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ジャニスとビッグ・ブラザー&ザ・ホールディング・カンパニー
02月15日・火
Tidal でデッド関連の音源を聴く。ジャニス・ジョプリンの《Pearl》はバック・バンドの質の高さは一聴瞭然。ジャニスも水を得た魚のように活き活きしている。ただ、《Cheap Thrills》に比べると、ややコンパクトにまとまっている。これは完成されたシンガーのアルバムだ。
《Cheap Thrills》はバンドがジョプリンについていけないだけ、ヒロインの野性が表に出る。モンタレーでのあのパフォーマンスを引き出すには、ビッグ・ブラザー&ザ・ホールディング・カンパニーのヘタさが必要だった、という気もする。つまり、ジャニスというロケットを地上から打ちあげるには、ヘタでもなんでも、闇雲なエネルギー、八方破れの突進が必要だった。しかし、それ以上に、シンガー本来の軌道に乗せるには、まったく能力不足だったわけだ。それはバンド以外の周囲の人間には誰の目にも明らかだったようでもある。今聴いても、それはわかる。
その本来の軌道の先に何があったか、ついにわからないのは、やはり惜しい。
ロケットの初段には闇雲な、八方破れの生のエネルギーが必要というのはデッドにも通じる。1960年代の「原始デッド」のショウに感じられるのは同じエネルギーだ。1970年代になると、生々しさ、八方破れな態度は後退し、代わってよりコントロールの効いた、質の高い音楽が現れる。
##本日のグレイトフル・デッド
02月15日には1968年から1973年まで3本のショウをしている。公式リリースは無し。
1. 1968 San Quentin State Prison, San Quentin, CA
前日のショウの最後に、明日の午後、サン・クエンティン刑務所でカントリー・ジョー&ザ・フィッシュ、デッド、ジェファーソン・エアプレイン、それに他にもいくつかのバンドのメンバーが演奏することが発表された。刑務所外の草の生えた丘の斜面で、トラックの荷台をステージにして、ガルシア、キャサディ、シャーラタンズのメンバー、CJ&F の Barry "the Fish" Melton が演奏した。刑務所の中では囚人たちのストライキが起きるか起きないか、一触即発になった。この草地には500人ほどのヒッピーが集まり、音楽に合わせて踊った。
2. 1969 Electric Factory, Philadelphia, PA
このヴェニュー2日連続の2日目。3時間近い。
3. 1973 Dane County Coliseum, Madison, WI
前売4ドル、当日5ドル。開演7時半。この年2本めだが、すばらしいショウの由。
会場は現在は Veterans Memorial Coliseum という名称で、Alliant Energy Center と呼ばれる複合施設の一角をなす多目的屋内アリーナ。1967年オープン、2003-2004年に完全改修されて、座席数10,231。デッドがここで演るのはこれが最初で、以後この年10月、1978、79、81、83年と、計6回ショウをしている。うち1978-02-03の一部が《Dick's Picks, Vol. 18》でリリースされた他、1981-12-03の〈It's All Over Now, Baby Blue〉が《Postcards Of The Hanging》で、1973-10-25の〈Dark Star> Eyes Of The World> Stella Blue〉が2021年の《30 Days Of Dead》で各々リリースされた。
ここから2月一杯、中部のミニ・ツアー。(ゆ)
デッドとフェスティヴァル
ウッドストックの言い出しっぺの一人 Michael Lang が8日に77歳で亡くなったというニュース。4人の創設者の中では、最もアクティヴに関っていたようにみえる。1944年12月生まれだから、ガルシアより2歳下、ハートの1歳下、クロイツマンの1歳半上。1969年のウッドストック当時25歳。
デッドもウッドストックに出てはいる。が、演奏に満足できず、映像、録音のリリースは断った。昨年出たフェスティヴァル全体の録音の完全版ボックス・セットに初めて演奏の全貌が収められた。もっとも、全部を買わせようという商魂が嫌で、あたしは買わなかった。デッドのせいではないにしてもだ。
デッドは多数のアクトが限られた時間で演奏するフェスティヴァル形式は苦手で、ウッドストックの前年のモンタレー・ポップ・フェスティヴァルにも出てはいるが、演奏はすばらしかったという評価もある一方で、ザ・フーとジミヘン、オーティス・レディングとジャニス・ジョプリンの間で、影は薄い。
オルタモントは会場入りしたものの、雰囲気のあまりの殺伐さに嫌気がさして、ステージに上がらずに引き揚げた。
フェスティヴァルの演奏で良かったのは、1982年ジャマイカでの Jamaica Wold Music Festival ぐらいのようだ。この時は出演者が誰も彼も時間にルーズで、スケジュールは押しに押し、初日トリのデッドがステージに上がったのは午前3時、というからデッドには合っていた。
集めた聴衆の数では1973年07月28日、オールマン・ブラザーズ・バンドとザ・バンドと合同で Watkins Glen に60万人を集め、史上最大のロック・コンサートと言われる。単独では1977年09月03日、ニュー・ジャージー州の Raceway Park に単独で10万人を集めた。これはこの年、ハートの自動車事故のために夏のツアーができなかったお詫び(?)のショウ。こちらは《Dick's Picks, Vol. 15》として公式リリースされた。ちなみにこれは Dick LatVala が手掛けた最後の《Dick's Picks》。リリース直前にラトヴァラが急逝したため、現在のアーカイヴ管理者のデヴィッド・レミューがこの後を引き継いだ。
##本日のグレイトフル・デッド
01月09日には30年間で一度もショウをしていない。まったくショウをしていない日が365日のうちに4日ある、その1つ。前に2日と書いたが、ふたつ見逃していた。(ゆ)
初詣
01月01日・土
例年通り、近所の神社巡り。小町神社の階段はまだ一気に登れたが、太股が重い。ここ半年、速歩ばかりしていて、階段登りをしていなかったせいか。もう少しやるか。
##本日のグレイトフル・デッド
元旦には1966年と1967年の2本のショウをしている。
1. 1966 Beaver Hall, Portland, OR?
ではあるが、このショウは存在が疑問視されている。SetList Program にはそこにいたという証言もあるのだが、記憶が曖昧。DeadBase XI ではポートランドでのアシッド・テストとして1月のどこかという記載。Deadlist ではこのヴェニューでのイベントは01月15日のアシッド・テストのみ。一方、その日にはサンフランシスコの The Matrix でのショウもリストアップされており、そちらは13日と両日を載せたポスターがある。
ポートランドでアシッド・テストが行われたこと、そこで The Warlocks が演奏をしたことは動かないが、日付が確定できない。通常アシッド・テストは土曜日夜なので1965-12-25ないし1966-01-01になる。07になると The Matrix でのショウは確定している。なおポートランドにはこの名前のヴェニューが2ヶ所あった由。以上、Lost Live Dead の記事より。
2. 1967 Panhandle, Golden Gate Park, San Francisco, CA
こちらについてはビル・クロイツマンが回想録 Deal でやったと書いている。066pp. ヘルス・エンジェルスと The Diggers のための無料コンサートで、ビッグ・ブラザー&ザ・ホールディング・カンパニーも一緒。セット・リスト不明。
##本日のグレイトフル・デッド
01月02日には1969年から1972年まで3本のショウをしている。公式リリースは完全版が1本。
1. 1969 Fillmore West, San Francisco, CA
この年最初のショウ。3ドル。共演ブラッド・スエット&ティアーズ、Spirit。セット・リスト不明。
Spirit は1968年にデビュー・アルバムを出したロサンゼルスのバンド。ギターの Randy California はニューヨークの Jimmy James and the Blue Flames でジミヘンと共演していた。ドラムスはカリフォルニアの継父 Ed Cassidy で、他のメンバーより20歳年上、キャノンボール・アダレィ、ジェリー・マリガン、ローランド・カーク、セロニアス・モンク、リー・コニッツなどと共演した。アルバムはママス&パパスのプロデューサー Lou Adler のレーベルから出てヒット。
2. 1970 Fillmore East, New York, NY
この年最初のショウ。共演 Lighthouse。オープナーの〈Mason's Children〉が《Fallout From The Phil Zone》でリリースされた後、《Dave’s Picks, Vol. 30》で全体がリリースされた。第一部、第二部ではなく、Early Show、Late Show。
Lighthouse は1968年にカナダ、トロントで結成されたバンド。弦管、ビブラフォンを含む大所帯。ロック、ジャズ、クラシックなど渾然とした音楽で、断続的に現在まで活動。
3. 1972 Winterland Arena, San Francisco, CA
この年最初のショウ。2.5〜4ドル。キース・ガチョーの東部デビュー。(ゆ)
カフェ・トラモナ
12月27日・月
東京・あきる野市の「カフェ・トラモナ」が、ジャズを中心に最新の音楽情報などを紹介しているサイト、ARBAN(アーバン)の「いつか常連になりたいお店」で紹介されたよ、とおーさんから知らせてくる。覗いてみると、かっこよく紹介されている。トラモナは常連になりたいというより、居つきたい店だが、居つくには近くに引越さねばなるまい。
ARBAN の記事ではもっぱらアメリカものが取り上げられているが、マスターの浦野さんはイングランド大好きで、メロディオンを嗜む。イングリッシュ・ダンス・チューンを演奏する、まだわが国ではそう多くない人の1人で、店にもイングランドもののレコードがたくさんある。昔のブラックホーク仲間でも、あたしとは一番趣味が近いかもしれない。
ああ、それにしても、ああいう店がこの辺りにも欲しいもんだ。誰かやってくれるなら、ウチにあるレコード、全部預けてもいい。
##本日のグレイトフル・デッド
12月27日には1967年から1991年まで14本のショウをしている。公式リリースは2本。
01. 1967 Village Theater, New York, NY
このヴェニュー2日連続の2日目。共演前日と同じ。
02. 1970 Legion Stadium, El Monte, CA
このヴェニュー3日連続の中日。ニュー・ライダーズ・オヴ・パープル・セイジ前座。
第二部3曲目〈Attics Of My Life〉が2016年の《30 Days Of Dead》でリリースされた。
会場は平均的な高校の体育館よりも狭かったそうだが、アメリカの高校の体育館はばかでかいので、そう狭くはないだろう。デッドのヴェニューとしてはこじんまりした、距離の近いところだったらしい。もっともウィアとガルシアが二人とも聴衆に、スペースがあるから自由に動きまわるよう薦めたという。チケットもぎりの男とピグペンがウィスキーのパイント壜を回し飲みしていたそうな。
前日に地元のラジオ局 KPPC にガルシア入りニュー・ライダーズ・オヴ・パープル・セイジが出演した。
〈Attics Of My Life〉はまだよくわからない歌だ。コーダに向けてわずかに盛り上がる。この歌の演奏としては良い。カタチが見える。
03. 1977 Winterland Arena, San Francisco, CA
大晦日に向けての4本連続のランの初日。ポスターはガルシアの右手のみを黒バックに白く抜く形で描く。
04. 1978 Golden Hall, San Diego Community Concourse, San Diego, CA
このヴェニュー2日連続の初日。
05. 1979 Oakland Auditorium, Oakland, CA
大晦日に向けての5本連続のランの2日目。
06. 1980 Oakland Auditorium, Oakland, CA
大晦日に向けての5本連続のランの2日目。
07. 1981 Oakland Auditorium, Oakland, CA
大晦日に向けての5本連続のランの2日目。
08. 1982 Oakland Auditorium, Oakland, CA
大晦日に向けての5本連続のランの2日目。13.50ドル。開演8時。
09. 1983 San Francisco Civic Center, San Francisco, CA
大晦日に向けての4本連続のランの初日。開演8時。
10. 1986 Henry J. Kaiser Convention Center, Oakland, CA
大晦日に向けての4本連続のランの初日。開演8時。
11. 1987 Oakland-Alameda County Coliseum Arena, Oakland, CA
大晦日に向けての4本連続のランの初日。17.50ドル。開演7時。
12. 1989 Oakland-Alameda County Coliseum Arena, Oakland, CA
大晦日に向けての4本連続のランの初日。20ドル。開演7時。E・ストリート・バンドの Clarence Clemons が第二部全体に参加。という情報もあるが、2018年の《30 Days Of Dead》でリリースされたその第二部2〜4曲目〈Playing In The Band> Crazy Fingers> Uncle John's Band〉では聞えない。
この並びは珍しい。PITB の後半、フリーの荘厳な集団即興になる。こうなっても聴いていて面白いのがデッドのデッドたるところ。張りつめた即興のなかに、笑いが垣間見える。それがすうっと収まって CF になる。UJB ではガルシアのヴォーカルが時々聞えなくなる。PA の調子が悪いのか、ガルシアがマイクからはずれるのか。コーダに向かって全員でのリピートからガルシアが抜けだして展開するソロがいい。
13. 1990 Oakland-Alameda County Coliseum Arena, Oakland, CA
前年に続いて、大晦日に向けての4本連続のランの初日。22.50ドル。開演7時。
14. 1991 Oakland-Alameda County Coliseum Arena, Oakland, CA
3年連続で、大晦日に向けての4本連続のランの初日。開演7時。この年末・年越しショウの原動力だったビル・グレアムがこの年死んだため、大晦日にかけてのランはこれが最後。(ゆ)
グレイトフル・デッドで過ごす1日
9月18日・土
##本日のグレイトフル・デッド
9月18日には1970年から1994年まで11本のショウをしている。うち公式リリースは5本。しかも完全版が2本ある。これを全部聴いていると、それだけで1日が終る。残念ながら、生きてゆくためには、そんなことはできない。しかし、一度やってみたいよ、朝から晩まで1日デッド三昧。ただ、完全版2本はちょときつい。
01. 1970 Fillmore East, New York, NY
このヴェニュー4日連続の2日め。第3部の14曲め〈Operator〉が2015年の《30 Days Of Dead》でリリースされた。ピグペンのオリジナルのクレジット。ピグペンのヴォーカルはかれにしては自信がなさげ。右でギロをやっているのは誰だろう。NRPS の誰かか。
三部構成だったが、第1部は2曲だけ。アコースティック・セット。ただし2曲目〈Black Peter〉の途中でガルシアがいきなり演奏を止め、すまないが、こんなのやってられねえ、と言って、そのまま第2部の New Riders Of The Purple Sage のステージに移った。そのためこのセットは1時間。ガルシアはペダルスティール。3曲でウィアがヴォーカル。第3部エレクトリック・デッドはアンコールまで入れて2時間超。
02. 1973 Onondaga County War Memorial, Syracuse, NY
このショウは存在が疑問視されている。チケットの売行が思わしくなかったためにキャンセルされたという説もあり、元々予定に無かったという説もある。DeadBase XI ではキャンセルされた可能性とある。
03. 1974 Parc Des Expositions, Dijon, France
2度目のヨーロッパ・ツアーもフランスに入り、ディジョンでのショウ。《30 Trips Around The Sun》の一本として完全版がリリースされた。元はアルルに予定されていたが、Wall of Sound を収められる会場が無かったらしい。録音はキッド・カンデラリオ。
04. 1982 Boston Garden, Boston, MA
東部ツアーの一貫。料金12.50ドル。この会場では合計24回演奏しているが、この次にここに戻るのは9年後の1991年9月。その時にはここで6本連続でやっている。なぜ、これだけ間が空いたかという理由として、この日、火事の際の非常口でバンド(のクルー?)がロブスターを焼いているのを見つかり、2度と来るなと言われたという説がある。
05. 1983 Nevada County Fairgrounds, Grass Valley, CA
屋外のショウで開演午後2時。料金14.00ドル。会場は松の木に囲まれた芝生の由。
06. 1987 Madison Square Garden, NY
5本連続のレジデンス講演の真ん中。午後7時半開演。料金18.50ドル。前日は休みで、NBC のテレビに出演。《30 Trips Around The Sun》の一本として完全版がリリースされた。デヴィッド・レミューはこれをこの年のベストのショウと言う。
1987年は〈Touch of Grey〉のヒットによってデッドの人気が爆発した年で、7月6日にリリースした《In The Dark》はこの9月までにミリオン・セラーを記録し、この月の間にゴールドとプラチナ・ディスクを獲得。旧作の《Shakedown Street》《Terrapin Station》もゴールドとなる。夏にはボブ・ディランとツアーをしたため、この年のレパートリィ数は150曲に上った。また Bob Bralove の協力でミッキー・ハートが MIDI を導入し、またたく間に他のメンバーにも広がる。これ以後のデッドのサウンドはがらりと変わる。
07. 1988 Madison Square Garden, New York , NY
9本連続の4本目。前日は休み。
08. 1990 Madison Square Garden, New York , NY
6本連続の4本目。ブルース・ホーンスビィ参加。Road Trips, Vol. 2, No. 1》にアンコールの1曲〈Knockin' On Heaven's Door〉、同ボーナス・ディスクに前半から3曲、後半から4曲収録された。ボーナス・ディスクは持っていない。後半の〈Foolish Heart〉の後の〈ジャム〉は《So Mony Roads》にも収録。
上記〈Knockin' On Heaven's Door〉ではホーンスビィはアコーディオン。冒頭や中間でいいソロも聞かせる。デッドのこの歌のカヴァーはみな良いが、これは中でも最もゆっくりしたテンポで、ベストの一つ。この時期のガルシアが歌うと、まるで古老が親しい友の葬儀で歌っているように聞える。
ジミヘン20回目の命日。
09. 1991 Madison Square Garden, New York, NY
9本連続千秋楽。
10. 1993 Madison Square Garden, New York , NY
6本連続の3本目。〈Drums〉の最中、クロイツマンがイッてしまう。ハートはスティックをヒップポケットに突き刺して、一瞬にやりとしてその姿を眺めたが、すぐにクロイツマンの背後に回って、大きく両腕をはばたかせた。そうだ。
11. 1994 Shoreline Amphitheatre, Mountain View, CA
このヴェニュー3日連続の最終日。後半2曲め〈Saint Of Circumstance〉が2017年の〈30 Days Of Dead〉でリリースされた。この時はこの曲は〈Iko Iko〉からのメドレー。ガルシアの調子はまずまずで、全体の演奏はすばらしい。ただ、以前ならガルシアのギター・ソロを待っていたようなところで、あえて待たなくなっているようにも思える。(ゆ)
グレイトフル・デッドを聴くためのイヤフォン
9月11日・土
駅前の皮膚科へ往復のバスの中で HS1300SS でデッドを聴いてゆく。このイヤフォンはすばらしい。MP3 でも各々のパートが鮮明に立ち上がってくる。ポリフォニーが明瞭に迫ってくる。たまらん。他のイヤフォンを欲しいという気がなくなる。FiiO の FD7 はまだ興味があるが、むしろ Acoustune の次のフラッグシップが気になる。それまではこの1300で十分で、むしろいずれケーブルを換えてみよう。
##本日のグレイトフル・デッド
9月11日には1966年から1990年まで、10本のショウをしている。うち、公式リリースは1本。ミッキー・ハートの誕生日。だが、2001年以降、別の記念日になってしまった。
1. 1966 Fillmore Auditorium, San Francisco, CA
単独のショウではなく、ジャズ・クラブのためのチャリティ・コンサート。"Gigantic All-Night Jazz/Rock Dance Concert" と題され、他の参加アーティストは John Hendricks Trio, Elvin Jones, Joe Henderson Quartet, Big Mama Thornton, Denny Zeitlin Trio, Jefferson Airplane, the Great Society そして the Wildflower。料金2.50ドル。セット・リスト無し。ジャンルを超えた組合せを好んだビル・グレアムだが、実際、この頃はジャズとロックの間の垣根はそれほど高くなかったのだろう。
ちなみにデニィ・ザイトリンは UCSF の精神医学教授でもあるピアニスト、作曲家で、映画『SF/ボディ・スナッチャー』(1978年のリメイク版)の音楽担当。
2. 1973 William And Mary Hall, College Of William And Mary, Williamsburg, VA
2日連続ここでのショウの初日。ここでは1978年まで計4回演奏していて、どれも良いショウのようだ。1976年と1978年のショウは各々《Dave's Picks》の Vol. 4 と Vol. 37 としてリリースされた。
このショウでは前座の Doug Sahm のバンドからサックスの Martin Fierro とトランペットの Joe Ellis が一部の曲で参加している。マーティン・フィエロはジェリィ・ガルシアの個人バンドにも参加している。またブルース・ホーンスビィが一聴衆として、おそらく初めて見ていたそうだ。
3. 1974 Alexandra Palace, London
2度めのヨーロッパ・ツアー冒頭ロンドン3日間の最終日。このショウの前半から6曲が《Dick’s Picks, Vol. 07》に収録された。が、ほんとうに凄いのは後半らしい。
とはいえ、この前半も調子は良いし、とりわけ最後で、実際前半最後でもある〈Playing in the Band〉は20分を超えて、すばらしいジャムを展開する。この日の録音ではなぜかベースが大きく、鮮明に聞える。アルバム全体がそういう傾向だが、この3日目は特に大きい。ここでは誰かが全体を引張っているのではなく、それぞれ好き勝手にやりながら、全体がある有機的なまとまりをもって進んでゆく。その中で、いわば鼻の差で先頭に立っているのがベース。ガルシアはむしろ後から追いかけている。この演奏はこの曲のベスト3に入れていい。
それにしても、この3日間のショウはすばらしい。今ならばボックス・セットか、何らかの形で各々の完全版が出ていただろう。いずれ、全貌があらためて公式リリースされることを期待する。
4. 1981 Greek Theatre University of California, Berkeley, CA
2日連続このヴェニューでのショウの初日。ここでの最初のショウ。前売で11.50ドル、当日13ドル。
この日は、開幕直前ジョーン・バエズが PA越しにハートに「ハッピー・バースディ」を歌ったそうだ。
5. 1982 West Palm Beach Civic Center, West Palm Beach, FL
後半冒頭 Scarlet> Fire> Saint> Sailor> Terrapin というメドレーは唯一この時のみの由。
6. 1983 Downs of Santa Fe, Santa Fe, NM
同じヴェニューの2日め。ミッキー・ハート40歳の誕生日。
7. 1985 Henry J. Kaiser Convention Center, Oakland, CA
地元3日連続の中日。80年代のこの日のショウはどれも良いが、これがベストらしい。
8. 1987 Capital Centre, Landover , MD
同じヴェニュー3日連続の初日。17.50ドル。6年で6ドル、35%の上昇。デッドのチケットは相対的に安かったと言われる。
9. 1988 The Spectrum, Philadelphia, PA
4本連続ここでのショウの3本め。前日の中日は休み。
10. 1990 The Spectrum, Philadelphia, PA
ここでの3本連続の中日。(ゆ)
ストーンズとデッド、FiiO FD7
9月8日・水
LRB のチャーリー・ワッツについてのブログに孫引きされた Don Was のコメントを読んで、Tidal で『メイン・ストリートのならず者』デラックス版の〈Loving Cup〉の正規版と別ヴァージョンを聴いてみる。まことに面白い。別ヴァージョンが採用されなかったのはよくわかるが、あたしとしてはこちらの方がずっと面白い。ミック・テイラーのギターもたっぷりだし、何よりもドン・ウォズが「リズムの遠心力でバンドが壊れる寸前」という有様が最高だ。こうなったのは、ワッツがいわば好き勝手に叩いているからでもあって、ストーンズのリズム・セクションの性格が陰画ではあるが、よく現れている。
対してデッドの場合も、ドラムスがビートを引張っているわけではない。この別ヴァージョンでのワッツ以上に好き勝手に叩くこともある。けれどもリズムが遠心力となってバンドが分解することはない。遠心力ではなく、求心力が働いている。ドン・ウォズの言葉を敷衍すれば、おそらくデッドでは全員がビートを同じところで感じている。だから、誰もビートを刻んでいなくても、全体としてはなにごともなくビートが刻まれてゆくように聞える。このことは Space のように、一見、ビートがまったく存在しないように聞えるパートでも変わらない。そういうところでも、ビートは無いようにみえて、裏というか、底というか、どこかで流れている。ジャズと同じだ。デッドの音楽の全部とはいわないが、どんな「ジャズ・ロック」よりもジャズに接近したロックと聞える。ジャズそのものと言ってしまいたくなるが、しかし、そこにはまたジャズにはならない一線も、意図せずして現れているようにも聞える。デッドの音楽の最も玄妙にして、何よりも面白い位相の一つだ。デッドから見ると「ジャズ・ロック」はジャズの範疇になる。
FiiO から純粋ベリリウム製ドライバーによるイヤフォン発表。直販だと FD7 が7万弱。FDX が9万。同じ純粋ベリリウム・ドライバーの Final A8000 の半分。DUNU Luna も同じくらいだが、今は中古しかないようだ。FiiO のはセミオープンだから、聴いてみたい。FDX はきんきらすぎる。買うなら FD7 だろう。ケーブルが FDX は金銀混合、FD7 は純銀線。それで音を合わせているのか。どちらも単独では売っていない。いずれ、売るだろうか。いちはやく YouTube にあがっている簡単なレヴューによれば、サウンドステージが半端でなく広いそうだ。こんな小さなもので、こんなに広いサウンドステージが現れるのは驚異という。
##本日のグレイトフル・デッド
1967年から1993年まで8本のショウ。
1. 1967 Eagles Auditorium, Seattle, WA
シアトルへの遠征2日間の初日。ポスターが残っていて、デッドがヘッダー。セット・リスト無し。
ピグペン22歳の誕生日。当時ガルシア25歳。クロイツマン21歳。レシュ27歳。ウィア20歳。ハンター26歳。
ビル・グレアムは、この日デッドは Fillmore Auditorium に出ていた、と言明しているそうだ。
2. 1973 Nassau Veterans Memorial Coliseum, Uniondale, NY
前日に続いて同じヴェニュー。この日のショウは《Dave's Picks, Vol. 38》に完全収録された。残っているチケットによると料金は5.50ドル。
ガルシアのギターが左、ウィアのギターが右。
珍しくダブル・アンコール、それも〈Stella Blue > One More Saturday Night〉というまず他にない組合せ。さらに後半4曲目〈Let Me Sing Your Blues Away〉ではキースがリード・ヴォーカルをとる。この曲はロバート・ハンターとキースの共作でこの時が初演。同月21日まで計6回演奏。《Wake Of The Flood》が初出。〈Here Comes Sunshine〉とのカップリングでシングル・カットもされた。
〈Weather Report Suite〉も組曲全体としてはこの日が初演。
演奏はすばらしい。この年は前年のデビュー以来のピークの後で、翌年秋のライヴ停止までなだらかに下ってゆくイメージだったが、こういう演奏を聴くと、とんでもない、むしろ、さらに良くなっていさえする。もっとちゃんと聴いてみよう。
3. 1983 Red Rocks Amphitheatre, Morrison, CO
3日連続同じヴェニューでのショウの最終日。
4. 1987 Providence Civic Center, Providence, RI
3日連続同じヴェニューでのショウの中日。
5. 1988 The Spectrum, Philadelphia, PA
同じヴェニューで4本連続のショウの初日。
6. 1990 Coliseum, Richfield, OH
前日に続いて同じヴェニュー。後半3曲目〈Terrapin Station〉の後のジャムが《So Many Roads》に収録された。
7. 1991 Madison Square Garden, New York , NY
1988年に続いて MSG で9本連続という当時の記録だった一連のショウの初日。ブルース・ホーンスビィ参加。
8. 1993 Richfield Coliseum, Richfield, OH
秋のツアー初日で、同じヴェニューで3日連続の初日。(ゆ)
チャーリー・ワッツとミック・テイラー
9月6日・月
London Jazz News にチャーリー・ワッツの追悼記事として、2001年のインタヴューの抜粋が出る。なかなか面白い。フェアポート・コンヴェンションのデイヴ・マタックスがジャズが好きで、バンドをやっているのは承知していたが、ワッツがこんなにジャズに入れこんでいたとは不勉強にして知らなんだ。
ワッツにジョン・マクラフリンとトニィ・ウィリアムスのライフタイム、それにサティのジムノペディを教えたのがミック・テイラーだというのは面白い。テイラーの音楽にこういうものの響きは聞えたことがない。ギターのスタイルはマクラフリンとは対極だし。あの手数の少なさはサティからだろうか。チャーリー・ワッツのジャズのレコードはストリーミングにほとんど出てこない。「いーぐる」で誰か特集してくれないかな。
『趣味の文具箱』のインク特集を買おうとして版元が変わっているので検索すると、元のエイ出版社は民事再生法を2月に申請。直後に事業の一部をヘリテージに譲渡、とある。このヘリテージというのが臭い。公式サイトには会社の内容の記載がない。譲渡された以外の事業の記載も無い。設立は昨年9月。儲かっている事業だけ残して、他は一気に整理するための計画倒産を疑う。昔、一度、あるレコード会社でやられたことがある。あたしの被害はCD1枚のライナーの原稿料だけだったから大したことはなかったが、今回のこれで致命的やそれに近い被害を受ける人がいないといいんだが。嫌気がさして、買うのはやめる。
##本日のグレイトフル・デッド
1969年から1990年までの6本。
1. 1969 Family Dog at the Great Highway, San Francisco, CA
前日に続いて、ジェファーソン・エアプレインとのダブル・ヘッダー2日め。この日はエアプレインのメンバーも加わってのジャム・セッション状態だったようだが、演奏時間は前日より短かったらしい。セット・リストはやはりいつものデッドのものとは違う。ロックンロール大会。本当の意味でのデッドのショウとは言えないかもしれない。
2. 1973 Nassau Veterans Memorial Coliseum, Uniondale, NY
秋のツアーの始めで同じ会場で2日連続の1日め。前半最後の2曲が《Dave's Picks, Vol. 38》、後半の大部分8曲が同時に出た《Dave's Picks Bonus Disc 2021》に収録。うち1曲〈Eyes of the world〉は《Beyond Description》にも収録(CD1《Wake Of The Flood》のボーナス・トラック)。
〈Let It Grow〉は単独の演奏としてはこの日が初演。
すばらしい演奏だが、とりわけ20分に及ぶ〈Eyes of the world〉が凄い。ガルシアのギターが完全にイッテしまっている。そこへキースがからんでさらに羽目をはずす。これがあるからデッドを聴くのをやめられない。
3. 1983 Red Rocks Amphitheatre, Morrison, CO
同じ会場で3日連続の中日。
4. 1985 Red Rocks Amphitheatre, Morrison, CO
同じ会場で3日連続の最終日。
自転車のラッパとカズーによる演奏がオープナー。珍しくダブル・アンコール。良いショウだそうで、公式リリースを期待。
5. 1987 Providence Civic Center, Providence, RI
秋のツアーの開幕で同じ会場で3日連続の初日。
6. 1990 Coliseum, Richfield, OH
秋のツアーの始めで同じ会場で2日連続の初日。
ブレント・ミドランド急死後初のショウで、ヴィンス・ウェルニクのデビュー。(ゆ)
ヘッドフォン、DAP、ジミヘン
8月20日・金
Dan Clark Audio から新フラッグシップ・ヘッドフォン、Stealth の告知。4,000USD。どうせ、国内販売は無いから、買うなら直接だが、食指が動かないでもない。とりわけ、クローズドはいい。とはいえ、EtherC Flow 1.1 があるからなあ。そりゃ、良くはなっているだろうけれど、価格差には見合わねえだろう。
M11Plus LTD 発売日がようやくアナウンス。Shanling M6 Pro Ver.21も発表。こちらは面白みまるで無し。M17 はまだ影も形も無いなあ。
Grim Oak Press のニュースレターで、COVID-19 のおかげで紙が不足しはじめているのと、昨年刊行予定のタイトルが今年に延期されたことから、印刷・製本がボトルネックになって、出版が滞りだしている由。以前は印刷所にファイルを送ってから本が届くまで長くても10週間だったのが、今は4ヶ月〜半年かかる。新規の印刷を受け付けないところも出てきた。この事情は Grim Oak のような小出版社だけではなくて、Big 6 も同じだそうだ。わが国ではどうなんだろう。
Tor.com に記事が出ていたGwyneth Jones の Bold As Love のシリーズは面白そうだ。とりわけ、メイン・キャラの一人が Aoxomoxoa and the Heads というバンドのリーダーとあっては、読まないわけにはいかない。Gwyneth Jones はデビュー作 Devine Endurance を読んではみたものの、さっぱりわからなかった記憶がある。今なら読めるかもしれん。
それにしてもこのシリーズのタイトルは、コメントにもあるように、ジミヘンがらみばかりで、作品の中にもジミヘンへのオマージュが鏤められているらしい。ジミヘンもひと頃、集めようとしたけど、まあ、やはり Band of Gypsy のフィルモア・イーストでのライヴに留めをさす。完全版も出てるけど、あたしには抜粋の2枚組で十分。デッドやザッパとは違う。
音楽がらみのサイエンス・フィクションとしては Kathleen Ann Goonan のナノテク四部作もあって、積読だなあ。
ECM の Special Offer で Around The World in 80 Discs というのが来る。見てみると、ほんとに世界一周かなあ、と思ったりもするが、それなりに面白い。知らないのも多々あって、勉強にもなる。聴いてみましょう。ECM は全部 Tidal にあるし、Master も多い。この Special Offer はいつまでなんだろう。(ゆ)
Grateful Dead; 1971-07-02, Fillmore West, San Francisco, CA
ガルシアのギターは超絶技巧を披瀝しないから、人気投票などでは上位に来ないが、ごくシンプルな音やフレーズを重ねてそれは充実した音楽を生みだしたり、起伏のない、明瞭なメロディにもならないフレーズを連ねて、身の置きどころのないほど満足感たっぷりの音楽体験をさせてくれる。ジャズやインド、アラブの古典音楽の即興のベストのものに並べても遜色ないレベルの演奏を聴かせる。音楽的な語彙が豊冨だし、表現の抽斗の数も多くて、中が深い。こういうギタリストは、ロックの範疇ではまず他にいないし、ジャズでも少ないだろう。ザッパはもっと超絶技巧的だ。むしろ、ザッパと共演したシュガーケイン・ハリスのヴァイオリンの方が近い気がする。
Dave's Picks, Vol. 38
03-25: 薔薇と骸骨、バトラー
Grateful Dead、Skull & Roses 50周年記念盤発表。6月25日発売。付録は 1971-07-02, Fillmore West の一部収録。後半中心に10曲。2003年のCD拡大版に入っていた1971-04-06からの3曲は入らないらしい。フィルモア・ウェストでのデッドの最後のショウであるこの日は FM から取ったブートが出ている。音がどれくらい違うか。一緒に出るシャツに惹かれる。
Taking Stock by Peter Barakan
壷井彰久弾き倒し @ Kiwa Tennoz Isle
「21世紀をサヴァイヴするためのグレイトフル・デッド入門 第2回御礼
21世紀をサヴァイヴするためのグレイトフル・デッド入門 第2回
こうしたカヴァー曲はほとんどがスタジオ録音には収録されていません。ライヴ音源でしか聴けません。ということで、デッドならではのカヴァーを原曲と聞き比べてみます。
河村博司《よろこびの歌》
磯部舞子
「21世紀をサヴァイヴするためのグレイトフル・デッド入門」御礼
21世紀のためのグレイトフル・デッド
「21世紀をサヴァイヴするためのグレイトフル・デッド入門」
日時:2017年11月7日(火) 19時開場/19時30分開演
会場:風知空知(下北沢駅南口徒歩3分)
出演:ピーター・バラカン×おおしまゆたか
料金:前売2000円/当日2500円(共に+1drink 500円)
予約:yoyaku●fu-chi-ku-chi.jp までメールで、
イヴェント名、お名前、枚数、ご連絡先電話番号を明記の上、
お申し込みください。 ※アルテスパブリッシング
info@artespublishing.com でも承ります。
【ご注意】
整理番号はありません。当日は先着順でご入場いただきます。
ご入場は建物1F右奥のエレベーターをご利用ください。
21世紀を生き延びるためのグレイトフル・デッド入門
「21世紀をサヴァイヴするためのグレイトフル・デッド入門」日時:2017年11月7日(火) 19時開場/19時30分開演会場:風知空知(下北沢駅南口徒歩3分)出演:ピーター・バラカン×おおしまゆたか料金:前売2000円/当日2500円(共に+1drink 500円)予約:yoyaku●fu-chi-ku-chi.jp までメールで、イヴェント名、お名前、枚数、ご連絡先電話番号を明記の上、お申し込みください。 ※アルテスパブリッシングinfo@artespublishing.com でも承ります。【ご注意】整理番号はありません。当日は先着順でご入場いただきます。ご入場は建物1F右奥のエレベーターをご利用ください。