないのにはそれなりの理由があるわけだし、今回の Dave's Picks, Vol. 36 にもその一端は垣間見えるが、それを凌いでバンドのキャリア後半15年間からのリリースを増やしてくれることを期待する。

 合計時間 6:51:45 は2019年、2018年に継ぐ3番目の長さ。
 
 最短は第06日, Little Sadie; 2:58
 2015年の 1970-09-20, Fillmore East, New York, NY での〈Operator〉; 02:33 に継ぐ短かさ。

 最長は第17日, Shakedown Street> Estimated Prophet> Eyes Of The World; 35:51
 2019年の 1973-02-19, International Amphitheatre , Chicago, IL からの〈He's Gone> Truckin’> The Other One〉; 42:13 に継ぐ長さ。

 従来のものとダブったトラック。
04. Bird Song; 2014年とダブり。
12. Playing in the Band; 2014年とダブり。
13. Here Comes Sunshine; 2017年とダブり。
18. Terrapin Station; 2017年とダブり。

 今回初めて録音が公式リリースされたショウは以下の12本。
1970-02-23, Austin Municipal Auditorium, Austin, TX
1971-04-13, Scranton Catholic Youth Center, Scranton, PA
1980-04-01, Capitol Theatre, Passaic, NJ
1981-10-10, Stadt Halle, Bremen, West Germany
1981-11-30, Hara Arena, Dayton, OH
1981-12-06, Rosemont Horizon Arena, Rosemont, IL
1984-06-21, Kingswood Music Theatre, Maple, ON, Canada
1986-04-01, Providence Civic Center, Providence, RI
1990-10-20, Internationales Congress Centrum, Berlin, Germany
1991-04-27, Sam Boyd Silver Bowl, Las Vegas, NV
1992-12-12, Oakland Coliseum Arena, Oakland, CA
1994-07-03, Shoreline Amphitheatre, Mountain View, CA

 やはり1980年以降が多い。1980年代前半はとりわけこれまで公式リリースが少ない。この時期の公式録音はカセット・テープにされていて、そのために長いジャムなどが途中で切れるケースが頻繁にあり、それがショウ全体のリリースの障碍になっているという話もある。とはいえ、今回のリリースやこれまで出ているものからしても、決してレベルが低いわけではないので、何とか全体のリリースを増やしてもらいたいものだ。

 これで1曲でも公式リリースされたショウは合計で531本。全体が丸ごとリリースされたショウは2020年11月末現在で220本。

 今回初めて 30 Days に登場した曲。
01. Jack-A-Roe {Trad.}
03. Never Trust a Woman {Brent Mydland}
06. Little Sadie {Trad.}

 これで 30 Days に登場した名前のついた曲は、The Other One と Let It Grow を独立に数えて、122曲。デッドのレパートリィの重要な曲は網羅されている。

 来年の Dave's Picks の最初の2つ、Vol. 37 と 38 はそれぞれ、1978-04-15,William And Mary Hall, College Of William And Mary, Williamsburg, VA と 1973-09-08, Nassau Coliseum, Uniondale, NY と発表された。別に文句は無いが、今年も後半の2つは1980年代だったので、来年も期待しよう。Vol. 38 にはボーナス・ディスクが付き、これには 1973-09-07 のショウが収められるそうだ。本体が後にCDや配信で一般リリースされても、ボーナス・ディスク収録の音源はこれまで再リリースされたことが無い。Dave's Picks のボーナス・ディスクは年間予約だけの特典だ。年間予約の締切は来年1月8日。日本までの送料15.99USD。

 今年リリースされた《Workingman's Dead》と《American Beauty》の50周年記念デラックス版にはそれぞれに1973年2月のショウが1本まるまる収録されている。これでデッドのライヴがどういうものか、その片鱗に触れた向きには、Dave's Picks 2021 の年間予約を薦める。そこから、個別のCDや配信で手に入る1972年春のヨーロッパ・ツアーや、1990年春のツアーへ進むと、デッドの真髄を味わえる。引きこもり生活には最高だ。あたしは1972年のヨーロッパ・ツアーを聴いてハマりました。(ゆ)


Workingman's dead -DELUXE-
Grateful Dead
Rhino
2020-07-10



American.. -Deluxe-
Grateful Dead
Rhino
2020-10-30