無線 DVD プレーヤーを探していて、有料だが HDCD を 24bit にリッピングできるソフト dBpoweramp に遭遇。macOS 用もある。XLD 卒業かな。
音源ファイル・コンヴァータとCDリッパーが一体になった有料ソフトだ。
シングル・ライセンスが39USD、5台までインストールできるファミリー・パックが68USD。
これになぜ惹かれたかというと、HDCD を 24bit でリッピングできるからだ。Grateful Dead の公式リリースはある時期からすべて HDCD CD でリリースされている。
HDCD というのは普通の 16bit/44.1KHz のCDに 24bit までの情報を入れるための技術だ。テクニカルなことはあたしにはわからない。話を聞くかぎりでは、今をときめく MQA と似たような考えのものらしい。
HDCD でエンコードされたCDは、HDCD をサポートしない機器で再生すると通常のCDとしてふるまう。ところがサポートする機器で再生すると 24bit/44.1KHz というハイレゾ・フォーマットとしてふるまう。
この HDCD をリッピングする際、通常のCDを超える部分も含めたいのは当然である。XLD の作者にも相談したことがあるが、HDCD の技術はマイクロソフトの所有になり、結構なライセンス料を払う必要があるので、無料の XLD としては現実的ではない、とのことだった。
dBpoweramp はこの HDCD CD を 24bit のファイルにリッピングできるというのだ。公式サイトには3週間試せる試用版がある。ダウンロードして試してみた。試したのは Dave's Picks, 35 である。
結論から言うと、今手許にあるデッドの HDCD CD はすべてこれでリッピングし直さねばならなくなった。
出力ファイル・フォーマットは ALAC にした。以前は FLAC にしていたのだが、ある時、アドバイスを受けてあらためて ALAC と比べてみた。条件を同じにして同じCDを各々のフォーマットにリッピングしたわけだ。その結果、macOS の環境では ALAC の方が音が良いと判断した。FLAC では全体に高い音域に移るように聞える。FLAC だけ聴くとそうは思わないが、ALAC と聴き比べると違いは明らかで、ALAC の方がずっと落ちつく。
dBpoweramp で HDCD をリッピングすると、ファイル・サイズは 16/44.1 の倍近くになった。聴いてみると一聴瞭然だ。24/44.1 で聴くとぶわっとつき抜けるような開放感がある。24で聴いてから16に移ると、どこか頭を押えられた、天井の低いところでやっているような感覚になる。逆に16を聴いてから24に移ると、ウィアの声も晴れ晴れとしてのびやかになる。空間が広がり、各々の音も明瞭になり、全体の絡み合いがよくわかる。音楽がのびのびと奏でられる。まるで、これが本来の音なんだよ、と言われているようだ。
まず MacBook Pro で再生して比べてみてこういう結果になった。念のため、FiiO M11Pro に移して聴いてみても、結果は変わらない。出力をどちらも DSD にしても、元のファイルの違いははっきりわかる。
かくて、16/44.1 で聴く気がまったく失せてしまった。デッドを聴こうとするなら、少なくとも HDCD は全部リッピングしなおさねばならない。逆に、これでようやく公式リリースに入っている本来の音が聴けるわけでもある。
折りしも来年の Dave's Picks の Subscription の受付が始まった。今なら日本からは早期割引+送料で115.97USD。送料の安さだけでも年間予約をする価値はある。アメリカから海外への送料はとにかくバカ高くて、ブツ自体より送料の方が高いことは珍しくもない。海外に住んでいるアメリカ人も多いだろうに、皆、この高い送料をガマンしているのだろうか。だけでなく、見えない貿易障壁ではないかとすら思う。ちなみにこの点では英国は優秀で、かつて大英帝国で世界中にモノを送っていた名残りなのか、送料は安い。
Dave's Picks はすべて HDCD 仕様だ。
Dave's Picks は2012年に始まったから、来年で10年め。お手本にした Dick's Picks は Vol.36 で終ったから、それを超える。デヴィッド・レミューの Seaside chat によればまだまだ終る気配はなく、もう10年続くかもしれないくらいだそうだ。実際、来年の1回あたりの発売数は25,000で、12,000で始まったから2倍以上に増えたわけだ。それもすべて完売している。次の Vol. 36 は1987年のショウの録音だが、やはり数日で完売していた。
Dave's Picks の各巻はまだ配信等ではリリースされていない。出た時のCD以外には無い。なので、古いものは中古盤市場でアホみたいな値がついている。あたしは2年めから年間予約にしたが、1年めを買い逃したのが悔やまれる。
来月11月は 30 Days Of Dead の月だ。毎日1曲、ライヴ音源が Dead.net で無料でリリースされる。各トラックは原則未発表のもの。中には30分近いものもある。ファイルは320bpsのMP3。デッドのライヴがどういうものか、体験するには絶好だ。こちらは2010年に始まったので、今年で11年めになる。
これにはオマケが付いている。毎日リリースされる演奏は日時を伏せてあって、それがいつ、どこでのものか、当てられると、なかなか豪華な賞品がもらえる。正解が多ければ抽選で1名。翌日当選者が発表される。
んなこと、できるかー、と初めは呆れたが、聞き慣れてくると、だいたいの見当はつくようになる。ただ、1本に絞るのはテープをかなり聴きこまなければ無理ではあろう。
XLD はまことに便利なツールで、リッパーとしてだけでなく、「フォルダをディスクとして開く」という機能が秀逸で、よく利用する。それになんといってもタダだ。もっとも、何度か寄付はしたけれど。
しかし、こと、HDCD のリッピングについては dBpoweramp を使わざるをえない。デッドのCDはもちろんだが、デッド以外にも HDCD は、たとえば Musical Fidelity などのものがある。もともとこの技術はあそこのキース・ジョンソンが作ったというのを、どこかで見た記憶がある。
もちろんこれはあたしの環境での話で、Mac、外付ドライブ、ケーブル各々の機種によって変わる可能性はある。リッパー・ソフトはこれまではもっぱら XLD を使っている。ウィンドウズではまたまったく話が違うだろう。dBpoweramp はどうやらウィンドウズが発祥のようで、そちらではかなり有名らしい。今は macOS 版もあり、バージョン、機能も同じ。3週間試用できるから、とにかく試してみることを薦める。(ゆ)