クラン・コラ・ブログ(アイルランド音楽の森)

 アイリッシュ・ミュージックなどのケルトをはじめ、世界各地のルーツ音楽を愉しむブログです。そうした音楽の国内の音楽家も含みます。加えて主宰者の趣味のグレイトフル・デッド。サイエンス・フィクション、幻想文学などの話もあります。情報やメモ、ゴシップ、ただのおしゃべりなどもあります。リンク・フリーです。

タグ:ラテン

 2月の shezoo さんの『マタイ2021』で登場した4人のシンガーのうち、一番強烈な印象を受けたのが行川さをりさんだった。この時が初見参でもあったけれど、それだけでなく、粘り強く、身の詰まった声には完全にやられた。他の御三方が劣るというわけでは全然無いけれど、行川さんの歌う番になると一人で盛り上がっていた。その行川さんと shezoo さんのピアノ、それに田中邦和氏のサックスというトリオのライヴ。初体験。

 このトリオの名前は shezoo さんオリジナルの1曲からつけられていて、その曲は前半の最後。行川さんの声の粘りが効いている。今回初めてわかって感嘆したのは、大きく張るときだけではなく、小さい声を途切れずに続けるときの粘りだ。冒頭の Butterfly でまずそれにノックアウトされる。それに張り合うようにサックスも小さく、ほとんどブレスだけのようだが、そこにちゃんと音を入れて小さく消えるのがなんとも粋。この曲は先日、エアジンでの夜の音楽でもアンコールでやって、いい曲だけど歌うのはたいへんだろうなあと思っていた。奇しくも今回はこの曲から始まる。奇しくも、というよりこれは shezoo さんの仕掛けか。

 2曲めは行川さんの詞に shezoo さんが曲をつけたチョコレート猫。ここで早速即興になる。夜の音楽では曲目にもよるのか、珍しく即興が少なかったけれど、今回はたっぷり入る。shezoo さんのライヴはこれがないとどうも物足らない。行川さんは声で積極的に即興に参加してゆく。全体にあまり激しくならない。声が細いまま、しっかりとからむ。ここだけでなく、行川さんは即興に必ずからむ。音を伸ばしたり、細かく刻んだり。shezoo さんのアンサンブルにシンガーのいるものは多い、というか、近頃増えているが、ここまで即興にからむ人は他にはいない。声が即興にからむと、ピアノもサックスもそれを中心にするようだ。楽器同士だと対抗するところを、声が相手だと盛りたてる方向に向かうのか。行川さんの声の質のせいもあるか。こういう身の締まり方、みっしりと中身が詰まっている感覚の声は、他にあまり覚えがない。

 後半はバッハから始まる。シンフォニア第13番からメドレーでマタイの中から「アウスリーベン」。あの2月の感動が甦る。これですよ、これ。シンフォニアのスキャットもすばらしい。やはりこれが今日のハイライト。それにしても、やあっぱり、この『マタイ』、もう一度生で聴きたい。2月の公演の2日め、最後の全員での演奏が終った瞬間、全身を駆けぬけたものは、感動とかそんな言葉で表現できるようなところを遙かに超えていた。超越体験、というと違うような気もするが、何か、おそろしく巨大なものに包みこまれて生まれかわったような感覚、といえば最も近いか。

 後半は充実していて、カエターノ・ヴェローゾがアルゼンチンのロック・シンガーの歌をカヴァーしたのもいい。クラプトンの「レイラ」のような、他人の奥さんへのラヴ・ソングで、結局その奥さんを獲ってしまったというのまで同じらしい。いきなり即興から入り、ヴォーカルは口三味線ならぬ口パーカッション。ちょっとずらしたところが、うー、たまりません。

 なつかしや「朧月夜」は、このトリオにしてはストレートな演奏。でも、これもいい。そしてラストは、おなじみ Moons。イントロのピアノがまた変わっている。この曲、やる度に変わる。名曲名演。アンコールは「天上の夢」。この日、サックスが一番よく歌っていた。

 行川さんは出産・育児休暇で、このユニットの生はしばらく無いのはちょと寂しいが、コロナ・ワクチン接種を生きのびれば、また見るチャンスもあろう。まずは行川さんの歌を生で至近距離でたっぷり味わえたのは大満足。この日のライヴは5月のものが延期になったので、あたしにはラッキーだった。場所は東急・東横線が引越したその跡地に引越した Li-Po。街の外観は変わったが、若者の街なのは相変わらず。昔からそうだったけど、こういうライヴでも無ければ、老人に縁は無いのう。(ゆ)

 このホールは小編成クラシックを念頭に作られていて、生音がデフォルトだ。ここで見たコーラス・グループのアウラも生音で、いつも最後尾に近い席だが、ハーモニーの微細なところまでごく自然に聞えた。

 林氏はヴァイオリンとのデュオなどで3回ここで演奏している由。ここでは初めてという akiko は発声のやり方が異なるから生音では無理で、この日もステージの両脇に小さなPAを置いていた。もっとも、席が最前列中央から少し右という位置で、この声がホールの中にどう響いていたのかはわからない。ミュージシャンとの距離が近いから、演奏している間の表情の変化などはよく見えて、それはそれでたいへん面白いのだが、増幅を前提とする音楽はあんまりど真ん前で見るもんじゃないな、と一瞬思った。

 それでも今回はここでやりたかった由で、それはそれで成功していた。このコンサートは二人が作ったアルバム《Spectrum》レコ発の一連のものの仕上げで、このアルバムは歌とその伴奏というようなものではまるで無いからだ。なにしろ林正樹の追っかけとしては、新譜は出たとたんに飛びついて感嘆し、このコンサートのことは知ると同時に予約した。そしたら席がど真ん前だった次第。別にここを望んだのではなく、ネット経由で予約する際は自動選択に任せたら、こうなった。

 林氏もステージで言っていたが、このアルバムの音楽は歌とピアノがまったく対等に遊んでいる。こういう音楽はごく稀だが、出現すると歴史に残るものになる。Shirley Collins と Davey Graham の《Folk Roots New Routes》がすぐ思い浮かぶ。その意味では林氏のソロはあったが akiko の無伴奏ソロが無かったのは、瑕瑾といえばいえなくもない。この人はその気になれば、無伴奏でも十分聴かせられるはずだ。

 コンサートの組立ても簡素な、音楽そのもので勝負する形。まあ衣裳やスポンサーらしい腕時計とイヤリングの装飾品という演出があるのはご愛嬌。林氏も、短かめのズボンにサスペンダーで上着無しという、これまで見た中では一番おシャレな恰好をしていた。ズボンの裾が短いので、ピアノに座ると脛が露わになる、その両脚の動きに眼が行く。ちょうどこちらの眼の高さでもある。今回の特徴かもしれないが、ペダルをほとんど踏まない。自分のソロの時など、両の踵が浮いてビートを刻んでいる。ペダルを踏むのは歌により添うときが多い印象だ。

 加えて、ステージ背後の壁の上の方に、これもプロジェクション・マッピングの一種だろうか、動画が曲によって淡く映しだされる。水面に水滴が落ちて波紋が広がるのを真上から見るもの、縦や横の縞が揺れながら流れるもの、水面に当たる陽光を水中から見上げているようなもの、いずれも自然を撮影したのではなく、コンピュータ上で合成している。最前列で見上げると、ステージ上の照明の効果もあるのか、淡く見えたが、後方から見るともっとはっきりしていたかもしれない。これが映しだされるのは、どうやら新作《Spectrum》収録の曲を演っていたときのようでもある。

 新作レコ発ではあるが、そこからの曲は3分の2ほどで、冒頭やアンコール、そしてハイライトになった、いつもは akiko がライヴの冒頭でやるという曲などは、それ以外からの選曲。林氏のソロもかれの自作。新作からの曲ももちろん良くて、とりわけ〈月ぬ美しゃ〉や、林氏の旧作のうちの akiko が好きな曲に新たに詞をつけたもの、〈Teal〉や〈Blue Grey Road〉などはあらためて名曲名演と噛みしめた。

 とはいえ、このライヴについて言えば、新作以外の曲がすばらしい。上記の〈Music Elevation〉やアンコール前のアントニオ・カルロス・ジョビンの〈One Note Samba〉の即興のかけ合いには音楽を演る快感が結晶していて、それを聴き、見ているこちらも共に浮きあがる。後者ではカーラ・ブレイの〈I Hate to Sing〉を思いだし、また林氏とグルーベッジとのライヴでの林氏のオリジナル〈ソタチ〉も思いだした。ひとつだけの音を連ねるのは、モールス信号にはなっても、音楽にはなりそうにないのだが、それだけに作曲家にとってはやってみたくなるのだろうし、成功すると突破してしまう。

 あたしとしては林氏がかかわっているというだけで、akiko が何者かはまったく知らないままアルバムを買い、ライヴにも行ったわけだが、こういうシンガーならあらためて聴いてみよう。それにしても、林氏の表現の幅の広さ、音楽語彙の豊冨さには、眼が眩む。もちろん、演奏家としての技量の水準も半端ではなく、ソロの〈Cleanse〉では、右手と左手がまったく別々の動きをする。ピアニストとしては当然なのだろうが、その別れ方がおよそ想像を超えている。まるで、別々の人間が片手ずつで弾いているようだ。凄いのはそこから生まれる音楽のスリリングなことで、テクニックを披露するための曲ではなく、このスリリングさを生むためのテクニックであるとわかるのだ。ピアニストという枠組みよりは、器のとてつもなく大きな音楽家が、たまたまピアノを楽器としているように見える。こうなるとキース・ジャレットとかブラッド・メルドーとかとまるで変わらない水準にあると、あたしには思える。やはり一度はナベサダでの林氏も見ねばばるまい。

 客層はふだんあたしが行っているライヴのものとはまったく違うようだが、どちらかというと林氏のファンの方が多かった感じだ。一人、とんでもなくデカい、たぶん鬘と思われるものをかぶった太った中年女性に見える人がいたが、あの人の後ろに座った人は困ったんじゃなかろうか。このホールはシートが左右にずらして据えてあって、前の人とは重ならないようになってはいるが。ここはホールそのものは文句のつけようが無いが、唯一の欠点はホワイエが狭すぎる。かき分けて出て、階段を降りる。いつも思うが、階段を降りる人がほとんどいないのは不思議だ。(ゆ)


akiko: vocal
林正樹: piano, voice


spectrum
akiko × 林正樹
ability muse records
2019-08-07


 なんとも面白い講演だった。日本におけるラテン音楽の吸収、といえば、歴史的には安土・桃山時代に南蛮文化の一環として入ってきたものが最初のはずだが、その痕跡は残らなかった。音源として残っているのは昭和初期のSP音源が最古の由。当時、アメリカ、ヨーロッパではやっていたラテン音楽を一早く模倣・移入したもの。当時はやっていたものを一早く模倣・移入するというこの姿勢はその後20世紀を通じて一環している。マンボ、チャチャチャ、そしてついにはドドンパという日本独自のものまで生まれる。

 戦前の音源もおもしろかったが、思わず姿勢を正したのは戦後に入ってからだ。後藤さんは全部リアルタイムで聞いて、ご母堂や自分もうたっていたとおっしゃるが、ぼくも昨日かかったヴァージョンそのままではなくても聞いていた曲が次々に出てくる。確かにこうして聞かされればラテンとわかるが、当時はもちろんそんな認識はない。最初に聞いたラテンはたぶん『狼少年ケン』の主題歌だ。『冒険ガボテン島』もあった。

 そうして昭和の歌謡曲を作ってきたものの、小さくない部分がラテン音楽だとよくわかる。なにも言われずに聞けば、ムード歌謡、演歌にしか聞こえないうたまで出されると、歌謡曲って実は雑種、混淆音楽であることが見えてくる。岡本さんによれば、こんにちの意味での演歌なる呼称はそんなに古くない。1960年代後半に始まるのではないか。

 そうしたラテンの要素が1970年代に入るとさっぱりと消える。断絶が起きる。そして1980年代に入ったとたん、オルケスタ・デ・ラ・ルスが颯爽と登場する。そのルーツは1976年のファニア・オールスターズの来日になる。これはいわばわが国サッカーにおけるメキシコ・オリンピックの銅メダルのようなものだろう。まったく新しい世代がラテン音楽をやりだした。さらには沖縄のディアマンテスのような存在まで出現する。流行しているからというよりも、単純にかっこいい、楽しいということでやりだす。このあたりはアイリッシュ・ミュージックとも共通する。

 今回はタンゴがない。フラメンコもない。そちらは戦前からの長い歴史をもち、独自の展開をとげてきていて、今回の文脈からははずれるわけだ。後藤さんによればジャズ喫茶の前にタンゴ喫茶なるものがあったそうだ。そちらはそちらで、また別に企画されるようなので、これは楽しみだ。いーぐるのシステムでカマロンが聞けるぞ。

 それにしてもこういう文脈で聴く歌謡曲はなかなかすごい。美空ひばりは多少心組みもあったが、郷ひろみとか中森明菜とか、シンガーとして見直した。本田美奈子はラテンをうたっていなかったかな。トニー谷と共演している宮城まり子というのも他にあれば聞いてみたい。先日夢中で読んだ堀井六郎の昭和歌謡の本もあらためてこの角度から読みなおしてみたくなる。歌謡曲というスタイルまたはジャンルは、どうしても好きになれなかったが、このあたりがとっかかりになりそうだ。

 やはり知らないジャンルのこういう紹介は刺激になる。足元にあって存在は否応なく知っているものに、意外な角度から照明を当てられると、思わぬ魅力に気がつかされる。

 岡本さんの、もう好きで好きでたまらないんです、という姿勢にも共感する。選曲のためにあれこれ聴いているだけで、ひとりで盛り上がってしまった、というのもよくわかる。

 いーぐるの連続講演はこのところ面白そうなものが目白押しで、毎週でも行きたいもんだが、霞を食って生きていくわけにもいかないのが哀しい。(ゆ)
 

    (ゆ)も何度か担当させていただいている四谷のジャズ喫茶「いーぐる」連続講演荻原和也さんの「ショーロの午後」。『ポップアフリカ700』の著者として名を挙げた荻原さんだが、音楽遍歴の出発点はラテンで、中でもショーロには当初から親しみ、以後、こんにちまでずっと聞いてきた、アフリカよりもこちらが「本業」とおっしゃる。
    
    ショーロはわが国でもショーロ・クラブがあるくらいだし、もうすぐ本国からベテラン・バンドが来日もするそうで、荻原さんはしきりに「無名」のジャンルと繰り返しておられたが、ファンは結構多いのではないか。とはいえ、「いーぐる」が久々に満席になって、しかもふだんの常連がほとんどまったくいないという、なかなか興味深い集客になった。
    
    ショーロはブラジル北東部の伝統をベースに、リオ・デ・ジャネイロで発達した即興音楽、後にはサンパウロにも広がったが、基本的に都市の音楽だそうだ。とはいえ、ジャンルとしてはしっかり存続しているものの、主流になったこともなく、むしろシーンの背後でミュージシャンたちが自分たちの楽しみのために演奏を続けていたもので、ブラジルでは今でも積極的に聴く人はほとんどいない。
    
    とはいうものの、ショーロが消滅するということもまたなく、優れたミュージシャンたちが、その時々にすぐれた演奏をし、録音したものが浮上してくる。折りに触れて、思わぬミュージシャンがショーロへの傾倒を音楽で表現する。録音もインディーズであり、在り方としてはアイリッシュに近いようにも見える。
    
    また、ショーロという名称自体はポルトガル語の「ショナール」=泣くが語源とされているが、明確な規定、定義があるわけではない。リズムも複数あるし、楽器編成も戦前はフルートやサックス、戦後はバンドリンをはじめとする弦楽器が中心となるくらいで、固定されてもいない。ただ、数を聞いてゆくうちに経験的に体得されて、そのうち、それがショーロか、あるいはショーロの要素を持っているか、聞けばわかるようになる。その点で、終わりに近くかかったスコット・ジョプリンの〈The Entertainer〉やラストのビートルズ・ナンバーのショーロ化に、ショーロの特徴が現われていた。この辺も、アイリッシュ・ミュージックの在り方に通底するところがある。
    
    これまでショーロを聞いた経験は数えるほどだが、どちらかというとマイナー調の、「泣き」のメロディ、昏いサウンドというイメージを持っていた。今日聞かせていただいた音源はしかし、結構明るい調子のものが多く、名前とは裏腹に哀愁を帯びたものばかりではないそうだ。ビートルズ・ナンバー(ちなみにかかったのは「ヘルプ!」)をショーロで料理したものなど、実に楽しかった。これは、音楽的にも高度だし、しかもビートルズとショーロ伝統双方へのリスペクトもあり、決して受け狙いの企画では終わらない、気合の入ったもので、こういうシャレっ気は大好きだ。
    
    ショーロ自体は19世紀末、録音の発明前にはすでに成立していたそうで、実はここで音楽としての生命を終えていたのかもしれない、という荻原さんのコメントは興味深かった。それが生きながらえたのは、偉大なミュージシャンが出て、これを大成したことが主な要因ではあるだろうが、録音メディアの出現も大きかったにちがいない。
    
    録音によって音楽のジャンルの消長は速度が遅くなった、というのが筆者の仮説だが、ショーロの存続はさしづめ、その好例になるかもしれない。
    
    最も古い録音が蝋管なのもアイリッシュと同じだが、録音の初期にはこうした特徴的な音楽や楽器の録音が多かった。アイリッシュ・ミュージックの場合も19世紀末のイルン・パイプの録音が最初とされている。SP時代になると「レイス・レコード」として、明確に対象を絞った録音が大量に作られる。
    
    ショーロの音源はしかし、本国でのジャンルの評価の低さを反映して、復刻も少なく、すぐに廃盤になってしまうようだ。昨日かかった中では客の間で評価の高かったギタリストの Garoto や、ショーロ史上ほとんど唯一のシンガー Ademilde Fonseca の音源も今は入手が難しいそうな。
    
    アデミルジには一同驚嘆したが、後継者も一切現れず、ワン&オンリーの存在だったそうだ。最近になって、ついに後継者が現われたが、それが何と日本人女性だった、というのはいろいろな意味で興味深い。ひょっとすると、数十年たつと、アイリッシュ・ミュージックの伝統を最も良く受け継いでいるのは、アメリカではなく、日本ということになるかもしれない、と半ば本気で思う今日この頃ではある。
    
    その女性、片山叔美さんも会場にいらしていたが、うたは聞けなかった。05/22(土)に吉祥寺・Alvorada(アウボラーダ)でライヴがあるそうだ。

    片山さんはCD《私はショーロを歌う》も出され、その中では、89歳でまだまだ元気なアデミルジ本人も共演されている由。ブラジル音楽といわず、ヴォーカルに興味のある向きは聞いて損はないはずだ。
    
    非ブラジル人によるショーロ展開という点で、フランス人 Nicolas Krassik によるヴァイオリンも面白い。ショーロの歴史では、一人だけ、戦前にいたそうだが、本格的にヴァイオリンでショーロを演奏するのは初めてといって言いそうだ。
    
    他に印象に残った演奏では戦前の、ショーロの大成者 Pixinguinha のサックスと Benedicto Lacerde のフルートの共演、戦後すぐの Jacob Do Bandolim、この人は生涯公務員でプロにならなかったそうだが、バンドリンという楽器はこういう風に弾かれるために作られたのだと思わせる。一個の天才だろう。それに A Cor De Som というバンドのショーロ・ロックと、Hamilton de Holanda Quintet のショーロ・ジャズ《Brasilianos 2 (W/Dvd)》。
    
    ショーロはブラジル音楽の底流として、日の当たらないところに流れているらしい。軽快で、おしゃれで、即興には聞こえないが即興で、しかも複雑。しかし芸術性を追求するのではなく、あくまでも娯楽としての一線ははずさず、一方で自己顕示欲とも無縁だし、経済的見返りも大きくはない(《BEATLES 'N' CHORO》は大ヒットして4集まで出たそうだが)。気安く聞けるが、聞きこもうとすればいくらでも深くなる。
    
    これでショーロに開眼した、とまでは言えないが、ショーロがまた少し身近になったことは確かで、ブラジル音楽のそれこそ底知れぬ密林にわけいる、一筋の水脈になるかもしれないという期待が出てきた。
    
    それにしても荻原さんの博識と、それを縦横に操る話術にはあらためて脱帽。(ゆ)

 渋さ知らズ、桃梨、それにサルサガムテープという、超強力なトリオによるライヴが、来週月曜日に東京・南青山の「月見ル君思フ」というライヴハウスであるそうです。地図を見ると、マンダラのもう一つ先ですね。ライヴハウスとの名前としては異色で、はじめ会場はどこだとさがしてしまいました。

 この合体バンドだけでも見たいなあ。

 サルサガムテープというバンドは初めて知りましたが、これあ、おもしろそう。CDも注文してしまいました。


  *   *   *   *   *

はじめまして。
私は、サルサガムテープでバンブーをたたいているいろべです。

今度、桃梨さんたちと、3時間ノンストップのライブをやります。ご都合よろしければ、ぜひ遊びに来てください。
以下詳細です。


月見ル君思フ2周年記念 anv.
サルサガムテープ presents

『スッポンポン de 宴の夜』

10/09(月曜祝日)
開場18:00 開演18:30

☆出演☆
渋さ知らズ
桃梨
サルサガムテープ
☆特別出演☆
桃サガム知らズ

チケット☆前売り2300円 当日2800円(ドリンク代別)
1) ローソンチケット☆Lコード:33750
2) 月見ル君思フ店頭発売 10/08 22:00まで
3) 月見ル君思フ インターネット予約 09/29 24:00まで

♪プロフィール♪
渋さ知らズ☆ロック、ラテン、フォーク、果ては演歌に至るまで、そのスタイルはまさに脱ジャンル。数多くのプレーヤーに加え、肉体美の舞踏集団、セクシーな踊り子、赤ふんどしのお囃子、パフォーマー、野次馬、外国人、隣人などが入り乱れている。
彼らのステージには、常に独特の痛快さと前衛的なパワーがみなぎっている。そんな渋さ知らズを率いているのが、自らを「ダンドリスト」と称する、不破大輔。
今回は、23名できてくださいます。
即興演奏の痛快さをたっぷりと味わってくださいね!

桃梨☆上村美保子(歌と作詞と、時々鍵盤ハーモニカ)とJIGEN(ベースと作編曲と、時々ウクレレ)による、「うたとベース」の二人組ユニット。日本の心を歌い上げるオリジナル曲を中心に、民謡、歌謡曲、童謡などもカバー。
七色にキャラクターを変える上村美保子とギターのようにベースを弾くJIGENのパフォーマンスはエンターテイメントとして魅了させてくれます!

サルサガムテープ☆「うたのお兄さん」かしわ哲の呼びかけで、神奈川県にある福祉施設を利用する知的に障がいのある人たちと結成。ポリバケツにガムテープを貼った手作り太鼓でラテン系リズムセッションを始めたことからバンド名がつく。ドラムに元ブルーハーツの梶原徹也も参加。
超がつくほどの個性を持つ彼らは見ているだけでもめっちゃおもしろい。何かしらやっています。
すべてを肯定する元気爆発サウンドを是非体感してください!

桃サガム知らズ☆40名を越す、一夜限りのスーパーユニットが誕生。この日を逃したらもったいない!
さてさて、本人たちも何が起こるかわかりません。
目の前に虹があらわれるように、人生とは予測のつかないもの。。。
だから一夜限りの『桃サガム知らズ』誕生の瞬間をいっぱいの人たちと分かち愛たいのです。
宴フィナーレは思い切りハデに参ります。 それはもうバナナの皮にかけて、皆様しばらくの語り草となるほどに☆


Thanx! > いろべさん@サルサガムテープ

 「ケルティック・クリスマス」にも出演した鈴木亜紀さんが、惚れこんだアルゼンチンのシンガーを呼んで共演もするそうです。

 ふだんアルゼンチンのシンガーは聞きませんが、この人はなかなか面白そうだし、共演者には船戸博史や太田恵資の名前もありますので、紹介しておきます。ぼくはちょっと行けそうにないんですが。

 公式サイトもありますが、鈴木さんからのメールのコメントが面白いので、そのまま転載します。


■Aki suzuki info---------------------------------------------------------
   『あと2週間で,あのリリアナ・エレーロがやって来る!!』

 リリアナ・エレーロ from Argentina
 40才からプロとして歌を歌いはじめ,2006年,初来日!
 現在アルゼンチンでは11枚のCDを発表している,かのメルセデス・ソーサが自らの後継者と呼んだ大歌手。
 9月27日,オーマガトキより国内盤第2弾(来日記念盤)CDリトラル発表。
 現役の国立大学哲学教授でもある彼女の大学講議も予定!
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 みなさま,お久しぶりです。

 今年,この2006年は,『見聞録シリーズ』にとって替わる,私の今までの人生最大のイベントと云っていいと思います,アルゼンチンの『ほろ酔いの哲学者,リリアナ・エレーロ』を仲間と共に自ら招聘し,ツアーを行おう,というもの。
 『結婚より大事!』と公言してきた私です。

 私はかなりモノグサで,自分のことすら一生懸命活動しなかったのに,リリアナの歌を聴いてから,なんだか勝手に体が動いてプロモーションしてしまいます。
 もちろん,これはリリアナをプロモーションする,という単なるファン心理ではありません。彼女の歌を聴いた時,勝手ながら『同じものを見ている』と確信してしまいました。だけど,形はちがう。だからこそひとつのステージを作れたらきっと面白いぞ!と思いました。
 
 リリアナ・エレーロさんは現在58才。アルゼンチンではベテランの歌い手であると共に,現役の国立大学の哲学の教授です。といっても,ぜんぜんムズカシイ感じの人ではありません。お店に入れば,これは誰それに,こっちは誰それに,とたくさんたくさんおみやげを買い込んでしまい,『あ〜もう買わない,買わないったら,買わない!』といいながら店を出て,また買ってしまうような人で,いつも笑顔炸裂です。ワインも良く飲みます。

 その歌は,ものすごいエネルギーに満ちあふれていますが,ドカン,というだけじゃなく,じわじわと静けさを持ってしみ入ってもきます。『これぞ歌!』と知らされます。定規からはものすごくハミ出して野方図,同時に限りなく知的で優しいです。

 ほぼ1年かけて準備してきました,『鈴木亜紀meetsリリアナ・エレーロ』,こんな素晴らしい歌い手を2006年10月,生まれた国,日本にご紹介できること,とても嬉しく思います。記念すべき初来日,ぜひお見逃しなく。
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●スペシャルお知らせ●

その1 ライブご来場の方々もれなく,『風の旅人』誌バックナンバープレゼント!
    エッセイや素晴らしい写真が存分楽しめる,すばらしい雑誌です。

その2 今大人気の洋服ブランド『Garcia Marques gauche』の,くり返し使える
    オリジナルウエットタオル,先着限定にてプレゼント!

その3 来日中,TBSニュース23金曜深夜便にリリアナ登場予定!
    筑紫哲也さんがリリアナの歌を聞いて,ぜひ取材しよう,
    と言ってくれました。詳しくはまた。

その4 リリアナ自身による,大学での講議もあります。しかも入場無料。
    こんなチャンス,多分一生ないでしょう。詳しくは公式ウエブを。

その5 焼津,仙台会場ではスズキアキ写真展も見てくださいね。焼津では
    地元レストラン,センタの出店あり。ここ,おいしいです。
    くろはんぺんも地酒磯自慢も,ぜひ試して!

その6 アルゼンチンから来るサポートメンバーも豪華!(イケメンらしい)
    あ,当然ニッポンのサポートメンバーもステキです,ええそれは。
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■Aki suzuki meets Liliana Herrero ツアー,始まり始まり■
○リリアナ・エレーロ(歌)マティアス・アリアス(ギター)
 マリアーノ・カンテーロ(パーカッション)
鈴木亜紀セットのメンバーは下記参照↓
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●10月6日(金)・千葉 舞浜 Club IKSPIARI
 岡部洋一(パーカッション)
 船戸博史(ウッドベース)

・open 18:30/start 20:00
・前売5,250/当日5,775円(全席自由・オーダー別)
・問合せ:Club IKSPIARI tel.047-305-2525
・取扱い:チケットぴあ、Club IKSPIARI
     オンドマル渋谷オフィス tel.090-3313-0626(高崎)
◇ディズニーランドにあります。東京駅から約20分。中は大人がくつろげる感じ。アルゼンチン的おつまみが注文できます。

●10月8日(日)・岡山 さん太ホール
 岡部洋一(パーカッション)

・open 17:00/start 18:00
・前売4,000/当日4,500円(全席自由)
・問合せ:CHOVE CHUVA tel.06-6225-3003
      嶋岡 tel.090-8652-0205
・取扱い:ローソンチケット、CHOVE CHUVA
     ディスクトランス tel.086-232-0510
◇できたばかりのホールで。まだみんなきっと元気な時でしょう。

●10月9日(月/祝)・大阪サンホール
 岡部洋一(パーカッション)
 船戸博史(ウッドベース)

・open 16:00/start 17:00
・前売3,800/当日4,300円(全席自由・1ドリンク別)
・問合せ:CHOVE CHUVA tel.06-6225-3003
     サンホール tel.06-6213-2954
・取扱い:チケットぴあ、サンホール、CHOVE CHUVA
     プランテーション tel.06-4704-5660
     fish for music 070-334-1820
◇リリアナご一行に関西弁も覚えてもらいましょうね。どや?とか。

●10月12日(木),13日・名古屋 得三
 両日 岡部洋一(パーカッション)
 12日 船戸博史(ウッドベース)
 13日 太田恵資(ヴァイオリン)
・open 18:00/start 19:00
・前売3,800/当日4,300円(全席自由・オーダー別)
・問合せ:得三 052-733-3709
・取扱い:チケットぴあ、得三、
     サンバタウン tel.052-861-0336
◇さ〜て,トクゾー2daysです。佳境のころでしょう。こういう時におこるハプニングは結構楽しいものです。

●10月14日(土)・静岡 焼津市文化センター 小ホール
 岡部洋一(パーカッション)
 船戸博史(ウッドベース)
 太田恵資(ヴァイオリン)

・open 18:00/start 19:00
・前売3,800/当日4,300円(全席自由)
・問合せ・取扱い:焼津市文化センター tel.054-627-3111
・共催:焼津市文化センター
◇リリアナとイケメンたちにも黒ハンペン、食べてもらおうと思います。この日の為に私は暗室に死ぬほどこもって写真を焼きました。フルメンバー勢揃い! 焼津だもん、やっぱ。

●10月16日(月)・東京STAR PINE'S CAFE
 岡部洋一(パーカッション)
 太田恵資(ヴァイオリン)

・open 18:30/start 19:30
・前売4,000/当日4,500円(全席自由・1ドリンク別)
・問合せ:スターパインズカフェ tel.0422-23-2251
・取扱い:チケットぴあ、スターパインズカフェ
     オンドマル渋谷オフィス tel.090-3313-0626(高崎)
◇東京では何を食べてもらいましょうかね。このころになるともうきっとみんな炸裂しています。素敵!

●10月18日(水)・仙台 青年文化センター 交流ホール
 鈴木亜紀はソロで!

・open 18:30/start 19:00
・前売、当日共 3,000円(全席自由・1ドリンク付)
・問合せ:リリアナの歌を聴く会実行委員会 tel.022-234-7682

◇結婚よりも大事なイベントの最終日です。考えると涙腺が。あ,まだ早いぞ。泊まりは和風旅館だそうで,寛いでもらいましょう。

お読み下さり,ありがとう。お待ちしています。
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リリアナ・エレーロ初来日,公式ウエブ
これを見ればツアーのことが全部わかります!
チケットもこちらで。

スズキアキ・ウエブも,見てね。

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