クラン・コラ・ブログ(アイルランド音楽の森)

 アイリッシュ・ミュージックなどのケルトをはじめ、世界各地のルーツ音楽を愉しむブログです。そうした音楽の国内の音楽家も含みます。加えて主宰者の趣味のグレイトフル・デッド。サイエンス・フィクション、幻想文学などの話もあります。情報やメモ、ゴシップ、ただのおしゃべりなどもあります。リンク・フリーです。

タグ:ブリティッシュ

 まいどのことながら、諸般の事情により、明日20日配信予定の今月号の配信は遅れます。22日までには配信できるはず。乞御容赦。


 イングランドのビッグ・バンド、ベロウヘッドがついにライヴ DVD を出すそうです。02/09 発売予定で、Amazon.co.uk では予約受付が始まってます。消費税が引かれるので、送料込みで1,800円弱です。アマゾン・ジャパンにはまだ出ていません。PAL なので、アマゾン・ジャパンには出ないかも。リージョンは「2」です。2007年9月のコンサートを収録したもので、新作《MATACHIN》以前のレパートリィですが、そう大きく変わってはいないとおもわれます。スコットランドの The Unusual Suspects と並んで、ヨーロッパで今一番面白いバンド、とぼくは思います。ちなみにこれは 1st からの曲。2006年の映像。(ゆ)




 本日午前10時ちょうどの予定で、新年の情報号を配信しました。届かない方は編集部までご一報ください。


 洩れた情報をひとつ。テディ・トンプソンが音頭をとってアムネスティ・インターナショナルのための募金用に iTunes Store で〈Christmas〉というシングルをリリースしています。現時点ではまだ日本のストアでは買えません。

 これには両親のリチャード、リンダと姉妹のカミラが参加しています。くわしくはこちら

 またこのリリースを記念して、昨年 12/17 にロンドンのエリザベス女王ホールでコンサートが行われました。これには一家をはじめ、バート・ヤンシュ、クリス・ディフォード、レイチェル・アンサンク&ウィンターセット、ジェニ・マルダーなどが参加しました。リチャードとリンダが同じステージに立つのは、1982年の離婚以来でしょうか。イベントは大成功で、毎年の恒例行事にしてほしいとの声がしきり。

 なお、このコンサートの模様は一部が 12/20 に BBC で放送されました。(ゆ)

 本日、11:00 に配信しました。未着の方は編集部までご一報ください。

 メルマガにもちょと書きましたが、ここのところの円高というよりは英ポンド安、ユーロ安は信じられない。ポンドはわずか2ヶ月で200円弱から50円以上落ちてます。ユーロも160円強から40円の下落。このくらい落ちるとわれわれのような少額取引でも影響は大きいです。

 アイルランドの平均CD価格は20EUR で、EU外から買うと消費税分21%が差し引かれますから15.8EUR。今現在で1900円を切ってます。英国のCD新譜価格を14GBPとすると2000円弱。ここまで落ちると、送料払っても、向こうから直接買ったほうが、通販でも店頭でも国内で買うより安くなってしまいます。仕入れ時には円安だったりして、販売価格はそんなに急には下がりません。アマゾンなどはかなり頻繁に為替変動によって販売価格を変更してますが、それでも追いついてません。

 編集部も大喜びで、先日、ひさしぶりに大量注文してしまいました。ポンドもユーロもしばらくは下落傾向のようで、来年前半ぐらいまでは買い時かもしれません。また、今のうちに買えるだけ買っておくのもベターかも。そのうちこっちも危うくなるでしょうし、あちらでのCDリリースの勢いも衰える可能性があります。生演奏はまだしも、ルーツ系、トラディショナル系の音源パッケージのリリースは経済状況に左右されることが強いからです。

 ここ数年のイングランドの活況も、15年続いた経済成長の恩恵によるところが小さくないはず。英国はサッチャーが一次産業を潰してしまったために、産業といえるのは金融だけで、それがだめとなるといよいよ大英帝国衰滅の最終段階となるそうです。アイスランドで起きたことが、はるかに大規模に、長期間続く可能性もあるらしい。先日、いずれ1GBP=1USD にもなる、という論評もありました。

 もっともそうなるとパッケージからネット経由への音源リリースの移行が加速されるでしょうね。(ゆ)

 札幌のトリオ greyish glow が2年ぶりになるライヴを、来月はじめに行うそうです。現メンバーはボーカルのかんのみすずと森田志の、ギター兼ベースの菅野壮の3人で、このメンバーでのライヴとしては初めての由。

 このトリオはわが国では珍しく、ケルト系ではなく、イングランド志向だそうで、もとはア・カペラのコーラス・グループとして出発してます。ぜひ、録音を出していただきたいもの。

 今回のライヴは四つのグループが出るものだそうです。

 詳しくはこちら

「あらかるとな夜 in 時計台ホール 2008」
12/02(火)18:40開場 19:00開演
札幌時計台2Fホール
1000円

出演:HARU with A.C.B うたぴ 流通センター前 greyish glow


Thanx! > かんのさん@greyish glow

というイベントが毎月最終水曜日に東京・高円寺の「ミッションズ」であるそうですが、今月はハープの坂上真清氏のバンドが出演する由。

 イベントの MySpace でオラン以外の各バンドのサンプルが聞けます。

 個人的には坂上道弘氏のいるチェロ・トリオが気になる。(ゆ)


08/27(水)
高円寺ミッションズ
open 18:30 start 19:00
チケット:予約2,000円 当日2,300円 ドリンク別
予約:03-5888-5605
   kouenji-missions@kkf.biglobe.ne.jp
問合:POSEIDON
出演
CotuCotu(cello trio:坂本弘道、佐藤研二、三木黄太)

ハンドリオン
 坂上真清:celtic harp、藤野由佳:accordion、じょん:fiddle

オラン with オヤジミュゼッツ (accordion/女性vocal with
星衛:cello、くどうげんた:percussion)

音楽絵ほん(アストゥーリアスの筒井香織:clarinet & 川越好博:piano
と井利智子:cello)
公式サイトにもサンプルあり。

 横浜駅前のパブ「グリーン・シープ」での月例セッション、今月は今度の日曜日だそうです。

 日本一の蛇腹奏者、米山永一画伯も参加。アイリッシュからフレンチまで、幅広い曲が楽しめるそうな。

 なお、ミクシのコミュはこちら

08/17(日)15:00〜19:00

Irish Pub The Green Sheep

 これも今月号からこぼれた情報。

 昨年秋以来の第6回が来月第1土曜日にあるそうです。
今回は真夜中までやってるらしい。
アイルランドばかりでなく、イングランドやスコットランドやウェールズも好きという方はぜひどうぞ。

07/05(土)15:00~24:00
東京・高円寺 サブリエルカフェ
*500円チケットx3枚

 「もしかしてブラックホーク99選もやるかも」
 
  一応こちらで参加表明してくださいとのこと。

 英国のTV局 "Five"(昔の「チャンネル5」)が、イングランドのフォーク・ミュージックについての特集を組むそうです。

 イングランドのアーツ・カウンシルとの共同事業で、4人のミュージシャンにそれぞれ焦点をあてた番組 "My Music" が04/06から放映されます。

 4人はセス・レイクマン Seth Lakeman, ケイト・ラスビィ Kate Rusby, イライザ・カーシィ Eliza Carthy、アシーナ Athena。

 無知なので4人めは初耳ですが、ギリシア系の人らしい。この人かな。

 これは良いな。fRoots でも結構大きくとりあげてました。全然覚えてないんだが。

 イングランドにはギリシアからの移民も多いようで、数年前ロンドンに行ったときも、泊まったホテル近くのデリの従業員たちが話してたのはギリシア語に聞こえました。そこはお好みのサンドイッチをその場で作ってくれるタイプで、めっぽう美味しく、朝食はホテルではなくてそこで食べてました。イングランドの飯はまずいというのは昔の話で、移民のおかげでどこと比べても遜色なくなってました。ちょうど『ハリポタ』がブレイクした第3巻が出たばかりで、どこの本屋にも山積みになっていて、誰だ、こりゃあと驚いた頃のことです。

 というわけで「フォーク・ミュージックで最も成功している」4人に密着取材した1時間番組が4回。ナレーターは故ジョン・ピールの息子トム・レイヴンクロフト。

 英国のTVでイングランドのフォーク・ミュージックが取り上げられるのはこれが初めてではなく、昨年ノーサンバーランドのキャスリン・ティッケル Kathryn Tickell に焦点をあてた単発番組が、同じ Five で放映されている由。この番組が予想外の高視聴率(75万人が見たそうな)で、当時ゴールデン・タイムで放映されていた美術館巡り番組の倍だったことがきっかけで、この企画がもちあがったらしい。

 番組をオンラインで見られるのか、サイトを見てもちょっとわからないんですが、ご存知の方、ご教示ください。このキャスリンの番組も見たい。

 キャスリンて誰や、という方はまずこれをご覧あれ。

 中央でパイプを吹いてる美女(これだとわかりにくいですが、本当に美人)がキャスリン・ティッケルで、楽器はノーサンブリアン・スモール・パイプ。アイルランドのイルン・パイプと同じく、鞴で空気を吹きこみます。キャスリンはこの楽器の第一人者。フィドルの名手でもあり、そちらを演奏しているビデオもあります。

 演奏している曲はノーサンバーランドの伝統に則ったもの。テンポの異なる曲をつなげてメドレーにするのはやはりスコットランドの影響でしょう。それにしても、この演奏はすばらしい。ライヴ録音か DVD を出してほしい。

  今度の日曜日に迫った Winds Cafe 134
でかける曲の選曲をほぼ完了。
ミュージシャンとうたについてのコメント、
歌詞の大意をまとめて、
相棒予定の川村恭子嬢と主催者の川村龍俊氏に
点検のため送付。
ちなみにお二人は血縁ではない。

  今回は川村嬢にも選曲を手伝ってもらい、
自分だけではまず出てこない曲が選ばれたので
おもしろくなったと思う。
あたしがひとりで選ぶと
無伴奏歌唱が延々と続くことになり、
聞かせているほうは得意満面、
聞かされているほうは気息奄々、
ということになりかねない。

  一昨日、マーティン・ヘイズ&デニス・カヒルのライヴで
ピーター・バラカンさんと一緒になったら、
《THE IMAGINED VILLAGE》
を注文されたそうだし、
今年はじめの fRoots 誌のサンプラーに入っていた
Bella Hardy はたいそうお気に召されたようだ。
もちろん、彼女のものはかけるが、
イングランドの盛り上りはやはりホンモノである
とあらためて確認。(ゆ)

Sarah McQuaid (Photo by Alastair Bruce)  はじめのほうの Root Salad にタムボリンの船津さんのインタヴュー記事。
インタヴュアーはポール・フィッシャー。
掲載写真の背景に写っているのは、
fRoots編集長イアン・アンダースンのソロ・アルバム、
まだ、Ian A Anderson と名乗っていた時期の
《ROYAL YORK CRESCENT》The Village Thing, VTS3, 1970。
記事の内容は、われわれにとっては特に目新しいことはありません。
「ブラック・ホーク」と松平さんの名前が、
海外の雑誌で紹介されたのは初めてかも。


 それよりはやはりアン・ブリッグスへの
コリン・アーウィンのインタヴュー記事が気になります。
セカンド《THE TIME HAS COME》の再発で、
またアンにたいする関心が高まっている由。
とはいえ、これもまた数年前 MOJO に出た記事につけ加わるものは特になし。

 ミュージシャンとして活動した時期は本当に楽しかったが、
引退したことを悔いたこともない。
いまの生活にはまったく満足している。

 こういうところが彼女の特別なところなんでしょう。
巨大な影響をあたえつづけながら、
その影響自体をクールに眺めていられる。
自分の名声に舞いあがることもない。

 初めて聞いたように想うのは、
親友でもあったサンディ・デニーのいた頃のフェアポートは良いが、
それよりはザ・バンドのようなアメリカのグループや
初期のクリームのほうが好み
ということ。
サンディの作品のなかでもベストのひとつ〈The pond and the stream〉、
フォザリンゲイのアルバムに入って入る曲が、
アンをうたっていたことは、
前にもどこかで読んだ気がしますが、
リチャード・トンプソンの、
これまた傑作のひとつ〈Beeswing〉も、
アンのことだ、というのは迂闊にもはじめて知りました。

 最近のできごとでは、
セカンドに入っている〈Ride, ride〉が
2002年にジェニファ・アニストン主演の
映画『グッド・ガール The Good Girl』に使われたこと。
うたったのはジリアン・ウェルチ。

 ジリアンの歌唱は自分のほど良くないけれど、
ソニーはわたしのを使わせたくなかったのよ、
でも、作曲者印税をたくさんもらったので文句はないわ(笑)。

 若いシンガーが自分のテープを送ってきて、助言を求めたり、
実際に家までやってきたりすることが、
そう頻繁でないにしても、絶えず続いているそうな。
そうしたなかでここ6年ほど、
特に親しくなったのが Alasdair Roberts

 最後にアーウィンがお定まりの質問をしていますが、
そして、それに対して長い長い沈黙に考えこんでもいますが、
やはり「復帰」はないんでしょう。

 これからも、
彼女の録音に人びとは耳を傾け、
彼女をめぐっていくつものうたが書かれ、
たくさんの人が彼女のうたをうたい、
こうした記事が載ればまず真先に読まずにはいられない、
そういう存在であり続けるのでしょう。
その点では、ニック・ドレイクやサンディ・デニーと同じなのかもしれません。


 アン・ブリッグスの記事は途中から後ろのほうに飛んでいますが、
その続きのページの反対側に
Sarah McQuaid のデビュー作《WHEN TWO LOVERS MEET》復刻のうれしい記事。
ひじょうにすぐれたシンガーであり、ギタリストでもある人。
DADGAD ギターの教則本を書いてもいます。
ついでに美人(上の写真 Photo by Alastair Bruce)。

 マドリード生まれ、シカゴ育ち。
1994年からつい先日までアイルランドに住み、
結婚してふたりの子どもをもうけています。
今年、コーンワルに引っ越し、
セカンド・アルバムの録音を完成させた由。

 このデビュー作はアイルランドに住んでいた1997年に
録音、リリースしたもの。
名曲名演名録音。
プロデュースはジェリィ・オゥベアン。
ジェリィ自身の他、ジョン・マクシェリィ、ニーヴ・パースンズ、
トレヴァー・ハッチンソン、ロッド・マクヴィー等々がサポート。
録音はトレヴァーのスタジオ。

 セカンドも今年5月、
ふたたびトレヴァーのスタジオで録音。
ふたたびジェリィ・オゥベアンのプロデュース。
ジェリィの他にはリアム・ブラドリィとモイア・ブレナックがサポート。
テーマはオールド・タイムだそうです。
リリースは来年初め。(ゆ)

 「ブラック・ホーク」の時代は過去のものになった。
この本『渋谷百軒店 ブラック・ホーク伝説』は、
そのことのひとつの証左でもある。
そうだ、自分の中にくすぶっていたあの時代への郷愁もあぶり出された。


 この中で、皆さん、口をそろえて言っているが、
「ブラック・ホーク」に通ったことと、
松平維秋の文業に接したことは、
ぼくにとっても決定的な体験だった。
しかし、今やはりあれは過去のことに属する。
「ブラック・ホーク」で聞いていた音楽そのものは、
今でも新鮮に聞き返すことができるが、
松平さんが「ブラック・ホーク」を去ってからも、
音楽自体は先へ進んでいる。

 松平さんが「ブラック・ホーク」を去った時に起きていたことは、
ロックのポップ化だけでは無かった。
これも、船津さんが書いているが、
次の時代への胎動も確実に始まっていたのだ。

 「99選」に含まれるアルバムは
いずれも時代を超えた価値を持ってはいる。
だが、
ディック・ゴーハンにしても、
ヴィン・ガーバットにしても、
ジューン・テイバーにしても、
あるいは
フェアポート・コンヴェンション
ペンタングル
アルビオンズのメンバーたちにしても、
みな、その後に巨大な仕事をしてきている。
死んでしまった人びとは別としても、
生きている連中はいずれもバリバリ現役だ。
オールダム・ティンカーズだって、
活動を続けている。
例外はアン・ブリッグスぐらいだ。

 その事情はトラッドだけでなく、
他の音楽にしても同じはずだ。
「99選」のリストを全部そろえるよりも、
あそこに名前が挙がった人びとの
「その後」や「今」を追いかける方が、
収穫は遙かに大きいはずだ。

 また、
すぐれたレコードはあの99枚に限られるわけではもちろんない。
同じくらいすばらしい、
あるいはもっとすばらしいものだって、
いくらでもある。
はやい話、ここに選ばれた人びとの後を追って、
たくさんの人びとがあらわれ出ている。
かれらに負けない、
ときにはかれらもかなわない
音楽をうみ出してきている。

 加えて、
良い音楽がすべて「ブラック・ホーク」にそろっていたわけでも無い。
初期の頃はいざ知らず、
「ブラック・ホーク」がとりあげたのは英語圏白人の音楽で、
それもブルース色は極力排除されていた。
テクノやプログレ、ハード・ロックやメタル系は別としても、
アメリカン・ミュージックの二つの高峰、
フランク・ザッパとグレイトフル・デッドも、
ほぼ無視されていた。
カントリーとブルーグラスの本流も、
オールド・タイムのコアの部分も、
直接の担い手よりは、
そうした音楽を消化して独自の音楽を作った人びとを通じての、
間接的な関わり方だった。

 つまりは、
「ブラック・ホーク」で聞けた音楽のタイプは、
ごくせまい範囲のものだったのだ。
むろん、それは意図的な制限であり、
あえて守備範囲を絞ることで、
その奥の広大な世界へ分けいるためだ。
そうやって客を選別し、固定客を増やす。
他のタイプを聴きたければ、どうぞ、他の店に行ってくれ。
ここでは、これしかかけないよ。

 99枚のレコードをそろえて聴くことも、
ひとつのアプローチではあるだろう。
しかし、そこで満足してしまっては、
この99枚が提示された意図を裏切ることになる。
ほんとうにやるべきことはそこから始まるからだ。
99枚を聴くことで、
音楽への、そしてその背後の文化への、
感性を鍛えること。
そして、その感性を使いこなして、
自分なりの何かをつかみとってゆくこと。
松平さんが、言い続け、書き続けたのは、
結局そのことの大切さであり、
言い続け、書き続けることで、
そうした営為に向かって、
リスナーを、読者を励ましていたのではなかったか。
叱咤激励と書きたいところだが、
松平さんに「叱咤」は似合わない。

 この本に登場する、その後独自の道をあるいてきた人びとも皆、
「ブラック・ホーク」でおのれの感性を磨き、
みがいた感性で自らの音楽をつかみとってきている。

 つまるところ、
かの人はこの人生をどう生きるかを、
自分の手でつかみとることの大切さを
言い続け、書き続けたのではなかったか。

 これこそ、「文化的雪かき仕事」でなくてなんだろうか。

 「99選」は松平さんの意図ではない。
彼が店にあるかぎりはありえない企画だった。
これは松平さんが去った後、
殘った人びと、後から来た人びとがその仕事を継承するための、
試みのひとつだった。

 ならば、自分なりの「99選」を作ることはどうだろう。
他人に見せるための99枚のリストを作ること。
その場限りの思いつきではなく、見るものを納得させるリスト。
見た人に、そのリストを持って(中古)レコード屋を回らせるだけの力のあるリスト。
これとはまったく重複せず、
しかし、同じくらい強烈な価値観を、感性を、哲学を主張するリスト。
そういうリストを、おまえは作ることができるか。

 この99枚のリストは、じつは読者に向かって、リスナーに向かって
靜かにそう問いかけている。(ゆ)

 今年のクロップレディ・フェスティヴァルでは、フェアポート・コンヴェンションのオリジナル・ラインナップによる《LIEGE AND LIEF》全曲のライヴ演奏が行われたわけですが、その模様をBBCが録音し、現地時間今日10日夜7時からの Mike Harding Show で放送されるそうです。

 番組はネットでもリアルタイムで聞くことができますし、以後1週間、BBCのサイトの "Listen Again" のコーナーで聞くことができます。

 なお、ライヴで亡きサンディ・デニーの代役を務めたのはクリス・ホワイルでした。


 編集部偏愛の、イングランド最高のデュオ、ショウ・オヴ・ハンズのベスト盤が出ます。

 2枚組で、1枚目ではライヴで人気の曲4曲を録音しなおしています。その4曲は〈Exile〉〈Are we alright〉〈Santiago〉〈Crow on the Cradle〉で、まあ、納得の選曲。
 2枚目はファンからの投票で内容が決まっています。公認のファン・クラブである Longdogs が中心になってまとめたもの。〈Tall Ships〉の22分ヴァージョンもある由。もちろん、収録30曲全曲リマスタリングです。

 今年は例の〈Roots〉の大ヒットで、あちこちから引っぱりだこになり、出演したフェスティヴァルの数17というのは、ひょっとすると音楽界を見わたしても最多出演回数かも。

 ハイライトはピーター・ガブリエルからイーデン・プロジェクトに招かれたことで、これまでとは違うリスナーにその存在を知られたようです。おかげで、スティーヴは Womad のサマー・スクールで作曲のクラスを担当し、10月にロンドンで開かれる音楽賞の授賞式で、ガブリエルの作品をデュオでうたってくれと頼まれた由。

 秋のツアーは久しぶりに二人だけで回り、近頃はあまりうたう機会がない古いレパートリィを中心にしたものになるそうです。

 またスティーヴ・ナイトリィの3冊目の歌集も今月半ばに出ます。《COUNTRY LIFE》《WITNESS》の2枚と、スティーヴの2枚目のソロ《CRUEL RIVER》収録の作品が入る由。

 ツアー・スケジュール等は公式サイトへどうぞ。

 アナウンスだけでなかなか出ませんが、フィルのボックスも予定されています。こちらのサイトをどうぞ。

 久しぶりにまとまった音楽の原稿を書いていた。“The Dig” の50号記念特別付録「オール・タイム・ベスト50」と、CDジャーナルから出るムック『ブラックホーク伝説』中の「新版・ブラック・ホークの選んだ99枚のディスク」のうち、トラッドとブリティッシュ・フォーク関係12枚。

 「オール・タイム・ベスト50」の方は50号記念だから50枚なのか。まあ、遊ばせてもらった。もう少しジャズやクラシックを入れたかったが、50枚というのはいざ選んでみると少ない。どうせなら、99枚ぐらいやりたいものだ。朝の8時に一点確認の電話がかかってきたのには驚いた。校了直前だったらしいが、徹夜明けだろうか。

 「新版・ブラック・ホークの選んだ99枚のディスク」はなんとか締切までに書きおえて、送ったとたん、どっと疲れた。かつて『スモール・タウン・トーク』11号に掲載された99選のセレクション自体は変えず、松平さんの文章もそのまま。松平さん以外の人が書いたものだけ、別の人間が新たに書きおこすという形。

 こんなに緊張した原稿は、絶えて記憶がない。まるで初めて公にする予定でトラッドについての原稿を書いたときのようだ。かなわぬまでも、全力を尽くす。それしかないと腹をくくった。

 持っていないものはあらためてCDを買う。歳月というものは恐ろしい。オールダム・ティンカーズまでCDになっている。新録音こそ出していないものの、かれらが現役で活動していたのはそれ以上にうれしい驚き。結局まったくCDになっていないのはヴィン・ガーバットだけ。Celtic Music にも困ったものだ。訴訟の行方はどうなったか。

 ゲィ&テリィ・ウッズもベスト盤で部分的にCD化されているものの、あの3枚はきちんとした形で復刻されるべし。権利関係がクリアにならないのか。

 やむをえず、これまた久しぶりにLPを聞く。ついでに息子のリクエストでU2の《ジョシュア・ツリー》とか、クリームの《火の車》とかのLPをかける。前者の1曲目、CDから取りこんだ iPod ではさんざん聞いているはずの曲に涙を浮かべている。後者では、クラプトンのギターが浮いてる、ヴォーカルの方がバンドと一体感がある、という。《ヴィードン・フリース》も聞かせようとしたら、どこかへもぐりこんで出てこない。

 12枚のうちではすぐ書けるものと、全然ダメなものの差が激しい。一日一本ずつ、書きやすいものから書いていったら、最後にヴィン・ガーバットとアン・ブリッグスが残った。ヴィンは一度ほぼ書きあげたのが気に入らず、他のアルバムも聞きなおしてから、もう一度新たに書きなおし。

 アン・ブリッグスも出だしが決まらず、四苦八苦。ファーストやサードを聞いたり、他の本で気分転換してみたり。最相葉月『星新一』のイントロを読んでいたら、ヒントになったらしい。それでも下書ができて、パソコンに清書する段になって、またやり直し。

 これでなんとか形がついたと思ったら、終わっていたはずのゲィ&テリィ・ウッズが引っかかる。唸った末、後半を完全に書きなおし。

 もうこれ以上どもならん、さらに手を入れれば悪くなるだけ、というところまで来てひと息つく。細かい字数の調整をやって、えいやっと送ってしまう。

 めっちゃくたびれたが、この10日間ほどは充実もしていた。何年かぶり、ヘタをすると十年以上聞いていなかったものを聞きなおしたし、その後の消息がわかったのもうれしい。ヴィン・ガーバットのサイトのリンクに Rosie HardmanBernie Parry の名前を見つけて、各々のサイトに行ってみたり。そういえば、ずいぶん前、中山さんからロージィ・ハードマンのサイトがあると聞かされていた。この二人もなんと現役でうたい続けている。こうなると、アン・ブリッグスがもううたっていないというのはやはり特異なことにみえてくる。でも、ロージィは今の方がきっと良いだろう。

 あらためていろいろな人たちを一度ネットでさらってみなくてはいけない。しかし、新しい人たちもどんどん出てきているし、痛し痒しだ。

 ペンタングルのCD4枚組ボックス《THE TIME HAS COME 1967-1973》の国内仕様(BVCZ-37042/45, 税込8,400円)がBGMジャパンから発売されています。国内プレスではなく、輸入盤にライナー翻訳と歌詞、歌詞対訳を入れた別冊をパッキングした形。

 こういう仕様は従来は輸入業者がやっていて、レーベルには断りなしに勝手に輸入盤に帯を付けて国内流通させるため「勝手帯」と呼ばれたものでしたが、レーベル自体がやるとなると「勝手」ではないですねえ。ちなみに国内の流通網にのせるには帯を付けることが必須なのだそうな。

 ただ、ケースとほぼ同じサイズの別冊がシュリンク・パックされていて、流通ではいいのでしょうが、買ってシュリンクを破ると、元のケースと日本語冊子は別々になるわけで、保存にはまことに不便です。ユーザーの身になって考えていない点で、商品としては失格と言わざるをえないでしょう。


 このボックスの内容について言えば、個人的にはあまり出来のよいボックスとは思いません。普通こういうボックスは、これだけ聞けば全体像もわかり、他では聞けないものも聞けるお買い得品なのでしょう。が、このボックスはレア物に重点が置かれていて、熱心なマニア向けに作られているようなのですが、しかしほんとうにレアなのは最後の1枚だけで、これだけ聞くためにボックスを買うのは引きあいません。これからペンタングルを聞こうと言うのなら、ファーストから《ソロモンズ・シール》までのオリジナルを一つひとつ聞いていった方が、楽しみは大きいと思います。BGMでは現在オリジナル・ペンタングルの正規盤も紙ジャケ仕様ですべて出しています。あの6枚には音楽の神が宿った輝きがあって、時空を超えた音が響いています。全部 iPod  に入れて(できれば Apple Lossles 以上の音質で)シャッフルで聞くことをお薦めします。(ゆ)

 イングランド最高のデュオ、ショウ・オヴ・ハンズ最大のヒット曲(^_-)〈Roots〉のビデオ・クリップのダウンロード販売が始まってます。

 公式サイトから直接買うと、1.79GBPです。

 ビデオは昨年の Trowbridge Festival でのライヴ映像をもとにして新たに作られたものです。

 この唄は最新作《WITNESS》収録で、イングランド人に自分たちの独自の文化を見なおし、他人の後ばかり追いかけるなと訴えて、イングランドではセンセーションになっています。アイルランドやスコットランドの文化が(音楽ばかりでなく)「ケルト」のくくりで世界的に脚光を浴びる中、イングランドの人びとにとって、文化的アイデンティティ崩壊の危機が実感されているようですが、その状況への反映でもあり反応でもあるのでしょう。

 ここ1、2年、イングランドのフォーク・シーンが盛りあがってきていますが、その原動力にもこうした危機感があるのではないかと思います。

 タムボリンのリストにもありますが、ニック・ジョーンズのライヴ録音が10/09にトピック・レコードからリリースされます。《GAME, SET, MATCH》というタイトルで、1970年代末のライヴの録音の由。

 ニック・ジョーンズのライヴ録音は、夫人が呼びかけて集めたプライヴェート録音から作ったものが以前出ています。今回はトピックから、いわば公式リリースなので、音質や演奏も望みうる最高のものと期待できます。

 ちなみにニック・ジョーンズは1970年代、ブリテンのフォーク・リヴァイヴァルの一角を担った名シンガー&ギタリスト。人懐こさがそのまま形になったような、ほのかな明るさを感じさせる暖かい声の持ち主。ギタリストとしては、オープン・チューニングの弦に、右手首を回転させて中指ないし薬指を叩きつける独特の奏法で、ビートを強調したバラッド演奏を生みだしました。スタジオ録音としては最新のものである《PENGUIN EGGS》 (1980) にその完成形が聞けます。これもトピックから今はCDとして出ています。

 余談ですがこのアルバムの冒頭の曲〈Canad-ee-i-o〉は、後にボブ・ディランがほとんどそのままカヴァーしました。

 1982年に交通事故で脳に損傷を負い、奇跡的に一命はとりとめましたが、音楽家として公の演奏は以来していません。
 公式サイトはこちら

 悲劇的な形で音楽家生命を絶たれたこともありますが、ニック・ジョーンズと聞くだけで血が騒ぐのは、かれの残した録音のすばらしさの故でもあります。数は少ないながら、どれも珠玉と呼んで良いものばかり。

 また、あまり前面には出しませんがフィドルの名手でもあり、例えばショウ・オヴ・ハンズのフィル・ビアのようなイングランドのフィドラーに与えた影響は大きいものがあると、ビア自身が言っています。

 録音としてすぐ浮かぶものにセカンド・アルバムのバラッド〈Edward〉や3作目《NOAH'S ARK TRAP》の〈Jackie Tar〉がフィドル伴奏ですが、手に入りやすいものとしてはシャーリィ・コリンズ&アルビオン・カントリー・バンド《NO ROSES》があります。この中の〈The murder of Maria Marten〉の後半のフィドルとコーラスがニック・ジョーンズです。

 ニック・ジョーンズはまたメアリ・ブラックに大きな影響を与えたことでも知られます。メアリの出世作〈Annachie Gordon〉はやはり《NOAH'S ARK TRAP》収録のヴァージョンのカヴァーです。

 エメット・スパイスランド、ウッズ・バンドを再発したエアー・メール・レコーディングスは Dando Shaft の初期3枚も再発するそうで、こちらは07/05発売。各2,730円。

 最初の3枚で、ファーストにはボーナス・トラック4曲入り。サードはオリジナル・ポスター入り。以前、編集盤がCDで出てますが、この3枚が完全な形でCD化されるのは初めてじゃないかと思います。ただ、ぼくなどが知らないうちに出ている可能性もあります。一応チラシやサイトでは「日本初CD化」とうたわれてます。

 ダンド・シャフトはマーティン・ジェンキンズ、ケヴィン・デンプシィ、それにポリィ・ボルトンがいたバンド。フェアポートやスティーライよりややポップよりの、伝統とポピュラーのちょうど中間、いい意味での「中庸」の位置にいた感じです。今聞いても色あせてません。なお、トラディショナル・ベースですが、一応全曲オリジナルです。

 マーティン・ジェンキンズはバート・ヤンシュと一緒に来日もしました。デイヴ・スウォブリックとの Whippersnapper が一番有名かな(このバンドの音源もCD化して欲しい)。

 ケヴィン・デンプシィもいろいろなところで名前を見ます。

 ポリィ・ボルトンはヴィッキィ・クレイトンなんかの先達に当たる、良いシンガーです。一時アシュレィ・ハッチングスとつるんだりしてました。まだまだ元気らしい。

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