クラン・コラ・ブログ(アイルランド音楽の森)

 アイリッシュ・ミュージックなどのケルトをはじめ、世界各地のルーツ音楽を愉しむブログです。そうした音楽の国内の音楽家も含みます。加えて主宰者の趣味のグレイトフル・デッド。サイエンス・フィクション、幻想文学などの話もあります。情報やメモ、ゴシップ、ただのおしゃべりなどもあります。リンク・フリーです。

タグ:デジタルプレーヤー

 この制度にいくつもある問題点のひとつは、まっとうに CD や DVD を購入し、そこですでに著作権利用料を払っている人間に、もう一度、著作権利用料を払わせるものであります。しかも、この二度目に払う利用料は、徴収のシステムからして、利用者が「利用」した著作物の著作権者に最終的に払われるとはかぎりません。むしろ、まったく無関係な人間(たち)に払われる可能性の方がはるかに高い。つまり、対価を払って著作物を利用するという著作権制度本来の趣旨から離れた制度です。

 と確認してみると、これって、税金で作ったはずの道路を利用するのに、もう一度利用料を、それも半端じゃない額の利用料を払わされている現行の有料道路制度とダブって見えますね。

 こうなると採算を度外視して作った「赤字」路線を東名をはじめとする「黒字」路線がカヴァーするという構図も似てくるんじゃないか。確か有料道路は原価を回収したら無料化されるんじゃないでしたっけ。

 そう思うと、「iPod」や HD レコーダーはまさに「東名」そのもの。これからも状況の変化によってどんどん対象が拡大されるんじゃないか、という JEITA の危惧は当然でしょう。

 いやまあ、人間の考えることなんて、みんな同じとはいうけれど、ここまで似てると、意識的にやってるんでないかと勘繰りたくなります。(ゆ)

という日経の記事

 「『私的録音録画補償金制度』の縮小を原則とする方針を明記する一方、米アップルの『iPod』など携帯デジタル音楽プレーヤーやハードディスク(HDD)レコーダーを新たに課金対象とするなど当面の対応を提案」

 これって、一方で道路財源の来年からの一般財源化を閣議決定しながら、もう片方で今後10年間はやはり道路に使いまっせ、という法案を通そうとしているのと同じ構図ですな。

 つまりは、従来の著作権料の徴収・分配方式は既得権益化している、ってことなんでしょう。そういう方式はもう現状に合わなくなってるわけだけど、これまでその方式で甘い汁を吸っていた側はその利権を何とか維持しようとする。ま、気持ちはわかるけど、はい、そうですかとはいかんですね。

 もっとも「私的録音録画補償金制度」については、それ以前に、集められたカネがきちんと著作権者に分配されているのか、てところが問題であることは、この記事で津田さんも指摘してます。なにせ集められた「補償金の二割に相当する額については、権利者全体の利益を図るため、著作権等の保護に関する事業等(いわゆる共通目的事業)のために用いなければならない」ことになっている。この部分の使い道のアヤシイ匂いは消えませんわな。(ゆ)

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 ところで。
 文化庁が「iPod 税」導入を進めようとしているという報道。何せ、この私的録音録画補償金の収集・分配を管理している私的録音補償金管理協会(SARAH, サーラ)は文化庁や文部科学省にとっては貴重な天下り先だそうなので、ここの「儲け」を確保しようとするのは予想されたことではあります。

 著作物利用に対する課金システムについては、ドワンゴ代表取締役会長の川上量生氏の提案が一番腑に落ちます。つまり、著作物のアクセス権に課金するものです。

 デジタル革命前、アナログの時代にもつまるところはアクセス権に課金されていたわけです。本やレコード(CD, DVD, etc.)を買うのは、本やパッケージの「モノ」を買っていたわけではない。中身の「ソフト」にアクセスするために買っていたのです。このことはアイリッシュ・ミュージックをはじめ、各地の伝統音楽を聞こうとするとよりはっきりします。配信などの手段ではアクセスできない音源はまだまだ圧倒的に多いので、そうした音源にアクセスしようとすると地元で出ているCDを買うしかありません。こういうCDは図書館でもまずみつかりません。

 図書館などで借りる場合にも、図書館が買う原資は、税金であったり、学費であったりするわけで、間接的に「買う」ことになります。

 かつては著作物にアクセスしようとすれば、パッケージ=モノを買うしかありませんでした。だから著作物利用の対価がアクセス権に対して払われていることはなかなか見えませんでした。著作物という「モノ」に払われているようにみえていました。JASRAC や文化庁はおそらくそこのところを勘違いしているのでしょう。うっかりとり違えているのか、故意に曲解しているのか、それはわかりません。アクセス権に課金することにすると、JASRAC やサーラのような集中管理組織は不要になる可能性もあります。デジタル技術を使えば著作物の利用者から著作権者に直接対価を払うことも可能でしょうから。それでも PayPal のような清算システムは必要だろうから、JASRAC もその方向に移行することはできるんじゃないですかね。

 個々の著作権者がアクセス権に課金することが簡単にできるシステムを実現できれば、それも良い商売になりそうです。もうすでにあるのかもしれませんが。どなたかご存知なら、教えてください。

 というわけで、「iPod 税」には絶対反対を表明しておきます。(ゆ)

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