12月19日・日
かつて黒船はそれとすぐわかるものだった。ペリーの艦隊は、それまで軍艦や異国の船など見たこともない漁民にも、黒船だとわかった。得体は知れないが、何かとんでもないものがやってきて、自分たちの暮しが根底からひっくり返ろうとしている、とわかった。
今の黒船は見ただけでは、それとはわからない。しかし A&C オーディオのヒッポさんのような慧眼のプロにはわかる。
むろん、中華製の安くて質の良いオーディオ機器は今に始まったことではない。アマゾンを見れば溢れかえっている。ただ、その中のどれが黒船かは、あたしなどにはわからない。ユーザ・レヴューの数が多くて星の数が4以上なら、なにせ安いし、試してみてもいいかと思うが、それにしても多すぎる。音楽や本のように、試聴試読してみるわけにもいかない。それに本や音楽と違って、機械は実物を見て触って動かしてみてナンボのものだ。
しかし、ヒッポさんのような人がこれは黒船だと言うならば、話は違ってくる。ああいうスピーカーを作る耳の持ち主が言えば、まちがいない。最新の Dolphin は聴いていないが、その前のモデルは聴いている。スピーカーの置き場所がなくて、今のところ買う予定はないが、スピーカーを買うなら Dolphin と決めている。Dolphin を買うために、なんとか置き場所を作れないかとさえ思っている。
黒船はやって来た以上、来なかったことにはできない。そして黒船は一度来れば終りではない。ペリーは翌年またやって来て、幕府は否が応でも不平等条約を結ばされる羽目になった。
オーディオの黒船も、後から後からどんどんやって来よう。ヒッポさんも全てを試したわけではあるまい。他にも来ているにちがいない。既存のメーカーはどんどん撤退に追いこまれよう。
もっともそれは必ずしも悪いことではない。新しいプレーヤーたちの登場に道を開くからだ。黒船は幕府という賞味期限がとっくに切れていた体制が退場するきっかけとなった。つまり、賞味期限が切れていないかどうかは、黒船をチャンスにできるかどうかでわかる。
さて、あたしとしてはこの黒船を契機にして、Dolphin 導入に踏み切るか。
だけど、ホントに場所が無いのよ。買ったはいいけど、部屋の隅に箱のまま積んどくことになりかねない。同じツンドクでも、こちらはいただけない。
##本日のグレイトフル・デッド
12月19日には1969年から1994年まで5本のショウをしている。公式リリースは1本。
1. 1969 Fillmore Auditorium, San Francisco, CA
三連チャンの初日。3ドル。開演8時。2時間弱の一本勝負。冒頭4曲はガルシアとウィアの2人だけでアコースティック・セット。休憩無しに5曲目〈Mason's Children〉からエレクトリック・セット。
アコースティック・セットの冒頭3曲〈The Monkey And The Engineer 〉〈Little Sadie〉〈Long Black Limousine〉はこれが初演。
このアコースティック・セットはデッドとしては初のものとされるが、レシュが何らかの事情で遅刻したために、即席で行われたものらしい。4曲だけだが、演奏は一級のものだった、と Ross Warner が DeadBase XI で書いている。
2. 1973 Curtis Hixon Covention Hall, Tampa, FL
2日連続の2日目。この年最後のショウ。第一部後半の4曲と第二部2曲を除く全体が《Dick’s Picks, Vol. 1》としてリリースされた。さらに第一部クローザー前の〈Ramble on Rose〉が2012年の《30 Days Of Dead》でリリースされた。曲数で全体の5分の3、2時間10分強がリリースされたことになる。
3. 1978 Memorial Coliseum, Mississippi State Fairgrounds, Jackson, MS
7.50ドル。開演8時。聴衆がずいぶんと少なかったらしい。が、音楽は一級。DeadBase XI の Rob Bertrando は後半は特に良かったと言う。
4. 1993 Oakland-Alameda County Coliseum Arena, Oakland, CA
24.50ドル。開演7時。このヴェニュー三連チャン最終日。この年最後のショウ。
5. 1994 Los Angeles Sports Arena, Los Angeles, CA
開演7時半。このヴェニュー4本連続の最終日。この年最後のショウ。
第一部6曲目〈When I Paint My Masterpiece 〉でウィアはアコースティック・ギター。(ゆ)