ここ2、3年、所沢で3人で一緒にやる機会があり、たいへん楽しかったので、東京でもやろうということでこの日のライヴ。
まず前座と称して、澄田氏がソロでやる。あたしは初見参。四十代後半というところ。達者なギター、一級のうたい手。ルーツとしてはブルースだろうか。まずアコースティック・ギターで2曲。1曲目はコード・ストロークのみ。これだけ聴くとフォーク・シンガー。3曲目からエレキ。これはあたしにはちょっと音が大きすぎた。以後も時々音が大きすぎることがあって、いつも持ちあるいている耳栓をする。
4曲目はサンハウスという日本のバンドの〈あてのない手紙〉。日本のバンドにはからっきしのあたしは原曲を知らないが、澄田氏の演奏はなかなかいい。差し手引き手のタイミングがいい。そこは次の「危険な遊び」をしようというブルース・ロックでも、その次のロックンロールでも同じ。声もいいし、唄も巧いし、ギターも弾ける。なるほど、こういう人もいるのだ。
一拍あって、小滝氏が加わる。この2人の演奏がまずハイライト。英語のうたなのだが、澄田氏がギターを弾きながら口パーカッションを入れるのが面白い。こんなのは初めて見たが、近頃流行りなのだろうか。口パーカッションも即興で、センスがいい。そのうちメロディが消えて、小滝氏がフリーのアンビエントな音を出すのに、澄田氏もフリーで応じる。ほほう、2人でデッドの Space をやっているぞ。面白い。ひとしきりやって、澄田氏は一度引っこむが、小滝氏がいっかな止めず、プログラミングの音をしきりに出すので、また出てきて応じる。いや、楽しい。こりゃあ、いい。
休憩が入って松浦さんのソロ。いつもながらギター巧い。今日は声もデカい。アコースティック・ギターのソロの弾き語りで耳栓をしたのは初めてだ。大好きな〈出土騷ぎ〉から始まったのに喜ぶ。〈カモなんです〉が続いて、〈その件について〉は初めて聴く。「ミャクラクなくミャクハクはかる」。曲の中で声をどんどん変える。次は待ってました、〈アサリでも動いている〉。その前にビールを飲むその表情がひどく真剣だ。ほとんど命をかけている。
ここで澄田+小滝が入ってトリオとなり、〈デーモンとカーバンクル〉。これも初めて。澄田氏のギターがすばらしい。他人の伴奏の時の方が自分の唄につけるよりずっと良いのはリチャード・トンプソンそっくりだ。一方、ギターそのものの感じはジェリィ・ガルシアに似ている。
かものはしからカヴァーをやってはどうかと提案をうけてやった〈レモンティー〉は松浦・澄田が終始デュオでうたう。おお、ドナ・ジーンとウィアではないか。そう見ると小滝氏はキース・ガチョーに聞えてくる。
確かにこのトリオはナスポンズとは別の魅力がある。八方破れでもあり、どこへ行くかわからない。ナスポンズは狂気を秘めながら、表の形は整っている。バンドとしての枠組みを保っている。このヨカレのトリオはリズム・セクションがいないことでより自由で開放されている。どんな形もとれる。3人各々の性格がより露わにもなる。ラストの〈ヨカレの唄〉はその奔放さがモロに出ていた。
アンコールがまた良かった。澄田氏がアコースティック・ギターで〈ラスト・ダンスはわたしに〉。日本語詞は誰か書いたか知らないが、実に見事だ。外国語の日本語版として最高の一つだろう。それを松浦さんがうたうと、原曲はすっぽり消えて、ぞっとするほどのリアリティが出る。松浦さんがにこにこと歌うと、項の毛がそそけ立つ。ナスポンズはスタジオ盤が聴きたいが、ヨカレのトリオはライヴ盤が聴きたい。
それにしても下北沢の街を見ていると、人口減などどこの国の話だと言いたくなる。(ゆ)
松浦湊: vocal, guitar
澄田健: vocal, guitars
小滝みつる: keyboards
松浦湊: vocal, guitar
澄田健: vocal, guitars
小滝みつる: keyboards









