クラン・コラ・ブログ(アイルランド音楽の森)

 アイリッシュ・ミュージックなどのケルトをはじめ、世界各地のルーツ音楽を愉しむブログです。そうした音楽の国内の音楽家も含みます。加えて主宰者の趣味のグレイトフル・デッド。サイエンス・フィクション、幻想文学などの話もあります。情報やメモ、ゴシップ、ただのおしゃべりなどもあります。リンク・フリーです。

タグ:三昧

 番組に対していただいたリクエストの中にいくつか、ご質問があったので、できる範囲でお答えします。


□〈Mo Ghile Mear "Our Hero"〉「できれば、この曲の原曲を聴きたいです」

 これは伝統曲ですので、「原曲」というものは存在しません。最も有名なヴァージョンはおそらくスティングがチーフテンズをバックに唄ったものでしょう。ケルティック・ウーマンでも唄われています。

 あたしがこの曲を初めて聴いたのはメアリ・ブラックがソロになる前に参加していたバンド General Humbert のセカンド (1982) で唄っているものです。このトラックは後にメアリの《Collected》に収録されました。

Collected
Mary Black
Dara
2003-02-10



 アイルランド語のネイティヴの歌であればポゥドリギン・ニ・ウーラホーン Padraigin Ni Uallachain がギタリストの Garry O Briain と作った《A Stor's A Stoirin - Songs For All Ages》(1994) の歌唱を薦めます。

Stor Is a Stoirin
Padraigin Ni Uallachain
Traditions Alive Llc
2011-09-20



 またスコットランドの Mae McKenna の復帰作《Shore To Shore》(1999) の歌唱も良いです。


Shore to Shore
Mae Mckenna
Traditions Alive Llc
2008-01-01


 最近のものでは Steve Cooney と Allan Macdonald がホストになった 《The Highland Sessions, Vol. 3》収録のものが出色です。Iarla O Lionaird, Mary Black, Karen Matheson, Karan Casey, Mary Ann Kennedy, それに Allan Macdonald という、アイルランド、スコットランドのトップ・シンガーたちが声を合わせたコーラスで、1人1番ずつリードをとるという豪華版です。
 ミホール・オ・ドーナルがどこかで唄っていた記憶があるんですが、探しても出てきません。ご存知の方はご教示ください。

 教えていただいたので、掲げておきます。これも名演。


Relativity
Relativity
Green Linnet
2011-03-23




□RIVER TRANCE「The String Cheese Incident」というバンドが演奏しているRIVER TRANCEという曲があるのですが、原曲があるのでしょうか?」

 たとえば2013年大晦日の年越しライヴで、始めと終りにフィドラーが弾いているダンス・チューンのことでしょうか。どちらもごく有名な伝統曲です。たいへん有名で、よく演奏もされ、録音も多いのですが、あたしはとにかく曲名を覚えることができません。



 どなたか、ご教示のほどを。最初は2:20あたりから。後のは12:45あたりから。


□Muireann Nic Amhlaoibh の曲であれば何でも「名前が読めないんですけど、素晴らしいフルート奏者です」

 前は公式サイトに発音が出ていたんですが、今は無いようです。カナ表記してみれば「ムイレン・ニク・アウリーヴ」でしょう。この人はフルートも達者ですが、まずすばらしいシンガーです。ぜひ、歌を聴いてください。


□〈Moonfesta〉Kalafina「この曲はケルト音楽ですか?」

 前半はあたしにはケルトというよりも、クラシックの古楽、ルネサンスやバロック初期のスタイルを意図しているように聞えます。後半はケルトからは離れていると思います。


□「カントリーフォークの中に、ケルト音楽の流れ(影響)を強く感じるのは僕だけでしょうか? ということで、ケルトの流れを感じさせてくれる一曲をなにかお願いします」

 「カントリーフォーク」が何を指すのか、今ひとつはっきりしませんが、カントリー&ウェスタンの源流にアイルランドの伝統音楽があり、オールドタイムやブルーグラスの源流にスコットランドの伝統音楽があることは、よく知られています。

 ドーナル・ラニィが音楽監督を勤めた《Bringing It All Back Home》やチーフテンズの《Another Country》《Down The Old Plank Road》などには、そうした流れを実感させてくれる曲や演奏がたくさんあります。



Another Country
Chieftains
Sbme Special Mkts.
2009-08-04


ダウン・ジ・オールド・プランク・ロード
ザ・チーフタンズ
BMG JAPAN
2002-10-23



 個人的には「カントリーフォーク」から連想するのは Nanci Griffith で、彼女は一時期、ダブリンに家をもって、ナッシュヴィルと1年の半分ずつ暮していました。チーフテンズのツアーにも参加し、録音もあります。

 あるいは Tim O'Brien やその僚友 Darrel Scott なども、ケルトの流れを感じさせる歌をうたっています。たとえば前者の《Two Journeys》(2001) です。

Two Journeys
Tim O'Brien
Sugarhill
2002-07-09



 この2人も参加している《Transatlantic Sessions》のシリーズはジェリィ・ダグラスとアリィ・ベインがホストとなり、アメリカ東部、スコットランド、アイルランドのルーツ系ミュージシャンを集めて、ミュージシャンだけで、つまり聴衆無しにセッションをしてもらうのを映し、録音したもので、名演のオンパレードです。DVD と CD と両方出ています。映像はネットでも見られます。


□『ロミオとジュリエット』1968 サントラ「舞踏会の音楽にケルト音楽は使われているのでしょうか?」

 1968年という時代にはまだ「ケルト音楽」は存在しません。「ケルト音楽」という呼称、概念は30年ほど後の、1990年代も後半になって登場します。

 舞踏会の前半、男女がペアで踊っている時の音楽のベースになっているのは、当時のイタリア音楽、バロックの前のルネサンス音楽でしょう。モンテヴェルディに代表されるスタイルです。バロックにかかっているかもしれません。1967年には、イギリスで David Munrow や Christopher Hogwood が Early Music Consort を結成して、後の、いわゆる古楽の探索・復興に乗出していますから、その影響がある可能性もあります。

 後半、腕に鈴を付けて踊られるのは、イングランドのモリス・ダンスの原型を意図していると思われます。その前に女主人が「モリスカ」と言っていますし。Morris dancing はシェイクスピアの他の作品にも登場します。現在、イングランドにしか残っていない踊りで、踊りそのものはまったく異なりますが、音楽は今に残るモリス・ダンスのチューンを連想させます。

 なお、アイルランドの伝統音楽が映画に使われた例としてはスタンリー・キューブリックが『バリー・リンドン』(1975) にチーフテンズの音楽を起用したのが最初と思われます。


□豊田耕三 & 久保慧祐, Ross Memorial Hospital
「リクエストした曲はスコットランドのグループ silly wizard のメンバーであった Phil Cunningham が作った曲でしょうか。」

 そうです。CDには明記されています。

 なお、この曲は30分に及ぶ長いメドレーの2曲めで、演奏者としてはメドレーの一部として聴いてもらいたいと意図していると考え、リクエストの対象からは外しました。


□「キャンディーキャンディー」
「話の中でバグパイプ?をひく青年がいたのですが、曲も地方も分かりません」
「キャンディーの王子さまが、キルトをまとい丘の上で演奏しているもの」

 お二人からリクエストをいただきました。原作ではなく、アニメ版と思われますが、あたしにはまったくわかりません。ご存知の方はご教示ください。(ゆ)

 放送から3ヶ月経ち、いただいたリクエストの全貌がようやく見えてきました。事前にいただいていたリクエストは200本ほどで、その中でのご質問などは以前の拾遺でできるだけお答えしています。

 「三昧」では通常、放送中にいただくリクエストが圧倒的に多いそうですが、今回は最終的に1,400本以上に登りました。1本のリクエストに複数の曲が書かれていることもあり、これを一つ一つバラしてみると、延べで1,450曲を超えました。

 複数の方から重複して来た曲ももちろんあります。演奏者も含めまったく同一と思われる曲をまとめて1曲として数えなおしても、1,000曲を超えました。

 この数だけでも我々の対応能力は遙かに超えていますが、内容の幅もまたひじょうに広く、ゲーム、映画やアニメ、TV関連のもの、伝統のコアそのものから、ロック、クラシック、古楽、J-Pop、アンビエント、ヒップホップなど、ほぼあらゆるジャンル、フォームのものが含まれています。演奏者の出身地域も、日本や北米を別として、スペインからロシアまでヨーロッパのほぼ全域にわたっています。

 NHK の資料室は噂に聞いていたとおり、かなりのもので、国内盤で出ているものはまずたいていはありましたし、輸入盤も一部カヴァーされていました。事前のリクエストから推測して、小生も手持ちのものから、NHKには無いと思われるものを選んで100枚ほどのCDを持ち込んでもいました。しかし、両方合わせても、この幅の広さに対応できるものでは到底ありませんでした。

 リクエストしたのにかからないケースがひじょうに多く出てしまったのはまことに申し訳ないことでした。同じ方から同じ内容で複数回出されたと思われるものも一つに留まりません。まったく圧倒されてしまったというのが事実ではあります。

 「ケルト音楽」自体をこちらでは定義せず、広く門戸を開いたことはありましたが、いざ現れたものの広がりの大きさと奥行の深さに茫然としているというのが正直なところです。この手の音楽を愛好するのは、ほんの一握りの人間たちだけという時期が長く続いたために、小生などはどうしてもスケールを小さく捉える傾向があります。

 ジャンルとしてはゲームからのものが大きな割合を占めています。光田さんをゲストにお迎えしたことによる増幅もあるとは思われますが、RPG の BGM だけでなく、音楽ゲームからのリクエストも多いので、やはり元々、ゲーム関連にケルト音楽の存在が大きいのでしょう。ゲームに詳しい向きによれば、時代的にも黎明期から最近まで、ほぼ網羅されているようです。あるいはケルト音楽だけでなく、音楽全体に接するルートとしてゲームが機能しているのかもしれません。

 とまれ、おそらくあるだろう次回にはもう少し対応できるよう、対策を講じたいと思ってはいます。たとえ小生が関わらなくても、このデータは生かされるはずです。一つお願いは、リクエストはできるかぎり事前にいただきたい。そうすれば、より応えやすくなります。もっとも今回、発表になったのは放送の1週間前でした。次回は来年の同時期と予想されますので、その頃には NHK のサイトにご注目ください。

 リクエストのコメントにいくつか付随したご質問は、別途、できる範囲でお答えします。(ゆ)

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