さりげない。
ちょんちょんと弦をこすり、次の瞬間、曲に入る。
と、世界が変わる。
マーティンとデニスの音が鳴っている間、ぼくらは別世界にいる。
「日常世界ではしらないような感情」に満たされた世界。
うちくだくことも押し戻すこともできない何かが、
二人の手の先からとうとうとあふれ出てくる。
あふれ出て空間を満たし、
ぼくの体を満たし、
心を満たす。
するとさらわれる先は生死の境。
もうほんの少しでも増えたなら、
あっさりと幽明の境を越えてしまうだろう。
それもまたよし。
いや、そうではない。
よしも何もないのだ。
もっと静かにすみきった、
まったき抱擁。
かすかなやるせなさが残って
一層歓びを深くする。
音楽はいつか止む。
ぼくらはいつか捕まり殺される。
しかし殺すものもまた、そうせざるをえない。
ぼくらを捕え殺すのがかれらの道、義務、ダルマだからだ。
命とはその原理の表象につきる。
音楽はその命の表象につきる。
マーティンとデニスの音楽には余分なものがなにもない。
同時に音楽のすべてがある。
ジャズもクラシックもポップスも
無伴奏もフルオケもロック・バンドも
伝統も前衛も
アルタミラの洞窟に響いていた音も
太陽が滅ぶ時にたてるだろう音も
すべてを備え、生みだしてゆく。
あえてハイライトをあげるなら、
後半、スロー・エアからマーチを経て展開されたメドレー。
そうだ、もう遠慮は要らない。
長い長いメドレーにこそひたりたい。
あえてアイルランドにひきつけるなら、
この二人の音楽はアイルランドの伝統からしか現れない。
長い「逸脱」の積み重ねの末に
この二人とその音楽を生みだしたことで
アイルランドは称えられるべし。
そしてまたここから次なる伝統が流れだす。
マーティンとデニスに感謝を。
のざきさんに感謝を。
武蔵野文化財団に感謝を。
Special thanks to Mr Naka
(ゆ)
ちょんちょんと弦をこすり、次の瞬間、曲に入る。
と、世界が変わる。
マーティンとデニスの音が鳴っている間、ぼくらは別世界にいる。
「日常世界ではしらないような感情」に満たされた世界。
うちくだくことも押し戻すこともできない何かが、
二人の手の先からとうとうとあふれ出てくる。
あふれ出て空間を満たし、
ぼくの体を満たし、
心を満たす。
するとさらわれる先は生死の境。
もうほんの少しでも増えたなら、
あっさりと幽明の境を越えてしまうだろう。
それもまたよし。
いや、そうではない。
よしも何もないのだ。
もっと静かにすみきった、
まったき抱擁。
かすかなやるせなさが残って
一層歓びを深くする。
音楽はいつか止む。
ぼくらはいつか捕まり殺される。
しかし殺すものもまた、そうせざるをえない。
ぼくらを捕え殺すのがかれらの道、義務、ダルマだからだ。
命とはその原理の表象につきる。
音楽はその命の表象につきる。
マーティンとデニスの音楽には余分なものがなにもない。
同時に音楽のすべてがある。
ジャズもクラシックもポップスも
無伴奏もフルオケもロック・バンドも
伝統も前衛も
アルタミラの洞窟に響いていた音も
太陽が滅ぶ時にたてるだろう音も
すべてを備え、生みだしてゆく。
あえてハイライトをあげるなら、
後半、スロー・エアからマーチを経て展開されたメドレー。
そうだ、もう遠慮は要らない。
長い長いメドレーにこそひたりたい。
あえてアイルランドにひきつけるなら、
この二人の音楽はアイルランドの伝統からしか現れない。
長い「逸脱」の積み重ねの末に
この二人とその音楽を生みだしたことで
アイルランドは称えられるべし。
そしてまたここから次なる伝統が流れだす。
マーティンとデニスに感謝を。
のざきさんに感謝を。
武蔵野文化財団に感謝を。
Special thanks to Mr Naka
(ゆ)