クラン・コラ・ブログ(アイルランド音楽の森)

 アイリッシュ・ミュージックなどのケルトをはじめ、世界各地のルーツ音楽を愉しむブログです。そうした音楽の国内の音楽家も含みます。加えて主宰者の趣味のグレイトフル・デッド。サイエンス・フィクション、幻想文学などの話もあります。情報やメモ、ゴシップ、ただのおしゃべりなどもあります。リンク・フリーです。

タグ:フェスティヴァル

 夏のゲンまつりの時、梅田さんからこういうイベントに生梅で出ますと聞いて、チケットを頼んだ。生梅のライヴは久しぶりだし、昨年の coba 主催の Bellows Lovers Nightでこうした形のライヴの味をしめていたからだ。Tellers Caravan はその時に初めて見て、なかなか面白かった。Bellow Lovers Night はかれらの本来のライヴとは違うようだったので、本来の形でのライヴを見たいこともあった。

 今回の出演者を登場の順番にならべる。

 Tellers Caravan(開幕宣言)
 生梅
 玉木勝 Quintet "Flutter-flutter"
 ピクリプ
 #ハピレス
 舞浜国立倶楽部
 Tellers Caravan

 オープニングや合間のところどころ、また#ハピレスの後に、アルヴィースという名で、道化師兼ジャグラーが狂言回しをする。

 テラーズ・キャラヴァンはそのライヴを旅回りとしていて、今回も全体が旅であり、その行く先々で出会ったミュージシャン、バンドの報告をするという形に仕立てている。それぞれのバンドの出番の前に、テラーズ・キャラヴァンのメンバーが出逢いの具合を報告する。生梅なら、妖精の棲む島で会ったという具合だ。

 生梅と#ハピレスを除くとジャズ系のアクト。もっとも各々にタイプやレパートリィは異なるから、多様性は確保されていた。Bellows Lovern Night は「鞴」だけを扇の要にして、音楽のスタイルもプレゼンテーションも非常に幅広く、多様なアクトが見られて、そこが何よりも楽しかった。今回の共通点は見えにくいが、テラーズ・キャラヴァンが一緒にやりたい人たち、ということだろう。これまで聞いたところでは、テラーズ・キャラヴァンの音楽にはジャズの要素ははなはだ薄いが、個々のメンバーはジャズが原点なのだろうか。

 複数のアクトが入れ替わり立ち替わり出てくる形の公演では、思わぬ「発見」、出逢いがまず何よりの楽しみだ。今回はピクリプ。テナー・サックスとガット・ギターのデュオ。

 サックスは50前後、ギターは30代でともに男性。ギターはその一つ前にでた Flutter-flutter にも参加し、そちらではエレクトリック・ギターを弾いていた。おそらくはガット・ギターの方が得意なのだろう。MCからすると、マヌーシュ・ギターが原点らしい。このユニットではマヌーシュのようにリズムを刻むだけではなく、ピッキングでメロディも弾けば、複雑なビートも刻む。その呼吸がかなりいい。電気楽器より活き活きしている。

 サックスの方はジャズが原点ではあるが、モダンのように音符を撒き散らすのではなく、ゆったりじっくり聞かせるタイプ。この形はヘタをするとイージー・リスニングになるが、この人はたとえば一音を長く延ばして聞き手を引きこむ力がある。ハイライトは好きなのでとやった『千ちひ』のテーマ。メロディの変奏の展開が実にいい。

 そして、この二人の関係がまたいい。これもまた丁々発止ではなく、ゆったりとあせらず、時には互いにくるくると回ったりしながら、刻々と変化する速度と距離が山を下る渓流のようだ。結成14年目にして来月初めて出すというファースト・アルバムは楽しみだ。

 トップ・バッターで出てきた生梅は、スケールが一つ大きくなっている。PAのせいか、中原さんの声の響きが深い。別人の声のようだ。二人ともMCが格段にうまくなっている。中原さんは二人のお子さんを育てながらなのに、パイプもホィッスルも腕を上げているのには感服する。ロウ・ホイッスルの強弱の音の出し入れが巧い。装飾音を入れるパターンの語彙も増えている。このデュオの形は意外にハープの音も際だつのは、故意にそうしているのだろうか。梅田さんの切れ味も一番映える。これはあらためてワンマンでたっぷりと浸りたいものである。最後にやったオリジナルの〈森の砂時計〉は名曲の感、あらたなり。生梅は初めてという聴衆がほとんどだったようで、この曲が一番ウケていた。

 今回はPAがすばらしい。どのバンドも、各楽器のバランスがとれ、また個々の楽器が明瞭で、全体として大きすぎず、小さすぎず、みごとにどんぴしゃにはまっていた。ドラム・キットは右奥に置かれていたが、音は中央から左右に広がる形にミックスされていた。生梅の二人によれば、ステージ上のマイクの配置もキマっていたそうだ。各アクト間の配置替えもてきぱきとさばき、これらのスタッフはどこにもクレジットが無かったが、一番の功労者だ。

 おそらくは Bellow Lovers Night での経験が楽しく、自分たちもああいうことをやってみたいというのがこのフェスティヴァルを企画した動機ではあろう。リスナーにとっても、こういう形の企画はワンマンや対バンでは得られない楽しさがある。仕込みや運営の苦労はとんでもなく大きいだろうが、1回だけで終らせず、続けてほしいと願う。こういう企画を実現することで、演奏だけしていたのでは身につかないものが得られるはずだ。それは音楽家としての器となって返ってくる。

 途中15分の休憩が二度入って、14時過ぎから19時半まで、5時間を超えるのは、歌舞伎並みだ。そのせいか、観客も女性が圧倒的で、男性の客は両手で数えるほど、というのは歌舞伎座よりも女性比率がずっと高い。ただし、年代はぐんと若く、20代がほとんどではないかと思われた。さすがにくたびれ、また腹が減ってがまんできなくなり、アンコールが終ったところで、一足先に失礼した。昼間は台風の前兆で、いきなり雨が降ってきたりしていた空はきれいに晴れて、星がまたたいている。(ゆ)

 わが国では例年よりむしろ寒いくらいですが、
ヨーロッパではイースターの訪れとともに
フェスティヴァルの季節が始まります。

 今年の復活祭は西方では03/23で、
英国では翌日の月曜日も休日。
この週末にイングランド南岸ワイト島対岸のゴスポート、フェアラムで
屋内会場のものとしてはイングランド最大といわれる
フォーク・フェスティヴァルがあります。

 今年のラインナップは
われらがショウ・オヴ・ハンズ、
オイスターバンド、
キャスリン・ティッケル、
フルック、
ルカ・ブルーム、
スピアズ&ボゥデン、
ジョン・タムス&バリィ・クープ(今年の BBC2 Folk Awards のベスト・デュオ)
ロイ・ベイリー(まだ元気らしい。よかったよかった)
ラウー
ベラ・ハーディ
アスキュー・シスターズ(先日の Winds Cafe でも大好評)
チャンバワンバ(アコースティック版)、
ザ・メン・ゼイ・クドゥント・ハング(まだやってたんだ)
などなど。
各ミュージシャンのサイトのリストはこちら

 フェスティヴァル初心者や慣れない人間にとっては、
夏の屋外のものよりも、
屋内のほうが見やすいかもしれません。
まだ集まる人の数もそう多くないでしょうから、
宿の確保などもしやすいのではないかな。
ケンブリッジなど大規模なものは
テント持ち込みが普通のようですし。

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