2週間前になりましたので、こちらでも告知します。
今月29日(土)15:30から、四谷・いーぐるの「連続講演第567回」として「イスラームの音楽」をやります。映像は無し、音源だけの予定です。
イスラームの音楽といっても、何かまとまりのある実体があるわけではなく、まあ、イスラーム圏、イスラームが優勢な地域でおこなわれている音楽、ということになりましょう。西はモロッコから東はインドネシアまで、南はサハラを超えたニジェール河流域から北はカフカズ、中央アジア。というのが一応の地域ではあります。もちろんムスリムは世界中にいるわけで、ロサンゼルスやロンドン、パリやベルリンで活動している人もいます。今回はあえて外しますが、日本に生まれ育ってイスラームのうたをうたったり、カーヌーンやウードやヴァイオリンを演ったりしている人も少なくありません。
当然、多種多様なタイプやスタイルの音楽を全部紹介するなんてできません。この地域の音楽はヒット狙いの曲であっても欧米のポピュラー音楽とは違って、1曲が長いのが普通です。一部だけ抜粋して聴いていただくことも考えていますが、それにしても、あの長さがあってこそ良さがわかるという性質もあります。
それにそもそも、ぼく自身、体系的網羅的にカヴァーしているわけではなく、好みのおもむくまま、あちこちつまみ食いしているだけです。そういうなかでこれは面白い、これは後藤マスターが面白がるだろう、さらにはこの録音はいーぐるのシステムで聴いてみたい、という「基準」で選んでます。つまりごくミーハー的な趣味です。
一方で、1曲がCD7〜8枚組になるヌゥバの全曲録音をまんまかけて浸ってみたい、なんてことも思ったりします。
ヌゥバというのは、9世紀にイベリア半島のイスラーム王朝で完成されたといわれる古典音楽です。ウードを中心として、ヴァイオリン、打楽器、笛などで構成される20人ほどのオーケストラによって演奏されるのが普通です。演奏者はうたもうたいます。あるテーマを繰り返し変奏しながら組曲形式で展開してゆく形で、ごくわずかずつテンポが速くなります。1曲の演奏は6〜8時間。かつては1日24時間の各時間に1曲ずつ24曲ありましたが、今残っているのは11曲と断片が2つ。これをモロッコのトップ楽団を総動員して全曲録音したCDが出ています。イスラームの音楽の究極のひとつであり、全世界を見渡しても、究極の音楽のひとつでしょう。
15世紀にイベリア半島からムスリムが追放された際、ヌゥバの音楽家たちは北アフリカ各地に逃れ、それぞれの地域で独自に発展させます。中心になったのは現在のモロッコ、アルジェリアとチュニジアでした。
地中海岸ではこのヌゥバまたはアラブ・アンダルシア音楽と呼ばれる音楽が古典音楽として伝えられ、各地域それぞれの古典やポピュラー音楽はここから派生していきます。地中海の南岸だけでなく、北岸にも伝わり、ヨーロッパの古典音楽の土台にもなります。
イスラーム地域の音楽のもう1つの源泉はペルシャ、つまりイランです。もっともこここから東、シルクロード沿いの音楽は、イスラームから生まれた音楽というよりは、もともとあった音楽がイスラーム化されたと言えそうです。そのもともとの音楽がすでにペルシャを源泉としていたというわけ。インドネシアまでゆくと、もうイスラームの音楽というよりは、各地域の音楽という色彩の方がよほど濃い。
おそらくインドネシアはアジア南部の音楽として、その方面に詳しい方におまかせするとして、パキスタンあたりまでということになりそうです。
ヌゥバは最低でも30分は聴かないと味わいが中途半端なので、今回は脇に置いておこうかと思案中です。それからグナワ、ライやシャアビのような、すでに知れわたったジャンル、スタイルも外そうと思ってます。もっともカッワーリは眼玉の1つです。なにせ、ぼくがこの方面の音楽に興味をもつきっかけはヌスラト・ファテ・アリ・ハーンでありますし。
問題はトルコで、ここだけで1つの世界になっているくらいで、どう扱ったものか。悩ましい。
それにユダヤ。上記アラブ・アンダルシア音楽からしてイスラームとユダヤの合作なんで、地中海沿岸のイスラーム音楽とユダヤ音楽は一体化しています。ユダヤ音楽の全部とはいいませんが、かなりの部分はイスラームの音楽でもあります。
まあ真面目に考えだすと、どこもかしこもキリがなくなるので、結局はえいやっと1枚だけカードを抜くことになるでしょう。
ひとつだけ決めているのは、今回ウンム・クルスームはありません。アシュマハーンでいきます。
そんなこんなで、今は泥縄も含め、愉しく勉強中。トリはどうするかなあ。やっぱりヌスラトかなあ。(ゆ)
