ひょっとして「クレツマー祭」になるのかと半ば期待、半ば恐れていたのだが、そんなことはなく、むしろ、さらにレパートリィの幅が広く、ばらけてきた。
ハイライトはそのバラけたものの一つ、ベルギーのグループ Naragonia の曲で、中には芯が通っているが、表面はごく柔かい曲の感触が、このトリオにはよく似合っている。もともとは闊達なダンス・チューンとかクレツマーとか、およそチェロには不向きな類の曲を半ば強引、半ば楽々と、楽しくやってのけてしまうのが魅力であるわけで、巌さんが着々と腕を上げる、というよりも、慣れてきていて、シェトランド・リールまで鮮やかに聞かせてくれるのには顔がほころぶ。
とはいえ、やはり似合いの曲というのはあるもので、ナラゴニアの曲でのチェロのリリシズムには陶然となる。あらためて元の録音も聴きたくなるが、あちらにはチェロはいない。チェロの入ったナラゴニアの曲はここでしか聴けない。
もっともそれを言えば、シェトランド・リールにしても、スウェーデンの曲にしても、クレツマーにしても、こんな編成でやっている人たちは他にはいない。チェロだけでなく、ハープだって、その方面では使われない。世界は広いから絶対にいないとは言わないが、一時的なものではなく続けているのは、彼女たちだけだろう。今のところは。
今日は夏なので、挑戦的に行きます、と言っていたが、編成からして挑戦なのだ。そもそも挑戦というのは、捩り鉢巻きで、腕をまくり、眦を決して、さあやるぞ、とやるもんじゃあ無い。表向きはごくあたりまえの、何でもないことに見えて、ちょっと待てよと考えてみると、とんでもないことをしているのが本当の挑戦というものだ。このトリオはさしづめ、そのお手本のひとつではある。
トリオとしてあれこれ試し、挑戦するなかで、めぐり遭ったのがナラゴニアということだろう。この路線をもう少し深めてゆくのを聴いてみたいものだ。
その後の〈Miss Laura Risk〉がまた良い。チェロがよくうたう。こちらはテンポがちょうどよいのだろうか。
アンコール前は tricolor でやっているジグ。ここでのチェロがまた不思議な音を出す。ダブル・ストップなのだろうか、二つのメロディが聞える。これはたまりまへん。
ゲンまつりは当面、四季に合わせて続けるそうで、次は涼しくなってから。さて、どうなるか、いや、楽しみだ。(ゆ)
中藤有花: fiddle
巌裕美子: cello
梅田千晶: harp
