クラン・コラ・ブログ(アイルランド音楽の森)

 アイリッシュ・ミュージックなどのケルトをはじめ、世界各地のルーツ音楽を愉しむブログです。そうした音楽の国内の音楽家も含みます。加えて主宰者の趣味のグレイトフル・デッド。サイエンス・フィクション、幻想文学などの話もあります。情報やメモ、ゴシップ、ただのおしゃべりなどもあります。リンク・フリーです。

タグ:ワイヤレス

 TONALITE を使いはじめて1週間経った。どうやら、TONALITE 病にかかったらしい。



 TONALITE 病とは final の社内に蔓延していると、クマさんが紹介動画の最後に触れていたやつだ。

 あたしの症状は、他のイヤフォンが全部要らなくなる、というものだ。手許にあるものはどれも何らかの形で気に入っていたものだが、それがもう要らない。というのは聴きたいと思わないからだ。気に入る、入らないではなく、TONALITE 以外のイヤフォンで聴きたいと思わない。TONALITE があればそれでいい。これで完結。他のイヤフォンは全て売るか、売れないものは捨てるかすることになるだろう。

 一応、聴き比べてみた。聞き慣れた音源を TONALITE と手許にあるイヤフォンとなるべく条件を同じにして聴き比べてみた。そこで出た結論は TONALITE で聴く音が自分が何よりも聴きたいという音である、ということだ。あるいは、これがあたしの聴きたかった音なのだと納得してしまった。どちらかわからない。どちらでもかまわない。高域がどうの、解像度がどうの、というのはあっさり消えて、とにかくこの音をずっと聴いていたくなる。この音で奏でられる音楽をずっと聴いていたくなる。

 もちろんここで言う TONALITE の音とは DTAS で自分専用に設定された音である。

 聴き比べた対象はみな有線モデルだ。さらに、RME の DAC とマス工房のヘッドフォン・アンプに、これも買ったばかりの final の DX6000 をつないだ組合せとも聴き比べた。TONALITE は 当然 Bluetooth 接続だ。音源は M4チップを積んだ MacBook Pro 上の Tidal。しかし、何で接続しているか、有線か無線か、というのも意味がなくなる。TONALITE で聴ける音はあらゆる有線に勝ってしまった。勝るというのは、より高域が伸びるとか、より低域が締まるとか、あるいはより細かい音が聞えるとか、そういう通常、イヤフォンを評価する際に持ち出される項目の話ではない。どちらが好きか、好ましいか、どちらで聴きたいか、という比べ方で TONALITE が文句なく勝ってしまった。それはもうあっさりと勝ってしまった。TONALITE で聴く。比較対象のイヤフォンで聴く。また TONALITE で聴く。するともう戻れない。Bluetooth は音が悪いって。そりゃ、DTAS してない音だからだろ。

 つまり、TONALITE で聴いていると、イヤフォンで聴いているという意識が薄くなり、より音楽にのめり込んでいく。音ではなく、音楽が耳に入ってくる。耳からカラダの中に入ってくる。

 final のサイトにある R&Dコラム vol.2「イヤホンのための音色個人性適用」の中の一節は、事の次第を適確に表現していると思われる。

—引用開始—
私たちが、生楽器による演奏を聴く際に、音を聴いた瞬間に、音色印象に対するオーディオ的な表現によって演奏の生音を評価することはほとんどないと思います。まずは、音楽そのものに向き合うはずです。



ところが、イヤホンでは、音を聴いた瞬間に、音楽そのものに向き合うのではなく、音色や音質の評価を始めてしまいます。なぜでしょうか。これは、音色が正しく再現されていない、あるいは、音色が自然でないということが原因のひとつだと思われます。つまり、音色に問題があった、あるいはいわゆるアーティファクト(不自然な付帯音)があって、それが気になって、すぐに音楽に向き合えなかったということなのではないでしょうか。

—引用終了—

 初代の ZE8000 が出た前後だったと思う。final の細尾社長が、あと2、3年で無線イヤフォンは有線の音を超えますよ、とおっしゃっていた。今、そのことが実現するのを目の当たりにしている。ただ、その時に浮かんだイメージとは実際に起きていることはずれていた。細尾社長の言葉から浮かんだのは、無線イヤフォンの音が最高の有線イヤフォンの音を凌駕するというものだった。実際に TONALITE が実現したのは「最高の音質」ではなく、「最適の音質」だった。誰にとって最適か。あたしにとってだ。すなわち、あたしにとって TONALITE の音は最高なのである。今、これ以上のイヤフォンは、どんなに高いものであっても、あたしのためには存在しない。

 実際の  DTAS の設定では、カメラで耳を写すのにちょと手間取った。右側がなかなかウンと言ってくれない。撮れた写真を見ると、顎が上がっている。あたしは昔から顎を上げているらしく、高校の卒業アルバムの写真でも顎が上がっていたのを未だに憶えている。鼻の頭が切れているようにも見えるが、そこはOKらしい。むしろ、イヤピースを外した状態での測定に不備があったとしてやり直しになる。右の聴力が弱いからか。測定用の音の聞え方が明らかに違う。右の方が小さく聞える。二度目でうまくいく。その後はとんとん進んで、音色係数を決めるために音楽を聴く。iPhone の  Tidal on Amarra でアレ・メッレル、Granny's Attic、ジェニファ・ウォーンズなどなど。ウォーンズはいつもの〈Song for Bernadette〉だが、感動の戦慄が何度も背筋を走る。ウォーンズの声がいつになくはっきりと耳に入ってくる。アレはビッグバンドで、アレンジの秀逸さに脱帽。Granny's Attic は今年出た新作のオープナー。これまた脱帽。いやあ、いいなあ。最後の音色係数をイヤフォンに書込むところでつまずいた。イヤフォンと iPhone の接続が切れてしまう。再度接続して Step 5 から再開をクリック。一度書込み、音色係数選択して書込みして、今度はOK。無事完了。

 初めて外へ持ちだした時、ノイキャンがゆるいと感じた。外の音がずいぶん入ってくる。あたしは左耳の入口が右より小さく、イヤピースのサイズは右が M なら左は S で合うことが多い。今回もそうしていたのだが、どうも小さすぎたらしい。左も M に替えると、ぐんと良くなる。念のため、右を L にしてみたが、大きすぎて、やはり遮蔽がゆるむ。両方ともサイズは M で決定。さらに念を入れて、アジャストリングも S に替えてみたが、これも合わない。デフォルトの M のままが良いようだ。

 イヤピースを合うものにしてあらためて音楽を聴く。低域が違う。ふくらむとか締まるとかいうのとはどうも違う。ピアノの最低音はふくらんで消えてゆく。ダブル・ベースの音はシャープにはじける。ノイキャンも今度はばっちりである。

 いろいろな音源を聴いていると、各々の音楽の真の姿が現れてくる。これまで聴いていたのはかりそめで、TONALITE で聞えるものこそがベールをぬいだ真の姿に聞える。音楽とあたしの間にあって音楽の伝達をぼやけたものにしていた何かが、TONALITE によって無効化される。だから、聴きなれた音楽を聴くと実に新鮮だ。これはこんな曲だったのか、ここでこの人はこんなことをやっていたのか、と耳からウロコが何枚もとれる。

 思えば音楽の真の姿が現れるということを final はずっと追求してきた。MAKE のシリーズを出した時、その本来の目的はユーザーが「自分だけの音」を見つけることだった。final のサイトの MAKE のページにはこうある。

—引用開始—
イヤホン組立体験会は、イヤホンの組立がメインでしたが、フィルター等のパーツを使った音のチューニング方法をお伝えしたところ、 自分好みの音を作れることが好評となり話題を呼び、チューニングに注力したイベントへと進化していきました。

参加者はリピーターが半数を越えます。「自分で音を調整したイヤホンでないと、違和感を感じる」「今まで使用してきた高級イヤホンよりも好ましく、手放せなくなった」と訴える方が続出しています。 それは幸運にも唯一無二の『自分だけの音』を見つけられたということです。
--引用終了--


 「自分だけの音」が DTAS によって最適化された音と同義であることは明らかだ。MAKE は「自分だけの音」をフィルター等のパーツによって物理的に、アナログ的に試行錯誤して発見しようという試みだった。しかし実際にその方法で「自分だけの音」を発見できたユーザーは残念ながらごく限られた。大多数のユーザーは「自分だけの音」を発見する前に、物理的パーツによって音を変えることそのものに夢中になった。それには「自分だけの音」を主観で判断することの難しさもあったと思われる。

 ユーザーが自主的に「自分だけの音」を発見することの限界を見て、final は個々のユーザーの「自分だけの音」を客観的に生成するシステムをイヤフォンに組込むことを考えた。そこで生まれたのが ZE8000 を対象とした JDH だった。アナログによるプロセスに備わる問題をデジタルで解決したのだ。そこでの経験を経て生まれた TONALITE は「自分だけの音」を生むプロセスを大幅に簡略化した。ユーザーに求められるのはパーツの組合せによる試行錯誤ではなく、スマホによる自分の頭部の撮影と耳道内の測定だけだ。

 かくて TONALITE で聞えている音は、MAKE シリーズのページにある、Before と After の2枚の星空の写真の After に相当する。

lighter


 TONALITE を使うことによって、あたしのオーディオ世界像はがらりと変わってしまった。それはコペルニクス的転回と呼びたくなる。TONALITE 以外のイヤフォンへの関心は消滅した。それは final 自身の TONALITE 以外の製品についても同様で、A2000 も S6000 も、TONALITE を使う前は、出たら買おう、聴いてみようと思っていたのが、今は欲しいとも聴きたいとも思わない。次々に出る新製品も、ウン十万もするハイエンド・モデルも、文字通り、どこ吹く風である。ケーブルもポータブル・アンプも存在しないも同然だ。とにかくひたすら音楽が聴きたくなっている。TONALITE で音楽を聴きたいのである。

 ヘッドフォンはイヤフォンとは聞え方が違うから、関心がまったく消えたわけではないが、相当に薄れている。どんなに好みのヘッドフォンで聴いても、TONALITE に勝る音で聴けるはずはないからだ。DTAS を組込んだヘッドフォンが出れば、そこでヘッドフォン探索も終るだろう。

 かくて TONALITE の功罪の「功」ははっきりしている。あたしにとって、現在望みうる、最高のリスニング環境を提供してくれている。

 とはいうもののだ。あたしもマニアのはしくれである。モノを取っ替え引っ替えして遊びたい欲求は人並に持っている。その欲求は TONALITE によって捌け口を摘みとられてしまった。これは「罪」の側面だ。欲求だけが溜まって、いずれ爆発するだろうか。TONALITE の音に飽きる時が来るだろうか。「自分だけの音」に飽きるということが、あるのだろうか。(ゆ)

0312日・土

 それにしても Bluemini R2R + HE-R9 で聴く Tidal YouTube の音がすばらしい。今のところ MQA 対応の DAC よりも良く、決定版になっている。MacBook Pro との Bluetooth 接続だが、まったく不満が無い。Zen Stream Bluemini R2R をつなぐのはやってみてもいいかもしれない。

 HiFiMAN Japan HE-R9 は国内販売しないのかと問い合わせたら、個別に取り寄せはできて、Bluemini R2R を付け、保証もするというので注文した。バランス・ケーブルは付かなかったが、それは別に調達できる。Bluemini R2R の方がこうなるとありがたい。しかし、個別対応するということは、国内で大々的に売るつもりは無いのかもしれない。



##本日のグレイトフル・デッド

 0312日には1966年から1992年まで6本のショウをしている。公式リリース1本。


1. 1966 Danish Center, Los Angeles, CA

 土曜日。セット・リストの全体像が判明している最も初期のショウ。期日・場所が判明している録音としても最も初期のもの。これより古い演奏で公式リリースされている録音は期日が不明だったり、場所が不明だったり、両方不明だったりする。なお、今のところ、この次に古いのはこの年0703日のフィルモア・オーディトリアムで、《30 Trips Around The Sun》の1本としてリリースされた。

 この日のセット・リストはDavid Lemiuex が提供したもので、当日の SBD に基く。ピコ・アシッド・テストと言われるが、場所がよくわからない。Pico Blvd はロサンゼルスを東西に貫く大きな通りの1本だが、長いこの通りのどこだったかがわからない。クローザーの〈Hey Little One〉〈I'm A King Bee > Caution〉が《Rare Cuts & Oddities 1966》でリリースされた。

 この日のセット・リストにあるほとんどの曲にとってこの日が記録上の初演となる。

Cream Puff War

Sittin' On Top Of The World

New Minglewood Blues

Cold Rain And Snow

Tastebud

Silver Threads And Golden Needles

It's All Over Now, Baby Blue

Good Lovin’

You Don't Have To Ask

On The Road Again

Next Time You See Me

I Know You Rider

Hey Little One

Stealin’

 この頃の録音によくある形で、左にヴォーカル、中央にドラムス、右にそれ以外の楽器が固まる。ガルシアのギターも右。録音そのものはクリア。おそらくアウズレィ・スタンリィによるものだろう。

 〈Hey Little One〉はガルシアのヴォーカルの、スロー・ブルーズ。ガルシアはもともとスローな曲をさらにゆっくりと歌う。熱唱。

 〈I'm A King Bee > Caution〉はピグペンのヴォーカルとハーモニカ。貫禄たっぷりのピグペンの声と歌を聴くと、ガルシアが熱唱するのもわかる気がする。おれだってこれくらいは歌えるぞ。ガルシアはピグペンが大好きだったようだが、自分は一歩退いてかれを立てるということはしなかったろう。しかし、むしろガルシアが熱唱するだけ、ピグペンの存在感の大きさがわかる。そして、そのことはガルシア自身わかっていたのではないか。だからこその熱唱でもあろう。

 ガルシアのギターは〈Hey Little One〉よりも〈I'm A King Bee〉の方がブルーズ・ギターの王道に近い。ではあるが、ブルーズ・ギターそのものではない。トンガった、いいギターだ。

 〈Caution〉は他のメンバーは "All you need" を叫ばない。この曲は一定の歌詞と形はあるが、半分以上即興から成る。これまで聴いた中では、おそらくは最も原型に近いこのヴァージョンがベスト。

 〈Caution〉の後、しばらく空白をおいて短かいリハーサルらしい録音が入っている。これが〈Stealin'〉だろうか。〈Caution〉の最後ではビル・グレアムがグレイトフル・デッドとピグペンに拍手を求めていて、この時の演奏はここで終っていることは明らか。


2. 1967 Whisky-A-Go-Go, San Francisco, CA

 日曜日。このヴェニュー7日連続の3日目。


3. 1969 Fillmore West, San Francisco, CA

 水曜日。サンフランシスコ州立大スト委員会のための資金集め。


4. 1981 Boston Garden, Boston, MA

 木曜日。水準の出来の由。


5. 1985 Berkeley Community Theatre, Berkeley, CA

 火曜日。開演7時半。このヴェニュー4本連続の3本目。


6. 1992 Nassau Veterans Memorial Coliseum, Uniondale, NY

 木曜日。開演7時半。このヴェニュー3日連続の中日。ブルース・ホーンスビィ参加。第二部が良い由。(ゆ)

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