クラン・コラ・ブログ(アイルランド音楽の森)

 アイリッシュ・ミュージックなどのケルトをはじめ、世界各地のルーツ音楽を愉しむブログです。そうした音楽の国内の音楽家も含みます。加えて主宰者の趣味のグレイトフル・デッド。サイエンス・フィクション、幻想文学などの話もあります。情報やメモ、ゴシップ、ただのおしゃべりなどもあります。リンク・フリーです。

タグ:ノルウェー

 つまりは酒井絵美祭りである。酒井さんが属するきゃめるノルカル Tokyotipsipuca+ の三つのバンドがそれぞれ新録を出したのを口実に、一堂に会したライヴをやろうというわけだ。あたしとしてはアラブ音楽も聴きたかったが、そこまでやると時間が足らないのはわかるから、将来、「酒井絵美4Days」が実現するまで待ちましょう。

 こうして三つ並ぶと、似たようなコンセプトながら方向性がまるで異なるのがよくわかる。酒井さんも懐が深い。もっともそれぞれのバンドの他のメンバーにしても、これ以外のところでの活動ではまたそれぞれにまるで方向性の違うことをやっているにちがいない。実際、中村大史さんなどはジョンジョンフェスティバルや O'Jizo ではそれぞれに異なったことをやっているし、劇音楽やクラシックの活動もある。そういう懐の深さが、それぞれの音楽の深みを生み、多様性を増して、面白くしているのだろう。

 きゃめるのこの日のハイライトは岡さんのブズーキで、PAのせいか、いつもよりはっきり聞えたし、演奏もすばらしかった。アンサンブルの土台をしっかり支えながら、遊びを要所要所に入れてゆくコツを掴んだようでもある。となると成田さんのバゥロンはこういう時はもっと音を大きくしてもいいんじゃないか。それもあるのか、ちょっとおとなしく感じた。次は「空飛ぶバゥロン」が聴きたい。

 個人的に最大の収獲だったのはノルカル Tokyo。タワーレコードでのインストアしか見たことがなかったので、ようやくこのバンドの実力の一端に触れることができた。というのも、モーテンさんのスケールの大きさは、やはりこういうちゃんとしたライヴで初めて発揮されるからだ。口琴やセリフロイトも良かったが、なんといっても感心したのはピアノ。高梨さんの参加した4曲め〈太陽の季節〉でのブルース・ピアノ、そして圧巻は6曲め〈真白な家路〉、もとは讃美歌というこの曲でのジャズ・ピアノ。北欧の曲はジャズと相性がいいのかもしれない。もっともっとずっと聴いていたかった。次は単独でのライヴを見たい。熊谷さんと高梨さんが加わっての演奏も良かったから、ティプシプーカ同様、ノルカル Tokyo+ というヴァージョンがあってもいい。

 tipsipuca+ はバンドとしてさらに熟成していて、いよいよ旬になってきた。熊谷さんのパーカッションがよりカラフルになり、グルーヴをドライヴするよりも空間を設定するようになったのと、何といっても高梨さんのプレーヤーとしての進境がすばらしい。これまでもうまかったが、この日はさらにうまくなっているのがはっきりわかる。トリッキーな離れ業をやるのではなく、安定感が抜群だ。こうなるにはよほど精進を積まれたにちがいない。練習は嫌いだそうだが、秘かになにか掴んだのか。

 さすがに酒井さんは最後ヘトヘトのようだったが、長時間というよりも、性格の異なる音楽を続けざまにやるのがくたびれるのだろう。それぞれに衣裳も変えていたし。とはいえ、聴いている方はフルコースのご馳走をふるまわれて、たいへんに楽しい。もっともメイン・ディッシュばかりで、おなかはいっぱい。まあ、この上デザートというのは贅沢が過ぎますな。(ゆ)

 メンバーと演奏曲目リスト。曲名はよく聞きとれなかったものもあるので正確ではありません。

きゃめる
 酒井絵美:フィドル
 高梨菖子:ホィッスル
 成田有佳里:バゥロン
 岡皆実:ブズーキ、コンサティーナ

1. お仕事ポルカ
2. すだちのふるさと
3. 阿波踊りの曲
4. Dear Yamaguchi;かわらそば;ういロード
5. ほろ酔いワルツ
6. ベートーヴェン・セット


ノルカル Tokyo
 酒井絵美:フィドル、ハルディング・フェーレ
 Morten J. Vatn: セリフロイト、口琴、ピアノ

1. フーデーシュー
2. いやな奴
3. おじいさん節
4. 太陽の季節
5. エリック・ミチザネの子守唄
6. 真白な家路
7. スーパーハーディング


tipsipuca+
 酒井絵美:フィドル
 高梨菖子:ホィッスル、コンサティーナ
 中村大史:ギター、アコーディオン
 熊谷太輔:パーカッション

1. Growing
2. Fish and Chips
3. カボチャごろごろ
4. とりとめのない話
5. 鮭三景
a. アイルランド・サーモン
b. 信州サーモン
c. ときしらず
6. 北海道リール・セット

アンコール(全員)
1. ショコタンズ・ワルツ
2. ノルディッシュ

 フィドルとハーダンガーフェーレの酒井絵美さんと各種笛の Morten J. Vatn さんのデュオ、ノルカル Tokyo の渋谷タワーレコードでのインストア・ライヴはいつものこの手のライヴとはちょっと手触りが違った。ゲストに高梨菖子さんと長濱武明さんが加わっているので、楽器編成としてはそう変わらないのだが、やはりスカンディナヴィアの素材のせいだろうか。それともモーテン・ヴァテンさんのご家族、友人が大挙して来ていて、客層ががらりと違っていたせいだろうか。ありていに言えば、いつもは基本的にいけいけのノリでお祭りの雰囲気なのが、じっくりと曲に聴きいってしまうのだ。

 まだ生後1年にならない息子さんに捧げた子守唄も良かったが、ハイライトは唯一のスウェーデンの曲。ヴァテンさんがピアノで繰り出すブルーズ・ビートに酒井さんがフィドルで弾くのだが、楽曲の良さとともに、このブルーズとの組み合わせがすばらしい。BGMがかかっていたり、人が通ったりで、わさわさしている会場が静まりかえった感覚。

 6階のインストア・ライヴの会場は昇りエスカレーターからフロアへの入口の脇だから、インストア・ライヴ目当てではないお客さんも通る。ライヴが始まると、その人たちが半分くらいはその場で足を止めて聴いている。ほとんどがそのまま最後まで聴いていた。

 酒井さんもヴァテンさんも、おしゃべりはあまり得意ではなく、MCはなめらかではないが、それがかえって雰囲気を作る。音楽そのものも手探りで作っていて、ライヴもまた手探り。必ずしもはじめからぴったり合っているのではなく、むしろ一緒にやれるところを確かめながらやっているようなのが、面白くもあり、楽しくもある。といってひとまずここもでできましたという未完成でもない。一瞬一瞬、できあがってくるのを、本人たちも驚き楽しんでいるふぜい。ことばの本来的な意味で「生」なのだ。

 北欧というと、かっちりすっきりと完成された美学に律せられた世界という印象がここではだいぶ崩れている。破綻しそうでしないバランスが、スリリングというよりは笑ってしまう。アルバムのタイトルになっている神話の山羊は、北欧神話よりもアイルランドの田舎にでも出てきそうだ。こういうユーモアの隠し味はたぶんヴェーセンなどでもあるのだろう、と気づかせてくれる。そうしてみれば、ノルカル Tokyo というユニット名自体がとぼけているではないか。

 ノルカル Tokyo としてのライヴはしばらく無いそうだが、このユニットはぜひ続けてほしい。これからどうなっていくのか、まったく予想がつかないところがなんとも楽しい。ひょっとするととんでもないものになる可能性もある。とりあえずは実は丹念に作られたデビューCDを繰り返し聴いてゆきましょう。(ゆ)



Heidrun ヘイドゥルン
ノルカルTOKYO
ロイシンダフプロダクション
2016-03-13


 ハンマーダルシマー&フィドル奏者の山口智さんの年末から来年にかけてのライヴ・スケジュールです。

 新年から大阪でアイリッシュ・フィドルのレッスンも始めるそうです。

   *   *   *   *   *

12月もなかばです。
今月後半のライブのお知らせです。
前回お知らせしたのから、追加や変更があります。
東京での演奏はとりあえず23日のみになりました。


12/17(日)14:00から
traditional Irish music
山口智(フィドル)高橋純(フルート)相方勝彦(ブズーキ)
場所:ウッドノート
1500円(飲食別途)
フィドルでアイリッシュのライブ、関西では久々です。
こじんまり、ゆるゆるとやります。

12/22(金)第1便: 18:30、第2便: 19:30
ロマンティック・イルミネーション・クルーズ
李浩麗(唄)山口智(ダルシマー)岡野裕和(コントラバス)
アクアライナー淀屋橋港発、それぞれ約50分クルーズ
(淀屋橋ー中之島ー堂島川ー難波橋ー大川上流ー淀屋橋)
音楽を楽しみながら中之島界隈をアクアライナーでクルーズです。
大人2000円、小人1000円
予約・お問合せ:大阪水上バス・アクアライナー

12/23(土)19:00から
Irish music & Norwegian music
山口智(フィドル)樫原聡子(ハーディングフェーレ)長浜武明(バゥロン)
場所:Wishing Well
東京都・六本木ヒルズ
アイルランドとノルウェーの音楽両方聞けます。

12/28(木)Dream Catcher
大阪のチャクラでの年末イベントDream Catcherにユニット "Tasmania" で出演します。
出演は、桑名晴子、長田TACO和承、ダンシング義隆、坪井大、リキュー、南ルミコ、西條ワタル、バグースバンド、Tasmania
会場:チャクラ
開演:午後4時
予約2800円・当日3000円(ワンドリンク付き)
お問合せはチャクラ

2007
01/26(金)
山口智(ダルシマー)長田TACO和承(スライドギター他)日野哲(ベース)
場所:チャクラ


★教室のお知らせ
大阪のチャクラで、おけいこレッスンしています。
タイ語講座をずうっとやってますが、
1月からアイリッシュフィドル講座(個人レッスン)もスタートします。
どちらも生徒随時募集中です。お問合せはこちら
またはチャクラ(電話06-6361-2624)まで。


では皆さん今年もいい感じで締めくくれますように。

 今年のグラミー賞候補作が発表になってます。

 今年はケルト系のものはなし。
 代わりにノルウェイの冬のダンス・パーティを再現した(?)《HAMBO IN THE SNOW》があります。フィドル&ヴォーカル、ハーディングフェーレ、アコーディオン&ベースのトリオ。国内のオンライン・ショップでは見あたりません。レーベルのサイト、Amazon.com では買えます。

 このレーベルはミュージシャンが自作の権利を持てるようにと、エンジニアが作った会社だそうです。つまり、ミュージシャンは自作の権利を持てないのがふつうなわけ。なので、レーベルの音楽傾向はかなり種々雑多のようです。また、エンジニアが作っただけあって、録音自体にも気を使っているようです。


Field 16 ― World Music
Category 72
Best Traditional World Music Album
(Vocal or Instrumental.)

《MUSIC OF CENTRAL ASIA VOL. 2: Invisible Face Of The Beloved: Classical Music Of The Tajiks And Uzbeks》
The Academy Of Maqam
[Smithsonian Folkways Recordings]

《ENDLESS VISION》
Hossein Alizadeh & Djivan Gasparyan
[World Village]

《HAMBO IN THE SNOW》
Andrea Hoag, Loretta Kelley & Charlie Pilzer
[Azalea City Recordings]

《GOLDEN STRINGS OF THE SARODE》
Aashish Khan & Zakir Hussain
[Moment Records]

《BLESSED》
Soweto Gospel Choir
[Shanachie]


Category 73
Best Contemporary World Music Album
(Vocal or Instrumental.)

《TIKI》
Richard Bona
[Decca]

《M'BEMBA》
Salif Keita
[Decca]

《WONDER WHEEL》
The Klezmatics
[Jewish Music Group]

《LONG WALK TO FREEDOM》
Ladysmith Black Mambazo
[Heads Up International]

《SAVANE》
Ali Farka Toure
[World Circuit/Nonesuch]

 フィドルとハマー・ダルシマーの山口智さんの来月のライヴ・スケジュールです。

 ノルウェイのイェートールとの共演が面白そう。

 アルバム《CIRCLE》のフル・メンバーによるライヴも一度見たいもの。あれ、あのタイトルはグループの名前だったんですか(爆)。アルバムはすばらしいです。アイリッシュではなく、ECM系の即興です。


12/03(日)
良元優作CD発売記念LIVE!!!
開場17:00  開演18:00
前売 ¥2,800 当日 ¥3,300
出演:良元優作+中島直樹+西條渉
ゲスト:長田TACO和承、山口智
会場:び・ぜん・ぎゃるり(京都市左京区白川宝ケ池通り角、備前屋ビル)

大阪のシンガー良元優作のCD発売記念ライブにゲストで出演します。
12/05全国発売の彼のデビューアルバムにも1曲参加しています。
詳細はこちら


12/07(木)Circle
岡田浩安・山口智・岡野裕和・慧奏
 今年アルバムをリリースしたユニット、Cicleフルメンバーでのライブです。
フルメンバーでのライブは久しぶりです。ぜひお見逃しなく。

会場:ブリコラージュ(大阪市大正区南恩加島2丁目11-17)
19:00開演 ¥2500(予約)¥2800(当日)
お問合せ:ブリコラージュ TEL06-6551-4180 葦工房 090-32277362


12/09(土)Gjetord
 ノルウェーから来日する唄とハーディングフェーレ(共鳴減のついたフィドル、ノルウェーの国民的楽器です)のグループ、イェートールの大阪での演奏会にゲストで出演、ギターやダルシマーなどでサポートします。日本では聞くチャンスの少ないノルウェーのトラディショナル音楽です。こちらもお見逃しなく!

Gjetord
エレン・マリエ・タンゲン Ellen Marie Tangen: 歌 sang,
マグンヒル・ベルゲ Magnhild Berge: 歌 sang
ハリエット・ヘレネ・フェルドハイム Harriet Helene Fjeldheim: 歌 sang
セーラ・ナイジェル Sarah Nagell: 歌 sang, フェーレ fele, ハーディングフェーレ hardingfele
樫原聡子 Satoko Katagihara: フェーレ fele, ハーディングフェーレ hardingfele、歌 sang
ゲスト:山口智

会場:チャクラ(大阪市北区菅原町6-12 電話06-6361-2624)
18:00開場/19:00開演 
前売・予約2500円/当日3000円(いずれもワンドリンク付き)
お問合せ・予約はチャクラまで(06-6361-2624)


12/23(土)24(日)
東京六本木のアイリッシュパブ Wishing Well で。
詳細は追って。


12/28(木)Dream Catcher
大阪のチャクラでの年末イベントDream Catcherにユニット"Tasmania"で出演します。
出演は、桑名晴子、長田TACO和承、坪井大、リキュー、南ルミコ、
西條ワタル、バグースバンド、Tasmania

会場:チャクラ(大阪市北区菅原町-12 電話06-6361-2624)
開演:午後4時
予約2800円・当日3000円(ワンドリンク付き)
お問合せはチャクラ(06-6361-2624)

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