番組に対していただいたリクエストの中にいくつか、ご質問があったので、できる範囲でお答えします。
□〈Mo Ghile Mear "Our Hero"〉「できれば、この曲の原曲を聴きたいです」
これは伝統曲ですので、「原曲」というものは存在しません。最も有名なヴァージョンはおそらくスティングがチーフテンズをバックに唄ったものでしょう。ケルティック・ウーマンでも唄われています。
あたしがこの曲を初めて聴いたのはメアリ・ブラックがソロになる前に参加していたバンド General Humbert のセカンド (1982) で唄っているものです。このトラックは後にメアリの《Collected》に収録されました。
アイルランド語のネイティヴの歌であればポゥドリギン・ニ・ウーラホーン Padraigin Ni Uallachain がギタリストの Garry O Briain と作った《A Stor's A Stoirin - Songs For All Ages》(1994) の歌唱を薦めます。
またスコットランドの Mae McKenna の復帰作《Shore To Shore》(1999) の歌唱も良いです。
最近のものでは Steve Cooney と Allan Macdonald がホストになった 《The Highland Sessions, Vol. 3》収録のものが出色です。Iarla O Lionaird, Mary Black, Karen Matheson, Karan Casey, Mary Ann Kennedy, それに Allan Macdonald という、アイルランド、スコットランドのトップ・シンガーたちが声を合わせたコーラスで、1人1番ずつリードをとるという豪華版です。
unknown
2014-02-24
ミホール・オ・ドーナルがどこかで唄っていた記憶があるんですが、探しても出てきません。ご存知の方はご教示ください。
教えていただいたので、掲げておきます。これも名演。
教えていただいたので、掲げておきます。これも名演。
□RIVER TRANCE「The String Cheese Incident」というバンドが演奏しているRIVER TRANCEという曲があるのですが、原曲があるのでしょうか?」
たとえば2013年大晦日の年越しライヴで、始めと終りにフィドラーが弾いているダンス・チューンのことでしょうか。どちらもごく有名な伝統曲です。たいへん有名で、よく演奏もされ、録音も多いのですが、あたしはとにかく曲名を覚えることができません。
どなたか、ご教示のほどを。最初は2:20あたりから。後のは12:45あたりから。
□Muireann Nic Amhlaoibh の曲であれば何でも「名前が読めないんですけど、素晴らしいフルート奏者です」
前は公式サイトに発音が出ていたんですが、今は無いようです。カナ表記してみれば「ムイレン・ニク・アウリーヴ」でしょう。この人はフルートも達者ですが、まずすばらしいシンガーです。ぜひ、歌を聴いてください。
□〈Moonfesta〉Kalafina「この曲はケルト音楽ですか?」
前半はあたしにはケルトというよりも、クラシックの古楽、ルネサンスやバロック初期のスタイルを意図しているように聞えます。後半はケルトからは離れていると思います。
□「カントリーフォークの中に、ケルト音楽の流れ(影響)を強く感じるのは僕だけでしょうか? ということで、ケルトの流れを感じさせてくれる一曲をなにかお願いします」
「カントリーフォーク」が何を指すのか、今ひとつはっきりしませんが、カントリー&ウェスタンの源流にアイルランドの伝統音楽があり、オールドタイムやブルーグラスの源流にスコットランドの伝統音楽があることは、よく知られています。
ドーナル・ラニィが音楽監督を勤めた《Bringing It All Back Home》やチーフテンズの《Another Country》《Down The Old Plank Road》などには、そうした流れを実感させてくれる曲や演奏がたくさんあります。
個人的には「カントリーフォーク」から連想するのは Nanci Griffith で、彼女は一時期、ダブリンに家をもって、ナッシュヴィルと1年の半分ずつ暮していました。チーフテンズのツアーにも参加し、録音もあります。
あるいは Tim O'Brien やその僚友 Darrel Scott なども、ケルトの流れを感じさせる歌をうたっています。たとえば前者の《Two Journeys》(2001) です。
この2人も参加している《Transatlantic Sessions》のシリーズはジェリィ・ダグラスとアリィ・ベインがホストとなり、アメリカ東部、スコットランド、アイルランドのルーツ系ミュージシャンを集めて、ミュージシャンだけで、つまり聴衆無しにセッションをしてもらうのを映し、録音したもので、名演のオンパレードです。DVD と CD と両方出ています。映像はネットでも見られます。
□『ロミオとジュリエット』1968 サントラ「舞踏会の音楽にケルト音楽は使われているのでしょうか?」
1968年という時代にはまだ「ケルト音楽」は存在しません。「ケルト音楽」という呼称、概念は30年ほど後の、1990年代も後半になって登場します。
舞踏会の前半、男女がペアで踊っている時の音楽のベースになっているのは、当時のイタリア音楽、バロックの前のルネサンス音楽でしょう。モンテヴェルディに代表されるスタイルです。バロックにかかっているかもしれません。1967年には、イギリスで David Munrow や Christopher Hogwood が Early Music Consort を結成して、後の、いわゆる古楽の探索・復興に乗出していますから、その影響がある可能性もあります。
後半、腕に鈴を付けて踊られるのは、イングランドのモリス・ダンスの原型を意図していると思われます。その前に女主人が「モリスカ」と言っていますし。Morris dancing はシェイクスピアの他の作品にも登場します。現在、イングランドにしか残っていない踊りで、踊りそのものはまったく異なりますが、音楽は今に残るモリス・ダンスのチューンを連想させます。
なお、アイルランドの伝統音楽が映画に使われた例としてはスタンリー・キューブリックが『バリー・リンドン』(1975) にチーフテンズの音楽を起用したのが最初と思われます。
□豊田耕三 & 久保慧祐, Ross Memorial Hospital
「リクエストした曲はスコットランドのグループ silly wizard のメンバーであった Phil Cunningham が作った曲でしょうか。」
そうです。CDには明記されています。
なお、この曲は30分に及ぶ長いメドレーの2曲めで、演奏者としてはメドレーの一部として聴いてもらいたいと意図していると考え、リクエストの対象からは外しました。
□「キャンディーキャンディー」
「話の中でバグパイプ?をひく青年がいたのですが、曲も地方も分かりません」
「キャンディーの王子さまが、キルトをまとい丘の上で演奏しているもの」
お二人からリクエストをいただきました。原作ではなく、アニメ版と思われますが、あたしにはまったくわかりません。ご存知の方はご教示ください。(ゆ)