クラン・コラ・ブログ(アイルランド音楽の森)

 アイリッシュ・ミュージックなどのケルトをはじめ、世界各地のルーツ音楽を愉しむブログです。そうした音楽の国内の音楽家も含みます。加えて主宰者の趣味のグレイトフル・デッド。サイエンス・フィクション、幻想文学などの話もあります。情報やメモ、ゴシップ、ただのおしゃべりなどもあります。リンク・フリーです。

タグ:北欧

 告白するとフリスペルはまったく知らなかった。これが二度目の来日というのに驚いた。どうしてこのライヴのことを知ったのか、つい先日のことのはずだが、もう忘れている。とまれ、とにかく知って行ったのは嬉しい。これもまた呼ばれたのだ。呼んでくれたことに感謝多謝。そしてこの人たちを招いてくれたハーモニー・フィールズにも感謝多謝。

 もう一つ告白すれば、このライヴに行こうと思ったのは、渡辺さんが出るからでもあった。この前かれのライヴを見たのは、パンデミック前だから、もう3年以上前になるはずだ。ドレクスキップ以来、ナベさんの出るライヴはどれもこれも面白かったから、見逃したくない。共演の新倉瞳氏はあたしは知らなかったが、チェロは好きだから、これまた歓迎だ。

 ほぼ定刻、二人が出てきて背後の仏像に一礼、客席に一礼して位置につき、いきなりナベさんがなにやら金属の響きのするものを叩きだした。音階の出せる、平たいものを短かい撥らしきもので細かく叩く。うーん、芸の幅が広がっている。後ではハマー・ダルシマーまで操る。操る楽器の種類が増えているだけではないことは、曲が進むにつれてどんどんあらわになっていった。

 ひとしきり演ってから、やおらチェロがバッハの〈無伴奏チェロ組曲〉第1番を弾きだしたのにまずのけぞる。すばらしい響きだ。演奏者の腕と楽器とそしてこの場の相乗効果だろう。するとそこにナベさんがどんとからんだ。その音の鋭さにまたのけぞる。もうのけぞってばかりいる。こりゃあ、面白い。この二人の「前座」が終って休憩になったとき、隣にいた酒井絵美さんが、「うわあ、面白い。これだけで来た甲斐がありました」と言ったが、まったく同感とうなずいたことであった。

 それにしてもナベさんの音のシャープなこと。音の鋭さではふーちんが一番だと思っていたが、こうなってくるとどちらが上とも言えない。

 曲はバッハの後はナベさんのオリジナルが二つ。一つは雨上がりのまだ木の枝や草の葉の先から雫が垂れているときの感じ。もう一つは京都からナベさんの故郷・綾部に向かう山陰線が、長いトンネルと深い峡谷の連続を抜けてゆく、その峡谷がくり返し現れる情景を曲にしたもの。それぞれに面白い曲なのに加えて、ナベさんの口パーカッションにもいよいよ年季が入ってきて、表現の幅がぐんと広がり、深くなってもいる。いやもう、こんなになっていたとは、クリシェではあるが「別人28号」の文句が否応なく浮かんできた。

 ナベさんの曲作りのルーツにはケルトや北欧があり、ここの音楽は音の動きが細かい。フィドルが盛んなのは、そのせいもある。その細かい動きをチェロでやるのは大変で、チェロでケルトや北欧をやろうという人は、ヨーロッパでも5本の指で数えられるくらいだ。新倉さんは果敢にこれに挑戦している。演奏する姿を見ると気の毒になるくらいで、だからなるべく見ないようにする。そうすると、いやもう、立派なものではないか。こういう人が出てきてくれるのは嬉しい。というか、こういう人がこういうことをやってくれるのは嬉しい。

 二人のステージの最後にフリスペルのリーダー、ヨーラン・モンソンを呼ぶ。元はといえば、昨年この同じヴェニューでモンソン氏とナベさんのライヴを見た新倉さんがナベさんに電話をかけてきて、そのライヴがいかに凄かったか、さんざんしゃべった挙句、一緒にできないかとぼそっと言ったのが今回のきっかけだったのだそうだ。そのライヴはまったく知らず、見逃したのは残念だが、こうして新たにすばらしいライヴが実現したのだから、文句は言えない。

 トリオでやるのはスウェーデンの伝統曲。モンソンさんは例のコントラバス・フルートを持ちだす。とても楽器とは見えないシロモノだが、この人の手にかかると、まさに低音の魅力をたっぷりと味わわせてくれる。クリコーダー・カルテットのコントラバス・リコーダーも似たところがある。あちらはヨーロッパに実際にあったものらしいが、こちらはモンソンさんのオリジナル、のはずだ。クリコーダーのはどちらかというとドローン的な役割だが、モンソン流はよりダイナミックで時にアグレッシヴですらある。そして、この演奏も「ロック調」と本人が言うとおり、即興も加えたたいへんに面白いものだった。

 フリスペルとは要するにスウェーデン版のクリコーダー・カルテットではないか、と後半を見てまず思った。むろん、相当に異なる。まずカルテットではなくトリオだし、今回はとりわけサポートでパーカッションが入っている。一方で笛を操って千変万化、おそろしく多様で多彩、かつオーガニックな音楽を聴かせるところは共通する。なによりも遊びの精神たっぷりなのが似ている。

 前半最後のトリオでの演奏であらためて気がついたのは、ヨーラン・モンソンという人は遊ぶのがうまいのだ。それも自分が遊ぶだけでなく、他人をのせて一緒に遊ぶのがうまい。見ていて思い出したのはフランク・ロンドンだ。もう四半世紀の昔、セネガルのモラ・シラと来て、梅津和時、関島岳郎、中尾勘二、桜井芳樹、吉田達也と新宿のピット・インでやった時のあの遊ぶ達人ぶりが髣髴と湧いてきた。もう6年前になる、ジンタらムータとのライヴもなんともすばらしかった。そのロンドンと同じくらい、モンソンのミュージシャンとしての器は大きく、音楽で遊び、遊ばせる点でも同等の達人だ。このフリスペルはそのモンソンがバンドとして一緒に遊ぶために作ったのだろう。サポートの打楽器奏者も、かれが選んだだけのことはある。

 バンドとして遊ぶとなると一期一会とはまた違った工夫が必要になろう。ここで鍵を握っているのはアンサンブルではめだたない方のアグネータ・ヘルスロームだとあたしは見た。1曲、位置を変えてステージの上手の方に立ったとき、指はまったく動かないのに、音はちゃんと動いているのには驚いた。舌と唇?でやっていたらしいが、ほとんど魔法だ。ディジリドゥーの扱いも堂に入ったもので、インプロまでやってみせる。コントラバス・フルートが2台揃うのを目の前にするのはまた別の感動がある。

 モンソンとともにリードをとるクラウディア・ミュッレルはルーマニアの出身だそうで、彼女のお祖父さんが演っていたという伝統曲はハイライト。2曲のうち、二つ目は森で熊に会ったという、嘘かほんとかわからない話で、パーカッションのイェスペル・ラグストロムが、みごとな日本語のナレーションを入れる。むろん丸暗記だろうが、不自然さはほとんどない。そして、モンソンが日本人女性と日本であげた結婚式でフリスペルが演奏したというウェディング・マーチがまたハイライト。スウェーデンには結婚式のためにウェディング・マーチを作って贈る習慣があるそうで、いい曲がたくさんあるが、これはまた最高の1曲。

 ラグストロムは大小の片面太鼓、カホン、ダラブッカなどに加えて、小型の鉄琴を使う。これがなかなか面白い。膝の上に乗るようなサイズなので、リズムにはおさまらないがメロディにもなりきらない音が出てくる。

 面白い楽器といえば、モンソンが見たこともないものを使っていた。小型の方形の胴の上に4本の鉄弦?を張り、これを木製の太く短かい撥で叩く。これまたリズムともメロディともつかない音が出る。

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 渡辺、新倉が加わっての、スペインはサンチャゴ・デ・コンポステーラ巡礼のための音楽もすばらしい。観光バスで回る四国のお遍路とは違って、この巡礼路はわざとなのか、今でもあまり文明化されておらず、巡礼する人はちゃんと歩くらしい。

 二人はラストのダンス・チューン、800年前から伝わる〈La Rotta〉でも参加した。この曲を初めて聴いたのは、イングランドのアルビオン・カントリー・バンドの《Battle Of The Field》1976で、その時から様々な形で聴いているが、この6人によるものはベストといってもよかった。おまけにここではソロを回す。新倉さんがチェロでしっかり即興をするのに興奮する。こういうこともできる人なのね。

 アンコールは、笛3本で始め、低音担当のヘルストロームがモンソンが使っているのよりさらに短く、一段高い音域の笛に持ち替え。最後にラグストロムが、ごく短く、細い、ほとんど楊枝の様な笛を高く鳴らして終わり。会場、大爆笑。

 いやあ、堪能しました。今月はいろいろ忙しくて、ライヴは最小限に絞っているのだが、その中でこういうものにでくわしたのは、まさに大当り。ハーモニー・フィールズの主催するライヴはちゃんとチェックしなくてはいけない。(ゆ)


ヨーラン・モンソン Goran Mansson:リコーダー、パーカッション
アグネータ・ヘルストローム  Agneta Hellstrom:リコーダー、ディジュリドゥ
クラウディア・ミュッレル  Claudia Muller:リコーダー、口琴
​<サポートゲスト>
イェスペル・ラグストロム Jesper Lagstrom:パーカッション

渡辺庸介:パーカッション
新倉瞳:チェロ

 夕食後、虫の知らせか、めずらしく Twitter をながめているとあらひろこさんの訃報が入ってくる。闘病されていた由。とすると昨年11月に「ノルディック・ウーマン」のステージで見たのが最後。ステージではご病気の様子などはカケラも無く、すばらしい音楽の一翼を担っていた。

 あらさんの生は何度か見ているはずだが、記録に残っているのは2019年10月、馬頭琴の嵯峨治彦さんのデュオ Rauma にハープの木村林太郎さんが加わった時のものだけだ。あれは実にすばらしかった。

 今でこそカンテレもごく普通の楽器で、本朝では本国フィンランド以外で、フィンランドとは無縁の地域としては演奏者人口が最も多い、と他ならぬあらさんに伺った。そうなったことには、あらさんの尽力が大きいのだろう。単に演奏し、作曲する音楽家としての活動にとどまらない、器の大きなところが、あらさんには感じられた。ごく浅いおつきあいしかしていないのに、そう感じられるくらいだ。

 どんなものであれ、異邦の文物が根を下ろすには、それにとらわれたことを幸運としてすべてを捧げる人間が必要だ。

 ご自身の音楽にも器の大きなところは出ている。伝統に深く掘りすすみながら、同時に外からの要素を大胆に注入する。馬頭琴とのデュオというのは、伝統の外にいるからこそ可能なのだし、また伝統にしっかりと根をおろしているからこそ、そこから生まれる音楽に魂が宿る。一方で、鍛えられたバランス感覚と、冒険を愉しむ勇敢さを必要とする危うい綱渡りでもある。そういうことができる人間を一言でいえば、スケールの大きな英雄だ。

 あらさんの音楽を初めて聴いたのはいつだったろう。たぶん2007年のセカンドの《Moon Drops》ではなかったか。2004年のファーストの《Garden》は後追いというかすかな記憶がある。手許に残された音楽はあまりに少ないが、どれも珠玉と呼ぶにふさわしい。

 人は来り、人は去る。されど、音楽は残る。(ゆ)

5月25日・火 > 最新版 2021-06-10

 頼まれたことから思いついて、ケルト系、北欧系、その他主にヨーロッパのルーツ・ミュージックを志向する国内アーティストでCDないし音源をリリースしている人たちをリストアップしてみる。この他にもいるはずだし、ゲーム関連を入れるとどんと増えそうだが、とりあえず、手許にあるもの。ソロも独立に数えてトータル95。

3 Tolker
Butter Dogs
Cabbage & Burdock
coco←musika
Cocopeliena
Craic
Drakskip
Emme
fiss
Gammal Gran
Handdlion
Hard To Find
Harmonica Creams
hatao
hatao & nami
John John Festival
JungRAvie
Kanran
Koji Koji Moheji(小嶋佑樹)
Koucya
Luft
Norkul TOKYO
O'Jizo
oldfields
Rauma 
Rinka
Satoriyakki
Si-Folk
tipsipuca
Toyota Ceili Band
Tricolor
u-full & Dularinn
あらひろこ
安城正人
稲岡大介
上野洋子
上原奈未
生山早弥香
扇柳トール
大森ヒデノリ
岡大介
岡林立哉
おとくゆる
樫原聡子
風とキャラバン
神永大輔
亀工房
川辺ゆか&赤澤淳
木村林太郎
きゃめる
櫛谷結実枝
熊沢洋子
功力丈弘
五社義明
小松大&山崎哲也
さいとうともこ
酒井絵美
坂上真清
佐藤悦子 勝俣真由美
セツメロゥズ
高垣さおり
高野陽子
田村拓志
ちゃるぱーさ
東京ヨハンソン
豊田耕三
内藤希花&城田じゅんじ
中村大史
奈加靖子
生梅
西海孝
猫モーダル
野間友貴
馬喰町バンド
秦コータロー
服部裕規
バロンと世界一周楽団
日花
ビロビジャン
鞴座
福江元太
ポッロヤキッサ
本田倫子
マトカ
丸田瑠香&柏木幸雄
村上淳志
守安功&雅子
安井敬
安井マリ
山崎明
悠情
遊佐未森
ロバの音楽座

 整理の意味も含めて、全部聴きなおして紹介するか。データベースにもなるだろ。(ゆ)

2021-06-10 改訂
2021-06-08 改訂

2021-06-02 改訂
2021-05-31 改訂
2021-05-28 改訂
2021-05-27 改訂

 ギミックも何も無い。凝ったデザインのコスチューム、派手なライトショー、入念なステージ・パフォーマンスなどというものには、元々無縁な音楽ではあるのだが、それでも音楽をより魅力的なものにしようとする努力は皆それなりにしている。ここで言うのは音楽そのものではなく、演奏に付随する様々な仕掛けのことである。たとえばギグのタイトル(「春のゲンまつり」)であったり、意外な組合せの対バンであったり、レコ発ライヴであったり、新しい楽器の導入であったり、という具合だ。それが悪いなどと言うわけではもちろん無い。反対にそういう努力はリスナーだけでなく、演奏者自身にとっても必要なはずだ。

 昨夜の二つのユニットのライヴには、そういう仕掛けが、最低限のものすら見えなかった。その故だろうか、にもかかわらず、だろうか、現れた音楽はそれはそれは素晴らしいもので、これだけのライヴはこれまでに何度体験できたろうか。今年のベスト、とかそういうレベルとはまたどこか別の軸での話である。この一夜だけの、全宇宙の全歴史の中で一度だけ起きた、あの時あの場にいた人間だけが共有し、それぞれの心と体の中に記憶として沁みこんだ何か。音楽体験として根源的なものに触れて、共振したという記憶。

 1つの要因はこの演奏が入念に準備し、練りあげたものでは無かったということかもしれない。後で梅田さんが繰り返していたのが、3 Tolker のメンバーは各々に忙しく、リハーサルの時間もなかなかとれず、3人揃うのはライヴの場だけという状態なので、こうして一緒にやれるのが嬉しくてしょうがない、ということだった。その歓びがそのまま音楽になってあふれ出ていたのだ、あれは。

 3人各々のミュージシャンとしての質がもともと高いし、北欧の音楽を愛することでの連帯感もあって、3人の音が文字通り共鳴しているのだ。共鳴は北欧の音楽の基本的性格だ。ハーディングフェーレやニッケルハルパのように共鳴弦の方が演奏弦よりも多い楽器だけでなく、シンプルなフィドルを重ねて共鳴させることも大好きだ。

 3 Tolker は各々の伝統の現地からは離れていることを活かして、ノルウェイ、スウェーデン、フィンランド、デンマークの各々の曲を自在に往来する。本来の伝統ではニッケルハルパでデンマークの曲を演奏することはありえない。それを言えば、ハープがいるのは、北欧でもハープの人気は高くなっているそうだが、まだまだ稀な類だ。しかしそういう反則技が反則にはまったく聞えない。まあ、こちらが各々の伝統に育っているのではないことも作用しているだろうが、それはむしろ幸運なことだとすら思えてくる。こういう音楽が聴けるなら、反則したっていいじゃないか、いや、どんどん反則してくれ。

 それが最も端的に現れていたのは、3曲め、スウェーデンのワルツからポルスカへのメドレー。ワルツを弾くハープはほとんどバロック音楽に響き、そこからニッケルハルパの低域の共鳴が流れ広がると、ふうわりと体が浮く。ハープの左手のベースのアクセントがツボをビンビン押えて、フィドルが優雅に大胆に遊ぶと、そこはもう異世界だ。隣りにいた品のいいおばあさんが、思わず声をあげたのもむべなるかな。ここには魔法が働いている。

 後半のトリオもパーマネントなものではない。松岡さんとキャメロンは RCS の同窓で、折りに触れて一緒に演奏している仲だそうだが、トシさんが入るのはまた別である。このトリオでここふた月ほど、各地で演奏してきていて、トシさんによれば、どんどん良くなってきているとのことだったが、こうしてライヴを見ると、クリス・スタウト&カトリオナ・マッケイも一番始めの頃はこうだったんじゃないか、と思えてくる。

 松岡さんはカトリオナを見てスコティッシュのハープを志し、RCS、Royal Conservatoire of Scotland に留学して、Corrina Hewat に師事したという。演奏する姿はカトリオナを髣髴とさせる。何よりも楽器を右側に少し傾むけて支え、左手を弦に叩きつけるようにするのは迫力がある。ハープはその姿もあるし、自立できる、つまり演奏者が支えたりしなくても立っていられる唯一の楽器だから、他の楽器に比べると演奏者が楽器に奉仕しているように見えなくもない。それが、こうして傾むけると、弾き手が楽器を自在に操り、他の楽器と同じようにこき使っているように見える。後で訊いたら、始めはやはり真直ぐにして弾いていたのだが、なぜか腰が痛くてたまらなくなり、その解決策として傾けることにおちついたのだそうだ。この辺は伝統音楽の柔軟なところでもある。

 カトリオナには一度インタヴューさせてもらったが、本人は何とも天然な人だった。キャラクターの地はまったく対照的だが、シャロン・シャノンの天然さにも通じるところがあった。それが、いざ演奏するとなると、がらりと雰囲気が変わって、ハープをぶん回し、弾きたおし、楽器を限界以上に駆使する。ように見える。インタヴューしたのは初来日の時だから、音楽的には今の桁外れものとは直接は比べるべくもないが、それでも既にあのデュオの音楽はすっ飛んでいた。

 松岡さんの演奏にも、それに通じる、どこか箍がはずれたところがある。いい意味で、収まるべきところに収まらない。どんな枠をはめようとも、常にそこからはみ出してゆこうとする勢いがある。松岡さんがスコットランドの音楽に惹かれたのも、そこに共鳴したのかもしれない。アイリッシュではこういう音楽は生まれにくい。シャロン・シャノンの存在はあるにしても、アイリッシュにはどこまでも求心的な志向があり、スコティッシュは遠心を志向する。どちらも一方通行ではなく、主に向かう方向とは対極にあるものを常に意識してはいるけれど。そして松岡さんも、MCの時と、演奏している時の雰囲気がこれまた対照的だ。

 キャメロンはスコットランド本土のすぐ北のオークニーの伝統をベースにしている。母親がオークニーの出身であり、当然親戚も多く、音楽一族であるそうだ。本人は一度クラシックを学ぶが、やがてルーツに遡っていったそうだ。

 クラシックを一度学んだことはプラスに作用していると聞える。この点はハラール・ハウゴーやナリグ・ケイシーのように、両方の技法を使えることはメリットだろう。キャメロンの場合、それに加えて、音色の点でも良い結果を生んでいるのではないかと思える。これは証明はたぶんできないし、本人もわからないだろう。あたしのまあ直感みたいなものだ。つまりかれのフィドルの音色に感じられるふとやかな艷は、伝統的というよりももっとパーソナルなところから生まれているのではないか、ということだ。そして意識してそういう響きを出そうとしているのではなく、むしろ抑えようとしても出てきてしまうものでもあるだろう。一方でこのふくらみには伝統が作用している可能性ももちろんある。2曲め、オークニーの伝統曲のワルツでのふくらみにまずノックアウトされたからだ。

 あたしがこの艷のある響きが好きなのは、中低域でひときわこの艷が深みを帯びるからでもある。フィドルよりもヴィオラやチェロ、ハープやピアノでも左手が気になるようになったのは、たぶん年のせいもあるだろう。ケルト系の音楽のキモは高域の輝きにあることは承知の上で、そこが輝くものよりも、中低域がふくよかな演奏に接すると、顔がにやけてしまう。

 キャメロンのフィドルには端正なところもあって、そこがまた気持ちがよい。一方で、優等生的なところも無いではない。たとえばエイダン・オルークのような、闇の世界とでも呼びたい突きぬけたところがあってもいいな、と思えることもある。別にエイダンのようになれ、というのでは無いし、無理に作るものでも無いのは無論のことだが。まあ、これからまたいろいろと吸収して、一回りも二回りも大きくなるだろう。昨日も 3 Tolker を聴いて、北欧音楽に開眼したようだったし。

 トシさんはなるべく裏方に徹しようとしていたが、それでもフィル・カニンガムの曲のジャズ的解釈でのブラシは新境地だったし、1曲披露したマウス・ミュージックも進境を見せていた。あたしの好みではちょっと発声がきれいすぎるのだが、これはまあまた変わってゆくだろう。

 この松岡、ニュウエル、トシバウロンのトリオは今日は西調布の菜花でのライヴ、そして明日は下北沢 B&B でのトーク&ライヴがある。

 菜花でのライヴはトシさんがキュレーターをしている「菜花トラッド」の3回め。ここのライヴは食事付きで、毎回、ライヴに合わせた特別メニューが食べられる。とにかく旨いし、料理込みの料金なので、他のライヴよりもお得だ。料理の旨いライヴハウスも少なくないが、ここのは特別と、太鼓判を押しておく。

 明日のイベントはあたしも参加して、RCS について、いろいろと伺い、またトリオでの演奏もある。現地の大学や大学院で、クラシックではなく、伝統音楽を学ぶとはどういうことか、費用や授業内容などの基本的なところから、日常生活の細かいことまで、生の声を直接聞ける。準備として、お二人から聞いた話はたいへんに面白く、これならあたしも留学してみたいなどとあらぬことを思ってしまうくらいだ。予約が無くてもOKなので、当日ふらりと来られるのも薦める。

 キャメロンはこれを最後に帰国する。このトリオの音楽を聴けるのは、当分無いので、その意味でも貴重。生演奏は一期一会、たとえ同じメンバーでやっても、次の音楽はまた違う。(ゆ)


3 Tolker
酒井絵美: fiddle, hardandingfel
榎本翔太: nickelharpa, vocals
梅田千晶: harp, vocals

松岡莉子: harp
Cameron Newell: fiddle
トシバウロン: bodhran, vocals

 三重の松阪をベースにするバンド、カンランが7年ぶりに出したセカンド・アルバム《Yggdrasill》はファーストから格段の進化・深化を遂げた傑作で、ぜひ生を見たいと思っていたから、このレコ発ライヴには飛びついた。

 カンランはマンドーラとニッケルハルパのトリタニタツシさん、ヴォーカルのアヤコさん、それにパーカッションのカリム氏のトリオで、主に北欧の伝統音楽とそれをベースにしたオリジナル、さらには日本語の民謡を料理する。

 北欧音楽をやるバンドとしてはまずドレクスキップが有名だろうが、トリタニさんは彼らよりもずっと前から北欧の音楽を演奏してきている。ドレクスキップにとってもモデルの一つだったはずだ。この日は都合がつかなかったパーカッションの代理として、榎本翔太さんがゲストとして全面参加していた。

 "Yggdrasill" は北欧神話に出てくる世界樹であることは言うまでもない。地下の黄泉の世界から天上の神々の世界まで貫いてそびえる巨樹だ。フェロー諸島にこの名前のバンドがあり、来日もしたアイヴォールがリード・ヴォーカルをしていた。

 このセカンドではまずシンガーのアヤコさんの進境が著しい。著しいというよりも、ファーストとは別人のように自信にあふれ、溌剌と唄う。その声がまずすばらしい。ぎっちりと中身の詰まった声が、ごく自然に溢れでて、流れるというよりも飛んでくる。どこにも力が入っておらず、大きくもなく、唄いあげることもしないが、貫通力が抜群だ。口も大きく開いていない。美しい声ではないかもしれないが、聴いていてひどく気持ち良い声だ。いつまでも聴いていたくなる、また聴いていられる声、聴くほどにもっと聴きたくなる声だ。

 同時に、どこか妖しい魅力を備えていて、異界の巫女の声のようでもあり、喜んで聴いていると搦めとられて離れられなくなりそうでもある。呪術的という点ではヴァルティナに通じるところもあるが、もっと重心が低く、そう、神々の世界を翔びまわるフェアリィというよりは、我々の棲むこの世界に根をおろしたもののけの声だ。

 スタイルもいい。一見あるいは一聴、坦々と唄って、感傷も感情もこめることがない。聴きようによっては単調に、無表情に響くかもしれない。唄っている間、表情は変わらない。手の動きや位置で多少強調感をつけることもあるくらいだ。しかし、そこがかえって気持ちが良いのだ。歌にこめられた感情をうたい手が表に出さないのは伝統音楽の一つの大きな特徴だが、それだけではないものがアヤコさんの歌にはある気がする。単に感情を現さないだけでなく、それを凝縮し、ぎりぎりまで固めたものをぽんと押し出す。無表情に見えるのは、あまりにぎりぎりまで押し固められているからだ。それが声にのって飛んでくる。ぽんぽんとカラダに当る。当ってそのまま入りこむ。なんという快感。歌よ、終ってくれるな。この声をいつまでも浴びていたい。

 今回は日本語で唄われている曲が多い。北欧の伝統曲にオリジナルの日本語歌詞をつけたもの、メロディもオリジナルのもの、そして日本語の民謡。民謡は別として、日本語の歌詞がまた面白い。内容も面白いが、それとともに相当に練りこまれていて、音の響きとして面白く、メロディにのっている。それが楽曲全体の気持ち良さをさらに増す。

 トリタニさんはニッケルハルパのわが国における開拓者の1人だが、ベースの楽器はギターで、やはりマンドーラの方が特徴が出るようにみえる。このマンドーラは一般に販売されているものではなく、ギリシャのブズーキを基に、クラシックのマンドリン奏者だった人が製作者と協力して作ったもので、世界でも両手で数えられるくらいの本数しか存在しないそうだ。同じくギリシャのブズーキをもとにアレ・メッレルが独自に改造したのがスウェディッシュ・ブズーキ。アイリッシュ・ブズーキに比べると5コースで、5本めの最低音の弦はフレットをはずして、より低いベースが出るようにしている。という話は後で伺った。

 トリタニさんの楽器はこれらに比べるとボディが大きく、ラウンドバックで、音がより太く、強い。アレ・メッレルもドーナル・ラニィも、ブズーキの音を前面に出すよりも、むしろアンサンブルの中のミュージシャンたちに聞かせるように演奏する。トリタニさんのマンドーラはそれよりも自己主張が大きく、アンサンブルに組込むのにはずいぶん試行錯誤したそうだ。今のシンプルなトリオの形はその成果、一個の結論ではある。もっともこの日、アンコールでジョンジョンと合体したとき、アニーの弾いたピアノが加わった形はなかなか良かった。

 このマンドーラを操るトリタニさんはほとんど天才の域である。コード・ストロークやメロディを奏でるピッキングや、その他、何をどうやっているのか、あたしなどにはわからないことをいとも簡単に、少なくとも簡単そうにやってのける。顔にはもう少しで微笑みといっていいが、そうは言いきれない表情が浮かんでいる。楽しくてたまらず、嬉しくてたまらず、思わず顔がにやけそうになるのを締めているようでもあり、心ここにあらず、音楽にひたりこんでいるようでもある。

 榎本さんはもちろんニッケルハルパで、この人はリードをとっても、サポートに回っても、バランスのとり方が実に適切で巧い。擦弦楽器で適切な歌伴をするにはかなりのセンスの良さを要求される。榎本さんのこのセンスはすばらしい。CD ではパーカッションが入るわけだが、その不在の穴をまったく感じない。これが本来だと思えてしまうほどだ。それでも、1曲、トシさんが加わった時は、ヴォーカル、マンドーラ、ニッケルハルパとの組合せをもっと聴きたくなる。

 この日はカンランのレコ発ライヴということで、John John Festival は前座である。トシさんは「露払い」と言う。かれらのライヴを見るのは、CDとして出た求道会館以来。今年の JJF のテーマはアニーがピアノを弾くことだそうで、半分くらいピアノを弾く。ロバハウスのピアノは小型のアップライトで、ちょっと音がくぐもった感じがするが、今回はそれがちょうどいい。そして、ギターからピアノになると、じょんのフィドルの音が浮上する。じょん自身の進境と相俟って、フィドルの艶かしさが一層映える。これは先々が楽しみだ。最後は例によって歌でしめくくる。その1曲目、もうおなじみの〈思いいづれば〉はほとんどア・カペラでうたうが、ぎりぎりまでテンポを落として回すコブシがこれまでとは一段ちがうほど気持ち良い。ラスト〈海へ〉のハーモニーも堂に入ってきた。

 アヤコさんのヴォーカルを軽く増幅した以外はすべて生音で、ここはやはり生音がほんとうに快い。ニッケルハルパの倍音もよく響く。

 トリタニさんとはトシさんをまじえて、昨日、5時間、飲みながらあれこれおしゃべりしてたいへん楽しかったのだが、カンランの名前の由来を訊くのをすっかり忘れていた。(ゆ)

ユグドラシル
カンラン
Sahara Bleu record
2019-05-19


 新作《Storyteller》レコ発、なのだが、パーカッションの熊谷さんが持病の腰痛の発作勃発で涙の欠席。急遽トリオという形になる。とはいえ、高梨さんも言うように、そこがアイリッシュの柔軟なところで、どんな形でもできてしまう。ギターの音をやや大きめにとって、打楽器の欠如をまるで感じさせない。初めて見る人はこういうバンドだと思うだろう。

 初っ端、あたしの大好きな〈北海道リール〉から始まるので、嬉しくなる。つくづくこれは名曲だ、と聴くたびに思う。とりわけ b. の〈牡蠣〉から c. の〈帆立〉への流れ。くー、たまりまへん。

 次の〈かぼちゃごろごろ〉のホーンパイプになる後半がいい。中村さんのギターのカッティングが冴えて、曲全体がスイングする。次の〈鮭の神話〉の c. の変拍子もそうだが、バンド全体としてのリズム感覚が一皮も二皮も剥けている。それが決定的になったのは、前半最後の〈とりとめのない話〉。新作では冒頭に置かれて、いきなりのノックアウト・パンチになっているテンポを上げたヴァージョン。これあ、すげえ。

 アンサンブルの安定感もぐんと増している。こちらでは高梨さんのコンサティーナの進境が大きい。もうセカンド楽器とかいうレベルは完全に脱けている。11月には tipsipuca と生梅という組合せで、横浜・赤レンガ倉庫の Bellows Lovers Night に出るそうだが、パイプの鞴だけでなく、このコンサティーナも大いに活躍するにちがいない。新作からの〈Genghis Khan's Polka〉の躍動感はハイライトのひとつ。

 酒井さんのハーダンガー・フェレもいよいよ味が出てきた。こちらは後半冒頭に高梨さんのロゥホィッスルとデュオでノーPAでやった新作からの〈むかしばなし〉にまず陶然となる。が、後半も終り近くの〈眠る前の話〉での、半音下げたチューニングの響きには、異界に連れてゆかれる想いがわいてくる。後で訊くと、チューニングそのものは前の曲と同じらしいが、半音下げただけで、なんともいえぬふくよかさが出る。

 高梨さんの MC も絶好調で、直前の北海道ツアーでのごちそうの数々をいかにも旨そうに話す。聞いていると、北海道は風景もさることながら、食べ物が抜群に旨そうだ。あたしは札幌のビール園ぐらいしか知らないが、確かにあそこで飲むビールは他のどこにもない旨さがあるし、ジンギスカンも絶品ではある。知床の帆立は食べてみたいぞ。もっとも、鹿肉は食べなかったらしい。

 熊谷さんの欠席は残念だが、おかげでおそらく滅多にないトリオで見られたのは収獲。熊谷さんが復帰してのリベンジ・ライヴも来年には見られるだろう。新作を聴くにつけ、そちらはまたたいへん楽しみ。

 それにしてもこの新作には喜ぶ。国内の録音は、今年も昨年に輪をかけて豊作だ。(ゆ)


Storyteller
tipsipuca ティプシプーカ
ロイシンダフプロダクション
2018-09-23


 エストニアにも音楽伝統はしっかりあることは知識としてはもってはいても、まともに聞いたことはない。Curly Strings は愛聴盤だが、フィンランドだとばかり思い込んでいた。ここにもバグパイプがあり、それは昔は海豹の皮で造られていたとも読んでいた。今回 Trad.Attack! の女性パイパーが吹いているのを目の当たりにできたのは、まず収獲のひとつ。バッグが尻尾のように下に伸び、そこから真横に、ほぼ水平に3本、ドローンが出ている。上が短かく、下が長い。ドローンのこの形は他では見たことがない。やはり、海豹の皮の名残りだろうか。

 エストニアが独立国となってから今年で百周年で、その記念のイベントを世界中で展開中。この音楽祭もその一環でもあるそうだ。音楽だけでなく、テキスタイルやジュエリーのブランド紹介もされるらしく、音楽演奏の前に3人、いずれも女性のデザイナーが紹介された。会場では現物も販売されている。正式には池袋の西武で来週、展示即売される由。ジュエリーには縁はないが、植物の葉を紋様化した、布製の肩掛けカバンはちょっと惹かれる。これに続いて、在日大使の挨拶もあった。アイルランドでも思うことだが、人口130万そこそこの国が全世界と交際するのは、なかなかたいへんなことだろう。わが国のこのあたりでいえば、川崎市の住民が九州よりひと周り大きな土地に住んでいる形だ。

 ミュージシャンは3組。

 まずはアコーディオンの Tuulikki Bartosik。手許の記録を後で見たら、この人の録音は聴いていたはずだが、まったく記憶に無い。なので白紙状態で臨んだわけだが、これがすばらしかった。とりわけ、後半、かとうかなことのアコーディオンのデュエットが鳥肌もの。昨年もバルトシクは来日していて、その時、初めてかとうとライヴをしたそうだが、おたがい一目惚れしたらしい。たがいに相手の良いところを引き出しているのだ、たぶん。バルトシクは鍵盤、かとうはボタンだが大型のもので、異なる音色、テクスチュアが、あるいは重なり、あるいは隙間を埋めてからみ合う。二人のフェアリーが、楽しく遊んでいるけしき。北国のきりりとしたサウンドが基調だが、冷たさよりも陽の光を感じる。かとうの〈あかね雲〉からバルシトクが息子が生まれた時に作ったポルスカをメドレーにしたのがハイライト。ぜひこの二人で1枚、録音を作って欲しい。

 真ん中が Mari Kalkun。まったくのソロ。主な楽器はカネレで2種類。一つは小形で肩から吊るし、爪弾いたり、ストロークしたり、かなり多彩な音を出す。もう一つはそれよりも大振りで、座って膝の上に置く。音域が広く、響きも深い。サウンドとしてはこちらの方がカンテレに近い。カネレを使うのも実はそれほど多くはないそうだ。ましてや、ギターないしオートハープのような使い方はどうやら彼女の独創らしい。

 とはいえ、この人は楽器の腕をこれみよがしにやるのではない。むしろ、声と器楽の組合せで独自の空間を紡ぎだす。伝統どっぷりとは半歩距離をとって、伝統は伝統として尊重しながら、その上に自分なりの音楽を構築する。声は伝統音楽のもので、個性を強烈に打ち出すよりは、受け継がれてきたものを形にする。中心になるのは中域から低域なのも、伝統音楽のうたい手だ。

 この人の資質は一聴して、あるいは一目見て、即座にいいと言えるようなものでもない。その良さがわかるには時間がかかる。ライヴでも30分では短かすぎた。

 Trad.Attack! は一番期待していたし、その期待に十分以上応えてくれるものではあったが、一方で、いわば想定内のものではある。トリオの柔軟性とパワーを自家薬籠中のものとして、実に楽しいライヴを聞かせてくれる。こういうものは30分でも楽しめるし、1時間あれば、それにふさわしい楽しさを味わわせてくれるだろう。

 3人とも、まあ巧い。こういうバンドではドラムスが鍵だが、第一級のドラマーで、こういう人がいれば、どんなミュージシャンがフロントに来ても、音楽的成功は保証される。ここでも12弦ギターというのが、やはり北欧だろうかと思ってもしまう。つまり、かれらは共鳴がことのほかお好みなのだ。ハーダンガー・フェレ然り、ニッケルハルパ然り。ヴェーセンのローゲル・タルロートも12弦。このギタリストはローゲルにも負けない巧者で、ソロまで披露する。パイプの音はこの組合せではそれほど特徴的な音には聞えない。ドローンの音がほとんど聞えなかったこともある。最後に1曲、セリフロイトを吹いたのは面白かった。ヴォーカルにアーカイヴ録音のサンプリングを使ったり、自分たちの声もわざとアーカイヴ風にしたりするのも、楽しい試み。ヒップホップ・スタイルのうたをアーカイヴの音にする(あるいはその逆?)のには笑ってしまった。エストニアはIT産業が盛んだというが、確かにここまでプログラミングを自在に使うのは、イングランドやアイルランドでは望むべくもない。

 もちろん、この3組だけでエストニア音楽を云々するつもりは毛頭無いが、もっとじっくり聴いていきたいと思わせるだけのものはある。Mari Kalkun の3作めのような、アコースティックのバンドも聴いてみたい。

 カルクンによれば、今回の3組はエストニアの中でも南部、東部の地域の伝統音楽がベースになっているらしい。そしてこのエストニア南部、ラトヴィアとの国境に近い一帯は、ヴォル語やセト語という独自の、より古い言語を持ち、音楽的にも古いのだそうだ。アイルランドで言えばコネマラ、わが国で言えば沖縄のような位置付けになるらしい。となると、その地域の、より伝統のコアに近いものも聴いてみたくなる。

 ラトヴィアにも Ilgi のようなバンドがあり、この辺りもいろいろ面白そうだ。エストニアは音楽伝統の吸引力が他の、たとえばフィンランドほど強くないようなのも面白い。カルクンの伝統との距離の取り方は、他の地域では聴いたことがない。全体として一定の距離をとっている、のでもないようだ。ある部分は深く分け入り、その隣りではあえて離れてみる、というようにも見える。

 それにしても、こうした地域の音楽を粘り強く紹介しつづけてくれているハーモニーフィールズには頭が下がる。ありがたや、ありがたや。(ゆ)

STORIED SOUNDS
TUULIKKI BARTOSIK
NORDN
2017-05-26


森の世界の中で
マリ・カルクン
キーヒト・ミュージック
2018-09-30



シマー・ゴールド
トラッド・アタック!
キーヒト・ミュージック
2018-09-30


 カルマンの3人のライヴはそれぞれ見ているが、カルマンというトリオとしては初めて。北海道、東京、高知とベースが離れているため、ツアーの最中にしか練習しないそうだし、楽器の性格も由来も異なるし、世代も違うのだが、バンドとしての有機化はかなりのものだ。こういうバンドはやはり珍しい。楽器の組合せでは世界唯一だろう。フール・フーントゥのメンバーはかなりいろいろなところでやっているから、ピアノとモーリンホーとドラムスのような組合せが絶対無いとは言えないが、フェスティヴァルなどの其の場限りのものではなく、継続的なバンドではちょっとありそうにない。もちろん、組合せが珍しいことだけに価値があるのではなく、その珍しい組合せから生み出される音楽がすばらしいのではある。

 その音楽の幅がまた広い。アイリッシュやアメリカン、モンゴル起源のものはもちろんだが、フィンランドやら、さらにはもっとかけ離れたように見えるジャンルの楽曲やオリジナルもある。この日のハイライトのまず第一は、まったく意外なところで、13世紀スペインで編まれた Cantigas de Santa Maria からの選曲。この中の楽曲には美しいものが多く、古楽の世界では常連のレパートリィだが、まさかここで聴けるとは思わなんだ。しかも、これをダンス・チューンとして、アップテンポで演奏してくれたのだ。2曲のメドレーの後半は奇数拍子で、ほとんど東欧のダンス・チューンに聞える。『カンティーガス』の曲にはアラブ・イスラーム圏の音楽が入っているから、根っ子には共通するものがあるのだろう。

 この曲はダルシマーの小松崎さんが持ち込んだそうだが、こういう闊達な曲でのモーリンホーが絶妙の効果を発揮する。音域からいえばチェロになるが、その中域から高域へかけての倍音が音楽を膨らませるのだ。

 3人の中ではモーリンホーの岡林さんが一番がんばっていて、ケルト系のダンス・チューンでもメロディをダルシマーとユニゾンしたり、ハーモニーに回ったり、大活躍している。ルーツ系の楽器はそれぞれそのルーツ固有の癖があり、できることにはかなり制限がある。その制限の中では並ぶもののない音を出すわけだが、こういうバンドではその制限からはみ出ることを求められる。どこへどうはみ出るかに音楽家の器量が問われるわけだ。また、ルーツをよほどしっかり摑んでいないと、中途半端になって、つまらなくなる。岡林さんのモーリンホーのはみ出し方には、どこか艷のようなものがあって、アンサンブルの中で最も明るく輝いている。

 ダルシマーはどこにあってもお山の大将になるのが普通だが、小松崎さんの演奏にはどこか渋くくすんだところがある。音色がそうだというのではなくて、全体の佇まいの話だ。この楽器は叩く撥の素材によってかなり音の性格が変わるので、木製に鹿皮を貼っているものを使っているせいもあるかもしれないが、たぶんそれだけではなく、音楽家としての成熟の顕れでもあるだろう。きらびやかな派手なところは無く、いっそのことわびさびと言ってみたくなる。よい具合に焼けたヌメ革のような、滑らかな手触りでもある。

 トシさんのバゥロンはソロではいつものように帽子やメガネを飛ばしていたが、3人でやるときはかれとしてはごく控え目な音を出している。一方で、楽曲に色を付けている点ではかれが一番だ。ダルシマーもモーリンホーも、その点ではカラフルな響きの楽器ではない。ベースの色合いはそれぞれ違うが、どちらも水墨画に近い。多彩な色が爆発するのではなく、ごく少ない数の色の濃淡を描きわける。音色の多彩さではバゥロンは伝統楽器では1、2を争う。だから、ビートを刻むというよりも、表面的には単調に聞えるメロディを様々に塗りかえ、多様な表情を引き出す。

 カルマンの音楽をさらに豊潤にしているのは唄だ。この点ではトシさんがリードをとるが、他の二人のコーラス・ハーモニーも達者なものだ。唄はやはり回数を重ねて唄いこむほどに味が出るので、一番古くからやっている〈海へ〉がハイライト。聞くたびに良くなっているが、今回は一つの完成形ではなかろうか。トシさんオリジナルのわらべ歌はバゥロンだけをバックにして、ハーモニーと輪唱をする。もう一つのヴォーカルはトシさんのリルティングで、アイルランドの口三味線でダンス・チューンを演奏するものだが、どちらも面白い。とはいえ、このあたりはまだ発展途上で、これからが楽しみだ。

 会場は中央区の豊海にあるツインのタワーマンションの集会所にあたるらしい。同じ建物にはプールやジムもある。すぐ隣はプールで、向こうからも見えていたはずだ。ミュージシャンたちはその一番奥、バックには遠くにレインボー・ブリッジが望めるところに座る。周囲はカーブを描いた床から天井までのガラス窓、床は板張りのフローリング。むろんノーPAの完全生音。モーリンホーやホーミィの倍音には最高だ。岡林さんのホーミィは本格のもので、初めて実物を生で聞く人も多かったらしい。休日の昼間とて、小学生も来ていて、とりわけダルシマーを面白がっていた。このライヴは小松崎さんの友人という方の自主企画で、終演後の懇親会も含め、すべて手作り。あたしはこういうのが大好きだ。

 懇親会の途中で猛烈な雨が降り出す。まさに滝のような雨で、稲妻もぴかぴか。一方で1時間ほどで小振りとなったので帰ろうと会場を出たのだが、こういう豪雨では水溜りができることを思い知らされた。さあて、会場で買ってきた岡林さんと小松崎さんのCDをこれから聴くとしますか。(ゆ)

 白状すると対バンの相手も見ず、ただグルーベッジのライヴというだけで出かけたのだが、いやあ、面白かった。この対バン企画は渡辺さんの発案だそうだが、さすがにセンスがいい。

 まずは Trio Mio が登場。フルート、ギター、そしてヴィオラ。はじめヴァイオリンと早合点したのだが、どうも音域が低いし、音がふくよかだし、そう思ってよく見ると、サイズも大きい。こりゃあヴィオラじゃないかと思っていたら、2曲終ったところで、ギターの大柴氏がヴィオラと紹介した。ヴィオラというだけであたしなどは「萌え〜」なのである。

 小松大さんがヴィオラでアイリッシュ・チューンをやったり、奈加靖子さんのバックで向島ゆり子氏がヴィオラを弾いたりするのを聴いてから、ヴィオラにはあらためて惹かれだした。もちろん伏線はヴェーセンがあり、その流れでドレクスキップもある。

 これがヴァイオリンだとフルートと音域がかぶる。おそらくはそういうところもあってヴィオラを採用されているのだろうが、この組合せははまっている。とりわけ、二つがハモったり、ユニゾンになったりするところは陶然となる。弦の方が低いところがミソなのだ。

 大柴氏のMCによれば、初めはクラシックの素材をアレンジしていたらしいが、だんだんオリジナルが増えて、今はオリジナルばかりだそうだ。かなりきっちりアレンジされているらしく、3人とも譜面を見ている。即興のように聞えるときでも見ている。

 このあたりはトリニテに通じる。トリニテの shezoo さんもクラシックがベースでそのオリジナル曲はかなりきっちりアレンジしている。ライヴでは即興とアレンジの区別がなかなかわからない。即興と思うとアレンジされていたり、アレンジされていると思うと即興で毎回変わったりする。そこがトリニテの音楽の面白さの一つだ。そして手慣れた曲でも、メンバーは皆譜面を前に立てている。リハーサルを見ていると、細かいところをその場でちょくちょく変更したりもする。

 トリニテの今のメンバーは、譜面がきっちり演奏でき、その上で即興も達者という基準で集めたとも聞いた。トリニテの前身になったバンドでは、ジャズ畑の人たちとやってみたのだが、即興はできても譜面通り正確に演奏することができない人が案外多くてうまくいかなかったという。譜面通りに演奏しながら、音楽に生命を吹きこむのは、音楽家としてかなり質の高いことを求められるのだろう。

 トリオ・ミオはもう少しアレンジされた部分が大きいようにも見えるが、まあその比率の大小などはどうでもいい。音楽としてたいへん面白い。今のジャズのビッグ・バンド、たとえばマリア・シュナイダーあたりにも通じるところがある。もっともこういう小さなユニットでは、個々のメンバーの役割は固定されず、常に流動的になる。3人のおしゃべりになる。

 ギターは主に背景や土台を設定しているが、そうしながら他の二人をコントロールしているというと語弊があるだろう、けしかけたり、引っぱったり、時に主役を張ったりする。

 リード楽器はフルートになるだろうが、これまた単純にお山の大将になるわけではなく、テーマを提示したかと思うとハーモニーに回ったりする。一つの曲の中で、アルト・フルートというのだろうか、より音域の低い楽器と持ち替えることもある。即興で息を強く吹きこんで音を震わせる、ヴォーカルでいえば「いきむ」ような音を出すのが面白い。

 トリオ・ミオのCDは持っていたことに、販売されているのを見て気がついた。以前、大柴氏のライヴを見たときに買っていたのだ。聴いていたかもしれないが記憶にないのは、年齡のせいということにしておくが、ライヴを見るとやはり認識があらたになる。

 トリオ・ミオの音楽が「歌」とすれば、グルーベッジは「踊る」音楽。たとえばやはり大渕さんが参加するハモニカクリームズに比べれば、グルーベッジの音楽はずっと洗練されて聞えるが、トリオ・ミオと並ぶと猥雑さを帯びる。たぶんグルーベッジはこの洗練と猥雑のバランスがちょうどいいのだ。ハモクリでは洗練されたところは隠し味で、猥雑さが前面に出る。

 グルーベッジで洗練さが現れるのがソロを回すところなのは、ちょっと意外でもある。たとえば3曲めの秦さんの曲で、ヴァイオリン、ギター、アコーディオンと回す時だ。それぞれのソロも楽しいが、三つ合わさると単独ではおそらく生まれない、オーラのようなものが漂う。オーラが漂うというのも変だが、輝くよりも流れるのである。

 その点でのハイライトは5曲めの「イプシロン」で、たしか大渕さんの曲だと思うが、アコーディオンの刻むリズムにヴァイオリンが乗る形で始まる変拍子。ギターのカッティングが冴えわたり、パーカッションがハードなロールを繰り出し、ヴァイオリンとアコーディオンのユニゾンが決まる。ヴァイオリンは時にアラブ風のフレーズを繰り出す。こういう曲をこんなにカッコよくできるのは、このバンドだけじゃないか。

 もっともその前、曲名を忘れた北欧風の4曲めもすばらしい。コーダでアコーディオンが延々とソロをとるのが粋だなあと思っていたら、再びフルバンドになだれこむ。

 今回は渡辺さん以外の3人はアコーディオンの秦さんも含めて立ったままでの演奏なのは、音楽のダイナミズムにふさわしく、またそのダイナミズムを生んでいる気もする。そうそう、後で大柴氏が感嘆していたように、誰も楽譜を見ない。かなり複雑なことをやってもいるが、このあたりはルーツ系の面白いところだ。もっともクラシックでは、それぞれの楽器の出入りがあまりに複雑なので、楽譜は必需だとも聞いた。モーツァルトあたりだと無くてもできるらしい。

 グルーベッジのライヴは二度目で、初回は遙か前の高円寺のグレインで、秦さんはまだゲスト扱いだったが、今回はレギュラー。それにしてもアコーディオンの進境は著しい。ケルト系の細かく回転するフレーズを我が物にしながら、ジャズ的な展開を無理なく自然にやっている。

 表面的にはかなり肌合いが異なるが、根っ子のところでは二つのバンドは近いのだろう、アンコールに2曲合同でやったのがまたすばらしかった。1曲めは大柴氏の曲、2曲めは渡辺さんの曲で、ともに各々のバンドだけとはまた違った面白さがでる。個人的には後者でのスリリングな展開には内心万歳を叫んだ。ここでのフルートとヴィオラとアコーディオンのソロ、二人のギターの「バトル」は、まさに一期一会。この対バンがまたあるとしても、そしてあることを大いに期待するが、それでもこれがまた聴けることはたぶん無い。

 各々のバンドの演奏は短かくなるが、やはりこういう対バンは実に楽しい。グルーベッジは次はザッハトルテと対バンするということで、これは見なくてはならない。

 会場の Zimazine は小さいながら、なかなか音がいい。楽器はみな増幅していたが、そうとは聞えないのはバランスがいいのだろう。また、天上が浅い穹窿になっているのも働いているかもしれない。ここはビルの地下で、元々こうなっていたはずはないから、わざとこの形にしたはずだ。ステージも結構奥行があり、左側にピアノがあるが、アンコールで7人になっても、思ったほど窮屈ではなさそうだ。

 ということで皐月はまことに幸先よく始まった。(ゆ)

Trio Mio
 大柴拓: guitar
 吉田篤貴: viola
 羽鳥美紗紀: flute


Groovedge
 大渕愛子: violin
 中村大史: guitar
 秦コータロー: accordion
 渡辺庸介: percussion

 前回の梅田さんと酒井さんの北欧音楽のライヴは試しにやってみましょうということだったらしいが、あんまり楽しかったので、終った直後にまたやることを決めたそうな。酒井さんは今月、ノルウェイに行くので、それから帰ってからと思っていたのだが、待ちきれずに、その直前にやることにし、榎本さんにも声をかけた由。

 まあ、とにもかくにも共鳴弦の響きに陶然とさせられたのだった。

 共鳴弦は北欧音楽のものだけではないし、北欧音楽は共鳴弦だけが特色でもないが、この日は今風に言うなら、共鳴弦祭りだった。

 まずはニッケルハルパの音があんなに艶やかに響くのを聴いたのは、求道会館でのヴェーセンぐらいではないか。ホメリのあの空間、それにたまたまミュージシャンに近いところに座ったこともあったかもしれない。榎本さんによれば、楽器そのもののせいもあるそうだ。日本に来て1年ほど経ち、ようやくおちついてきたという。わが国の湿度はヨーロッパの楽器にとっては難題だが、ニッケルハルパも当初は相当に苦労し、いろいろと手も入れた由。

 そしてハルディング・フェーレ。これまた調弦に時間をかけていたが、いざ音が出ればそこはもう北国の世界だ。

 この2つが重なると、あたしなどは完全に別世界に連れていかれてしまう。音楽を聴いていると、こんな偉大な発明は無い、と想うことがときどきあるが、共鳴弦はその最たるものの一つだ。

 そして、当然ながら、北欧の楽曲は、この共鳴弦の響きを存分に活かすようにできている。そりゃ、本来は逆だろう。北欧の楽曲の響きを出すために共鳴弦が編み出され、ああいう楽器ができてきたはずだ。というよりも、おそらく両者はたがいに刺戟しあう形で、どんどんと先へ先へと進んで、ああいう形になっているのだろう。とまれ、その気持よさ、ゆったりとして、後ろへひっぱるアクセントが強靭なそして粘りのあるバネとなってはね返るノリが、重なる音をさらに共鳴させる。

 普通のフィドルとニッケルハルパもよく響きあう。酒井さんは低音弦をよく使うが、そのふくらむ響きが、文字通りの共鳴を産んで、空間いっぱいに響く。もう、いつまでも終らないでくれと願う。

 ハープは北欧の伝統には無い。フィンランドのカンテレが一番近いだろうが、どうやらあちらの人びとは楽器は横にして弾きたいので、縦は好まなかったらしい。もっともこの頃ではハープも人気だそうで、梅田さんがハープを弾けるとわかると、教えてくれと言われたそうだ。ひょっとすると、ハープは「旬」を迎えているのかもしれない。アイルランドでもハーパー人口は増えているし、スコットランドはもっと盛んだ。エドマー・カスタネダのような人が出てきて、脚光を浴びるのも、あるいはハープをめぐる流れが世界的規模で盛り上がっている徴かもしれない。ところで、カスタネダの初録音はニューヨーク在住のアイリッシュ・シンガー、スーザン・マキュオンの BLACKTHORN (2005) だということは、ここでもう一度言っておいてもいいだろう。

 その伝統にない楽器を梅田さんが弾くと、あたかも北欧の伝統楽器に聞える。梅田さんの演奏にはどこかそういう説得力がある。自信があるというよりも、ごくあたりまえに弾いている。伝統楽器で無いほうがヘンだと思われてくる。

 そのハープも、ほめりではよく響く。特に増幅はしていなかったが、2つの楽器に埋もれることもない。これも聴く位置のせいか。ほめりは細長いので、席の位置によって聞こえ方が結構変わる。

 演奏されたのは、ノルウェイとスウェーデンがメインで、アンコールにハウホイがやっていたデンマークのワルツ。面白いのはノルウェイとスウェーデンの曲をつなげてメドレーにしたりする。こんなのは現地ではありえないだろう。ありえないといえば、ハープが入ったトリオという編成もありえない。こういうところが異邦の伝統音楽をやる醍醐味のひとつだ。

 びっくりしたのは、後半のはじめでいきなり榎本さんがうたいだした。スウェーデンのコーヒーのうたで、はじめスウェーデン語で、次に日本語で、アカペラでうたう。さらに、榎本さんがリードし、他の2人がコーラスをつける古いうた。現地の人でも歌詞の意味はわからないくらい古いうた。榎本さんはニッケルハルパを習いに1年留学されたそうだが、その収獲のひとつらしい。やはりうたはええ。こういう場でうたが入るのはことにええ。

 それぞれのソロもあり、これがまたいい。たっぷり2時間。どこか、やめたくないような感じもあった。終る前から次回の話をしているのはもちろん、録音の計画もまだぼんやりだがあるようだ。是非実現してほしい。

 北欧と一口にいっても、むろん、それぞれの地域で地合いはかなり異なる。国のなかでも異なる。国境地帯では、むしろ同じ国の他の地域よりも、隣国の方が近いこともある。アイルランドでもドニゴールはスコットランドに親しいのと同じだ。スコットランドではハイランドとロゥランドはまるで違う。この人たちはそういう違いもきちんと把握しているのが強い。国別だけではなく、より細かい地域による違いを押えることは、伝統音楽を相手にするとき、案外大事になってくる。それにまた、そういう違いがわかってくると、音楽を聴くのも、それにたぶん演るのも、さらに面白くなる。録音で聴くのも面白いが、眼の前でその違いを弾き分けられると、体感として染みこんでくる。

 音楽から聞えてくる北欧は、家具などから見えてくる北欧とはまた違った様相を呈する。北欧デザインも好きだが、もっと昏い、どこか激しい北欧の方が、すとんと腑におちる。そしてその中に、一本ぴいんと筋が通っている。ニッケルハルパやハルディング・フェーレの共鳴弦にもその筋は通っている。気品と呼んでみたい気もするが、しかしそこには日本語の気品とは対極にあるような、なまぐさい、どろどろしたもの不可欠になっている。ムーミンのモランの気品といえば近いだろうか。ニッケルハルパを見て虫と言った人がいるそうだが、確かにあの楽器にはそう呼びたくなる不気味なところが潜んでいる。北欧デザインの、あの贅肉を削ぎ落とした佇まいには、そうした不気味な、時としておぞましいとすら言えるようなところを押えこむ意志を感じることがある。

 伝統音楽にはどこのものにもそうした不気味なところ、おぞましいところがある。そしてそれが魅力を産んでもいる。北欧の音楽では、たとえばアイリッシュなどよりも、その部分が表面に近いところまで昇ってきているようにもおもえる。(ゆ)

05/21(土)〜22(日)
「天ぷらバスで行くオーガニックライブツアー in 丹波村」
ノルカルTOKYO
酒井絵美: fiddle, hardangar fele
モーテン・J・ヴァテン: 各種笛
費用: 20,000円(予定)
募集定員: 20名 最少催行人数15名
詳細はウエブ・サイトをどうぞ。

05/26(木)
コエトオト@渋谷・公園通りクラシックス
 渡辺庸介: percussion
 優河: vocals, guitar
 中村大史: guitars, etc.
 佐藤芳明: accordion
open 18:30/ start 19:30
予約 3,000円/ 当日 3,500円

05/28(土)
 Alan Patton: accordion, clarinet, vocal
 関島種彦: violin, mandolin
+ Gideon Juckes (tuba)
ギャラリー無寸草(とづづ)、下北沢
open 18:30/ start 19:30
2,000円 + 1 drink


06/01(水)
start19:30
入場無料
 アイヌのヴォーカル・グループのインストア・ライヴ。


06/03(金)
グルーベッジ+@Grain、高円寺
 大渕愛子: fiddle
 中村大史: guitar
 秦コータロー: accordion
 渡辺庸介: percussions
open 18:30/ start 19:00
予約 3,000円 当日 3,500円 + Order

06/04(土)
Celtic & Nordic Music Party @ 上野不忍池水上音楽堂
open 12:30/ end 17:45
500円
 今年から有料になったけど、これだけ贅沢な内容でこの値段はタダ同然。
プログラム、出演者については公式ブログをご参照。
フライヤーはこちら

06/04(土)
 Alan Patton: accordion, vocal
 多田葉子: saxophone, clarinet
 岩原Ab3: bass, tuba
昼 14:00〜17:00 2〜3回 1 drink + 投げ銭
夜 19:00〜 2,000円 + drink order


06/09(木)
 Alan Patton: accordion, vocal
 多田葉子: saxophone, clarinet
 岩原Ab3: bass, tuba
with ピエモンテルノ(from 京都)
open 18:30/ start19:30
2,000円 + 1 drink


06/15(水)
絵のない絵本 Vol.3 @ 喫茶茶会記、四谷三丁目
 西川祥子: 映像、主催
 西田夏奈子: 朗読
 shezoo: ピアノ、作曲
 加藤里志: saxophone
 相川瞳: percussions
open19:30
 詳しくは主催者に問い合わされたい。どういうイベントかはこちらを参照。


06/25(土)
アイルランド音楽講座ギター篇 @ ブック&カフェ B&B、下北沢
 長尾晃司
 トシバウロン
 おおしまゆたか
open 14:30/start 15:00
2,000円 + 1 drink order
 下北沢のブックカフェ、B&B でのアイルランド音楽講座の第2回はわが国トップ・ギタリストの長尾晃司さんをお迎えして、アイリッシュ・ミュージックにおけるギターについてお話をうかがいます。


06/26(日)
 大渕愛子: fiddle, vocal
 大橋大哉: guitar
+ 中村大史: accordion 他
open 18:00/ start 18:30
予約 2,000円 当日 2,500円 + 1 order


 下北沢のレコード店兼ライブハウス兼レストランの mona recordstipsipuca が出るというので出かける。対バンの2つは初体験。

 いやあ、面白かった。たしかにヘビー級の三連発で、お腹いっぱい。ちょとくたびれたくらい、充実してました。

 まずはトリをとったふーちんギド。チューバとドラムスというデュオで、リズムだけなのかと思ったら、どちらもメロディを演る。

 チューバの名人は関島岳郎氏はじめ何人か見ているが、こんなにメロディを吹きまくるのは初めて。マイクをつけて増幅しているのは当然としても、エフェクタをかけて様々な音を出したりもする。これはリズム楽器ではない、ラッパなのだということをあらためて思い知らされる。ギデオン・ジュークスという人はシガーロスにもいて、シカラムータにも参加しているそうで、不覚にもまるで気がつかなかったが、こうなるとあらためて遡りたい。

 ふーちんのドラムスはとにかくキレがいい。音もフレーズもおそろしくシャープなのだ。こんなに鋭いドラムスは録音も含めて聴いた覚えがない。まったく違う楽器やスティックを使っているんじゃないかと思えるほど。何をいつどこで叩くかの選択もシャープで意表をつく。ライヴでもあたしはふだんは目をつむって聴くことが多いが、このデュオだけは目を離せない。演奏している姿がそれは楽しい。一見華奢な体型だが、体幹がしっかししているのだろう。でかい音もしっかりでかい。重い音はずっしり重い。あとはスタミナだが、一度、フルのコンサートを見たい。

 ふーちんは特製ベルトで体にくくりつけたピアニカも操る。右手でドラムを叩きながら、左手でピアニカを演奏することもやる。面白いのは、左手で鍵盤の白鍵側からではなく、黒鍵側から弾く。鍵盤しかないピアニカならではだが、逆転の発想ですな。

 この組み合わせと演奏スタイルの衝撃で、何を演っているかはどうでもよくなってしまったが、基本的には東欧ジプシー・バンド流の曲のようだ。もっともアンコールではロックンロールをいかにも楽しく演っていて、このあたりがルーツかとも思えた。

 トリをとったし、このハコでは何度もやっているとのことなので、今回の企画はこのデュオを中心に、張り合えるアクトを組み合わせたのだろう。

 真ん中の Csiga Jidanda はハンガリー語の「かたつむり」が「地団駄」を踏んでいるのだそうだ。アコーディオンの Alan Patton とヴァイオリンの関島種彦のデュオ。

 まず仰天したのが関島氏のヴァイオリン。この人は名手というよりも天才だ。ヴァイオリン自体はまずクラシックから入っているのだろうが、ベースはジャズだ。ブログのプロフィールには好きなミュージシャンの筆頭にスタッフ・スミスの名がある。そして、東欧の、ハンガリーからバルカンあたりのヴァイオリンを完全に身につけている。体の一部になっている。こんな人がいたとは狭いようでまだまだ世界は、日本は広いのだ。あたしの世界が狭いだけか。

 アラン・パットン氏は「氏」と呼ぶのがもったいないくらい人なつっこいおっさんで、日本語はネイティヴよりうまい。小柄だががっしりした体で、鍵盤アコーディオンを軽々とあやつる。ルーマニアン・チューンも弾きこなすが、どちらかというと関島氏のヴァイオリンを引き立て、押し出す。コミカルで味のある、なかなか陰翳に富んだヴォーカルも披露する。演奏しながら、顔の表情も変えて、視覚効果も駆使する。こういう要素は確かに、アイリッシュ系には少ない。

 基本のレパートリィは東欧の伝統曲やそれに準じたオリジナル。1曲ノルウェイの曲といって演ったのは、その方面に詳しい酒井絵美さんによればスウェーデンの曲のはずで、あたしにも聞き覚えがあるから、たぶんヴェーセンあたりがやっていたのではないか。

 トップで出た tipsipuca はこの2つに比べると、やはり味わいが違う。まずレパートリィがヨーロッパでも西寄りになる。それに今回は「プラス」ヴァージョンで中村大史さんのギターと熊谷太輔さんのドラムスが加わって、バンド形式でもある。ふーちんギドもチガ・ジダンダもよりストイックで柔軟だ。tipsipuca もデュオならばまた違っていただろうが、バンドになるとかっちりとできあがるし、tipsipuca プラスの場合、リズム・セクションとフロントの役割分担が明確なので、さらに骨格がしっかりする。

 それとなんといっても曲の面白さ。こうして他のバンドと並べて聴くと、高梨さんの作る曲の面白さが浮き立つ。アイリッシュ・ベースであることをさしひいても、メロディの面白さが光る。単にメロディがいいというだけではなくて、耳を捉える際立つフレーズがどの曲にも入っている。ハイライトは〈真夜中の偏頭痛〉で、これは奇数拍子と偶数拍子がフレーズによって入れ替わる。聴いている方が体の内部をよじられる極楽の体験だが、演るのは相当に難度が高いだろう。しかもおそらくは拍子が先にあるのではなくて、メロディから生まれてそうなっている。というのも、先日、本郷でのライヴの際、熊谷さんから訊ねられて、高梨さんが指で数えて確認していたからだ。

 高梨さんは昨日はホィッスルでも活躍で、ミキシングのせいもあるのか、よく目立っていた。楽器を変えたのかな。

 3つのバンドそれぞれのファンが来たせいか、30人も入れば満杯の会場は立ち見もぎっしり。PA のバランスも良く、気持ちがいい。いや、それにしてもこういうバンドが聴けるのは、中村さんも言ってたように対バンの醍醐味。期待をはるかに上回る効験で、追っかけたいミュージシャンがまた増えた。ごちそうさまでした。(ゆ)

 フィドルとハーダンガーフェーレの酒井絵美さんと各種笛の Morten J. Vatn さんのデュオ、ノルカル Tokyo の渋谷タワーレコードでのインストア・ライヴはいつものこの手のライヴとはちょっと手触りが違った。ゲストに高梨菖子さんと長濱武明さんが加わっているので、楽器編成としてはそう変わらないのだが、やはりスカンディナヴィアの素材のせいだろうか。それともモーテン・ヴァテンさんのご家族、友人が大挙して来ていて、客層ががらりと違っていたせいだろうか。ありていに言えば、いつもは基本的にいけいけのノリでお祭りの雰囲気なのが、じっくりと曲に聴きいってしまうのだ。

 まだ生後1年にならない息子さんに捧げた子守唄も良かったが、ハイライトは唯一のスウェーデンの曲。ヴァテンさんがピアノで繰り出すブルーズ・ビートに酒井さんがフィドルで弾くのだが、楽曲の良さとともに、このブルーズとの組み合わせがすばらしい。BGMがかかっていたり、人が通ったりで、わさわさしている会場が静まりかえった感覚。

 6階のインストア・ライヴの会場は昇りエスカレーターからフロアへの入口の脇だから、インストア・ライヴ目当てではないお客さんも通る。ライヴが始まると、その人たちが半分くらいはその場で足を止めて聴いている。ほとんどがそのまま最後まで聴いていた。

 酒井さんもヴァテンさんも、おしゃべりはあまり得意ではなく、MCはなめらかではないが、それがかえって雰囲気を作る。音楽そのものも手探りで作っていて、ライヴもまた手探り。必ずしもはじめからぴったり合っているのではなく、むしろ一緒にやれるところを確かめながらやっているようなのが、面白くもあり、楽しくもある。といってひとまずここもでできましたという未完成でもない。一瞬一瞬、できあがってくるのを、本人たちも驚き楽しんでいるふぜい。ことばの本来的な意味で「生」なのだ。

 北欧というと、かっちりすっきりと完成された美学に律せられた世界という印象がここではだいぶ崩れている。破綻しそうでしないバランスが、スリリングというよりは笑ってしまう。アルバムのタイトルになっている神話の山羊は、北欧神話よりもアイルランドの田舎にでも出てきそうだ。こういうユーモアの隠し味はたぶんヴェーセンなどでもあるのだろう、と気づかせてくれる。そうしてみれば、ノルカル Tokyo というユニット名自体がとぼけているではないか。

 ノルカル Tokyo としてのライヴはしばらく無いそうだが、このユニットはぜひ続けてほしい。これからどうなっていくのか、まったく予想がつかないところがなんとも楽しい。ひょっとするととんでもないものになる可能性もある。とりあえずは実は丹念に作られたデビューCDを繰り返し聴いてゆきましょう。(ゆ)



Heidrun ヘイドゥルン
ノルカルTOKYO
ロイシンダフプロダクション
2016-03-13


 モバイル・オーディオの「賢者」で、プロはだしのカメラマンでもあるささきさんが、今年のノルディック&ケルティック・ミュージック・パーティーのレポートを書いておられます。
http://vaiopocket.seesaa.net/article/420355672.html

 こちらは動画もたくさん入ってます。(ゆ)

 満開の染井吉野は、周りをとても静かにしますね。

 昨年第2回が開かれた北欧とケルトの伝統音楽のフェスティヴァルが今年も開かれるそうです。

期日:06/07(日)
場所:上野公園不忍池水上音楽堂
時間:10:15開場 12:30開演
入場無料、雨天決行

出演(予定)
あんじょん
小松崎健&あらひろこ
カンテレアンサンブル ilmalaiva
豊田耕三フルートアンサンブル
Musikanterna
東京ヨハンソン
Noboru Matsumoto & alternative bloods

 出演ミュージシャンは随時公式ブログに発表されるはず。

 場所は屋外ではありますが屋根がありますので、雨でもだいじょうぶ。
もっとも、雨合羽ぐらいはあるといろいろ便利。

 昨年の様子はたたとえばこちらをどうぞ。

 昨年は熱を出して行かれませんでしたが、今年は万全を期して臨みます、はい。(ゆ)

 久しぶりに八重洲の「やなぎ」に行ったら、こんなイベントのチラシをいただきました。

nordic-celtic-music-party
https://www.facebook.com/nordiccelticmp
http://nordicceltic.blogspot.jp/

 今年が2回めだそうですが、出演者のリストを見てびっくり歓喜。えー、シャナヒーが見られる! 亀工房も! いやあ、こんなメンツが一堂に会してくれるなんて、盆と正月が一緒に来た以上じゃないですか。しかも、入場無料ときたもんだ。こりゃやっぱり、ホンモノの「おひねり」を用意して、ステージに向かって投げるっきゃない。

 唯一の懸念材料は天候ですが、「雨天決行」。その心意気や良し。

 現在の出演予定者はこんな具合。

    シャナヒー
    ドレクスキップ
    Musikanterna
    東京ヨハンソン
    まほうつかいのでし
    豊田耕三&フレンズ
    matsumoto noboru & alternative bloods with friends
    亀工房
    A Drop of Good Beer
    ぼちーばんど
    Deedle Fiddle

 06/07(土)12:00 Open 13:00 Start 雨天決行
 入場無料
 上野公演不忍池水上音楽堂


 シャナヒーは翌日単独公演もあるだよ。行かにゃならんだよ。

    06/08(日)15:00 Open 15:30 Start
    前売3,000円 当日3,500円
    早稲田奉仕園 スコットホール講堂
    チケット予約・問い合せ
    costmary@woodruff.press.ne.jp
    046-453-0587
    shana@bg8.so-net.ne.jp

 メンバー
        みどり:fiddle, hardanger fiddle
        Aki:percussion, melodeon, kantele, etc.
        上原奈未:harp, reed organ
       
        ほりおみわ:voice

 ほりお氏がゲストということは、あの傑作《LJUS》をライヴで聴けるのだぞ、諸君。

Ljus
シャナヒー (Shanachie)
Smykke Boks
2013-04-10



 さらにさらに、だ。翌月にはドレクスキップ大森ヒデノリのツアーもあるぞ。
 "Road To The Roots" と題して、春・夏・秋、それぞれにゲストを迎えて列島縦断する、という企画。春はトリタニタツシさんがゲストで、つい昨日千秋楽。夏が大森ヒデノリさんを迎えて、大阪、東京、名古屋。

    07/12(土)大阪・アナザードリーム 18:00 Open 19:00 Start
    07/18(金)東京・楽屋 18:00 Open 19:30 Start
    07/19(土)名古屋・TOKUZO 18:00 Open 19:00 Start
 チケットはいずれも、前売3,500円 当日4,000円 ペア6,000円

 6月になれば晴れて自由の身。行くぜ、ライヴ。(ゆ)

 人生最高のライヴだった。

 もちろん人生最高のライヴはいくつかある。とはいえ三本の指に入る。

 良いライヴというのが稀なのは、それを形作るさまざまな条件が全部うまくはまることが稀だからだ。ミュージシャンの体調、リスナーの体調、会場の特性、曲の選択と配置、当日の天候、聴衆の性格、その他にもいくつもの要素がぴたりと合って初めてライヴは成功する。

 まず会場がすばらしかった。演奏は最高だった。曲の流れが練りに練られていた。聴衆は音楽をよく知っている。一年で一番良い季節。

 なかで一番の貢献をしていたのは、つまりこの夜の主役は会場だ。

 求道会館は「きゅうどうかいかん」と読み、もともとは浄土真宗大谷派の会堂として百年前に建てられた。建てた人と設計した人については公式サイトに詳しい。外から見ると洋館。中に入ると教会のような柱のない、しかも高い空間の正面、教会ならば祭壇や十字架が掲げられているところに六角堂がはめこまれており、阿弥陀如来の立像が安置されている。六角堂は壁の裏側にもちゃんと続いている由。床は板張り。そこに3人掛けの、やや座位の低い長椅子が並べられている。教会のように両側に二階席があり、その下は身廊ともみえて、つまりロマネスク様式でもある。二階も床は板張りで、内へ向かって段々になっている。やや大きめの窓にはすべて板が打ち付けられているが、後で聞くと吸音材だそうだ。中は土足厳禁で、靴を抜いでスリッパで入る。ミュージシャンたちも靴下だった。リアム・オ・メーンリなら大喜びで裸足になるところだ。

 今世紀に入って建築主の子孫が主体となって修復し、主に真宗の講演や行事に使われており、一方で様々なライヴも行っている。辻康介氏をはじめとする古楽が多いらしい。地唄の藤井昭子氏が定期的に演奏会を開いているとのことで、これは一度来よう。

 とにかく音が良い。ローゲルのギターに、本人がいつも持ち歩いている小さなアンプで軽く増幅をかけた他は完全に生音。それがかつてなくよく聞こえる。かれらの本当の音を初めて聴いた。ニッケルハルパの倍音の重なり、ヴィオラのふくらみ、十二弦ギターの芯の太さが、はっきりと聞こえる。もちろんバラバラに聞えるのではなく、アンサンブルとして、一個の有機体としてやってくる。適度の湿り気をふくんだ弦の響きがまっすぐに伝わってきて、背筋に戦慄が何度も走る。

 響きのよい会場ならば、ミュージシャンたちの意気込みもちがってくる。来年結成25年を迎えるヴェーセンは、いま現在、これまでないほど多忙なそうだが、その多忙さは良い方に作用している。今回は、とりわけ東京での会場が普通のコヤではないところが、よい刺戟になっているのだろう。この前の晩は科学博物館で恐竜の骨格標本に見下ろされての演奏だったし、この日は阿弥陀様が見守っていた。教会のような威圧的なところもなく、寺のような抹香臭さもない。それでいて、どこか敬虔な気持ちがわいてくる不思議な空間。この空間ですばらしい音楽に洗われて、身も心もすっきりと晴れやかになってくる。アルテスの鈴木さんも風邪が治ってしまった。

 あまりにすばらしかったので、ほんとうに久しぶりに打上げに参加させてもらった。かれらの英語は実に聞き取りやすく、わかりやすい。ローゲルから、英語で書かれた日本の歴史の良いものはないか、と訊かれた。後で調べて連絡することにする。スカンディナヴィアのバンドで最初に聴いたのは何だというので、Folk Och Rackare と答えるともちろん知っていた。リード・シンガーの Karin Kjellman は健在で、いまもうたっている由。Rackare は死刑執行人のことだとミッケが言うと、ウーロフがそうではなくて皮剥職人のことだと言う。いずれにしても賤民とされた人びとをさすらしい。

 それをバンド名に掲げたこの先駆者はやはりその後のスウェーデンのミュージシャンに甚大な影響を与えたそうだ。かれら自身はスウェーデンとノルウェイの混成バンドだったはずだが、カリンの気品に満ちたヴォーカルを中心に、民衆の野生と粘りを格調の高い音楽として演じていて、今聴いてもあれだけのものはなかなかない。ローゲルによればかれらはまたフェアポート・コンヴェンションに影響を受けていて、それは最後のアルバム《RACKBAG》にリチャード・トンプソンが参加しているのでもわかる。ここでのトンプソンの演奏は一世一代といってもいい。ローゲル自身、フェアポートにははまったそうだ。

 久しぶりに遅くなって時間計算をあやまり、これまた久々に終電を逃して手前の駅からタクシーをとばす破目になったが、そんなことは全然気にならない夜だった。

 このライヴを実現してくれたバンドはもちろん、招聘元ののざきさん、そして会場のコーディネート担当鷲野さん、そしてこのすばらしい建物を修復し、使用して後世に伝えている会館オーナーに心から感謝する。(ゆ)

「東京インスピレーション Vol.3 声の宇宙・小林沙羅」
開場18:30 開演19:00
予約3,500円 当日4,000円
 小林沙羅: soprano
 鈴木准: tenor
 中村裕美: piano
 小田朋美: piano
 澤村祐司: 箏
 渡辺元子: 尺八
 石井千鶴: 鼓
 早坂牧子: vocal
 豊田耕三: Irish flute, badhran
 丹野恵美子: flute
 朝来桂一: violin
 大石俊太郎: sax
 中村大史: guitar, accordion
 関口将史: cello
 今井文香: percussions

12/21(金)梅津和時サード・パーソン @ 新宿 Pit Inn
開場 19:30 開演 20:00
予約3,200円 当日3,500円 ともに1ドリンク付き
 梅津和時: sax
 サム・ベネット: percussions
 with
 今堀恒雄: guitar
 石橋英子: piano
 ジム・オルーク: guitar
 ミトB (from clammbon)
 山本達久: drums

12/22(土)新大久保ジェントルメン @ 新宿 Pit Inn
開場 19:30 開演 20:00
予約3,200円 当日3,500円 ともに1ドリンク付き
 梅津和時: sax
 太田惠資: violin
 清水一登: piano, keyboards
 四家卯大: cello
 佐藤正治: drums

12/22(土)Tricolor @ 目白ギャラリーゆうど
開場15:30 開演16:00
予約2,300円 当日2,500円 1ドリンク+お菓子
 中藤有花: fiddle, concertina
 長尾晃司: guitar, mandola, 5-string banjo
 中村大史: accordion, bouzouki, whistle

12/23(日)The Corona Christmas Concert 2012 @ 杉並 sonorium
開場18:30 開演19:00
予約3,500円 当日4,000円
 古川尚篤: drums
 Ui: vocal
 Aya Lucca: Piano
with
 ヤマトヤスオ: double bass
 野口明生: uillean pipes, whistle
 &
 中藤有花: fiddle, concertina
 長尾晃司: guitar, mandola, 5-string banjo
 中村大史: accordion, bouzouki, whistle


12/23(日)カンラン @ 松坂 レストランカルティベイト スペシャルクリスマスディナー
【出演】胡池 マキコ (vo, g) × トリタニタツシ (nyckelharpa, Irish bouzouki) 
【料金】未定
【会場】カルティベイト 三重県松阪市嬉野下之庄町1688−5
*詳細はレストランHPにて


12/23(日)梅津和時キャバレー! 大忘年会 @ 新宿 Pit Inn
開場 19:30 開演 20:00
予約3,200円 当日3,500円 ともに1ドリンク付き
 梅津和時: sax
 多田葉子: sax
 渡辺隆雄: trumpet
 松井亜由美: violin
 白井良明: guitar
 張紅陽: accordion
 近藤達郎: piano
 かわいしのぶ: bass
 関島岳郎: tuba
 夏秋文尚: drums
 +
 小川美潮: vocals
 鈴木亜紀: vocals
 四谷シモン: vocals
 安保由夫: vocals, guitar
 武川くじら雅寛: vocals, etc.
 大川俊司: bass

12/24(月・祝)カンラン @ 阪神百貨店 北欧フェア2012
【料金】フリー
【会場】阪神百貨店
*北欧フェア2012期間中、トリタニタツシの北欧Photoコラボ企画を計画中!

12/25(水)shezoo「夜の音楽:ジョン・ケージに捧ぐ @ 横濱エアジン
19:30開演
2,500円+drink(500円〜)学割有
 shezoo: piano

12/25(水)John John Festival @ 京都 prinz
 じょん: fiddle, vocals
 Annie: accordion, guitar, mandolin, vocals
 トシバウロン: bodhran, percussions, vocals

12/26(水)John John Festival @ 神戸 チキンジョージ
「ああ素晴らしき音楽祭」
 じょん: fiddle, vocals
 Annie: accordion, guitar, mandolin, vocals
 トシバウロン: bodhran, percussions, vocals

12/27(木)John John Festival @ 四日市 tayu-tau
 じょん: fiddle, vocals
 Annie: accordion, guitar, mandolin, vocals
 トシバウロン: bodhran, percussions, vocals

12/28(金)Bondage Fruit @ 秋葉原 グッドマン
19:00開場 19:30開演
前売 3,000円 当日 3,500円 +オーダー
 鬼怒無月: guitar
 勝井祐二: violin
 高良久美子: vibraphone, percussions
 大坪寛彦: bass
 岡部洋一: percussions

12/29(土)John John Festival @ ザムザ阿佐ヶ谷
17:00 open 18:00 start
予約3,000円 当日3,500円(+ drink)
 じょん: fiddle, vocals
 Annie: accordion, guitar, mandolin, vocals
 トシバウロン: bodhran, percussions, vocals
 田嶋ともすけ: drums, percussions
 中原直生: uillean pipes, whistles, 鍵盤ハーモニカ
 with

12/31(月)『COUNTDOWN JAPAN 12/13』@ 幕張メッセ国際展示場
詳細はこちら。  (PC・携帯共通)
ソウル・フラワー・ユニオン他


2013
01/11(金)松永孝義トリビュート〜君がここにいた音楽 @ 吉祥寺 スターパインズカフェ
開場18:00 開演19:00
前売3,600円 当日4,000円 ともに1ドリンク付き 通し券6,500円各日1ドリンク別
 カルメン・マキ: vocals
  桜井芳樹: guitar
  太田惠資: violin
  清水一登: piano
  西嶋徹: bass

 小松亮太: bandoneon
  田中伸司: bass
  近藤久美子: violin
  小松勝: guitar
  小松真知子: piano

 ラブジョイ
  bikke: vocals, guitar
  近藤達郎: keyboards
  服部夏樹: guitar
  植村昌弘: drums

 ロンサムストリングス
  桜井芳樹: guitars, etc.
  田村玄一: steel guitar, etc.
  原さとし: banjo
  with
  中村まり: vocals, guitar
  関島岳郎: tuba

01/12(土)松永孝義トリビュート〜君がここにいた音楽 @ 吉祥寺 スターパインズカフェ
開場17:00 開演18:00
前売3,600円 当日4,000円 ともに1ドリンク付き 通し券6,500円各日1ドリンク別
 くじら管弦楽隊
  杉林恭雄: vocals, guitar
  楠均: drums
  中原信雄: bass
  近藤達郎: clarinet
  多田葉子: sax, clarinet
  関島岳郎: tuba, etc.
  向島ゆり子: violin
  小峰公子: accordion, chorus

 ハンバート ハンバート
  佐藤良成: vocals, guitar, fiddle
  佐野遊穂: vocals, harmonica

 松竹谷清+ピアニカ前田+エマーソン北村
  松竹谷清: vocals, guitar
  ピアニカ前田: pianica
  エマーソン北村: keyboards

 松永孝義 The main Man Special Band
  井ノ浦英雄: drums
  ANNSAN: percussions
  エマーソン北村: keyboards
  桜井芳樹: guitars
  増井朗人: trombone
  矢口博康: sax
  福島幹夫: sax
  宮武希: chorus
  with
  今井忍: guitars

01/16(水)こまっちゃクレズマの歌会ハジメ @ 目黒・APIA40
18:30開場 19:30開演
前売・予約3,000円 当日3,500円+飲食代
 梅津和時: sax, clarinet
 関島岳郎: tuba
 多田葉子: sax
 張紅陽: accordion
 夏秋文尚: drums
 松井亜由美: violin
 with
 原マスミ: vocal

01/17(木)こまっちゃクレズマの歌会ハジメ @ 目黒・APIA40
18:30開場 19:30開演
前売・予約3,000円 当日3,500円+飲食代
 梅津和時: sax, clarinet
 関島岳郎: tuba
 多田葉子: sax
 張紅陽: accordion
 夏秋文尚: drums
 松井亜由美: violin
 with
 巻上公一: vocal

01/19(土)Paddy Glackin & Donal Lunny @ Star Pine's Cafe
開場17:00 開演18:00
前売 6,000円 + オーダー
 Paddy Glackin: fiddle
 Donal Lunny: bouzouki, guitar

01/19(土)ソウル・フラワー・モノノケ・サミット @ 大阪 SUNHALL
ゲスト:チャラン・ポ・ランタン
OPEN/START 18:00/19:00
前売4,000円/当日4,500円 (税込・ドリンク別・整理番号付)
キッズ前売2,000円/当日2,300円 (税込・ドリンク別)
ぴあ 0570-02-9999 (Pコード;186-859)
ローソン 0570-084-005 (Lコード;51376)
e+(PC・mobile)、店頭
[問]SUNHALL 06-6213-2954

01/19(土)Drakskip with 大森ヒデノリ @ 大阪扇町・ボダイジュカフェ
18:00開場 19:00開演
予約3,000円 当日3,500円(+オーダー)

01/24(木)ソウル・フラワー・モノノケ・サミット @ 下北沢 GARDEN
ゲスト:チャラン・ポ・ランタン
OPEN/START 18:00/19:00
前売4,000円/当日4,500円 (税込・ドリンク別・整理番号付)
キッズ前売2,000円/当日2,300円 (税込・ドリンク別)
e+(PC・mobile)
[問]GARDEN 03-3410-3431

01/26(土)ソウル・フラワー・モノノケ・サミット @ 石巻 La Strada
ゲスト:チャラン・ポ・ランタン
OPEN/START 18:00/19:00
前売4,000円/当日4,500円 (税込・ドリンク別・整理番号付)
キッズ前売2,000円/当日2,300円 (税込・ドリンク別)
La Strada 0225-94-90021

01/27(日)さとりやき in Nese Bellydance Studio 第4回発表会
 Roman ve Oriental vol.4 生演奏とベリーダンスショウ @ 岐阜 サラマンカホール
12:30開場 13:00開演
前売3,500円/当日4,000円
さとりやき
 トリタニタツシ: Vn, Nyckelharpa
 佐藤圭一: Ud
 やぎちさと: Per
バルカノータ
 石田秀幸: Kaval
 石田みか: Saz
 山田舞子: Cello
 カリーム: Per
ダンサー ネシェ、ニコル、ミホ/ダンススタジオ生徒

02/02(土)Drakskip with 大森ヒデノリ @ 京都嵐山・嵯峨野湯
18:00開場 19:00開演
予約3,000円 当日3,500円(+オーダー)
40名限定 

02/09(土)Drakskip with 大森ヒデノリ@ 名古屋千種・Cafe Dufi
18:00開場 19:00開演
予約3,000円 当日3,500円(+オーダー)

02/16(土)Drakskip with 大森ヒデノリ @ 東京中目黒・楽屋
18:00開場 19:00開演
予約3,000円 当日3,500円(+オーダー)

02/17(日)Drakskip with 大森ヒデノリ @ 東京青山・ヘムスロイドハウス イルバ・サロン
13:00開場 14:00開演
予約3,500円 当日4,000円(お茶付き)
30名限定 

02/23(土)24(日)Kan @ Star Pine's Cafe
開場17:00 開演18:00
前売 6,000円 + オーダー
 Brian Finnegan: flute, whistle
 Aidan O'Rouke: fiddle
 Ian Stephenson: guitar
 Jim Goodwin: drums

月一ライブ3周年記念演芸会
with つつじ楽団
 じょん: fiddle
 田嶋友輔: drums
三遊亭兼好
開場 16:30 開演 17:00
予約2,500円 当日3,000円 1ドリンク付き

03/08(金)09(土)10(日)Paul Brady with 山口洋 @ Star Pine's Cafe
08 開場18:00 開演19:00
09 & 10 開場17:00 開演18:00
前売 7,000円 +オーダー

03/13(水)Paul Brady @ 京都 磔磔
18:00開場 19:00開演
前売 7,000円 +オーダー

04/21(日)Winds Cafe 196 @ 西荻窪 トリアギャラリー
【もう一つのチーフテンズ】
 チーフテンズ、レコード・デビュー50周年記念企画
無料(飲み物・食べ物差し入れ歓迎)

08/25(日)
WINDS CAFE 200 @ 西荻窪 トリアギャラリー
【200回記念 西脇順三郎『失われた時』再び全編朗読】
 川村龍俊(朗読)+井上美明(音)

 伝統音楽、それも異邦の伝統音楽に惚れこみ、これを演奏することに生き甲斐を見つけてしまった人間にとって、その「本場」に行くことは小さなことではない。

 時には本場の伝統に視野を覆いつくされてしまう。それも、伝統の全体ではなく、ごく一部が大きく拡大して、他の部分が隠されてしまう。その衝撃が大きすぎると、他の部分の価値を否定したり、マイナスに評価したりするようにさえなる例もある。

 ドレクスキップはうまく距離をとっている。ヴェーセンのコピーから出発したとしても、バンドとして姿を現したときにはすでに独自のスタイルと語彙を備えていた。それだけ惚れこみ方がハンパではなかった、ということだろう。眼に映る表面だけではなく、本質に手を伸ばしていたからではないか。本場の人びとに歓迎されたのも、それ故にちがいない。

 もうひとつ、異邦の伝統音楽に惚れこんでいる自分たちを、より大きなコンテクストの中に置いて眺めることができているからでもあるだろう。異邦の伝統音楽を楽しんでいる自分たちを眺めて楽しんでいる、というけしきだ。

 だから、本場に行っても眼が眩むことも、のぼせあがることもなく、一種クールな態度で体験できたと推測する。

 得たものを一言で言えば「自信」になるだろう。対等の地点に立つことができた、という自信だ。

 異文化とのこういう接し方は、やはり新しいものと思う。ぼくらこの国の人間は異文化と接するにも、仲間内の上下関係をあてはめようとしてきた。海のむこうのものは、圧倒的にすぐれたものか、さもなければ限りなく劣ったものとみなしてきた。対等というとらえ方をしなかった。あるいはできなかった。それは「鎖国」のもたらしたものであり、だから「鎖国」は「日本の悲劇」なのだ、とも言えるかもしれない。だとしても、もうそろそろ、過去の束縛から自らを解放してもいいではないか。過去の束縛にしがみつくことでは結局「安心」は得られないのだから。ほんとうの「安心」を手にいれたいのなら、自分とは違う存在がいることを認め、おたがいの違いはそのままにこれと対等につきあうしかない。どんなに同じにしようとしても、同じになったと思いこんでも、金子みすゞの詩にあるように、二人と同じ人間はこの世にいないのだ。

 「本場」を経験して「自信」を得た点では、先日のハモニカクリームズも同じだ。

 こうした人びとが出現していることを、ぼくはまず何よりも言祝ぎたい。かれらが聴かせてくれる音楽のすばらしさを言祝ぎたい。

 アイリッシュ・ミュージックは螺旋型の音楽だ。くるくると回りながら、しかし同じ繰り返しではなく、少しずつ変わってゆく。人の歩みに沿った音楽なのだ。ヨーロッパの伝統的ダンス・チューンは、たいていがやはり螺旋型の音楽だ。同じような繰り返しに見えて、実はそれぞれが違う。

 ヨーロッパの伝統音楽にかぎらず、音楽は基本的に繰り返しだ。繰り返しは同じ地点におりたつから楽しいのではない。いつも少しずつ違うから楽しいのだ。機械のように、まったく同じ繰り返しをすることは人間にはできない。強制されて同じ繰り返しをさせられれば、人間ではいられなくなる。だからこそ人間であることは楽しい。正確に繰り返すことができないからこそ、楽しい。まちがうからこそ楽しい。まちがうからこそ、自信が生まれる。正しいことをいくらくり返しても、自信にはならない。

 一番面白かったのは、『ファイナル・ファンタジー』の音楽のアレンジだった。今年、ゲームのスタートから25周年になるのを記念して出たトリビュート・アルバムに参加してつくったものという。打楽器の渡辺さんは『5』が青春真只中だったという。フルートの豊田さんは『3』に思い入れがあると言っていた。ぼくらの世代にとってはテレビ・アニメの主題歌に相当するものなのだろう。そういう音楽を自分の手でアレンジして世に問えることは、いわばミュージシャン冥利ということではないかと思う。酔っ払ってカラオケでがなるのとは違う。

 面白いと思ったのは、これがりっぱにドレクスキップの音楽になっていたことだ。他人の作品といえば、ノルディックの伝統音楽からしてそうにちがいない。とはいえ、やはり勝手が違ったらしく、ドレクスキップ本来の筋からはズレている。そこがまたよいのだ。ドレクスキップがもともと持っていたものが、外部からの刺戟に反応して現れていた。この方向は意外なものでもあり、そのことがさらに魅力を増す。野間さんや渡辺さんが出した録音を聴いても、かれらの音楽がノルディック一辺倒であるはずはない。それはあくまでもひとつの側面であって、核心にはより多様な展開が可能な原石がある。ノルディックを土台にしながら、多様な音楽へと展開できるだけのものを、この4人は持っている。この方向への進展も大いに期待する。

 ライヴとしての演出や、観客ののせ方にも工夫があり、ひとまわりもふたまわりも大きくなっていたし、PAも良かった。そういえば、ハモニカクリームズの『マンダラ2』も音が良かった。このチェーンの店はどこも悪くなかったが、今回の二つはことに良く聞こえた。

 そのハモニカクリームズの清野さんも見えていた。この二つのバンドの共演も見てみたい。(ゆ)

 久しぶりにライヴを見たジョンジョンフェスティヴァルは大きくなっていた。成長した、というとこちらが偉そうに聞こえるが、ひと回りもふた回りも大きくなって、まぶしいほどの輝きを放っていた。その輝きをそのまま持って帰りたくて、まだ2回目のアンコールを求める拍手が鳴っている最中に会場を離れた。

 かつてのことを思い起こすとどうしても感傷的になってしまうのだが、かれらにはそんなものは要らない。誰はばかることもなく、好きな音楽に心ゆくまでひたりこみ、その歓びを解き放つ。明朗で、闊達で、一点の曇りもないその音楽は、人を幸せにする。音楽がつねに喜怒哀楽を含むものである以上、怒りも哀しみもそこにはあるが、それすらもどす黒さや痛みはやわらいで、むしろ悦びと楽しみを引きたてる。

 音楽はいわゆる「負」の感情を昇華する作用をもち、アイリッシュ・ミュージックはその作用がより強い。そしてジョンジョンフェスティヴァルの音楽は、さらにそれを増幅している。

 一番大きいのはたぶんじょんの変化だろう。演奏し、うたっているときの彼女はまさにフェアリーで、日常の次元を離れ、一緒に演奏している仲間たちや聴衆を別の次元に引きずりこむ。ともすれば他のメンバーの陰に隠れていたようなところがすっかりなくなって、自ら回転して渦を起こしてゆく。そう意識しているのかもしれないが、その様子に邪気がない。揺るぎない。そして軽い。俳諧の軽み。芭蕉よりは蕪村、あるいは一茶のような。

 むろん、ジョンジョンフェスティヴァルの音楽が俳句だというわけではない。かれらの生みだすアイリッシュ・ミュージックの軽みに一番近いものを、日本語文化の中に求めれば、俳句のそれだろう、というだけのこと。

 アニーとトシバウロンの二人はそのじょんをあるいは支え、あるいは煽り、そしてじょんから起こる渦に巻きこまれ、またこれを増幅する。

 田嶋トモスケ中原直生も、「サポート」という肩書はもうはずしてもいいんじゃないか。パフォーマーとしての田嶋、中原の純粋さがバンドの世界を拡大し、深めている。今回面白かったのは中原のメロディカ、鍵盤ハーモニカで、チープな蛇腹のような音が、中原の手にかかるとこれまた良い軽みを発する。

 「JJF感謝祭2012」と銘うたれた2日連続、3ステージのラスト、2日め夜の回。ゲストの岡大介は前口上で祭の場を設定し、〈東京〉は名曲だとあらためて納得させてくれた。この曲は JJF とともに録音したそうだから、リリースが楽しみ。

 もう一方のゲストのドレクスキップは、スウェーデン遠征後初めて見るステージで、これまた一回り大きくなっている。全体に自信ににじみ出ているが、とりわけ渡辺庸介が二枚くらい皮が剥けたようだ。再来週、12/16(日)には吉祥寺 Star Pine's Cafe に来るというから見にいかねばなるまい。

 ステージはじめ会場にあしらわれた草や花は、今年春、栃木で JJF と出会ったというハヤシラボによるものの由。フェアリーの祭の場を演出する。

 開演前と休憩の間には DJ 宮奈大がアナログ録音をかけて、楽しませてくれた。ライヴの音楽と付かず離れず、つながるかと思えば、カウンターをくり出す。邪魔にならず、ふとまた引き込まれる。なるほど、これもまたひとつの芸だ。

 物販のデスクには、所狭しと録音やグッズが並んでいた。出演メンバーの関係したものとのことだったが、いつの間にこんなにたくさん出ていたのだろう。あまり現金もなかったので、とりあえず2枚、ドレクスキップのメンバーが関係しているものを買う。

 外に出ると冷たい雨だった。が、胸のうちは温かい。しがらみから解き放たれた音楽は人を温める。(ゆ)

歌とチューン
歌とチューン
JJF の 2nd。今年のベストの一枚。

ニッケルハルパのトリタニタツシさん率いるカンランのライヴです。

大阪は万博会場での「北欧のピクニック」はすごいですね。スウェーデンから大挙18人も来てしまうとは。国内勢も含めて43人、て、こりゃフェスティヴァルだよ。(ゆ)

--引用開始--
北欧のピクニック
09/17(月・祝)
なんと今年は国内外から総勢 43名のミュージシャンが参加!
大阪万博公園で開催される日本最大の北欧イベント『北 欧のピクニック』に初参戦いたします。
トリタニの出演は『カンラン』と『ノルディックムード』
詳細はオフィシャルサイトでご確認ください。


Kanran@ベッラマーレ(志摩)
09/22(土)
伊勢志摩の素敵なペンション「ベッラマーレ」でカンランのワンマンライブ が実現!
詳細はオフィシャルサイトでご確認ください。


*すべての公演のお問い合わせ、ご予約はトリタニまで (t.toritani (at) gmail.com 090-8072-9498)

--引用終了--


Thanx! > トリタニさん

    三重県松坂をベースに、ニッケルハルパを操って境界横断的活動を続けるトリタニタツシさんが参加するバンドのCDがリリースされてます。どちらも傑作。(ゆ)


--引用開始--
    こんにちは。トリタニです。
    4月に入りましたがまだまだ寒い日が続きますね。
    さて、前回はカンランのアルバム、03/04リリース案内をさせていただきましたが、04/18にサトリヤキのアルバムをリリースいたしますので、ライブ情報と併せてご案内させていただきます。

【リリース情報】

大地のうたカンラン《大地のうた》
2100円(税込)KRP-0001 Karappo Label
    日本初の本格的北欧ボーカルトリオ『カンラン』 の世界がいっぱい詰まった1stフルアルバム絶賛発売中!






《大地のうた》より”砂漠”PV



さとりやき (SATORIYAKKI)さとりやき《Satoriyakki》
2625円(税込)TACD-01 Tradvance Music
    東西越境による、プログレッシヴ・ペイガン・グループ「さとりやき」ニッケルハルパとウードの インタープレイで画かれる、架空の民族音楽空間に酔え!
(Chihiro S : ユーロロックプレス誌初代編集長)

    「さとりやき」は、日本を代表するジプシー系ユニットである「おしゃれジプシィ」と「ラフブランチ」両バンドのリーダーがタッグを組んだ、最 強の弦楽コラボ レーション。北欧〜東欧〜中近東の音楽語法を駆使したアンサンブルを聞かせるアコースティック・プログレ・ユニットの、初のレコーディング作品。

    両作品とも全国のCD店、各オンラインショップ、ライブ会場にてご購入いただけます。


【ライブ情報】
★カンラン
アヤコ: vo
トリタニタツシ: nyckelharpa, lute
カリーム: darbuka

*04/25(水) インドと北欧
出演:カンラン/新井孝弘(サントゥール)U-zhaan(ダブラ)
時間:開場/開演 19:00/19:30
料金:前売2,500円/当日3,000円
場所:三重県伊勢市 カップジュピー

*05/12(土)プラネタリウム倶楽部「金の指輪を見よう〜05/12松阪で金環日食」
出演:カンラン(アヤコ、トリタニタツシ、赤澤淳: Irish bouzouki)
時間:開場/開演 18:00/18:30
料金:500円
場所:三重県松阪市 三重こどもの城

*06/10(日) ホクオウオンガクマツリ『白夜光』
〜白夜の光の中にこだまする北欧の響き〜ハーモニーフィールズがお届けする白夜スペシャル2012
出演:カンラン/Nordic Mood かとうかなこ(アコーディオン) with 田中良太(パーカッション)、本田倫子(ニッケルハルパ)、織田優子(リコーダー)
時間:開場/開演 17:30/18:00
料金:予約3,000円/当日3,500円 (ドリンク別) ※「ミルクキャラメル付」(ミルクキャラメルの日に付き)
場所:大阪市 雲州堂
チケット残席少なくなってきてます。ご予約はお早めに!

*06/16(土) 北欧の宴@サライ
出演:ロリグ(松阪北欧ワークショップ生徒達)/カンラン/ドレクスキップ
時間:開場/開演 18:00/18:30
料金:予約2,000円/当日2,500円 (1drinkチケット500円別)
場所:三重県松阪市 サライ


★さとりやき
トリタニタツシ: nyckelharpa
佐藤圭一:ud, tanbur
やぎちさと: tonbak
*04/29(日) プログレ民族の祭典
出演:さとりやき with KIKI, Nese/荻野和夫/グロズダンカ
時間:開場/開演 18:00/18:30
料金:予約2,200円/当日2,500円
場所:吉祥寺 シルバーエレファント

*05/19(土) さとりやきリリース Live
出演:さとりやき/ダンサー Nese
時間:開場/開演 18:30/19:00
料金:予約2,000円/当日2,500円
場所:岐阜 トラベシア

*05/20(日) さとりやきリリースLive
出演:
    さとりやき with ダンサー Nese
    瀬戸信行: clarinet 加藤吉樹: oud 永田 充: darbuka MINORI: belly dance
時間:開場/開演 18:00/19:00
料金:予約2,300円/当日2,800円(1ドリンク付)
場所:大阪 フィドル倶楽部


★トリタニタツシ (nyckelharpa,lute)
*04/30(月)連合松阪地協メーデーオープニング演奏
出演:トリタニタツシ with イケヤマアツシ(G)
時間:09:30〜
料金:Free
場所:中部台公演 三重県松阪市

*05/05(土)〜06(日) 「三重詩人」創刊60 周年記念行事
出演:詩の朗読にあわせてトリタニのニッケルハルパ即興演奏
時間:未定
料金:Free
場所:三重県松坂市産業振興センター 3 階

*05/23(土) IKEA湊北ミッドサマー(スウェーデンのお祭り)
出演:Peo~leo(トリタニタツシ: nyckelharpa、赤澤淳: Irish bouzouki)
時間:未定
料金:Free
場所:横浜市 IKEA港北


すべての公演のお問い合わせ、ご予約はトリタニまでお願いします。

発行*サハラブルー
トリタニタツシ
メール
090-8072-9498
--引用終了--


Thanx!> トリタニさん

ニッケルハルパ奏者のトリタニタツシさんが主宰するバンド、カンランの新録音がリリースされたそうです。
    
    ニッケルハルパにハーディガーディという、親戚同士の弦楽器からなるバンドというのも、ちょっと他にはないでしょう。
    
    もちろん、注文しました。届くのが楽しみ。
    
    トリタニさんのもう一つのバンド、さとりやきの録音もまもなく出るそうで、こちらも楽しみ。


 03/04にカンラン待望のフルアルバム『大地のうた』がリリースとなりました。

 レーベルサイト(ハーモニーフィールズ)、CD店、ネット、通販(タムボリン)などでお求めいただけます。

 北欧トラッドの影響を受けながら様々な音楽的要素を持つカンランの世界へお誘いします。

 さて、まずは中部方面のリリースライブが決定しましたのでお知らせいたします。

04/15(日)カンラン/サトリヤキ/ダンサー Nese
時間:18:00開場/18:30開演
料金:前売2,000円/当日2,500円(1ドリンクオーダー別)
会場:KDハポン 名古屋市中区千代田5丁目12-7   052-251-0324

大阪 Live は06/10に計画中です。今しばらくお待ちください。

また”さとりやき”のファーストCDも間もなくリリースとなります。
次回のメールでレコ発ツアーのお知らせをさせていただきます。

ご予約などはメールでお受けいたします。



Thanx! > トリタニさん

三重のニッケルハルパ奏者、トリタニタツシさんとそのバンド、カンラン、ペオレオのライヴ情報です。ノルウェイから招聘したバンドのライヴもあります。mini CDが「秋」に出る予定だったものも、フル・アルバムになって来月出るそうな。これも楽しみ。
    
   
    カンランCDは新レーベル『Karappo』より11/20にフルアルバムのリリースが決定しました。ご期待くだ さい♪

*10/15(土)カルティベイト・イベント
【出演】カンラン/胡池マキコ(Vo, G)+トリタニタツシ(ニッケルハルパ)
 場所:カルティベイト  松阪市嬉野下之庄町1688-5
 時間:18:00〜
 ☆1st CDをリリースした胡池マキコさんとの共演はなんと1年ぶり!

*10/16(日)北欧音楽カフェ
【出演】あらひろこ(カンレテ)/トリタニタツシ(ニッケルハルパ)イケヤマアツシ(Gt)
 場所:カルティベイト  松阪市嬉野下之庄町1688-5
 時間:開場14:30 開演15:00
 料金:前売2,000 当日2,500 (ドリンクチケット別途)
 ☆北海道からカンテレ奏者あらひろこさんを招いての北欧コンサート。ニッケルハルパとの共演が楽しみです。

*10/22(土)アンジェロ・アクイリーニコンサート
【出演】アンジェロ・アクイリーニ(アコーディオン)、手塚恵(朗読)、トリタニタツシ(ニッケルハルパ)
 場所:5/R Hall&Gallery   名古屋市千種区今池1-3-4
 時間:開演 1st Stage15:00    2nd Stage 19:00
 料金:全席自由3,500
 ☆1st 2ndステージとも第2部でトリタニがゲスト出演。ニッケルとアコーディオンによるポルスカはとっても新鮮。北欧の他にアイリッシュやクレズマーもやります。

*10/23 (日)『勢田川一本背負いVol.!!!』
 イベント出演 14:20〜 カンラン
 場所: 伊勢市河崎2丁目川の駅船着場
 ☆素敵なバンドが多数出演する伊勢市河崎のイベント。

*10/30(日)ペオレオ ハロウィンLive!
【出演】ペオレオ:トリタニタツシ(ニッケルハルパ)、赤澤淳(ブズーキ)
 場所:アニバーサリー中庭  松阪市川井町834-5
 時間:16:00〜
 ☆松阪の超人気ケーキShopアニバーサリー企画イベントで、ペオレオワンマンライブが実現。ご来場者全員にクッキープレゼント♪
 
*11/20(日)北欧音楽まつりat サライ
【出演】Sudan Dudan (from Norway)/カンラン/ロリグ
 場所:サライ   松阪市日野町604 サニービル 2F
 時間:開場17:30 開演18:30
 料金:前売3,000 当日3,500 (ドリンクチケット別途)
 ☆北欧ミュージシャンにもおなじみの松阪サライで、北欧音楽まつりを開催。
  2001年11月スウォプ(Sweden)の初ライブがきっかけで、それから毎年北欧ミュージシャンのライブを開催しています。今年で丸10年です。

*11/28(月)カンランLive
【出演】カンラン/ロリグ
 場所:あづり  志摩市志摩町越賀 2249-13
 時間:未定
 料金:未定
 ☆カンラン志摩初上陸。詳細は後日。


ご予約,お問い合わせはサハラブルーまで
 発行:サハラブルー*トリタニタツシ 090-8072-9498 
info@saharableu.com


Thanx! > トリタニさん

三重県松坂をベースとするバンド、カンランのライヴ情報です。ニッケルハルパの鳥谷さんの率いるバンド。北欧を中心にひじょうに幅の広い音楽をやってます。ジョンジョンフェスティヴァルとの共演もありますね。それもメキシカン・レストランで、というのが面白い。
    
    秋に mini CD も出るそうですが、もう秋なんですけど(笑)、いつかな。楽しみ。


★09/08(木)カンラン 三重TV生放送出演!
 18:00の番組で2曲演奏します。
 <演奏予定曲>
 ノルウェー語のトラッド『アレモドゥ』/オリジナル新曲『モグモング』
 2曲とも秋に新レーベルよりリリースするminiCDに収録予定です。

★09/15(木)ル・バルーシュ(France)来日公演 with カンラン
【会場】松阪M'AXA 松阪市市場庄町1148-2
【時間】開場18:30/開演19:30
【料金】前売¥3,500/当日¥4,000(drinkチケット別)
フランスからお洒落なミュゼットシャンソンバンド、ル・バルーシュが再来日!!!
フランスの黄金時代と呼ばれた1930-1950年代に、シャンソンと同時期に愛されたダンス音楽「ミュゼット」をこよなく愛す「ル・バルーシュ」。念願の再来日が決まり、またまたM’AXAにやってくる!
アコーディオンの哀愁漂う音色とアンナのボーカルがハマリにハマって
まるで飛び出すスクリーン?!のように映画のワンシーンを観ているような感覚になるくらい。
ライブが始まれば、彼らのおしゃれな雰囲気と魅せ方にすぐさま引き込まれることでしょう。
伝承音楽に新しい感覚を取り入れた他にはない色濃いバンド。
この感動を一度味わうとやみつきになるでしょう。
地元からは、今回も北欧ミュージックと伝統音楽をこよなく愛す kanran が参戦。
一体これ何?!という見た事もない弦楽器(ハーディガーディ)を巧みに操り見
事な演奏で楽しませてくれます。
ぜひライブでこの感動をあじわってください!!!

★09/19(月祝)『国際姉妹都市音楽祭2011』
カンラン
かとうかなこ with 青木研
キングコロンビア
ル・バルーシュ
【会場】京都駅ビル 室町小路広場
【時間】開演17:00

★09/24(土)ジョンジョンフェスティバル/ カンラン
【会場】チャベリータ 津市久居北口町972-1
【時間】開場19:00/開演20:00
【料金】前売2,000円/当日2,500円(要1オーダー)
 東京のアイリッシュバンド「ジョンジョンフェスティバル」を招いてのレストランライブ!
美味しいメキシコ料理と共に美味しい音楽を♪


《10月のピックアップ》
★10/16(日)北欧音楽 Cafe
【出演】あらひろこ(カンテレ)/トリタニタツシ(Nyckelharpa)・イケヤマアツシ(Gt)
【会場】カルティベイト 三重県松阪市嬉野下之庄町1688-5
【時間】開場15:00/開演15:30
【料金】未定
フィンランドの民族楽器カンテレ奏者のあらひろこ、トリタニ&イケヤマによる北欧三昧の cafe time

★10/22(土) アンジェロ・アクリーニ with トリタニタツシ(Nyckelharpa)
【会場】5/R Hall&Gallery 名古屋市千種区今池1-3-4
【時間】開場18:30/開演19:00
【料金】全席自由: 一般 3,500円
アコーディオンの魔術師アンジェロのソロコンサートの2部にトリタニがゲスト出演!


ご予約,お問い合わせはサハラブルーまで
発行:サハラブルー*トリタニタツシ
090-8072-9498


Thanx! > トリタニさん

    ニッケルハルパ奏者の鳥谷さんから、松坂、名古屋、関西方面での北欧関連のライヴ情報をいただきました。カンランという新しいユニットを組まれてるんですね。くわしくはこちら

--引用開始--
06/19(土)「北欧音楽まつり」 ※残席わずかです!
出演*ロリグ、カンラン
Karoliina Kantelinen (Vo,Kantele) from Finland
Goran Mansson (Flute,Recorder) from Sweden
17:00open/18:00start
前売2,500yen/ 当日3,000yen (1drinkオーダー制)
会場:サライ 松阪

06/20(日)「カンラン+∈va 音の果実」
出演*Eva、カンラン
18:30open/19:00start
前売2,000yen/ 当日2,500yen (1drink付)
会場:ドーファン・イーヴル 伊勢市

06/26(土)「印欧音楽祭」
出演*ペオレオ=トリタニタツシ nyckelharpa、赤澤淳 bouzouki、ヒトツ屋根ノ下、サイトウ尚登・吉田こうき
Open17:00/Start17:30
予約2,000yen/ 当日2,500yen (1drinkオーダー制)
会場:名古屋 K・Dハポン

07/17(土)「北欧の夏色音楽」
出演*カンラン、ドレクスキップ、U-full
18:30open/19:00start
前売2,000yen/当日2,500yen(要オーダー)
会場:大阪 ボダイジュカフェ

07/18(日)「北欧の夏色音楽」
出演*カンラン、ドレクスキップ、シャナヒー
18:30open/19:00start
前売2,000yen/ 当日2,500yen (要1drinkオーダー500yen)
会場:京都 パーカーハウスロール

07/25(日)「イベント名未定」
名古屋
出演*カンラン他

08/15(日)「IKEA港北 Live」
午後
出演*ペオレオ

カンランwebsite
ペオレオwebsite

全てのライブのご予約、お問い合わせは
トリタニまでお願います。
--引用終了--


Thanx! > 鳥谷さん

    本誌8月号は明日の昼までには配信できそうです。


    ところで、今年の「ケルティック・クリスマス」で来日するクリス・スタウト&カトリオナ・マッケイが属するフィドラーズ・ビドの新作《ALL DRESSED IN YELLOW》 がシェトランドでリリースされ、そのうち2曲が MySpace にアップされてます。
   
    かれらのライヴの魅力が初めて録音で捕えられたと思います。この断片を聴くかぎり、たしかにこれまでの録音から突破してます。ようやく録音とライヴの違いを体で実感して、音作りに生かせるようになった、というけしき。そうなれば鬼に金棒。これは楽しみです。(ゆ)

    ドレクスキップが東下しての2連チャン、初物好きの小生としては、まだ聞いたことがないフラクタルとの対バンを聞いてきました。
   
    ドレクの生を見るのは2度め。前回は2月のナギィとの対バンでしたので半年ぶり。その間、正式アルバム《WeatherCock,facing North/北向く風見鶏》を録音、リリースし、それをひっさげてのライヴを重ねてきています。その精進の跡はあざやか。
   
    というより、いやあ、いいバンドになってきました。引き締まったアンサンブルから繰り出される、アイデア満載、センス抜群のアレンジに磨きがかかり、CDで聞き慣れた曲、フレーズがきれいに洗われて、まるで初めて聞くようです。実際、アレンジそのものも変わっているところもあって、わくわくしてきます。
   
    2月の時点で感じた、こりゃあ、いいバンドになるぞ、という予感がいよいよ現実の姿をとりだした、というところでしょうか。可能性が十分に開花した、とまでは言えない、それはまだまだこれからの楽しみですが、ほんとうに良いバンドになってゆくその過程にある姿もまた、きわめて魅力的です。すぐれたバンドの誕生に立ち合っている歓び。今でしか聞けない音、見られない姿。
   
    成長の過程が形になっていたのは「新曲」で、東欧風の〈7拍子の太鼓〉はすばらしかった。レパートリィの幅がこういう形で広がってゆくのをみるのは快感でもあります。
   
    ひと言でいえば「若さ」になりましょう。ひとつひとつの音、フレーズ、演奏が新鮮なのです。生まれたばかりの音楽。行き着くところのまだまったく見えない、可能性の塊。といって勢いばかりではない、緩急の呼吸もしっかりつけている。欠点はむろんたくさんあるにしても、その欠点すら魅力になる。
   
    メンバーのうち3人は早朝京都を出発してモロに渋滞に巻きこまれ、東京に着くまで12時間かかったそうですし、体調の万全ではない人もいましたが、そうした悪条件をものともしない、あるいはそれがむしろ推進剤になっているところも頼もしい。
   
    今頃は池袋の HMV でのインストア・ライヴの真っ最中でしょうが、今晩の O'Jizo、waits との対バンは見ものでしょう。ひょっとすると3バンドの合奏もあるやもしれず、これを見逃す手はないと思います。世界で一流と呼ばれる存在をめざして、さらなる精進を重ねていただきたい。スウェーデンのフェスティヴァルでヴェーセンとトリを争う存在になってほしい。
   
   
    ドレクスキップの前に登場したフラクタル Fractale は、ウエブ・サイトでは東欧系の音楽となっていましたが、タラフ・ドゥ・ハイドゥクスやコチャニ・オーケスターよりも、ステファン・グラッペリ&ジャンゴ・ラインハルトのスタイル、マヌーシュ系のバンドです。いつもはこれにアコーディオンの加わるトリオでの活動だそうですが、昨日はドレクに対抗するため、ダブル・ベースとタブラがゲストで加わっていました。
   
    ただ、ドレクを聞いてしまうと、前半のフラクタルの演奏が吹っ飛んでしまったことは否めません。
   
    原因のひとつは急遽加えたゲスト、特にタブラとの連携があまりうまくいっていなかったことでしょう。ゲストも含め、メンバー個々の水準は高く、技術的にはドレク以上ともみえましたが、アンサンブル全体としての練度が不足していました。むしろふだんやっているトリオでの練度の高い演奏も聞いてみたかったのですが、今回はなし。
   
    この手の音楽にタブラを加える発想はたいへんおもしろく、おおいに評価しますし、タブラ自体、柔軟性は高いですから、新たな成果も期待できます。が、一方でやはり独自の性格が強い楽器でもあり、うまく連携をとるには周到な戦略と時間をかける必要があるのでしょう。昨日はむしろぶっつけ本番の即興に活路を見いだす戦術で、タブラとギター、タブラとヴァイオリンのような形ではかなりおもしろくなっていました。ぼくにとってはこの二つがハイライト。ただ、全体となると、タブラの活躍の幅が限られてしまうようでした。
   
    とはいえ、ドレクスキップの刺激でこういう試みが出てきたことはまた嬉しく、この形でもリハを重ねたところが聞きたいですし、もっと他の試みも期待します。いろいろ試すことができるだけの技量の高さがフラクタルにはあると思います。それにやはりトリオとしてのライヴを見てみたくなりました。
   
    それにしても、ヴァイオリンのカジカさんが和服で超絶技巧を連発するのは、不思議な光景。最初はアレという感じなのですが、すぐに違和感がなくなってしまい、この音楽は昔からこういう格好でみんなやっていたんだよな、と妙に納得させられます。
   
   
    会場の Blue Drag は無愛想なビルの地下で、ビル自体は商業ビルでもないので、たいへんわかりにくいです。看板も目立ちません。早稲田通りを明治通りとの交差点から飯田橋方面に向かって少し行くと左に「天下一」のラーメン屋があり、そこを左に折れて三軒めぐらいのビルです。50メートルも行かないと思います。
   
    昨日は黒糖酒の「龍宮」というのがあったので試してみましたが、なかなかの酒でした。(ゆ)

 昨晩は武蔵野スイング・ホールソフィア・カールソンの初来日。再来日熱望。

 完全に誤解をしていたのでありました。生身のソフィアは、へたに触れれば粉々になってしまうような繊細さと、大地に深く根をおろしてどんな嵐がこようがびくともしない靭さを兼ね備えた、類稀なるうたい手でありました。後半は裸足になってしまうくらい「天然」の妖精でもありました。笛も達者、ギターもよく、まさに音楽をするために生まれてきた人。

 前半はじっくりとソフィアのうたを聞かせます。MCはほとんどないのも潔い。北欧にすぐれたうたい手は少なくありませんが、ソフィアのうたのうまさはちょっと次元が異なる気もします。

 後半はノルウェイから参加のギデオン・アンデションがマンドリンでアイリッシュ・チューンを聞かせたり、そのギデオンがカホンで相方をつとめてオッレ・リンデルがすばらしいパンデレイタを披露したり、ヴァラエティに富んだ趣向。

 三人のバック陣は一騎当千なのは当然として、ヒロインの繊細さを包みこむようなサポートで、息もぴったり。自分にとって大事な仲間としてひとりひとりていねいにソフィアが紹介するのもほほえましく、楽しいものでした。

 スイング・ホールの特性を活かして、ときにマイクをはずれて生の声や笛で聞かせたりもします。牛飼い唱法もしっかり披露。

 サウンド・エンジニアも連れてきていて、かぎりなくアコースティックに近い音で聞けたのもうれしいもの。一方でグスタフ・ユングレンのラップ・スティール(?)を使った幻想的な音も不思議なくらいぴたりと合っていました。それにしても、このホールで聞くダブル・ベースの音は格別でした。

 こういう繊細さと強靭さが同居したうたい手は、これまで北欧では聞いたことがなかったとおもいます。というよりも、ヨーロッパを見渡しても、滅多にいるものではない。近い人といえばアルタンのマレードがアイルランド語でうたうときか。でもおそらく一番近いのはアン・ブリッグスでしょう。もちろん天の時も地の利も違うし、音楽そのものも違いますが、ミュージシャンとしての在り方が似ています。

 ですから、ソフィアにはぜひうたい続けてほしい。40歳、50歳になったときの彼女のうたを聞いてみたい。それまではなんとか命長らえて、よぼよぼの爺になって、成熟したソフィアのうたにひたりたい。

 満席の聴衆もソフィアの音楽の良さがよくわかる人ばかりで、1曲ごとに拍手が大きくなり、その反応にまたミュージシャンが昂揚する理想的なライヴ。休憩と終演後にはCDが飛ぶように売れ、サイン会には長蛇の列ができていました。このうたい手と時空を同じくして生きるありがたさをしみじみと嚼みしめながら、家路についたことでした。(ゆ)

 今日の午前中、9月号を配信しました。未着の方はご一報ください。
23日配信予定にしていましたが、1日早くできあがったので、配信しました。

 配信設定をしておいて、すぐ家を出て、スヴェングのインタヴューに行ってきました。まず『CDジャーナル』に掲載されますが、その後、書ききれなかった分を本誌に掲載する予定です。

 二度目の来日ツアー中のスヴェングはこの後、明日は静岡・浜松の楽器博物館、26日金曜日は神奈川・厚木の市民文化会館、翌27日土曜日は札幌のコンカリーニョでの公演があります。

 4本のハーモニカだけで、ありとあらゆる音楽をやってのけるスヴェングは、この楽器の可能性をとことんまで展開する、他に類例のない、世界で唯一のバンドです。しかもヴィジュアルも楽しい(^_-)。まだライヴを体験されたことがなければ、「親の葬式を延ばしても」見に行くべし。(ゆ)

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