クラン・コラ・ブログ(アイルランド音楽の森)

 アイリッシュ・ミュージックなどのケルトをはじめ、世界各地のルーツ音楽を愉しむブログです。そうした音楽の国内の音楽家も含みます。加えて主宰者の趣味のグレイトフル・デッド。サイエンス・フィクション、幻想文学などの話もあります。情報やメモ、ゴシップ、ただのおしゃべりなどもあります。リンク・フリーです。

タグ:バルカン

 03/05 発売のモザイクの新作《チェンジング・トレインズ》の
(ゆ)執筆のライナーに、誤植がありました。
誤植というより小生の変換ミスを、
校正でも見逃がしていたので、
申し訳ありません。

 ブックレット 3pp. の下から2行目、
[05] Rerben's Transatlantic Express の項で、

「ニコラがルーマニアの伝統曲をがドィルカで弾いていたところ」

とありますが、
これは

「ニコラがルーマニアの伝統曲をガドゥルカで弾いていたところ」

が正しいです。

 なんでこんなのを見逃がすか、
と後からは思えるのでが、
その時はわからないものなのです。

 お買い上げの皆様にはご訂正いただきたく、
お願い申しあげます。(ゆ)

 アンディ・アーヴァイン、ドーナル・ラニィたちがやっているモザイクの新作ですが、いま出回っているのは、ニコラ・パロフがミックスしたものです。ただ、録っているはずの音がはずされたりしていて、あまり出来がよくないので、ドーナル自身は気に入っていませんでした。なので、ライヴ会場での手売りに限定しています。

 ヒデ坊に、あんたがやらないで誰がやる、と尻を叩かれて、結局ドーナルが自分でミックスしなおしたものができあがったそうです。

 これはまず日本で、以前と同じく、ヒデ坊がやっている Zo-san Records から出ます。

 いつ出るのか、はまだわからないんですが、まあ、年内目標、でしょうか。

 音はまだぼくも聞いてませんが、ヒデ坊はとても良いとのたもうていたので、期待していいでしょう。

 品切れしているファースト《LIVE FROM THE POWER HOUSE》も、ボーナス・トラックを付けて出しなおすことを計画しているそうで、まだ持っていない、聞いていない人は、これを機会にどうぞ。(ゆ)

 東京・国分寺駅前の飲み屋「ラヂオキッチン」で開かれていた森洋利さんの写真展連動イベントとして、カヴァル&ネイの石田秀幸さん、サズ&タンブーラ&ヴォーカルの石田みかさんのライヴがありました。

 石田夫妻は東欧、北欧の音楽をレパートリィとするバンド、ナカトルマのメンバーでもあります。

 休憩をはさんで、前半では主にトルコの唄とダンス・チューン。後半ではヨーロッパ側のトルコからマケドニア、ブルガリアとバルカン半島をめぐるプログラム。

 前半ではほとんどサズとネイの組合せで、ゆったりとたゆたい、装飾音も微妙な陰翳を帯びた曲が続きました。もともとサズは民衆の音楽、ネイは宮廷の古典音楽の楽器で、この二つが共演することは本来はないそうですが、音楽として聞く分にはまことに良い組合せで、どちらが主とも従ともつかず絡みあってゆくのに耳を傾けていると、日常世界からさりげなく切りはなされます。

 みかさんのヴォーカルもすばらしく、芯のある声域の低い声とあいまって、柔らかい舌が空気を溶かすようでもあります。

 サズは大きく胴のふくらんだ形の復弦三コース。間近で演奏を見て初めて気がつきましたが、ストロークをしながら、右手の中指と薬指で楽器の表面を叩くことがあります。録音では打楽器奏者が別にいると思っていたのですが、どうやらこの奏法の音だったらしい。サズではごく普通の奏法の由ですが、アクセントとしてひじょうに効果的でした。

 ネイとカヴァルの違いは実質的にはほとんど無く、いわばヴァイオリンとフィドルの違いのように、使われるジャンルや環境、楽器に向かう基本的な姿勢によるものらしい。

 いずれにしても指穴の他に穴が無く、唇に斜めに当てることで音を出す仕組みですから、当てる角度や唇の形によって音がいろいろに変化します。かすれる音も出せる、澄んだ音も出る。ホイッスルやリコーダーよりも楽器自体の表現力はずっと大きいでしょうが、その分、演奏にも高度の技量が要求されます。

 トルコはトルコそのものというよりも異次元世界へのトリップでしたが、後半は、がらりと変わって、ここはもうバルカンの夜。お客で来ていた、ご友人のブルガリア人「ダンチョ」氏がガダルカで飛び入りされたので、ますますそのにおいが強くなりました。カヴァルとガダルカをタンブーラが支えるという形は初めて聞くもので、ひじょうに新鮮。ふだんこの辺の曲を聞く大編成のバンドやブラス・バンドの形よりも、曲そのものの良さ、魅力が浮きでてきます。

 前半と後半の対照の妙、前半抑えた分後半爆発したようなエネルギー、各種の楽器を操り、様々に地域、スタイルの違う音楽を演奏しわける技量には感嘆しましたが、まだまだこれは氷山の一角ではありましょう。

 ぜひ、CDなどで録音を出していただきたいところですが、その前にナカトルマのアルバム製作が年末から始まるそうです。こちらも楽しみ。


 トイレの中まで店内のありとあらゆるスペースに展示された森さんの写真も見応えがありました。植物の一部を大きく拡大する形がメインで、タンポポの綿毛にとまったちっぽけなバッタとか、二輪草の開きかけた蕾の写真が印象的でした。


 森さんのつながりで、ニッケルハルパの鎌倉さんなど、北欧音楽関係の方々が見えていました。スウェーデンのクラシック作品の演奏を精力的にされているステーンハンマル友の会の和田紀代さんもいました。他の北欧諸国と違い、国を代表する大作曲家がいない分だけ、かえって面白いらしい。表参道のカワイで毎週土曜、サロン・コンサートをされている他、今週水曜日には、ヴォーカル、ピアノ、ギター、ヴァイオリンによるライヴもあるそうです。

 奄美産のラムも旨かった。外はこの秋になって一番寒い夜でしたが、ほくほくと良い気分で家路についたことでした。(ゆ)

 北欧とバルカンの音楽を演奏して、ヴェーセンの前座なども勤めているナカトルマが、東京と横浜でライヴをするそうです。

 先日の Butter Dogs に続く、関西バンドの雄の東下です。

 ちなみにニッケルハルパはスウェーデンの鍵付きフィドル。ヴェーセンや、つい昨日まで来日していたラーナリムやのメイン楽器です。
 カヴァルはイランからマグレブにかけてのアラブ音楽でよく使われる縦笛。ロゥホィッスルに近いです。
 サズやドンブラはやはりマグレブから中央アジアに広く分布する撥弦楽器の一つ。サズは近年デヴィッド・リンドレーの得意楽器。ブズーキの祖先でもあります。
 アイリッシュ・ファンに一番なじみがあるのはガドゥルカでしょう。『リヴァーダンス』の初代オーケストラのメンバー、ニコラ・パロフが弾いていた小型の擦弦楽器。

   *   *   *   *   *

■ナカトルマ秋の東京 2days 2006

昨年夏から一年。今年も北欧&バルカンの楽器による「ナカトルマ」の東京ツアーを企画しております。昨年のツアー以後、「バルカノータ」メンバーのナカトルマ加入によりそれぞれの音楽性を越境したサウンド、さらに今回はゲストに素晴らしいマルチパーカッショニストのミウラ1号氏をむかえ、 よりパワフルになった演奏をぜひおたのしみください。

ふだん関西での活動がメインの「ナカトルマ」、この機会にぜひ!

〜nakatorma〜
 アヤコ vocal
 鳥谷竜司 tune lute , nyckelharpa(ニッケルハルパ)
 石田秀幸 kaval(カヴァル)
 石田みか saz(サズ), dombra(ドンブラ)
 高野橋舞子 cello, gadulka(ガドゥルカ)

〜ゲストメンバー〜
 ミウラ1号 percussion

★10/13(金)
西荻窪「音や金時
チャージ2600円 18:30開場 19:30開演

★10/14(土)
横浜・仲町台「カフェ・シエスタ
チャージ2000円(要予約) 18:00開場 19:00開演
045-944-3454(カフェ・シエスタ、14〜24時、不定休)
siesta@mva.biglobe.ne.jp

※13日は予約なしで直接のご来店のみ、14日はお店への予約制(当日のお問い合わせ可)になっておりますので、お間違いのないようお願いします。

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