クラン・コラ・ブログ(アイルランド音楽の森)

 アイリッシュ・ミュージックなどのケルトをはじめ、世界各地のルーツ音楽を愉しむブログです。そうした音楽の国内の音楽家も含みます。加えて主宰者の趣味のグレイトフル・デッド。サイエンス・フィクション、幻想文学などの話もあります。情報やメモ、ゴシップ、ただのおしゃべりなどもあります。リンク・フリーです。

タグ:ポータブル

 Axell Grell が Drop と共同開発していたヘッドフォンがいよいよ出来上がり、予約受付が開始されています。



 通常399USDのところ、今なら349USD。さらに、送料もサービスです。チェック・アウトで20ドル加算されますが、後で返金されました。あたしは paypal を使いました。

 まだ製造中で、発送は2カ月先。

 なお、1,000台限定だそうです。

 アクセル・グレルはゼンハイザーでHD800シリーズを作った人物。イヤフォンの IE800もかれの仕事です。ゼンハイザーの民生部門が売却された前後にゼンハイザーを辞めて独立したと記憶します。そこで出したのはイヤフォンで、ヘッドフォンは独立後はこれが初めてのはず。  > Neuman NDH30 がかれの仕事でした。





 HD800シリーズはドライバーが耳に対してまっすぐではなく、前方から斜めに角度がつけられてますけど、今回はそれをさらに徹底しているようです。



 Head-Fi のジュードがグレルにインタビューしているビデオ。グレルが手に持っているのがドライバー。大きなドライバーの中に、偏ってもう一つ小さなドライバーが着いてます。

 オープン・バックですが、低域は密閉型と同じくらいあるらしい。ジュードが低域の豊かさに驚いてます。

 グレルによれば、人は低域を耳だけでなく、頭をはじめとした体でも聴いているので、そこに配慮したそうな。

 計画が発表された時から楽しみにしてました。円安ですが、そんなことは言ってられません。(ゆ)

 HiBy の DPA RS2 のファームウェア Ver. 1.2 が2月末に出ていました。

 内容は

1. 4.4バランス・アウトからラインアウトに切替えた際の音量の問題の修正。
2. album track_id のソートの問題の修正。
3. その他、バグ・フィックス。

だそうです。

 アップデートのやり方
ダウンロードして解凍した rs.upt をマイクロSDカードのトップ・レベルにコピー。
カードを No. 1 のポート、正面から見て左側のポートに入れて、起動。
システム設定からファームウェアのアップデートをタップ。

 後は自動でアップデートされて再起動します。


 RS2 そのものはますます快調。近頃はアンプにつないだり。イヤフォンはもっぱらこれ。



 しかも、現行品ではなく、初期ロットのアウトレット品ですけど、すばらしいです。持っているイヤフォンが全部お蔵入りする勢い。今年初めに手に入れてから、これしか使ってません。どんな高いものも蹴散らしてます。

 分割振動を排除することは、こんな小さな振動板でもここまで効くのかと驚きもしてます。恐るべし、分割振動。これを減らすために、各社、素材に凝ったりしてるわけですけど、実際には除去しきれてないんでしょう。

 とにかくすっきりと見通しが良く、音のキレがいい。打楽器の気持ち良さは特筆もの。音の立上りが速いモデルはたくさんありますが、これはおそらく音の立ち下がり、収束もすごく速いんでしょう。音の残滓、カスが残らない。だから、すべての音がクリア。生音に1番近くなる。

 上級モデルも出てますが、このいわば最底辺の機種でどこまでできるか、エージングをかけまくって1,000時間超えました。この際、イヤフォンの耐久性も試すかと思ってます。(ゆ)

 6月の REB fes 0.0 を覗いたら面白かったので、同じ final 本社の REB fes 2 に行く。

 入口で試聴はするかと訊かれ、すると答えるとトレイを渡される。試聴するものをこれに載せ、中央のテーブルのどこかで試聴してくれ、同時には3アイテムまでできる。トレイは社食や学食で使われるようなほぼ正方形のダークブラウンのプラスティック製。黒のメッシュが敷いてある。柔かい素材のこのメッシュはただ置いてあるだけで、固定されてはいない。入って右側の壁際にならんでいる試聴用アイテムのブースで何か借りると、借りた品数に応じて1とか2とかの数字と出展社の名前が書いてある札を品物と一緒に渡される。トレイに札を立てて試聴する。

 まずは一番手前の Sound Labo AIMS のブース。Maestraudio MA910SR の4.4mm ケーブルを相談。SR はリケーブルできるが、デフォルトのケーブルで最適チューニングしてある、バランスでは低域が瘠せると配給元アユートの営業氏が言う。そのデフォルトでは低域がふくらみ過ぎに聞えるから、バランスで低域が瘠せるならその方がいい。前回0.0の時に買った 2pin のものが良かったので、それに似た音のものを2種類薦められて試聴。より気に入った方はケーブル自体がひどく太い。

 決めかねて、保留し、イヤフォンを試聴する。MA910SB を試聴したかったが、試聴機は無し。値下げしたから買ってくれということか。qdc Superior、Intime 煌 MarkII、雅 MarkII、E5000、B2、A5000を試す。

 アユートさん一押しで宣伝している qdc Superior は final の A シリーズそっくりに聞える。 ならば評判がいいのはわかるが、要らない。Intime の2機種は MA910SR そっくりに聞える。そりゃまあそうだろう。先に Intime を持っていれば、MA910SR は買わなかっただろう。

 B2 がなかなか良い。筐体の材質にもよるのか、A4000より装着感がいい。音も気に入る。とはいえ、BA一発なら、夏のヘッドフォン祭 mini で聴いた Acoustic Effect を先に欲しい。final はダイナミック・ドライバーを聴きたい。Acoustic Effect は BA に命を賭けていて、それが音にも出ている。

 A5000はなるほど良い。A4000よりヴォーカルが生身に近い。となると MA910SR と似てきて、あえて買うこともない。

 とにかく聴いてみないとこういうことはわからなかったのだから、マイペースで試聴できたことはよかったと思いながら、final のカウンターにある REB ブランド新製品のプロトタイプというのを、ことのついでに聴いてみる。Acoustune のイヤフォンに外見が似ている。

 すばらしい。これに全部持っていかれた。今回一番のヒット。聴きながらどうしようもなく顔からしまりがなくなり、にやけてしまう。マスクをしていてよかった。すっぴんだったら、あの爺さん、とうとうイカレたと思われて、拘束衣を着せられていただろう。

 ヴォーカルが実に気持ちいい。晴れやかな空間に、身の詰まった音が鮮明に新鮮に鳴る。音じゃあない、音楽が鳴っている。試聴用の音源を次々に聴いてしまう。聴きなれた曲が洗われたようにみずみずしく聞える。どれもこれもあらためて名曲名演名録音、と惚れなおす。いつまででも聴いていたい。でももう時間が無い。こうとわかっていたなら、開場と同時に来て、閉場までずーっとこれだけを聴いていたかった。次はそうしよう。なろうことなら、このままもって帰りたい。この試聴機、売ってくれませんか。さもなきゃ長期貸出でも……。

 これまで聴いた全てのイヤフォンの中でベストの音。むろんこれまでのだって、どれもその時々でベストだったわけだが、この先どんな製品が出ても、この音ならずっと好きでいるだろう。死んだら、他は売っぱらっていいが、これだけは棺桶に入れてくれ。地獄に落ちても、これがあれば耐えられる。

 製品化は年内どうか、というところだというが、来年3月までに出てくれればいい。もちろん、早ければ早いほどいい。今の世の中、いつどうなるか、わかったものではないのだ。完成した音を聴かずに死ねるか。

 値段は5万以下らしい。10万でも買う。やはり試聴はしてみるものだ。

 これを聴いてしまうと、持っているものまで霞んでしまった。試聴にデメリットがあるとすればこれだな。でも聴いてみなければ出逢えない。

 とにかく、気をとりなおして、あらためてケーブルを試聴。結局オーダーメイドのものを注文。Black Back という  AIMS のサイトには出ていない、新しいシリーズらしい。

 クロージング間際まで2時間たっぷり遊ぶ。入れ替わり立ち替わり人が来て、場内はずっといっぱいの感じ。もっとも、ヘンにわさわさしていないし、殺気立ってもいない。皆さん、おちついている。試聴していた隣の席の人は MAKE 4 のチューニングに余念がなかった。ピンセットで何かやっては、自作のDAPらしきもので聴いている。A&KのハイエンドDAP をトレイに置いて、腕組みして目をつむってじっと聴き入っている人もいる。背後ではクマさんが、Analog Squared Paper のアンプについて熱弁をふるっている。それにつられて聴いてみて、のけぞって驚いている人もいる。アンプは使ったことがなかったらしい。そう、アンプでも音は変わる。MAKE シリーズのチューニングはそこまで入れることもできる。

 REB fes はこの後しばらく遠隔地を回るらしい。でも、いずれまたここに戻ってくるだろうから、その時は行くぞ。あのプロトタイプを聴かねばならぬ。(ゆ)

 FiiO M11 Pro の画面上部に黒い筋が入ってきた。気がついたのは6月下旬。買ったのは2020年8月なので、2年10カ月。最初はこんな具合。

M11Pro画面20230628
 
 それがだんだん伸びてきた。右はあまり伸びないが、左が伸びてくる。太さは変わらない。

M11pro画面20230707

 現在はこういう状態。

M11Pro画面20230727


 バッテリーはフル充電してからの再生可能時間がバランスで6時間半というところ。新品ではバランスで8.5時間としてあるから、約4分の3になった。

 今はヘッドフォン、イヤフォンのエージング用に使っていて、使用時間はリスニングに使った600時間プラス50時間ほど。

 普通にリスニング用として使っても、再生時間として連続で6時間半あれば十分だし、画面の黒い帯もこれ以上太くならなければ、使用にさしつかえはない。最低でもあと1年は使えそうだ。この際なので、エージング用に使えるところまで使ってみるつもりだが、リスニング用としてどこまで使えるかも時々試そう。

 この M11Pro 買ったときの価格は85,000円弱。今のところ月2,400円弱。さて、これが高いか安いか。ウン十万のハイエンドはもっと長く使えるのだろうか。(ゆ)

 ささきさんの AirPods Pro 2 のレヴューは久しぶりの力作。最後の新約聖書からの引用(ヨハネ13章36節)が効いている。あちこちに分散している設定のリストはありがたい。

 ワイヤレス・イヤフォンの普及は iPhone からヘッドフォン・アウトをなくしたためだし、AirPods は決定的だった。これからはオーディオはプレーヤーと再生装置双方によるコンピュータ処理が前提というのもその通りと思う。AirPods Pro をあたしはイヤフォンというよりも、ノイズから耳を守るための ANC 装置として使っている。ZE8000 を買ってしまったから、今はそちらがメインになった。AirPods Pro 2 が iPhone とのペアで使うための汎用の製品なのに対し、ZE8000 はつなぐ相手は汎用だが、音は思いきりオーディオに振った製品、になろう。

 ヘッドフォンはどうだろう。AirPods Pro 2 が Max と同等なら、Max を買う価値はない。AirPods Max 2 はどうなるか。

 これはもはや装置の物理特性の範囲でじたばたするスピーカー・オーディオとはまったく別の世界になる。近いのは DAC 付きアクティヴ・スピーカーだが、部屋という要素が入るから、イヤフォンほどの細かいコントロールは効かず、したがってコンピュテーショナル・オーディオの効果もイヤフォン程には効かない、つまり従来オーディオとの違いが大きくないとも思われる。

 とはいえ、Airpulse はサウンド・ジュリアのような店でも音がいいと売れているようだから、いずれ、ネットワークプレーヤーと DAC 付きアクティヴ・スピーカーのペアという製品は出るだろう。そういえば、Airpulse は専用ドライバーをプレーヤー側で使うと音がよくなる、とサウンド・ジュリアが書いていた。これもコンピュテーショナル・オーディオの範疇だろう。プレーヤー側に入れた専用アプリとペアで使う DAC 付きアクティヴ・スピーカーがスピーカーのデフォルトになるか。(ゆ)


 HiBy RS2 は面白い。無線をばっさり捨てて、R2R DAC を載せ、マイクロSDカードを2枚サポート。ストレージに入れた音楽再生、それも有線のカンに特化している(AV Watch は無線を捨てていると正確に書いている)。DAP の原点。外見も AK100そっくり。でもこれでいいんだよ。

 

 DAP に無線イヤフォンを使うのは邪道だ。無線イヤフォンはスマホで聴くためのものだ。66万の DAP を無線で聴くのか。ストリーミングのために WiFi はあってもいいが、DAP に青歯はそれこそ蛇足だ。

 いや、わかってるさ。無線が有線よりも音が良くなるのは時間の問題だということは。しかし、それはつまり無線のカンに DAC とアンプが入っているからなので、これらが進化すれば DAP に高価な DAC もパワフルなアンプも要らなくなる。そうなると DAP のレゾン・デートルは無くなる。スマホと無線だけで完結する。ストリーミングだって、今でもスマホで Tidal も聴けるのだ。

 とすれば、DAP としてはストレージ=マイクロSDカードに入っている音源をよい音で聴かせることが肝要になる。無線のカンとは異なる良い音で聴かせることだ。であれば DAP と組み合わせるのは有線しかない。

 つまりは RS2 は DAP の原点回帰のように見えて、その実、DAP の未来形なのだ。(ゆ)

04月21日・木
 ブリス・オーディオのポータブル・ヘッドフォン・アンプ Tsuranagi を試聴する。他に希望者がいなかったので、1ヶ月、借りていた。堪能した。
 ぱっと聴くと無味無臭に聞える。どこか、ひ弱な感じもする。ところが、いろいろなヘッドフォン、イヤフォンをつないで聴いてゆくと、どうも妙なのである。何をつないでも、音楽に聴き入ってしまう。エントリーだろうとハイエンドだろうと、リスニング用だろうと、モニター用だろうと、インピーダンス600Ωだろうと、平面駆動だろうと、まったく関係がない。試聴するつもりが、再生した音楽にどっぷりはまっている。もちろん、試聴用には繰返し聴いて飽きないような曲を選んでいるわけだけれど、まるで、初めて聴くような按配なのである。これはつまり、ヘッドフォン、イヤフォンを鳴らしきっているのではないか。手許において使いつづけているのは、自分なりに素姓が良いと思えたものばかりで、そういうものはその実力をとことん引きだしているのではないか。
 最初はパワー不足かとも思えた。が、どんなヘッドフォン、イヤフォンをつないでも、音量ダイアルはほぼ正午で合う。初代 T1 とか T60RP だけは2時くらいになる。イヤフォンだと10時くらいで間に合う。ほとんどのものは正午からちょっと左右に振るだけだ。
 このアンプはただの箱だ。そう大きくもない。むしろ、小さい方だ。これより大きな DAP もある。その存在は無色透明だ。鳴っているのはヘッドフォン、イヤフォンであり、音楽だ。アンプではない。音楽を聴くためのアンプ、余すところなく音楽を聴くためのアンプだ。聴けば聴くほどに手離せなくなる。
 ケーブルを Brise 以外のものに替えてみても、基本的な性格は変わらない。よほどおかしなものを使わないかぎり、やはりヘッドフォンの性能を100%発揮させる。させているように聞える。これほどの音で聴いたことはないと思わせる。
 となると、これはしかし究極のアンプなのだ。これを買ってしまってはアンプ遊びには終止符が打たれる。将来、Brise からもっと良いものが出るかもしれない。しかし、これはすでに究極のレベルなので、新しいものが出たからといって、古くなって影が薄くなるような性格のものではない。
 ようやく、試聴機を返してくれと連絡があった。月末のヘッドフォン祭 mini で展示するのだろう。けれども、このアンプは30分ばかり聴いたところで、真価がわかるとも思えない。


##本日のグレイトフル・デッド
 04月21日には1968年から1986年まで7本のショウをしている。公式リリースは3本、うち完全版1本。

1. 1968 Thee Image, Miami, FL
 日曜日。このヴェニュー3日連続のランの楽日。セット・リスト不明。この日、ノース・マイアミの Greynolds Park で、トラックの荷台をステージにして4時間、フリー・コンサートをした由。そちらもセット・リスト不明。

2. 1969 The Ark, Boston, MA
 月曜日。このヴェニュー3日連続のランの初日。3.50ドル?

3. 1971 Rhode Island Auditorium, Providence, RI
 水曜日。4.50ドル。

4. 1972 Beat Club, Bremen, West Germany
 金曜日。テレビ番組の Beat-Club に出演。スタジオでライヴ演奏。10曲。1時間20分。《Europe ’72: The  Complete Recordings》で全体がリリースされた。テレビで放映された画像は YouTube で見られる。放送は生ではなく、編集されている。録音は編集される前の演奏を捕えている。
 番組は1965年から1972年年末まで、月1回放送された。この間にデビューしたおよそロックのバンドは一度は出たと言われる。1曲ないし数曲だけの出演が多かった。現在は YouTube に多数アップされている。
 10曲演奏しているが、なぜか〈Playing In The Band〉を2度やっている。しかも2度目はウィアが1番の歌詞をまちがえたため、バンドは大袈裟に大騒ぎしながら止める。やり直しはしかしやはりすばらしく、あたしはこちらの方がいいとは思う。やり直しはここだけではなく、4曲目〈Sugaree〉でも始めて間もなく、ガルシアが、誰かまちがえた(ピグペンらしい)ぞお、と言って止める。さらに8曲目〈Truckin'〉でも始めて1分ほどして止めてやり直す。
 いずれも、観客を前にしたショウであれば、おそらくそのまま続けてしまったはずのケースだ。テレビ放映では完璧を期した、とも言えるが、一方で、デッドのプロ意識を垣間見ることもできる。なぜかわが国ではグレイトフル・デッドはずぼらでちゃらんぽらんというイメージが横行しているようだが、それは無知ないし情報不足と先入観による単なる思い込みでしかない。
 演奏はすばらしい。二つの〈Playing In The Band〉は甲乙つけ難いし、〈Truckin'〉から〈The Other One〉へのメドレーも面白い。後者だけで20分を超えるが、おそらくこれに遷移した時点ですでに持ち時間は切れていたはずで、そのことはバンド自身にもわかっていただろう。〈The Other One〉にどう決着をつけるか、どんな曲をつなげるか、定まらないことがかえって面白い結果を生んでいる。そしてかなり唐突な終り方は、この演奏をこの曲のユニークなヴァージョンにもしている。
 《Europe ’72: The  Complete Recordings》の中で、これだけは CD1枚に収まる、極端に短かい演奏ではあるが、映像だけでなく、実に興味深い音楽になっている。
 次は3日後、デュッセルドルフ。

5. 1978 Rupp Arena, Lexington, KY
 金曜日。第二部5曲目〈Stella Blue〉が《So Many Roads》で、第一部クローザー〈The Music Never Stopped〉が2012年の《30 Days Of Dead》でリリースされた。
 DeadBase XI の Geoff Renaud のレポートによれば、第一部は水準以下のつまらないものになりそうだったのが、クローザーで切り替わり、第二部はすばらしく、就中〈Truckin'〉はデッド史上最高の演奏という。

6. 1984 Philadelphia Civic Center, Philadelphia, PA
 土曜日。このヴェニュー3日連続の楽日。13.50ドル。開演7時半。第二部オープナー〈Help On The Way> Slipknot> Franklin's Tower〉が2021年の《30 Days Of Dead》でリリースされた。

7. 1986 Berkeley Community Theatre, Berkeley, CA
 月曜日。このヴェニュー4本連続のランの2本目。レックス財団資金調達のためのベネフィット。開演7時半。(ゆ)

 イヤフォン、ヘッドフォン・メーカーのファイナルが秋葉原に直営店をオープンしたので、開店日に行ってみました。

 ファイナルは創業者の高井金盛氏が亡くなられてから、目黒の長者町から川崎の現住所に転居し、ここにショールームを設けて、試聴やイベントの場としていたわけですが、ここはいかんせん、交通の便が悪い。あたしも何度か伺いましたが、鉄道のどの駅からも15分くらい歩きます。歩くのは苦になりませんが、雨でも降るとちょっとしんどい。ということで、今回、誘いを受けたのを契機に、秋葉原の駅の電気街口改札から歩いて2、3分というところに直営店を開いたのだそうです。入居したのは、秋葉原から御徒町方面に向かう線路の下を再開発したスペース SEEKBASE で、この中にはイベント・スペースも別にあります。

 秋葉原駅の改札から線路沿いに北へ向かい、左手に UDX という大きなビルのある交差点を渡ると CHABARA という、国内特産品販売店が集まっている一角があり、その次の一角が SEEKBASE です。

 一軒、ビールなど蒸留酒のバーがあるのが異色ですが、その他はモノを売る店。オープンが1週間ずれた「まんだらけ」の店が、見た目には圧巻。ソフトビニール・フィギュア専門だそうな。

 各店舗の間は壁がなく、スチールの格子で区切られているだけ。このパーティションは2メートルくらいの高さで、天井も剥出し。たとえばパルコなどの恒久的なテナント施設というよりは、がらんどうのイベント・スペースをちょいちょいと区切っている、テンポラリな施設のようでもあります。隣の店は丸見えですし、音や話し声などもさえぎるものはありません。ファイナルの店のお隣りは鉄道模型の専門店で、模型が走る音が結構大きく聞えます。

 バーとDJスクールを除いて、モノを売る店はモノであふれていますが、ファイナルの店は高級ブティックよりももっと展示されている商品が少ない。ほとんど、あんたら売る気があるのか、とツッコミたくなる感じ。入口にはでんと甲冑が鎮座していて、知らないと何の店かわからないかもしれません。テーブルや椅子などの什器も川崎のショールームから持ってきた由で、すべてヴィンテージもの。奥の試聴などに使うテーブルのハンス・ウェグナーの一番有名なYチェア、白木ヴァージョンだけは真新しい。

 開店日に行った最大の目的は新製品のフラッグシップ・イヤフォン、A8000 を聴くためであります。ファイナルのイヤフォンは MAKE 3 をクラウドファンディングで購入して愛用しています。きりりとして輪郭の明瞭で空間がクリアな音。基本的に硬質なサウンドですが、ヴォーカルは血が通ってます。アイリッシュ・ミュージックをはじめ、アコースティックなアンサンブルは最高です。マルチBAやハイブリッドよりも、ダイナミック・ドライバ一発の信奉者としては、そのファイナルが満を持して出したとなると A8000 は聴かないわけにはいかない。たとえ、到底手が出ない値段がついていても、です。

 聴いての結論は、買ってはいけない。こんなものを買ってしまっては、そこで終ってしまいます。もう新製品なんて要らなくなります。ただ、ひたすらこれを聴いていたい。これで音楽を聴いていたい。いつまでもこれで音楽を聴いていたい。他のこともしたくなくなる。本を読むとか、メシを喰うとか、そんなことはどこかへ飛んでしまう。

 オーディオ製品の1つの要諦は録音された音楽を魅力的に聴かせる機能です。録音や演奏がひどいものでも、それなりに聴かせてしまう機能です。リスナーをだますとも言えますが、娯楽とは受け手をいかにだまして、気持ちよい思いをさせるかを工夫するものです。オーディオもその例外ではありません。

 だまされるのがとにかく厭だという気持ちももちろんあって、いわゆるプロ用機器、スタジオ・モニタなどが人気なのもその現れでもあります。もっともこちらはこちらで、だましはしませんが、たとえばすべての楽器、すべての要素が等しく聞えたりします。仕事のためにはそれが必要なわけですが、音楽の実際、生演奏からはほど遠い形です。どんな音楽も、すべての楽器がまったく同等に聞えるようにはできていません。声も含め、それぞれの役割や位置に応じた音量や音質で聞えて初めて本来の形で聞えます。

 A8000 は、その描写が実に巧い。音楽を本来聞える姿で描きだしてくれます。それが巧いポイントの1つは、音の減衰のコントロールらしい。楽音はたいていポンと出て、だんだん小さくなって消えます。そのポンの立ち上がりがまず大事というので、オーディオ製品はその瞬発力に力を注ぎます。ところが減衰してゆく方はいわば放置されるのが普通です。音が勝手に小さくなるのにまかせる。生演奏ならそれでいいわけですが、電気的に音を再現する場合にはどうもそれではうまくないらしい。というのは実際に音を出しているのは振動板で、弦でも管でもリードでも声帯でもないからです。減衰する速度からして違う音のそれぞれの減衰を、1枚の振動板でどう再現するか。

 減衰する音のコントロールが足りないと、前の音が消えきらないうちに次の音が出るわけです。当然、次の音は濁るでしょう。普通は濁っているとはわからないくらいわずかなもので、最初の立上りが十分シャープであれば、人間の耳はうまくだまされる。もっとも、平面型のスピーカーやヘッドフォン、イヤフォンのメリットはもともとはそこにあります。他のタイプでは音をプッシュするだけですが、平面型はプッシュ・プルして、減衰をコントロールします。今流行りのダイナミック・タイプの平面型ドライバはそうでもないものもありますけど、スタックスなどの音の快感はプッシュ・プルのおかげです。

 A8000 は純粋ベリリウムの振動板を作りだすことで、減衰をコントロールしようとしている。そして相当なレベルまで成功している、と聞えます。音楽を聴くのがとにかく愉しい。聴くことそのものが快感です。音離れがいい、というのは普通、立上りがシャープで輪郭が明瞭なときに言われますが、減衰がうまくて、すっきりと消えることの方にあてはまるんじゃないかとも思えます。

 A8000 が凄いのは、音楽を聴く歓びを味わわせてくれるとともに、もう1つ、オーディオ的な満足感ももたらしてくれることです。音が良いことの驚きが新鮮なのです。今で言えば、スマホ付属のイヤフォンから、初めて本格的な、たとえば3万クラスのモデルに替えたときの驚き、でしょうか。あたし自身は、アキュフェーズの出たばかりのプリメインにボストン・アコースティックのダブル・ウーファー・スピーカー、トーレンスのアナログ・プレーヤーを組んだ時でした。好きな音楽を、良い音で聴くということがどんなにすばらしい体験か、あらためて噛みしめることを A8000 は可能にしてくれます。

 こうなってくると、20万という価格がそんなに高いと思えなくなってくるのが、オーディオの魔力でしょう。まんだらけに並んでいるフィギュアに付いている値段は、あたしなどには目玉が飛びでるものですが、欲しい人にとっては妥当なものであるわけです。もうそんなに長くもない人生の残りを、A8000 で音楽を聴くことで費すなら、満足して死ねるでありましょう。だからといってぽんと20万、どこからか湧いてくるわけではありませんが。

 いやいや、やはりこれは買ってはいけない。死ぬその瞬間まで、新しもの好きでいたい。

 ああしかし、これで思う存分音楽を聴きたいものよのう。

 というわけで、心は千々に乱れて(笑)、お店を後にしたことでありました。(ゆ)

 あけましておめでとうございます。
今年が皆様にとって充実した年になりますように。

 当ブログでも昨年からの積み残しがいろいろありますが、ぼちぼち行こうと思うとります。年もとりましたし、病気もしました。なにごともぼちぼち。急がず、されど休まず。

 今年のライヴ開きは 01/12 のアンチャンプロジェクト&東冬侯温(トン・トン・ホウ・ウェン)。台湾先住民のシンガー。まったく聴いたことがありませんが、アンチャンの安場さんの強力推薦なので、まことに楽しみであります。

--引用開始--
年の初めに--花綵列島の北と南の民が集って--
2015年1月12日(月・祝)開場16:30、開演17:00〜
スペース・オルタ http://spacealta.net/ (新横浜駅下車、横浜線沿いに徒歩7分)
   横浜市港北区新横浜2-8-4オルタナティブ生活館B1
   TEL&FAX:045-472-6349/留守電・FAXでの前売り予約可
列島弧から南洋の島々の唄を中心に歌うアンチャンプロジェクトが、台湾東部のタロコ族の伝統芸能を元に世代と国を越境しながら活動する東冬侯温(トントン・ホウウェン)をゲストに、首都圏に暮らすアイヌの方々も迎えて愉しむステージです!
料金:当日2,000円 前売り1,500円(お屠蘇付き)
問合せ先:TEL&FAX:045-472-6349/留守電・FAXでの前売り予約可、 安場:rxk15470(@)nifty.com
--引用終了--

 今年最初のイベントは 01/31 四谷・いーぐる連続講演での「いーぐるでデッド Vol. 1」です。ジャズと関連のあるグレイトフル・デッドの録音を聴きます。翌月 02/28 「Vol. 2」では、コンサートのライヴ録音丸々1本を聴きます。いつのものにするかはまだ思案中。

 今年はグレイトフル・デッド結成50周年、ジェリィ・ガルシア没後20年。ということで、いろいろ音源、資料が出るでしょう。できるかぎり、いやぼちぼち追いかけるつもりです。デッドはひとつの宇宙といえるくらいの広がりが見えてきて、面白くなってきました。

 3月までには本が1冊出ます。旧著『アイリッシュ・ミュージックの森』を改訂したもの。アルテスパブリッシングからです。今年はもっとうたの勉強をしようと思います。

 読みたい本が積みあがるばかりで全然消化できませんが、重点としてはマラザン・シリーズとマイケル・ビショップとサミュエル・ディレーニィとキャスリン・マクリーンあたり。それに武田泰淳全集。岩波文庫の『滅亡について』を読んで、やはりこの人は読むべしと決意した次第。

 


 ハードウェアではいよいよモバイルが先頭に立って、こちらも面白くなってきました。これまでにないタイプの製品も出はじめて、楽しくなりそうです。個人的にはニール・ヤングが主導している Pono がどう展開するか。半年以上待ってやってきたプレーヤーは音も好みだし、使い勝手も良いし、バランス駆動もできるし、で期待以上。イヤフォンやヘッドフォンを出す計画もあり。ミュージック・ストアの方はわが国での開店は正直期待していませんが、ひょっとすると地殻変動が起きるかもしれないと思わせてもくれます。

 ヘッドフォンでは平面駆動の選択肢が広がるのが楽しみです。イヤフォンは昨年末に聴くチャンスのあったファイナルオーディオデザインの新作 heaven VIII と VII が、ファイナルとしても一段新しい次元に入って、今年はもう少し聴きこみたい。

 鉛筆では Palomino Blackwing の良さがようやくわかりだしました。

 どうやら20世紀以上に「激動」になっている今世紀、なんとか今年も楽しく生き延びたく、ぼちぼちと精進したいものです。なにとぞ、よしなにお願いもうしあげます。(ゆ)

 TouchMyApps というサイトにはヘッドフォンのコーナーがあって、セレクションも個性的ですが、内容も微に入り細を穿ったもので、読み応えがあります。その中に GoVibe Porta Tube+ のレヴューがあるのを、最近、発見しました。これはもう「銘器」といってよいかと思いますが、なかなか情報が少ないので、著者の了解を得て邦訳してみました。お楽しみください。なお、元記事には美しい写真がたくさんありますが、著作権の関係でここには載せられません。また、後ろの方に出てくるグラフも同様です。これらは元記事をご覧ください。

Big thank you to Nathan Wright who wrote the oritinal review for his kind permission to translate and put it up here.


PortaTube-iPhone2


 チープなことは悪いことじゃない。ぼくはチープなものを食べて、チープなものを着て、チープな冗談を言っている。もうずいぶん久しい間、Jaben がぼくのまわりに送ってきていたのは、チープなアンプばかりだった。大量生産品だね、アーメン。ところが Jaben はとうとう好みを変えたらしい。いずれ慈善事業にも手を出すことになるんだろう。いやその前にまずは Porta Tube+ だ。iPad/Mac 向けの真空管ヘッドフォン・アンプ兼DAC だ。ブルジョアが聴くにふさわしく、王様にぴったりの音を奏でる。

 どこの王様かって。GoVibe 王国のだよ。

スペック
24/96kHz アップサンプリング DAC:CIRRUS CS4398-CZZ (24/192kHz)
真空管:72 6N16B-Q
USB コントローラ:Texas Instruments TIASIO20B
一回の充電で使用可能な時間:7-10 時間
驚異的な音

 Jaben 製品ではいつものことだが、スペックを知りたいとなると、あちこちつつきまわらなければならない。探しものが見つかることもあるし、みつからないこともある。付属の文書類はいっさい無い。Jaben 製品が使っている DAC チップが何か、まるでわからない。オペアンプもわからない。Porta Tube や Porta Tube+(以下 Porta Tube/+)が使っている真空管の種類然り。事実上、わかることはなにも無い。(セルビアの Zastava のブランド)ユーゴかトヨタの部品を寄せ集めて作った1990年型現代(ヒュンダイ)自動車の車を買うのによく似ている。部品が何か、知っているのは販売店だけだ。ありがたいことに、Porta Tube/+ には良い部品がふんだんに使われている。もうひとつありがたいことに、Jaben はありえないようなスペックをならべたてたりはしていない。ダイナミックレンジが 120dB だとかぬかしているアンプ・メーカーはごまんとある。嘘こくのもいいかげんにしてくれ。いやしくも音楽信号を扱うのに、そんなことありえるか。負荷がかかれば、なおさらだ。

 先へ進む前に、Jaben の Vestamp を覚えているかな。あれも GoVibe だ。GoVibe は Jaben のハイエンド・ブランドだ。そして、こと音に関するかぎり、GoVibe はハイエンドの名にふさわしい。そうでない製品も少なくはないが、たいていはハイエンドと呼ばれておかしくはない。


造りの品質
 アルミ製のアンプというのはどれもこれも皆同じだ。Jaben も例外ではない。そう、前後は4本ずつのネジで留められている。ネジはヴォリューム・ノブにもう1本隠れている。マザーボードは2枚の波形の板にはさまれ、三連 three-cell の充電池がかぶさっている。

 出入力用ポートはマザーボードにしっかりと固定されて、3個のきれいにくりぬかれた穴に首を延ばしている。パワー・スイッチは形がいい。がっちりした金属製で、ぴかぴかの穴から亀よろしく頭をのぞかせる。

 全部で28個の空気穴が世界に向かって穿けられている。上下半分ずつだ。内部は熱くなるから、この穴がなくてはいられない。冬にはあまり頼りにならない懐炉。夏にはまるで思春期にもどったようになる。とにもかくにも、ちゃんと作動していることだけはわかる。

 Porta Tube に傷があるとすれば、ゲイン切替装置だ。こいつは例の8本のネジを延べ百回ばかり回さないと現われない。調節そのものは難しくはない。ジャンパ・スイッチのジャンパを隣のスロットに移すだけのこと。ピンセットか小さなドライバさえあればいい。左右は別々に調節できる。簡単すぎて気が抜ける。ただし、だ。そこまでいくには、フロント・パネルの4本のネジを回してはずし、次にバック・パネルのネジも回してはずし、そしてマザーボードをそっと押し出さなければならない。つまり、百回は回さなければならないわけだ。だいたいそこまで行く前に、バック・パネルにでかでかと書かれた注意書きを見て、手が止まってしまうこともありえる。
 「警告! 高電圧につき、中を開けるな!」
ブザーが鳴ってるだろ。こうこなくっちゃウソだよ。ホント、イタズラが好きなんだから。このブログを昔から読んでる人なら覚えているだろう。Hippo Box+ のツリ用のウエブ・サイト。中身が何もないアレ。ベース・ブーストとゲイン・スイッチの表示が裏返しになっていたヤツでもいい。ったく、笑わせてくれるぜ。

 ジャンパ・スイッチを前の位置に移すとハイ・ゲイン・モードになる。笑いごとではない人もいるかもしれない。いきなりネジ回しを握っても、バック・パネルで諦める人も出てきそうだ。それはもったいない。というのも、Porta Tube と Tube+ のパワーはハンパではないからだ。IEM を使っているのなら、あり過ぎるくらいで、ゲインは低く抑えたくなるにちがいないからだ。最後にもうひとつ障碍がある。ゲイン・スイッチには何の表示もない。初歩的な電気の知識をお持ちなら、プリント回路をたどればおよその見当はつくだろう。電気のことはもうさっぱりという方に、切替のやり方をお教えしよう。

 ジャンパ・スイッチを二つとも動かすと、ゲインは高くなる。ジャンパ・スイッチを「前」の位置、つまり、アンプのフロント・パネルに近づけると、ゲインが高い設定になる。他の位置では、すべて、低くなる。左右のチャンネルはそれぞれ独立に設定できる。左右の耳で聴力に差があるときは便利な機能だ。バック・パネルのジョークを別にすれば、Porta Tube にはイラつくところは何もない。そこにさえ目をつむれば、これはすばらしいアンプだ。これだけ注目されるのも無理はない。

 音量調節はどうかって。すばらしいですよ。つまみやすいし、動きもなめらか。目印の刻み目は暗いところでも、どこにあるか、すぐわかる。


エルゴノミクスと仕上げ
 ブラウザで Porta Tube+ の写真がちゃんと見えるか自信がない。このマシンは美しい。ケースのブルーは両端のシルバーとみごとな対照をみせる。ブルーの LED ライトに比べられるものは、少なくともポータブル・オーディオの世界では他にない。このライトの明るさはそれほどでもないが、夜遅く、暗くした部屋の中では、アンプの正面にテープを貼るか、またはつまらないミステリー小説かなにかでおおっておきたくなるくらいだ。

 いろいろな意味で、美しさというのはごく表面だけのことだ。700ドルの値段が付いているのなら、隅から隅までそれにふさわしくなければならない。フロント・パネルの文字はレーザーで彫られていて、硬化鋼のネジの頭はちゃんと削られて突き出していないでほしい。マザーボードに組立て工の指紋が着いていたり、フロント・パネルにすり傷がある、なんてのも願い下げだ。ゲイン・スイッチを切り替えるにはバック・パネルを開けるしかないのに、そこには「開けるな」と書いてある、なんてのもないだろう。GoVibe Porta Tube+ ではそういうことが体験できる。それもパッケージのうちだ。これにそれだけ払うだけの価値があるかどうかの判断はおまかせする。

 もっともデコボコはあるにしても、プラスもある。もう一度言うが、ヴォリューム・ノブのなめらかさは完璧だ。入出力のポートの間隔も十分で、でか過ぎるヘッドフォン・ジャックやケーブルでも余裕で刺せる。もう一つ、ヘッドフォン・ジャックが二つ付いているのも大きい。スタンダードとミニと二つ並んでいるから、音量を変えないまま、同じ音源を二つのヘッドフォンで聴ける。Porta Tube も Porta Tube+ も、少々のことでは動じない。中を覗けば、洗練にはほど遠いかもしれない。しかし、全体としては、Porta Tube+ はけっして口下手ではない。


特長
 バッテリーの保ち時間は7〜10時間、充電機能内蔵、6.3 と 3.5ミリのヘッドフォン・ジャックを装備し、それに、外からは見えないスイッチでゲイン調節ができる。Porta Tube も Porta Tube+ も、本来の機能でがっかりさせることはない。Porta Tube に700ドル出すことで、手に入るのは大馬力だ。Porta Tube と Porta Tube+ をもってくれば、ヘッドフォンの能率やインピーダンスは関係なくなる。バランス出力や静電型ヘッドフォン用ではないが、それはまた話が別だ。

 + が付く方は 24/96 をネイティヴ・サポートし、192KHz までアップサンプリングする。コンピュータで音楽を聴いているなら、これだけで買いだ。ヴォリュームの位置がどこにあっても、ノイズは比較的少ない。これだけで National アンプ をしのぐ。そして、VestAmp+ を上回るパワーを出力ポートに注ぎこむから、耳が痛くなるような音量で鳴らしても、ヘッドフォンの音が歪むことはない。そうそう、あらかじめことわっておく。Porta Tube の音はでかいぞ。


音質
 Porta Tube を初めて聴いたのは新宿のカレー屋だった。耳には頼りになる Sleek Audio CT7  をつけていたのだが、自分の顔が信じられないという表情になるのがわかった。Porta Tube の 3.5mm ジャックに伸ばした手は、何十種類ものアンプに何百回となくプラグを刺しこんだものだ。その手も、昔は一刻も早く音を聴きたくて、震えていた。んが、その日は別に特別な日ではなかったし、目の前のアンプに大いに期待してもいなかった。Tube+ も他のアンプと変わるところはない。最初は背景ノイズのテストだ。指がヘッドフォン・ジャックにプラグを刺しこむ。ヴォリュームをゼロに下げる。スイッチを入れる。ノイズはない。適切な音量になるはずの位置まで回す。ノイズはない。ヴォリュームをいっぱいに回す。ようやくノイズが洩れてきた。だが、聞こえるか聞こえないか。たぶん、こりゃカレーのせいだ。

 それが今年の1月。

 それから約5ヶ月後。届いたばかりのアンプを机に置き、窓を閉めきったぼくは唸ってしまった。これだけの馬力を持つアンプとしては、Porta Tube+ のノイズはこれ以上小さくはできないだろう。音量ゼロの時のノイズとフル・ヴォリュームの時のノイズの差はごくごく小さい。というよりも、フルの時の Porta Tube+ のノイズは The National が4分の1の音量の時に出すノイズよりも小さい。こりゃあ、たいしたもんじゃないか。

 IEM 専用アンプなら、Porta Tube+ よりノイズの少ないものはいくらもある。だけど、そういうアンプで 600オームの DT880 のようなヘッドフォンを、耳がつぶれるくらいの音量で、いっさいの歪み無しに鳴らせるようなものはまずない。

 これがどれほどたいへんなことか、おわかりだろう。IEM ユーザは苦労している。HiSound が作った、あのピカピカのゴミと、ソニーがラインナップしているりっぱなウォークマンのなりそこないを除けば、ポータブルの MP3 プレーヤーのノイズはどれもごく小さいから、その音の質を上げるはずのポータブル・アンプのノイズの方が大きいのだ。Porta Tube+ も例外というわけではない。けれど、音量を最大にしたときですら、ノイズは驚くほど小さい。異常なくらいパワフルだが、これを IEM ユーザにも薦めるのは、何よりもそのためだ。

 日本では、Cypher Labs AlgoRhythm Solo か Fostex HP-P1 に外部 DAC、アンプ、それに場合によっては信号スプリッターまで重ねて持ち歩いているマニアがたくさんいる。そこに Porta Tube+ を入れているいかれた人間も少なくない。

 もちろん問題はノイズだけじゃない。ダイナミック・レンジはどうだろう。それに空間表現も大事だ。Porta Tube シリーズの中域と高域はすばらしい。明るく、張りがあって、奥行が深い。これまで聴いた中では、タイプに関係なく、こんな明晰なアンプは他にない。明るいといっても、ぎらついたところや刺さるようなところは皆無だ。どこまでも透明で、解像度も高い。楽器の分離もすばらしく、ことに中域、高域ではっきりしている。フルオケよりは小規模コンボの方が位置関係がよくわかる。どんなヘッドフォンと組み合わせても、一つひとつの楽器の位置が手にとるようにわかる。ただ、中低域から低域にかけて、ほんの少し、にごる。このにごりと真空管特有の歪みのおかげで、温かくやわらかい音になる。

 このアンプはエネルギッシュで明るいという一方で、これはまた人なつこい音でもある。音楽性のとても高いこの二つの特性が合わさって、GoVibe Porta Tube の音は蠱惑的といっていい。

 明るさというのは、真空管特有の歪みにもめげず、高域がはっきりくっきりしている、というのが一番あたっているだろう。どんなイヤフォン、ヘッドフォンを刺しても、聞こえてくる音は実にきれいだ。高域を削ってしまうような信号やノイズをぼくは嫌いだというのは、このサイトをお読みの方はご存知と思うが、ぼくはとにかく高域に弱い。そのぼくにとっては、中域から高域へのつながりが完璧ということで、Porta Tube+ に比べられるものはなかなかない。マッシヴ・アタックの〈I Spy〉でのシンバルは、微妙な綾まで生々しい。音像は正確だ。頭の前方から出て、ゆっくりと包みこみ、後ろへ抜けるが、遠すぎもしない。つまり、中くらいの広さの部屋で、きちんとセッティングしたスピーカーで聴いている具合だ。焦点はスピーカーのドライバーにぴったり合っている。けれど、壁や家具からの微妙な反射が忍びこんで、ごく自然に硬いところがほぐれてるのだ。

 念のためくりかえすが、真空管特有の歪みと、中央にまとまって押し出してくる低域はむしろプラスに作用している。聞こえるのは、どこまでもなめらかで、ほんの少しやわらかく、気持ちよく伸びている音だ。インピーダンスの低いグラドでも完璧にドライブしてくれる。グラドでライヴの生々しさを感じとりたいと願っている向きは、Porta Tube をガイドに立てればまったく不満はなくなるだろう。ぼくのような、表情が豊かで音場の広い DT880 の大ファンにとっても、これはうれしい。DT880 はときどき高域がきいきいいうことがあるが、それがぐっと抑えられて、しかも他のアンプを通すよりもみずみずしくなる。デスクトップのシステムよりも官能的にすらなる。Porta Tube+ は、あまりに真空管真空管していないからだ。

 オーディオにはまりこんで20年になるが、その間に聴いたうちでは、Wood Audio WA3+ が、一番真空管らしい音のヘッドフォン・アンプだった。人なつこさではとびぬけているが、代償も大きい。持っているうちで、これで聴きたいと思うヘッドフォンは半分もない。Porta Tube はそれとはまるで正反対だが、良質の真空管アンプのやわらかい音は健在だ。

 音楽にもどろう。Protection のタイトル・トラック〈Protection〉では、低域ど真ん中のベースが重く正面に立ち、ドラム・マシンがシンプルにきざみ、まるで気のない女性ヴォーカルがのる。その後のトラックはどれも同じように始まるが、男性ヴォーカルが加わり、ベース・ラインはさらに重く低くなる。今度は気合いのこもった、コクのある女性ヴォーカルがゆっくりと入る。ジャズか、マッシヴ・アタックがプロデュースしているようで、リスナーはその魔法から逃れられない。これは、前にも書いたにごりのおかげだろうか。だとしても、それだけではなさそうだ。原因はもうどうでもいい。DT880 と組合せても、CK10 と組合せても、K701 が相手であってすら、Porta Tube はこの録音が秘めている艶をあますところなく描きだす。

 上にあげたのはどれもハイエンド・モデルだ。Sennheiser HD650、HD600、Fischer Audio FA-002W といった中堅どころも、Porta Tube に組み合わせる次点候補にちょうど良いだろう。これが高域のディテールを完璧に再現してくれることはもう一度念を押しておくが、その音はソリッドステートのアンプに比べれば、ほんの少しやわらかい。それをにごりと言うか、歪みと言うかは微妙なところだ。今あげた中堅モデルもこのアンプとよく合うだろう。ただし、これらのヘッドフォンのもつ、やや暗い、囲いこむような性格がいくらか強く出ることもあるかもしれない。

 このアンプには人を中毒にさせるところがあるから、一番のお気に入りのヘッドフォンでじっくり試聴されることを薦める。2、3分でも聴けば、いや2、3時間でもいいが、聴いてしまえば、この青くてかわいいやつを抱え、財布の方はだいぶ軽くなって店を出ることになるのは、まず確実だ。それだけの価値はある。


グラフについてのおことわり
 このレヴューにつけた RMAA のグラフには、iPod touch につないで、Beyerdynamic DT880 と Earsonics SM2 を鳴らした際の違いがあらわれている。ぼくの手許の装置で測っているから、他の装置で測ったデータと直接比べても意味はない。このデータはアンプのヘッドフォンやスピーカーのドライブ能力を示している。


周波数特性
 どんなヘッドフォンをもってきても、Porta Tube/+ は高いレベルの解像度で鳴らす。SM2 は質の劣るアンプだとありとあらゆる形の歪みを聴かせてくれるが、Porta Tube では何の悪さもできない。低域と高域の端が少し落ちているのがおわかりだろうが、これは元々の音楽信号がそうなっているので、アンプのせいではない。Porta Tube のせいで現われるような小さなレベル(-1.5dB)は、犬の耳でも持っていないかぎり、わからないはずだ。

負荷ノイズとダイナミック・レンジ
 Porta Tube+ のダイナミック・レンジは 90.5 dB で、CDクオリティに 6dB 足りない。ノイズ・レベルは −90.5 dB で、やはりCDレベルに届かないにしても、これはひじょうにクリーンだ。なんといっても真空管アンプなので、一筋縄ではいかない歪みとノイズが真空管の魅力を生んでいるのだ。

  真空管アンプのメリットのひとつはここにある。それで得られるのは安定した、気持ちの良い歪みで、しかも音源には左右されない。この歪みはやわらかいとか、心地良いと呼ばれることが多い。どちらもその通りとは思うけれど、Woo Audio 3 の場合とはわけがちがう。GoVibe Porta Tube の音は普通のアンプにずっと近く、ソリッドだ。入力でも出力でも歪みははるかに小さい。それでもリングはあるし、かわいらしいしみもあちこちにある。真空管の常として IMD も THD も高い。

スケーリング
 Porta Tube+ は VestAmp+ と同じ規則にしたがう。USB 入力からの信号が一番小さい。ポータブル音源からのライン入力は USB より大きい。デスクトップまたは AlgoRhythm Solo のような質の高いポータブルからの入力が一番大きく、ノイズも少なくなる。

 このアンプの増幅率はとてもいい。DT880 600Ω のようなヘッドフォンでも、入力がしっかりしてゲインが低いから、フェーズエラーはほとんど起こさない。ハイ・ゲインにするとフェーズエラーは増えるが、増えるのはとんでもなく大きくて危険な音量での話で、そんな音量で聞こうという人はいないはずだ。Porta Tube はパワーの塊だと言えば十分だろう。ALO の National とならんで、デスクトップのアンプとまったく遜色ない。

DAC として使う
 ここ2、3年、USB オンリーの DAC が花盛りだが、ぼくはあまり好きではない。ひとつには USB DAC ユニットの実装がライン入力のそれに比べると劣るからだ。実際、Porta Tube+ はライン入力の時に最高の力を発揮する。チャンネル・セパレーションも良くなり、ノイズ・フロアも低く、ダイナミック・レンジも広くなる。

 とはいえ、コンピュータとつなぐときには威力を発揮する。いやらしい USB ノイズはまったく聞こえない。プラグ&プレイも問題なく、MacBook Pro につないだとたんに認識される。USB モードでは、デスクトップを音源にする時より出力がかなり低くなる。IEM ユーザーにはグッドニュースだ。もっとも出力が低くなるとはいっても、これまでつないだヘッドフォンでパワーが足りないなんてものはひとつもない。

 面白いことに、USB 入力とライン入力は同時に使うことができる。ということはライン入力と USB 経由の音楽信号は Porta Tube+ 内部を平行して流れ、、同時に出力されているわけだ。どちらかだけを聴く時は、使わない方のソースは忘れずに抜いておこう。

iPad で使う
 Porta Tube+ を iPad 用 USB DAC として使うこともできる。ただ、ぱっとみて使い方がわかるというわけではない。iPad の USB から出力される電圧では Porta Tube+ 内蔵の DAC を動かすには足らない。これは内蔵バッテリーで動いているわけではないからだ。DAC を動かすには Porta Tube+ 付属の電源アダプタをつなぎ、 iPad をカメラ接続キットにつないでから Porta Tube+ につなぐ。つなげばすぐに使えるし、音も他と変わらずにいい。ただ、ポータブルにはならない。

 Porta Tube+ はデスクトップと言ってもいいくらいのものだから、携帯できないことはそう大きな問題ではないだろう。ただ、純粋なバッテリー駆動でクリーンな音が欲しい場合には、iPad では無理だ。ノートでは Porta Tube+ は電源につながなくても使える。

ポータブル・アンプとして使う
 正直言って Porta Tube/+ は相当に重い部類のアンプだ。かさばって、重くて、しかも熱くなる。それでもカーゴジーンズもあるし、アンプ・バッグも、肩掛けかばんもある。内蔵バッテリーは7〜10時間もつということは、このアンプさえ持っていれば、日中はだいたい用が足りるわけだ。おまけに背景ノイズは低くて、ヴォリューム・ノブのバランスもとれているとなると、能率のよいイヤフォンがあればばっちり、ということだ。

 実際、SM2 を鳴らしても、DT880 を鳴らしても、歪みや IMD は変わらない。何を刺しても、聞こえる音は同じだ。これができるアンプはめったにあるもんじゃない。Porta Tube+ は合わせるイヤフォンを選ばない。こいつはちょっとしたもんだぜ。

 少しばかり重くなることがイヤでなければ、ポータブル・オーディオとしては Porta Tube 以上のものはない。


結論
 ALO と Vorzuge という手強い競争相手はいるが、ポータブル・アンプとしてぼくは Porta Tube+ を選ぶ。闊達で人なつこいサウンドは、たいていのヘッドフォンと完璧なペアになるし、明るくてディテールを追及するタイプのヘッドフォンと組み合わせると、特に騒ぐこともなく、その実力を十二分に引き出してくれる。ご開帳ビデオで Jaben がグランプリをとることはないだろうが、連中はそれを目的にしているわけじゃない。目的を絞って、かれらはホンモノの、世界でもトップクラスのヘッドフォン・アンプ/DAC を生み出してみせた。見る目のあるオーディオ・マニアなら、これに目を丸くしないやつはいないにちがいない。


プラス
*とんでもなくパワフル
*すばらしく細かいディテール、やわらかいサウンド
*イヤフォンを選ばない
*色が美しい
*つなぐ装置をグレードアップすれば、それだけ良くなる

マイナス
*いただけない仕上げ
*無理難題な警告
*スペック、アクセサリー、マニュアルいっさいなし


 ということで、ご注文はこちらへどうぞ。

ヘッドフォン祭の記事でも書いたように、GoVibe Porta Tube と Porta Tube+ では、内部のジャンパ・スイッチによってゲインを下げることが可能です。

    
    その方法を Jaben のウィルソンおやじから教わりました。
    
    「危ないから開けるな」とわざわざ印刷してあるくらいですから、感電などならさぬよう、よくよくご注意のほどを。開けただけで保証がなくなるとは思えませんが、自己責任ということでお願いします。
    
    
    まず必要な道具ですが、トルクスのドライバーです。サイズは T6 です。トルクスは登録商標の由で、自転車方面などではヘックスとか、アレン・キーとか呼ばれているそうです。Mac で内蔵ハード・ディスクの交換をしたことがある方は使われたと思います。ホーム・センターなどで手に入ります。ヘッドフォン祭の会場では Jaben は先端が交換できる方式のものを使ってました。
   
    前後のパネルを止めている四隅のネジをゆるめて抜き、パネルをはずします。
    
    ヴォリューム・ノブが邪魔でしたら、ネジをゆるめるとはずれます。
    
    後ろからプリント基盤を押して、基盤を前に出します。すると真空管のうしろにジャンパ・スイッチが見えてきます。
   
    下の写真では真空管と緑色のバッテリの間、赤い素子の上に見えます。
   


IMG-20111105-00352

    
    Porta Tube と Porta Tube+ では、ジャンパ・スイッチの位置は同じですが、向きが違います。
    
    ゲインを下げるには、

    Porta Tube ではジャンパを右に移します。
    
    Porta Tube+ ではジャンパを下に移します。


PortaTube Low Gain Setting

    
    スペックとしては 6dB 下がるそうです。
   
   
    お楽しみを。(ゆ)

13時過ぎに会場に着いたら、エレヴェーターの中でウィルソンおやじにばったり。そのままブースに引っぱっていかれて、結局18時半のクローズまでつきあうことになりました。挨拶と試聴だけで帰るつもりだったんですが、会場の熱気にあてられたか、結構元気をいただいて、会場にいる間は楽しかったです。が、家に帰りついたらほとんど寝床に直行。やはり大勢の人と話すのはくたびれます。ブースで素人の相手をしてくださった皆さまには御礼申し上げます。ありがとうございました。
    
    今回は前回の Porta Tube のようなセンセーションはありませんでしたが、新製品ではやはり平たい GoVibe Vest が人気でした。DAC 付きと無しとあり、やはり音が違うようですが、ありが良いという方、無いが良いという方、双方がいらしたのは面白かったです。DAC は 24/192 まで対応で、価格は DAC 付で3万以下ですから、結構お買い得ではないかと思います。
    
    Porta Tube ユーザの方も結構いらして、人気の高さを実感しました。Porta Tube+ は DAC を付けた他、アンプ部は Porta Tube とまったく同じだそうですが、ただゲインを下げているそうです。プラスの方が音が良いと思われる(ぼくだけではなく、何人かいらっしゃいました。)のはそのせいでしょうか。
    
    プラスでは、中を開けてジャンパ・スイッチを切り替えることでさらにゲインを下げられます。では Porta Tube はどうしようもないのかというとさにあらず。このジャンパ・スイッチはすでに搭載されているので、Porta Tube もこれを切り替えることでゲインを下げられます。その方法は別記事に書く予定。
    
    本体には、危ないから開けるな、と書いてありますが、ブースでも開けた状態の Porta Tube を展示してあったくらいですので、開けたら保証がなくなるというものでもないでしょう。
    
    ACS の新製品 T15 も、気軽に使えて音が良いというので、なかなか人気でした。ER4 と比べられますが、あちらは「音」を聴く装置、これは「音楽」を聴くツール、とおっしゃった方がいて、なるほど、と思いました。ウィルソンおやじによれば、国内での正式発売が決まったそうです。めでたい。
    
    イヤフォンではもう一つ、5ドライバのIEMの試作品も持ってきていました。後半はどこか切れるかしたか、調子が悪かったようですが、午後のはじめに試聴された方には好評でした。ドライバの構成は2ベース、1ミドル、2ハイの由。
    
    なお、今回展示してあったものは Porta Tube と Porta Tube+ を除き、どれもまだ試作品段階で、これから細かい調整をするそうです。それでも来月には発売とのことで、国内に入ってくるのは来月後半から12月はじめぐらいでしょうか。
    
    Porta Tube+ だけはすでに発売になっており、国内でももうすぐ発売になるそうです。価格は Porta Tube の150USDプラスとのことですから、6万円代半ばというところでしょう。DAC だけで150ドルというのはやはり結構良いものを使っていると思われ、実際、ウィルソンおやじの MacBook Air で試聴された方には好評でした。
    
HippoPipe    個人的には Hippo Pipe が今回のヒット。たぶん世界最小のヘッドフォン・アンプ。E3 のようにイヤフォン・ジャックから直接つないで、プレーヤー側で音量調節します。すでに発売されている Hippo Box+ と同じ傾向の、元気の良い音で、聴いて楽しくなります。ハイレゾ音源をどうとかでなく、ヘッドフォン・アンプの入門とか、iPod Shuffle などでMP3音源を気軽に聴くにはもってこいでしょう。

    もう一つ、英国のメーカー JustAudio という、A級動作のヘッドフォン・アンプもウィルソンおやじが持ちこんでました。写真はフジヤさんのブログにあります。大きい方はイヤフォン/ヘッドフォンのインピーダンス切替ダイアル付き。 Porta Tube よりもデカくて、重さも同じくらいという、ポータブルとしてぎりぎり限界ではないかと思われるものですが、ブースに来られたなかに3人、これを持っている方がいました。国内では未発売なので、直接に買われたもの。中のおひとりはシリアル番号が2番というツワモノでした。ちょっと聞いたかぎりでは小さい方がきびきびした音で買うならこちらかなと思いましたが、じっくり聴きたいものであります。

        体力が無いこともあって、会場を回ることもしなかったのですが、ウィルソンおやじが引っぱってきてくれた音茶楽さんの「革命的」イヤフォン、フジヤさんのブログで紹介されていたアレをちょっと聴かせていただきました。これは凄いですね。とてもイヤフォンとは思えない。こういう音がスタンダードになれば、音楽の聴き方もまた変わるのでは、と思ってしまいました。ぜひ量産化していただきたいものです。応援します。
    
    女性のお客さんはやはり少なくて、来場者が増えたこともあるのか、10対1ぐらいに見えました。たいていはカップルで、単独で来られていた方はごく稀でした。一人、カスタムIEMの交換ケーブルを探しにこられた方がいました。
    
    放射能にもかかわらず、今回はこれまでになく外国からのお客さんが目につきました。出展側ではなく、ほんとうのお客の方です。Head-Fi 関係からも主催者はじめ幹部が何人も「遊び」に来ていたそうで、Moon Audio の主催者もいました。大陸や台湾からはこれまでにも出展者の他にプレス関係が来ていましたけど、アジアからのお客さんは、見分けがつかないこともありますが、どうなんでしょう。
    
    これでぼくが見たのは4回目ですが、お客さんの「濃度」がだんだん濃くなる気がします。フルサイズのヘッドフォンをジュラルミン(?)のケースに入れて持ち歩いてる方もいましたし、カスタムIEM はもうデフォルト、接続コードもそれぞれに凝って、と感心するばかり。
    
    イベント全体としても、最先端を示すことはもちろん意味がありますが、たとえばこれからヘッドフォンやイヤフォンをアップグレードしたいという人や、DAC やポータブル・アンプを買おうという方が来ても、何がどうなっているのか、まるでわからないのではないか、とも思いました。
    
    来年の春の次回ヘッドフォン祭には、放射能ももう少し収まって、こちらの体力ももう少し回復して、楽しめますように。(ゆ)

今日のヘッドフォン祭ですが、先週の抗がん剤投与の後遺症がまだ尾を引いています。Jaben のブースで MacBook Pro を持ちこんで GoVibe Porta Tube+ の DAC の試聴ができるようにする予定でしたが、体力が保ちそうにありません。楽しみにされていた方がいれば申しわけないのですが、それは無しにさせてください。
    
    ぼくがいなくても、Porta Tube+ 単体の試聴や ACS T15 の試聴はできるはずです。T15 は他でも試聴できるかもしれません。これはほんとうに凄いです。一聴の価値はあります。というより、必聴でしょう。他にもいろいろ面白そうな製品があります。
    
    お楽しみを。(ゆ)

Jaben のウィルソンおやじが今週末のヘッドフォン祭に持ってくる新製品はまだある模様。たとえばこれ。

jaben111021



























    E7キラー、ですかね。写真だけで詳細不明。Jaben のブースで試聴できるはず。
    
    FiiO も新製品が次々出ますなあ。オヤイデさんもたいへんでしょうけど、国内でもどんどん出してほしい。(ゆ)

ぼくが受けている Folfox という化学療法は本来は2週間に1度、つまり1週間おきに点滴を受けます。そうすると9回目ぐらいになると手足の痺れが耐えられなくなり、メニューを変更する由。ぼくは3週間おきという、ゆるいスケジュールもあって、当初のメニューで「順調」に進んでいます。前回から処方された、痺れをとる漢方薬も比較的効果があり、痺れの方はそうきつくならず、手足の指先に留まっています。こういうものにも人間は慣れることができるらしい。痺れは常にありますが、気にしないようにすれば一時的ですが忘れることもできます。
    
    それでも回数が重なってくると薬が蓄積されてきて、副作用も強くなるようです。今回は吐き気が来ました。
    
    点滴を受けはじめる水曜日の朝から3日間、イメンドという吐き気止めの薬を飲み、また点滴の最初に投与されるのは吐き気止めの薬です。そのおかげもあって、これまではせいぜい病院の食事を食べる気になれないくらいでした。
    
    今回は2日めの木曜あたりから軽いものではありますが明確な吐き気が出て、土曜日までそれが続きました。病院では食慾はまったくありませんでした。食事が出るとほとんど無理矢理食べものを口に入れます。すると腹は空いているので、食べはじめると結局勢いで全部食べてしまいます。病院食ですから量も多くはありません。それでも3日め金曜の朝食、点滴入院中病院でとる最後の食事ですが、口に入れるには「努力」が要りました。
    
    日曜日には空腹時には吐き気は感じなくなりましたが、腹に食物が入ると吐き気まではいかない不快感が出てきます。
    
    また、退院してから出てくるダルさもこれまでになく重いものでした。倦怠感と書くとこの重みが抜けおちる気がします。
    
    帰宅後は好きなものを食べられるわけですが、塩味の強いもの、酸味のあるものが食べたくなります。漬物などが嬉しいので、白菜のゆず漬けなど、一袋買ってきて1度に食べてしまったりします。醤油味の煎餅も、もともと好物ですが、無性に食べたくなる。今回は思いきって寿司を食べてみました。寿司飯の酸味がありがたかったです。
    
    今日で点滴開始1週間ですが、まだ入院前の状態にはほど遠い感じです。3日間飲むイメンドはそれによって1週間効果が続くそうですから、明日あたりは不快感も軽くなってくれるかと期待。
    
    病院ではほとんど眠っていました。眠ろうとするといくらでも眠れます。また水曜日の夜はトイレに起きるごとにその後1時間ぐらいは眠れないので、木曜日の昼間は眠い。この点滴には利尿剤も入っているそうですし、またイメンドが便秘を引き起こすので水分をなるべく多くとるようにしていますから、尿の量はハンパでなく増えます。多い時には30分ごとにトイレに通います。夜間も21時の消灯から朝6時の検温・血圧測定までの間に、最低2回、たいていは3回トイレに起きます。24時間に出る尿の量も計ります。ぼくの場合、これまでのところ4,000cc前後。
    
    それでもさすがに眠くないときもあるので、そういう時には持っていった ACS T15 + GoVibe Porta Tune+ で音楽を聴いていました。これはまことにありがたかった。
    
    この組合せはたまたま手元にそろったので試してみたわけですが、どんぴしゃにはまりました。詳しくは別に書くつもりですが、もともときわめて高い T15 の性能が Porta Tube+ で文字通り増幅されて、楽園に浮かんでいる気分。音楽が鳴っている間だけは何もかも忘れて没入できました。
    
    T15 はサウンドステージがとんでもなく広くてステージというよりスペースと呼びたくなるほどである上に、分解能が高いというのでしょうか、ディテールがそれぞれ適切なヴォリュームで明瞭に聞こえます。フルオケのマッスになっても、フルートのような楽器の音も埋もれることがありません。一つひとつの音に芯があります。
    
    またヴォーカルの表現が精密で、録音によってはうたい手の唇だけでなく、舌の動きまで見える気がします。コーラスでは一人ひとりのうたい手の声がはっきり聞こえるまま、しっかりハモっています。しかもハイレゾでなく、MP3音源でも変わりません。Jaben のウィルソンおやじは「オーディオの救世主」と呼んでいますが、そう呼びたくなる気持ちもわかります。
    
    今週末のヘッドフォン祭では試聴機も用意されるとのことなので、ぜひぜひお試しあれ。
    
    久しぶりにジョン・ドイルのソロ・ファースト《Evening Comes Early》を聴きましたが、ジョンのギターがいかに緻密か、あらためて脱帽しました。それに、ジョンとカラン・ケーシィのハーモニーの妙。
    
    新発見では Mamia Cherif という人の最新作《Jazzarab》が面白い。この人はパリ在住のシンガーですが、出身はマグレブらしい。ここではタイトル通り、ジャズのコンヴェンショナルな語法を守りながら、アラブ音楽の風味を加えています。〈My favourite things〉をアラビア語でうたったり、〈Afro blue〉にアラビア語の歌詞を付けたりしていて、これも面白いですが、ギターの代わりのウード、それにアラブ的フレーズを展開するヴァイオリンが良い味。同時にジャズの本流に従うピアノもよくうたっています。
    
    音質と音楽自体の良し悪しは比例しませんが、良い音で聴くとやはりいろいろと発見があり、新たな体験ができます。何よりそれはそれは気持ち良くなります。背筋を感動の戦慄が走りぬけるたびに免疫力が上がる気がします。
    
    今週末のヘッドフォン祭までにはなんとか回復したいところ。同じく週末の下北沢の音樂夜話特別イベントも気になりますが、先週の経験からも、連チャンは無理でありましょう。(ゆ)

今月末のヘッドフォン祭にはまた Jaben のウィルソンおやじがやって来ます。毎回、新製品をたくさん持ってきますが、今回はまた一段と多彩です。どれがどれだか、わかりにくくなるので、整理しておきます。ただ、まだあまり情報が無いので、濃淡のある紹介になるでしょう。それと価格もまだわかりません。
    
    新製品の写真はここにまとめられています。

    これは Jaben のオーストラリア支社がアメリカのロッキー・マウンテン・オーディオ・フェスティヴァルに出品するもの。RMAF はちょうど今開催されているところです。ここ数年、各社が力を入れている新製品を披露するので注目が高まってるようですね。
    
    新製品はいずれも GoVibe のブランドで、全部で5機種あります。
    
    GoVibe Vest
    GoVibe Volante
    GoVibe mini U-DAC
    GoVibe mini box amp
    GoVibe Porta Tube+
    
    まず、Vest は御覧のように平たいアンプで DAC 付きと無しと出るそうです。DAC は 24bit/192KHz までのもの。全体としてはシンプルに出入力とヴォリューム・ダイアルだけ。今回出るものはどれもそうですが、ゲイン切替とか、ベース・ブーストとかは付いてません。それだけ、音に自信があるとも言えます。
   
    次の Volante は小型のデスクトップ真空管アンプ。名前はサッカーの「ボランチ」と同じですが、もともとは音楽用語で「あまかけるように速く軽やかに」という意味。そういう音は聴いてみたい。
    
    形もキュートで、ちょっとオーディオ・デバイスらしくないですね。これでパステルかメタリック調のカラー・ヴァリエーションが出たら、人気が出るんじゃないでしょうか(^_-)。
    
    真空管を使ったものは Jaben では Porta Tube が最初ですが、あの出来栄えの見事さからすると、このデスクトップも音の面でも大いに期待できます。
    
    U-DAC は DenDAC と同じく、USB端子付きのDAC兼アンプです。DenDAC は音は良いですが、ハイレゾ対応していないし、プレーヤーによって合わないものが出てきているので、これに替わるものができないかと頼んだらほんとに作ってくれました。詳細はまだわかりませんが、少なくとも 24/96 までの対応ではあるはず。
    
    mini box amp は FiiO E3 と同じ形ですが、リチウム電池内蔵で、聴いた人間は皆 E3 より音が良いと言ってるよ、とはおやじの言。造りもよりかっちりしています。
       
    一番下の Porta Tube+。これが今回の一番の目玉でしょう。Porta Tube にDACが付きました。チップはテキサス・インスツルメント製ですが、それ以上詳しいことはわからず。24/96までの対応です。
    
    実は先日からサンプルを聴かせてもらってますが、これが単純に Porta Tube にDACを付けただけではありません。
    
    一つはゲイン切替が可能になりました。ただし、中を開けてジャンパ・スイッチで行います。音量を6dB下げることができます。
    
    そしてもう一つ。アンプ自体がアップグレードされてます。これは聴けばすぐわかるくらい、音が良くなってます。サウンドステージがさらに広く深くなり、音の分離がさらにクリアに自然になり、とにかく全体的にブラッシュアップされてます。
    
    Porta Tube だけを聴くと、もう十分なくらい良質の音で音楽に没頭できます。これも質は相当高いでしょう。お披露目した前回のヘッドフォン祭の会場でも iQube より上という声もありました。iQuebe は一度アキバのダイナで試聴したことがあるだけですが、その記憶は鮮烈に残っています。その記憶に比べても、Porta Tube は優に肩を並べるか、場合によっては、つまり聴く音楽によっては凌ぐと思ってました。
    
    Porta Tube+ は、それをあっさり超えてると思います。iQube には独得の艶、エロティックと言いたくなる艶があって、蠱惑的とも言えますが、時にそれが鼻につく、というか耳につくことがありました。Porta Tube+ はそういう艶はなく、音源に入っているものに「何も足さず、何も引かず」にそのまま出してきます。その出し方の質感が絶妙なのです。無色透明にかぎりなく近い。完全に無色透明ではないですが。
    
    各社の製品と比べたわけではないですし、iQube も新版が出ますが、ぼくはもうこれ以上他には何も要らん、という気持ちです。
    
    外観も変更になって、フロントとエンドのパネルはシルバー、ヴォリューム・ダイアルは黒、本体はブルーです。このブルーは Vulcan+ のものと同じ、群青色に近い色。それと、本体上側の通気孔のあいている部分は、Porta Tube では一段低くなっていましたが、+ では他と同じ平面です。USB入力はミニ・ジャックで、背面にあります。その他はサイズも含めて変更無し。
    
    細かいことですが、ぼくの使っている Porta Tube のヴォリュームはやや軽すぎるところがありました。個体の問題かもしれません。Porta Tube+ のヴォリュームは適度に重く、調節がしやすいです。
    
    せっかくですので、MacBook Pro を持ち込んで、会場でDACも含めた試聴ができるようにする予定です。ハイレゾ音源も少しですが、用意します。(ゆ)

午後1時過ぎに会場に到着。まっすぐ Jaben のブースに行き、結局それからクロージングまでほとんどそこに居座っていました。トイレに行った折りに会場をひと回りしましたが、あまりのお客さんの多さに、どこのブースにも寄る気が失せました。昨年秋は台風直撃もありましたが、今回はその倍は優に入っていたんじゃないでしょうか。
    
    Jaben のブースに来られたお客さんの一人もおっしゃってましたが、あれだけいろいろ沢山のものがあると、単純に聞き比べていては、どれがどれだか、わやくちゃになりそうです。自分が好きな音、聞きたい音もわからなくなるんじゃないか。
    
    今、どういうものが出ているのか、ひとわたり見渡すにはいいかもしれませんが、ある製品をじっくり納得できるまで試聴するのはちょと無理でしょう。Head-Fi のフェスティヴァルのように、ホテルを会場にして2日間かけると、たとえば夜の間に腰をおちつけて試聴するとか、ゆっくり話をするとかする余裕ができるのではないかとも思いました。あれだけの規模になるとなかなか難しいかもしれませんけど。
    
    今回もウィルソンおやじはいろいろ面白いものを持ってきていました。Hippo Box+ はあいかわらず人気で、値段を聞いてびっくりされている方も結構いました。黒の他に赤とシルバーもあります。
    
    出たばかりの GoVibe Vulcan+ と Vulcan++ も人気でした。++は USB DAC 付き。もうすぐ国内販売も始まるそうです。これも見本は黒でしたが、シルバーとブルーがあります。ブルーはなかなか品の良い色で、シンガポールでは品切れになるくらいの人気だそうな。
    
    GoVibe では USB> S/PDIF コンバータの Xvert と Mini USB DAC もあります。Xvert は24Bit/96KHz まで。サイズは70×45×25ミリ。入力はUSB B で、出力は同軸と光。Mini DAC のサイズは64×25×12ミリで、片方に USB mini B ジャック、反対側にミニ・ヘッドフォン・ジャック。
    
    Mac は標準で光出力が付いているので、Xvert はちょっと使い道がわかりません。標準の出力とはまた音が違うのか。ウインドウズ用かな。
    
    ケーブルではピッコリーノの Mini to Mini、HD800用と UE/Westone/JH 用の交換ケーブルも出してました。これは近々、国内販売開始される由。
    
    とはいえ、センセーションといっていいほどの一番人気はポータブル真空管アンプです。昨年春に試作機を持ってきていたんですが、秋にはあれはまだ時間がかかるよ、と言っていたもの。これが何ともすばらしい。
    
    もちろんハイブリッドですが、真空管のメリットが最大限活かされてるんじゃないかと思います。生楽器、とりわけピアノとかギター、そしてヴォーカルの生々しさ。さらには広大かつ隅々まで見通しがよく立体的な空間表現。お客さんの一人がおっしゃってましたが、ポータブルの域は超えてしまっていると言ってもおかしくはありません。iQube より上だという声もありました。
    
    ロック系を聞かれているという方もこれは良い、とおっしゃってましたから、ジャズやワールド・ミュージックやクラシック向けというわけでもないでしょう。
    
    とにかく試聴された方の9割以上が、これは買いたい、または買うと宣言されたのには正直驚きました。1度ならず、3度もどってこられてじっと聞きこんだ方。予約したい、国内扱いはないのかと迫る方。いつまでも聞きたくなるとなかなか手放さない方。これはもう、扱うしかないでしょう>フジヤさん(^_-)。
    
    サイズと重さはポータブルとして持てるぎりぎりですけど、それはやむをえないところ。造りはがっちりしていて、これまでポータブル真空管アンプのネックだった、ケースを叩くと真空管が共鳴するノイズも皆無。また、一日中入れ替わり立ち替わり試聴されていましたが、ケースが熱くなることはありませんでした。もっとも真空管の上には穴があいていて、これをふさぐと危いでしょうね。
    
    ゲイン切替もなく、パワー・スイッチと出入力のジャックのみ。入力はアナログ。出力はミニ・ジャックとは別に標準サイズも付いています。電池は内蔵リチウム充電池で、1回の充電で10時間使用可能。真空管のローリングはできませんが、不良品や壊れた場合にはむろん交換可能で、真空管も Jaben から供給されます。
    
    予価は600USD。GoVibe シリーズのひとつで、まだ正式名称も決まっていませんが、来月末までには出ます。
    
    それと、GoVibe Magnum の電池問題ですが、今回はサンヨーのアルカリ9Vで鳴らしてました。Magnum 自体の充電機能にこだわらないかぎり、どんな電池でもいいようです。Magnum もカラー・ヴァリエーションが増えていて、赤もチャーミングですね。
    
    もうひとつ、これも近々国内販売が始まる ACS のカスタム IEM。ACS はイングランドのメーカーで、ひじょうに柔らかいシリコンを使っているもの。40ショアというシリコンだそうで、たしかに押し込んでも圧迫感などはまったくありません。出していたのは3ドライバーの T1 というトップ・モデルで、これもすばらしい。価格も700GBP弱。

    
    お隣りはささきさんの Music To Go で、こちらもこれから出るという HE-500 をちょっと聞かせていただきました。むろんご自慢のシステムでの高音質音源。別世界ですねえ、これはまた。ヘッドフォンで聞いてる感じではないです。スピーカーのレゾン・デートルが問われるんじゃないか。ヘッドフォンの欠点とよく言われる脳内定位もどこかに吹っ飛びます。
    
    あと、ヴェトナム製というイヤフォンもいい音してました。Yuin の PK シリーズに似た音で、あれより安いらしい。
    
    お客さんはあいかわらず若くて、20代後半から30代前半がメインかな。もう少し若かったかも。40代以上と見える方もぼつぼつおられたのは、同志ここにあり、という感じで嬉しかったです。
    
    そうそう、若い方で真空管アンプを聞くのは初めてという方も結構いらしたのかもしれません。真空管は音が「暖かい」とか「焦点がぼける」とか言われることもありますが、今の真空管アンプ特にヘッドフォン・アンプは、トランジスタとのハイブリッドが普通で、むしろ音はクールでクリアです。もともと信号処理のスピードではトランジスタは真空管の敵ではありませんから、ハイブリッドの方が全部ソリッドステートよりも格段にハイスピードです。
    
    真空管は古い技術ですけど、真空管自体が無くなることはないですし、デジタル時代でもっといろいろな可能性が開けてるんじゃないでしょうか。少なくとも今回の Jaben のポータブル真空管アンプを聞くかぎり、他からもいろいろ面白い製品が出てくるはず。
    
    
    他に印象に残ったのは AlgoRythm Solo 率の高さと、Corda Stepdance のユーザの方が数人いらしたこと。実はあれ、気になってるんだよなあ。
    
    ということで、ヘッドフォン、イヤフォンの世界はますます盛ん、復興の先頭に立って引っぱってる感じでした。関係者の方々、ご苦労さまでございました。
    
    唯一つ、もう少し女性のお客さんが増えてほしい。まあ、これは全世界的な傾向ではありますが。(ゆ)

    試聴用にお預りしていた Schemeclone Project のポータブル・ヘッドフォン・アンプのバーンインがようやくメーカー指定の100時間を超えました。強制的なバーンインはせず、ふつうに使っていって100時間を超えたところです。

    試聴といってもぼくの場合、日常的に音楽を聴くのに使うので、特に曲を決めて聞き比べるということはしていません。ただ、これを使いだしてから、よく音楽を聴くようになりました。バーンインをしていたこの数ヶ月はここ数年で一番音楽を聞いているかもしれません。旧譜やすでに散々聴いた音源でも、これで聴いたらどうだろうと聴きたくなるのです。
   
    iPod で聴くのは散歩しながらが一番多いので、このアンプで聴くために、この暑い夏も結構散歩をしていたくらいです。涼しかった7月より暑かった8月の方が散歩の歩数合計が多いにのは我ながら驚きました。
   
    このアンプは初めからかなり良い音で鳴ってくれますが、バーンインが進むにつれて、だんだん音が良くなってくるのがよくわかります。それがまた楽しい。50時間を超えると一段と音楽に艶が出る感じで、8月に聴く時間が増えたのはそのためでしょう。
   
    そう、このアンプの長所を一言で表そうとすると、たぶん、音楽に艶が出る、というのが一番近いと思います。音に艶が出るのではなくて、音楽がより艶やかになるのです。コクが深くもなります。より深く味わえるようになる。聞こえなかった音が聞こえるようになるというのではなくて、聞こえていたけれども気がつかなかったディテールの綾、微妙なニュアンスにふと耳が導かれる。いや、さりげなくさしだされる、でしょうか。好きな音源はますます好きに、それほどでもなかった音源でも悪くないじゃないか、という風に。
   
    ソースは iPod touch 2nd Generation 32GB。ファイルは Apple Lossless, LAME-MP3(ビットレートは様々)。iPod との接続は AUDIOTRAK AT-iacS3 iPodオーディオケーブル3GS。3,000円以下ですが、さすがモガミでしょうか、CP は高いです。今のところ、上のクラスに換えたいという不満はありません。
   
    ところで国内で販売されているドック・ケーブルでこの上となると急に1万円をかなり超えて、中間がありません。不思議。海外のオンライン・ショップでは5,000〜10,000円のものも散見しますが。ポータブル・アンプを使えばドック・ケーブルは必須なはずで、これより安いオヤイデのものばかり売れてるんでしょうか。
   
    ヘッドフォンはオープンはアウトドア用に Yuin G2a、室内用は Sennheiser HD414。クローズドは EXH−313。Audio-technica ATH-A100Ti をベースにここが改造をほどこしたもの。

    現在のオーテクの音を受け付けないことはここでも書いてますが、このヘッドフォンは購入前に試聴して納得しました。こちらもエージングが100時間を超えたところで、まことにすばらしい音楽を聞かせてくれます。
   
    もっともこの UST すなわち Ultra Sound Technology がどういうものかは伝聴研の所長さんもうまく説明できないものではあります。実際に施工しているオーディオ・インテルはケーブルが得意だそうですので、内部配線の交換などが含まれるのでしょうが、それだけではない「おまじない」もいろいろ施されているらしい。また、この技術自体も完成しているわけではなく、今も改良を続けていて、今販売されているものは、初期のものからは進化しているそうです。
   
    とまれ、出てくる音はとてもオーテクのものとは思えない(笑)無理や誇張のない自然なもので、細部までの表現力も高いです。これまたちょっと他のものに換える気が起きません。
   
    イヤフォンは例によって BauXar EarPhone M + Comply P-100 slim。これは主に外出時にバスや電車などのノイズの多いところで聴くためです。それと今年のように暑い時は、フルサイズのヘッドフォンでは汗をかいてしまうので、クローズドの代わりに室内で使うこともあります。アンプのこれとの相性はまるでカスタム・メイドのようで、Comply のおかげもあるでしょうが、EarPhone M のレンジが二桁くらい広がった感じです。
   
    うちのヘッドフォン、イヤフォンはそれぞれに傾向が違うと思いますが、このアンプはどれもその能力を十二分に引き出してくれます。前にもちょっと書きましたが、ヘッドフォンやイヤフォン自体の限界がわかってしまうという感じにはなりません。この中で能力的に一番下なのは G2a でしょうが、これも良い相棒を得たと大喜びで鳴っているけしきです。この耳かけ式の能力の高さはこれまでも認めていたつもりでしたが、こんなに良い音を出せるのかと感心することが何度もありました。
   
    どうしてこれが国内販売されないのか、これまた不思議です。価格が安すぎるからでしょうか。G1a にすればさらに良くなるのでしょうが、すっかり耳になじんでしまって、こうなってくると、実売5,000円のこいつでどこまでの音が聴けるか、突きつめてみたくもなってきます。
   
    ノイズ・レベルは低く、背景は真黒。ですが、これはもう当然でしょう。
   
    バッテリーは 6P 1個。MAHA の230mAh、9.6V で約10時間。最初に入っていた充電不可のものはもう少し保ったかもしれません。たまたま手元には 6P タイプはこの MAHA しかなかったので、他は試していません。それにしても、日本のメーカーはどうしてこのクラスのものを出さないのでしょうねえ。皆8.4V、175とか190mAh ばかり。この頃は中国でも MAHA クラスのものを作っているのに。
   
    バッテリーが切れる時は急に音量が小さくなり、音が割れます。青のパイロット・ランプの光も弱まります。
   
    いわゆる周波数特性で言えばフラットだと思います。少なくともどこかを強調したり、補正したりしているようには聞こえません。下から上まで、ごく自然に広がっています。ぼくの聴く音楽はルーツ、ワールド系が多く、この方面の楽器にはダイナミック・レンジが半端でなく広いものがあり、音域も音の性格も多種多様ですが、どれもごくストレートに再生されます。
   
    ということは、相当にレスポンスが鋭敏で、ハイスピードなのでしょう。色付けもありません。
   
    デジタル音源の再生でいわゆる圧縮音源でもきちんと聞かせてくれることは良い装置の必要条件ですが、このアンプはその点でも最高レベルです。簡単に言うと、圧縮と非圧縮の違いがありません。いや、それは同じ音源を圧縮と非圧縮で聞き比べれば当然違いは出ます。ですが、別々の音源で片方が圧縮、もう片方が非圧縮だとしても、音楽を聴く上では差はありません。
   
    圧縮音源でも人間の耳からすれば、少なくともぼくの耳からすれば音楽を細部まで楽しむための十分な情報が入っていることは、すでに体験していました。このアンプはその情報を細大漏らさず、あらいざらい引き出してくれます。圧縮でも(ビットレート192kbps 以上という条件はつきますが)、元の録音の良い音源であれば、余韻や残響、あるいは雰囲気といった、「プラスα」の部分、音楽の本質とはずれるけれど、一歩踏みこんで音楽を楽しむには不可欠の部分もしっかり聞かせてくれます。特に空間表現に長けているのでしょう。クローズド・タイプのヘッドフォンやイヤフォンでも空間の解放感があります。オープンだとさらに広大なスペースが開けます。
   
    5月に試聴機をお預かりして、はじめは Linearossa W3 と並行して、取り替えながら聞いていたのですが、だんだん W3 の出番が減り、気がついてみるとこのアンプばかり聴くようになっていました。これはやはり W3 よりも RudiStor XJ-03 MkII あたりと聞き比べてみたいものです。
   
    思えば、iPod のような携帯プレーヤーで聴くかぎり、DAC は不要です。iPod にマジックテープでくっつけて使うようなポータブルのアンプに DAC を付けるのは蛇足の類でしょう。W3 の場合は準デスクトップとしての使い方を想定しているところもあります。さもなければ突起部分抜きで97ミリという本体の長さはないはず。光、同軸、USB という3系統の入力を備えるためでしょう。ポータブルはアンプに徹して、サイズをできるだけ小さく軽く、かつ音質を追求していただきたい。
   
    お預かりしたアンプは試作品で、販売する際には、充電機能を加え、筐体も設計しなおされるそうです。ただ、発売時期はまだ未定とのこと。想定価格は2万円を切る由。高いカネを払わないと良い音で聴けないというのはやはり困ったことで、この音がこの価格で出るのはグッド・ニュース。ポータブル・アンプ全体の質をまた一段と押し上げるのではと期待します。(ゆ)

    今年春のヘッドフォン祭でハイエンド・ダイナミック・ヘッドフォン Chroma MD1 を発表した RudiStor が今度はイヤフォンの新作とそれにマッチするポータブル・ヘッドフォン・アンプを発表していました。

    イヤフォン IMD3 はバランスド・アーマチュアではなく、ダイナミック型で、ドライバは15ミリ。インピーダンスは標準の32オーム、能率は112dB。

    形からするとドブルベそっくりですが、音はたぶん違うでしょう。ルディさんの作るアンプの音はごく自然で、無理に作ったところがなく、機械の音ではなく音楽に集中できるものです。ヘッドフォン祭の時に聞いた Chroma MD1 の音も同じ性格の音でしたから、IMD3 もその点では変わらないだろうと期待します。
   
    もっとも、ルディさんの本質というか、一番好きなのはやはりアンプ作りなので、IMD3 はイヤフォン単体というよりは XJ03 MkII の実力を発揮させるためのペアとして開発されたのではないかと思います。
   
    ルディさんはすでに Linearossa のブランド名でPHAは作っているので、これとはコンセプトが違うよということなんでしょう。値段も Linearossa W3 の倍で、しかもW3は光、同軸、USB の3系統の入力で DAC 付き。こちらはアナログ入力だけで、DAC も当然ありません。それだけアンプとしての「音」を煮詰めた、ということなのでしょう。
   
    サイズからしても、奥行はともかく、厚さ30ミリ、幅64ミリはポータブルとしてはちとふくらみすぎです。スイッチを入れると、前面のダイアルやネジの周辺が青く光るのも、ハイブリッドのヘッドフォン・アンプ NKK03 あらため RP3-d と同じです。これはたとえば iPod にくっつけて常時携帯して使うというよりは、持ち運びに便利な超小型のデスクトップ・アンプと考えた方が良いのかもしれません。同時に RudiStor サウンドの入門機にもなります。RudiStor の旧製品 NKK01-se の後継機というところか。
   
    もっとも、W3 もそうですが、バッテリの保ちは異常に長く、1回の充電で4〜7日、つまり96〜168時間だそうですから、バッグなど工夫して携帯して使うのも魅力です。

    イヤフォンもアンプもたぶん秋のヘッドフォン祭ではお眼にかかれるのではないかと期待してます。(ゆ)

    一人では知り合いもいないし、行くつもりはなかったのだが、直前になって RudiStor のルディさんと Jaben のウィルソン親爺から、会場で会おう、ついては預けてあるヘッドフォン・アンプ NX-03 を持ってきてくれ、との連絡が入る。
   
    もっとも、当日朝早く起きられる自信がなかったので、アンプは金曜の夕方、新宿のホテルに届ける。このアンプをまた引き取らねばならないので、会場には行かねばならない。天気も良し、きっと混んでいるだろうと、ゆっくりでかける。新宿で腹拵えし、会場に着いたのは3時過ぎ。エレベータの中でルディさんにばったり。時差ボケがつらそうだ。この人、今回初めて顔を合わせたけど、エンジニアらしく、ふだんは無口だが、関心のあることになるとおしゃべりになる。会社はアメリカだが、イタリア生まれで国籍はイタリア。RudiStor のアンプ群の製造もイタリアで行っている。
   
    中野サンプラザ15階の宴会場フロアを全部借り切ってのヘッドフォン祭。立錐の余地もない、というのではないが、まっすぐ、自由には歩けない。ヘッドフォンなので、音楽は聞こえず、意外に静か。声高に話す人もいない。客の方は20代が圧倒的のようだが、皆さん、声は大きくない。穏やかに盛り上がっているというところか。
   
    三っつある会場のひとつの真ん中の柱の前に Jaben と RudiStor のブース。というより、テーブルの上に製品が並べてある。ルディさんの今回の目玉は初のヘッドフォン Titanus MD1。ダイナミック型のオープン・タイプで、2セットをソリッドステート・アンプ(NX-03)と、真空管とソリッドステートのハイブリッドの DAC/Amp にそれぞれつないでいる。ソリッドステートは Chord のCDP、ハイブリッドは MacBook Pro がソース。
   
    ハイブリッド DAC/Amp NKK-02 も新製品でまだ公式サイトにも上がっていない。12AU7 2本が上面に刺さっている。テーブルの前には誰もいなかったので、早速聞かせてもらう。セッティングのままと、自分の iPod touch + Linearossa W3 と両方聞いてみる。自分の顔がにやにやしてくるのがわかる。
   
    写真はフジヤエービックのついったーに上がったから、いずれブログ等に載るだろうが、ぱっと見た感じは Grado のいとこというところ。音も似ているという人も出てくるんじゃないかとも思うが、Grado の音はもう忘れているので、断言はしない。明解で、空間が広い。個々の音や楽器などの要素はちょっときらびやかとも思ったが、当然エージングもされてないから、この辺は変わる可能性もある。なにせ、このヘッドホン祭が「ワールド・プレミア」、世界初公開なのだ。

    〔後記〕ささきさんのブログに写真あり。
   
    自然な、無理のない音は、後で試聴した平面プラナー・ヘッドフォン HE-05LE と遜色ない。あちらの方が音が軽い感じなのは、原理からして当然だろうが、うーん、音楽として聴かせるという点では、Titanus かな。HE-05LE も音楽的だけど、こう、理想に掲げている音楽の姿が、Titanus のほうが気品があると言おうか。いやだからといってロックやジャズが合わないというのではもちろんない。クラシックはなかったが、iPod に入っている音源をあれこれ聴いてみると、なかなかやばい。ついつい聞き入ってしまう。聞き入って、聞き慣れた曲にあらためて感動などしてしまう。
   
    まあ、ヘッドフォンだけではなくて、アンプとの相乗効果ももちろんあるだろう。W3 もルディさんの製品だから、血筋はみな一緒。

    試聴した人はたいてい満足した顔をしていたと思う。なかにはその場を離れがたい様子の人もいた。
       
    他に試聴できたのは、同じ一角でささきさんが店を広げていた HE-05LE と DACport だけだった。ルディさんもウィルソン親爺も日本語はからきしなので、通訳したり、自分で製品説明したりで結構忙しい。どちらのブースも、列ができるほどではないが、席が長時間空いていることもない。
   
    Jaben は GoVibe シリーズのうち、Sharp、RKK を中心に展示。V7 も置いてはあった。これはオリジナル Go-Vibe シリーズ最終モデルの復刻で、V5 も同時復刻。V6 はやらない。復刻といっても筐体は新たに作っていて、なかなかスマート。また充電機能があるのも違う。来月発売だそうだ。もう一つ、ポータブルの真空管アンプの、まだ初期の試作品段階のものもあった。時間がなくて、きちんと聞けなかったが、ちょと面白い。

    念のため説明すると、この GoVibe シリーズはもとはカナダの個人メーカーの製品で、安価で音が良いので評価が高かった。(ゆ)のヘッドフォン・アンプ、PHA の入門もこれである。記録を見ると2006年の秋に買っていて、当時送料込みで86USD、1万円強だった。これが V5 で、おかげで完全に PHA の世界にはまりこんでしまったのだが、個人のガレージ・メーカーで、筐体などは既製品でお義理にもカッコいいとは言えない。それにちょとヤワなところもあって、1年使ったら、入力ジャックがおかしくなった。

    Go-Vibe(当時の表記)は V7 まで出たところでこのカナダの人が事情でアンプの製造販売をやめると宣言したのが確か2007年の半ばだったか。Head-Fi などでは惜しむ声も出ていた。その権利一切を買ったのがシンガポールの Jaben Network で、2007年の年末には早くも新製品を出した。ちょうど V5 がおかしくなっていたので、早速これを購入したのが、ウィルソン親爺とのつきあいのはじめ。Jaben はその後、GoVibe シリーズで怒濤の新展開をするわけだ。で、V5 と V7 を復刻するというのはやはり商売がうまい。筐体が変わるから音もやはり変わるはず。電源はオリジナルと同じ 9P バッテリー1個。
   
    HE-05LE は良くなっていると思う。ハウジングも心持ち小さくなり、他にもなにかやったのだろう、少し軽くなった。パッドも改善されて、装着感は一新されている。値段も上がった。

    DACport は自分の音源で聞けなかったので今一つ印象がはっきりしない。良いものではあるが、わずかに価格が高すぎる感覚。とりあえず、DenDAC があれば、今のところはいいかな。それにルディさんが、NKK-02 を預けてくれたので、当分これで遊べる。
   
    RudiStor のすぐ向かいがエントリーのブースで、Comply を各種展示していた。しばしおしゃべり。EarPhone M には Comply は必須、と力説してしまった。マニア以外の人たちに存在を知ってもらうにはどうすればいいか、と聞かれる。うーん、「けいおん」ででも使ってもらいますか。多色展開も意識したことはなかったけど、左右で違う色にするのはアリかも。
   
    リスナーだけでなく、メーカー(作る人の意)もいらして、いろいろ聞かれる。GoVibe シリーズの筐体の仕上げに感心していた。日本だと同じことをやろうとするとやたら費用ばかりかかるか、できませんと言われることが多いそうな。
   
    5時を過ぎるとさすがに人も減ってきて、定刻の5時半には後片付けが始まる。もっとも粘っている人もちらほら。6時半前に会場を後にし、ルディ、ウィルソン、それに DACport のマイケルさん、ささきさんともう一方と、近くの台湾料理屋で食事。美味で安く、量も適当。ラムのコリアンダーいためなど。
   
    というわけで、くたびれたけど、いろいろ面白い体験でした。ウィルソンは東京がすっかり気に入っていて、ヘッドフォン祭がある限り、参加しそうな勢いだし、ルディさんもまた来たそうな顔をしていたので、次回「秋」は10月かな、その時にはまた手伝いに行くことになるでしょう。(ゆ)

    FiiO E5 はポータブル・ヘッドフォン・アンプつまり PHA(ポタアンという呼び名は品がない) の概念を変えてしまったわけですが、その後を追って、小型アンプがいろいろ出てきました。この Linearossa W1 もその流れの一環なのでしょうが、音を聴いてみると、 柳の下の二匹め狙いというのとは違います。
   
    ひとことで言うと、つきつめてます。小型、入出力1本ずつ、音量ダイアル付き、バッテリー駆動という条件の中で、これ以上のことはできないところまでつきつめている。
   
    まずバッテリーは単四1本。9V2個使う GoVibe Sharps も出てますが、値段を別にして音だけで現時点でどちらか選べと言われたら、W1 です。電池が内蔵ではなく、市販のものを交換できるのも○。
   
    当然軽い。仕様では45gになってますが、空っぽではないかと思えるくらい軽い。サイズは E5 を倍にして、厚さもほぼ倍ぐらいですが、むしろW1の方が軽いのではと錯覚するほど。
   
    音量ダイアルは回転式で、E5 のような押しボタン式ではないので、連続可変が可能。このダイアルが少々回しにくいのが、欠点といえば欠点かな。
   
    音は E5 と同じ傾向。妙な色付けをせず、ヘッドフォン、イヤフォンの特性をそのまま伸ばす。E5 をつなぐと、今まで使っていたヘッドフォンやイヤフォンがワンランク上がって聴こえますけど、あれがもっと徹底します。ツーランクか、場合によってはスリーランク上がります。というより、そのヘッドフォン、イヤフォンの能力の限界までつきつめられた感じです。どんなアンプを使っても、これ以上の音が出ることはありえない。そう感じられてしまう。
   
    もっとも、言葉にするとこうなりますが、実際聴いているときにはただひたすら気持ち良いのです。否定的な感覚ではなく、ヘッドフォンやイヤフォンがよろこんで、のびのびとうたっています。あたしは、ぼくは、本当はこれだけの音が出せるんですよ、それを思いきり出せて、うれしい、ありがたい。
   
    解像度がどうこうとか、サウンドステージうんぬんとか、低域がどうの、高域がどうの、なんてことはどうでもよくなってしまって、音楽の表現力がどーんと高くなります。ヘッドフォンやイヤフォンの音、ましてやアンプの音を聴いてるんじゃない、音楽を聴いている。聴きこんでしまう。
   
    FiiO でも E7 がこれから出てくるわけですが、公式サイトにアップされているビデオを見ると、コンセプトが変わってきてます。まあ、E3 から E5 への路線をそのまま延長するのも芸が無いといえば無いので、これはこれでアリなんでしょうが、E5 で PHA にめざめたリスナーが次に手にとるものとしては、ずれる感じもあります。
   
    ガジェットとしての、モノとしての興味は別として、とにかくできるだけ良い音で音楽を聴きたいのであれば、E5 からのアップグレード先として、W1 はまず筆頭にくるでしょう。価格からいえば E5 の 2.5倍ですけど、それでも今のレートで送料込で8,000円強。大事に使えば一生モノですし、「投資」に対する「見返り」としてはとんでもなく大きい。むしろ、Dock コネクタに贅沢した方が、さらに「見返り」が大きくなる可能性があります。
   
    ちなみにぼくは Audiotrak のオーディオケーブルを使ってますが、これはCP高いです。

    オヤイデのもCP高いですが、あちらは使用1ヶ月未満で、ミニ・プラグ側で断線したので、ちとモロい。Audiotrak のはまだひと月経たないのでわかりませんが、オヤイデより外見はがっちりしてますね。

    音源の iPod touch 32GB 内のオーディオ・フォーマットは様々で、AIFF から MP3 128bps まで聴いていますが、圧縮音源の音を気持ち良く聴かせてくれる点でも、W1 は抜群です。圧縮とはまずわかりません。圧縮フォーマットの再生でこれに匹敵するのは、ぼくの試した中では DenDAC だけです。こちらはパソコンの USB 端子に直接挿しこんで使います。これについては別に書こうと思いますが、一見USBメモリみたいですけど、この値段は十分お釣りが来ます。

    むしろ、圧縮でもここまでの音が入っているのだ、と改めて見直しました。圧縮フォーマットの音が良くないというのは、まだ再生側の「修行が足りない」、ハードやソフトがそこまでつきつめられていないのでしょう。
   
    どういう音楽を聴いているのかは、Last.fm にトラック・リストがあります。iPod touch の中のファイルをシャッフルしてます。

    というわけで、E5 のユーザは、よほど E5 に愛着があるのでないかぎり、アップグレードされれば、確実にはるかによりベターなリスニング環境が手に入りますし、これから E5 を買おうと考えておられるなら、E5 でワンクッション置く必要もないでしょう。
   
    国内販売についてはわかりませんが、シンガポールの Jaben Network がワールドワイドのディストリビューターになっているので、正式販売される可能性はありますね。
   
    それにしても、W1 でこの音なら、W3 はいったいどういうことになるのだ、と楽しみであります。もっとも W3 はDACが付いて、光と同軸とUSBの入力というフル装備なので、まるで違う製品ではあります。こちらは GoVibe の Vulcan mini との比較になりますか。むしろ上記の DenDAC との勝負かな。(ゆ)

    本日14:00指定で6月情報号を配信しました。未着の方はご一報ください。
   
   
    昨日は Jaben Network の Uncle Wilson に半日つきあっていました。前回の来日の時にはそれを知ったのはもうかれが帰った後だったので文句を言ったら、6月にまた行くからその時会おうということで約束通り無事面会。写真では見てましたからすぐにわかりましたが、いや、おもしろいおっさんでした。
   
    もっとも、着く前から、ホテルはどこがいいかな、とか、予約の返事がこないから電話かけて確認してくれ、とか、大切な預りものを引きとってホテルまでもってこい、とか、まあ傍若無人といえば傍若無人。おいおい、こっちはあんたのカスタマーだぜ。(爆)
   
    シンガポールのネイティヴで、お祖父さんが中国を離れ、父親はマレーシア生まれだそうですから、典型的な華僑ということになるんでしょう。頭のなかは、どうすればおもしろくカネをもうけられるか、常にくるくる回りつづけているようで、GoVibe のシリーズ化にも現われていますが、次になにをしようか、アイデアが湧いてきてしかたがないらしい。iQube がすごいと言ったらにやにやしはじめるし、一緒につきあってくれたB社のK氏がスタックスが好きだと言うと、さらに顔が笑いでしわくちゃになります。GoVibe シリーズの新製品もまた近く出るらしい。でかい Vulcan の後だから、今度は小さい方でしょうか。
  
    面白いことに、シンガポールの女性たちはベースの音が大好きで、ベースが出ないヘッドフォン、イヤフォンには見向きもしないそうな。かれの店ではとにかく客に試聴させて選んでもらうのがポリシーですが、女性客は例外がないそうな。男性はそれに比べると中高域が良いモデルを選ぶ傾向がある。その理由として、女性は赤ん坊の泣き声に敏感だから、というのは納得できるところです。つまりもともと男性よりも中高域がよく聞こえる耳をもっている。
   
    とすると、世界中の女性は皆ベースを強調するモデルが好き、ということになるわけですが、わが国の女性たちはどうなんでしょう。それとも、あまり聞き比べることをしないで選んでいるのか。
   
    もっとも、かれの店でも女性客はやはりごく一部で、九割は男性客。したがって一番売れるのは Westone、Shure、UE だそうです。推薦モデルは何だと訊いたら、Westone との答え。ウィルソン本人の音の好みではなく、それを選ぶ客が一番多いためということです。とはいえ、ゼンハイザー800 は、と水を向けると、やたら売れてはいるが、評判ほどではないよ、バランス化した650の方がいい、もっとも800もバランスにしたらわからないから、今度ためしてみる、とのこと。
   
    世はあげて大不況ですが、かれのところはまったく順調で、異様なくらいだそうです。シンガポールだけではなく、直前の CanJam で会ったアメリカの連中も同様の由。それだけまだニッチでマイナーな業界ということなんでしょうか。とはいえ、ヘッドフォン、イヤフォンと、ヘッドフォン・アンプはじめその周辺のハード、ソフトの世界が、今後ますます成長を続けることはまちがいない、と言われると納得するところです。
   
    こちらとしてはむろんそんなカネはありませんが、一緒にいると刺激を受けて元気が出てくる、そういう人でありました。ということで、Jaben からはまだまだおもしろいものが出てきそうで、眼が離せません。(ゆ)

    ヘッドフォンアンプ Fiio E5ヘッドフォンアンプ Fiio E5 が国内でも販売されてますね。価格も海外から直接買うのとそう変わりません。初期不良1週間交換のみなので、正規代理店ではないようですが、価格がどこも同じというのは、どこかがまとめて輸入してるんでしょうか。それにしても、この勢いはすごいな。PHA の世界が変わるか。

    はじめから高いものを買うよりも、これを買って、むしろ Dock コネクタに奮発する方が賢明かも。コネクタが良いと E5 の音もそれだけよくなりますから。それにコネクタがしっかりしてれば、後でアンプをアップグレードする時に得するでしょう。

   
    一方の Yuin のクリップ・タイプの廉価版 G2A ですけど、期待通り。KSC35 はもう要りません。75のユーザも買い換えをすすめます。音の肌理の細かさがちがいます。これを聞いてしまうと、KOSS の音がいかに雑かわかってしまう。というか、雑な音をうまく聞かせるのが KOSS の KOSS たるところなんでしょう。サウンド・ステージ、バランス、申し分ありません。KOSS が低音フェチ御用達というのが、ようやくわかりました。まあ、ぼくも低音フェチということになるんですが、重低音などというものは無いと思っているくちなので、やはりバランスのとれた低音は気持ちがよいです。このところジャック・ブルースにはまっているので、なおさら G2A がありがたい。

    ジャック・ブルースってスコットランド人なんですね。やはりスコットランド人はジャズを使うのがうまい。クリームなんて、ほとんどジャズ・ロックじゃないですか。

    造りもなかなかきちんとしてて、KOSS よりも高級感があります。耳にかけるフィット感も上々。コードが KSC より少し短かく、iPod をポケットなどに入れておくのにちょうどよい。この頃はみなそうかもしれませんが、ゴムのような材質のコーティングがしてあって、からみにくく、ほどけやすくなっているのもマル。
   
    例によって Head-Direct の通販です。上海からの発送で、注文して5日で到着。送料含めて 59USD です。(ゆ)

 問い合わせがあったので、ぼくが FiiO E5 を買ったやり方を書いておきます。

 買ったのはアメリカの Head-Direct。ニューヨークに事務所があるらしい通販専門店。中国系で独自の品揃えです。Yuin は兄弟会社か、独占代理店らしい。

1. トップ・ページの左のメーカー一覧で "Fiio" をクリック。
2. "E5" の "ADD TO MY CART"  をクリック。
3. "Select Your Location"「場所を選んでください」というウインドウが開くので、右側の "Outside of America" をクリック。
4. "My Cart" ページが出ます。この時点ではまだ下の "Ordered Prodcucts" の欄が "Empty.." になっていると思います。そこで、上の "Add to My Caft" 欄の右の方にある "Add to My Cart" をクリック。
5. "Ordered Products" のページになり、"Product" 欄に "Fiio E5 headphone amplifier" とあるのを確認します。下の方に PayPal のロゴが出ているのでそれをクリック。
6. PayPal で決済。

 PayPal のアカウントがなければ、作ってください。Head-Direct の支払いは PayPal 経由だけです。PayPal は今は日本語で表示されますので、後はそちらの指示にしたがってください。PayPal そのものの決済はぼくはクレジット・カードでやってます。他にもあるかと思います。

 Head-Direct の価格は商品そのものが 23USD に送料が 10USD かかって、計 33USD です。今現在のレートでは3,000円弱です。

 Head-Direct はこれまで数回買っていますが、いつも迅速な対応です。商品の発送元は上海だったかな。発送通知後1週間前後で来ます。なお、もうすぐ旧正月セールをやるよ、と Head-Fi で言ってました。まあ、E5 はもう十分安いですが。

 FiiO 本家のサイトには他の販売店もあがってます。値段だけとるとニュージーランドの店が最安値のようです。ここも決済は PayPal 経由です。韓国とタイの店のサイトは読めないのでわかりません。不悪。


1ヶ月ほど、ほぼ毎日使い、音は絶好調です。このちっぽけな函にはまるで似合わない「堂々たる音」が鳴ってます。一つひとつの音の粒立ちの良さ。その音が決っしてばらばらではなく、有機的に全体の音楽を編みあげてゆく、その美しさ。音楽が鳴っている空間の媒体、空気が澄んで、透明度が増す、というと近いでしょうか。結果、音楽全体の姿、動きが生き生きとしてきます。すべてが洗われた感じ。Go-Vibe にもどると、どうも音が「くすんで」ます。ほんとうにくすんでいるわけではないのですが、鮮度が落ちる。うーん、これはやはりチップそのものの新しさ、回路の新しさ、なんでしょうか。

例えば、ソウル・フラワー・ユニオンの《カンテ・ディアスポラ》。音楽のイメージがよりはっきりします。Go-Vibe ではやや濁ってました。音が団子のところがありました。E5 では楽器のひとつひとつ、効果音のひとつひとつが自然に聴き分けられます。

加えて、ヴォーカルがより際立ちます。中川敬の声がセンター前面にしっかりと立ってます。コーラスも脇でやや退って、一人ひとりがはっきり聴こえます。

バッテリーの保ち時間はきちんと計ったわけではないですが20時間ぐらいでしょうか。切れるときはブチといきなり切れます。音が小さくなるとか、前兆はありません。

それから、バッテリーを充電した直後は音量が最大またはそれに近いヴォリュームになっています。最初の時は EarPhone M で聞いていたので、驚きました。

欠点も出てきました。この価格ではやはりどこかで手を抜かなくてはならないわけで、どうやらそれはコネクタ類のようです。入力用のミニ・ジャックが少しゆるんできたらしく、挿しこみっぱなしだと、左チャンネルの音が切れるようになりました。今のところはまだ、挿しこみなおすと治ります。

Go-Vibe V5、今の GoVibe ではなく、カナダの個人メーカーが作っていた頃の版ですが、挿しこみっぱなしでいたら、やはり入力用コネクタがゆるみました。最後には片方まったく音が出なくなってしました。Fiio E5もそうなる危険はあるとみて、とりあえず、使わないときは入力ジャックは空けるようにしています。

小さいことはいいこと、なんですが、iPod touch の裏にくっつけて使うにはちょっと小さすぎると感じるときもあります。全体の作りも華奢。もう少し大きくてもいいから、かっちりしていて、安心して使えて、音はこのままという上位モデルが出たら、買っちまうでしょう。価格が倍になっても6,000円ですからね。円高でもっと安くなるかもしれない。でも、その前に、この E5 をもう一個、買っちゃうかなあ。それくらい、この音は魅力です。(ゆ)


2009.01.13追記
上に書いた、左チャンネルの音が時々聞こえなくなる件ですが、E5 のせいではどうやらなかったようです。ドック・コネクタの DS-AUGpt がまずいらしい。それもアンプにつなぐミニ・ジャックのプラグ内部があやしい。今日、届いたばかりの PHA(これについてはまた後日)につないでみたら、E5 と同じ症状が出ました。Go-Vibe Petite につないだ時には出なかったんですが、そうするとあちらもまずいかも。

左チャンネルが聞こえなくなるのとは別に、iPod の再生音が時折り、一瞬切れる現象もしばらく前から出ていて、サウンド・ファイルが不完全か壊れたのかと思っていたのですが、ひょっとするとこれもドック・コネクタが原因であるかもしれません。

Go-Vibe 5 の時はまず最初に ALO のドック・コネクタを疑ったらアンプの方だったし、これはまたか、と思ったのですが、早とちりでした。代わりのドック・コネクタがないので、最終判断はまだですが、まずはお詫びと訂正をします。

fiioe5 いやー、ポチってしまいましたよ。なんせ、送料入れても3,000円しないんですから。12/15 発売とうたわれてますが、6日には送ったと通知が来て、今日10日に着きました。第一陣の50個は完売。そりゃそうでしょう。次回は4週間後。年内ぎりぎり間に合うのかな。

 例によって第一印象は、

これで3,000円は「持ってけ、ドロボー」です。

正直、Go-Vibe Petite も Magnum(Jaben のサイトからは消えちゃったみたいですね)も、危うい。このちっぽけで薄っぺらいものがあれば、もう十分。

 サイズは iPod shuffle をひと回り大きくした感じ。Minibox なんかよりもずっと小さいでしょう。一応数字をならべるとサイズ 44.2×38×12.6mm。重量30g。対応ヘッドフォン・インピーダンスは 16 -- 300オーム。

 まあ実際 iPod shuffle がヒントになったんでしょう。クリップまで付いてます。要らないんですけど、といってもはずれない。上の厚みはクリップも含めて。

 電池はリチウム・イオン充電池で、交換は不可能。充電はUSB経由でパソコンからしかできないみたいです。電圧は販売元サイトによれば 200mAh。

 ロゴから見て上側に、右からヘッドフォン・ミニ端子、音量ボタン、パワー・スイッチ、ベース・ブースト・スイッチ。このベース・ブーストはデフォルトではフラット。外側に移すとベース・ブースト。クリップの軸の頭にランプ(LED?)があり、パワーを入れると青く光ります。切るときはパワー・スイッチの長押し。

 音量ボタンは細長くて、ヘッドフォン端子に近いほうを押すと下がり、反対側を押すと上がります。ただ、途中でどーんと変化するところがあるのは、個体差か、全体的な欠陥か、わからず。上げる方の直後がちょうど良い大きさなので、今のところ様子見。ちなみに販売元では30日の返品、90日の交換を受けつけてます。

 ロゴの下側、ヘッドフォン端子の直下に入力端子。左端に USB ミニ・ジャック。この入力端子はかたくて、DOCK★STAAR のオーグラインを突っ込むのに、はじめちょっと力が要りました。ヘッドフォン端子もちょっとひっかかりました。

 最新アンプICだよ、S/N比もいいし、歪も小さいよ、というんですが、この辺も日進月歩なんでしょうねえ。Head-Direct のサイトによれば
Preamp Opamp: OPA2338UA
Poweramp Chip: TPA6130A
ということです。

 マニュアルは四つ折りのものが一枚。片面英語、片面中国語。メーカー所在地は広州。

 で、音なんですが、これが笑っちゃうくらい良い。背景は真黒。サウンド・ステージは広いし(Magnum より広いかもしれない)、奥行もあるし、分解能も立派。細かい、他の音に埋もれがちの音までちゃんと、それ相応の大きさで聞かせてくれます。というよりは、音楽が生きてます。音がみずみずしい。たった今、生まれました、ってそりゃ、音そのものは瞬間瞬間に生まれてるわけですが、それとは別の次元で、まあ、録音されたばかりのとれたての音楽。なんか、これを聞いてしまうと、Go-Vibe の音は古いんじゃないかとすら思えてきます。とにかく聞くのが楽しい。ベース・ブーストは、少くともぼくは要らないです。先に出ていた、もっと小さくて、音量調節もできない E3 はちょっと色づけがあるという話が、Head-Fi で出てましたが、この E5 に関してはごく少ないと思います。今のところ。

 この音にくわえてこの価格となると、PHA の入門機としては最強でしょうし、まとめ買いして、個体差を楽しむなんていう猛者も出てきそうですね。

 位置的にはイヤフォンの PK シリーズに相当するアンプかもしれません。とすると E5 は PK2 で、PK1 に相当する E7 なんてのも出るのかも。送料含めて1万円以内なら買っちゃいそう。

 実際こうなると、1万円以上するPHAは、もう買う気が起きません。となると次に狙うのはペンギン・カフェ・アンプですね。

 ちなみに環境は iPod touch 32GB w/ OS2.2 + DOCK★STAAR DS-AUGpt + E5 +  EarphoneM + ComplyFoamTips P-Version。この Comply のチップは細長いやつで、T-100 同様に使えます。T-100 より奥まで入るので鼓膜に近くなり、音はよくなります。ただ、ちょっと太いので、人によっては痛くなったりするかも。音源は AIFF、Apple Lossless、MP3 320bps。今日、主に聞いていたのは、Solas《For Love and Laughter》 、 《スウェル・シーズン》、フリア・アイシ&ヒジャーズ・カール《オーレスの騎兵》。(ゆ)

 アメリカ、カナダの住所からしか注文できない本家サイトの通販でしか買えない KSC35 ですが、ロスをベースにする Mac 関係の通販会社 Vintage Computer が先日 Shure のイヤフォンの扱いを始めたので、これも扱ってもらえないか、と問い合わせてみました。すると、購入代行という形で扱う、という返事が来ました。注文はこちら

 なんですが、そうなるとやはり相当高くなってしまうわけです。この価格に送料と税金が加わると1万円を超えるわけで、そこまで出す価値があるか、となると考えこんでしまいます。

 確かに後継機種にはない独自の魅力があるのは確かで、それを自ら認めているからこそ、通販のみという形でもディスコンにしていない。それにその後の新製品を見ていると、どうやら KOSS はクリップ・タイプを 75 で打ち止めにする気配ですし、するとますます 35 の価値は高まります。

 それに自分でむこうまで買いにいくことを考えれば、そりゃ安い。誰か知りあいや友人に頼んで買って送ってもらうにしても、手間賃とか謝礼とか考えれば、やはりこのくらいにはなる、とも思えます。KOSS の代理店の TEAC が正規に輸入してくれればいいわけですが、検討します、の答え以後は梨のつぶてですし、また KOSS の方で許可しようとしていないことも考えられます。

 一方で Yuin からクリップ・タイプが出て、こちらは上位機種の G1 が送料込みで15,000円ですし、これから出る G2 は、どうやら 5,000円前後というところ。Yuin のものなら音質だけとればおそらく 35 をも凌ぐでしょう。G1 はアンプ必須なので G2 と比べるとしても、G2 の音がよほど不満で、やはりどうしても 35 でなければダメだ、となるかどうか。

 とまあ、せっかく扱いを始めてくれた Vintage Computer には悪いんですが、ここは G2 のリリース待ちかな、と思ってるところです。(ゆ)

 シンガポールの Jaben が製造販売している GoVibe シリーズの最新作 Martini が公開されています。

 単四電池2本で400時間稼動、てほんまかいな。

 サイズは Petite と同じくらいに見えますね。
 音はどうなんでしょうねえ。
 Petite と Magnum の間という説と、ぜんぜん別系統という説とあるらしい。

 DAC はついてないですね。

 値段はまだわかりません。

 Jaben ではもう一つ、新しいアンプを用意しています。
この Martini は「謎のアンプその3」と言われていたもので、
謎のアンプその4」が控えてます。


 それと、Jaben は Uncle Wilson の名前で新しいネット・ショップを開いています。

 まだ、完全ではないようですけど、これまでよりははるかに買いやすいです。(ゆ)

 現在 GoVibe シリーズを製造販売している Jaben Network が先日地元シンガポールの新聞に載ったそうで、その記事のコピーが Jaben のフォーラムに出ています。

 なんか、どこかで見た光景ですが、こういう店は世界中どこへいっても同じになるのかも。面積は180平方フィート、約5坪です。

 後ろのスピーカーの一番上に乗っているのは Marty 101 ですね。これも売っているのかな。

 中央の禿オヤジが Uncle Wilson こと社長の Wilson Yong 氏。今年55歳だそうな。社員はかれも入れて3人。年商「二、三百万」というんですが、シンガポール・ドルか米ドルかはわからず。売上の3割が通販。その大半はアメリカとヨーロッパの顧客。インドやアフリカからもある。アジアは少ないらしい。2006年半ばに始めたブログがヒットし、飛躍的に売上が延びた由。現在はフォーラムに以降してます。

 取り扱い商品はヘッドフォン、イヤフォンとその関連。20ドルのものから2,000ドルのカスタムものまで。写真を見ると Marty のような小型スピーカーもあるらしいですね。

 商売の秘訣は、客をかまわないこと。勝手に品定めをさせておき、質問などがあれば懇切丁寧に応対する。

 これはすなわちアップル・ストアのやり方でもあることを最近知ったが、たまたま同じ手法を採用しただけだそうです。

 地元の客は10歳から80歳まで。新たに父親になった人が多い。スピーカーを鳴らせなくなってヘッドフォンに移るらしい。シンガポールの住宅事情でしょうか。

 Jaben は Uncle Wilson の前の商売のパートナーの子どもたちの名前を合成したもの。(ゆ)

 本体に書いてある表記ではこうなります。Petite では Go-Vibe になっていました。

 まだ使用時間30時間くらいで、100時間超えてようやく本来の実力との説もありますが、もしそれが本当ならいったいどんなことになるやら、そら恐ろしいです。結論から言えば、もう Petite とは別物。とにかくこれで音楽を聞くのが楽しくてしかたがありません。よく、「こんな音が入っていたとは知らなかった」と言いますが、それだけでなく、新たに聞こえてくる音が音楽の奥行を広げ、魅力を増したり、新しい魅力を加えたりしてくれます。サウンドの組立方からミュージシャンの細かい癖や声の質まで、ありありとわかるようになります。だから、あれはどう聞こえるだろう、こっちはどうだ、と次から次へと聞きたくなります。レポートがなかなか書けなかったのは、それでなくても忙しいのが、聞きたくてたまらないのでますます忙しくなったせいもあります。

 しかも、その楽しみがすこしも薄れません。オーディオ製品は当初は音の変化に驚き、喜んでも、しばらくすると慣れてきて、それが普通になってしまうのが常です。タイムドメインですらその点ではあまり変わりません。それが、少くとも今のところ、Magnum の魅力はまったく色褪せません。一瞬一瞬が新鮮な体験です。Magnum が見せてくれる、聞かせてくれる音楽は、ほんの一瞬たりとも「乾い」たところがありません。SP盤の復刻ですら、昨日吹きこんだように瑞々しい。むろん元の録音の質にもよりますが、SP盤は元来録音の質は良いですから、最新のデジタル録音よりも、きちんとした復刻の再生に製品の真の実力が現われるところもあるのでしょう。

 新鮮さが薄れない理由のひとつは、使うにしたがって音質が良くなっていることもあると思います。Petite や Ver.5 に比べると、変化は大きいです。Petite より良いことははじめからわかりますが、その差がどんどん大きくなります。

 一番の違いは、音の線の太さでしょうか。Magnum に慣れると、Petite の音はどこか線が細く感じます。Magnum は線が太いというより、音の中心に太くはないが丈夫でしなやかな芯が通っています。

 こうしてみると、Petite は単四電池4本が電源で、Go-Vibe のクオリティを維持しながらどこまで小さくできるかがテーマだったとも言えます。その実験を踏まえて、今度は Go-Vibe シリーズ本来の 9V 電池にもどり、その上でサイズをぎりぎりまで小さくするのがテーマでしょうか。ただし、今回は 250mAh 指定です。これはいわば反則かもしれません。なにせ1回の充電で保つのが10時間です。充電そのものはその半分以下の4時間半でフルになるそうです。強力な電源が Magnum の高性能の裏にあることは素人にも推測がつきます。

 電池は 9.6V 250mAh のリチウム充電池が1個付属します。中国製のようで、ブランドは「品性 ピンサー」です。MAHA のものよりわずかに厚みが薄く、Magnum の筐体はこれに合わせて作られていますので、他の電池はサイズからして使えません。ピンサーの電池を買えるところはまだ見つかりません。Jaben から買えないのか、問い合わせ中。検索で香港の模型販売サイトがひっかかりますが、Firefox や Opera はフィッシング・サイトだというのでまだ試していません。

 外形は Petite をすこし厚くしたもの。幅と奥行は Petite とまったく同じ。厚さだけが5ミリほど厚い。この厚みは 9V 電池を入れるためのものですが、厚くなったおかげでパワー・スイッチ、ゲイン切替スイッチ、ベース調整ダイアルを上の段に置き、下段の入出力ジャックの間隔が広くなっています。おかげで ALO の Jumbo Cryo Dock も使えます。もっとも、まだそちらは使っていません。将来の楽しみにとってあります。今使っているのは、DOCK STARR の一番安いもの。これでもまずは充分です。右端に音量ダイアル。これは Petite と同じ。

 ゲイン切替は3段階で、デフォルトは LOW になっています。まだ変える必要は感じません。ベース調整のデフォルトはミニマムのようで、これもまだ変えていません。100時間を超えたら試してみる予定。

 裏蓋はネジ留めが2本になり、 USB ジャックが左上に移動、その下にACジャックがあります。AC アダプタは付属。マルチ電圧対応。

 DAC のチップは Petite と同じ、Burr-Brown PCM2702。表の入力ジャックに何か刺さっているかどうかで DAC が切り替わるのも Petite と同じです。

 厚みがあり、わずかながら重くなっていますが、iPod touch にマジック・テープで留めると、むしろ Petite より持ちやすいです。

 あと何か、今書いておくべきことはあったかな。背景ノイズはゼロに等しいです。真っ黒です。無伴奏のソロ歌唱など、シンガーの息遣いから、場合によっては衣擦れまで聞こえます。いや、実際に聞こえるはずはありませんが、聞こえる気がするほど。

 Petite と同じく、パワー・スイッチはオンにすると発行ダイオードの赤い光が点きます。電池がなくなってくると、これがオンの時でも消えます。また、再生音にノイズが混じるようになります。

 価格は送料込み359USD。今のところ、Jaben Network から直接買うしかないようです。

 こういうサイトもありますが、まだ未完成のようでもあります。

 ここでは 349USD になってますね。売切れというのが一時的なものかどうかは問い合わせ中。

 Jaben の Uncle Wilson は日本でも販売代理店を見つけたいと言ってますので、うまくみつかることを祈ります。中野のフジヤエービックあたりが扱かってくれるとよいのですが。Go-Vibe 5 のようなことはないんじゃないかなあ。


 このところ、交通機関に乗る時以外は、ずっと KSC 35 で聞いているのですが、その潜在能力の高さに舌を巻いています。Magnum のバーンインにつれて、どこまでも音が良くなっていきます。フルサイズのものではそろそろ蒸し暑いこともありますが、ちょんと耳にかけるだけの手軽さと性能の高さを考えれば、コスト・パフォーマンスの良さは驚異的です。というよりも、ここまでくると、もはやコスト・パフォーマンスというようなレベルではなく、単純に価格とはかけ離れた性能ではないかとすら思えます。正直、K701 と比べても、K701 の方がややスペーシィなだけで、後はまったく遜色はありません。スペーシィというのは、自分のいる位置がたとえばステージからやや離れて、俯瞰的という感じです。KSC 35 ではミュージシャンはたいてい目の前にいます。

 KSC 75 もいい線まで来てはいますが、35 と比べると、わずかながら雑なところがあります。KOSS が KSC 35 を二度までもディスコンにしながら、その度にユーザからの要望で(本家サイトの通販オンリーとはいえ)復活させたのも、むしろ当然のことでしょう。ティアックにもぜひぜひ国内発売していただきたいものです。(ゆ)

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