クラン・コラ・ブログ(アイルランド音楽の森)

 アイリッシュ・ミュージックなどのケルトをはじめ、世界各地のルーツ音楽を愉しむブログです。そうした音楽の国内の音楽家も含みます。加えて主宰者の趣味のグレイトフル・デッド。サイエンス・フィクション、幻想文学などの話もあります。情報やメモ、ゴシップ、ただのおしゃべりなどもあります。リンク・フリーです。

タグ:ハイレゾ

The Audiophile Society

0325日・金

 昨日の階段で脚が痛い。散歩に出て歩いているうちに痛みは消える。が、もどってクールダウンのストレッチをすると、腰が痛い。

 散歩していると玉川で番の燕を見る。やはりもう戻ってきている。様々な花が開いている。菜の花畑はそこから光が放たれている。近くで見ると、眼が喜ぶ。

 HiFiMAN から案内の来た David Chesky The Audiophile Society の無料サンプラーをダウンロード。3GB。2時間かかる。7曲入り。24/192のスピーカー・ミックスと24/96のヘッドフォン・ミックスが入っている。どちらも独自の3Dミックスをほどこして、空間に包まれるようにしてある由。ヘッドフォン用とスピーカー用にミックスを変えるのは理にかなっているように思える。素材としてはインドのグジャラート生まれ育ちの女性ブルーズ・シンガー・ギタリスト Aayushi Karnik に興味を惹かれる。

https://theaudiophilesociety.com



##本日のグレイトフル・デッド

 0325日には1966年から1994年まで10本のショウをしている。公式リリースは5本。うち完全版1本。


01. 1966 Troupers Hall, Los Angeles, CA

 金曜日。2ドル。開演9時。セット・リストが完全かどうかわからないが、第一部クローザー〈You Don't Have To Ask〉が2015年の《30 Days Of Dead》でリリースされた。


02. 1967 Avalon Ballroom, San Francisco, CA

 土曜日。DeadBase 50 では、前日かこれのどちらかにショウがあり、〈Viola Lee Blues〉を演奏したという証言があるとしている。アシッド・テストの一つらしい。

 一方で DeadBase XI には2426の3日間、このヴェニューに出演し、Johnny Hammond & His Screaming NighthawksRobert Baker 共演としている。セット・リスト不明。


03. 1972 Academy of Music, New York, NY

 土曜日。このヴェニュー7本連続のランの4本目。5.50ドル。開演8時。ヘルス・エンジェルスが会員の保釈金を集めるためのベネフィット・コンサート。第一部は Bo Diddley の新譜披露とされて、デッドがバック・バンドを勤める。これもあって、このショウは当初 "Jerry Garcia & Friends" として発表された。実際にはデッドそのもの。第一部冒頭からの3曲とそれに続く Jam、1曲置いて6曲目の〈Mona〉までと、第二部オープナーの2曲〈How Sweet It Is〉〈Are You Lonely For Me Baby?〉、5曲目〈Smokestack Lightnin'〉が、《Dick’s Picks, Vol. 30》でリリースされた。

 ドナ・ジーン・ガチョーの東部デビューで、〈How Sweet It Is〉でガルシアがガチョー夫妻を紹介した。

 〈How Sweet It Is (To Be Loved By You)〉のデッドによる唯一の演奏。ガルシアのソロ・プロジェクトでは同じく1972年のマール・ソーンダースとのデュオ・プロジェクト以降最も多く演奏された曲で総計400回以上。Brian Holland, Lamont Dozier & Eddie Holland の作詞作曲、マーヴィン・ゲイが歌って196501月にビルボード6位。


04. 1983 Compton Terrace Amphitheatre, Tempe, AZ

 金曜日。開演7時。この年最初のショウ。

 〈My Brother Esau〉が初演。バーロゥ&ウィアの作品。1987-10-03 まで計104回演奏。スタジオ盤は《In The Dark》収録。〈Touch of Grey〉シングル盤のB面。旧約聖書創世記のエサウとヤコブの双子の兄弟の話を敷衍している。タイトルからしてヤコブの視点から語る。


05. 1985 Springfield Civic Center Arena, Springfield, MA

 月曜日。このヴェニュー2日連続の2日目。13.50ドル。開演7時半。


06. 1986 The Spectrum, Philadelphia, PA

 金曜日。このヴェニュー3日連続の最終日。開演7時。

 〈Desolation Row〉の初演。1995-07-02まで計58回演奏。スタジオ盤収録は無し。Bob Weir & Rob Wasserman でも演奏された。この初演ではウィアはまだステージで歌詞を見ていた由。だが、後にはかれの最高の歌唱も生む。デッドのライヴ音源によるディラン・カヴァー集《Postcards Of The Hanging》はこの歌の冒頭の1行からタイトルをとっている。


07. 1990 Knickerbocker Arena, Albany, NY

 日曜日。開演7時半。このヴェニュー3日連続の中日。第一部の3曲、第二部のクローザーを含む5曲が《Dozin' At The Knick》でリリースされた後、《Spring 1990 (The Other One)》で全体がリリースされた。

 この日も前日の流れを継いで、全体にクールで軽快な演奏をする。ガルシアのギターは澄んだクールで軽い音。ミドランドのハモンドは時に熱くなるが、ガルシアに引っぱられてか、軽くなることも多い。3人各々の歌唱もゆったりと余裕がある。演奏を心から楽しんでいる。こちらとしては流れに身をゆだねていればいい。

 オープナーの〈Greatest Story Ever Told〉でガルシアとミドランドが掛合いをやる。3曲目〈Wang Dang Doodle〉であガルシアが MIDI で軽快なサックスの音を出すのに、ミドランドが熱いオルガンで応える。それにしてもこういうところで〈Jack-a-roe〉のような伝統歌を聴くのは嬉しい。しかもそれが他の曲から浮いているわけでもない。デッドの懐の深さの現れではある。最初のハイライトは〈Bird song〉。ガルシアは途中からフルートの音色にする。後半、全体のジャムが離陸する。基本的に明るい色調にこの歌本来の哀しみが伝わってくる。

 第二部オープナー〈Eye of the world〉ではガルシアに連られてか、ウィアのギターもミドランドのシンセも軽く浮上し、コーダにかけて、今にも終ろうとしながら終りきらないジャムが続く。くー、たまらん。続く〈Samson and Delilah〉では、ミドランドとガルシアが "I would tear this whole building down" "down" を「ダウゥゥゥゥン」というように伸ばすのがカッコいい。やはり間髪を入れずに始まる次の〈Crazy finger〉は後半スパニッシュ・ジャムになり、自然に移行する〈Truckin'〉ではガルシアのすばらしいソロからバンド全体がゾーンに入ってゆく。ウィアがリフを始めて遷移する〈Spoonful〉で、この日初めて緊張の色が現われ、ガルシアのソロもシャープになる。

 Drums ではこの日はあえて MIDI を使わないつもりらしい。クロイツマンはドラム・キットで、ハートは様々な打楽器を使う。後者の素材は竹、革、金属、木、他にもあるらしく、形状もいろいろのようだ。

 Space では一転、MIDI を使いまくる。ガルシアのバスーンに、ハートだろうか、金属音の打楽器で掛合う。やがてウィアに交替。後半、ミドランドが参加して、やはり金属音で茶々を入れると、ガルシアはトランペットに切替える。これまた前日に匹敵するほど面白い。

 Space から出る先はミドランドのベスト・ソングと思う〈I Will Take You Home〉。ドラムレスで、ミドランド自身の電子ピアノとガルシアのトランペットだけがバック。名演。一度しっかり終ってから、ガルシアが小さくビートを始めてだんだん大きくなり、ドラムス、ウィア、オルガンが加わって〈Goin' Down The Road Feeling Bad〉。快演。コーラスを繰返して盛り上げておいて、一転〈Black Peter〉。この演奏は実にパワフルで、とてももうすぐ死にそうにはない。人の思惑など気にかけず、おれは生きぬいてやると、ガルシアのソロも言っている。やはりきっちり終り、一拍置いてウィアが〈Around And Around〉を歌いだす。ガルシアのソロも電子ピアノのソロも面白い。ウィアの演技が秀逸。一度静かになり、ガルシアは小さな音でシンプルに同じ音を連ね、その後のソロが粋。

 アンコール〈The Mighty Quinn (Quinn The Eskimo)〉は終始3人のコーラスで聞かせる。

 ツアーも半ば。この2日間は一つのピーク。


08. 1991 Knickerbocker Arena, Albany, NY

 日曜日。このヴェニュー3日連続のランの最終日。22.50ドル。開演7時半。第二部4曲目〈Spoonful〉の後の〈Jam〉が2012年の、第二部クローザー〈Throwing Stones; Playing In The Band Reprise〉が2018年の、各々《30 Days Of Dead》でリリースされた。


09. 1993 Dean Smith Center, University of North Carolina, Chapel Hill, NC

 木曜日。開演7時半。このヴェニュー2日連続のランの2日目。第一部5曲目〈Lazy River Road〉が《Ready Or Not》でリリースされた。


10. 1994 Nassau Veterans Memorial Coliseum, Uniondale, NY

 金曜日。このヴェニュー5本連続の中日。27.50ドル。開演7時半。ブルース・ホーンスビィがアコーディオンで参加。第一部6曲目〈Black Throated Wind〉でウィアがアコースティック・ギター。(ゆ)


0111日・火

 クーキー・マレンコの今年の予想、というよりも、期待、願望に近い。クーキーはDSD録音・配信のパイオニアで、優秀な録音技師、Blue Coast Records の主催者。


1) DSD ダウンロードがカムバックする。

 実際、昨年も遅くなって、Blue Coast での DSD のダウンロード販売数がかなり増えているそうだ。アジアがメインでヨーロッパが少し。アメリカ人は DSD の違いがわからないのか。まあ、あたしもわかるとは言えない。ただ、DSD で出ているものは、DSD で聴くと気持ちがいいことは確かだ。もっとも正直言って、Blue Coast で出ているミュージシャンにあまり食指が動かない。Tony Furtado ぐらい。


2) ストリーミングはリスニングの音源として主流にならない。

 これは無いだろうなあ。ストリーミングが主流ですよ、すでに。ただ、リスニングの形態は多様化していて、あるメディア形態が他の全てを圧する、ということは減ると思う。

 あたしにとってストリーミングは今のところ、CDを買えない、買うまでもない音源を、とりあえず聴く場になっている。デッドが共演したり、何らかの関連のあるミュージシャンたちの音源を聴くにはたいへん便利。いちいちCDを探して買う必要がなくなった。他にもジャズの一部とか、とりあえず、どんなものか聴いてみる、というのがこんなに簡単になったことは今まで無かった。

 困るのは国内のアーティストの古い音源を聴こうとすると、CDを買うしかなかったりすることが多いのだ。


3) DSP つまり digital service provider つまり Apple, Spotify など、その他200に及ぶその同類から著作権料を徴収する方法が音楽配給会社には実のところわかっていない、ということが広く知られる。

 「音楽配給会社 music distribution companies」というのは ASCAP とか BMI のことか。ならばわが JASRAC もだが、これは要するに包括契約のことを言っているのだろうか。

 既存の放送局などのアナログと違って、デジタルでの配信では、誰のどの楽曲が何回ダウンロードまたはストリーミングされたかは正確に計数される。はずである。しかし、実際には数えられていない。ということはつまり、ミュージシャンにもレーベルにも、正確な数は報告されておらず、したがってそれに基く著作権料も払われていない。ということになる。これが放置されていいはずはない、とクーキーは言いたいらしい。だとしたら、まったくその通り、放置されていいはずはないよ。


4) アーティストが質の高い作品を生みだせるよう支えるために、アーティストの真のファンたちが NFT を買うことが、爆発的に増える。

 NFT Non-Fungible Tokens の略で、「等価交換できないトークン」、暗号通貨の一種だそうだ。実体は、たとえばある楽曲のストリーミングの1回1回、ダウンロードされるファイルのそれぞれに付けられたコード、なのだそうだ。うーん、実感が湧かない。だが、NFT の形で楽曲を買うことは、デジタル・データではあるが、他のコピーとは異なる、独自のユニークなものを手に入れることになり、かつてのシングル・レコードを買うことに等しくなる、らしい。NFT はトークンだが、それ自体を取引することも可能で、実際、ある楽曲の NFT がオークションでウン百万ドルで落札されたこともあるという。これってたとえばジョンのサイン入り〈抱きしめたい〉のシングル盤SP、なんてものがあるとして、それと同じことじゃないのかね。すでに、NFT の形でアルバムをリリースしているアーティストもいるらしい。どんな形でどのように普及するか、全然わからないながら、興味津々ではある。


5) Facebook, Twitter, Instagram などは、音楽をプロモートする場としての人気は衰える。

 代わりに、アーティストやジャンルや概念などを中心としたコミュニティが使われる。クーキーが念頭に置いているのは Discord のようなものだ。単に茶化したり、冷やかしたり、あるいはディスるためだけのコメントがまぎれこまないようにできるもの、ということだろう。


6) その洞察が信頼できるジャーナリストたちによる出版物をサブスクリプションするのに金を払う人間が増える。

 クーキーは実際にそうしているし、相手はクーキーだけがサブスクリプションしているわけではない。わが国ではどうだろうか。ジャーナリズムそのものがほとんど無きに等しいし、音楽はじめ芸術作品のバランスのとれた紹介・評価ができるよう訓練する場も無い。それでもそうしたジャーナリストが皆無なわけではない。と思いたい。


7) Netflix, Disney, などはサブスクリプションの数が減る。

 これもまあ、無いだろうが、これまでのような爆発的な増加は鈍るんじゃないかね。「凡庸なテレビや映画を一気見するよりも、ホンモノの、生身の人間を実際に体験することの方が、遙かに得るものは多いことに、みんな気がつきだしている」とクーキーは言う。それはその通りなんだけれど、Netflix にしても、ディズニーにしても、そのテレビや映画は「凡庸」よりもちょっとだけ質が上なのよね。大傑作じゃないけど、平均よりもそこそこ面白い。もっとも、「平均」の水準はしたがって常に上がりつづけるので、これからはそうはいかないから、まったく絵に描いたように「凡庸」なものも増えるでしょう。つまり、時間の奪い合いに、ストリーミング TV は今のところ勝利しているけれども、いつもずっとそういうわけにはいかないことも確か。


 あたしとしては、年末、このうち 3) 4) がどうなっているか、たのしみだ。



##本日のグレイトフル・デッド

 0111日には1978年と1979年の2本のショウをしている。公式リリースは無し。


1. 1978 Shrine Auditorium, Los Angeles, CA

 前日の追加公演。7.50ドル。開演7時半。ポスターには「人気沸騰のため」として、わざわざ追加してある。もちろん、あらかじめ仕込みはされている。

 会場は Shriner と呼ばれるフリーメーソンの一派の寺院として1926年にオープンした公会堂で、座席数6,700だった。2002年に大規模改修されて現在は6,300。州指定の史的建造物。ここでのイベントは娯楽向けが多く、アカデミー賞やエミー賞の授賞式も何度か行われたし、ミス・ユニバース・コンテストもある。コンサートもロックに限らず、様々な形のものの会場となった。

 デッドはここで19671110日から7本のショウを行ない、この1978年1月が最後。最初のショウが《30 Trips Around The Sun》の1本としてリリースされている。


2. 1979 Nassau Veterans Memorial Coliseum, Uniondale, NY

 このヴェニュー2日連続の2日目。すばらしいショウの由。ほんと、こういうのを聴く余裕が無い。公式リリースされているのを聴くだけで精一杯。(ゆ)


5月24日・月

 市から案内が来たので新型コロナ・ワクチン接種予約をネットでやると1回目は7月末、2回目はその3週間後。最速でこの日付。50代以下は秋以降か。6月に入るとかかりつけ医でもできるようになるというけど、老人はともかく、この辺りでは今どきかかりつけ医なんていない人間の方が多い。東京まで通勤している人たちは大規模接種会場をめざす手もあるが、一都三県の住民は誰でもめざせるから、混雑なんてもんじゃないだろう。1日1万人だそうで、1ヶ月休みなしにやって30万人。焼け石に水くらいにはなるか。


 Apple Music のロスレス、ハイレゾ対応の詳細が明らかになってきて、ハイレゾをどうやって聴くか、かしましい。一番簡単で音も良いのは AirPlay 対応の DAP や DAC、DAC付きのAVアンプに飛ばして聴く形だろう。もちろん USB-DAC などかまして有線でも聴けるけれど、無線に慣れてると面倒なんじゃないか。普段ワイヤレス・イヤフォンなんぞ使わないあたしだって、AirPlay の便利さは一度味わうと戻れん。FiiO の M11Pro、あるいはもうすぐ出る M11Plus なら、ハイレゾをさらに DSD に変換できるから、今でも十分ハイレゾになる。

 AirPods 一族ではハイレゾが聴けないのはやはりがっかり。AirPods Max を買う気が一気に失せた。イヤフォンやヘッドフォンに AirPlay を仕込むのは、そんなに難しいのだろうか。WiFi は Bluetooth とは別のチップが要るとか。


 あるオーディオ・サイトで薦められていたハリィ・ベラフォンテのカーネギー・ホールのライヴ完全盤 から Danny Boy を聴く。なるほど絶唱。ここまでくるとアイルランドとは関係なく凄い。録音も凄い。MacBook Air の Tidal から AirPlay で M11Pro に飛ばし、DSD変換。イヤフォンは Unique Melody の 3D Terminater に DITA の OSLA ケーブルを奢った。この組合せ、少し音が練れてきて、たまらん。この先、どうなるか、楽しみじゃ。この音源は Tidal のマスターではない HiFi だけど、ヘタなマスターより音がいい。いいというレベルではないくらいいい。演奏と録音があまりに凄いので、Danny Boy から Shenandoah まで聴いてしまう。英語 > フランス語 > スペイン語 > 英語のうた。どれもまるで母語に聞える。こんなうたい手もいないだろう。Danny Boy も Shenandoah もこれ以上はできないくらい遅いテンポ。Danny Boy はオケ、Shenandoah はギター1本。こいつはあらためて全部聴こう。(ゆ)


 

 びっくりしたなあ、もう。ソニーの新しいウォークマン NW-ZX2 を買ったら、デフォルトで入っているデモ音源5曲のひとつが、Adam Agee & Jon Sousa の〈Paddy Fahy's〉だったのだ。それも市販されていない DSD 版である。


 アメリカはコロラドをベースとするフィドルとギターのデュオ。公式サイトにはマーティン・ヘイズがコメントを寄せているが、まさにマーティン・ヘイズ&デニス・カヒルの正統な後継者だろう。

 コロラド州ボゥルダーにある Immersive Studios で DSD 録音したものが 1st CD としてリリースされているわけだが、このスタジオの名前には記憶があるぞと調べたら、Otis Taylor の諸作がここでやはり DSD 録音されていたのだった。


 録音もすばらしいが、演奏がそもそも凄い。マーティン・ヘイズの言葉に嘘偽りはあるはずもないが、まったくその通りと心から同意する。21世紀のアイリッシュ・ミュージックは、20世紀とは別の方向に進化しているのだ、とこういう演奏を聴くと納得する。

 20世紀後半にアイリッシュ・ミュージックがめざしたベクトルとは一見対極にも見えるが、音楽自体はむしろよりラディカルにも聞こえる。

 それにしてもだ、いったい、この選曲は誰がしたのか。ソニー・ミュージックに属するミュージシャンでもないこのデュオの音源が、どういう経緯でここに含まれたのか、気になるところではある。

 さらに、こうしてこの音楽が、おそらくはハンパでない数のリスナーに届くわけだ。DSD というだけで耳を傾むける人もいるだろう。イヤフォンやヘッドフォンの試聴にも使われるだろう。そうして、何度も聴かれることになる。その影響は、すぐに現れるわけではないにしても、じわりじわりと効いてくるのではないか。

 妙にうれしいと同時に、こういう時代になったのだ、アイリッシュ・ミュージックもここまで来たか、との想いもわいてくる。

 ぜひにもCDとは別に、何らかの形で、DSD のままリリースしてほしいものではある。(ゆ)


02-24追記
 本人たちにメールを送ってみたら返事があり、Acoustic Sounds から DSD 版の配信販売をする予定の由。それもここ2、3ヶ月のうちらしい。

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