クラン・コラ・ブログ(アイルランド音楽の森)

 アイリッシュ・ミュージックなどのケルトをはじめ、世界各地のルーツ音楽を愉しむブログです。そうした音楽の国内の音楽家も含みます。加えて主宰者の趣味のグレイトフル・デッド。サイエンス・フィクション、幻想文学などの話もあります。情報やメモ、ゴシップ、ただのおしゃべりなどもあります。リンク・フリーです。

タグ:ヘッドフォン

Jaben のウィルソンおやじとファイナル・オーディオ・デザインの本社に行く。Muramasa の実物にお眼にかかる。ちょっと頭の上にのせる気にはなれない。もっともこれをベースに、はるかにユーザー・フレンドリーなヘッドフォンを開発中だそうな。そちらはヒジョーに楽しみだ。Muramasa の隣には、かの「伝説」のターンテーブル Parthenon がさりげなく置かれていた。



*「法隆寺再建・非再建論争」を、歴史家の気構えを教えられた学生時代の教訓の一つ と宮崎市定が書いている(「中国上代の都市国家とその墓地——商邑は何処にあったか」全集3所収)。この論争における非再建派の主張の基盤を、ウィキペディアは「非再建論の主な論拠は建築史上の様式論であり、関野貞の『一つの時代には一つの様式が対応する』という信念」としている。だとすれば、その「信念」は異なる言語ですべての語彙は一対一に対応する、と主張するようなものだ。こんな理屈がまかり通った背景が面白い。おそらくは「聖徳太子」の「御威光」か。


 もっとも、ウィキペディアの記事のこの記述には参照先が示されていないから、関野の名誉のために検証する必要はある。


 実物実地を重視する立場が、屢々本質を見誤るのは、実物実地という存在のもつオーラに眼がくらんでしまうからだろう。人間の認識力を信頼しすぎる、と言ってもいい。実物実地に直に接して、今自分が認識していることがすべてだと勘違いしてしまう。実物実地に接すると、人間は興奮する。その興奮がすべてで、それ以外はニセモノととりちがえる。


 実物実地は情報量が多い。時には圧倒的に多い。しかもそれがいちどきになだれこむ。人間の認識能力を遥かに超えることがある。オーバーロードしてしまう。すると、その「体験」に比べて記録は重要なものではなくなる。したがって自分の認識ではなく、記録の方が間違っている、と思ってしまう。その場合、記録が間違っているという主張には、明確な根拠はない。当人の「体験」とそれに基く認識だけである。


 これは歴史学のように時間軸上の異世界を探究する場合だけでなく、空間の中の異世界、異文化を探究する場合にもよく起きる。民族学、民俗学、文化人類学のような学問では生のデータでオーバーロードにならないような予防の方法論もできているはずだが、「趣味」の対象になると困ることがある。科学としての厳密さを求められないと、自分のココロがオーバーロードに陥っていることに気がつきにくい。個人の体験など、実はごく限られたものにすぎない。それが当人にとっては「絶対的に正しく」なる。それ以外の見方やとらえ方は「間違って」いるとして排斥する。


 どんなにささやかにみえても、ひとつの文化、ひとつの社会は個人に比べれば巨大なものだ。その前では、己の限界に謙虚でありたい。



*かみさんが読んでいるジョン・グリシャムのペーパーバックのサイズがやけに縦長なのに気がつく。比べてみると、従来のマスマーケット版と横幅は同じだが、縦は2センチぐらい長い。中身は上下もいっぱいに印刷してあるのもあれば、下に大きく余白をとっているものもある。使っている書体も違うのは、アメリカのペーパーバックにしてもいいかげんだが、概ね従来よりも字のサイズは大きい。いつ頃から始まったのか知らないし、最近新刊はまず買わないから、ベストセラーだけに限定しているのかどうかもわからないが、トレードペーパーバック以来の「発明」ではあろう。本のサイズは、表面だけ大きくなるのではなくて、厚みも出る。ということは重くもなる。コストも高くなるはずだ。なぜこういうことをするのか。


 あるいは Kindle iPad への対抗ではなのか。判型を近づけ、字のサイズも大きくする。


 紙の本はハードカヴァーが図書館向けなどの特殊なものに限られ、ペーパーバックと eBook が通常のリリース形態になると予想しているが、こういう試みがされるということは、それだけペーパーバックの売上げが減っているのだろう。



*新しく買った伝聴研の DAC がデジタル入力しかないので、MacBook Pro から光でつなぐ。すると、システム環境設定>「サウンド」で「デジタル出力」にしていても、プレーヤーで再生を始めると「AirPlay」に切り替わってしまう。Audio MIDI 設定でも AirPlay に出力が固定されてしまい、内蔵出力に切り替えることができない。Wi-Fi を切ると「AirPlay」は消えて「デジタル出力」だけになるが、ネットにつないだまま再生をしたい時には不便だ。Audirvana Plus では出力が切り替わると再生も切れてしまう。音も違う。AirPlay をオフにする方法がわからず、さんざん探しまわって、AirMac Express 本体にスイッチがあることに気がついた。AirMac ユーティリティのベースステーション設定に AirPlay のタブがある。心覚えのために書いておく。



*新 iPod touch のストラップはすこぶる便利。むしろ薄くなって、ストラップが無いと、本体をとりあげにくい。この辺、やはり使い勝手をいろいろ試してみた結果なのだろう。



*それにしても、われわれはいったいいつから、難問を前にして「逃げる人」になったのだろう。放射能の影響をできるだけ軽いものとみなそうとする人たち。原発映画という企画と聞いて「蜘蛛の子を散らすように逃げだした」人たち。ひたすら「安心」を求めるならば、かえって「安全」は得られないとわかっているのも「理屈の上」だけなのだろうか。その姿を見ていると、黒船来航後の幕府が髣髴とされてくる。(ゆ)


 前回のヘッドフォン祭でプロトタイプが展示、試聴可能になっていた Hippo Biscuit の製品版は、使い勝手は最低なのですが、あまりの音の気持ち良さに、ほとんどメイン・プレーヤーになっています。

 20時間過ぎた頃から、こちらはヘッドフォン祭で好評だった GoVibe MiniBox をつないでみました。この MiniBox は新しい2012年ヴァージョンで、Ver. 1 の約半分の厚さ、縁は丸くなってます。ヘッドフォン・ジャックからつなぎ、音量調節はプレーヤー側でする形のシンプルな「筒」アンプです。Jaben のウィルスンおやじのつもりではほとんど Biscuit 専用に造ったらしい。MiniBox のパッケージには Biscuit とヘッドフォンの間に MiniBox を置いたイラストが描かれています。

 この組合せがすばらしい。Biscuit はもともと妙に音が良いんですが、MiniBox をかませるとちょっと信じられない世界です。Biscuit は現段階では MP3 と WAV しかサポートしていません。なので、もっぱら MP3 を聴いていますが、それがまるでハイレゾ・ファイルの音になります。ミュージシャンの息遣い、楽器のたてるノイズ、ホールやスタジオ内の残響、といった、ふつう圧縮音源では聞こえないとされる音も生々しい。一つひとつの音に実体があります。音が伸び伸びしてます。無理がない。フレーズに命が流れてます。そうすると音楽の活きが良くなります。とれたて、というか、みずみずしい、というか。音場は広すぎず狭すぎず。いやむしろ、録音そのまま、でしょう。広い録音は広く、狭い録音は狭く。

 テクニックでは並ぶ者もないが、さてそのテクニックで奏でられる音楽には全然感動しない、というミュージシャンは少なくありません。それと同じで、音の良さは天下一だが、それで聴く音楽はさっぱり面白くない、というハードウェアもあります。というより、オーディオの世界ではそういうケースの方が多いのではないか、とすら思えます。ハードウェアを造るのに夢中になって、肝心の音楽を聴くことが少なくなってるんじゃないでしょうか。たとえばたまにはこういうライヴを体験されてはいかがでしょう。こういう音楽をまっとうに再生できてこそ、ホンモノと言えるはず。

 対照的に、上手いんだか下手なんだかよくわからないが、独得の味があってついつい聴きこんでしまうアーティストがいます。外見などは地味だが、ツボにはまった音楽を「楽しく」聴かせることでは無類というハードウェアもあります。

 たとえば、かつて「BBC モニター」と呼ばれた一群の英国製小型スピーカー。スペックだけ見れば「ジャンク!」と言う人もいそうですが、音楽を楽しく聴ける点では、物量を惜し気なく注ぎこんだ大型スピーカーもかなわないものがありました。

 BBCモニターも、デジタル録音のヒップホップを再生すれば、たぶんひどくショボいものになるでしょう。同じ英国製でも、レディー・ガガはどうかなあ。

 しかし、たとえばビートルズやストーンズやキンクス、アコースティック・ジャズ、デッカのクラシック録音などには無類の強みがありました。とりわけ、英国の伝統音楽、あの頃のぼくらにとってはアイリッシュ・ミュージックもその一部だった、当時「ブリティッシュ・トラッド」と呼ばれていた音楽、フェアポート・コンヴェンションやスティーライ・スパンやニック・ジョーンズやアン・ブリッグスをクォードのアンプで鳴らすロジャースの 3/5A で聴くと、独得の「翳り」がひときわ艶を帯びて、たまりませんでした。

 BBC モニターの音楽再生に関する「思想」が時代を超えた価値をもつことは、最近になって、各モデルが相次いで復刻されていることからもわかります(ロジャースハーベススペンドール)。最新の技術を注ぎこんで現代の音源再生に合わせたものもあり、また当時の製品を忠実に再現したものもあります。かつてのオーディオ・ファンの端くれとしては、こういうもので、最新のハイレゾ音源を聴いてみたくもなりますね。

 Biscuit + MiniBox の組合せも万能ではない。不得手な音楽はたぶんたくさんあります。しかし、得意なものを与えられると、どんな「高性能」なハードウェアもかなわないリスニングを可能にします。何が得意かは、組み合わせるヘッドフォン/イヤフォンによっても、リスナーの嗜好によっても変わるでしょう。ちなみにぼくがつないでいるのは、Final Audio Design Piano Forte II、音茶楽 Flat4 粋、 Superlux HD668B、HiFiMAN HE300、Fischer Oldskool '70s です。Sennheiser の Momentum でこれを聴いてみたいんですけど、まだ販売開始されてないみたいですね。しかし、実は Final Audio Design Piano Forte X で聴きたいなあ。あのみごとな音の減衰が Biscuit + MiniBox でどう鳴るか。

 では音源はといえば、たとえば、オーストラリアのシンガー・ソング・ライター、Rachel Taylor-Beales。現在産休中で、公式サイトに《LIVE AT NEWPORT UNIVERSITY 2012》という MP3 音源が上がっていて、フリーでダウンロードできます。

 マーティン・ジョセフが推薦しているだけあって、うたつくりもシンギングもギターもすぐれた人ですが、ここではチェロやもう一人の女性ヴォーカル、エレキ・ギターなどのサポートで、ゆったりとしながらも切れ味鋭いうたを聴かせます。この人の一番新しい CD も買ってみましたが、これをリッピングした FLAC ファイルを iPod touchでアンプを通して聴くよりも、Biscuit + MiniBox で聴くこのライヴ音源の方に限りなく惹かれます。スタジオが悪いわけではないんですが、演奏も音も、ライヴの方がより生き生きしています。

 試しにオワゾリールから出ている Philip Pickett & New London Consort の《CARMINA BURANA Vol. 1》を XLD で FLAC と Lame MP3 256Kbps VBR にリッピングしたものを聴きくらべてみました。ヘッドフォンは Superlux 668B。

 うん、かなりいい勝負ですね。MacBook Pro の Audirvana Plus による FLAC 再生の方が少し音場が広いかな。それに個々の音の焦点はさすがに FLAC の方がきちんと合っています。が、聴いての楽しさという点では全然負けてません。むしろ、Biscuit + MiniBox の MP3 の方がわずかですが上かも。

 FLAC 再生の環境は Reqst 製の光ケーブルで伝聴研の DenAMP/HPhone です。伝聴研のものは先日出たばかりの DAC兼ヘッドフォン・アンプです。入力は光と同軸のデジタルのみ、24/192までカヴァー。かの DenDAC の開発・発売元だけあって、さすがの出来栄え。外見はチャチですが、実力は立派なもの。製造は Dr. Three がやってるらしい。

 フルオケの試聴には例によってフリッツ・ライナー&シカゴ響の《シェエラザード》。ビクターの XRCD 盤からのやはり 256Kbps VBR でのリッピング。奥行はちょっと短かいかもしれませんが、左右はいつものように広すぎるくらいに広い。高さも十分。第2楽章いたるところでソロをとるクラリネットの音色に艶気があります。途中で曲調が変わるところ、コントラバスの合奏の反応が速い。第4楽章のトランペットの高速パッセージの切れ味の良さ! 

 いやー、聴きほれてしまいました。人なみにこの曲はいろいろ集めてますが、やはりこの演奏が一番好き。

 それにしても Biscuit + MiniBox + 668B という、この組合せはいいな。ヘッドフォンが良いのかな。70時間を超えて、いよいよ美味しくなってきました。ラストのヴァイオリンのハイノートの倍音がそれはそれは気持ちよい。

 ついでながら、HD668B は、メーカー代理店の京都・渡辺楽器が扱わないというので、本家にも相談した結果、ここから買いました。送料込みで 35GBP。

 それと音茶楽の Flat-4 ですね。メーカー推奨のエージング時間のまだ半分ほどですが、ちょっと他では聴けない体験をさせてくれます。たとえば、シンバルの音が消えてゆく気持ち良さ。そしてヴォーカルの肌理のなめらかさ。もっとも、このイヤフォンについてはぼくなどが拙いことばをつらねるよりは、こちらをお薦めします。

 もう一つ。アラゲホンジが OTOTOY で配信したライヴ《月が輝くこの夜に》(DSD ファイルにオマケで付いてきた MP3)の〈斎太郎節〉、後ろでコーラスをつける女性ヴォーカルが気持ち良く伸びます。 〈秋田音頭〉の粘度の高いエレキ・ベースの跳ね具合がよい。ヘッドフォンは HE300。Head-Direct で売っているバランス用にケーブルを交換しでます。このケーブルはバランス用ではあるものの、単純にシングルエンドのハイクラス・ケーブルとして使えます。

 Biscuit のパッケージにはマニュアルもなくて、必要ないくらいですが、一応諸元を書いておきます。

サポートするフォーマット:MP3, WAV
サポートするヘッドフォン・インピーダンス:16〜300 Ohms
充電時間:1.5時間以内
再生時間:9時間
サイズ:62.8×35.7×11mm
重さ:30g

 サイズは Hippo Cricri とそっくり同じです。

 重さ30グラムというと、うっかり落としても、ヘッドフォン/イヤフォンのケーブルに刺さっているだけで支えられます。

 マイクロ USB ポートで充電します。充電用コードは付属。

 メディアは microSD カード。32GBまで。Biscuit 自体がカードリーダーとしても使えます。なお内蔵メモリは無いので、カードから直接再生してるんでしょう。

  機能は、単純な再生と音量の増減、次のトラックに進む、前のトラックにもどる、だけ。メインのボタンを押し続けるとグリーンのライトが点いてパワーが入ります。もう一度押すと再生開始。再生中はグリーンのライトが点滅。トラックが変わるところで一瞬、点滅が止まります。再生中に押すとポーズ。もう一度押すと再生。ポーズまたは再生中に長押しするとグリーンのランプがまばたきしてパワー・オフ。曲の途中でパワーを切ると、次に入れた時、前に再生していたトラックの頭から再生を始めます。

 再生の順番はカードに入れた順、らしい。シャッフル再生はできません。何を再生しているかは、記憶に頼るしかありません。初聴きには向かないです。とにかく、ひたすら音楽を聴くだけのためのハードです。

 万一、ハングしたら、楊枝か、延ばしたクリップでリセット・ボタンを押します。ハングしたトラックから再開します。

 MiniBox 以外のアンプと組合せても、Biscuit はすばらしいです。Rudistor RPX33 + Chroma MD1 につなげてみました。音が出たとたん、言葉を失いました。そのままずーっと聴きつづけました。うーん、この組合せがこんな音を聴かせてくれたことがあったかな。お互いベストの相手には違いないでしょうが、MacBook などからつないだ時よりも音楽に浸れます。こっちの耳がグレードアップしたんじゃないか、と思ってしまうくらい。そりゃ高価なハイレゾ・プレーヤーならもっと凄い音が出るんでしょうが、なにもわざわざそこにカネを注ぎこまなくても、プレーヤーは Biscuit で十分。むしろアンプとヘッドフォンにカネを注ぎこみたい。こりゃあ、次は LCD-3 かスタックスで聴いてみたくなります。

 それでいてなのです、MiniBox との組合せにはちょっと特別なものがあります。もちろんどこにでもその音を持っていけるというメリットは大きいです。MiniBox にはクリップが付いてますから、シャツにはさんだり、バッグのベルトにひっかけたりもできます。そしてそのペアでの音のふくらみが尋常ではありません。「フルボディ」というやつでしょうか。他とのペアで音がやせているわけではないんですが、MiniBox とのペアの音はさらに中身がぎっちり詰まっています。一方で、透明度もハンパではありません。分析的ではないけれど、隅々までよく「見え」ます。だから空間も広い。そのおかげで、とにかく聴いて楽しい。音楽を聴く悦びがわいてきます。これこそがオーディオの役割ではないか。いや、これこそが理想のオーディオ・システムというものではないか、とすら思えてきます。

 今のところ日本から買えるのは Jaben のオンライン・ショップです。

 MiniBox 2012 Version はこちら。シルバーもあります。また、シャツの胸ポケットなどにはさめる形のクリップが片方についてます。

 単体で欲しいとか、英語はちょっとという方には朗報です。今週末のヘッドフォン祭にウィルソンおやじが自分で持ってきて、ブースで販売します。MiniBox との組合せもあります。また、このペアが当たる抽選会もあります。

 ちなみにこの抽選会には Jaben からもう一つ、バランス仕様の Beyerdynamic T1 も提供されます。

 従来のオーディオの愉しみに、高い価格に代表される「価値」をそなえたモノを所有する、という物質欲を満たす面があることは否定しませんが、それはやはり二次的な愉しみでしょう。オーディオはまず何よりも、音楽を聴くための手段であるはず。アナログでは質を高めるためには物量を投入する必要があったかもしれませんが、デジタルでは様相が逆転します。小さく、安価で、能率が良く、しかも質が高いシステムが可能になる。その可能性はちらちら見えていますが、まだ本格的な展開に手がつけられていない。アナログの発想から抜けだせていないように見えます。

 まあ、ものごとの変化は一様に進むわけではなく、変化の小さい長い準備期間の後に急速に大きく進むというパターンが多いですから、今はまだ準備中なのかもしれません。本物の変化が始まるのを見たい、体験したいものですが、生きているうちに始まってくれるかな。

 それにしても、Biscuit が FLAC とギャップレス再生をサポートしてくれたら、もう iPod も要らないな。(ゆ)

 先週の腹部エコー検査では問題なく、この結果を見て、抗がん剤治療はめでたく終了となりました。点滴のために入れてあるポートも摘出しましょう、ということになりました。年末に CT 検査をして、その時、一緒に取り出すことになります。局部麻酔をして簡単な手術を受けるので、一泊はした方が良いらしい。

 全身の発疹とかゆみが抗がん剤によるものか、もう一度抗がん剤治療をやってみないと明確にはわからない、とはいうものの、それを試してみるというのも正直願いさげでありました。

 手術後3年は注意せよ、とあらためて釘を刺されたのはもちろんですが、とまれ、ひとまず肩の荷がおりて、ほっとした気分です。

 まだ抗がん剤の影響が消えたわけではありません。発疹とかゆみは、抗がん剤の影響だと信じていますが、まだ残っています。体のあちこちに、ぽつんと出て、いきなり猛烈にかゆくなる症状です。かゆくなるのでそこを見ても、まだ何もないこともあります。とにかくそこに薬を塗って、しばしがまん。薬を塗ったからといって、市販のかゆみ止めのようにすうっとかゆみが消えるわけではありません。むしろ、一時的にはかゆみが強まるようにも感じられます。とにかくかきむしらないようにがまんがまん。

 紫外線もまだまだ今のぼくの肌には強いらしい。昨日も、午前中、どうしても昼前にすませなければならない買物やら何やらで外出しました。日傘、というより、普通の雨傘を日傘代わりに使っているのですが、とにかく傘を持って出て、顔と両手からは日光をさえぎっていました。さえぎっていたつもりなのですが、帰宅したとたん、手やら顔やらにぽつぽつとかゆいところがふき出しました。手の甲はしばらく出ていなかったのですが、ひさしぶりに出ました。

 夜になると、またあちこち猛烈にかゆくなり、そのたびに起きあがって薬を塗ります。3時頃まで、それを繰り返していました。

 やはり日中の外出は避けねばならないようです。今月末のヘッドフォン祭には行かないわけにはいかないので、屋外にいる時間を極小にするべく努めるしかないでしょう。さいわい屋内のイベントですから、外にいる時間は多くないはず。雨が降らないまでも、曇ってくれるとうれしい。ドラキュラの気持ちがわかります。いや、ほんと。

 とはいえ、とにかく抗がん剤治療が終わったことで、カラダにもココロにも、そしてフトコロにもかかっていた大きな負担がなくなります。1ヶ月、治療を休んだわけですが、肝臓の値が明確に改善されていました。主治医が驚くほどで、ひょっとすると、畏友川村龍俊さんに教えられて以来、朝晩続けているリラックス体操の効果も加わっているかもしれません。この体操についてくわしくはこの本をどうぞ。
 

 これまでは抗がん剤という「毒」を飲んではその効果に耐えるという、受け身の姿勢にならざるをえなかったわけですが、これからはもう少し積極的になれそうです。当面は東大出版会から出たばかりの『ユーラシア世界』全5巻と Subterranean Press から出ているロバート・シルヴァーバーグの短篇全集既刊分の読破、それにライバーの「ファファード&グレイ・マウザー」シリーズとハインラインの『栄光の道』から始める "Sword & Sorcery" の勉強、かな。物欲ではゼンハイザーの Momentum と CEntrance の新DAC/PHA、HiFi-M8。そうそう、近くはマーティン・ヘイズ&デニス・カヒルの来日がありますね。ドラキュラよろしく日が沈むと徘徊することが多くなるでしょう。さいわい(?)これからは夜が長くなるし。

 まずは、今月末のヘッドフォン祭には行くつもりです。また Jaben のブースのあたりにウロウロしてるはずです。そちらで、よしなに。(ゆ)

が出てますね。詳しくはこちら

モデル・ナンバー以外の MD1 との違いは
・ドライバーを収めている空間の配置を調節して、奥の空間を広げた。
・内部のシースをプラスチックのフォームから天然コルクに変更。

ということらしい。この結果、基本的性格に変更は無いものの、ダイナミクスが広がり、深みがさらに深くなった由。
価格も変更無いようです。
音の良さは文句ない上に、とにかくあの軽さは魅力。
正規輸入されていないから、知る人ぞ知る、というのもくすぐられますな。(ゆ)

ヘッドフォン祭の記事でも書いたように、GoVibe Porta Tube と Porta Tube+ では、内部のジャンパ・スイッチによってゲインを下げることが可能です。

    
    その方法を Jaben のウィルソンおやじから教わりました。
    
    「危ないから開けるな」とわざわざ印刷してあるくらいですから、感電などならさぬよう、よくよくご注意のほどを。開けただけで保証がなくなるとは思えませんが、自己責任ということでお願いします。
    
    
    まず必要な道具ですが、トルクスのドライバーです。サイズは T6 です。トルクスは登録商標の由で、自転車方面などではヘックスとか、アレン・キーとか呼ばれているそうです。Mac で内蔵ハード・ディスクの交換をしたことがある方は使われたと思います。ホーム・センターなどで手に入ります。ヘッドフォン祭の会場では Jaben は先端が交換できる方式のものを使ってました。
   
    前後のパネルを止めている四隅のネジをゆるめて抜き、パネルをはずします。
    
    ヴォリューム・ノブが邪魔でしたら、ネジをゆるめるとはずれます。
    
    後ろからプリント基盤を押して、基盤を前に出します。すると真空管のうしろにジャンパ・スイッチが見えてきます。
   
    下の写真では真空管と緑色のバッテリの間、赤い素子の上に見えます。
   


IMG-20111105-00352

    
    Porta Tube と Porta Tube+ では、ジャンパ・スイッチの位置は同じですが、向きが違います。
    
    ゲインを下げるには、

    Porta Tube ではジャンパを右に移します。
    
    Porta Tube+ ではジャンパを下に移します。


PortaTube Low Gain Setting

    
    スペックとしては 6dB 下がるそうです。
   
   
    お楽しみを。(ゆ)

13時過ぎに会場に着いたら、エレヴェーターの中でウィルソンおやじにばったり。そのままブースに引っぱっていかれて、結局18時半のクローズまでつきあうことになりました。挨拶と試聴だけで帰るつもりだったんですが、会場の熱気にあてられたか、結構元気をいただいて、会場にいる間は楽しかったです。が、家に帰りついたらほとんど寝床に直行。やはり大勢の人と話すのはくたびれます。ブースで素人の相手をしてくださった皆さまには御礼申し上げます。ありがとうございました。
    
    今回は前回の Porta Tube のようなセンセーションはありませんでしたが、新製品ではやはり平たい GoVibe Vest が人気でした。DAC 付きと無しとあり、やはり音が違うようですが、ありが良いという方、無いが良いという方、双方がいらしたのは面白かったです。DAC は 24/192 まで対応で、価格は DAC 付で3万以下ですから、結構お買い得ではないかと思います。
    
    Porta Tube ユーザの方も結構いらして、人気の高さを実感しました。Porta Tube+ は DAC を付けた他、アンプ部は Porta Tube とまったく同じだそうですが、ただゲインを下げているそうです。プラスの方が音が良いと思われる(ぼくだけではなく、何人かいらっしゃいました。)のはそのせいでしょうか。
    
    プラスでは、中を開けてジャンパ・スイッチを切り替えることでさらにゲインを下げられます。では Porta Tube はどうしようもないのかというとさにあらず。このジャンパ・スイッチはすでに搭載されているので、Porta Tube もこれを切り替えることでゲインを下げられます。その方法は別記事に書く予定。
    
    本体には、危ないから開けるな、と書いてありますが、ブースでも開けた状態の Porta Tube を展示してあったくらいですので、開けたら保証がなくなるというものでもないでしょう。
    
    ACS の新製品 T15 も、気軽に使えて音が良いというので、なかなか人気でした。ER4 と比べられますが、あちらは「音」を聴く装置、これは「音楽」を聴くツール、とおっしゃった方がいて、なるほど、と思いました。ウィルソンおやじによれば、国内での正式発売が決まったそうです。めでたい。
    
    イヤフォンではもう一つ、5ドライバのIEMの試作品も持ってきていました。後半はどこか切れるかしたか、調子が悪かったようですが、午後のはじめに試聴された方には好評でした。ドライバの構成は2ベース、1ミドル、2ハイの由。
    
    なお、今回展示してあったものは Porta Tube と Porta Tube+ を除き、どれもまだ試作品段階で、これから細かい調整をするそうです。それでも来月には発売とのことで、国内に入ってくるのは来月後半から12月はじめぐらいでしょうか。
    
    Porta Tube+ だけはすでに発売になっており、国内でももうすぐ発売になるそうです。価格は Porta Tube の150USDプラスとのことですから、6万円代半ばというところでしょう。DAC だけで150ドルというのはやはり結構良いものを使っていると思われ、実際、ウィルソンおやじの MacBook Air で試聴された方には好評でした。
    
HippoPipe    個人的には Hippo Pipe が今回のヒット。たぶん世界最小のヘッドフォン・アンプ。E3 のようにイヤフォン・ジャックから直接つないで、プレーヤー側で音量調節します。すでに発売されている Hippo Box+ と同じ傾向の、元気の良い音で、聴いて楽しくなります。ハイレゾ音源をどうとかでなく、ヘッドフォン・アンプの入門とか、iPod Shuffle などでMP3音源を気軽に聴くにはもってこいでしょう。

    もう一つ、英国のメーカー JustAudio という、A級動作のヘッドフォン・アンプもウィルソンおやじが持ちこんでました。写真はフジヤさんのブログにあります。大きい方はイヤフォン/ヘッドフォンのインピーダンス切替ダイアル付き。 Porta Tube よりもデカくて、重さも同じくらいという、ポータブルとしてぎりぎり限界ではないかと思われるものですが、ブースに来られたなかに3人、これを持っている方がいました。国内では未発売なので、直接に買われたもの。中のおひとりはシリアル番号が2番というツワモノでした。ちょっと聞いたかぎりでは小さい方がきびきびした音で買うならこちらかなと思いましたが、じっくり聴きたいものであります。

        体力が無いこともあって、会場を回ることもしなかったのですが、ウィルソンおやじが引っぱってきてくれた音茶楽さんの「革命的」イヤフォン、フジヤさんのブログで紹介されていたアレをちょっと聴かせていただきました。これは凄いですね。とてもイヤフォンとは思えない。こういう音がスタンダードになれば、音楽の聴き方もまた変わるのでは、と思ってしまいました。ぜひ量産化していただきたいものです。応援します。
    
    女性のお客さんはやはり少なくて、来場者が増えたこともあるのか、10対1ぐらいに見えました。たいていはカップルで、単独で来られていた方はごく稀でした。一人、カスタムIEMの交換ケーブルを探しにこられた方がいました。
    
    放射能にもかかわらず、今回はこれまでになく外国からのお客さんが目につきました。出展側ではなく、ほんとうのお客の方です。Head-Fi 関係からも主催者はじめ幹部が何人も「遊び」に来ていたそうで、Moon Audio の主催者もいました。大陸や台湾からはこれまでにも出展者の他にプレス関係が来ていましたけど、アジアからのお客さんは、見分けがつかないこともありますが、どうなんでしょう。
    
    これでぼくが見たのは4回目ですが、お客さんの「濃度」がだんだん濃くなる気がします。フルサイズのヘッドフォンをジュラルミン(?)のケースに入れて持ち歩いてる方もいましたし、カスタムIEM はもうデフォルト、接続コードもそれぞれに凝って、と感心するばかり。
    
    イベント全体としても、最先端を示すことはもちろん意味がありますが、たとえばこれからヘッドフォンやイヤフォンをアップグレードしたいという人や、DAC やポータブル・アンプを買おうという方が来ても、何がどうなっているのか、まるでわからないのではないか、とも思いました。
    
    来年の春の次回ヘッドフォン祭には、放射能ももう少し収まって、こちらの体力ももう少し回復して、楽しめますように。(ゆ)

今日のヘッドフォン祭ですが、先週の抗がん剤投与の後遺症がまだ尾を引いています。Jaben のブースで MacBook Pro を持ちこんで GoVibe Porta Tube+ の DAC の試聴ができるようにする予定でしたが、体力が保ちそうにありません。楽しみにされていた方がいれば申しわけないのですが、それは無しにさせてください。
    
    ぼくがいなくても、Porta Tube+ 単体の試聴や ACS T15 の試聴はできるはずです。T15 は他でも試聴できるかもしれません。これはほんとうに凄いです。一聴の価値はあります。というより、必聴でしょう。他にもいろいろ面白そうな製品があります。
    
    お楽しみを。(ゆ)

Jaben のウィルソンおやじが今週末のヘッドフォン祭に持ってくる新製品はまだある模様。たとえばこれ。

jaben111021



























    E7キラー、ですかね。写真だけで詳細不明。Jaben のブースで試聴できるはず。
    
    FiiO も新製品が次々出ますなあ。オヤイデさんもたいへんでしょうけど、国内でもどんどん出してほしい。(ゆ)

今月末のヘッドフォン祭にはまた Jaben のウィルソンおやじがやって来ます。毎回、新製品をたくさん持ってきますが、今回はまた一段と多彩です。どれがどれだか、わかりにくくなるので、整理しておきます。ただ、まだあまり情報が無いので、濃淡のある紹介になるでしょう。それと価格もまだわかりません。
    
    新製品の写真はここにまとめられています。

    これは Jaben のオーストラリア支社がアメリカのロッキー・マウンテン・オーディオ・フェスティヴァルに出品するもの。RMAF はちょうど今開催されているところです。ここ数年、各社が力を入れている新製品を披露するので注目が高まってるようですね。
    
    新製品はいずれも GoVibe のブランドで、全部で5機種あります。
    
    GoVibe Vest
    GoVibe Volante
    GoVibe mini U-DAC
    GoVibe mini box amp
    GoVibe Porta Tube+
    
    まず、Vest は御覧のように平たいアンプで DAC 付きと無しと出るそうです。DAC は 24bit/192KHz までのもの。全体としてはシンプルに出入力とヴォリューム・ダイアルだけ。今回出るものはどれもそうですが、ゲイン切替とか、ベース・ブーストとかは付いてません。それだけ、音に自信があるとも言えます。
   
    次の Volante は小型のデスクトップ真空管アンプ。名前はサッカーの「ボランチ」と同じですが、もともとは音楽用語で「あまかけるように速く軽やかに」という意味。そういう音は聴いてみたい。
    
    形もキュートで、ちょっとオーディオ・デバイスらしくないですね。これでパステルかメタリック調のカラー・ヴァリエーションが出たら、人気が出るんじゃないでしょうか(^_-)。
    
    真空管を使ったものは Jaben では Porta Tube が最初ですが、あの出来栄えの見事さからすると、このデスクトップも音の面でも大いに期待できます。
    
    U-DAC は DenDAC と同じく、USB端子付きのDAC兼アンプです。DenDAC は音は良いですが、ハイレゾ対応していないし、プレーヤーによって合わないものが出てきているので、これに替わるものができないかと頼んだらほんとに作ってくれました。詳細はまだわかりませんが、少なくとも 24/96 までの対応ではあるはず。
    
    mini box amp は FiiO E3 と同じ形ですが、リチウム電池内蔵で、聴いた人間は皆 E3 より音が良いと言ってるよ、とはおやじの言。造りもよりかっちりしています。
       
    一番下の Porta Tube+。これが今回の一番の目玉でしょう。Porta Tube にDACが付きました。チップはテキサス・インスツルメント製ですが、それ以上詳しいことはわからず。24/96までの対応です。
    
    実は先日からサンプルを聴かせてもらってますが、これが単純に Porta Tube にDACを付けただけではありません。
    
    一つはゲイン切替が可能になりました。ただし、中を開けてジャンパ・スイッチで行います。音量を6dB下げることができます。
    
    そしてもう一つ。アンプ自体がアップグレードされてます。これは聴けばすぐわかるくらい、音が良くなってます。サウンドステージがさらに広く深くなり、音の分離がさらにクリアに自然になり、とにかく全体的にブラッシュアップされてます。
    
    Porta Tube だけを聴くと、もう十分なくらい良質の音で音楽に没頭できます。これも質は相当高いでしょう。お披露目した前回のヘッドフォン祭の会場でも iQube より上という声もありました。iQuebe は一度アキバのダイナで試聴したことがあるだけですが、その記憶は鮮烈に残っています。その記憶に比べても、Porta Tube は優に肩を並べるか、場合によっては、つまり聴く音楽によっては凌ぐと思ってました。
    
    Porta Tube+ は、それをあっさり超えてると思います。iQube には独得の艶、エロティックと言いたくなる艶があって、蠱惑的とも言えますが、時にそれが鼻につく、というか耳につくことがありました。Porta Tube+ はそういう艶はなく、音源に入っているものに「何も足さず、何も引かず」にそのまま出してきます。その出し方の質感が絶妙なのです。無色透明にかぎりなく近い。完全に無色透明ではないですが。
    
    各社の製品と比べたわけではないですし、iQube も新版が出ますが、ぼくはもうこれ以上他には何も要らん、という気持ちです。
    
    外観も変更になって、フロントとエンドのパネルはシルバー、ヴォリューム・ダイアルは黒、本体はブルーです。このブルーは Vulcan+ のものと同じ、群青色に近い色。それと、本体上側の通気孔のあいている部分は、Porta Tube では一段低くなっていましたが、+ では他と同じ平面です。USB入力はミニ・ジャックで、背面にあります。その他はサイズも含めて変更無し。
    
    細かいことですが、ぼくの使っている Porta Tube のヴォリュームはやや軽すぎるところがありました。個体の問題かもしれません。Porta Tube+ のヴォリュームは適度に重く、調節がしやすいです。
    
    せっかくですので、MacBook Pro を持ち込んで、会場でDACも含めた試聴ができるようにする予定です。ハイレゾ音源も少しですが、用意します。(ゆ)

悪いものではないが、ぼくにとってはあまり面白くない類の音楽を3人、聴く。サンプルをいただいたので、無視するのも失礼だし、礼状を出すより、少しでも露出した方が何らかのプラスにはなるだろう。

*エミリー・ジェイン・ホワイト《ODE TO SENTIENCE

    歌詞に特徴があるのだろうが、音楽自体はごく普通のアコースティック主体のアメリカ西海岸出身の英国調シンガー・ソング・ライター。その「英国」はアメリカ人の一部の想像の中だけにある王国だ。セーラ=ジェイン・モリスとか、パメラ・ウィン・シャノンあたりと通底する。アメリカよりもヨーロッパ、それも大陸で人気が高いらしいのも当然。ニック・ドレイクへの憧れもあるようだ。60〜70年代に生まれていれば「アシッド・フォーク」としてもてはやされたかもしれない。
    
    
*エミ・マイヤー《スーツケース・オブ・ストーンズ
    音楽的には前者とは比べものにならないほど高度なことをやっている。うたのうまさ、適度なポップさ、巧妙なジャズの風味。こーゆー音楽を聞きたくなる時もあるなと思わせる。ただ、毒が無い。
    
    
*デヴィッド・ウォルターズ《ホーム 〜JAPANESE EDITION(国内盤特典:ボーナスDVD付)
     どうしてこの人は英語でうたうのだろうか。アメリカで売るためか。カリブ訛のある英語がエキゾティシズムを呼ぶのか。音楽的にはかなり面白くなりそうなのを、「商品」に仕立てるためか、わざわざ一歩手前でやめている。昔は「オーヴァー・プロデュース」ということが言われたが、これは「アンダー・プロデュース」だろうか。本人の意志が入っているとしても、音楽が本来向かおうとするところを矯めているのは変わらない。だから英語以外の言語でうたっている曲が良い。ベスト・トラックは〈Lome〉。
    
    
    口なおし、と言っては失礼になるかもしれないが、同じ志向ながら別の結果になったものを聴きたくなって、これを聴いてみる。

*マリアンヌ・フェイスフル《NORTH COUNTRY MAID》
    久しぶりだが、やはり良い。この人がこういうアルバムを作ったというのは、やはり当時の時代の動きに人の創造力を増幅する働きがあったということではないか。ビートルズにしても、メンバーが凡人とは言わないが、それほど傑出した人間、たとえばレオナルド・ダ・ヴィンチとか、ソクラテスとか、司馬遷とか、あるいはモーツァルトとか、プルーストとか、ガウディとか、そういうあきらかに同時代の水準からかけ離れた才能と運命を担っていたとは思えない。
    
    一方でそうした異才たちもまた時代の風に乗っていたわけだから、60年代という時代が持っていた創造力増幅効果が特異なわけではなかろう。ただ、凡人でもその増幅効果の恩恵を受けられるようになっているところは、それだけ「文明」が進んだと言えようか。かつてはチャンスさえ与えられなかった人びとが、とにもかくにもチャンスを掴む可能性を持てるようになったのだから。
    
    話をもどせば、これを聴くとフェイスフル自身、うたい手として凡庸ではないこともわかる。誰もが知っていて、口ずさんだこともあるようなうた、あるいは録音をリリースするようなシンガーならどこかで一度はとりあげるようなうたを、相応の説得力をもって新鮮に聴かせるのは難しい。うたい手としての実力が剥き出しにされるからだ。うたい手として自信のない者は、エミリー・ジェイン・ホワイトのように、自分だけの世界に籠る。
    
    このアルバムが傑出したものになっているのは、うたい手の力だけでなく、シンプルだが大胆なアレンジで盛り上げるバックのサポートも小さくない。この類のうたの伴奏としては、かなり実験的なこともやっていて、ジャズ的処理をしているのはペンタングル出現前夜ということもあって面白い。
    
    1966年というリリース年代を差し引いても、十分時間の濾過効果に耐えて、今でもりっぱな音楽だ。
    
    フェイスフルにはもう1枚、同様の趣向の録音があったと思うが、今、思い出せない。
    
    
*大塚の波切不動
    ネットで検索してみると鬼平の場面しか出てこないが、『剣客商売』文庫版では『新妻』の巻収録の「いのちの畳針」にここが出てくる。このエピソードで初登場する小兵衞の弟子、植村友之助がこの鳥居前の茶屋の屋根裏部屋に住んでいる。茶屋をやっているのは御家人だった友之助の屋敷にかつて奉公していた女性の父親という設定。それにしてもあそこでの描写は『江戸名所図絵』そのままなのね。ここで主人公を張る友之助はその後何度か登場するが、チョイ役ばかりなのは残念。いいキャラだと思うんだが。金貸し幸右衛門から遺贈されて友之助に留守をさせている神田明神下の家を小兵衞が使う口実に使われるというパターン。


*iPhone 5
    ケータイは要らないので持ってもいないが、iPod touch もそのうち無くなって、iPhone だけになるのではないかという一抹の危惧はある。電話機能の有無を選択可能で、価格も電話無しなら iPod touch と変わらないのであればいいが。


HDTracks
    ハイレゾ音源2枚のダウンロードにちょうど24時間かかった。片方は2枚組だからCD3枚分だが、それで24時間は無いよ。ユーザのネット環境によってかかる時間が変わるにしても、だ。
    
    ここはファイルのアーカイヴ化もせず、生のファイルをダウンロードさせる。それも Java を使った独自アプリ。おかげでダウンロードが続いている間は Java を使う他のアプリは使えない。
    
    結構面白いタイトルはあるし、ハイレゾではない、普通のCD音源も、生CDを買うよりも安い場合もあるから便利ではあるのだが、このままでは二度と使えん。
    
    ただし、今回買った1枚、出たばかりの《マイルス・エスパニョール~ニュー・スケッチ・オブ・スペイン》は面白そうだ。 チック・コリアとか、ジョンスコとか、ディジョネット、ロン・カーターといった、ほんとの有名どころしかわからないが、ラビ・アブ=カリルがフィーチュアされてるし、スーザン・マキュオンの《Blackthorn》ですばらしいハープを聴かせるエドマー・カスタニェダが参加してるのは嬉しい。さらに〈Saeta/ Panpier〉にはクリスティナ・パトがパイプで入っている。24bit/88.2KHz のハイレゾの威力はどうか。


GRAHAM SLEE Novo
    をを、グレアム・スリーが入ってきたのかー(念のために書いとくが、「グレアム」だよ、「グラハム」ではないよ)。これは聴きたい。値段もまあリーズナブル。DAC はちょっと面白いものを手に入れたので、今は小型で質の良いデスクトップが欲しいところ。MacBook Pro の脇に置くので、小型でないとね。
    
    実は MacBook Pro> JAVS nano/V > RudiStor RPX-33 というのも試してみて、RPX 33 の実力をあらためて思い知らされたのであります(今は改訂版の RPX-35)。このアンプはソースが良ければいくらでも音が良くなる。うーん、DSD 音源をこれで聴いてみたい。
    
    んが、RPX-33 はさすがにほいほいと持ち歩くわけにはいかない。それに MacBook Pro の脇に置くわけにもいかない。アンプの上に MBP というのもねえ。というわけで、これに匹敵するのは無理でも、相当する小型デスクトップを物色中。
    
    というわけで、NOVO はずーっと気になっていたのだった。
    
    しかし、とゆーことは上級機も入ってくるのか。(ゆ)

今回はなかなか辛かった。入院中はまずまず眠れましたし、例によって便秘にはなったものの、退院する金曜日朝には便も出て、まあいつもの通り。ところが家に帰ってからダメージが来ました。土曜日はほとんど終日寝ていました。日曜日になって少し楽にもなったので、体を動かした方が良いかと午後から駅前まで買物に出たりもしましたが、効果はあまりなし。今週になってからもずるずる残る感じで、正直、今日になってもまだ引きずっています。
    
    あるいは吐き気が強くなってきたのかも。入院する日の朝から吐き気止めの薬を飲むので、吐き気そのものはほとんど感じませんが、不快感は残ります。また、イメンドというこの薬の副作用の一つでしゃっくりが出る人が半数いるそうで、前回あたりから少し油断するとしゃっくりが出るようになりました。これもまた不快感を強めます。この不快感はちょっと表現しようのないもので、場合によっては不定愁訴と取られるかもしれません。しゃっくりしたその瞬間がはてしなく続いている、と言えば少しは近いか。はっきりとどこが痛いとか苦しいとかいうのではなく、体内のどこか遠くのところが微妙に、しかし決定的にずれている。そしてそれをどうすることもできない。
    
    金曜日にひどく寒かったこともあるのかもしれません。もうずいぶん前から体が少しでも冷えると腹が下ってましたが、術後もそれは変わらず。暑い間は発汗などで水分は不足気味になるので、むしろ便秘が心配ですが、こう急激に気温が下がると着るものの調節に苦労します。免疫力を高めるためにも、とにかく暑いくらいにしておかないといけない。嫌いな靴下も家の中でも履いてます。
    
    手足の指先の痺れもかなり強くなってきて、今回は痺れをとる漢方薬を出してもらいました。ツムラの107番。牛車腎気丸、ゴシャジンキガンと読むもの。人によって効果の強弱があるそうですが、どちらかというと効いているかな。飲みだす前よりは少しは軽くなった気もします。ちなみに抗がん剤の副作用を軽くする薬には漢方薬が多いそうな。
    
    とはいえ、四六時中痺れているのはやはり不快なものです。キーボードを叩くのもなるべくしたくない。手書きはなおさら。
    
    とまれ、薬が体内に蓄積されてきて、それにともない、副作用も強くなってきているのでありましょう。1年間がんばりましょうと毎回判で押したように言われますが、これからの半年が踏ん張りどころであるようです。
    
    同時に、まだまだ「安心」できる状態ではないことも思い知らされます。手術で病巣はきれいになったとしても、がんができやすくなっているし、できたがんへの抵抗力も落ちている。腸も短くなっているので、表面の傷はずいぶんきれいになってきましたが、中はそう簡単ではない。抗がん剤点滴は1年の予定ですが、全快とされるには5年間再発しないことが条件。それも「通常」の環境のもとでのことですから、放射能を浴びながらではこれまでと同じに考えるわけにもいきません。5年というのはひとつの希望であります。
    
    とまれ生きている間は人生を味わい、楽しみたい。ということで、こういう今ひとつの体調となんとか折り合いをつけながら、やらねばならぬと決めたことを坦々と果たすように努めています。刊行を待ちかねていた Tim Robinson のコナマーラ三部作の最終巻 Connemara: A Little Gaelic Kingdom も入院中に着いたことですし。ロビンソンのものを読みつくしてしまうのが厭でわざと読まずに残しておいた『アランの石』後篇『Stones of Aran: Labyrinth (New York Review Books Classics) 』の最後の章も、これでようやく読めます。このどちらか、できれば両方を訳しながら死ねれば本望だな。
    
    今回の入院には JABEN GoVibe Porta Tube は持っていきませんでした。これはちょと重いのと、やはり熱くなるので、今はほとんどデスクトップ用になってます。代わりに持っていったのは、ここのミント缶アンプの試作品。これがすばらしく透明な音で、音楽を楽しめました。ただ、電池が切れたら、予備に持っていた電池がことごとく使えず、しかも充電器を忘れるという失態。
    
    モバイル用のヘッドフォンは Yuin G2a。Yuin の耳かけ式の廉価版の方ですが、もう2年以上使っていて、良い感じに練れていて、手放せません。一度踏んづけて耳にかけるフックが折れてしまってから、どうも本体のフックの取り付け口もゆるんで、耳にかけている間はいいんですが、はずすととたんにフックが本体からはずれてしまうようになってます。その不便さもこの音には換えがたい。
    
    それにしても、HiFiMAN の高価な商品は扱っても同じ Head-Direct の別ブランドである Yuin は扱わないのは安いからですかねえ。
    
    Audirvana Plus は凄いです。こういう音はこれまで体験したことがない。いや、あるかな。青山にあったらっぱ堂でヴァーサ・ダイナミクスのプレーヤーにスペクトラルのアンプ、ウィルソンのスピーカーというシステムで聴いた究極のアナログの体験が似ているか。どこまでも透きとおった空間に音楽が音楽だけがぽっかりと響きわたる。それが、MacBook Pro で聴けてしまう。他のプレーヤーとは完全に一線を画してます。こういう音で聴けるなら、ハイレゾを買うだけの価値はあるとも思えてきます。もちろん通常CDやMP3の音もすばらしいですが、ハイレゾ音源の魅力がようやく納得できました。
    
    これで聴くとアラゲホンジの 1st、DSD ではないハイレゾ版の方も、隅々まで見通しが効いて、気持ち良い。ライヴはDSD版を落としてみましたが、AudioGate はどうでしょうか。せっかくだから DSD のまま聴いてみたくもなります。コルグの MR-2 を買うかな。あれって、再生の音質はどうなんでしょう。録音の質が良いのはさんざん書かれてますが。
    
    最近聴いたのでは、ジュリー・ファウリスの Live at Perthshire Amber 、沖縄の Lucy のセカンドに聴き惚れました。
    
    ルーシーさんのは来月発売ということで、一足御先に聴かせていただきましたが、いよいよ実力発揮。全篇アップテンポの曲ということで一瞬不安もよぎりましたけど、聴いてみればうたい手としての凄みすら感じます。これはほんと、良いシステムで思いきり大音量で聴きたい。「いーぐる」のシステムで聴きたくもなりますが、あそこだとちょっと踊るわけにはいきませんね。聴いていると無意識のうちに体が動きだします。免疫力が高まる気もします(^_-)。
    
    ジュリー・ファウリスのライヴも良いですが、こちらは期待通りというところ。凡百のうたい手の到底およぶところではありませんが、彼女ならばこのくらいは、と思ってしまうのは酷か。スコティッシュ・ゲール語の発音の美しさは格別。これについてはまた。(ゆ)

午後1時過ぎに会場に到着。まっすぐ Jaben のブースに行き、結局それからクロージングまでほとんどそこに居座っていました。トイレに行った折りに会場をひと回りしましたが、あまりのお客さんの多さに、どこのブースにも寄る気が失せました。昨年秋は台風直撃もありましたが、今回はその倍は優に入っていたんじゃないでしょうか。
    
    Jaben のブースに来られたお客さんの一人もおっしゃってましたが、あれだけいろいろ沢山のものがあると、単純に聞き比べていては、どれがどれだか、わやくちゃになりそうです。自分が好きな音、聞きたい音もわからなくなるんじゃないか。
    
    今、どういうものが出ているのか、ひとわたり見渡すにはいいかもしれませんが、ある製品をじっくり納得できるまで試聴するのはちょと無理でしょう。Head-Fi のフェスティヴァルのように、ホテルを会場にして2日間かけると、たとえば夜の間に腰をおちつけて試聴するとか、ゆっくり話をするとかする余裕ができるのではないかとも思いました。あれだけの規模になるとなかなか難しいかもしれませんけど。
    
    今回もウィルソンおやじはいろいろ面白いものを持ってきていました。Hippo Box+ はあいかわらず人気で、値段を聞いてびっくりされている方も結構いました。黒の他に赤とシルバーもあります。
    
    出たばかりの GoVibe Vulcan+ と Vulcan++ も人気でした。++は USB DAC 付き。もうすぐ国内販売も始まるそうです。これも見本は黒でしたが、シルバーとブルーがあります。ブルーはなかなか品の良い色で、シンガポールでは品切れになるくらいの人気だそうな。
    
    GoVibe では USB> S/PDIF コンバータの Xvert と Mini USB DAC もあります。Xvert は24Bit/96KHz まで。サイズは70×45×25ミリ。入力はUSB B で、出力は同軸と光。Mini DAC のサイズは64×25×12ミリで、片方に USB mini B ジャック、反対側にミニ・ヘッドフォン・ジャック。
    
    Mac は標準で光出力が付いているので、Xvert はちょっと使い道がわかりません。標準の出力とはまた音が違うのか。ウインドウズ用かな。
    
    ケーブルではピッコリーノの Mini to Mini、HD800用と UE/Westone/JH 用の交換ケーブルも出してました。これは近々、国内販売開始される由。
    
    とはいえ、センセーションといっていいほどの一番人気はポータブル真空管アンプです。昨年春に試作機を持ってきていたんですが、秋にはあれはまだ時間がかかるよ、と言っていたもの。これが何ともすばらしい。
    
    もちろんハイブリッドですが、真空管のメリットが最大限活かされてるんじゃないかと思います。生楽器、とりわけピアノとかギター、そしてヴォーカルの生々しさ。さらには広大かつ隅々まで見通しがよく立体的な空間表現。お客さんの一人がおっしゃってましたが、ポータブルの域は超えてしまっていると言ってもおかしくはありません。iQube より上だという声もありました。
    
    ロック系を聞かれているという方もこれは良い、とおっしゃってましたから、ジャズやワールド・ミュージックやクラシック向けというわけでもないでしょう。
    
    とにかく試聴された方の9割以上が、これは買いたい、または買うと宣言されたのには正直驚きました。1度ならず、3度もどってこられてじっと聞きこんだ方。予約したい、国内扱いはないのかと迫る方。いつまでも聞きたくなるとなかなか手放さない方。これはもう、扱うしかないでしょう>フジヤさん(^_-)。
    
    サイズと重さはポータブルとして持てるぎりぎりですけど、それはやむをえないところ。造りはがっちりしていて、これまでポータブル真空管アンプのネックだった、ケースを叩くと真空管が共鳴するノイズも皆無。また、一日中入れ替わり立ち替わり試聴されていましたが、ケースが熱くなることはありませんでした。もっとも真空管の上には穴があいていて、これをふさぐと危いでしょうね。
    
    ゲイン切替もなく、パワー・スイッチと出入力のジャックのみ。入力はアナログ。出力はミニ・ジャックとは別に標準サイズも付いています。電池は内蔵リチウム充電池で、1回の充電で10時間使用可能。真空管のローリングはできませんが、不良品や壊れた場合にはむろん交換可能で、真空管も Jaben から供給されます。
    
    予価は600USD。GoVibe シリーズのひとつで、まだ正式名称も決まっていませんが、来月末までには出ます。
    
    それと、GoVibe Magnum の電池問題ですが、今回はサンヨーのアルカリ9Vで鳴らしてました。Magnum 自体の充電機能にこだわらないかぎり、どんな電池でもいいようです。Magnum もカラー・ヴァリエーションが増えていて、赤もチャーミングですね。
    
    もうひとつ、これも近々国内販売が始まる ACS のカスタム IEM。ACS はイングランドのメーカーで、ひじょうに柔らかいシリコンを使っているもの。40ショアというシリコンだそうで、たしかに押し込んでも圧迫感などはまったくありません。出していたのは3ドライバーの T1 というトップ・モデルで、これもすばらしい。価格も700GBP弱。

    
    お隣りはささきさんの Music To Go で、こちらもこれから出るという HE-500 をちょっと聞かせていただきました。むろんご自慢のシステムでの高音質音源。別世界ですねえ、これはまた。ヘッドフォンで聞いてる感じではないです。スピーカーのレゾン・デートルが問われるんじゃないか。ヘッドフォンの欠点とよく言われる脳内定位もどこかに吹っ飛びます。
    
    あと、ヴェトナム製というイヤフォンもいい音してました。Yuin の PK シリーズに似た音で、あれより安いらしい。
    
    お客さんはあいかわらず若くて、20代後半から30代前半がメインかな。もう少し若かったかも。40代以上と見える方もぼつぼつおられたのは、同志ここにあり、という感じで嬉しかったです。
    
    そうそう、若い方で真空管アンプを聞くのは初めてという方も結構いらしたのかもしれません。真空管は音が「暖かい」とか「焦点がぼける」とか言われることもありますが、今の真空管アンプ特にヘッドフォン・アンプは、トランジスタとのハイブリッドが普通で、むしろ音はクールでクリアです。もともと信号処理のスピードではトランジスタは真空管の敵ではありませんから、ハイブリッドの方が全部ソリッドステートよりも格段にハイスピードです。
    
    真空管は古い技術ですけど、真空管自体が無くなることはないですし、デジタル時代でもっといろいろな可能性が開けてるんじゃないでしょうか。少なくとも今回の Jaben のポータブル真空管アンプを聞くかぎり、他からもいろいろ面白い製品が出てくるはず。
    
    
    他に印象に残ったのは AlgoRythm Solo 率の高さと、Corda Stepdance のユーザの方が数人いらしたこと。実はあれ、気になってるんだよなあ。
    
    ということで、ヘッドフォン、イヤフォンの世界はますます盛ん、復興の先頭に立って引っぱってる感じでした。関係者の方々、ご苦労さまでございました。
    
    唯一つ、もう少し女性のお客さんが増えてほしい。まあ、これは全世界的な傾向ではありますが。(ゆ)

    従来のものと違って、既存のケーブル類は使えないと以前書きましたが、検証不足でした。すみません、ちゃんと使えます。
   
    今日、別件とともに Audiotrak に改めて問い合わせたところ、使えるという返事をいただき、試してみたところ、OKでありました。ちょっときついのですがゆっくり押しこむときちんと固定もされます。 裏側のケースの縁の傾斜が急なので、裏から見るとコネクタが半分くらいも露出してますが、音に問題はありません。
   
    Audiotrak さん、ごめんなさい。 それにしても、このAUDIOTRAK AT-IACS3 オーディオケーブルは傑作です。と、お詫びもかねて、あらためて宣伝しておきます。これを使わずに、ポータブル・ヘッドフォン・アンプを語るな(^_-)。(ゆ)
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    新しいカメラ付きの iPod touch、いわゆる 4G ですが、Dock コネクタの構造が変更になり、従来の Dock ケーブルは使えないようです。
   
    ぼくのところだけかと思ったら、Head-Fi でも話題になっていました。

    愛用している Audiotrak にも問い合わせのメールを出しましたが、返事が無いのでまず間違いなく使えないでしょう。

    もし、新 iPod touch と一緒に Dock ケーブルも買おうとされるなら、ちょと待った方が良いでしょう。

    各社から Dock 対応の据置き型のオーディオ機器が続々出てますが、iPod touch 4G の Dock に対応しているか、確認された方が良さそうです。
   
    こういう情報はメーカーは対応した新製品を出すまでは公表しないので、独自に調べるしかありません。もし、オレのはワタシのは使えたぞ、という方があればご一報ください。(ゆ)

    試聴用にお預りしていた Schemeclone Project のポータブル・ヘッドフォン・アンプのバーンインがようやくメーカー指定の100時間を超えました。強制的なバーンインはせず、ふつうに使っていって100時間を超えたところです。

    試聴といってもぼくの場合、日常的に音楽を聴くのに使うので、特に曲を決めて聞き比べるということはしていません。ただ、これを使いだしてから、よく音楽を聴くようになりました。バーンインをしていたこの数ヶ月はここ数年で一番音楽を聞いているかもしれません。旧譜やすでに散々聴いた音源でも、これで聴いたらどうだろうと聴きたくなるのです。
   
    iPod で聴くのは散歩しながらが一番多いので、このアンプで聴くために、この暑い夏も結構散歩をしていたくらいです。涼しかった7月より暑かった8月の方が散歩の歩数合計が多いにのは我ながら驚きました。
   
    このアンプは初めからかなり良い音で鳴ってくれますが、バーンインが進むにつれて、だんだん音が良くなってくるのがよくわかります。それがまた楽しい。50時間を超えると一段と音楽に艶が出る感じで、8月に聴く時間が増えたのはそのためでしょう。
   
    そう、このアンプの長所を一言で表そうとすると、たぶん、音楽に艶が出る、というのが一番近いと思います。音に艶が出るのではなくて、音楽がより艶やかになるのです。コクが深くもなります。より深く味わえるようになる。聞こえなかった音が聞こえるようになるというのではなくて、聞こえていたけれども気がつかなかったディテールの綾、微妙なニュアンスにふと耳が導かれる。いや、さりげなくさしだされる、でしょうか。好きな音源はますます好きに、それほどでもなかった音源でも悪くないじゃないか、という風に。
   
    ソースは iPod touch 2nd Generation 32GB。ファイルは Apple Lossless, LAME-MP3(ビットレートは様々)。iPod との接続は AUDIOTRAK AT-iacS3 iPodオーディオケーブル3GS。3,000円以下ですが、さすがモガミでしょうか、CP は高いです。今のところ、上のクラスに換えたいという不満はありません。
   
    ところで国内で販売されているドック・ケーブルでこの上となると急に1万円をかなり超えて、中間がありません。不思議。海外のオンライン・ショップでは5,000〜10,000円のものも散見しますが。ポータブル・アンプを使えばドック・ケーブルは必須なはずで、これより安いオヤイデのものばかり売れてるんでしょうか。
   
    ヘッドフォンはオープンはアウトドア用に Yuin G2a、室内用は Sennheiser HD414。クローズドは EXH−313。Audio-technica ATH-A100Ti をベースにここが改造をほどこしたもの。

    現在のオーテクの音を受け付けないことはここでも書いてますが、このヘッドフォンは購入前に試聴して納得しました。こちらもエージングが100時間を超えたところで、まことにすばらしい音楽を聞かせてくれます。
   
    もっともこの UST すなわち Ultra Sound Technology がどういうものかは伝聴研の所長さんもうまく説明できないものではあります。実際に施工しているオーディオ・インテルはケーブルが得意だそうですので、内部配線の交換などが含まれるのでしょうが、それだけではない「おまじない」もいろいろ施されているらしい。また、この技術自体も完成しているわけではなく、今も改良を続けていて、今販売されているものは、初期のものからは進化しているそうです。
   
    とまれ、出てくる音はとてもオーテクのものとは思えない(笑)無理や誇張のない自然なもので、細部までの表現力も高いです。これまたちょっと他のものに換える気が起きません。
   
    イヤフォンは例によって BauXar EarPhone M + Comply P-100 slim。これは主に外出時にバスや電車などのノイズの多いところで聴くためです。それと今年のように暑い時は、フルサイズのヘッドフォンでは汗をかいてしまうので、クローズドの代わりに室内で使うこともあります。アンプのこれとの相性はまるでカスタム・メイドのようで、Comply のおかげもあるでしょうが、EarPhone M のレンジが二桁くらい広がった感じです。
   
    うちのヘッドフォン、イヤフォンはそれぞれに傾向が違うと思いますが、このアンプはどれもその能力を十二分に引き出してくれます。前にもちょっと書きましたが、ヘッドフォンやイヤフォン自体の限界がわかってしまうという感じにはなりません。この中で能力的に一番下なのは G2a でしょうが、これも良い相棒を得たと大喜びで鳴っているけしきです。この耳かけ式の能力の高さはこれまでも認めていたつもりでしたが、こんなに良い音を出せるのかと感心することが何度もありました。
   
    どうしてこれが国内販売されないのか、これまた不思議です。価格が安すぎるからでしょうか。G1a にすればさらに良くなるのでしょうが、すっかり耳になじんでしまって、こうなってくると、実売5,000円のこいつでどこまでの音が聴けるか、突きつめてみたくもなってきます。
   
    ノイズ・レベルは低く、背景は真黒。ですが、これはもう当然でしょう。
   
    バッテリーは 6P 1個。MAHA の230mAh、9.6V で約10時間。最初に入っていた充電不可のものはもう少し保ったかもしれません。たまたま手元には 6P タイプはこの MAHA しかなかったので、他は試していません。それにしても、日本のメーカーはどうしてこのクラスのものを出さないのでしょうねえ。皆8.4V、175とか190mAh ばかり。この頃は中国でも MAHA クラスのものを作っているのに。
   
    バッテリーが切れる時は急に音量が小さくなり、音が割れます。青のパイロット・ランプの光も弱まります。
   
    いわゆる周波数特性で言えばフラットだと思います。少なくともどこかを強調したり、補正したりしているようには聞こえません。下から上まで、ごく自然に広がっています。ぼくの聴く音楽はルーツ、ワールド系が多く、この方面の楽器にはダイナミック・レンジが半端でなく広いものがあり、音域も音の性格も多種多様ですが、どれもごくストレートに再生されます。
   
    ということは、相当にレスポンスが鋭敏で、ハイスピードなのでしょう。色付けもありません。
   
    デジタル音源の再生でいわゆる圧縮音源でもきちんと聞かせてくれることは良い装置の必要条件ですが、このアンプはその点でも最高レベルです。簡単に言うと、圧縮と非圧縮の違いがありません。いや、それは同じ音源を圧縮と非圧縮で聞き比べれば当然違いは出ます。ですが、別々の音源で片方が圧縮、もう片方が非圧縮だとしても、音楽を聴く上では差はありません。
   
    圧縮音源でも人間の耳からすれば、少なくともぼくの耳からすれば音楽を細部まで楽しむための十分な情報が入っていることは、すでに体験していました。このアンプはその情報を細大漏らさず、あらいざらい引き出してくれます。圧縮でも(ビットレート192kbps 以上という条件はつきますが)、元の録音の良い音源であれば、余韻や残響、あるいは雰囲気といった、「プラスα」の部分、音楽の本質とはずれるけれど、一歩踏みこんで音楽を楽しむには不可欠の部分もしっかり聞かせてくれます。特に空間表現に長けているのでしょう。クローズド・タイプのヘッドフォンやイヤフォンでも空間の解放感があります。オープンだとさらに広大なスペースが開けます。
   
    5月に試聴機をお預かりして、はじめは Linearossa W3 と並行して、取り替えながら聞いていたのですが、だんだん W3 の出番が減り、気がついてみるとこのアンプばかり聴くようになっていました。これはやはり W3 よりも RudiStor XJ-03 MkII あたりと聞き比べてみたいものです。
   
    思えば、iPod のような携帯プレーヤーで聴くかぎり、DAC は不要です。iPod にマジックテープでくっつけて使うようなポータブルのアンプに DAC を付けるのは蛇足の類でしょう。W3 の場合は準デスクトップとしての使い方を想定しているところもあります。さもなければ突起部分抜きで97ミリという本体の長さはないはず。光、同軸、USB という3系統の入力を備えるためでしょう。ポータブルはアンプに徹して、サイズをできるだけ小さく軽く、かつ音質を追求していただきたい。
   
    お預かりしたアンプは試作品で、販売する際には、充電機能を加え、筐体も設計しなおされるそうです。ただ、発売時期はまだ未定とのこと。想定価格は2万円を切る由。高いカネを払わないと良い音で聴けないというのはやはり困ったことで、この音がこの価格で出るのはグッド・ニュース。ポータブル・アンプ全体の質をまた一段と押し上げるのではと期待します。(ゆ)

    試聴を頼まれていた Schemclone の PHA の100時間のエージング達成が見えてきたので、そろそろいいかなと、RudiStor のデスクトップ・ヘッドフォン・アンプ RPX-33 を本格的に使いだす。
   
    Schemeclone の PHA についてはまた別に書くつもりだが、相当なもので、ひょっとすると Linearossa W3 を凌ぐかもしれない。ディテールを隅々まで描ききる能力と、音楽を全体として聴かせるまとめ方のバランスがとても良い。質の良い音源はもちろんだが、MP3 音源でもここまで情報が入っているものかと感心させられる。
   
    音楽だけでなく、ヘッドフォンとのつきあい方のバランスも良い。W3 はちょっとつき放したところがあって、Yuin G2a のようなエントリー・クラスだとアンプの方が位が上で、ヘッドフォンはアンプの能力を完全には引き出しきっていない感じがする。
   
    その点、Schemeclone のものはエントリー・モデルでも、ゼンハイザー HD414 のようなハイエンドでも、それぞれを引きたてる鳴らし方をする。それもどちらかで無理をしている風でもない。EarPhoneM + Comply との相性も抜群で、この組合せで聴くためにわざわざ電車に乗りたくなるくらいだ。ルディさんの今度のハイエンドPHA と比べてみたくなる。来年の製品化がひじょうに楽しみ。
   
    で、まあ、今日は RPX-33 である。
   
    これは RudiStor のソリッドステート・ヘッドフォン・アンプの中堅モデルで、この下にエントリー・モデルの NX-03 がある。上の RPX-300 にはバランスの入出力が付く。この三つのモデルの価格は大体上は下の倍になる。今どき、DAC も何も付いていない、ただのヘッドフォン・アンプだ。入力は RCAアンバランスのみ。出力は RCAアンバランスとプリの二つ。ヘッドフォン・ジャックは標準が正面に二つ。左が High Gain、右が Low Gain。ヘッドフォンのインピーダンスは16〜600オームのものが使える。他にはスイッチと音量コントロールだけ。なお、RudiStor のアンプには電源コードは付属しないので、ぼくはレクストの電源ケーブルを使っている。
   
    ただのヘッドフォン・アンプだが、RudiStor の作るアンプは基本的にハイエンドである。これも、完全デュアル・モノ構造で、つまり左右の増幅段は内部で完全に別になっている。それぞれのチャンネル専用のアンプが二組入っていると思えばいいだろう。NX-03 ではまだ完全デュアル・モノ構造ではないので、この RPX-33 からが RudiStor 本来の製品ということになる。RudiStor ブランドのアンプは全て常時純A級作動だ。
   
    ソースは例によって MacBook Kro。再生は Taply で、DenDAC を USB ソケットに挿して DAC として使う。ちなみにぼくは Amarra をとらない。高価ということもあるが、音がふやけて聞こえるからだ。何かを足しているように聞こえる。いかにもオーディオ的な音と言おうか。Taply はフリーの小さなソフトで、山椒は小粒でピリリと辛く、ファイルに入っている音をそのまま出してくれる。たまたまウチにあったオーテクのミニ←→RCAコードで RPX-33 と直接結ぶ。このコードはむろんもっと良いものがいろいろ出ているけれど、今はカネもないし、RPX-33 のエージングがすむまではこのままで行く予定。
   
    なお、RPX-33 にはレクストのレゾナンス・ピットをかませ、同じくレクストのRS-SQUAREを天板に置く。実は後から思い出してやったのだが、これの効果は抜群で、個々の音も全体の音楽も、きれいに洗われたようにみずみずしくなる。
   
    それにしても、DAC専用のハードというと高額商品しかない。安価なものは皆、ヘッドフォン・アンプと合体している。DAC 単体を使うのは、この RPX-33 のようなハイエンド機器の場合のみ、ということなのだろうか、今のところ。ヘッドフォン・アンプだけ、というのも、PHAを除くとこの頃は少なくなってきたようなけしきだ。新製品は価格帯に関係なくみんな、DAC + ヘッドフォン・アンプの形。
   
    その意味でもルディさんの今度の新製品 XJ-03 MKII がヘッドフォン・アンプのみなのは、ハイエンドの何たるかを追求するかれの姿勢の現れなのだろう。DAC などという余計なものはつけない。必要なら、単体の、相応のものを使ってくれ。私はヘッドフォン・アンプ一本槍で行くのだ。アンプと DAC は別ものなのだ。だからこそ、DAC 付きの Linearossa は別会社から出したのだ。
   
    時代錯誤と言えば言えようが、この潔さは心地良い。また、それだけ製品の質に自信があるのだろう。
   
    DAC といえば、ちょと面白そうなのがこの devilsound-DAC。USB 入力は当然として、出力側が RCA のペア。形としては理想的。値段もそんなに眼の玉の飛び出るほどでもない。長さがどこにも、本国のサイトにもないんだが、臨時収入でもあれば試してみたいところではある。
   
    ぼくのハードの評価軸はひとつである。音楽が気持ち良く聴けるか。音楽に集中できるか。聞きつづけていたくなるか。この三つはまあ同じことを別々の側面から言っているわけだが、とりわけ三番目、もっと聴きたくなるかどうかが一番のポイントではある。
   
    高域がどうの、サウンドステージがどうのではない。そういうことが個々に言えるのは、音楽ではなく機械の音を聞いているのだ。ちなみに機械の音が聞けるのは一種の特殊能力だと思う。絶対音感と同じレベルではないかとさえ思う。いや、皮肉でもなんでもなく、時にうらやましくさえある。ただ、単純にぼくには機械の音は聞こえない。聞こえるのは音楽だけだ。
   
    ちょうど原稿を書く都合もあり、アンジェロ・ブランデュアルディの《Futuro Antico VI》を聴く。ファイルは Apple Lossless。このシリーズは古楽アンサンブルをバックにブランデュアルディがバロック期のイタリア北部の都市の音楽をうたっているもの。北部なのはブランデュアルディ自身がミラノの出身だからだろう。ナポリやカンブリアの方まで足を伸ばすかとまた面白い。
   
    使われている楽器はアンサンブルのリーダーのリュート、チェンバロ、ダルシマー(スピネット)、ヴィオラ・ダ・ガンバ、トロンボーン、リコーダーなどの他、ハーディガーディもあり、これに各種打楽器が加わる。録音はひじょうに良い。もっともライヴ一発録りというわけではなく、ミックスなどは結構手を加えてもいる。もともとブランデュアルディのヴォーカルはポップスのもので、こうしたアンサンブルの中に入ってそのままバランス良く聞こえるものではない。むしろそのズレたところがこのシリーズの面白みであるであるわけで、その点を活かすための工夫はいろいろされている。もっとも YouTube にはこの形のライヴの映像もある。
   
    このシリーズでのブランデュアルディは、自分のヴォーカルの特性を活かすためだろう、ふだんの、他のアルバムよりもずっと丁寧にうたっている。言葉の音の一つひとつをはっきり発音している。その上で、アンサンブルの一部としてうたおうとしている。いつものルーツ・ポップスならばヴォーカルを前面中央に出すところだが、ここではそういうことはしない。まったくしないわけではないが、アンサンブルとのバランスの取り方はずっと謙虚だ。そういう意図が手にとるようにわかる。
   
    チェンバロ、ハーディガーディ、タンバリンなど、ノイズが組込まれた響きが結構ある。クラシックでは嫌われる要素が、ここでは音楽を構成する不可欠の要素になっている。この辺は地中海南岸のアラブ音楽の影響が推測されるところだ。このノイズが美しい。チェンバロはふつうの通奏低音だけではなく、ほとんど現代のギターのような使われ方もする。その時、このノイズと楽音のあわいの響きがひじょうに効果的だ。
   
    仕事で関わったハイブリッド・トロンボーン・カルテット。こういう形のアンサンブルがあるというのも初めて知ったが、トロンボーンは案外古い楽器で、ブランデュアルディの古楽アンサンブルにも入っている。昔から神の楽器と呼ばれていたそうな。
   
    このカルテットは意外に面白い。楽器の響きが深いのだ。余韻がある。ふくらむ。楽器の管の中の空気だけではなく、管自体の金属が鳴っている。こういう響きは確かにトロンボーンしかないかもしれない。それが重なる。華麗とも荘厳とも、そのどちらをも超えてゆくハーモニー。かと思えば茶目っ気たっぷりに跳ねまわる。同じ楽器が四つあることを利用して、ガムラン的な使い方をしたりする。素材はクラシックだが、バロックから現代まで、レパートリィの幅は広い。本来トロンボーンやトロンボーン・カルテットのために書かれたものではない曲が多いから、ふだんとはかけ離れた形で聞ける楽しみもある。
   
    折りにふれて試聴に使っている、ライナー&シカゴ響の『シェエラザード』。ファイルは AIFF。第四楽章初めの方の、リズミカルなメロディが始まるあたりで入るトライアングルの響きの、なんと可憐かつ気品のあることよ。このトライアングルはその後、同じフレーズが繰り返されるところにも使われていたのは、今回初めて気がついた。
   
    この第四楽章で多用される打楽器群の斉打の衝撃、金管の響きの金属の質感も初めて実感する。トランペットの速いパッセージが続いて、ついにライトモチーフが爆発するところでは、自然に涙が滲んできた。
   
    そして、最後にもう一度コンマスのヴァイオリンがシェヘラザードのテーマを弾き、超高域にまで持ってゆくところ、その響きのまろやかさ。音にちゃんとふくらみがある。これまでの記憶では、この音はただただ細くて、その繊細さにシェヘラザードの哀しみがこめられていたように聞こえていた。しかし、このふくらみはどうだろう。シェヘラザードが泣いているのは変わらないが、しかしその涙は哀しみのゆえというよりは、むしろ言葉を超えた歓びではないか。深い深い満足感がここには現れてはいないか。
   
    これがハイエンドとミドレンジの違いというものか。とはいえ、まだ使いだしたばかりなので、これまた100時間ぐらい使ってみないと、本当のところはわからないだろう。果たしてこれがすでにベスト・パフォーマンスなのか。それとも、エージングによって音が変わるか。変わるとすれば、良くなるか、悪くなるか。さても楽しみ。(ゆ)

    今年春のヘッドフォン祭でハイエンド・ダイナミック・ヘッドフォン Chroma MD1 を発表した RudiStor が今度はイヤフォンの新作とそれにマッチするポータブル・ヘッドフォン・アンプを発表していました。

    イヤフォン IMD3 はバランスド・アーマチュアではなく、ダイナミック型で、ドライバは15ミリ。インピーダンスは標準の32オーム、能率は112dB。

    形からするとドブルベそっくりですが、音はたぶん違うでしょう。ルディさんの作るアンプの音はごく自然で、無理に作ったところがなく、機械の音ではなく音楽に集中できるものです。ヘッドフォン祭の時に聞いた Chroma MD1 の音も同じ性格の音でしたから、IMD3 もその点では変わらないだろうと期待します。
   
    もっとも、ルディさんの本質というか、一番好きなのはやはりアンプ作りなので、IMD3 はイヤフォン単体というよりは XJ03 MkII の実力を発揮させるためのペアとして開発されたのではないかと思います。
   
    ルディさんはすでに Linearossa のブランド名でPHAは作っているので、これとはコンセプトが違うよということなんでしょう。値段も Linearossa W3 の倍で、しかもW3は光、同軸、USB の3系統の入力で DAC 付き。こちらはアナログ入力だけで、DAC も当然ありません。それだけアンプとしての「音」を煮詰めた、ということなのでしょう。
   
    サイズからしても、奥行はともかく、厚さ30ミリ、幅64ミリはポータブルとしてはちとふくらみすぎです。スイッチを入れると、前面のダイアルやネジの周辺が青く光るのも、ハイブリッドのヘッドフォン・アンプ NKK03 あらため RP3-d と同じです。これはたとえば iPod にくっつけて常時携帯して使うというよりは、持ち運びに便利な超小型のデスクトップ・アンプと考えた方が良いのかもしれません。同時に RudiStor サウンドの入門機にもなります。RudiStor の旧製品 NKK01-se の後継機というところか。
   
    もっとも、W3 もそうですが、バッテリの保ちは異常に長く、1回の充電で4〜7日、つまり96〜168時間だそうですから、バッグなど工夫して携帯して使うのも魅力です。

    イヤフォンもアンプもたぶん秋のヘッドフォン祭ではお眼にかかれるのではないかと期待してます。(ゆ)

    一人では知り合いもいないし、行くつもりはなかったのだが、直前になって RudiStor のルディさんと Jaben のウィルソン親爺から、会場で会おう、ついては預けてあるヘッドフォン・アンプ NX-03 を持ってきてくれ、との連絡が入る。
   
    もっとも、当日朝早く起きられる自信がなかったので、アンプは金曜の夕方、新宿のホテルに届ける。このアンプをまた引き取らねばならないので、会場には行かねばならない。天気も良し、きっと混んでいるだろうと、ゆっくりでかける。新宿で腹拵えし、会場に着いたのは3時過ぎ。エレベータの中でルディさんにばったり。時差ボケがつらそうだ。この人、今回初めて顔を合わせたけど、エンジニアらしく、ふだんは無口だが、関心のあることになるとおしゃべりになる。会社はアメリカだが、イタリア生まれで国籍はイタリア。RudiStor のアンプ群の製造もイタリアで行っている。
   
    中野サンプラザ15階の宴会場フロアを全部借り切ってのヘッドフォン祭。立錐の余地もない、というのではないが、まっすぐ、自由には歩けない。ヘッドフォンなので、音楽は聞こえず、意外に静か。声高に話す人もいない。客の方は20代が圧倒的のようだが、皆さん、声は大きくない。穏やかに盛り上がっているというところか。
   
    三っつある会場のひとつの真ん中の柱の前に Jaben と RudiStor のブース。というより、テーブルの上に製品が並べてある。ルディさんの今回の目玉は初のヘッドフォン Titanus MD1。ダイナミック型のオープン・タイプで、2セットをソリッドステート・アンプ(NX-03)と、真空管とソリッドステートのハイブリッドの DAC/Amp にそれぞれつないでいる。ソリッドステートは Chord のCDP、ハイブリッドは MacBook Pro がソース。
   
    ハイブリッド DAC/Amp NKK-02 も新製品でまだ公式サイトにも上がっていない。12AU7 2本が上面に刺さっている。テーブルの前には誰もいなかったので、早速聞かせてもらう。セッティングのままと、自分の iPod touch + Linearossa W3 と両方聞いてみる。自分の顔がにやにやしてくるのがわかる。
   
    写真はフジヤエービックのついったーに上がったから、いずれブログ等に載るだろうが、ぱっと見た感じは Grado のいとこというところ。音も似ているという人も出てくるんじゃないかとも思うが、Grado の音はもう忘れているので、断言はしない。明解で、空間が広い。個々の音や楽器などの要素はちょっときらびやかとも思ったが、当然エージングもされてないから、この辺は変わる可能性もある。なにせ、このヘッドホン祭が「ワールド・プレミア」、世界初公開なのだ。

    〔後記〕ささきさんのブログに写真あり。
   
    自然な、無理のない音は、後で試聴した平面プラナー・ヘッドフォン HE-05LE と遜色ない。あちらの方が音が軽い感じなのは、原理からして当然だろうが、うーん、音楽として聴かせるという点では、Titanus かな。HE-05LE も音楽的だけど、こう、理想に掲げている音楽の姿が、Titanus のほうが気品があると言おうか。いやだからといってロックやジャズが合わないというのではもちろんない。クラシックはなかったが、iPod に入っている音源をあれこれ聴いてみると、なかなかやばい。ついつい聞き入ってしまう。聞き入って、聞き慣れた曲にあらためて感動などしてしまう。
   
    まあ、ヘッドフォンだけではなくて、アンプとの相乗効果ももちろんあるだろう。W3 もルディさんの製品だから、血筋はみな一緒。

    試聴した人はたいてい満足した顔をしていたと思う。なかにはその場を離れがたい様子の人もいた。
       
    他に試聴できたのは、同じ一角でささきさんが店を広げていた HE-05LE と DACport だけだった。ルディさんもウィルソン親爺も日本語はからきしなので、通訳したり、自分で製品説明したりで結構忙しい。どちらのブースも、列ができるほどではないが、席が長時間空いていることもない。
   
    Jaben は GoVibe シリーズのうち、Sharp、RKK を中心に展示。V7 も置いてはあった。これはオリジナル Go-Vibe シリーズ最終モデルの復刻で、V5 も同時復刻。V6 はやらない。復刻といっても筐体は新たに作っていて、なかなかスマート。また充電機能があるのも違う。来月発売だそうだ。もう一つ、ポータブルの真空管アンプの、まだ初期の試作品段階のものもあった。時間がなくて、きちんと聞けなかったが、ちょと面白い。

    念のため説明すると、この GoVibe シリーズはもとはカナダの個人メーカーの製品で、安価で音が良いので評価が高かった。(ゆ)のヘッドフォン・アンプ、PHA の入門もこれである。記録を見ると2006年の秋に買っていて、当時送料込みで86USD、1万円強だった。これが V5 で、おかげで完全に PHA の世界にはまりこんでしまったのだが、個人のガレージ・メーカーで、筐体などは既製品でお義理にもカッコいいとは言えない。それにちょとヤワなところもあって、1年使ったら、入力ジャックがおかしくなった。

    Go-Vibe(当時の表記)は V7 まで出たところでこのカナダの人が事情でアンプの製造販売をやめると宣言したのが確か2007年の半ばだったか。Head-Fi などでは惜しむ声も出ていた。その権利一切を買ったのがシンガポールの Jaben Network で、2007年の年末には早くも新製品を出した。ちょうど V5 がおかしくなっていたので、早速これを購入したのが、ウィルソン親爺とのつきあいのはじめ。Jaben はその後、GoVibe シリーズで怒濤の新展開をするわけだ。で、V5 と V7 を復刻するというのはやはり商売がうまい。筐体が変わるから音もやはり変わるはず。電源はオリジナルと同じ 9P バッテリー1個。
   
    HE-05LE は良くなっていると思う。ハウジングも心持ち小さくなり、他にもなにかやったのだろう、少し軽くなった。パッドも改善されて、装着感は一新されている。値段も上がった。

    DACport は自分の音源で聞けなかったので今一つ印象がはっきりしない。良いものではあるが、わずかに価格が高すぎる感覚。とりあえず、DenDAC があれば、今のところはいいかな。それにルディさんが、NKK-02 を預けてくれたので、当分これで遊べる。
   
    RudiStor のすぐ向かいがエントリーのブースで、Comply を各種展示していた。しばしおしゃべり。EarPhone M には Comply は必須、と力説してしまった。マニア以外の人たちに存在を知ってもらうにはどうすればいいか、と聞かれる。うーん、「けいおん」ででも使ってもらいますか。多色展開も意識したことはなかったけど、左右で違う色にするのはアリかも。
   
    リスナーだけでなく、メーカー(作る人の意)もいらして、いろいろ聞かれる。GoVibe シリーズの筐体の仕上げに感心していた。日本だと同じことをやろうとするとやたら費用ばかりかかるか、できませんと言われることが多いそうな。
   
    5時を過ぎるとさすがに人も減ってきて、定刻の5時半には後片付けが始まる。もっとも粘っている人もちらほら。6時半前に会場を後にし、ルディ、ウィルソン、それに DACport のマイケルさん、ささきさんともう一方と、近くの台湾料理屋で食事。美味で安く、量も適当。ラムのコリアンダーいためなど。
   
    というわけで、くたびれたけど、いろいろ面白い体験でした。ウィルソンは東京がすっかり気に入っていて、ヘッドフォン祭がある限り、参加しそうな勢いだし、ルディさんもまた来たそうな顔をしていたので、次回「秋」は10月かな、その時にはまた手伝いに行くことになるでしょう。(ゆ)

    FiiO E5 はポータブル・ヘッドフォン・アンプつまり PHA(ポタアンという呼び名は品がない) の概念を変えてしまったわけですが、その後を追って、小型アンプがいろいろ出てきました。この Linearossa W1 もその流れの一環なのでしょうが、音を聴いてみると、 柳の下の二匹め狙いというのとは違います。
   
    ひとことで言うと、つきつめてます。小型、入出力1本ずつ、音量ダイアル付き、バッテリー駆動という条件の中で、これ以上のことはできないところまでつきつめている。
   
    まずバッテリーは単四1本。9V2個使う GoVibe Sharps も出てますが、値段を別にして音だけで現時点でどちらか選べと言われたら、W1 です。電池が内蔵ではなく、市販のものを交換できるのも○。
   
    当然軽い。仕様では45gになってますが、空っぽではないかと思えるくらい軽い。サイズは E5 を倍にして、厚さもほぼ倍ぐらいですが、むしろW1の方が軽いのではと錯覚するほど。
   
    音量ダイアルは回転式で、E5 のような押しボタン式ではないので、連続可変が可能。このダイアルが少々回しにくいのが、欠点といえば欠点かな。
   
    音は E5 と同じ傾向。妙な色付けをせず、ヘッドフォン、イヤフォンの特性をそのまま伸ばす。E5 をつなぐと、今まで使っていたヘッドフォンやイヤフォンがワンランク上がって聴こえますけど、あれがもっと徹底します。ツーランクか、場合によってはスリーランク上がります。というより、そのヘッドフォン、イヤフォンの能力の限界までつきつめられた感じです。どんなアンプを使っても、これ以上の音が出ることはありえない。そう感じられてしまう。
   
    もっとも、言葉にするとこうなりますが、実際聴いているときにはただひたすら気持ち良いのです。否定的な感覚ではなく、ヘッドフォンやイヤフォンがよろこんで、のびのびとうたっています。あたしは、ぼくは、本当はこれだけの音が出せるんですよ、それを思いきり出せて、うれしい、ありがたい。
   
    解像度がどうこうとか、サウンドステージうんぬんとか、低域がどうの、高域がどうの、なんてことはどうでもよくなってしまって、音楽の表現力がどーんと高くなります。ヘッドフォンやイヤフォンの音、ましてやアンプの音を聴いてるんじゃない、音楽を聴いている。聴きこんでしまう。
   
    FiiO でも E7 がこれから出てくるわけですが、公式サイトにアップされているビデオを見ると、コンセプトが変わってきてます。まあ、E3 から E5 への路線をそのまま延長するのも芸が無いといえば無いので、これはこれでアリなんでしょうが、E5 で PHA にめざめたリスナーが次に手にとるものとしては、ずれる感じもあります。
   
    ガジェットとしての、モノとしての興味は別として、とにかくできるだけ良い音で音楽を聴きたいのであれば、E5 からのアップグレード先として、W1 はまず筆頭にくるでしょう。価格からいえば E5 の 2.5倍ですけど、それでも今のレートで送料込で8,000円強。大事に使えば一生モノですし、「投資」に対する「見返り」としてはとんでもなく大きい。むしろ、Dock コネクタに贅沢した方が、さらに「見返り」が大きくなる可能性があります。
   
    ちなみにぼくは Audiotrak のオーディオケーブルを使ってますが、これはCP高いです。

    オヤイデのもCP高いですが、あちらは使用1ヶ月未満で、ミニ・プラグ側で断線したので、ちとモロい。Audiotrak のはまだひと月経たないのでわかりませんが、オヤイデより外見はがっちりしてますね。

    音源の iPod touch 32GB 内のオーディオ・フォーマットは様々で、AIFF から MP3 128bps まで聴いていますが、圧縮音源の音を気持ち良く聴かせてくれる点でも、W1 は抜群です。圧縮とはまずわかりません。圧縮フォーマットの再生でこれに匹敵するのは、ぼくの試した中では DenDAC だけです。こちらはパソコンの USB 端子に直接挿しこんで使います。これについては別に書こうと思いますが、一見USBメモリみたいですけど、この値段は十分お釣りが来ます。

    むしろ、圧縮でもここまでの音が入っているのだ、と改めて見直しました。圧縮フォーマットの音が良くないというのは、まだ再生側の「修行が足りない」、ハードやソフトがそこまでつきつめられていないのでしょう。
   
    どういう音楽を聴いているのかは、Last.fm にトラック・リストがあります。iPod touch の中のファイルをシャッフルしてます。

    というわけで、E5 のユーザは、よほど E5 に愛着があるのでないかぎり、アップグレードされれば、確実にはるかによりベターなリスニング環境が手に入りますし、これから E5 を買おうと考えておられるなら、E5 でワンクッション置く必要もないでしょう。
   
    国内販売についてはわかりませんが、シンガポールの Jaben Network がワールドワイドのディストリビューターになっているので、正式販売される可能性はありますね。
   
    それにしても、W1 でこの音なら、W3 はいったいどういうことになるのだ、と楽しみであります。もっとも W3 はDACが付いて、光と同軸とUSBの入力というフル装備なので、まるで違う製品ではあります。こちらは GoVibe の Vulcan mini との比較になりますか。むしろ上記の DenDAC との勝負かな。(ゆ)

3640cf4b.jpg    ひょんなことから414の新品が手に入りました。もちろん、2001年の復刻品。イヤパッドが青と赤。青の方の耳に当たる側の縁がかすかに焼けているのと、このスポンジがやや硬くなっている他は、きれいです。
   
    検索してみると、画像は現行の黄色のパッドか、白フレームに青のものばかりで、左右の色違いは見当たりません。ひょっとしてレア物か。画像は1968年オリジナルの由。手元のものはフレームとイヤパッドの色と、ユニット背面のロゴが違います。
   
    1968年のオリジナルはインピーダンスが2Kオームだそうですから、鳴らすだけでもたいへん。復刻版は54オーム、能率は94dB。HD650 などに比べれば、遥かにポータブル向けで、数字からするともっと再生音量を絞れそうですが、確かに音量をとりにくいかもしれません。
   
    早速聴いてみましたが、ちょっと試聴のつもりが、そのまま夜まで、食事の入浴、トイレを除いてすっと聴きつづけてしまいました。エージング記録のため、誰の、どのトラックを聴いたか、記録していますが、初日、午後も遅い時間からだけで5時間半。もちろん、こんなことは初めてです。
   
    414は低域が不足でそこが欠点とされているようですが、どこが不足なのか、さっぱりわかりません。そりゃ、ツェッペリンのバス・ドラとか、打ち込みで作った音とかが無いと低域があるとは言わない人は別ですが、ダブル・ベースの最低音もしっかり延びてます。
   
    まあ、欠点のない製品など無いので、上げようと思えばいくらでも上げられるでしょう。それよりも長所を言えば、まずはこのヴォーカルのすばらしさ。人間の声をこれほど気持ち良く、聴かせてくれるヘッドフォンは初めてです。 K701も、414がよく晴れた日の草原とすれば、あちらは空が一面雲に覆われて、今にも何か降りだしそうな休日のビル街。
   
    澄んだ声はどこまでも澄み、ダミ声はきちんと濁り、乾いた声はからからで、しっとり潤う声、艶々と輝く声、それぞれに声の性格がよくわかります。
   
    声が良いとなるとサックスやフィドルも当然良いわけですが、ピアノには本体の中での反響が聴こえる気がしますし、電気ギターはアンプのハムまで聴こえそうです。このエレキのディストーション、あるいはアラブ系の打楽器によくある、楽器本来の音に故意にノイズが組込まれている音も気持ちよい。キレイに聞かせるのではなく、ノイズらしく(というのもヘンですが)暴れまわりながら、音楽の不可欠の一部として聞こえます。
   
    つまりは基本的には無色透明の音で、音源に入っている音をそのまま出してくれるわけです。ですから音源の性格、録音の良し悪しがそのまま出ます。解像度の高い録音は各演奏者間の距離もわかりますし、ミックスのまずい録音はごちゃごちゃしています。SP復刻の音源はたいてい音が良いですが、それが実感されます。
   
    それから、録音によって基準としている楽器が何かがわかります。うたはたいてい声ですし、ジャズなどではリーダーですけれども、タイトルとミュージシャン名だけでは見当のつかないものが大半です。それが聴くとすぐわかることが多い。もちろんエンジニアやプロデューサーが決めているのでしょうが、場合によってはそこに他ではわからない意図が隠されていることもあります。
   
    無色透明にはもうひとつ側面があって、音源や再生システムの音質を上げると、ちゃんと反応します。例えば MacBook に直刺しでも楽しく聴けますが、アンプをかませると、それだけの改善があるだけでなく、かませたアンプの性格もはっきりします。iTunes と SongbirdTaply の音の違いなども、無理なく聴きとれます。こうなると、本当に良いアンプ、RudiStor とか、Graham Slee とかで聴いてみたいです。グレアム・スリーは、フラッグシップの Solo が英国で HD800 のデモに使われていたそうですから、どこかで聞き比べできないかしらん。
   
    ちなみに英国での HD800 のデモには、今は Grace が使われているそうですが、グレアムのブログによれば、これは英国におけるゼンハイザーとグレイスのディストリビュータがつるんでいるめだそうであります。
   
    無色透明の三つめの側面。軽いのです。かけていることを忘れてしまう。イヤフォンも軽いですが、耳穴のなかの存在は常にあります。ヘッドフォン、耳穴に入れない形のヘッドフォンの利点のひとつは、少なくとも小生にとっては耳穴のなかの存在を意識しなくて良いことです。これはイヤパッド、というのも大袈裟に思えるほどのスポンジをただ耳にあてるだけです。イヤパッドが大袈裟なら、ヘッドフォンをかけるというのも大袈裟です。チープといえばまことにチープな造りですが、それが適度なカジュアルさを生んでいます。そして一度かけると存在が消えてしまう。軽くて、両側からの押さえ方もやわらかい。極端に言うと、空中から音が聞こえてくる。ヘッドフォンで聴いているという意識がなくなります。
   
    とにかく、これほど音楽に集中できるヘッドフォンは初体験です。聴くのをやめられないのです。聴いているのがとにかく楽しくてしかたがない。もちろん目的はヘッドフォンを聴くのではない、音楽を聴くことです。とすると、これは理想のヘッドフォンです。
   
    これが1968年のオリジナルと同じ音かどうかはわかりません。が、2001年といえば、まだ今のような狂躁的なヘッドフォン・ブームは影も形もない頃で、いうならば、他との競争などに気兼ねすることなく、基本的ポリシーに忠実に造ることができたのではないか。今のブームは全体的には悪いことではないと思いますが、他社との差別化を意識しすぎて、ポリシーが歪む傾向が皆無とは言えない。ゼンハイザーあたりになるとそれは無いだろうと信じたいですが、不安はぬぐえません。414には、その復刻版にはそういう不安は皆無です。牧歌的といえば牧歌的な時代の牧歌的製品かもしれません。だからこそ可能だった、衒いのない、夾雑物など一切無い、シンプルかつ贅沢な製品。
   
    まだヘッドフォンがどういうものか、皆わからなかった頃、ヘッドフォンとは何だ、と問われて、これですがなにか、とさりげなくさしだされたのが、414だったのでしょう。
   
    小生はオーディオ・テクニカのヘッドフォンの音が人工的で大嫌いだったのですが、先日、ある所でやはり2001年に創立40周年記念でテクニカが出したモデルを聴いて、驚きました。精細でありながら、バランスがとれ、上下にすなおに伸びた音域と、広い音場。どこにも無理のない、ナチュラルな音。あの人工的な音は、自意識過剰の現れ、「オーテクの音」を出さなければならないという強迫観念の産物なのではないでしょうか。
   
    これからエージングしてゆくなかで、音が変わるのか、どう変わるのか、楽しみでもありますが、いずれにしても、語の本来の意味での「中庸」であることも含めて、この414復刻版は文字通りのリファレンスになりそうです。(ゆ)

    本日15時スタートで今月号を配信しました。未着の方はご一方ください。
   
   
    本誌が豪華すぎて、はみだしてしまったので、〔豪華付録〕をこちらに付けておきます。

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〔豪華付録〕うんのひでみのオーディオ暴言録
##CDプレーヤーは死んだ

『CDジャーナル』の数少なくなってしまった広告ページにアキュフェーズ
がCDプレーヤーの広告を出していた。アキュフェーズ、大丈夫か。SA-CDプレー
ヤーでないのはまだ救いだし、なにせ「CD」を誌名に冠している雑誌へ出す広
告だから CDP を出すのは当然とも言える。この雑誌の読者はやはり、iTunes
ストアより、CDショップ(含むオンライン・ショップ)に行く方が多いのでは
あろう。

しかし、あの Linn も CDP からの撤退を宣言しているのだ。その言い訳をし
ているブログ記事にも、LPがCDより長生きすることはもはや常識とある。

だいたい、CDP からの撤退は、Linn にとってはおそらくここ数年の既定路線
だったはずだ。CDは結局LPから配信への「腰掛け」だったことが、誰の目にも
見える形で現われたにすぎない。もちろん、明日からCDの新譜が出なくなるわ
けじゃないが、未来はすでに定まっている。今さら CDP にウン十万も出す人間
は、カネをドブに捨てるようなものだ。

CDはもはやプレーヤーで聞くものではない。リッピングして、パソコンをソー
スに聞くものなのだ。楽曲の管理つまりデータベースでは CDP は何の役にもた
たない。CDP が唯一対抗できた音質でも、もはやパソコンの方が上回っている。

要はリッピングのソフトに何を使うか、リッピングしたサウンド・ファイル
の再生のソフトに何を使うか、が鍵なのだ。ハード面ならば、PC用のドライブ
で音質の良いものに投資する方が利口だ。例えばこれ

元来、アキュフェーズはプレーヤーなんぞ、作っていなかったではないか。
アンプ専業メーカーだった。ならば今作るべきものは、アキュフェーズならで
はのヘッドフォン・アンプだろう。それで聞けば、ヘッドフォンの音質が、価
格で言って一桁アップするような超弩級ヘッドフォン・アンプ。5,000円のヘッ
ドフォンをつなげば、裸で聞くときの50,000円のヘッドフォンに匹敵するよう
なアンプ。

ヘッドフォン/イヤフォンはもはや「アクセサリー」ではない。一つの独立
したジャンルだ。それも「オーディオ」の中の一ジャンルではない、「オーディ
オ」自体と並べるべきジャンルなのである。

録音された音源を鑑賞するメディアとして、ヘッドフォン/イヤフォンはも
はや第一の選択肢になっている。むしろ、スピーカーかヘッドフォン/イヤフォ
ンか、ではなく、ヘッドフォンかイヤフォンか、あるいはどの機種、どのモデ
ルか、になっている人も多い。音楽産業の崩壊ほど声高には言われていないが、
オーディオ産業も同様に急速に崩壊しようとしているんじゃないか。

Linn は鋭くもその流れを予測し、「産業」が崩壊した後も生き残るべく、必
死になって DS シリーズをやっているとも見える。ハードだけではだめだと
Linn Records で高音質音源の配信も手がける。CDP からの撤退も、事業のリソー
スを死んだものに注ぎこむわけにはいかないという、至極当然の判断ではある。

見方を変えれば、今「オーディオ」の意味は転換している。これからのそこ
での主役はヘッドフォン、イヤフォンであり、DAC であり、ヘッドフォン・ア
ンプであり、ドック・コネクタであり、通信機器( 「高音質ルータ」!)であ
るはずだ。

それにしてもオヤイデのドックケーブル HPC-D3.5は反則だ。この値
段でこのパフォーマンスはないぞ。

    ひょんなことから Head-Direct が HiFiMAN のブランド名で出そうとしているイヤフォンの新作 RE-252 を試聴してます。これの表記には RE252 と RE-252 とあるんですが、ケースには RE-252 と書いてあるのでハイフン付きでいきます。
   
    Head-Direct では RE0、RE1、RE2 というシリーズを出していて、これの後継ということになるんでしょう。バランスド・アーマチュアではなく、直径9ミリのネオジム・ドライバが仕込まれてます。このREシリーズはなので、Head-Direct では "In Ear Headphone" と呼んでます。Monster Beats なんかも同じ方式ですかね。
   
    ちなみにネオジムが正しく、よくある「ネオジウム」は誤り、とウィキペディアにありました。ネオジムは金属元素で、鉄、ホウ素と化合させると超強力な永久磁石になるそうで、これがヘッドフォンに使われると音質が良くなる仕掛け。
   
    どのくらい強力かというと「数センチの大きさでも10kg以上の吸着力があるため、扱う際には指を挟まないよう手袋をするなどの注意が必要である」とウィキペディアの「ネオジム磁石」の項にある。ということは、これの仕込まれたヘッドフォン/イヤフォンをつけていると、マグネットの健康器具をつけているのと同じ効果があるのであらふか。
   
    それはホラとしても、音質の良いものを聞けば、自然とココロはおちつき、血液サラサラ、筋肉もリラックス、をを、やはり健康と環境に良いではないか。
   
    さて、RE-252 は、一時は RE3 のことではないかというウワサもあったが、モデル番号としてはこれで決着の由。まず形が尋常でない。写真をご覧あれ。

    写真ではわかりにくいでしょうが、材質はやわらかく、ハード・ケースではありません。音が出るパイプからケーブルの鞘まで一体になってます。突起もやわらかくて、どんな風にも曲がりますが、離すとすぐ元にもどります。この突起はどんな風に使うのかというと、こんな具合

    一種のつっかえ棒の役割でしょうか。振動を抑えるのかな。とにかく耳穴に対して固定する役割のようです。
   
    表面は一見ツルツルですが、わずかに粘着力があり、指がべとべとするようなことはありませんが、埃などは付着しやすく、付くとまずとれません。
   
    ケーブルはやや太めの、絡み対策をしてあるもの。ケーブルの鞘末端からT字プラグ根元までの全長約1.2メートル、ケーブル分岐までは約365ミリ。と付属の書類、つまりプラスティックのケースの底の内側にはめこみになった紙にあります。
   
    ついでにここに書いてあるスペックは
   
    インピーダンス:16ohm
    感度:103db/1mw
    Rate Input: 2mW
    最大入力:15mW
    周波数特性:16〜22,000Hz
   
    ですが、Head-Direct の Fang さんによると、まだ完成品ではなく、「効率 efficiency」を改善中で、最終製品になるまでにはあと2、3週間かかるそうな。値段は200〜250USD だそうですから、REシリーズでは最上級機なのかな。
   
    付属品は黒いゴムのシングル・チップが大中小3種。透明シリコン(?)のダブル・フランジが大小2種。デフォルトで付いていたのは黒の中のチップ。バランスド・アーマチュアのものとは違って、穴が大きい。耳垢フィルタのスペア5セットが貼りつけられたシート。コードをネクタイなどに留める小さな洗濯ばさみのようなもの。延長コード。
   
    箱から出してまだ5時間超えたところですが、まさにハイエンド・ヘッドフォン(あたしが知っているのはK701)なみの広大で透明な音場、細かいニュアンスまで聞かせきる表現力、ハイスピードなレスポンスと、まったく文句ありません。妙な味付けもなく、真っ正直に音を伝えることに徹してます。あえて味付けと言えば、どの音も磨きあげたように艶やかになる感じ。Head-Fi のレヴューによれば、エージングが進むと低域がさらに良くなるそうなので、ひっじょーに楽しみ。もっとも人工的な「重低音」なんぞとは無縁の、羽毛のように軽く、深みのある低域です。
   
    電車の車内放送ははっきり聞こえるので、遮音性は必ずしも良いとは言えないと思いますが、タイムドメイン式のように音の形が明確なんでしょうか、騒音の中で聴いても音楽はしっかり聞こえます。少くとも、バス、電車の中で聞く分には今のところ問題ありません。ヴォーカルとギターだけでも、騒音に音楽が埋もれないです。
   
    音楽のジャンルは特に問わないようで、ジュリー・ファウリスのガール語版〈ブラックバード〉、リーラ・ダウンズの〈Ojo De Culebra (With La Mari De Chambao)〉、ライナー&シカゴ響のリムスキー・コルサコフ〈シェヘラザード〉第4楽章、鬼束ちひろ〈陽炎〉、エヴァリー・ブラザーズ〈Lay it down〉、アルバム《LULLABIES FROM AXIS OF EVIL》 、グレン・ムーア〈Moot〉など、どれもこれも、初めて聞くもののように音楽に没頭できます。
   
    以上、とりあえず第一印象。(ゆ)

    お盆休み最後の日曜の昼下がり、都心は静かだった。
   
    木立がないから、蝉の声がしない。蝉は孤立した木には来ないらしい。鳥も啼かない。姿もない。鴉や雀さえも。たまに姿を見せる水は澱んで動かず、風も絶えている。人びとは黙々と自分だけの作業にいそしむ。聞こえるのは車や電車の走る音。アナウンス。つまり人工の音だけだ。
   
    明けて月曜日。気温が上がって、朝から蝉が元気だ。油とつくつく法師がメイン。時々みんみん。家の前の染井吉野についたつくつく法師、まだ羽化したてなのか、うまく鳴けない。おもわず、ふんばれと心の中でメッセージを送る。先日、一日だけ熊が数匹、聞こえたが、その後、また涼しい日が続いて、一日だけで終わった。あいつらは声がでかいので、実にうるさい。
   
    このあたりを歩くとき、iPod の音楽を聞くにはオープン・タイプの耳かけヘッドフォン Yuin G2a を使う。密閉式では周囲の音が聞こえず、危険だからだ。それで気がついた。人工の音は音楽の邪魔になるが、自然の音は邪魔にならない。むしろ、音楽を感興を高める。
   
    たとえば流水。水田を通ってきた水を集めて流す小川。かつては天然だったかもしれないが、ここ数年、不況時の公共事業で、護岸がほどこされ、妙に整備された。もっともコンクリートで固めることはさすがになく、岸は土と石、それに草。流れそのものは自然にまかされ、雨が降れば増え、天気が続けば減る。
   
    このほとりに整備された遊歩道を歩くのがベストのルートのひとつ。両側に広がる水田、その向こうの里山、西側には山々が重なり、果てには大山・丹沢がやわらかな稜線をつくる。広い空、流れる水のせせらぎ、吹きぬける風。今の季節、早い田圃では稲の穂が出ている。
   
    せせらぎと音楽はよく合う。とりわけ、アコースティック楽器の響き、人の声には合う。ハープなど、まるではじめから示しあわせたようだ。グローニャ・ハンブリーでも、コリーナ・ヘワットでも、シーリスでも、ハープの音も洗われる。フィドルもいい。カーヌーンもいい。デュデュックもいい。
   
    風の響きも、音楽を邪魔しない。倒れそうになるほどの風がたてる葉擦れの音も、音をかき消しはしても、音楽そのものを消すことはない。
   
    邪魔をするのはすべて人工の音である。車の音、電車の音、ドライヤーの音、食器を洗う音。人工の音が入ると、音楽が音楽に聞こえなくなる。音楽も人工の音であるにもかかわらず。
   
    してみると、音楽とは、人間が自然の音に憧れ、自然の音と同じ性質をそなえた音を出そうと試みた、その成果なのだろう。
   
    家の前の染井吉野で鳴いているつくつく法師、朝方のと同じやつか、別のやつか。同じやつならばずいぶんとうまくなった。「息」も続く。しかし、おまえら、夜中に鳴くのだけはやめてくれ。

    それにしても、人工の音しかない環境で暮らしはじめた老母のことがちと気にかかる。(ゆ)

・Timedomain light(タイムドメインライト)【送料無料】:    実家に行く。都心のマンションに転居して2週間。母もようやくおちついてきたらしい。浴室、トイレ、外気の取り入れ口にゴミ取りフィルタを貼る。
   
    もともと実家に置いてあったタイムドメイン・ライトをテレビにつなぐ。音を出すと母が驚く。しゃべっている言葉がよく聞こえる、という。家具も少く、壁にもなにもないので、以前の一軒家にくらべるとかなりライブな音空間だ。おかげで聴力が衰えた母には、テレビ・セットのスピーカーでは音が反響してしまい、聞きとりにくくなっていたという。タイムドメインはこういう時、強みを発揮する。
   
    テレビにわざわざ外部スピーカーをつなぐなど無駄だと冷やかに見ていた妹やカミさんも、えらいいい音だと納得している。
   
   
    せっかく都心に来たのだからと、帰途、秋葉原に出て、ダイナミック・オーディオ5555でヘッドフォンをあれこれ試聴。ESW9 も聴いてみたが、やはりオーテクの音はどうしても合わない。本来の音からズレているように聞こえる。ない音が聞こえて、あるべき音が消えているように感じられる。聞いていると背骨が歪んでくる気がする。AH-D5000 の方はそんなことはなく、まっとうな、質の高い音で、これならいつまでも聴いていられるなと思う。
   
    とはいうものの K26P + Edirol UA-3FX の音が実に魅力的で、この系統の音が自分は好きなのだ、とようやくこの頃わかってきた。ということで K450 の音を確認。この小ささがまた魅力。
   
    Monster Beats があったので、どんなものかと聞いてみるが、低音が響きすぎる。
   
    TEAC が新しく出した骨伝導ヘッドフォンは、従来品より高域がきれいに出るようになったとうたわれているが、うーむ、これできれいになったのだろうか。それともオレの頭蓋骨に罅でも入っているのか。まっとうな音になるのはまだ前途遼遠か。
   
    1時間近く、あれこれ聞いて、これで何も買わないのは悪いなあ、と後ろ髪をひかれながら出る。iGrado のイヤパッドは置いていなかった。
   
    新宿ジュンク堂で学研のアニメ・ヘッドフォン本を探す。さんざん探して、7Fの「芸術」の中のオーディオの棚に見つける。『新・萌えるヘッドフォン読本』の二番煎じそのままだが、「商品」の提示を先行させる配慮がイラストの構図に枠をはめているのはいただけない。だから一番面白いのは巻頭の架空のヘッドフォン集。このラインで1冊まるまる作ったら買ったのだが。(ゆ)

EDIROL USB オーディオキャプチャー UA-4FX    本日11:30予定で配信しました。独自配信で受けとられている方はそれ以前に届く場合もあります。届かない方は編集部までご一報ください。
   
   
    先日の蒲田でのイベントはいろいろ副産物を生んだようで、嬉しいかぎりです。O'Jizo のすばらしさがまたより広く知られたのはめでたい。
   
    主催者のエヌさんとは「次」の話もはじめていますが、いろいろアイデアがわいてきて、楽しいです。「蒲田音楽祭」なんて構想もとびだしてます。国内で今、沸騰しているケルト系、ルーツ系のミュージシャンたちを一堂に会してみてみたい、というのはまだ夢でありますが、地道に実績を重ねて実現をめざします。まあ、ぼくなんぞは脇ではしゃいでいるだけで、実際に苦労するのはエヌさんなのでありますが(^_-)。
   
    こういうことがあると、うれしいことが続くのが世の中のおもしろいところで、昨日はひととおり本誌の編集を終えたところで、ふと部屋の隅にころがっていた Edirol UA-3FX に眼が止まりました。ずいぶん前に、LPのデジタル化に使えるだろうと買ったまま、その後はそんな暇がまるでなく、ほっぽっておいたもの。
   
    これって、DAC/ヘッドフォン・アンプとして使えるはずだと MacBook につないでみたら、びっくり仰天。おかげでそのまま深夜まで聞きまくってしまい、今朝は寝不足で調子が悪いです。USB 接続でもすばらしいですが、光ケーブルでつないだら天国へ直行。
   
    今は後継機種の UA-4FX(上の写真) が出てますね。Edirol から Cakewalk のブランドに移ってますが、Roland であることは同じ。そろそろ次が出るのかな。余談だけど、サイトにある命名の経緯からすると、この社名は「ロラン」と読むべきではなかろうか。

    困ったことに、もっと良いヘッドフォンが欲しくなってしまいました。AKG K702(ケーブル着脱式はマル)か、DENON AH-D5000(木のハウジングは試したい)あたりを物色してるんですが、Ortofon の IEM もかっこいい(「ブラックホーク」のカートリッジはオルトフォンだった)し、YUIN も G2 でこれなら、G1 はどうだろうと気になる。この迷いも楽しからずや。

    それにしても iMaldalArt が1,500円\(^O^)/。(ゆ)

    本日14:00指定で6月情報号を配信しました。未着の方はご一報ください。
   
   
    昨日は Jaben Network の Uncle Wilson に半日つきあっていました。前回の来日の時にはそれを知ったのはもうかれが帰った後だったので文句を言ったら、6月にまた行くからその時会おうということで約束通り無事面会。写真では見てましたからすぐにわかりましたが、いや、おもしろいおっさんでした。
   
    もっとも、着く前から、ホテルはどこがいいかな、とか、予約の返事がこないから電話かけて確認してくれ、とか、大切な預りものを引きとってホテルまでもってこい、とか、まあ傍若無人といえば傍若無人。おいおい、こっちはあんたのカスタマーだぜ。(爆)
   
    シンガポールのネイティヴで、お祖父さんが中国を離れ、父親はマレーシア生まれだそうですから、典型的な華僑ということになるんでしょう。頭のなかは、どうすればおもしろくカネをもうけられるか、常にくるくる回りつづけているようで、GoVibe のシリーズ化にも現われていますが、次になにをしようか、アイデアが湧いてきてしかたがないらしい。iQube がすごいと言ったらにやにやしはじめるし、一緒につきあってくれたB社のK氏がスタックスが好きだと言うと、さらに顔が笑いでしわくちゃになります。GoVibe シリーズの新製品もまた近く出るらしい。でかい Vulcan の後だから、今度は小さい方でしょうか。
  
    面白いことに、シンガポールの女性たちはベースの音が大好きで、ベースが出ないヘッドフォン、イヤフォンには見向きもしないそうな。かれの店ではとにかく客に試聴させて選んでもらうのがポリシーですが、女性客は例外がないそうな。男性はそれに比べると中高域が良いモデルを選ぶ傾向がある。その理由として、女性は赤ん坊の泣き声に敏感だから、というのは納得できるところです。つまりもともと男性よりも中高域がよく聞こえる耳をもっている。
   
    とすると、世界中の女性は皆ベースを強調するモデルが好き、ということになるわけですが、わが国の女性たちはどうなんでしょう。それとも、あまり聞き比べることをしないで選んでいるのか。
   
    もっとも、かれの店でも女性客はやはりごく一部で、九割は男性客。したがって一番売れるのは Westone、Shure、UE だそうです。推薦モデルは何だと訊いたら、Westone との答え。ウィルソン本人の音の好みではなく、それを選ぶ客が一番多いためということです。とはいえ、ゼンハイザー800 は、と水を向けると、やたら売れてはいるが、評判ほどではないよ、バランス化した650の方がいい、もっとも800もバランスにしたらわからないから、今度ためしてみる、とのこと。
   
    世はあげて大不況ですが、かれのところはまったく順調で、異様なくらいだそうです。シンガポールだけではなく、直前の CanJam で会ったアメリカの連中も同様の由。それだけまだニッチでマイナーな業界ということなんでしょうか。とはいえ、ヘッドフォン、イヤフォンと、ヘッドフォン・アンプはじめその周辺のハード、ソフトの世界が、今後ますます成長を続けることはまちがいない、と言われると納得するところです。
   
    こちらとしてはむろんそんなカネはありませんが、一緒にいると刺激を受けて元気が出てくる、そういう人でありました。ということで、Jaben からはまだまだおもしろいものが出てきそうで、眼が離せません。(ゆ)

    ヘッドフォンアンプ Fiio E5ヘッドフォンアンプ Fiio E5 が国内でも販売されてますね。価格も海外から直接買うのとそう変わりません。初期不良1週間交換のみなので、正規代理店ではないようですが、価格がどこも同じというのは、どこかがまとめて輸入してるんでしょうか。それにしても、この勢いはすごいな。PHA の世界が変わるか。

    はじめから高いものを買うよりも、これを買って、むしろ Dock コネクタに奮発する方が賢明かも。コネクタが良いと E5 の音もそれだけよくなりますから。それにコネクタがしっかりしてれば、後でアンプをアップグレードする時に得するでしょう。

   
    一方の Yuin のクリップ・タイプの廉価版 G2A ですけど、期待通り。KSC35 はもう要りません。75のユーザも買い換えをすすめます。音の肌理の細かさがちがいます。これを聞いてしまうと、KOSS の音がいかに雑かわかってしまう。というか、雑な音をうまく聞かせるのが KOSS の KOSS たるところなんでしょう。サウンド・ステージ、バランス、申し分ありません。KOSS が低音フェチ御用達というのが、ようやくわかりました。まあ、ぼくも低音フェチということになるんですが、重低音などというものは無いと思っているくちなので、やはりバランスのとれた低音は気持ちがよいです。このところジャック・ブルースにはまっているので、なおさら G2A がありがたい。

    ジャック・ブルースってスコットランド人なんですね。やはりスコットランド人はジャズを使うのがうまい。クリームなんて、ほとんどジャズ・ロックじゃないですか。

    造りもなかなかきちんとしてて、KOSS よりも高級感があります。耳にかけるフィット感も上々。コードが KSC より少し短かく、iPod をポケットなどに入れておくのにちょうどよい。この頃はみなそうかもしれませんが、ゴムのような材質のコーティングがしてあって、からみにくく、ほどけやすくなっているのもマル。
   
    例によって Head-Direct の通販です。上海からの発送で、注文して5日で到着。送料含めて 59USD です。(ゆ)

    KOSS KSC35 の後継候補最右翼、Yuin のクリップ・オン・タイプのヘッドフォンの廉価版 G2A が発売になっています。

    昨年秋、サンプルが出回ったものの、音質に難ありで正式発売が見送られていたもの。改訂版ということでモデル名に "A" がついてます。価格は FiiO E3 アンプがおまけで49.00USD。送料は10USD。結局 G1 の三分の一でした。
   
    インピーダンスは60オームで、他のシリーズ同様、iPod 等に直刺しできます。

    トップ・モデルの G1 も改訂されて G1A になってます。
   
    さあて、カネはないので、しばらくおあずけ。をを、そうだ、定額給付金を使うかな。

1ヶ月ほど、ほぼ毎日使い、音は絶好調です。このちっぽけな函にはまるで似合わない「堂々たる音」が鳴ってます。一つひとつの音の粒立ちの良さ。その音が決っしてばらばらではなく、有機的に全体の音楽を編みあげてゆく、その美しさ。音楽が鳴っている空間の媒体、空気が澄んで、透明度が増す、というと近いでしょうか。結果、音楽全体の姿、動きが生き生きとしてきます。すべてが洗われた感じ。Go-Vibe にもどると、どうも音が「くすんで」ます。ほんとうにくすんでいるわけではないのですが、鮮度が落ちる。うーん、これはやはりチップそのものの新しさ、回路の新しさ、なんでしょうか。

例えば、ソウル・フラワー・ユニオンの《カンテ・ディアスポラ》。音楽のイメージがよりはっきりします。Go-Vibe ではやや濁ってました。音が団子のところがありました。E5 では楽器のひとつひとつ、効果音のひとつひとつが自然に聴き分けられます。

加えて、ヴォーカルがより際立ちます。中川敬の声がセンター前面にしっかりと立ってます。コーラスも脇でやや退って、一人ひとりがはっきり聴こえます。

バッテリーの保ち時間はきちんと計ったわけではないですが20時間ぐらいでしょうか。切れるときはブチといきなり切れます。音が小さくなるとか、前兆はありません。

それから、バッテリーを充電した直後は音量が最大またはそれに近いヴォリュームになっています。最初の時は EarPhone M で聞いていたので、驚きました。

欠点も出てきました。この価格ではやはりどこかで手を抜かなくてはならないわけで、どうやらそれはコネクタ類のようです。入力用のミニ・ジャックが少しゆるんできたらしく、挿しこみっぱなしだと、左チャンネルの音が切れるようになりました。今のところはまだ、挿しこみなおすと治ります。

Go-Vibe V5、今の GoVibe ではなく、カナダの個人メーカーが作っていた頃の版ですが、挿しこみっぱなしでいたら、やはり入力用コネクタがゆるみました。最後には片方まったく音が出なくなってしました。Fiio E5もそうなる危険はあるとみて、とりあえず、使わないときは入力ジャックは空けるようにしています。

小さいことはいいこと、なんですが、iPod touch の裏にくっつけて使うにはちょっと小さすぎると感じるときもあります。全体の作りも華奢。もう少し大きくてもいいから、かっちりしていて、安心して使えて、音はこのままという上位モデルが出たら、買っちまうでしょう。価格が倍になっても6,000円ですからね。円高でもっと安くなるかもしれない。でも、その前に、この E5 をもう一個、買っちゃうかなあ。それくらい、この音は魅力です。(ゆ)


2009.01.13追記
上に書いた、左チャンネルの音が時々聞こえなくなる件ですが、E5 のせいではどうやらなかったようです。ドック・コネクタの DS-AUGpt がまずいらしい。それもアンプにつなぐミニ・ジャックのプラグ内部があやしい。今日、届いたばかりの PHA(これについてはまた後日)につないでみたら、E5 と同じ症状が出ました。Go-Vibe Petite につないだ時には出なかったんですが、そうするとあちらもまずいかも。

左チャンネルが聞こえなくなるのとは別に、iPod の再生音が時折り、一瞬切れる現象もしばらく前から出ていて、サウンド・ファイルが不完全か壊れたのかと思っていたのですが、ひょっとするとこれもドック・コネクタが原因であるかもしれません。

Go-Vibe 5 の時はまず最初に ALO のドック・コネクタを疑ったらアンプの方だったし、これはまたか、と思ったのですが、早とちりでした。代わりのドック・コネクタがないので、最終判断はまだですが、まずはお詫びと訂正をします。

fiioe5 いやー、ポチってしまいましたよ。なんせ、送料入れても3,000円しないんですから。12/15 発売とうたわれてますが、6日には送ったと通知が来て、今日10日に着きました。第一陣の50個は完売。そりゃそうでしょう。次回は4週間後。年内ぎりぎり間に合うのかな。

 例によって第一印象は、

これで3,000円は「持ってけ、ドロボー」です。

正直、Go-Vibe Petite も Magnum(Jaben のサイトからは消えちゃったみたいですね)も、危うい。このちっぽけで薄っぺらいものがあれば、もう十分。

 サイズは iPod shuffle をひと回り大きくした感じ。Minibox なんかよりもずっと小さいでしょう。一応数字をならべるとサイズ 44.2×38×12.6mm。重量30g。対応ヘッドフォン・インピーダンスは 16 -- 300オーム。

 まあ実際 iPod shuffle がヒントになったんでしょう。クリップまで付いてます。要らないんですけど、といってもはずれない。上の厚みはクリップも含めて。

 電池はリチウム・イオン充電池で、交換は不可能。充電はUSB経由でパソコンからしかできないみたいです。電圧は販売元サイトによれば 200mAh。

 ロゴから見て上側に、右からヘッドフォン・ミニ端子、音量ボタン、パワー・スイッチ、ベース・ブースト・スイッチ。このベース・ブーストはデフォルトではフラット。外側に移すとベース・ブースト。クリップの軸の頭にランプ(LED?)があり、パワーを入れると青く光ります。切るときはパワー・スイッチの長押し。

 音量ボタンは細長くて、ヘッドフォン端子に近いほうを押すと下がり、反対側を押すと上がります。ただ、途中でどーんと変化するところがあるのは、個体差か、全体的な欠陥か、わからず。上げる方の直後がちょうど良い大きさなので、今のところ様子見。ちなみに販売元では30日の返品、90日の交換を受けつけてます。

 ロゴの下側、ヘッドフォン端子の直下に入力端子。左端に USB ミニ・ジャック。この入力端子はかたくて、DOCK★STAAR のオーグラインを突っ込むのに、はじめちょっと力が要りました。ヘッドフォン端子もちょっとひっかかりました。

 最新アンプICだよ、S/N比もいいし、歪も小さいよ、というんですが、この辺も日進月歩なんでしょうねえ。Head-Direct のサイトによれば
Preamp Opamp: OPA2338UA
Poweramp Chip: TPA6130A
ということです。

 マニュアルは四つ折りのものが一枚。片面英語、片面中国語。メーカー所在地は広州。

 で、音なんですが、これが笑っちゃうくらい良い。背景は真黒。サウンド・ステージは広いし(Magnum より広いかもしれない)、奥行もあるし、分解能も立派。細かい、他の音に埋もれがちの音までちゃんと、それ相応の大きさで聞かせてくれます。というよりは、音楽が生きてます。音がみずみずしい。たった今、生まれました、ってそりゃ、音そのものは瞬間瞬間に生まれてるわけですが、それとは別の次元で、まあ、録音されたばかりのとれたての音楽。なんか、これを聞いてしまうと、Go-Vibe の音は古いんじゃないかとすら思えてきます。とにかく聞くのが楽しい。ベース・ブーストは、少くともぼくは要らないです。先に出ていた、もっと小さくて、音量調節もできない E3 はちょっと色づけがあるという話が、Head-Fi で出てましたが、この E5 に関してはごく少ないと思います。今のところ。

 この音にくわえてこの価格となると、PHA の入門機としては最強でしょうし、まとめ買いして、個体差を楽しむなんていう猛者も出てきそうですね。

 位置的にはイヤフォンの PK シリーズに相当するアンプかもしれません。とすると E5 は PK2 で、PK1 に相当する E7 なんてのも出るのかも。送料含めて1万円以内なら買っちゃいそう。

 実際こうなると、1万円以上するPHAは、もう買う気が起きません。となると次に狙うのはペンギン・カフェ・アンプですね。

 ちなみに環境は iPod touch 32GB w/ OS2.2 + DOCK★STAAR DS-AUGpt + E5 +  EarphoneM + ComplyFoamTips P-Version。この Comply のチップは細長いやつで、T-100 同様に使えます。T-100 より奥まで入るので鼓膜に近くなり、音はよくなります。ただ、ちょっと太いので、人によっては痛くなったりするかも。音源は AIFF、Apple Lossless、MP3 320bps。今日、主に聞いていたのは、Solas《For Love and Laughter》 、 《スウェル・シーズン》、フリア・アイシ&ヒジャーズ・カール《オーレスの騎兵》。(ゆ)

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