6月の REB fes 0.0 を覗いたら面白かったので、同じ final 本社の REB fes 2 に行く。
入口で試聴はするかと訊かれ、すると答えるとトレイを渡される。試聴するものをこれに載せ、中央のテーブルのどこかで試聴してくれ、同時には3アイテムまでできる。トレイは社食や学食で使われるようなほぼ正方形のダークブラウンのプラスティック製。黒のメッシュが敷いてある。柔かい素材のこのメッシュはただ置いてあるだけで、固定されてはいない。入って右側の壁際にならんでいる試聴用アイテムのブースで何か借りると、借りた品数に応じて1とか2とかの数字と出展社の名前が書いてある札を品物と一緒に渡される。トレイに札を立てて試聴する。
まずは一番手前の Sound Labo AIMS のブース。Maestraudio MA910SR の4.4mm ケーブルを相談。SR はリケーブルできるが、デフォルトのケーブルで最適チューニングしてある、バランスでは低域が瘠せると配給元アユートの営業氏が言う。そのデフォルトでは低域がふくらみ過ぎに聞えるから、バランスで低域が瘠せるならその方がいい。前回0.0の時に買った 2pin のものが良かったので、それに似た音のものを2種類薦められて試聴。より気に入った方はケーブル自体がひどく太い。
決めかねて、保留し、イヤフォンを試聴する。MA910SB を試聴したかったが、試聴機は無し。値下げしたから買ってくれということか。qdc Superior、Intime 煌 MarkII、雅 MarkII、E5000、B2、A5000を試す。
アユートさん一押しで宣伝している qdc Superior は final の A シリーズそっくりに聞える。 ならば評判がいいのはわかるが、要らない。Intime の2機種は MA910SR そっくりに聞える。そりゃまあそうだろう。先に Intime を持っていれば、MA910SR は買わなかっただろう。
B2 がなかなか良い。筐体の材質にもよるのか、A4000より装着感がいい。音も気に入る。とはいえ、BA一発なら、夏のヘッドフォン祭 mini で聴いた Acoustic Effect を先に欲しい。final はダイナミック・ドライバーを聴きたい。Acoustic Effect は BA に命を賭けていて、それが音にも出ている。
A5000はなるほど良い。A4000よりヴォーカルが生身に近い。となると MA910SR と似てきて、あえて買うこともない。
とにかく聴いてみないとこういうことはわからなかったのだから、マイペースで試聴できたことはよかったと思いながら、final のカウンターにある REB ブランド新製品のプロトタイプというのを、ことのついでに聴いてみる。Acoustune のイヤフォンに外見が似ている。
すばらしい。これに全部持っていかれた。今回一番のヒット。聴きながらどうしようもなく顔からしまりがなくなり、にやけてしまう。マスクをしていてよかった。すっぴんだったら、あの爺さん、とうとうイカレたと思われて、拘束衣を着せられていただろう。
ヴォーカルが実に気持ちいい。晴れやかな空間に、身の詰まった音が鮮明に新鮮に鳴る。音じゃあない、音楽が鳴っている。試聴用の音源を次々に聴いてしまう。聴きなれた曲が洗われたようにみずみずしく聞える。どれもこれもあらためて名曲名演名録音、と惚れなおす。いつまででも聴いていたい。でももう時間が無い。こうとわかっていたなら、開場と同時に来て、閉場までずーっとこれだけを聴いていたかった。次はそうしよう。なろうことなら、このままもって帰りたい。この試聴機、売ってくれませんか。さもなきゃ長期貸出でも……。
これまで聴いた全てのイヤフォンの中でベストの音。むろんこれまでのだって、どれもその時々でベストだったわけだが、この先どんな製品が出ても、この音ならずっと好きでいるだろう。死んだら、他は売っぱらっていいが、これだけは棺桶に入れてくれ。地獄に落ちても、これがあれば耐えられる。
製品化は年内どうか、というところだというが、来年3月までに出てくれればいい。もちろん、早ければ早いほどいい。今の世の中、いつどうなるか、わかったものではないのだ。完成した音を聴かずに死ねるか。
値段は5万以下らしい。10万でも買う。やはり試聴はしてみるものだ。
これを聴いてしまうと、持っているものまで霞んでしまった。試聴にデメリットがあるとすればこれだな。でも聴いてみなければ出逢えない。
とにかく、気をとりなおして、あらためてケーブルを試聴。結局オーダーメイドのものを注文。Black Back という AIMS のサイトには出ていない、新しいシリーズらしい。
クロージング間際まで2時間たっぷり遊ぶ。入れ替わり立ち替わり人が来て、場内はずっといっぱいの感じ。もっとも、ヘンにわさわさしていないし、殺気立ってもいない。皆さん、おちついている。試聴していた隣の席の人は MAKE 4 のチューニングに余念がなかった。ピンセットで何かやっては、自作のDAPらしきもので聴いている。A&KのハイエンドDAP をトレイに置いて、腕組みして目をつむってじっと聴き入っている人もいる。背後ではクマさんが、Analog Squared Paper のアンプについて熱弁をふるっている。それにつられて聴いてみて、のけぞって驚いている人もいる。アンプは使ったことがなかったらしい。そう、アンプでも音は変わる。MAKE シリーズのチューニングはそこまで入れることもできる。
REB fes はこの後しばらく遠隔地を回るらしい。でも、いずれまたここに戻ってくるだろうから、その時は行くぞ。あのプロトタイプを聴かねばならぬ。(ゆ)