クラン・コラ・ブログ(アイルランド音楽の森)

 アイリッシュ・ミュージックなどのケルトをはじめ、世界各地のルーツ音楽を愉しむブログです。そうした音楽の国内の音楽家も含みます。加えて主宰者の趣味のグレイトフル・デッド。サイエンス・フィクション、幻想文学などの話もあります。情報やメモ、ゴシップ、ただのおしゃべりなどもあります。リンク・フリーです。

タグ:ヘッドフォン・アンプ

 カネは無いはずだが、我ながらいじらしく何とか工面してはあれこれ買ったものである。中でこいつはいい買い物とよろこんだものたち。

Rupert Neve Designs RNHP



 RND はプロ用機器、スタジオで使われるミキサーやコンプレッサーやを作っているメーカーで、あたしには縁はない。無かった。これが出るまでは。これもプロ用で、したがって XLR のバランス入力はあるが、ヘッドフォン・アウトは標準のアンバランスのみだ。しかし一度は聴いてみたかった。ちょうど中古が出たので、ありったけのモノをかき集めて下取りに出して手に入れた。円安で新品は10万する。

 聴いてみて、顔がにやけた。まさにプロの音である。入っている音をそのまま出す。飾りなんかないし、「個性的」な音も皆無。YouTube を聴くと、これは圧縮されているなと素人耳にもわかる。それでいて全体の音は崩れない。ちょっと不思議だ。

 良い録音だと芯が1本、ビーンと通って、ひっぱたかれようが蹴っとばされようが、びくともしない音。小さくて繊細な音もそのままに芯が通っている。これで Tago T3-01 とか、Neumann NDH30 を鳴らすと、まあ、嬉しそうによく歌う。シングルエンドしかないグラドも大喜び。

 録音の良し悪しもモロに出るが、音楽そのものの良し悪しは録音とはまた別だ。最低の録音の音楽が最高ということもある。そして、そういうケースもこれはちゃんとそう聴かせてくれる。バランス・アウトなんぞ、要らない。

 サイズが小さい。しかも ACアダプターである。つまりセミ・モバイルなのだ。プロの現場は屋外だってある。どこにでも持っていける。

 そしてこの小さな姿からは想像もできないパワー。高インピーダンスとか平面型とか、いちいち気にする必要もない。あっさり鳴らしてしまう。小さな巨人でもある。

 これまでのリファレンスはマス工房の model 433 だったが、こいつが来てからは、433 の出番はなくなってしまった。まあ、いずれまたもどるだろうが、当面は RNHP さえあれば、ヘッドフォン・アンプは何も要らない。むろん、これはヘッドフォンのためのものだ。イヤフォンをつなぐものではない。


 スティック型 DAC/amp のハイエンドが花盛りである。DAP が製品として行き詰まりを見せていることの反映だろう。一昨年出た Lotoo PAW S2 を皮切りに、昨年3機種、そして今年どっと出て、モバイルの主なメーカーで出していないのは SONY くらいになった。

 DAP を出しているところは、そのトップエンド・モデルの技術を注ぎこんでいる。最新の iBasso DC-Elite はロームの DAC チップはじめ、DX320 Max に採用したテクノロジーや部品やデザインをほぼそのまま使っている。

 RU7 も Cayin N7 と同じ 1-bit DSD DAC を積んでいる。さらにバランスのラインアウトがあるのがユニークなところ。これなら試さないわけにはいかない。貯めこんでいた楽天のポイントを注ぎこんで、これまた定価の6割ぐらいでゲット。

 スティック型は小型であることもウリだが、その中でもこれは小さいし、軽い。小さいながらディスプレイもついているが、軽いのである。

 で、音はこれまたすばらしい。ふわあと開放されて、滑らかな音がすんなりと体に入ってくる。これなら N7 も欲しくなる。DAC としての優秀さは、RME の ADI-2 Pro FS R と比べてまったく遜色ないレベルだ。

 あたしはこれを主に iPad mini と USB でつないで、ストリーミングを聴くのに使う。iPad mini は今年春に出た第6世代。とりあえずどんなものか聴いてみる時には無線で、つまり AirPods Pro や final ZE8000 Mk2、あるいは HiFiMAN HE-R9 + bluemini R2R で聴くこともあるが、本腰を入れる時には RU7 とヘッドフォン、あるいはラインアウトでヘッドフォン・アンプに入れて聴く。こいつのバランス・ラインアウトから上記 RNHP にバランスで入れて、クローズドならば T3-01、オープンならば NDH30 で聴くと、もうこれでいいじゃん、他に何が要るの、と思う。真剣に思う。わざわざストリーマなんて要らないよ。

 iPad mini 第6世代で聴くストリーミングは、MacBook Air の M1 とか、iPhone SE 第3世代とかで聴くよりもだんぜん音が良い。ストリーミングの音が良いのは、どこがどう効いてるのかわからないけれど、とにかく、手持ちの機器では一番新しいモデルであるこれが一番良い。このことに気づいてからストリーミングで聴くことが格段に増えた。レコードを持っていないものはもちろん、持っていても、ストリーミングで聴くようにもなった。


 新たな展開の見えない DAP で、DAC の方式は最新にして、他は原点回帰に活路を見出そうとしたのがこの RS2。チップではない、抵抗を並べた R2R DAC、メーカーが Darwin と呼ぶシステムである。USB DAC としても使えて、その時には、ソースの機器から電気をとらないモードがついている。RU7 が来る前は、これを iPad mini によくつないでいた。

 Darwin の音は好きである。透明度が高く、滑らかで自然に響き、押しつけがましいところが無い。Darwin の音はどんなだろうと買ってみて、当初はちっぽけなディスプレイ画面とか、データベースが日本語の扱いが不得意とかがあって、失敗したかな、と思ったのだが、聴いていくうちに、すっきりと雑味のない音が好きになっていった。そうなると、画面が小さいとか、日本語がまともに扱えないなんてことは枝葉末節になる。そしてマイクロSDカードを2枚同時に挿せる、無線が一切何も無いという潔さにあらためて惚れなおした。このクリーンな音は無線をばっさり切って棄てたおかげとも思える。

 よく見ると、このサイズ、小さなディスプレイ画面、マイクロSDカード2枚挿し、いずれもこんにちの DAP 隆盛のきっかけとなった、あの懐しき AK100、AK120 へのオマージュではないか。




 MA910SR は発売前に試聴して一発で気に入って予約した。広い音場ときっちりした定位、自然に軽やかに伸びる低域、そして明るいキャラクター。バランスにリケーブルするために、REB Fes 02 @ 川崎であれこれ試聴した中で、あたしにはベストの組合せとして、これに落ちついた。Black Back はちょっと硬くて太めではあるが、この音なら許せる。

 この少し前に qdc の folk を買って、かなり気に入っていたのだが、こいつが来たおかげですっかり霞んでしまった。folk を買ったのは、こんなモデル名をつけられたら、買うしかないじゃないか。実際、ヴォーカルは実に良い。ギター、フィドル、蛇腹、笛などの生楽器もいい。ただ、ダブル・ベースがちと軽すぎる。そこで MA910SR + AIMS を使うことが増える。


Brise Audio Accurate USB ケーブル



 RU7 の前にメインだったスティック型 DAC/amp は PhatLab Rio である。チップは ESS だが、およそ ESS らしからぬ、しなやかで丈夫な音で、商売を抜きにしても、お気に入りである。馬力もあるし、外部電源入力があって、ソース機器から電気を食わなくさせることもできる。

 これと組合わせる USB-C ケーブルをあれこれ試して、結局これがベストだった。つまり、手が届く範囲で、だ。ブリスオーディオはつい先日、USB-C ケーブルの新作を発表したが、17cm で20万ではどもならん。

 お金持ちではない、フツーの、むしろビンボー人にとって Accurate が限界である。とはいえ、これがあれば十分すばらしい。比べなければ、これで最高。今はこれと RU7 をつないでいる。


サウンド・ジュリア ミニ・ミニ・ケーブル
 サウンド・ジュリアは名古屋のオーディオ・ショップ。モバイルではない、スピーカー主体の昔ながらのオーディオ・ショップである。ブログが面白く、もう何年も前から定期的に覗いている。気に入った機器を空気録音して YouTube に上げることもあり、そこで使われる音楽がなかなか面白い。あまりに良いので問合せてレコードを買ったこともある。

 ほとんどは読むだけの機器だが、ときたま、面白くて比較的安いものがある。オリジナル商品の一つ、スーパーコンタクトオイルの効果は大きい。いくつか試した接点賦活剤で、明白に効果があったのはこれだけだった。



 ケーブルも自作する。ある日、車載用として注文を受けて作ったという両端ミニの、いわゆるミニミニ・ケーブルの写真が出た。これに一目惚れしてしまった。

 オーディオ製品はツラが第一である。良い機器はいかにも良い音が出そうなツラをしている。いわゆるデザインが良い、というのとは違う。Bang & Olfsen のように、音も良いかもしれないが、その音の良さよりもデザインの良さが先に立つものとは違うのだ。時には無雑作に、そこらにある材料を貼りあわせたようなものが、良いツラをしていたりする。上記の RNHP などもその例だ。いかにもプロ用の、むしろ実用を考えた、美しいとはお世辞にも言えないが、しかしその佇まいはいかにも良い音が出そうだ。それで聴きたいと思ったわけである。

 このケーブルもそれだった。車載用だからアース線がついている。ごつごつした太いシースがからまっている。ツラがいいというだけでなく、オーラまでたちのぼっている。まったく前後を考えず、気がついたときには、これでアース線の無いミニミニ・ケーブルができないか、とメールしていた。もちろんできる、車載用と同じ長さならいくらいくらと返事が来て、うーっと2日考えて注文した。ミニミニ・ケーブルはすでに Ladder7 に頼んで作ってもらったものがあり、もうこれ以上は要らないと思っていたことなど、すっかり忘れていた。

 それで作ったので写真をとりましたという記事がこれである。





 ステッドラーは日本支社が独自の製品、つまりブランドを借りた OEM をあれこれ出しているが、これはちゃんと本家から出たもので、さすがにデザイン、作りは一線を画す。お得意の三角軸で、この三角軸は他社も含めてこれまでで最高の握り具合である。これまで最高だったファーバー・カステルの Grip 2011や Lyra の Comfort Liner をも凌ぐ。握った瞬間に違いがわかり、書くにつれて、ますます良くなる。我ながらいい字が書ける。もう、がんがん書きたくなる。軸の太さ、表面加工、全体のバランス、すべて揃った傑作。芯径が 0.7 しかないのもよろしい。シャープペンシルの芯はすべからく 0.7mm であるべきだ。0.3mm など、人として使えるものではない。


 来年出るのを心待ちにしているのは final/REB がプロトタイプを REB fes に出していたイヤフォン。一つのボディでユニバーサルとカスタムを同時に可能というのがウリだそうだが、それよりもなによりも、音にやられてしまった。まるであたしのために作ってくれたような音、これまで聴いたどんなイヤフォンよりも良いと思える音、聴くのを絶対にやめたくない音なのだ。REB fes 02 で何の気なしに試聴して、とびあがった。

 もう一つ待っているのがあのアクセル・グレルが Drop とジョイントで作っているオープン・バックのヘッドフォン OAE-1。NDH30 もグレルが中心になって作ったというので聴いてみたものだ。今やわが家のオープン・タイプでは Stax SR-L300 Ltd と人気を二分している。NDH30は本来プロ用で、OAE-1はリスナー用だろうから、どう違うかも愉しみ。


 来年は上の二つ以外は今年買ったものをはじめ、手許にあるものをおちついて聴こう使おうと殊勝なことを心に決めたりもしているのだが、たぶん、またあれこれと新しいものに手を出してしまうのであろう。MEMS ドライバを使ったイヤフォンには期待している。Noble 製品の評判は良いが、Nuarl のものが出るのを待っている。根が新しもの好きなのは死ななきゃ治らない。(ゆ)

04月21日・木
 ブリス・オーディオのポータブル・ヘッドフォン・アンプ Tsuranagi を試聴する。他に希望者がいなかったので、1ヶ月、借りていた。堪能した。
 ぱっと聴くと無味無臭に聞える。どこか、ひ弱な感じもする。ところが、いろいろなヘッドフォン、イヤフォンをつないで聴いてゆくと、どうも妙なのである。何をつないでも、音楽に聴き入ってしまう。エントリーだろうとハイエンドだろうと、リスニング用だろうと、モニター用だろうと、インピーダンス600Ωだろうと、平面駆動だろうと、まったく関係がない。試聴するつもりが、再生した音楽にどっぷりはまっている。もちろん、試聴用には繰返し聴いて飽きないような曲を選んでいるわけだけれど、まるで、初めて聴くような按配なのである。これはつまり、ヘッドフォン、イヤフォンを鳴らしきっているのではないか。手許において使いつづけているのは、自分なりに素姓が良いと思えたものばかりで、そういうものはその実力をとことん引きだしているのではないか。
 最初はパワー不足かとも思えた。が、どんなヘッドフォン、イヤフォンをつないでも、音量ダイアルはほぼ正午で合う。初代 T1 とか T60RP だけは2時くらいになる。イヤフォンだと10時くらいで間に合う。ほとんどのものは正午からちょっと左右に振るだけだ。
 このアンプはただの箱だ。そう大きくもない。むしろ、小さい方だ。これより大きな DAP もある。その存在は無色透明だ。鳴っているのはヘッドフォン、イヤフォンであり、音楽だ。アンプではない。音楽を聴くためのアンプ、余すところなく音楽を聴くためのアンプだ。聴けば聴くほどに手離せなくなる。
 ケーブルを Brise 以外のものに替えてみても、基本的な性格は変わらない。よほどおかしなものを使わないかぎり、やはりヘッドフォンの性能を100%発揮させる。させているように聞える。これほどの音で聴いたことはないと思わせる。
 となると、これはしかし究極のアンプなのだ。これを買ってしまってはアンプ遊びには終止符が打たれる。将来、Brise からもっと良いものが出るかもしれない。しかし、これはすでに究極のレベルなので、新しいものが出たからといって、古くなって影が薄くなるような性格のものではない。
 ようやく、試聴機を返してくれと連絡があった。月末のヘッドフォン祭 mini で展示するのだろう。けれども、このアンプは30分ばかり聴いたところで、真価がわかるとも思えない。


##本日のグレイトフル・デッド
 04月21日には1968年から1986年まで7本のショウをしている。公式リリースは3本、うち完全版1本。

1. 1968 Thee Image, Miami, FL
 日曜日。このヴェニュー3日連続のランの楽日。セット・リスト不明。この日、ノース・マイアミの Greynolds Park で、トラックの荷台をステージにして4時間、フリー・コンサートをした由。そちらもセット・リスト不明。

2. 1969 The Ark, Boston, MA
 月曜日。このヴェニュー3日連続のランの初日。3.50ドル?

3. 1971 Rhode Island Auditorium, Providence, RI
 水曜日。4.50ドル。

4. 1972 Beat Club, Bremen, West Germany
 金曜日。テレビ番組の Beat-Club に出演。スタジオでライヴ演奏。10曲。1時間20分。《Europe ’72: The  Complete Recordings》で全体がリリースされた。テレビで放映された画像は YouTube で見られる。放送は生ではなく、編集されている。録音は編集される前の演奏を捕えている。
 番組は1965年から1972年年末まで、月1回放送された。この間にデビューしたおよそロックのバンドは一度は出たと言われる。1曲ないし数曲だけの出演が多かった。現在は YouTube に多数アップされている。
 10曲演奏しているが、なぜか〈Playing In The Band〉を2度やっている。しかも2度目はウィアが1番の歌詞をまちがえたため、バンドは大袈裟に大騒ぎしながら止める。やり直しはしかしやはりすばらしく、あたしはこちらの方がいいとは思う。やり直しはここだけではなく、4曲目〈Sugaree〉でも始めて間もなく、ガルシアが、誰かまちがえた(ピグペンらしい)ぞお、と言って止める。さらに8曲目〈Truckin'〉でも始めて1分ほどして止めてやり直す。
 いずれも、観客を前にしたショウであれば、おそらくそのまま続けてしまったはずのケースだ。テレビ放映では完璧を期した、とも言えるが、一方で、デッドのプロ意識を垣間見ることもできる。なぜかわが国ではグレイトフル・デッドはずぼらでちゃらんぽらんというイメージが横行しているようだが、それは無知ないし情報不足と先入観による単なる思い込みでしかない。
 演奏はすばらしい。二つの〈Playing In The Band〉は甲乙つけ難いし、〈Truckin'〉から〈The Other One〉へのメドレーも面白い。後者だけで20分を超えるが、おそらくこれに遷移した時点ですでに持ち時間は切れていたはずで、そのことはバンド自身にもわかっていただろう。〈The Other One〉にどう決着をつけるか、どんな曲をつなげるか、定まらないことがかえって面白い結果を生んでいる。そしてかなり唐突な終り方は、この演奏をこの曲のユニークなヴァージョンにもしている。
 《Europe ’72: The  Complete Recordings》の中で、これだけは CD1枚に収まる、極端に短かい演奏ではあるが、映像だけでなく、実に興味深い音楽になっている。
 次は3日後、デュッセルドルフ。

5. 1978 Rupp Arena, Lexington, KY
 金曜日。第二部5曲目〈Stella Blue〉が《So Many Roads》で、第一部クローザー〈The Music Never Stopped〉が2012年の《30 Days Of Dead》でリリースされた。
 DeadBase XI の Geoff Renaud のレポートによれば、第一部は水準以下のつまらないものになりそうだったのが、クローザーで切り替わり、第二部はすばらしく、就中〈Truckin'〉はデッド史上最高の演奏という。

6. 1984 Philadelphia Civic Center, Philadelphia, PA
 土曜日。このヴェニュー3日連続の楽日。13.50ドル。開演7時半。第二部オープナー〈Help On The Way> Slipknot> Franklin's Tower〉が2021年の《30 Days Of Dead》でリリースされた。

7. 1986 Berkeley Community Theatre, Berkeley, CA
 月曜日。このヴェニュー4本連続のランの2本目。レックス財団資金調達のためのベネフィット。開演7時半。(ゆ)

04月12日・火
 プロケーブルに注文したギタリスト電源=アイソレーション・トランス着。エリックが新作デスクトップ・ヘッドフォン・アンプの RASA は電源に敏感だから、アイソレーション・トランスを使え、と言ってきたため。夕飯後、つないでみる。音がまったく別物になる。拍手の音が違う。オーディオで音になる元は電気なのだから、その電気がきれいになれば音もきれいになる道理。


##本日のグレイトフル・デッド
 04月12日には1967年から1989年まで9本のショウをしている。公式リリースは2本。

1. 1967 Fillmore Auditorium, San Francisco, CA
 水曜日。サンフランシスコ・マイム・トゥループのための資金調達ベネフィット。共演ジェファーソン・エアプレイン、クィックシルヴァー・メッセンジャー・サーヴィス、モビー・グレープ、アンドリュー・ステイプルズ、ローディング・ゾーン。セット・リスト不明。
 残っているポスターには場所と出演者の名前はあるが、日時も料金も書いていない。

2. 1969 Student Union Ballroom, University Of Utah, Salt Lake City, UT
 土曜日。大学施設3日連続の中日。学生2.50、一般3ドル? 

3. 1970 Fillmore West, San Francisco, CA
 日曜日。このヴェニュー4日連続のランの楽日。マイルス・デイヴィス、ストーン・ザ・クロウズ、クラウズ共演。
 12曲目〈Dancing In The Street〉が《Fallout From The Phil Zone》でリリースされた。
 この日は前3日と異なり、すべてエレクトリックで通した。

4. 1971 Pittsburgh Civic Arena, Pittsburgh, PA
 月曜日。ニュー・ライダーズ・オヴ・パープル・セイジ前座。ガルシアがペダルスティール、クロイツマンがドラムス。
 当時、ピッツバーグのコンサート終演時刻は午後11時であることをバンドは認識しておらず、アンコール無し。

5. 1978 Cameron Indoor Stadium, Duke University, Durham, NC
 水曜日。6ドル。開演8時。南部の大学3つを回る初日。学内の The Major Attractions 主催で、当時、ここが主催したコンサートはビデオに記録がとられていた。これもビデオが残っており、YouTube で見られる。3時間超。

6. 1982 Nassau Veterans Memorial Coliseum, Uniondale, NY
 月曜日。このヴェニュー2日連続の2日目。12.50ドル。前夜とはうって変わってソリッドなショウの由。
 第二部3・4曲目〈Estimated Prophet> Uncle John's Band〉が2016年の《30 Days Of Dead》でリリースされた。

7. 1983 Broome County Arena, Binghamton, NY
 火曜日。第二部冒頭から〈Help On The Way> Slipknot!> Franklin's Tower〉〈Lost Sailor> Saint of Circumstances〉〈Terrapin Station〉が一続きで演奏された。最高のショウの由。

8. 1986 Irvine Meadows Amphitheatre, Laguna Hills, CA
 土曜日。このヴェニュー2日連続の初日。16.25ドル。開演7時。

9. 1989 Rosemont Horizon Arena, Rosemont, IL
 水曜日。このヴェニュー3日連続のランの中日。開演7時半。第二部前半で〈Smokestack Lightnin'〉で〈Spoonful〉をはさむブルーズ大会をやる。(ゆ)

 新しいDAPを買った。FiiO M11Pro である。実は当初 M15 を買おうとしたのだが、どこにも在庫が無く、取り寄せにも時間がかかりそうだっのでやむなく 11Pro にしたのだが、今はかえって良かったと思っている。


 

 Cayin N6ii のマザーボードとバッテリーを一体化して交換できるコンセプトにも惹かれて、ほとんどそれに決めていたのだが、最後に方向転換したのは M11Pro のDSD変換機能だ。すべての出力をDSD に変換して出す。

 Android の サンプリングレート変換を回避する Pure Music モードもあり、これとDSD変換を組み合わせると、これ以上、何もいらないじゃんという気分になる。

 Pure Music モードへ切替える方法がついにわからず、輸入元のエミライに問い合わせる。どこの画面でもいいから、上端から下へスワイプすると出てくるメニューの中に切替のスイッチがある。Pure Music モードにすると FiiO Music のみが立ち上がり、他のことは一切できない。DSD変換のオン・オフをする「設定」アプリすら出てこない。これを出すには Android モードにもどさねばならない。ゲインの切替だけは、同じく、スワイプで出てくるメニューで切替えられる。

 Pure Music モードは一度入れると戻れない。オフにすると全体にくすんで、音楽に生気がなくなる。

 M11Pro には 15 には入っていない THX が入っている。15 ではなく、11Pro で良かったと思った理由がこれだ。THX に気がついたのは、実は Benchmark HPA4 のささきさんによる PhileWeb の記事を見て、これに実装されている THX ってどこかで見たぞと思い出した次第。

 HPA4 が使っているのは AAA-888 という THX のトップグレードだけど、M11Pro に実装されているのは THX-AAA-78 で、こちらはモバイル用のトップグレードだ。THX のサイトの製品案内によれば AAA-789 になる。DAP で THX を採用したのは初めてらしい。

 THX の効果は低ノイズ、低歪み、そして低消費電力、さらにハイパワーと、ヘッドフォン・アンプにとって良いことづくめだけれど、確かに M11Pro は静かなのだ。いわゆる雑味が無いというやつで、音楽が際立ってくる。個々の音や残響やその重なり具合にピントがぴしっと合って、にじんだりボケたりするところがまるで無い。聴いていて気持ち良いのだ。音楽の一部としてのノイズもきれいに聞える。一方で、録音の良し悪しはモロに出る。良し悪しというより録音の性格、録り方とか、ミックスやマスタリングの方針とか、そういうものが剥出しになる。慣れた人なら使っている機材のモデル名まであてられそうだ。編集でつないだところも、それとわかる。

 消費電力はよくわからない。DSD変換は当然電気を食うが、一度にそう何時間も聴いているわけではないから、まあ、こんなもんだろうで今のところすんでいる。それにバッテリーの充電が速い。100%になるのに2時間かからない。

 驚いたのはパワーだ。Benchmark の HPA4 でも鳴らないヘッドフォンがよく鳴るとささきさんも驚いていたが、M11Pro のパワーも DAP の次元ではない。なにせインピーダンス 600Ω の T1 がまあよく歌ってくれる。あたしのは初代 T1 の特製バランス仕様で、バランスはパワーが出るわけだが、それにしても、この鳴り方はまっとうなヘッドフォン・アンプを介さなければ、これまでは無かった。伸びるべきところはどこまでも伸び、止まるべきところは見事に制動が効いている。もちろんハイゲイン設定だが、音量スライダは下から3分の2あたりでちょうどいい録音が多い。

 EtherC Flow 1.1 もいい気分で歌う。これもなかなか気難し屋で、ただパワーがあるだけではうまく鳴ってくれない。手許のは初代で、あまりに鳴らないので、一時は手放そうかと思って、AMP に品出ししたこともあったが、1.1 にアップグレードし、マス工房 model 428 と組み合わせてようやく実力がわかってきて、売るなんてとんでもない。エージングもいい具合になり、そろそろケーブルを換えてみるかという気になっていた。M11Pro で聴くと、これならブリスオーディオの Mikumari を奢るかと気分が昂揚してくる。

 こうなってくると THX のヘッドフォン・アンプは DAP では必須ではないかとすら思える。少なくとも、あたしは今後、これが入っていないと使う気になれない。

 FiiO Music の使い勝手はまずまずで、この辺りは HiBy と同じ。入れているマイクロSDカード 512GB の3分の2くらい使っていて、アルバム数も結構あるが、画面が大きいこともあり、スクロールして右端に出るアルファベットで跳ぶのもやりやすい。

 デメリットはまず熱くなること。公式サイトのQ&Aにもあるように、やむをえないところだろうし、ささきさんも言うように、オーディオでは熱くなるのは音がいい、というのはたいてい当っている。一度、シャツの胸ポケットに入れて15分ほど歩きながら聴いたら、かなり熱くなった。季節要因もあるだろうが、携帯するにはもっと通気のよいものに入れる必要がありそうだ。今のところ、散歩用はこれまで使っている Hiby R5 で、M11Pro はもっぱら屋内での使用。冬は持ち出してもいいかもしれない。

 DAP は世代交替が激しいし、保ってせいぜい2年でバッテリーがダメになるから、5万前後までのものにしていたのだが、DSD変換に誘われて「清水の舞台」から飛びおりてみたら、別世界が開けた。この方向で、Sony DMP-Z1 を凌ぐようなものを出して欲しいものではある。Chord Hugo 2 のような半携帯式でバッテリー駆動で THX-888 のヘッドフォン・アンプを備えて、部品にもとことんこだわった DAP。バッテリーには先日発表された K100 が採用した円筒型の電気自動車規格の21700型リチウムイオン充電池はどうだろう。半デスクトップなら、K100 みたいな不恰好にすることもないだろう。

 HiBy に比べると FiiO は DAP を作ってきた経験が長い分、いろいろな点で一日の長があるように思う。もっとも R5 も悪くない。M11Pro よりも小さく軽く、熱くなることもないし、シーラス・ロジックの DAC チップの音も好きなので、散歩用としてはまだまだ活躍してくれるだろう。

 オーツェイドの人のように擁護する向きもあるが、あたしはあの 2.5mm バランス端子がでえっきれえなので、A&Kや今度の K100 は使ってみたいと思うこともあるけれど、当面は選択肢に入ってこない。M11Pro にも 2.5mm ジャックはあるのだが、華々しく金色の枠がついている4.4mm ジャックの隣に添え物のようにちょこなんと着けられていて、ちょっと見るだけではあるのさえわからない。こんな扱いにするなら、とっぱらった方がよかったろうに。もっともこれには、両方同時に挿せないようにという配慮もあるのか。

 イヤフォンは耳の中で存在を主張されるのが苦手で近頃はもっぱらヘッドフォンで聴いている。遠出をする機会が極端に減ったので、電車に乗らず、したがってイヤフォンを使うチャンスはますます減っている。光城の Keyagu とか、オーツェイドの intime 翔とか、ファイナルの A8000 とか、使ってみたいものも無いことはないが、ステイホームのうちはヘッドフォンで遊ぶだろう。そうそう、M11Pro と HD414 の組合せが、歌好きにはもうたまりまへん。414 のケーブルもグレードアップしたくなっている。ファイナルのシルバーコート・ケーブルが使えないのは、かえすがえすも残念。

 それにしてもゼンハイザーは HD414 の直接の後継機を出す気はもう無いんだろうなあ。500や600のシリーズを使えというんだろうが、ちょと違うのよねえ。まんまの復刻でもいいんだけど。今使ってるのが壊れると替えが無いのがなんとも不安。(ゆ)

 「21世紀をサヴァイヴするためのグレイトフル・デッド入門」のために、デッドのライヴ音源を延々と聴くわけですが、それには何を使っているのか。

 あたしはスピーカーではまず聴かず、もっぱらヘッドフォンとイヤフォンで聴いてます。基本的に家ではヘッドフォン、外ではイヤフォン。なんだかんだで、知らないうちに増えていて、数えてみるとヘッドフォンは8本、イヤフォンも同じくらい。細かくて、正確にはもうわからん。取っ替え引っ替え使うわけですが、みんな均等にというのではなく、自分の中でも流行り廃りがあります。

 デッドのある曲を手許に溜まってきたライヴ音源の公式リリースから拾って聴いてゆくのは少々手間がかかります。一つのフォルダにまとめてこれを次々に再生してゆくのは、いつも使っている DAP は案外不得手で、これまでの経験で一番楽なのは MacBook Pro で再生する方法。ただし、Audirvana Plus はこういう時ほとんど役に立ちません。まずまず音が良くて使い勝手が良いのは Decibel。

 MacBook Pro から Chord Mojo に USB で出し、Analog Square Paper 製 STAX 専用真空管ハイブリッド・アンプで SR-L300 というのが最近の昼間の定番。だったんですが、選曲も佳境に入ったところで、朝、かぶろうとしたら SR-L300 のプラスティックのヘッドバンドがバキッと音を立てて真っ二つ。

SR-L300broken


 幸い、問い合わせたら修理できそうなのでほっとしました。ヘッドバンド交換だけですから、そんなに高くはないんじゃないかと期待。1本聴くごとに外したりかぶったりしていたからかなあ。

 マス工房 model 428 が来て以来、これで聴くことも多いんですが、デッドのライヴ音源は真空管をかませて聴きたいんですよ。デジタルでしか出ていないこの音源を聴くために『ステレオ』編集部が作った真空管ハーモナイザーをかますと、ヴォーカルやガルシアのギターがそれは艷っぽくなる。ところが 428 は入力がペンタコンだけなので、ハーモナイザーの RCA 出力からつなぐケーブルがまだありません。

 それと Decibel は最近アップデートしたんですが、それからどうも今ひとつ音にキレがなくなった感じ。ハイレゾ音源もちゃんと認識しないようだし。というんで、手持ちの機材をあれこれ組み合わせて落ちついたのがこのセット。

OPUS+Mojo+Phantasy


 OPUS#1s からは Reqst の光ケーブルで Mojo につなぎ、Mojo と PHAntasy はラダーケーブル製ラダー三段のミニ・ミニ・ケーブル。

 Listen Pro は Focal のヘッドフォンを何か使ってみたくて買ってみたもの。現行製品では一番新しくて、ダントツで安い。これはすばらしいです。箱から出したてで、100時間鳴らした DT1770 Pro とタメを張ります。DT1770 よりもすっきりした音で、この辺はドイツとフランスの違いですかね。Listen Pro に比べると DT1770 の方が粘りがあり、音場が丸い。Listen Pro の音場は広がりと奥行があって、円盤型。分解能も高いですが、細かいところまでムキになって出すのではなくて、各々の音量と位置をさりげなく、適確に示します。入っている音は全部出ているけれど、本来のバランスは崩れず、音楽に没入できます。ギアとして存在を主張するのではなくて、音楽を聴くツールに徹してます。モニターというのはそういうものでしょう。

 DT1770 と比べてどちらがベターというよりは音の性格の差でしょう。オールマンなら DT1770 で、デッドなら Listen Pro というと近いか。フェアポートなら DT1770 で、スティーライなら Listen Pro かな。まだ、試してないけど。ジャズならハードパッブは DT1770 で、ECM は断然 Listen Pro。ルーツ・ミュージックだと、ソロの歌や演奏は DT1770 の方が案外合うかもしれませんね。でもハイランド・パイプのピブロックのような倍音系は Listen Pro で聴きたい。

 先ほどの組合せに戻ると、ヘッドフォンやイヤフォンのテストに使っているアウラの〈アヴェ・マリア〉を、きちんと聴かせてくれました。ベスト盤の《ルミナーレ》にも入っているこの曲は、ソプラノ3人がめいっぱいハイトーンで唄っていて、たいていのヘッドフォン、イヤフォンでは、少なくとも2ヶ所でビビります。スピーカーではまったく問題ないんですが、ソプラノが上の方で2人、3人と重なるところは、小さな振動板にはきついんでしょう。

ルミナーレ
アウラ
toera classics
2017-06-25



 いわゆる「カッシーニのアヴェ・マリア」と呼ばれるこの曲は、実際はソ連の作曲家 Vladimir Vavilov の作品で、ただ「アヴェ・マリア」を繰り返すだけですけど、アウラのこのヴァージョンでは歌詞を加えていて、そこがまた良い。オーディオ・テスト用だけではなく、演唱としてすばらしいので、ヘッドフォン・マニアの方は持っていて損は無い曲でしょう。

 というわけで、今日の本番ではこれを使って PHAntasy の代わりに真空管ハーモナイザーを経由して店のPAにつないでみようと思ってます。問題は音量調節なんですが、それは現場で担当の方と相談。(ゆ)

・マンドリンでどうやって野菜をスライスするのだ、と思ったら、楽器と同じ名前の、そういう道具があるのだった。なるほどあれば便利だが、包丁でできないことじゃないな。

マトファ 18-0マンドリンカッター 44602 《60枚刃》[野菜スライサー]


・シンガポールの Jaben が Hippo ブランドで出した新しい小型PHA CriCri が楽しい。先に出た DAC 付きの CriCri+ の弟分で DAC 無しのアンプだけ。ゲインの切替とベース・ブースト付き。弟分なのだが、アンプとしての音は兄貴よりも良い。

    まず驚いたのはサウンド・スペースの広さで、サイズと反比例している。その広い空間の隅々までディテールが明確。音の性格も素直で色付けがなく、いわゆる聴き疲れしない。ベース・ブーストは入れない方がいいと今のところは思う。

    これとファイナル・オーディオPIANO FORTE II という組み合わせは散歩のお供の定番になったのだが、この頃は家の中で、すわって聴くときにも活躍している。これ以上、何も要らないよ。やはり軽くて小さくて安くて音が良い、というのがデジタルの最大の利点ではないか。
    
    メーカーや販売店は価格の高い据置きを薦めるけれど、それは「商売」を別にすれば、旧来の「オーディオ」の思考法を引きずっているので、必ずしもデジタルの特質を十分に展開したものではない。それでしか聴けない音がある、というのは「昔は良かった」の言い換えにすぎない。
    
    それにしても、今世に出ているデジタル・オーディオ機器のデザインは芸が無さすぎる。例外は iOS機器と CEntranceDACPort ぐらい。Go-Vibe Volante もデスクトップ真空管アンプの新しい形を提案している。どれも面だけでなく音も良い。

JABEN Go-Vibe Volante アンプ【送料無料】
    
    デザインに芸が無いのはPCも同じだが、モニタ画面が不要なのだから、オーディオ機器はもっとデジタルを活かすカタチを追及すべきだ。


Tor Books が7月から eBooks をすべて DRMフリーにする、と発表したBaen BooksNight Shade Books はすでに DRMフリーで eBooks を販売しているが、いわゆる「ビッグ6」と言われる大手の一角では初めて。と Boing Boing に出た。と思ったら CNET にも出ていた

    世界はどんどん進んでいるが、わが国はまるで江戸時代だ。21世紀に入ってからのこの国は、時代を逆戻りして幕藩体制に移行しているように見える。そのうち鎖国するはずだ。そうして二百年ばかりすると関ヶ原で家康が負け、秀吉が光秀に殺され、その光秀を本能寺で討った信長が天下を統一するのだろう。まるで山田風太郎の『魔天忍法帖』そのままになるにちがいない。

魔天忍法帖 新版 (徳間文庫)
  
    eBooks の販売にまで国境の制限があるのは、そのせいか。全部ではないが、特に新刊で、あんたの国では買えないよと言われることがある。紙の本は買えるのに、eBooks は買えない、というのはワケわからん。Kindle 版は国境制限は無いようだが、Nook や iBooks の版は制限がある。そして制限のあるものには Kindle 版が無い。
    
    向こうで出たものをすぐ読みたい時、一番速いのはもちろん eBooks だ。在庫が確保されて送られてくるのを待つ必要がないのだから。まあ、そう頻繁にあるわけではないが、たまにはすぐ読めないと読書意欲が雲散霧消することもあるのだ。


・これに関連して、ある大手出版社の重役らしい人物が自分がアマゾンから買った eBook のDRMをはずしたことを、匿名でネットで告白しているのが、やはり Boing Boing に出ていた

    eBook を買うことはその本を読む「ライセンス」を買うことで、中身そのものを買うんじゃない、というのはバカげてる。だから自分で買った eBook が、機器が別だと読めない、て? 冗談じゃない。それで DRM をはずしたが、おかげで DRM がいかにクソッタレかよくわかった。DRM で利益を得ているのは eBooks を売っている連中だけで、出版社にとっても著者にとっても読者にとっても、DRM はクソッタレだ。
    
    DRM をはずすのは別に難しいことじゃない。情報はネット上にいくらでもある。ちょっと調べて、あとはトラブってもあきらめない根気がいるだけだ。罪の意識? はずしたものをネットにばらまけば罪だろうが、自分だけで読むんだから、どこが悪い。


A Princess of Mars・エドガー・ライス・バロウズが Library of America に入った。というのは、いざそうなってみるとうなずけるけれど、やはり驚く。ラヴクラフトが入った時も驚いたが、それ以上の驚きだ。ただしいつものフォーマットではなく、『ターザン』と『火星のプリンセス』それぞれのハードカヴァー版、というのは、やはり他との差別化のためだろう。さすがにヘンリー・ジェイムズやフォークナーの隣に ERB が同じ形で並ぶ、というのは避けたかったか。

    前者は未読だし、後者は一度邦訳を何とか読みとおしたが、さっぱり面白くなかった。原書で読みなしてみると、違うかもしれない。

    こうなってくると、ハインラインやアシモフや、あるいはティプトリーやル・グィンが LOA に収められる日も近いのかもしれない。ん、それよりはE・E・スミスの方が先か。
    
    もっともこの LOA そのものが、いかにもアメリカ的な、ヨーロッパへの対抗心の現れにも見える。


・生協を通じて買っている秋田の黒瀬農舎の米に付いていた「提携米通信」によると、関東地方の精米所で出た糠から作られた「米糠ペレット」が放射能汚染されていた由。やはりそこらで売られている米は汚染されとるな。


・放射能の影響のような微妙な問題について、ふだん冷静な人が急にある主張を断定的にわめきちらしだすのは、直接の利害関係があるからなのだろう。その落差の大きさに、問題の根の深さをあらためて思い知る。

    それにしても、わが国社会にこういう深刻な亀裂を生みだしたということでも、電力業界と原子力ムラの罪は重い。(ゆ)

    従来のものと違って、既存のケーブル類は使えないと以前書きましたが、検証不足でした。すみません、ちゃんと使えます。
   
    今日、別件とともに Audiotrak に改めて問い合わせたところ、使えるという返事をいただき、試してみたところ、OKでありました。ちょっときついのですがゆっくり押しこむときちんと固定もされます。 裏側のケースの縁の傾斜が急なので、裏から見るとコネクタが半分くらいも露出してますが、音に問題はありません。
   
    Audiotrak さん、ごめんなさい。 それにしても、このAUDIOTRAK AT-IACS3 オーディオケーブルは傑作です。と、お詫びもかねて、あらためて宣伝しておきます。これを使わずに、ポータブル・ヘッドフォン・アンプを語るな(^_-)。(ゆ)
続きを読む

    新しいカメラ付きの iPod touch、いわゆる 4G ですが、Dock コネクタの構造が変更になり、従来の Dock ケーブルは使えないようです。
   
    ぼくのところだけかと思ったら、Head-Fi でも話題になっていました。

    愛用している Audiotrak にも問い合わせのメールを出しましたが、返事が無いのでまず間違いなく使えないでしょう。

    もし、新 iPod touch と一緒に Dock ケーブルも買おうとされるなら、ちょと待った方が良いでしょう。

    各社から Dock 対応の据置き型のオーディオ機器が続々出てますが、iPod touch 4G の Dock に対応しているか、確認された方が良さそうです。
   
    こういう情報はメーカーは対応した新製品を出すまでは公表しないので、独自に調べるしかありません。もし、オレのはワタシのは使えたぞ、という方があればご一報ください。(ゆ)

    試聴用にお預りしていた Schemeclone Project のポータブル・ヘッドフォン・アンプのバーンインがようやくメーカー指定の100時間を超えました。強制的なバーンインはせず、ふつうに使っていって100時間を超えたところです。

    試聴といってもぼくの場合、日常的に音楽を聴くのに使うので、特に曲を決めて聞き比べるということはしていません。ただ、これを使いだしてから、よく音楽を聴くようになりました。バーンインをしていたこの数ヶ月はここ数年で一番音楽を聞いているかもしれません。旧譜やすでに散々聴いた音源でも、これで聴いたらどうだろうと聴きたくなるのです。
   
    iPod で聴くのは散歩しながらが一番多いので、このアンプで聴くために、この暑い夏も結構散歩をしていたくらいです。涼しかった7月より暑かった8月の方が散歩の歩数合計が多いにのは我ながら驚きました。
   
    このアンプは初めからかなり良い音で鳴ってくれますが、バーンインが進むにつれて、だんだん音が良くなってくるのがよくわかります。それがまた楽しい。50時間を超えると一段と音楽に艶が出る感じで、8月に聴く時間が増えたのはそのためでしょう。
   
    そう、このアンプの長所を一言で表そうとすると、たぶん、音楽に艶が出る、というのが一番近いと思います。音に艶が出るのではなくて、音楽がより艶やかになるのです。コクが深くもなります。より深く味わえるようになる。聞こえなかった音が聞こえるようになるというのではなくて、聞こえていたけれども気がつかなかったディテールの綾、微妙なニュアンスにふと耳が導かれる。いや、さりげなくさしだされる、でしょうか。好きな音源はますます好きに、それほどでもなかった音源でも悪くないじゃないか、という風に。
   
    ソースは iPod touch 2nd Generation 32GB。ファイルは Apple Lossless, LAME-MP3(ビットレートは様々)。iPod との接続は AUDIOTRAK AT-iacS3 iPodオーディオケーブル3GS。3,000円以下ですが、さすがモガミでしょうか、CP は高いです。今のところ、上のクラスに換えたいという不満はありません。
   
    ところで国内で販売されているドック・ケーブルでこの上となると急に1万円をかなり超えて、中間がありません。不思議。海外のオンライン・ショップでは5,000〜10,000円のものも散見しますが。ポータブル・アンプを使えばドック・ケーブルは必須なはずで、これより安いオヤイデのものばかり売れてるんでしょうか。
   
    ヘッドフォンはオープンはアウトドア用に Yuin G2a、室内用は Sennheiser HD414。クローズドは EXH−313。Audio-technica ATH-A100Ti をベースにここが改造をほどこしたもの。

    現在のオーテクの音を受け付けないことはここでも書いてますが、このヘッドフォンは購入前に試聴して納得しました。こちらもエージングが100時間を超えたところで、まことにすばらしい音楽を聞かせてくれます。
   
    もっともこの UST すなわち Ultra Sound Technology がどういうものかは伝聴研の所長さんもうまく説明できないものではあります。実際に施工しているオーディオ・インテルはケーブルが得意だそうですので、内部配線の交換などが含まれるのでしょうが、それだけではない「おまじない」もいろいろ施されているらしい。また、この技術自体も完成しているわけではなく、今も改良を続けていて、今販売されているものは、初期のものからは進化しているそうです。
   
    とまれ、出てくる音はとてもオーテクのものとは思えない(笑)無理や誇張のない自然なもので、細部までの表現力も高いです。これまたちょっと他のものに換える気が起きません。
   
    イヤフォンは例によって BauXar EarPhone M + Comply P-100 slim。これは主に外出時にバスや電車などのノイズの多いところで聴くためです。それと今年のように暑い時は、フルサイズのヘッドフォンでは汗をかいてしまうので、クローズドの代わりに室内で使うこともあります。アンプのこれとの相性はまるでカスタム・メイドのようで、Comply のおかげもあるでしょうが、EarPhone M のレンジが二桁くらい広がった感じです。
   
    うちのヘッドフォン、イヤフォンはそれぞれに傾向が違うと思いますが、このアンプはどれもその能力を十二分に引き出してくれます。前にもちょっと書きましたが、ヘッドフォンやイヤフォン自体の限界がわかってしまうという感じにはなりません。この中で能力的に一番下なのは G2a でしょうが、これも良い相棒を得たと大喜びで鳴っているけしきです。この耳かけ式の能力の高さはこれまでも認めていたつもりでしたが、こんなに良い音を出せるのかと感心することが何度もありました。
   
    どうしてこれが国内販売されないのか、これまた不思議です。価格が安すぎるからでしょうか。G1a にすればさらに良くなるのでしょうが、すっかり耳になじんでしまって、こうなってくると、実売5,000円のこいつでどこまでの音が聴けるか、突きつめてみたくもなってきます。
   
    ノイズ・レベルは低く、背景は真黒。ですが、これはもう当然でしょう。
   
    バッテリーは 6P 1個。MAHA の230mAh、9.6V で約10時間。最初に入っていた充電不可のものはもう少し保ったかもしれません。たまたま手元には 6P タイプはこの MAHA しかなかったので、他は試していません。それにしても、日本のメーカーはどうしてこのクラスのものを出さないのでしょうねえ。皆8.4V、175とか190mAh ばかり。この頃は中国でも MAHA クラスのものを作っているのに。
   
    バッテリーが切れる時は急に音量が小さくなり、音が割れます。青のパイロット・ランプの光も弱まります。
   
    いわゆる周波数特性で言えばフラットだと思います。少なくともどこかを強調したり、補正したりしているようには聞こえません。下から上まで、ごく自然に広がっています。ぼくの聴く音楽はルーツ、ワールド系が多く、この方面の楽器にはダイナミック・レンジが半端でなく広いものがあり、音域も音の性格も多種多様ですが、どれもごくストレートに再生されます。
   
    ということは、相当にレスポンスが鋭敏で、ハイスピードなのでしょう。色付けもありません。
   
    デジタル音源の再生でいわゆる圧縮音源でもきちんと聞かせてくれることは良い装置の必要条件ですが、このアンプはその点でも最高レベルです。簡単に言うと、圧縮と非圧縮の違いがありません。いや、それは同じ音源を圧縮と非圧縮で聞き比べれば当然違いは出ます。ですが、別々の音源で片方が圧縮、もう片方が非圧縮だとしても、音楽を聴く上では差はありません。
   
    圧縮音源でも人間の耳からすれば、少なくともぼくの耳からすれば音楽を細部まで楽しむための十分な情報が入っていることは、すでに体験していました。このアンプはその情報を細大漏らさず、あらいざらい引き出してくれます。圧縮でも(ビットレート192kbps 以上という条件はつきますが)、元の録音の良い音源であれば、余韻や残響、あるいは雰囲気といった、「プラスα」の部分、音楽の本質とはずれるけれど、一歩踏みこんで音楽を楽しむには不可欠の部分もしっかり聞かせてくれます。特に空間表現に長けているのでしょう。クローズド・タイプのヘッドフォンやイヤフォンでも空間の解放感があります。オープンだとさらに広大なスペースが開けます。
   
    5月に試聴機をお預かりして、はじめは Linearossa W3 と並行して、取り替えながら聞いていたのですが、だんだん W3 の出番が減り、気がついてみるとこのアンプばかり聴くようになっていました。これはやはり W3 よりも RudiStor XJ-03 MkII あたりと聞き比べてみたいものです。
   
    思えば、iPod のような携帯プレーヤーで聴くかぎり、DAC は不要です。iPod にマジックテープでくっつけて使うようなポータブルのアンプに DAC を付けるのは蛇足の類でしょう。W3 の場合は準デスクトップとしての使い方を想定しているところもあります。さもなければ突起部分抜きで97ミリという本体の長さはないはず。光、同軸、USB という3系統の入力を備えるためでしょう。ポータブルはアンプに徹して、サイズをできるだけ小さく軽く、かつ音質を追求していただきたい。
   
    お預かりしたアンプは試作品で、販売する際には、充電機能を加え、筐体も設計しなおされるそうです。ただ、発売時期はまだ未定とのこと。想定価格は2万円を切る由。高いカネを払わないと良い音で聴けないというのはやはり困ったことで、この音がこの価格で出るのはグッド・ニュース。ポータブル・アンプ全体の質をまた一段と押し上げるのではと期待します。(ゆ)

    試聴を頼まれていた Schemclone の PHA の100時間のエージング達成が見えてきたので、そろそろいいかなと、RudiStor のデスクトップ・ヘッドフォン・アンプ RPX-33 を本格的に使いだす。
   
    Schemeclone の PHA についてはまた別に書くつもりだが、相当なもので、ひょっとすると Linearossa W3 を凌ぐかもしれない。ディテールを隅々まで描ききる能力と、音楽を全体として聴かせるまとめ方のバランスがとても良い。質の良い音源はもちろんだが、MP3 音源でもここまで情報が入っているものかと感心させられる。
   
    音楽だけでなく、ヘッドフォンとのつきあい方のバランスも良い。W3 はちょっとつき放したところがあって、Yuin G2a のようなエントリー・クラスだとアンプの方が位が上で、ヘッドフォンはアンプの能力を完全には引き出しきっていない感じがする。
   
    その点、Schemeclone のものはエントリー・モデルでも、ゼンハイザー HD414 のようなハイエンドでも、それぞれを引きたてる鳴らし方をする。それもどちらかで無理をしている風でもない。EarPhoneM + Comply との相性も抜群で、この組合せで聴くためにわざわざ電車に乗りたくなるくらいだ。ルディさんの今度のハイエンドPHA と比べてみたくなる。来年の製品化がひじょうに楽しみ。
   
    で、まあ、今日は RPX-33 である。
   
    これは RudiStor のソリッドステート・ヘッドフォン・アンプの中堅モデルで、この下にエントリー・モデルの NX-03 がある。上の RPX-300 にはバランスの入出力が付く。この三つのモデルの価格は大体上は下の倍になる。今どき、DAC も何も付いていない、ただのヘッドフォン・アンプだ。入力は RCAアンバランスのみ。出力は RCAアンバランスとプリの二つ。ヘッドフォン・ジャックは標準が正面に二つ。左が High Gain、右が Low Gain。ヘッドフォンのインピーダンスは16〜600オームのものが使える。他にはスイッチと音量コントロールだけ。なお、RudiStor のアンプには電源コードは付属しないので、ぼくはレクストの電源ケーブルを使っている。
   
    ただのヘッドフォン・アンプだが、RudiStor の作るアンプは基本的にハイエンドである。これも、完全デュアル・モノ構造で、つまり左右の増幅段は内部で完全に別になっている。それぞれのチャンネル専用のアンプが二組入っていると思えばいいだろう。NX-03 ではまだ完全デュアル・モノ構造ではないので、この RPX-33 からが RudiStor 本来の製品ということになる。RudiStor ブランドのアンプは全て常時純A級作動だ。
   
    ソースは例によって MacBook Kro。再生は Taply で、DenDAC を USB ソケットに挿して DAC として使う。ちなみにぼくは Amarra をとらない。高価ということもあるが、音がふやけて聞こえるからだ。何かを足しているように聞こえる。いかにもオーディオ的な音と言おうか。Taply はフリーの小さなソフトで、山椒は小粒でピリリと辛く、ファイルに入っている音をそのまま出してくれる。たまたまウチにあったオーテクのミニ←→RCAコードで RPX-33 と直接結ぶ。このコードはむろんもっと良いものがいろいろ出ているけれど、今はカネもないし、RPX-33 のエージングがすむまではこのままで行く予定。
   
    なお、RPX-33 にはレクストのレゾナンス・ピットをかませ、同じくレクストのRS-SQUAREを天板に置く。実は後から思い出してやったのだが、これの効果は抜群で、個々の音も全体の音楽も、きれいに洗われたようにみずみずしくなる。
   
    それにしても、DAC専用のハードというと高額商品しかない。安価なものは皆、ヘッドフォン・アンプと合体している。DAC 単体を使うのは、この RPX-33 のようなハイエンド機器の場合のみ、ということなのだろうか、今のところ。ヘッドフォン・アンプだけ、というのも、PHAを除くとこの頃は少なくなってきたようなけしきだ。新製品は価格帯に関係なくみんな、DAC + ヘッドフォン・アンプの形。
   
    その意味でもルディさんの今度の新製品 XJ-03 MKII がヘッドフォン・アンプのみなのは、ハイエンドの何たるかを追求するかれの姿勢の現れなのだろう。DAC などという余計なものはつけない。必要なら、単体の、相応のものを使ってくれ。私はヘッドフォン・アンプ一本槍で行くのだ。アンプと DAC は別ものなのだ。だからこそ、DAC 付きの Linearossa は別会社から出したのだ。
   
    時代錯誤と言えば言えようが、この潔さは心地良い。また、それだけ製品の質に自信があるのだろう。
   
    DAC といえば、ちょと面白そうなのがこの devilsound-DAC。USB 入力は当然として、出力側が RCA のペア。形としては理想的。値段もそんなに眼の玉の飛び出るほどでもない。長さがどこにも、本国のサイトにもないんだが、臨時収入でもあれば試してみたいところではある。
   
    ぼくのハードの評価軸はひとつである。音楽が気持ち良く聴けるか。音楽に集中できるか。聞きつづけていたくなるか。この三つはまあ同じことを別々の側面から言っているわけだが、とりわけ三番目、もっと聴きたくなるかどうかが一番のポイントではある。
   
    高域がどうの、サウンドステージがどうのではない。そういうことが個々に言えるのは、音楽ではなく機械の音を聞いているのだ。ちなみに機械の音が聞けるのは一種の特殊能力だと思う。絶対音感と同じレベルではないかとさえ思う。いや、皮肉でもなんでもなく、時にうらやましくさえある。ただ、単純にぼくには機械の音は聞こえない。聞こえるのは音楽だけだ。
   
    ちょうど原稿を書く都合もあり、アンジェロ・ブランデュアルディの《Futuro Antico VI》を聴く。ファイルは Apple Lossless。このシリーズは古楽アンサンブルをバックにブランデュアルディがバロック期のイタリア北部の都市の音楽をうたっているもの。北部なのはブランデュアルディ自身がミラノの出身だからだろう。ナポリやカンブリアの方まで足を伸ばすかとまた面白い。
   
    使われている楽器はアンサンブルのリーダーのリュート、チェンバロ、ダルシマー(スピネット)、ヴィオラ・ダ・ガンバ、トロンボーン、リコーダーなどの他、ハーディガーディもあり、これに各種打楽器が加わる。録音はひじょうに良い。もっともライヴ一発録りというわけではなく、ミックスなどは結構手を加えてもいる。もともとブランデュアルディのヴォーカルはポップスのもので、こうしたアンサンブルの中に入ってそのままバランス良く聞こえるものではない。むしろそのズレたところがこのシリーズの面白みであるであるわけで、その点を活かすための工夫はいろいろされている。もっとも YouTube にはこの形のライヴの映像もある。
   
    このシリーズでのブランデュアルディは、自分のヴォーカルの特性を活かすためだろう、ふだんの、他のアルバムよりもずっと丁寧にうたっている。言葉の音の一つひとつをはっきり発音している。その上で、アンサンブルの一部としてうたおうとしている。いつものルーツ・ポップスならばヴォーカルを前面中央に出すところだが、ここではそういうことはしない。まったくしないわけではないが、アンサンブルとのバランスの取り方はずっと謙虚だ。そういう意図が手にとるようにわかる。
   
    チェンバロ、ハーディガーディ、タンバリンなど、ノイズが組込まれた響きが結構ある。クラシックでは嫌われる要素が、ここでは音楽を構成する不可欠の要素になっている。この辺は地中海南岸のアラブ音楽の影響が推測されるところだ。このノイズが美しい。チェンバロはふつうの通奏低音だけではなく、ほとんど現代のギターのような使われ方もする。その時、このノイズと楽音のあわいの響きがひじょうに効果的だ。
   
    仕事で関わったハイブリッド・トロンボーン・カルテット。こういう形のアンサンブルがあるというのも初めて知ったが、トロンボーンは案外古い楽器で、ブランデュアルディの古楽アンサンブルにも入っている。昔から神の楽器と呼ばれていたそうな。
   
    このカルテットは意外に面白い。楽器の響きが深いのだ。余韻がある。ふくらむ。楽器の管の中の空気だけではなく、管自体の金属が鳴っている。こういう響きは確かにトロンボーンしかないかもしれない。それが重なる。華麗とも荘厳とも、そのどちらをも超えてゆくハーモニー。かと思えば茶目っ気たっぷりに跳ねまわる。同じ楽器が四つあることを利用して、ガムラン的な使い方をしたりする。素材はクラシックだが、バロックから現代まで、レパートリィの幅は広い。本来トロンボーンやトロンボーン・カルテットのために書かれたものではない曲が多いから、ふだんとはかけ離れた形で聞ける楽しみもある。
   
    折りにふれて試聴に使っている、ライナー&シカゴ響の『シェエラザード』。ファイルは AIFF。第四楽章初めの方の、リズミカルなメロディが始まるあたりで入るトライアングルの響きの、なんと可憐かつ気品のあることよ。このトライアングルはその後、同じフレーズが繰り返されるところにも使われていたのは、今回初めて気がついた。
   
    この第四楽章で多用される打楽器群の斉打の衝撃、金管の響きの金属の質感も初めて実感する。トランペットの速いパッセージが続いて、ついにライトモチーフが爆発するところでは、自然に涙が滲んできた。
   
    そして、最後にもう一度コンマスのヴァイオリンがシェヘラザードのテーマを弾き、超高域にまで持ってゆくところ、その響きのまろやかさ。音にちゃんとふくらみがある。これまでの記憶では、この音はただただ細くて、その繊細さにシェヘラザードの哀しみがこめられていたように聞こえていた。しかし、このふくらみはどうだろう。シェヘラザードが泣いているのは変わらないが、しかしその涙は哀しみのゆえというよりは、むしろ言葉を超えた歓びではないか。深い深い満足感がここには現れてはいないか。
   
    これがハイエンドとミドレンジの違いというものか。とはいえ、まだ使いだしたばかりなので、これまた100時間ぐらい使ってみないと、本当のところはわからないだろう。果たしてこれがすでにベスト・パフォーマンスなのか。それとも、エージングによって音が変わるか。変わるとすれば、良くなるか、悪くなるか。さても楽しみ。(ゆ)

    今年春のヘッドフォン祭でハイエンド・ダイナミック・ヘッドフォン Chroma MD1 を発表した RudiStor が今度はイヤフォンの新作とそれにマッチするポータブル・ヘッドフォン・アンプを発表していました。

    イヤフォン IMD3 はバランスド・アーマチュアではなく、ダイナミック型で、ドライバは15ミリ。インピーダンスは標準の32オーム、能率は112dB。

    形からするとドブルベそっくりですが、音はたぶん違うでしょう。ルディさんの作るアンプの音はごく自然で、無理に作ったところがなく、機械の音ではなく音楽に集中できるものです。ヘッドフォン祭の時に聞いた Chroma MD1 の音も同じ性格の音でしたから、IMD3 もその点では変わらないだろうと期待します。
   
    もっとも、ルディさんの本質というか、一番好きなのはやはりアンプ作りなので、IMD3 はイヤフォン単体というよりは XJ03 MkII の実力を発揮させるためのペアとして開発されたのではないかと思います。
   
    ルディさんはすでに Linearossa のブランド名でPHAは作っているので、これとはコンセプトが違うよということなんでしょう。値段も Linearossa W3 の倍で、しかもW3は光、同軸、USB の3系統の入力で DAC 付き。こちらはアナログ入力だけで、DAC も当然ありません。それだけアンプとしての「音」を煮詰めた、ということなのでしょう。
   
    サイズからしても、奥行はともかく、厚さ30ミリ、幅64ミリはポータブルとしてはちとふくらみすぎです。スイッチを入れると、前面のダイアルやネジの周辺が青く光るのも、ハイブリッドのヘッドフォン・アンプ NKK03 あらため RP3-d と同じです。これはたとえば iPod にくっつけて常時携帯して使うというよりは、持ち運びに便利な超小型のデスクトップ・アンプと考えた方が良いのかもしれません。同時に RudiStor サウンドの入門機にもなります。RudiStor の旧製品 NKK01-se の後継機というところか。
   
    もっとも、W3 もそうですが、バッテリの保ちは異常に長く、1回の充電で4〜7日、つまり96〜168時間だそうですから、バッグなど工夫して携帯して使うのも魅力です。

    イヤフォンもアンプもたぶん秋のヘッドフォン祭ではお眼にかかれるのではないかと期待してます。(ゆ)

EDIROL USB オーディオキャプチャー UA-4FX    本日11:30予定で配信しました。独自配信で受けとられている方はそれ以前に届く場合もあります。届かない方は編集部までご一報ください。
   
   
    先日の蒲田でのイベントはいろいろ副産物を生んだようで、嬉しいかぎりです。O'Jizo のすばらしさがまたより広く知られたのはめでたい。
   
    主催者のエヌさんとは「次」の話もはじめていますが、いろいろアイデアがわいてきて、楽しいです。「蒲田音楽祭」なんて構想もとびだしてます。国内で今、沸騰しているケルト系、ルーツ系のミュージシャンたちを一堂に会してみてみたい、というのはまだ夢でありますが、地道に実績を重ねて実現をめざします。まあ、ぼくなんぞは脇ではしゃいでいるだけで、実際に苦労するのはエヌさんなのでありますが(^_-)。
   
    こういうことがあると、うれしいことが続くのが世の中のおもしろいところで、昨日はひととおり本誌の編集を終えたところで、ふと部屋の隅にころがっていた Edirol UA-3FX に眼が止まりました。ずいぶん前に、LPのデジタル化に使えるだろうと買ったまま、その後はそんな暇がまるでなく、ほっぽっておいたもの。
   
    これって、DAC/ヘッドフォン・アンプとして使えるはずだと MacBook につないでみたら、びっくり仰天。おかげでそのまま深夜まで聞きまくってしまい、今朝は寝不足で調子が悪いです。USB 接続でもすばらしいですが、光ケーブルでつないだら天国へ直行。
   
    今は後継機種の UA-4FX(上の写真) が出てますね。Edirol から Cakewalk のブランドに移ってますが、Roland であることは同じ。そろそろ次が出るのかな。余談だけど、サイトにある命名の経緯からすると、この社名は「ロラン」と読むべきではなかろうか。

    困ったことに、もっと良いヘッドフォンが欲しくなってしまいました。AKG K702(ケーブル着脱式はマル)か、DENON AH-D5000(木のハウジングは試したい)あたりを物色してるんですが、Ortofon の IEM もかっこいい(「ブラックホーク」のカートリッジはオルトフォンだった)し、YUIN も G2 でこれなら、G1 はどうだろうと気になる。この迷いも楽しからずや。

    それにしても iMaldalArt が1,500円\(^O^)/。(ゆ)

 「STAX Unofficial Page」の「日記」12/01 の項に

導入したハードの特性に購入するディスクが影響されるのがオーディオ。

とあるのは、
「オーディオ」の定義として本質を突いている。

 それでは、

聞くディスクに導入するハードが影響されるもの

は何と呼ぶべきか。

 「オーディオ」を追究するわけではないが、
できるかぎり「良い音」で愛する音楽を聴きたい。
この場合「良い音」の定義としては、

楽にきける音((c)川村龍俊)

がベストだ。
「脳内変換」など必要ない音。
いつまでもきいていられる音。
音楽に没入できる音。
ディテールと全体像が同時によくきこえる音。

 もうひとつ大事な条件があって、
安価であること。
なにせ、音源のほうにカネをつぎこむのだから、
ハードにそんなにカネをかけられない。
ウン百万などというのはもっての外、
できるだけ1ユニット10万以内でおさえたい。

 今のところ、
われわれがふだん聞いている音楽で
この条件に応えてくれるのが
タイムドメイン式。

 今のところ、
スピーカーにしても、
イヤフォンにしても、
ダイナミック型では
これ以上のものはない。

 とはいえ、
もうひとつ試したいのは
スタックス。
MET の栗田さんも
あれはいいですよ
と言っていた。

 だから、上記のサイトなど、
ちょくちょく覗くことになる。


 MET と言えば、
先日 Jupity を聞かせてもらったときの「実験」で
ヘッドフォン・アンプを噛ませるは
スピーカーでも効果があったので
うちでもやってみる。

 MacBook 黒の光出力から ONKYO SE-U55GX(B) に入れる。
ちなみにこれについているヘッドフォン端子は
あまり質がよくない。
後ろのライン・アウトから Elekit TG-5882 につなぐ。
真空管はデフォルト。
ケーブルは昔出ていたMIT の廉価版 Terminator 2。

 正面のヘッドフォン端子ミニ・プラグに
TIMEDOMAIN light をつなぐ。

 音源は iTunes で、
ファイル・フォーマットは Apple Lossless または AIFF 48KHz。

 これがなかなか良い。
Jupity301 にも肉薄、
とまではいかないが、8割ぐらいまでは迫ろうか。
スーザン・マッキュオンのヴォーカルとか、
田村拓志&柏木幸雄のデュオとか
であれば、もう文句はなにもない。
ただ、ほれぼれと聞くばかりだ。

 それでは、
とザッパを聞いてみると、
やはり物理的限界が見える。
ルース・アンダーウッドのヴィブラフォンの高域の抜けが
ほんのわずかだが、もの足らない。
余韻の消え方はきれいだが、
Jupity より線が細い感じがする。
〈拷問は終わらない〉の後半、
フル・バンドで大音量の箇所にかかると
うーむ、がんばってるねえ、とけなげさがかわゆくなる。

 ライナー&シカゴ響の《シェヘラザード》第4楽章。
うーむ、フル・オケのマッスのところはやはり苦しい。
シンバルがしゃりしゃりするのも低域に余裕がないためか。
それでも、音楽の「形」はきちんとしていて、
エネルギーは伝ってくる。
音楽としてきこえるし、
それによって感興も湧いてくる。

 バッハ・コレギウム・ジャパンの《ブランデンブルク》6番。
これはもう、嬉々としてうたっている。

 なお、スピーカーから耳までの距離は1メートルもない。
6、70センチぐらい。
また、机の手前の端において、
机の面からの反射が無いようにすると、
空間が広くなる。(ゆ)

このページのトップヘ