クラン・コラ・ブログ(アイルランド音楽の森)

 アイリッシュ・ミュージックなどのケルトをはじめ、世界各地のルーツ音楽を愉しむブログです。そうした音楽の国内の音楽家も含みます。加えて主宰者の趣味のグレイトフル・デッド。サイエンス・フィクション、幻想文学などの話もあります。情報やメモ、ゴシップ、ただのおしゃべりなどもあります。リンク・フリーです。

タグ:バラッド

The Traditional Tunes of the Child Ballads, Vol 1    英国のバラッド集の基本中の基本にフランシス・チャイルド Francis James Child 編纂のものがあります。よく曲名の註記で「チャイルド○○番」と書かれているのは、19世紀末に刊行された ENGLISH AND SCOTTISH POPULAR BALLADS で付けられている番号をさします。305曲の歌詞とそのヴァリエーションを収め、詳しい索引と用語集をそろえたこの本は、いまだにこれを超えるものはないほどのものです。
   
    ところが、収録されているのはすべてうたとして伝わっていたにもかかわらず、うたわれていたメロディにまったくといっていいほど配慮がされていないのでした。チャイルドは文献学者として仕事をしたのです。この点を補ったのが Bertrand Harris Bronson の手になる TRADITIONAL TUNES OF THE CHILD BALLADS (1972) です。これまた、これ以上の書物はいまだにありません。
   
    長らく品切れで入手できなかったこのブロンソン本が、ようやく再刊される、という嬉しいニュースです。
    版元は Camsco MusicLoomis House Press。アマゾン・ジャパンでも買えます。

    オリジナルと同じ全4巻で英米同時刊行。価格はハードカヴァー 28.50GBP または 50USD、ソフトカヴァー 23.75GBP または 40USD。それぞれのサイトから購入可能。全巻購入すると検索可能な PDF を収録した CD-ROM が特典でつくそうです。

チャイルド本自体も長らく品切れでしたが、Loomis House Press で再刊中です。よくある元版のファクシミリ複製ではなく、誤記誤植等を修正してあらたに組み直した改訂新版だそうです。全5巻のうち、4巻まで出ています。

    アマゾン・ジャパンでは、アメリカの Dover 版があって、こちらの方が安いですね。こちらは全巻完結してますが、ただ、刊行年月日を見ると、Loomis House 版の5年前なので、内容が同じなのかは不明。一応新版となっていますが、Dover はファクシミリ復刻が得意のはずなので、今ひとつ不安がぬぐえません。
   
    チャイルド・バラッドはイングランドやスコットランドの伝統歌謡のアルバムなら、はっきり書いていなくても、1、2曲はたいてい入っているくらいのものですが、まとまった録音はそう多くありません。一番のお薦めはイワン・マッコール&ペギー・シーガーの《THE LONG HARVEST》と《BLOOD AND ROSES》 のシリーズ。上記 Camsco がCD復刻しています。
   
    それにしてもこのふたつのシリーズが復刻されていたのには狂喜。なんとかカネを作らなくちゃ。
   
    チャイルド・バラッドの録音については、その昔、名古屋の小川さんが曲ごとの収録アルバム・リストを "OAK" に連載したことがありましたが、今ならネット上にあるかしらん。と思ったら、ここがそうらしい。(ゆ)

本日23時予定で2月情報号を配信しました。届かない方は編集部までご一報ください。


それにしても、びっくり仰天。こんな人が実在したとは。

女性が恋人の後を追って、男装して船乗りになるというのは、英語のバラッドでは人気のあるもののひとつですし、こういう話にはモデルになる人ないし事件があることも、ごく普通ではありますが、これはもうまるでまんまではないですか。

しかも、この人、没年がわからない。この時だけ、世の中の表に浮上して、また消えてしまったのですねえ。故郷には帰ったのでしょうが、この後、どんな人生を送ったのか、どうも気になります。

こういう人を項目としてとりあげている DNB も立派。(ゆ)

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