hatao & nami のライヴはパンデミックの前以来だから、3、4年ぶりだろうか。小松さんのライヴを見るのもほぼ同じくらい間が空いた。その間、この人たちの録音は聴いているけれども、生に勝るものはない。
まず Stringers の二人が始める。小松さんのフィドルと成田七海さんのチェロでアイリッシュをやるというユニット。つい先日 Jocelyn Petit & Ellen Gira の新作を聴いたばかりで、こういうことをやる人たちが洋の東西に同時多発的に出てくることに驚いた。
結成はペティト&ギラの方が若干早いようだし、アルバムもすでに3枚あるが、Stringers もこれから楽しみ。
後の MC で hatao さんも nami さんもチェロが好き。nami さんにいたっては手を染めたこともあるという。実はみんなチェロが好きなわけだ。あたしもチェロは大好きだから、この頃面白いチェリストがぞろぞろ出てきていることは愉しくてしかたがない。それともチェロだからこそ面白くなる、と言うべきか。成田さんも加わって、個人的にはますます盛り上がる。スコットランドの Abbey Newton、アイルランドの Neil Martin、イングランドの Caroline Lavelle、ウェールズの Jordan Price Williams、アメリカの Natalie Haas など、チェロでケルト音楽をやる人たちに伍して立派なケルティック・チェリストを目指していただきたいと切に願う。そういえば tricolor の《キネン》にも参加していた巌裕美子さんはどうしているだろう。やはりパンデミックからこちらライヴを聴けていないが、お元気だろうか。クレツマーまでやっていたあの人のチェロもまた聴きたいものだ。
チェロがケルト系のダンス・チューンに加わる時、どうしてもベース、ビートを担当することが多いのだが、勝手な希望を言わせてもらえば、もっとメロディも弾いてほしいのである。あの音域でダンス・チューンをがんがん演るところを聴きたい。低音楽器で奏でられるメロディはフィドルや蛇腹や笛で奏でられる時とは全く別の美しさを見せてくれるからだ。そこで今回最大のハイライトの一つはアンコールの1曲目〈Josephine's waltz〉の冒頭、チェロによる演奏だった。この曲がチェロで演奏されるのを聴くのはたぶん初めてだし、おまけに生音である。全身が総毛立った。
成田さんはアメリカのジャズ・チェロを学んでいるとウエブ・サイトにある。なるほど、短かいがインプロになったところは面白かった。一方で、チェロによるダンス・チューンのビート演奏も面白い。ギターやブズーキなど撥弦楽器のコード・ストローク、ピアノのコード演奏などによるビートは音が鋭角になる。ピアノはチェロに近いところもあるが、コードなのでイメージとしては下から持ちあげる。フィンガリングも含め、チェロがビートを演ると刻むにならない。ふくらみのある、しかし明晰な音が、水面に石を投げて生まれる波の同心円がぽわんぽわんと次々に生まれてゆく。小松さんのフィドルがその同心円の重なりの上を走ってゆく。軽いのだ。走るよりも舞ってゆく、だろうか。時折りハモったり、ドローンになるのも面白い。チェロはどちらにも行ける。かと思うと楽器を横抱きにして親指で弦を弾く。音が太い。
ワルツではリードをとるし、スロー・リールでは短かいフレーズを繰返してリズムをとる。それにしても成田さんはチェロでグルーヴを生んでゆくのが実に愉しそうだ。フィドルを煽るようでもある。フィンガリングで始め、テンポを上げて、弓に持ちかえて弦を叩く。チェロの演奏法の変化で演奏が盛り上がる。このユニットはどうみてもフィドルではなく、チェロがリーダーだ。
休憩をはさんで hatao & nami。今回 nami さんはほとんどハープで通す。それはそれで文句はないが、ラストにやったピアノの曲を聴くと、こういうのをもっと聴きたいと思う。nami さんがピアノを弾くと音楽に艷が出る。豊潤になる。ハープの音は繊細で、音楽は清冽になる。
今回はオリジナル中心で、このデュオは即興も面白い。2曲目〈みなもを渡る風〉の中間部は面白い。hatao さんは長いB♭フルートと普通のフルートを持ちかえる。3曲目はなんと hatao さんがピアノを弾いてハープとデュエット。〈黄昏時のリール〉というこれは名曲だ。次のブルターニュ・チューンのメドローの1曲目はゆっくりの曲でフルートとハープがユニゾンするのに悦ぶ。
5曲目 nami さんの〈雪どけ〉。ここで連結ホィッスルが登場した。3Dプリンタで作った部品でキーの異なる2本のホィッスルをつないである。片方からもう片方へ一瞬で移れる。音域が広がるし、曲の途中で調を変えることもできる。というのだが、そういうことがきて、曲に組込めるのは hatao さんぐらいだろう。この曲では nami さんのスキャットも出て、佳い曲だ。
hatao さんは連結だけでなく、2本の笛をくわえて同時に演奏することもする。ローランド・カークだ。その技が出る〈タイム・フロー〉もつくづく佳い曲だ。
2度のアンコールは全員で、1度目の1曲目が〈Josephine's waltz〉なわけだが、2曲目でフィドルを立ててフルートがドローンをつけたのが良かった。
アンコール2度目はまずハープとフィドル、次にフルートとチェロ、そして全員で〈キンコラ・ジグ〉。hatao さんが主メロから低く外れてゆくのにぞくぞくする。
靴を脱がされるのには閉口したが、ここはダンスなどのリハにも使われるのかもしれない。
終演は22時近く。出るとぱらぱら雨が落ちている。昼間の暑熱の後では濡れるのもきもちよいくらいだった。(ゆ)




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